説明

熱的に安定なポリカーボネート、その熱可塑性組成物およびそれから形成される物品

脂肪族/芳香族ポリカーボネートなどのポリカーボネートは、Rhが、式(H-2)を有する基である式(H-1)のカーボネート構造反復単位を含み、式(H-2)中においてR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、およびR28は、独立に、水素、C1〜C6アルキル基、またはハロゲン置換C1〜C6アルキル基である。ポリカーボネートおよびその熱可塑性組成物は、改良された熱安定性、改良されたコスト効率を有し、ならびに、例えば、環状カーボネート形成が最小であること、およびアミン受容体要求が最小であることなどの改良された製造性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱的に安定なポリカーボネート、その熱可塑性組成物、ならびにその物品および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族/芳香族ポリカーボネートは、通常、β-水素を含む熱分解脱離反応のために熱安定性が不十分である。EP0922722A1には、熱安定性が著しく改良されたポリエステルおよびポリカーボネートは、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール(TMCBD)などのβ-水素を含まないネオアルコールから調製し得ることが報告されている。しかし、TMCBDが高コストであるために多数の用途に対してTMCBDは実際的でない。ネオペンチルグリコール(NPG)は、TMCBDより低コストのネオジオールであり、NPGのビスクロロホルメートが調製され、対応するBPAコポリカーボネートに転換されているが、NPGは、一般に望ましくない環状カーボネートを形成する傾向がある。さらに、NPGは、低分子量であり、有効な水準でポリカーボネートおよびコポリカーボネート中への組込みが可能になるためには大量のアミン受容体を必要とする。
【0003】
【化1】

【特許文献1】EP0922722A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、熱的に安定であり、コスト効率が良く、とりわけ最小の環状カーボネート形成、最小のアミン受容体要求など、製造上の特徴が改良されたポリカーボネートおよびその熱可塑性組成物に対する必要性が、当技術分野において依然として存在する。
【0005】
一態様では、本開示は、式(H-1)のカーボネート構造反復単位を含むポリカーボネートを提供する
【0006】
【化2】

【0007】
[式中、Rhは、式(H-2)を有する基である
【0008】
【化3】

【0009】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、およびR28は、独立に、水素、C1〜C6アルキル基、またはハロゲン置換C1〜C6アルキル基である)]。例えば、H-1は、式(H-3)のカーボネート単位の形態でよい。
【0010】
【化4】

【0011】
他の態様では、本開示は、式(H-1)のカーボネート構造反復単位に加えて、式(A-1)のカーボネート構造反復単位を含むポリカーボネートを含む熱可塑性組成物を提供する
【0012】
【化5】

【0013】
[式中、A1およびA2はそれぞれ、二価の単環状アリール基であり、Y1は、A1をA2から隔てる1つまたは2つの原子を有する架橋基;例えば、式(A-3)または(A-4)のカーボネート構造反復単位である]。
【0014】
【化6】

【0015】
他の態様では、本開示は、上記の式(H-1)のカーボネート構造反復単位を含むポリカーボネートを含む熱可塑性組成物を提供する。
【0016】
さらなる他の態様では、本開示は、熱可塑性組成物から形成される熱的に安定な物品を提供する。
【0017】
上記の特徴および他の非限定的な特徴は、以下の詳細な説明によって例示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本開示は、式(H-3)などの式(H-1)のカーボネート構造反復単位を含むポリカーボネート、およびその熱可塑性組成物に関するものであり、該ポリカーボネートおよび熱可塑性組成物は、改良された熱安定性、改良されたコスト効率、ならびにとりわけ環状カーボネート形成が最小であること、アミン受容体要求特性が最小であることなどの改良された製造性を有する。
【0019】
【化7】

【0020】
本明細書では、「ポリカーボネート」という用語は、同じまたは異なるカーボネート単位を含むポリマー、あるいは同じまたは異なるカーボネート単位および1つまたは複数のカーボネート以外の単位を含むコポリマー(すなわち、コポリカーボネート)を指し;「脂肪族」という用語は、環状でない直鎖もしくは分枝の炭素原子配列を含む、少なくとも1つの価数を有する炭化水素基を指し;「芳香族」とは、少なくとも1つの芳香族基を含む、少なくとも1つの価数を有する基を指し;「脂環状」とは、環状であるが芳香族でない炭素原子配列を含む、少なくとも1つの価数を有する基を指し;「アルキル」とは、直鎖もしくは分枝鎖で一価の炭化水素基を指し;「アルキレン」とは、直鎖もしくは分枝鎖で二価の炭化水素基を指し;「アルキリデン」とは、直鎖もしくは分枝鎖で二価の炭化水素基であって、両方の価が単一で共通の炭素原子上にある基を指し;「アルケニル」とは、炭素-炭素二重結合によって結合されている少なくとも2つの炭素を有し、直鎖もしくは分枝鎖で一価の炭化水素基を指し;「シクロアルキル」とは、少なくとも3個の炭素原子を有する非芳香族脂環状の一価の炭化水素基であって、少なくとも1つの不飽和度の可能性を有する基を指し;「シクロアルキレン」とは、少なくとも3個の炭素原子を有する非芳香族脂環状の二価の炭化水素基であって、少なくとも1つの不飽和度の可能性を有する基を指し;「アリール」とは、一価の芳香族ベンゼン環基、または少なくとも1つの任意選択で置換されたベンゼン環に縮合した任意選択で置換されたベンゼン環系の基系を指し;「芳香族基」とは、少なくとも1つの芳香族基を含む、少なくとも1つの価数を有する基を指し; 芳香族基の例として、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチルなどが挙げられ;「アリーレン」とは、ベンゼン環二価基、または少なくとも1つの任意選択で置換されたベンゼン環に縮合したベンゼン環系二価基を指し;「アシル」とは、カルボニル炭素原子に結合した一価の炭化水素基であって、該カルボニル炭素が隣接した基にさらに結合している基を指し;「アルキルアリール」とは、上記で定義したようなアリール上で置換されている、上記で定義したようなアルキル基を指し;「アリールアルキル」とは、上記で定義したようなアルキル上で置換されている、上記で定義したようなアリール基を指し;「アルコキシ」とは、酸素基を介して隣接基に結合する上記で定義したようなアルキル基を指し;「アリールオキシ」とは、酸素基を介して隣接基に結合する上記で定義したようなアリール基を指し;量に関連して使用される「約」という修飾語は、記述の値を含み、文脈によって決まる意味を有し(例えば、特定の量の測定に伴う誤差の程度を含む);「任意選択の」または「任意選択で」とは、次いで記載される事象または状況が起っても起らなくてもよく、ならびに事象が起る場合と、事象が起らない場合とを含むことを意味し;ならびに、変形構造の明細の一部である「直接結合」とは、「直接結合」であると見なされる、変形構造より前、および後での置換基の直接結合を指す。
【0021】
本明細書では、化合物は、標準命名法を使用して記載される。2つの文字または記号の間にないダッシュ「-」は、置換基の結合点を示すように使用される。例えば、-CHOは、カルボニル(C=0)基の炭素を介して結合している。単数形「1つの」、「1つの」、および「その」は、文脈がそうでないと明言しない限り複数の指示対象を含む。同じ特徴または成分を記述する全ての範囲の端点は、独立に合わせることが可能であり、記述された端点を含む。参考文献は全て、参照により本明細書に組み込まれている。本明細書中の「第1の」、「第2の」などの用語は、いかなる順序、量または重要性をも示すものではなく、1つの要素を他から区別するために使用される。
【0022】
一実施形態では、本開示は、β-水素を含まないカーボネート反復単位を含むポリカーボネートを提供する。他の実施形態では、開発形態は、かかるポリカーボネートを含む熱可塑性組成物を提供する。非限定的なβ-水素の例として、以下に例示するように、ヒドロキシル基、クロロホルメート基、またはカーボネート基を備える炭素原子に隣接する炭素原子に結合する水素が挙げられる。
【0023】
【化8】

【0024】
ポリカーボネートは式(H-1)のカーボネート構造反復単位を含む
【0025】
【化9】

【0026】
[式中、Rhは、式(H-2)を有する基である
【0027】
【化10】

【0028】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、およびR28は、独立に、水素、C1〜C6アルキル基、またはハロゲン置換C1〜C6アルキル基である)]。
【0029】
一実施形態では、式(H-2)のR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、およびR28はそれぞれ、水素であり、式(H-3)のカーボネート構造反復単位を含むポリカーボネートを与える。
【0030】
【化11】

【0031】
式(H-3)の単位などの式(H-1)の単位に加えて、ポリカーボネートは、式(1)のカーボネート構造反復単位をさらに含み得る
【0032】
【化12】

【0033】
[式中、R1基は、任意の芳香族基、任意の脂環状基、および式(H-2)の基以外の脂肪族基から選択し得る]。一実施形態では、RhおよびR1基の総数の少なくとも60%は、芳香族有機基である。
【0034】
他の実施形態では、R1は、芳香族有機基、例えば、次式(2)の基である
【0035】
【化13】

【0036】
[式中、A1およびA2はそれぞれ、単環状で二価のアリール基であり、Y1は、A1をA2から隔てる1つもしくは2つの原子を有するは架橋基である]。例示的な実施形態では、1原子が、A1をA2から隔てる。この種の基の例示的な非限定例は、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O2)-、-C(O)-、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2-[2.2.1]-ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、およびアダマンチリデンである。架橋基Y1は、メチレン、シクロヘキシリデン、またはイソプロピリデンなどの炭化水素基もしくは飽和炭化水素基でよい。
【0037】
さらなる実施形態では、本開示は、ヒドロキシピバル酸ヒドロキシピバリルに基づく脂肪族/芳香族ポリカーボネートを提供する。
【0038】
さらなる他の実施形態では、式(H-3)の単位などの式(H-1)の単位に加えて、ポリカーボネートは、式(A-1)のカーボネート構造反復単位をさらに含み得る
【0039】
【化14】

【0040】
[式中、Y1、A1およびA2は上記の通りである]。
【0041】
ポリカーボネートは、式HO-Rh-OH含み、Rhが上記のように、
【0042】
【化15】

【0043】
[式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、およびR28は、上記の通りである。]
を含むジヒドロキシ化合物の界面反応を介して製造し得る。
【0044】
一実施形態では、ポリカーボネートは、式(H-5)
【0045】
【化16】

【0046】
を有するジヒドロキシ化合物であるヒドロキシピバル酸ヒドロキシピバリル(HPHP)の界面反応を介して製造し得る。
【0047】
他の実施形態では、ポリカーボネートは、式(3)
【0048】
【化17】

【0049】
[式中、Y1、A1およびA2は上記の通りである。]
のジヒドロキシ化合物を含む式HO-R1-OHを有するジヒドロキシ化合物と一緒に、Rhが上記の通りである式HO-Rh-OHを有するジヒドロキシ化合物の界面反応を介して製造し得る。
【0050】
さらなる他の実施形態では、ポリカーボネートは、一般式(4)
【0051】
【化18】

【0052】
[式中、RaおよびRbはそれぞれ、ハロゲン原子または一価の炭化水素基を表し、同じでも異なっていてもよく;pおよびqは、それぞれ独立に、0から4の整数であり;Xaは、式(5)の基のうちの1つを表す
【0053】
【化19】

【0054】
(式中、RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、または一価の直鎖もしくは環状炭化水素基を表し、Reは、二価の炭化水素基である)。]
のビスフェノール化合物と一緒に、Rhが上記の通りである式HO-Rh-OHを有するジヒドロキシ化合物の界面反応を介して製造し得る。
【0055】
さらに他の実施形態では、ポリカーボネートは、一般式(B-1)
【0056】
【化20】

【0057】
[式中、G1は、それぞれの出現において独立に、C6〜C20芳香族基であり;Eは、それぞれの出現において独立に、結合、C3〜C20脂環状基、C3〜C20芳香族基、C1〜C20脂肪族基、イオウ含有結合基、セレン含有結合基、リン含有結合基、または酸素原子であり;「t」は1以上の数であり;「s」は0または1のいずれかであり;および「u」は0を含む整数である。]
の1つまたは複数のビスフェノール化合物と一緒に、Rhが上記の通りである式HO-Rh-OHを有するジヒドロキシ化合物の界面反応を介して製造し得る。
【0058】
適切なジヒドロキシ化合物の一部の例示的な非限定的な例として以下が挙げられる: レゾルシノール; C1-3アルキル-置換レゾルシノール; 4-ブロモレゾルシノール、ヒドロキノン、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン; 2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(2-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)ブタン; 1,3-ビス[4-ヒドロキシフェニル-1-(1-メチルエチリジン)]ベンゼン; 1,4-ビス[4-ヒドロキシフェニル-1-(1-メチルエチリジン)]ベンゼン; 1,3-ビス[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル-1-(1-メチルエチリジン)]ベンゼン; 1,4-ビス[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル-1-(1-メチルエチリジン)]ベンゼン; 4,4'-ビフェノール; 2,2',6,8-テトラメチル-3,3',5,5'-テトラブロモ-4,4'-ビフェノール; 2,2',6,6'-テトラメチル-3,3',5-トリブロモ-4,4'-ビフェノール; 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-シアノエタン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジシアノメタン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-シアノ-1-フェニルメタン; 2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノルボルナン; 3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリド; 1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン; 1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロペノン; ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド; 4,4'-オキシジフェノール; 4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸; 4,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸; 2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸; 2,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン; 2-ビス(2ヒドロキシフェニル)メタン; ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン; ビス(4-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)メタン; ビス(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-3-メトキシフェニル)メタン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2-クロロフェニル)エタン; 2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール-A); 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン; 2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-t-ブチル-5-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-ブロモ-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-クロロ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3-ブロモ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3,5-ジソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3,5-ジフェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラクロロフェニル)プロパン; 2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラブロモフェニル)プロパン; 2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラメチルフェニル)プロパン; 2,2-ビス(2,6-ジクロロ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(2,6-ジブロモ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン; 2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)プロパン; 2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン; 2,2-ビス(3,5,3',5'-テトラクロロ-4,4'-ジヒドロキシフェニル)プロパン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン; 2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 4,4'-[ 1-メチル-4-(1-メチル-エチル)-1,3-シクロヘキサンジイル]ビスフェノール(1,3 BHPM); 4-[1-[3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルシクロヘキシル]-1-メチル-エチル]-フェノール(2,8 BHPM); 3,8-ジヒドロキシ-5a,10b-ジフェニルクマラノ-2',3',2,3-クマラン(DCBP); 2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリミジン; 1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3-ブロモ4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3-t-ブチル-5-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3-ブロモ-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3-クロロ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3-ブロモ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3,5-ジソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(3,5-ジフェニル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラクロロフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラブロモフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラメチルフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(2,6-ジクロロ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(2,6-ジブロモ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3-シクロ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3-t-ブチル-5-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3-ブロモ-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; ビス(3-クロロ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3-ブロモ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3,5-ジソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(3,5-ジフェニル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラクロロフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラブロモフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(2,6-ジクロロ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 1,1-ビス(2,6-ジブロモ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; 4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン; 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン; 1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン; 4,4'ジヒドロキシ-1,1-ビフェニル; 4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチル-1,1-ビフェニル; 4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジオクチル-1,1-ビフェニル; 4,4'-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール; 4,4'-ビス(3,5-ジメチル)ジフェノール; 4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル; 4,4'-ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン; 1.3-ビス(2-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-プロピル)ベンゼン; 1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン; 1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-プロピル)ベンゼン; 2,4'-ジヒドロキシフェニルスルホン; 4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン(BPS); ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン; 2,6-ジヒドロキシ ナフタレン; ヒドロキノン; 3-(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,3トリメチルインダン-5-オール; 1-(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン-5-オール; 4,4-ジヒドロキシジフェニルエーテル; 4,4-ジヒドロキシ-3,3-ジクロロジフェニルエーテル; 4,4-ジヒドロキシ-2,5-ジヒドロキシジフェニルエーテル; 4,4-チオジフェノール; 2,2,2',2'-テトラヒドロ-3,3,3',3'-テトラメチル-1,1'-スピロビ[1H-インデン]-6,6'-ジオール; ビス(4-ヒドロキシフェニル)アセトニトリル; ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド; ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン; 9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フッ素; 2,7-ジヒドロキシピレン; 6,6'-ジヒドロキシ-3,3,3',3'-テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」); 3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリド; 2,6-ジヒドロキシジベンゾ-p-ジオキシン; 2,6-ジヒドロキシチアントレン; 2,7-ジヒドロキシフェノキサチン; 2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジメチルフェナジン; 3,6-ジヒドロキシジベンゾフラン; 3,6-ジヒドロキシジベンゾチオフェン; 2,7-ジヒドロキシカルバゾール、など、ならびに前記ジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組合せ。
【0059】
式(4)によって表されるビスフェノール化合物の種類の特定の例として、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以後「ビスフェノールA」または「BPA」)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリミジン、2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリミジン(PPPBP)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BPI)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)が挙げられる。前記ジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組合せも使用し得る。
【0060】
一実施形態では、式(H-3)の単位などの式(H-1)の単位に加えて、ポリカーボネートは、式(A-2)
【0061】
【化21】

【0062】
[式中、p、q、Ra、RbおよびXaは上記の通りである。]
のカーボネート構造反復単位をさらに含み得る。
【0063】
さらなる実施形態では、ポリカーボネートは、式(H-3)の単位などの式(H-1)の単位に加えて、式(A-3)のカーボネート構造反復単位をさらに含み得る。
【0064】
【化22】

【0065】
さらなる実施形態では、ポリカーボネートは、式(H-3)の単位などの式(H-1)の単位に加えて、式(A-4)のカーボネート構造反復単位をさらに含み得る。
【0066】
【化23】

【0067】
よりさらなる実施形態では、本開示のポリカーボネートは、約0.1重量%から約40重量%の式(H-3)の反復単位などの式(H-1)の反復単位と、約60重量%から約99.9重量%の式(A-3)および/または(A-4)の反復単位などの式(A-1)の反復単位とを含む。
【0068】
よりさらなる実施形態では、本開示のポリカーボネートは、約2重量%から約20重量%の式(H-3)の反復単位などの式(H-1)の反復単位と、約80重量%から約98重量%の式(A-3)および/または(A-4)の反復単位などの式(A-1)の反復単位とを含む。
【0069】
一実施形態では、本開示のポリカーボネートは、約3重量%から約10重量%の式(H-3)の反復単位などの式(H-1)の反復単位と、約90重量%から約97重量%の式(A-3)および/または(A-4)の反復単位などの式(A-1)の反復単位とを含む。
【0070】
分枝ポリカーボネート、および線状ポリカーボネートと分枝ポリカーボネートのブレンドも有用である。分枝ポリカーボネートは、重合中に分枝剤を添加することによって調製し得る。これらの分枝剤として、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル、および前記官能基の混合物から選択される少なくとも3つの官能基を含有する多官能性有機化合物が挙げられる。具体的な例として、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸トリクロリド、トリス-p-ヒドロキシフェニルエタン、イサチン-ビスフェノール、トリスフェノールTC(1,3,5-トリス((p-ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリスフェノールPA(4(4(1,1-ビス(pーヒドロキシフェニル)-エチル)α,α-ジメチルベンジル)フェノール)、4-クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸、およびベンゾフェノンテトラカルボン酸が挙げられる。分枝剤は、ポリカーボネートの0.05から2.0重量%の濃度で添加し得る。ポリカーボネート末端基の種類は全て、こうした末端基が、ポリカーボネート生成物の所望の特性に著しい影響を与えないという条件で、ポリカーボネート中で有用であると企図されている。
【0071】
試料濃度1mg/mlで架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを使用してゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定し、ポリカーボネート標準で較正した場合、ポリカーボネートは、約15,000から約100,000、詳細には約16,000から約60,000、最も詳細には約17,000から約40,000の重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0072】
ポリカーボネートは、ASTM D1003-00に従って、厚さ3.18mmで測定した場合、55%以上、詳細には、60%以上、より詳細には、70%以上の光透過率を有し得る。ポリカーボネートは、ASTM D1003-00に従って、厚さ3.18mmで測定した場合、30%以下、詳細には、20%以下、最も詳細には、10%以下のヘイズをも有し得る。
【0073】
一実施形態では、ポリカーボネートは、薄い物品を製造するのに適した流動特性を有する。メルトボリュームフローレート(MVRと略称することが多い)では、所定の温度および負荷におけるオリフィスからの熱可塑性プラスチックの押出速度が測定される。薄い物品を形成するのに適したポリカーボネートは、ASTM D1238-04に従って250℃/1.2kgで測定した場合、0.1から100立方センチメートル/10分(cc/10分)のMVRを有し得る。特定の実施形態では、適切なポリカーボネート組成物は、ASTM D1238-04に従って250℃/1.2kgで測定した場合、0.1から100cc/10分、詳細には、0.5から50cc/10分、より詳細には、1から35cc/10分のMVRを有する。様々な流動特性のポリカーボネートの混合物を使用することによって全体として所望の流動特性を実現し得る。
【0074】
本開示のポリカーボネートは、カーボネート鎖単位と他の単位とを含むコポリマーを含み得る。適切な特定のコポリマーは、コポリエステル-ポリカーボネートおよびポリエステル-カーボネートとも呼称されるポリエステル-ポリカーボネートである。ポリカーボネートとポリエステル-ポリカーボネートの組合せも使用し得る。本明細書では、「組合せ」は、混合物、ブレンド、アロイ、反応生成物など全てを含む。
【0075】
一実施形態では、ポリエステルーポリカーボネートは、式(H-1)および式(1)のカーボネート鎖の反復単位に加えて、式(6)の反復単位を含有する
【0076】
【化24】

【0077】
[式中、Dは、ジヒドロキシ化合物から誘導される二価基であり、例えば、C2〜10アルキレン基、C6〜20脂環状基、C6〜20芳香族基、または、その中でアルキレン基が炭素原子2から6個、詳細には、炭素原子2、3、または4個を含有するポリオキシアルキレン基でよく;およびTは、ジカルボン酸から誘導される二価基であり、例えば、C2〜10アルキレン基、C6〜20脂環状基、C6〜20アルキル芳香族基、またはC6〜20芳香族基でよい]。
【0078】
一実施形態では、Dは、C2〜6アルキレン基である。他の実施形態では、Dは、式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される
【0079】
【化25】

【0080】
[式中、Rfは、独立に、ハロゲン原子、C1〜10炭化水素基、またはC1〜10ハロゲン置換炭化水素基であり、nは、0から4である]。ハロゲンは通常臭素である。式(7)で表し得る化合物の例として、レゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、5-エチルレゾルシノール、5-プロピルレゾルシノール、5-ブチルレゾルシノール、5-t-ブチルレゾルシノール、5-フェニルレゾルシノール、5-クミルレゾルシノール、2,4,5,6-テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6-テトラブロモレゾルシノールなどの置換レゾルシノール化合物;カテコール;ヒドロキノン;2-メチルヒドロキノン、2-エチルヒドロキノン、2-プロピルヒドロキノン、2-ブチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2-フェニルヒドロキノン、2-クミルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラ-t-ブチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6-テトラブロモヒドロキノンなどの置換ヒドロキノン;または前記化合物の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。
【0081】
ポリエステルを調製するのに使用し得る芳香族ジカルボン酸の例として、イソフタルまたはテレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4'-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'-ビス安息香酸、および前記酸の少なくとも1つを含む混合物が挙げられる。1,4-、1,5-、または2,6-ナフタレンジカルボン酸などの縮合環を含有する酸も存在し得る。特定のジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはそれらの混合物である。特定のジカルボン酸は、イソフタル酸とテレフタル酸の混合物を含み、テレフタル酸とイソフタル酸の重量比は、91:1から2:98である。他の特定の実施形態では、Dは、C2〜6アルキレン基であり、Tは、p-フェニレン、m-フェニレン、ナフタレン、二価の脂環状基、またはそれらの混合物である。この種類のポリエステルとして、ポリ(テレフタル酸アルキレン)が挙げられる。
【0082】
他の実施形態では、式(1)のカーボネート単位は、式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導することもでき、特定のカーボネート単位は、レゾルシノールカーボネート単位である。
【0083】
詳細には、ポリエステル-ポリカーボネートのポリエステル単位は、イソフタル二酸とテレフタル二酸の組合せ(またはそれらの誘導体)と、レゾルシノール、ビスフェノールA、またはこれらの1つまたは複数を含む組合せとの反応から誘導でき、イソフタレート単位とテレフタレート単位のモル比は、91:9から2:98、詳細には85:15から3:97、より詳細には80:20から5:95、さらにより詳細には70:30から10:90である。ポリカーボネートが、レゾルシノールおよび/またはビスフェノールAから誘導される単位を含む場合、レゾルシノールカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位のモル比は、0:100から99:1であってよく、ポリエステルーポリカーボネート中の混合イソフタレート-テレフタレートポリエステル単位とポリカーボネート単位のモル比は、1:99から99:1、詳細には5:95から90:10、より詳細には10:90から80:20であってよい。ポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートのブレンドを使用する場合、ブレンド中のポリカーボネ-トとポリエステルーポリカーボネートの比は、それぞれ、1:99から99:1、詳細には10:90から90:10であってよい。
【0084】
ポリエステル-ポリカーボネートは、1,500から100,000、詳細には、1,700から50,000、より詳細には、2,000から40,000の重量平均分子量(Mw)を有し得る。分子量の測定は、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して、ポリカーボネート参照で較正して行われる。試料は、約1mg/mlの濃度で調製され、約1.0ml/分の流速で溶離される。
【0085】
適切なポリカーボネートは、界面重合および溶融重合などの方法によって製造し得る。界面重合に対する反応条件は、変更し得るが、例示的な方法は、一般に、二価フェノール反応物質をカセソーダまたは炭酸カリウム水溶液に溶解または分散させるステップと、生成混合物を適切な水不混和性溶媒媒体に加えるステップと、pHを制御した条件、例えば、8から11で、トリエチルアミンや相間移動触媒などの適切な触媒の存在で、反応物質をカーボネート前駆体と接触させるステップとを含む。最も普通に使用される、水不混和性溶媒として、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンなどが挙げられる。適切なカーボネート前駆体として、例えば、臭化カルボニルや塩化カルボニルなどのハロゲン化カルボニル、または二価フェノールのビスハロホルメート(例えば、ビスフェノールA、ヒドロキノンなどのビスクロロホルメート)やグリコール(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなどのビスハロホルメート)などのハロホルメートが挙げられる。前記の種類のカーボネート前駆体の少なくとも1つを含む組合せも使用し得る。
【0086】
さらなる実施形態では、以下に示される式(H-6)のHPHPのビスクロロホルメート(BCF)は、ポリカーボネートの調製において使用される。チューブ反応器を使用することによって、高収率および低コストで、HPHPを転換してそのビスクロロホルメートにすることができる。精製または単離をすることなく、生成したHPHP BCFは、標準的な界面重合内に直接供給され、それを本開示の脂肪族/芳香族ポリカーボネート中に組み込み得る。
【0087】
【化26】

【0088】
連鎖停止剤(キャッピング剤とも呼称される)を重合中に含ませてもよい。連鎖停止剤は、分子量成長速度を制限し、それによってポリカーボネートの分子量を制御する。連鎖停止剤は、モノフェノール化合物、塩化モノカルボン酸、および/またはモノクロロホルメートのうちの少なくとも1つであってよい。
【0089】
例えば、連鎖停止剤として適切なモノフェノール化合物として、フェノール、C1〜C22アルキル置換フェノール、p-クミルフェノール、p-第三級ブチルフェノール、ヒドロキシジフェニルなどの単環状フェノール;p-メトキシフェノールなどのジフェノールのモノエーテルが挙げられる。アルキル置換フェノールとして、炭素原子8から9個を有する分枝鎖アルキル置換基を含むフェノールが挙げられる。モノフェノールUV吸収剤をキャッピング剤として使用してもよい。そうした化合物として、4-置換-2-ヒドロキシベンゾフェノンおよびその誘導体、サリチル酸アリール、レゾルシノールモノベンゾアート、2-(2-ヒドロキシアリール)ベンゾトリアゾールおよびそれらの誘導体などのジフェノールのモノエステル、2-(2-ヒドロキシアリール)-1,3,5-トリアジンおよびその誘導体などが挙げられる。詳細には、モノフェノール連鎖停止剤として、フェノール、p-クミルフェノール、および/またはレゾルシノールモノベンゾアートが挙げられる。
【0090】
塩化モノカルボン酸も連鎖停止剤として適切であり得る。これらとして、塩化ベンゾイル、C1〜C22アルキル置換塩化ベンゾイル、塩化トルオイル、ハロゲン置換塩化ベンゾイル、塩化ブロモベンゾイル、塩化シンナモイル、塩化4-ナドイミドベンゾイル、およびそれらの混合物などの単環状塩化モノカルボン酸;塩化トリメリト酸無水物、および塩化ナフトイルなどの多環状塩化モノカルボン酸;単環状および多環状塩化モノカルボン酸の混合物が挙げられる。炭素原子最高22個を有する脂肪族モノカルボン酸の塩化物は、適切である。塩化アクリロイルおよび塩化メタクリロイルなどの脂肪族モノカルボン酸の官能化塩化物も適切である。フェニルクロロホルメート、アルキル置換フェニルクロロホルメート、p-クミルフェニルクロロホルメート、トルエンクロロホルメート、およびそれらの混合物などの、単環状モノクロロホルメートを含めてのモノクロロホルメートも適切である。
【0091】
さらなる他の実施形態では、ポリエステル-ポリカーボネートは、界面重合によって調製し得る。ジカルボン酸を利用するのではなく、対応する酸ハロゲン化物、特に二塩化酸および二臭化酸などの酸の反応性誘導体を用いることが可能であり、好ましくさえある場合がある。従って、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、またはそれらの混合物を使用する代わりに、二塩化イソフタロイル、二塩化テレフタロイル、およびそれらの混合物を用いることが可能である。
【0092】
使用し得る相間移動触媒の中でも、式(R3)4Q+Xの触媒が存在する
[式中、それぞれのR3は、同じでも異なっていてもよく、C1〜10アルキル基であり;Qは、窒素またはリン原子であり;およびXは、ハロゲン原子、またはC1〜8アルコキシ基、またはC6〜18アリールオキシ基である]。適切な相間移動触媒として、例えば、[CH3(CH2)3]4NX、[CH3(CH2)3]4PX、[CH3(CH2)5]4NX、[CH3(CH2)6]4NX、[CH3(CH2)4]4NX、CH3[CH3(CH2)3]3NX、およびCH3[CH3(CH2)2]3NXが挙げられ、Xは、Cl-、Br-、C1〜8アルコキシ基、またはC6〜18アリールオキシ基が挙げられる。一実施形態では、相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化用混合物中のビスフェノールの重量に対して0.1から10重量%であってよい。他の実施形態では、相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化用混合物中のビスフェノールの重量に対して0.5から2重量%であってよい。
【0093】
あるいは、溶融法を使用することによってポリカーボネートを作製することもできる。一般に、溶融重合法では、ポリカーボネートは、バンバリー(登録商標)ミキサー、2軸押出機などにおいてエステル交換触媒の存在下、溶融状態でジヒドロキシ反応物質(複数可)と、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートエステルとを共反応させることにより均一な分散物を形成することによって調製し得る。揮発性一価フェノールは、蒸留によって溶融反応物質から除去され、ポリマーは、溶融残渣として単離される。
【0094】
ポリカーボネート、ポリエステル-ポリカーボネート、および上記のこれらのものの組合せに加えて、ポリカーボネートおよびポリエステル-ポリカーボネートと、他の熱可塑性ポリマー、例えば、ポリカーボネートおよび/またはポリカーボネートコポリマーとポリエステルとの組合せを使用することも可能である。
【0095】
一実施形態では、本開示の熱可塑性組成物は、(i)式(H-3)の単位などの式(H-1)の反復単位を含むポリカーボネートと、(ii)ポリエステルとを含む。
【0096】
さらなる実施形態では、本開発の熱可塑性組成物は、(i)式(H-3)の単位などの式(H-1)の反復単位、および式(A-2)単位、式(A-3)単位、および式(A-4)単位などの式(A-1)の反復単位を含むポリカーボネートと、(ii)ポリエステルとを含む。
【0097】
適切なポリエステルは、式(6)の反復単位を含み、例えば、ポリ(アルキレンジカルボキシラート)、液晶性ポリエステル、およびポリエステルコポリマーであってよい。その中に、分枝剤、例えば、3個以上のヒドロキシル基を有するグリコール、または三官能性もしくは多官能性カルボン酸が組み込まれている分枝ポリエステルを使用することも可能である。さらに、組成物の究極の最終使用に応じて、多様な濃度の酸およびヒドロキシル末端基をポリエステル上に有することが望ましい場合もある。
【0098】
有用な種類のポリエステルの例は、ポリ(アルキレンテレフタレート)である。特定のポリ(アルキレンテレフタレート)の例として、限定されないが、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4ーブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンナフタノエート)(PEN)、ポリ(ブチレンナフタノエート)(PBN)、(ポリプロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、および前記ポリエステルの少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。ポリマーが50モル%以上のポリ(エチレンテレフタラート)を含み、PETGと略称されているポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)-コ-ポリ(エチレンテレフタレート)、およびポリマーが50モル%以上のポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)を含み、PCTGと略称されているポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタラート)ーコーポリ(エチレンテレフタラート)も有用である。上記のポリエステルは、ポリ(アルキレンシクロヘキサンジカルボキシラート)などの類似の脂肪族ポリエステルを含むことができ、その例は、ポリ(1,4ーシクロヘキシレンジメチレン-l,4-シクロヘキサンジカルボキシラート)(PCCD)である。コポリエステルを作製するために、脂肪族二酸および/または脂肪族ポリオールから誘導される、少量、例えば0.5から10重量%の単位を含む上記のポリエステルもまた企図されている。
【0099】
ポリカーボネートは、ポリシロキサン-ポリカーボネートとも呼称されるポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーをも含み得る。コポリマーのポリシロキサン(本明細書では「ポリジオルガノシロキサン」とも呼称される)ブロックは、式(8)のシロキサン反復単位(本明細書では「ジオルガノシロキサン単位」とも呼称される)を含む
【0100】
【化27】

【0101】
[式中、Rのそれぞれの出現は、同じでも異なっていてもよく、C1〜13一価有機基である]。例えば、Rは、独立に、Cl〜Cl3アルキル基、C1〜C13アルコキシ基、C2〜C13アルケニル基、C2〜C13アルケニルオキシ基、C3〜C6シクロアルキル基、C3〜C6シクロアルコキシ基、C6〜C14アリール基、C6〜C10アリールオキシ基、C7〜C13アリールアルキル基、C7〜C13アリールアルコキシ基、C7〜C13アルキルアリール基、またはC7〜C13アルキルアリールオキシ基であってよい。前記の基は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、あるいはそれらの組合せによって全部または一部ハロゲン化されていてもよい。前記R基の組合せは、同じコポリマー中で使用してもよい。
【0102】
式(8)中のDの値は、熱可塑性組成物中のそれぞれの成分の種類および相対量、組成物の所望の特性、および類似の考察事項に応じて広範囲に変わってもよい。一般に、Dは、平均値2から1,000、詳細には2から500、より詳細には5から100であってよい。一実施形態では、Dは、平均値10から75であり、さらなる他の実施形態では、Dは、平均値40から60である。Dがより小さい値、例えば、40未満では、比較的多量のポリカーボネート-ポリシロキサンコポリマーを使用することが望ましい場合がある。反対に、Dがより大きい値、例えば、40を超える場合では、比較的小量のポリカーボネート-ポリシロキサンコポリマーを使用することが必要である場合がある。
【0103】
第1および第2(またはそれを超える)のポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーの組合せを使用してもよく、第1コポリマーのDの平均値は、第2コポリマーのDの平均値未満である。
【0104】
一実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(9)の構造反復単位によって提供される
【0105】
【化28】

【0106】
[式中、Dは、上記で定義した通りであり;Rは、独立に、同じでも異なっていてもよく、上記で定義した通りであり;Arは、独立に、同じでも異なっていてもよく、置換または非置換C6〜C30アリーレン基であり、その結合は、芳香族部分に直接結合している]。式(9)中の適切なAr基は、C6〜C30ジヒドロキシアリーレン化合物、例えば、上記式(3)、(4)、または(7)のジヒドロキシアリーレン化合物から誘導してもよい。前記のジヒドロキシアリーレン化合物の少なくとも1つを含む組合せも使用し得る。適切なジヒドロキシアリーレン化合物の特定の例は、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニルスルフィド)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパンである。前記ジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組合せも使用し得る。
【0107】
式(9)の単位は、式(10)の対応するジヒドロキシ化合物から誘導し得る
【0108】
【化29】

【0109】
[式中、R、Ar、およびDは、上記の通りである]。式(10)の化合物は、相間移動条件下で、ジヒドロキシアリーレン化合物を、例えば、α、ω-ビスアセトキシポリジオルガノシロキサンと反応させることによって得ることができる。
【0110】
他の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(11)の単位を含み
【0111】
【化30】

【0112】
[式中、RおよびDは、上記の通りであり、R1の出現は、独立に、二価のC1〜C30アルキレンである]、重合ポリシロキサン単位は、その対応するジヒドロキシ化合物の反応残基である。特定の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(12)の反復構造単位によって提供される
【0113】
【化31】

【0114】
[式中、RおよびDは、上記で定義した通りである]。式(12)中のR2は、独立に、二価のC2〜C8脂肪族基である。式(12)中のそれぞれのMは、同じでも異なっていてもよく、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C8アルキルチオ、C1〜C8アルキル、Cl〜C8アルコキシ、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルケニルオキシ基、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8シクロアルコキシ、C6〜C10アリール、C6〜C10アリールオキシ、C7〜C12アリールアルキル、C7〜C12アリールアルコキシ、C7〜C12アルキルアリール、またはC7〜C12アルキルアリールオキシであってよく、nは、独立に、0、1、2、3、または4である。
【0115】
一実施形態では、Mは、ブロモまたはクロロ、メチル、エチルもしくはプロピルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシもしくはプロポキシなどのアルコキシ基、またはフェニル、クロロフェニルもしくはトリルなどのアリール基;R2は、ジメチレン、トリメチレン、またはテトラメチレン基である;および、Rは、C1〜8アルキル、トリフルオロプロピル、シアノアルキルなどのハロアルキル、あるいはフェニル,クロロフェニル、またはトリルなどのアリールである。他の実施形態では、Rは、メチル、またはメチルとトリフルオロプロピルの混合物、またはメチルとフェニルの混合物である。さらなる他の実施形態では、Mはメトキシ、nは1、R2は、二価のC1〜C3脂肪族基、およびRはメチルである。
【0116】
式(12)の単位は、対応するジヒドロキシポリジオルガノシロキサン(13)から誘導し得る
【0117】
【化32】

【0118】
[式中、R、D、M、R2、およびnは、上記の通りである]。かかるジヒドロキシポリシロキサンは、式(14)のシロキサンヒドリド間の白金触媒付加を促進することによって作製し得る
【0119】
【化33】

【0120】
[式中、RおよびDは、既に定義した通りであり、脂肪族部分が不飽和の一価フェノールである]。適切な脂肪族部分が不飽和の一価フェノールとして、例えば、オイゲノール、2-アリルフェノール、4-アリル-2-メチルフェノール、4-アリル-2-フェニルフェノール、4-アリル-2-ブロモフェノール、4-アリル-2-t-ブトキシフェノール、4-フェニル-2-フェニルフェノール、2-メチル-4-プロピルフェノール、2-アリル-4,6-ジメチルフェノール、2-アリル-4-ブロモ-6-メチルフェノール、2-アリル-6-メトキシ-4-メチルフェノール、および2-アリル-4,6-ジメチルフェノールが挙げられた。前記の少なくとも1つを含む混合物も使用し得る。
【0121】
一実施形態では、ポリシロキサン-ポリカーボネートは、50から99.95重量%のカーボネート単位と、0.05から50重量%のシロキサン単位とを含み得る。この範囲内において、ポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーは、70から99.95重量%、詳細には95から99.95重量%のカーボネート単位と、0.05から30重量%、詳細には0.05から5重量%のシロキサン単位とを含み得る。
【0122】
一実施形態では、ポリシロキサン-ポリカーボネートは、試料濃度1mg/mlで、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを用いてゲル浸透クロマトグラフィーによって測定し、ポリカーボネート標準で較正した場合、2,000から100,000、詳細には17,000から40,000の重量平均分子量を有し得る。
【0123】
上記で議論したように、β-水素が関与する熱分解脱離反応のために、脂肪族/芳香族ポリカーボネートは、通常、熱安定性が不十分である。熱安定性が著しく改良されたポリエステルおよびポリカーボネートは、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール(TMCBD)などのβ-水素を含まないネオアルコールから調製し得る。しかし、TMCBDが高コストであるために多数の用途に対してTMCBDは実際的でない。ネオペンチルグリコール(NPG)は、TMCBDより低コストのネオジオールであり、NPGのビスクロロホルメートが調製され、対応するBPAコポリカーボネートに転換されているが、NPGは、環状カーボネートを形成する傾向がある。さらに、NPGは、低分子量であり、ポリカーボネート中への組込みが可能になるためには大量のアミン受容体を必要とする。ヒドロキシピバル酸ヒドロキシピバリル(HPHP)は、材料のコスト/アミン必要量のより良好な組合せを提供する。HPHPは、環状化する傾向をほとんど有さず、NPGの約2倍のMwを有するので、有効な水準でポリマー中への組込みが可能になるために必要とされるアミン量が著しく減少する。
【0124】
他の実施形態では、本開示の熱可塑性組成物は、(i)式(H-3)単位などの式(H-1)反復単位を含むポリカーボネートと、(ii)加水分解用安定剤、衝撃改質剤、フィラー/補強材、視覚効果増強剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外光吸収剤、可塑剤、離型剤、潤滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、難燃剤、加工助剤、放射線安定剤、およびドリップ防止剤からなる群から選択される1つまたは複数の添加剤とを含む。
【0125】
よりさらなる実施形態では、本開示の熱可塑性組成物は、(i)式(H-3) 単位などの式(H-1)反復単位;および式(A-2)単位、式(A-3)単位、式(A-4)単位などの式(A-1)の反復単位を含むポリカーボネートと、(ii)加水分解用安定剤、衝撃改質剤、フィラー/補強材、視覚効果増強剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外光吸収剤、可塑剤、離型剤、潤滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、難燃剤、加工助剤、放射線安定剤、およびドリップ防止剤からなる群から選択される1つまたは複数の添加剤とを含む。
【0126】
多様な実施形態では、熱可塑性組成物中に通常組み込まれる添加剤は、熱可塑性組成物の所望の特性に悪い影響を及ぼさないように選択される。添加剤の混合物も使用し得る。かかる添加剤は、熱可塑性組成物を形成するための成分を混合する際、適切な時間混合し得る。
【0127】
熱可塑性組成物は、エステルおよび/またはカーボネート基の加水分解を低減するための1つまたは複数の加水分解用安定剤をさらに含み得る。通常の加水分解用安定剤として、2,2',6,6'-テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドのような位置2および2'で置換された芳香族および/または脂環状モノカルボージイミドなどのカルボジイミド系添加剤を挙げ得る。分子量が500グラム/モルを超えるポリカルボジイミドも適切である。加水分解用安定剤として有用な他の化合物として、エポキシ修飾アクリル酸オリゴマーまたはポリマー、および脂環状エポキシドに基づくオリゴマーが挙げられる。適切なエポキシ官能化安定剤の具体的な例として、Union Carbide Corporation (Dow Chemicalの子会社)、Danbury、CTから供給される脂環状エポキシド樹脂、ERL-4221;およびJohnson Polymer Inc、Sturtevant、WI.から入手可能なJONCRYL(登録商標)ADR-4300およびJONCRYL(登録商標)ADR-4368が挙げられる。存在する場合、加水分解用安定剤は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して0.05から1重量%、詳細には0.1から0.5重量%、より詳細には0.12から0.3重量%の量において使用し得る。
【0128】
熱可塑性組成物は、顔料および/または染料添加剤などの着色剤を含み得る。適切な顔料として、例えば、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物および混合金属酸化物などの無機顔料;硫化亜鉛などのスルフィド;アルミナート;ナトリウムスルホシリカート、スルファート、クロマートなど;カーボンブラック;亜鉛フェライト;ウルトラマリンブルー;茶色顔料24;赤色顔料101;黄色顔料119;アゾ、ジアゾ、キナクリドン、ペリレン、ナフタレンテトラカルボン酸、フラバントロン、イソインドリノン、テトラクロロイソインドリノン、アントラキノン、アンタントロン、ジオキサジン、フタロシアニン、およびアゾレーキなどの有機顔料;青色顔料60、赤色顔料122、赤色顔料149、赤色顔料177、赤色顔料179、赤色顔料202、紫色顔料29、青色顔料15、緑色顔料7、黄色顔料147、および、黄色顔料150、または前記顔料の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。存在する場合、顔料は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して0.01から10重量%の量において使用し得る。
【0129】
適切な染料は、有機材料でよく、例えば、クマリン460(青)、クマリン6(緑)、ナイル赤などのクマリン染料;ランタニド錯体;炭化水素および置換炭化水素染料;多環状芳香族炭化水素染料;オキサゾールまたはオキサジアゾール染料などの蛍光染料;アリール-またはヘテロアリール置換ポリ(C2〜8)オレフィン染料;カルボシアニン染料;インダントロン染料;フタロシアニン染料;オキサジン染料;カルボスチリル染料;ナフタレンテトラカルボン酸染料;ポルフィリン染料;ビス(スチリル)ビフェニル染料;アクリジン染料;アントラキノン染料;シアニン染料;メチン染料;アリールメタン染料;アゾ染料;インジゴイド染料、チオインジゴイド染料、ジアゾニウム染料;ニトロ染料;キノンイミン染料;アミノケトン染料;テトラゾリウム染料;チアゾール染料;ペリレン染料、ペリノン染料;ビスベンゾオキサゾリルチオフェン(BBOT);トリアリールメタン染料;キサンテン染料;チオキサンテン染料;ナフタルイミド染料;ラクトン染料;近赤外波長を吸収し、可視波長を発光するアンチストークスシフト染料などのフルオロフォア;7-アミノ-4-メチルクマリン; 3-(2'-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン; 2-(4-ビフェニリル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール; 2,5-ビス-(4-ビフェニリル)-オキサゾール; 2,2'-ジメチル-p-クアテルフェニル; 2,2-ジメチル-p-テルフェニル; 3,5,3'''',5''''-テトラ-t-ブチル-p-キンクフェニル; 2,5-ジフェニルフラン; 2,5-ジフェニルオキサゾール; 4,4'-ジフェニルスチルベン; 4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン; 1,1'-ジエチル-2,2'-カルボシアニンヨージド; 3,3'-ジエチル-4,4',5,5'-ジベンゾチアトリカルボシアニンヨージド; 7-ジメチルアミノ-1-メチル-4-メトキシ-8-アザキノロン-2; 7-ジメチルアミノ-4-メチルキノロン-2; 2-(4-(4-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジエニル)-3-エチルベンゾチアゾリウムペルクロレート; 3-ジエチルアミノ-7-ジエチルイミノフェノキサゾニウムペルクロレート; 2-(1-ナフチル)-5-フェニルオキサゾール; 2,2'-p-フェニレン-ビス(5-フェニルオキサゾール);などの発光染料;ローダミン700;ローダミン800;ピレン;クリセン;ルブレン;コロネンなど、または前記染料の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。存在する場合、染料は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの全重量に対して、0.01から10重量%の量において使用し得る。
【0130】
熱可塑性組成物は、その耐衝撃性を増加させるために衝撃改質剤を含み得、該衝撃改質剤は、熱可塑性組成物の所望の特性に悪い影響を与えない量において存在する。これらの衝撃改質剤は、(i)10℃未満、より詳細には-10℃未満、またはより詳細には-40℃から-80℃のTgを有するエラストマー性(すなわち、ゴム状の)ポリマー基材と、(ii)エラストマー性ポリマー基材にグラフト化された剛性ポリマースーパーストレート(superstrate)とを含むエラストマー修飾グラフトコポリマーを含む。周知のように、エラストマー修飾グラフトコポリマーは、最初にエラストマー性ポリマーを用意するステップと、次いでエラストマーの存在で剛性相の成分モノマー(複数可)を重合させることによってグラフトコポリマーを得るステップとによって調製し得る。グラフトは、エラストマーコアに対してグラフト分枝またはシェルとして結合し得る。シェルは、単に物理的にコアを封入してもよいし、あるいはシェルは、部分的もしくは基本的に完全にコアにグラフト化されてもよい。
【0131】
エラストマー相として使用するのに適した材料として、例えば、共役ジエンゴム;共役ジエンと50重量%未満の共重合可能なモノマーのコポリマー;エチレンプロピレンコポリマー(EPR)やエチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM)などのオレフィンゴム;エチレン-酢酸ビニルゴム;シリコーンゴム;エラストマー性(メタ)アクリル酸C1〜8アルキル;(メタ)アクリル酸C1〜8アルキルとブタジエンおよび/またはスチレンのエラストマー性コポリマー;または前記エラストマーの少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。
【0132】
エラストマー相を調製するために適した共役ジエンモノマーは、式(15)である
【0133】
【化34】

【0134】
[式中、Xbは、独立に、水素、C1〜C5アルキルなどである]。使用し得る共役ジエンモノマーの例は、ブタジエン、イソプレン、l,3-ヘプタジエン、メチル-l,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン;1,3-および2,4-ヘキサジエンなど、ならびに前記共役ジエンモノマーの少なくとも1つを含む混合物である。特定の共役ジエンホモポリマーとして、ポリブタジエンおよびポリイソプレンが挙げられる。
【0135】
共役ジエンゴムのコポリマー、例えば、共役ジエンとそれらと共重合可能な1つまたは複数のモノマーの水性ラジカルエマルジョン重合によって生成するものも使用し得る。ビニル芳香族化合物は、エチレン性不飽和ニトリルモノマーと共重合することによってコポリマーを形成することができ、ビニル芳香族化合物は、式(16)のモノマーを含み得る
【0136】
【化35】

【0137】
[式中、Xcは、独立に、水素、C1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C12アリール、C7〜C12アリールアルキル、C7〜C12アルキルアリール、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ、またはヒドロキシであり、Rは、水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロである]。使用し得る適切なモノビニル芳香族モノマーの例として、スチレン、3-メチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、4-n-プロピルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチルビニルトルエン、α-クロロスチレン、α-ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラクロロスチレンなど、および前記化合物の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。スチレンおよび/またはα-メチルスチレンは、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとして使用し得る。
【0138】
共役ジエンと共重合し得る他のモノマーは、イタコン酸、アクリルアミド、N-置換アクリルアミドまたはメタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイミド、N-アルキル-、アリール-、またはハロアリール置換マレイミド、(メタ)アクリル酸グリシジル、および一般式(17)のモノマーなどのモノビニルモノマーである
【0139】
【化36】

【0140】
[式中、Rは、水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロであり、Xcは、C1〜C12アルコキシカルボニル、C1〜C12アリールオキシカルボニル、ヒドロキシカルボニルなどである]。式(17)のモノマーの例として、アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなど、および前記モノマーの少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。アクリル酸n-ブチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸2-エチルヘキシルなどのモノマーは、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとして通常使用される。前記モノビニルモノマーとモノビニル芳香族モノマーの混合物も使用し得る。
【0141】
エラストマー相として使用するのに適した適切な(メタ)アクリラートモノマーは、(メタ)アクリル酸C1〜8アルキル、特にアクリル酸C4〜6アルキル、例えば、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2-エチルヘキシルなど、および前記モノマーの少なくとも1つを含む組合せの架橋した粒子状エマルジョンホモポリマーまたはコポリマーであってよい。(メタ)アクリル酸C1〜8アルキルモノマーは、最高15重量%の式(15)、(16)、または(17)のコモノマーとの混合において任意選択で重合し得る。コモノマーの例として、限定されないが、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸フェネチル、N-シクロヘキシルアクリルアミド、ビニルメチルエーテル、および前記コモノマーの少なくとも1つを含む混合物が挙げられる。任意選択で、最高5重量%の多官能性架橋コモノマー、例えば、ジビニルベンゼン、グリコールビスアクリラート、アルキレントリオールトリ(メタ)アクリラート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスアクリルアミド、トリアリルシアヌラート、トリアリルイソシアヌラート、(メタ)アクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、フマール酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、クエン酸のトリアリルエステル、リン酸のトリアリルエステルなど、ならびに前記架橋剤の少なくとも1つを含む組合せが、存在してよい。
【0142】
エラストマー相は、バルク-サスペンジョン、エマルジョン-バルク、バルク-溶液、または他の技法などのマス、エマルジョン、サスペンジョン、溶液、または組合せ法によって、連続、セミ回分式、または回分法を使用して重合し得る。エラストマー基材の粒径は、重要でない。エマルジョン系重合ゴムラテックスでは、例えば、0.001から25μm、詳細には0.01から15μm、さらにより詳細には0.1から8μmの平均粒径を使用し得る。バルク重合ゴム基材には、0.5から10μm、詳細には0.6から1.5μmの粒径を使用し得る。粒径は、簡単な光透過率法、または毛細管流体力学クロマトグラフィー(CHDF)によって測定し得る。エラストマー相は、粒状の中位架橋共役ブタジエン、またはC4〜6アルキルアクリレートゴムであってよく、好ましくは、ゲル含有量が70重量%を超える。ブタジエンと、スチレンおよび/またはC4〜6アルキルアクリレートゴムとの混合物も適している。
【0143】
エラストマー相は、全グラフトコポリマーの5から95重量%、より詳細には、エラストマー修飾グラフトコポリマーの20から90重量%、さらにより詳細には、40から85重量%を占めることができ、その残りは、剛性グラフト相である。
【0144】
エラストマー修飾グラフトコポリマーの剛性相は、1つまたは複数のエラストマー性ポリマー基材の存在で、モノビニル芳香族モノマーと、任意選択で1つまたは複数のコモノマーとを含む混合物をグラフト重合することによって形成し得る。スチレン、α-メチルスチレン、ジブロモスチレンなどのハロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ブチルスチレン、パラヒドロキシスチレン、メトキシスチレンなど、または前記モノビニル芳香族モノマーの少なくとも1つを含む組合せを含めての、式(16)の上記モノビニル芳香族モノマーが、剛性グラフト相において使用し得る。適切なコモノマーとして、例えば、上記のモノビニル性モノマーおよび/または一般式(17)のモノマーが挙げられる。一実施形態では、Rは、水素またはC1〜C2アルキルであり、Xcは、シアノまたはC1〜C12アルコキシカルボニルである。剛性相において使用するのに適したコモノマーの具体的な例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピルなど、および前記コモノマーの少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。
【0145】
剛性グラフト相におけるモノビニル芳香族モノマーとコモノマーの相対的な比は、エラストマー基材の種類、モノビニル芳香族モノマー(複数可)の種類、コモノマー(複数可)の種類、および衝撃改質剤の所望の特性に応じて、広範に変わり得る。剛性相は、一般に、最高100重量%のモノビニル芳香族モノマー、詳細には30〜100重量%、より詳細には50〜90重量%のモノビニル芳香族モノマーを含むことができ、残りはコモノマー(複数可)である。
【0146】
存在するエラストマー修飾ポリマーの量に応じて、非グラフト化剛性ポリマーまたはコポリマーの独立マトリックスまたは連続相は、エラストマー修飾グラフトコポリマーとともに同時に得ることができる。通常、かかる衝撃改質剤は、衝撃改質剤の全重量に対して、40から95重量%のエラストマー修飾グラフトコポリマーと、5から65重量%のグラフト(コ)ポリマーとを含む。他の実施形態では、かかる衝撃改質剤は、衝撃改質剤の全重量に対して、15から50重量%、より詳細には15から25重量%のグラフト(コ)ポリマーと一緒に、50から85重量%、より詳細には75から85重量%のゴム修飾グラフトコポリマーを含む。
【0147】
他の具体的な種類のエラストマー修飾衝撃改質剤は、シリコーンゴムモノマー、式H2C=C(Rd)C(O)OCH2CH2Reを有する分枝アクリレートゴムモノマーの少なくとも1つから誘導される構造単位を含み、Rdは、水素またはC1〜C8直鎖または分枝アルキル基であり、Reは、分枝C3〜C16アルキル基;第1のグラフトリンクモノマー;重合可能なアルケニル含有有機材料;および第2のグラフトリンクモノマーである。シリコーンゴムモノマーは、例えば、単独もしくは組合せで、環状シロキサン、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、(アクリロキシ)アルコキシシラン、(メルカプトアルキル)アルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、またはアリルアルコキシシラン、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはテトラエトキシシランを含むことができる。
【0148】
分枝アクリレートゴムモノマーの例として、単独または組合せで、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸6-メチルオクチル、アクリル酸7-メチルオクチル、アクリル酸6-メチルヘプチルなどが挙げられる。重合可能なアルケニル含有有機材料は、例えば、式(16)または(17)のモノマー、例えば、単独または組合せで、スチレン、α-メチルスチレン、またはメタアクリル酸メチル、メタアクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピルなどの非分枝(メタ)アクリレートでよい。
【0149】
少なくとも1つの第1のグラフトリンクモノマーは、単独または組合せで、(アクリロキシ)アルコキシシラン、(メルカプトアルキル)アルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、またはアリルアルコキシシラン、例えば、(γ-メタクリロキシプロピル)(ジメトキシ)メチルシランおよび/または(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランであってよい。少なくとも1つの第2のグラフトリンクモノマーは、単独または組合せで、メタクリル酸アリル、トリアリルシアヌラート、またはトリアリルイソシアヌラートなどの少なくとも1つのアリル基を有するポリエチレン性不飽和化合物である。
【0150】
シリコーン-アクリレート衝撃改質剤組成物は、エマルジョン重合によって調製することができ、例えば、少なくとも1つのシリコーンゴムモノマーを、ドデシルベンゼンスルホン酸などの界面活性剤の存在で、30℃から110℃の温度で少なくとも1つの第1のグラフトリンクモノマーと反応させることによってシリコーンゴムラテックスを形成する。あるいは、シクロオクタメチルテトラシロキサンおよびテトラエトキシオルトシリケートなどの環状シロキサンを(γ-メタクリロキシプロピル)メチルジメトキシシランなどの第1のグラフトリンクモノマーと反応させることによって100nmから2μmの平均粒径を有するシリコーンゴムを得ることもできる。次いで、少なくとも1つの分枝アクリレートゴムモノマーは、過酸化ベンゾイルなどのフリーラジカル発生重合触媒の存在で、任意選択でメタクリル酸アリルなどの架橋モノマーの存在で、シリコーンゴム粒子と重合させる。次いで、このラテックスは、重合可能なアルケニル含有有機材料および第2のグラフトリンクモノマーと反応させる。グラフトシリコーン-アクリレートゴムハイブリッドのラテックス粒子は、凝固(凝固剤による処理によって)を介して水相から分離し、微粉末になるまで乾燥させることによってシリコーン-アクリレートゴム衝撃改質剤組成物を生成することができる。この方法は、100nmから2μmの粒径を有するシリコーン-アクリレート衝撃改質剤を生成するために一般に使用し得る。
【0151】
前記エラストマー修飾グラフトコポリマーを形成するための周知の方法として、連続、セミ回分式、または回分法を使用する、バルク-サスペンジョン、エマルジョン-バルク、バルク-溶液、または他の技法などのマス、エマルジョン、サスペンジョン、および溶液法が挙げられる。
【0152】
SANコポリマーを含めての前記の種類の衝撃改質剤は、C6〜30脂肪酸のアルカリ金属塩、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなど;アルカリ金属炭酸塩、ドデシルジメチルアミン、ドデシルアミンなどのアミン;およびアミンのアンモニウム塩などの塩基性材料を含まないエマルジョン重合法によって調製し得る。かかる材料は、エマルジョン重合において界面活性剤として通常使用され、ポリカーボネートのエステル交換および/または劣化を触媒し得る。代わりに、イオン性スルファート、スルホナート、またはホスファート界面活性剤が、衝撃改質剤、特に衝撃改質剤のエラストマー性基材部分を調製する際に使用し得る。適切な界面活性剤として、例えば、スルホン酸C1〜22アルキルまたはC7〜25アルキルアリール、硫酸C1〜22アルキルまたはC7〜25アルキルアリール、リン酸C1〜22アルキルもしくはC7〜25アルキルアリール、置換シリカート、およびそれらの混合物が挙げられる。具体的な界面活性剤は、スルホン酸C6〜16アルキル、詳細にはスルホン酸C8〜12アルキルである。実用上、脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ金属炭酸塩、および他の塩基性材料を含まなければ、任意の上記衝撃改質剤が使用し得る。
【0153】
この種の具体的な衝撃改質剤は、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン(MBS)衝撃改質剤であり、ブタジエン基材は、界面活性剤として上記のスルホナート、スルファート、またはホスファートを使用して調製される。ABSおよびMBSの他に、エラストマー修飾グラフトコポリマーの他の例として、限定されないが、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸ブチル(ASA)、メタクリル酸メチル-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)、およびアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン(AES)が挙げられる。
【0154】
存在する場合、衝撃改質剤は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.1から30重量%の量において存在し得る。
【0155】
熱可塑性組成物は、フィラーまたは補強剤を含み得る。使用される場合、適切なフィラーまたは補強剤として、例えば、ケイ酸アルミニウム(ムライト)、合成ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、黒鉛、天然ケイ砂などのケイ酸塩およびシリカ粉末;窒化ホウ素粉末、ホウ素-シリケート粉末などのホウ素粉末;TiO2、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの酸化物;硫酸カルシウム(その無水物、二水和物または三水和物として);チョーク、石灰石、大理石、合成沈降性炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム;繊維状、モジュラー状、針状、層状タルクなどを含めてのタルク;ウォラストナイト;表面処理ウォラストナイト;中空および密実ガラス球、シリケート球、セノ球、アルミノシリケート(アルモ球)などのガラス球;硬質カオリン、軟質カオリン、仮焼カオリン、ポリマーマトリックス樹脂との適合性を促進するための当技術分野で周知の多様な被覆を含むカオリンなどを含めてのカオリン;炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、鉄、ニッケル、銅などの単結晶繊維または「ウイスカー」;アスベスト、炭素繊維、E、A、C、ECR、R、S、D、またはNEガラスなどのガラス繊維などの繊維(連続およびチョップド繊維を含めて);硫化モリブデン、硫化亜鉛などのスルフィド;チタン酸バリウム、バリウムフェライト、硫酸バリウム、重晶石などのバリウム化合物;粒状または繊維状アルミニウム、ブロンズ、亜鉛、銅およびニッケルなどの金属および金属酸化物;ガラスフレーク、フレーク状炭化ケイ素、二ホウ化アルミニウム、アルミニウムフレーク、スチールフレークなどのフレーク状フィラー;繊維状フィラー、例えば、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、および硫酸カルシウム半水和物などの少なくとも1つを含むブレンドから誘導されるものなどの無機短繊維;木材を粉砕することによって得られる木材粉などの天然フィラーおよび補強材、セルロース、綿、サイザル麻、ジュート、デンプン、コルク粉、リグニン、粉砕ナッツ殻、コーン、米のモミ穀などの繊維状生成物;ポリテトラフルオロエチレンなどの有機フィラー;ポリ(エーテルケトン)、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエステルス、ポリエチレン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル酸樹脂、ポリ(ビニルアルコール)などの繊維の形成が可能な有機ポリマーから形成される補強用有機繊維状フィラー;ならびに雲母、粘土、長石、煙道ダスト、フィライト、石英、ケイ岩、パーライト、トリポリ、珪藻土、カーボンブラックなどの追加のフィラーおよび補強剤、または前記フィラーまたは補強剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。
【0156】
フィラーおよび補強剤は、導電性を増進するために金属材料の層によって被覆、あるいは、ポリマー性マトリックス樹脂に対する接着性および分散性を改善するためにシランによって表面処理してもよい。さらには、補強用フィラーは、モノフィラメントもしくはマルチフィラメント繊維の形態で供給してもよく、単独で、または、例えば、共織りまたはコア/シース、サイド-バイ-サイド、オレンジタイプまたはマトリックスおよびフィブリル構造、あるいは繊維製造の技術分野で当業者に周知の他の方法を介して他の種類の繊維と組み合わせて使用し得る。適切な共織り構造として、例えば、ガラス繊維-カーボン繊維、カーボン繊維-芳香族ポリイミド(アラミド)繊維、および芳香族ポリイミドファイバーガラス繊維などが挙げられる。繊維状フィラーは、例えば、0〜90度織物などのロービング、繊維状強化織物;連続ストランドマット、チョップドストランドマット、ティッシュー、紙およびフェルトなどの不織繊維状補強材;または組みひもなどの三次元補強材の形態で供給し得る。存在する場合、フィラーは、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0から90重量%の量において使用し得る。
【0157】
視覚効果用添加剤または視覚効果用顔料と呼称される場合もある視覚効果向上剤は、封入形態で、非封入形態で、またはポリマー樹脂を含む粒子にラミネートされて存在し得る。視覚効果用添加剤の一部の非限定例は、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼、硫化ニッケル、硫化コバルト、硫化マンガン、金属酸化物、白雲母、黒雲母、真珠雲母、合成雲母、二酸化チタン被覆雲母、金属被覆ガラスフレーク、および限定されないが、ペリレン赤を含めての着色剤である。視覚効果用添加剤は、高または低アスペクト比でよく、1を超えるファセットを含んでよい。青色溶媒35、青色溶媒36、紫色分散26、緑色溶媒3、アナプラスト(Anaplast)オレンジLFP、ペリレン赤、モルプラス(Morplas)赤36などの染料を用いることができる。限定されないが、Permanent Pink R(Clariant CorporationからのColor Index Pigment Red 181)、Hostasol Red 5B(Clariant CorporationからのColor Index #73300、CAS # 522-75-8)、およびMacrolex Fluorescent Yellow 10GN(Bayer CorporationからのColor Index Solvent Yellow 160:1)を含めての蛍光染料も用いることができる。二酸化チタン、硫化亜鉛、カーボンブラック、クロム酸コバルト、チタン酸コバルト、硫化カドミウム、酸化鉄、ナトリウムアルミニウムスルホシリケート、ナトリウムスルホシリケート、クロムアンチモンチタンルチル、ニッケルアンチモンチタンルチル、酸化亜鉛などの顔料も用いることができる。封入形態の視覚効果用添加剤は、通常、ポリマーで封入されたアルミニウムフレークのような高アスペクト比材料などの視覚効果材料を含む。封入視覚効果用添加剤は、ビーズ形状である。存在する場合、視覚効果向上剤は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.01から10重量%の量において使用し得る。
【0158】
適切な酸化防止剤として、例えば、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)、亜リン酸トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスフィット、ジステアリルペンタエリトリトールジホスフィットなどのオルガノ亜リン酸;アルキル化モノフェノールまたはポリフェノール;ポリフェノールとテトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタンなどのジエンのアルキル化反応生成物;パラクレゾールまたはジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物;アルキル化ヒドロキノン;ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル;アルキリデン-ビスフェノール;ベンジル化合物;β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールのエステル;β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールのエステル;チオプロピオン酸ジステアリル、チオプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジトリデシル、プロピオン酸オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)、プロピオン酸ペンタエリトリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ- tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)などのチオアルキルまたはチオアリール化合物のエステル;プロピオン酸β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)のアミドなど、あるいは前記酸化防止剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。存在する場合、酸化防止剤は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.0001から1重量%の量において使用し得る。
【0159】
適切な熱安定剤として、例えば、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス-(2,6-ジメチルフェニル)、亜リン酸トリス-(混合モノ-およびジノニルフェニル)などのオルガノ亜リン酸;ホスホン酸ジメチルベンゼンなどのホスホナート;リン酸トリメチルなどのホスファート;または前記熱安定剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。存在する場合、熱安定剤は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.0001から1重量%の量において使用し得る。
【0160】
光安定剤および/または紫外光(UV)吸収剤も使用し得る。適切な光安定剤として、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、および2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾトリアゾール、または前記光安定剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。存在する場合、光安定剤は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.0001から1重量%の量において使用し得る。
【0161】
適切なUV吸収剤として、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン;ヒドロキシベンゾトリアゾール;ヒドロキシベンゾトリアジン;シアノアクリラート;オキサニリド;ベンゾオキサジノン;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(CYASORB(商標)5411);2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン(CYASORB(商標)531);2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)-フェノール(CYASORB(商標)1164);2,2'-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)(CYASORB(商標)UV-3638);1,3-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェエニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(UVINUL(商標)3030);2,2'-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン);1,3-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン;全てが100nm未満の粒径を有する、酸化チタン、酸化セリウム、および酸化亜鉛などのナノサイズの無機材料;類似物、または前記UV吸収剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。存在する場合、UV吸収剤は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.0001から1重量%の量において使用し得る。
【0162】
可塑剤、潤滑剤、および/または離型剤も使用し得る。これらの種類の材料の間にはかなりのオーバーラップが存在し、それらとして、例えば、ジオクチル-4,5-エポキシヘキサヒドロフタラートなどのフタル酸エステル;トリス-(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌラート;トリステアリン;レゾルシノールテトラフェニルジホスファート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスファート、およびビスフェノール-Aのビス(ジフェニル)ホスファートなどの二または多官能性芳香族ホスファート;ポリα-オレフィン;エポキシ化大豆油;シリコーン油を含めてのシリコーン;エステル、例えば、アルキルステアリルエステル、例えば、ステアリン酸メチルなどの脂肪酸エステル;ステアリン酸ステアリル、ペンタエリトリトールテトラステアラートなど;ステアリン酸メチルと、ポリエチレングリコールポリマー、ポリプロピレングリコールポリマーおよびそれらのコポリマーを含む親水性および疎水性ノニオン界面活性剤との混合物、例えば、適切な溶媒中のステアリン酸メチルとポリエチレン-ポリプロピレングリコールコポリマー;ミツロウ、モンタンロウ、パラフィンロウなどのロウが挙げられる。存在する場合、かかる材料は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.001から1重量%、詳細には0.01から0.75重量%、より詳細には0.1から0.5重量%の量で使用し得る。
【0163】
用語「帯電防止剤」とは、導電特性および全体の物理性能を改良するために、ポリマー樹脂を加工および/または材料もしくは物品上にスプレーし得るモノマー性、オリゴマー性、またはポリマー性材料を指す。モノマー性帯電防止剤の例として、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、トリステアリン酸グリセリン、エトキシル化アミン、第一級、第二級および第三級アミン、エトキシル化アルコール、硫酸アルキル、硫酸アルキルアリール、リン酸アルキル、硫酸アルキルアミン、スルホン酸ステアリルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸アルキル塩、第四級アンモニウム塩、第四級アンモニウム樹脂、イミダゾリン誘導体、ソルビタンエステル、エタノールアミド、ベタインなど、または前記モノマー性帯電防止剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。
【0164】
ポリマー性帯電防止剤の例として、ある種のポリエステルアミドポリエーテル-ポリアミド(ポリエーテルアミド)ブロックコポリマー、ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマー、ポリエーテルエステル、またはポリウレタンが挙げられ、それぞれが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール部分ポリアルキレンオキシド単位を含有する。かかるポリマー性帯電防止剤は、市販されており、例えば、Pelestat(商標)6321(Sanyo)またはPebax(商標)MH1657(Atofina)、Irgastat(商標)P18およびP22(Ciba-Geigy)がある。帯電防止剤として使用し得る他のポリマー性材料は、高温での溶融加工後それらの固有導電性の一部を保持しているポリアニリン(PanipolからPANIPOL(登録商標)EBとして市販)、ポリピロールおよびポリチオフェン(Bayerから市販)などの固有に導電性のポリマーである。一実施形態では、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、または前記の任意の組合せを、化学的な帯電防止剤を含有するポリマー樹脂中で使用することによって組成物を電気的に散逸性にすることができる。存在する場合、帯電防止剤は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.0001から5重量%の量において使用し得る。
【0165】
添加し得る適切な難燃剤は、リン、臭素、および/または塩素を含む有機化合物であってよい。非臭素化および非塩素化リン含有難燃剤、例えば、有機ホスフェートおよびリン-窒素結合を含有する有機化合物が、法規制の理由からある種の用途で好ましい場合がある。
【0166】
1つの種類の有機ホスフェートの例は、式(GO)3P=Oの芳香族ホスフェートであり、Gは、独立に、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル基であるが、但し、少なくとも1つのGは、芳香族基である。G基のうち2つは、一緒に結合することによって環状基、例えば、ジフェニルペンタエリトリトールジホスフェートを提供し得る。他の適切な芳香族ホスフェートは、例えば、リン酸フェニルビス(ドデシル)、リン酸フェニルビス(ネオペンチル)、リン酸フェニルビス(3,5,5'-トリメチルヘキシル)、リン酸エチルジフェニル、リン酸2-エチルヘキシルジ(p-トリル)、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)p-トリル、リン酸トリトリル、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)フェニル、リン酸トリ(ノニルフェニル)、リン酸ビス(ドデシル)p-トリル、リン酸ジブチルフェニル、リン酸2-クロロエチルジフェニル、リン酸p-トリルビス(2,5,5'ートリメチルヘキシル)、リン酸2-エチルヘキシルジフェニルなどであってよい。特定の芳香族ホスフェートは、それぞれのGが、芳香族であるもの、例えば、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、リン酸イソプロピル化トリフェニルなどである。
【0167】
二または多官能性芳香族リン含有化合物も有用であり、例えば、以下の式(18)、(19)、および(20)の化合物である
【0168】
【化37】

【0169】
[式中、G1は、独立に、炭素原子1から30個を有する炭化水素であり;G2は、独立に、炭素原子1から30個を有する炭化水素またはヒドロカルボノキシであり;Xaは、独立に、炭素原子1から30個を有する炭化水素であり;Xは、独立に、臭素または塩素であり;mは、0から4であり、nは、1から30である]。適切な二または多官能性芳香族リン含有化合物の例として、それぞれ、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDP)、ヒドロキノンのリン酸ビス(ジフェニル)、およびビスフェノールAのリン酸ビス(ジフェニル)、それらのオリゴマー性およびポリマー性対応物などが挙げられる。
【0170】
リン-窒素結合を含有する適切な難燃剤化合物の例として、ホスホニトリル酸クロリド、リンエステルアミド、リン酸アミド,ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、トリス(アジリジニル)ホスフィンオキシドが挙げられる。存在する場合、リン含有難燃剤は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.1から10重量%の量において存在し得る。
【0171】
ハロゲン化材料、例えば、式(21)のハロゲン化化合物および樹脂も、難燃剤として使用し得る
【0172】
【化38】

【0173】
[式中、Rは、アルキレン、アルキリデン、または脂環状結合基、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、イソプロピリデン、ブチレン、イソブチレン、アミレン、シクロヘキシレン、シクロペンチリデンなど;または、酸素エーテル、カルボニル、アミン、またはイオウ含有結合基、例えば、スルフィド、スルホキシド、スルホンなどである]。Rは、芳香族、アミノ、エーテル、カルボニル、スルフィド、スルホキシド、スルホンなどの基によって結合された2つ以上のアルキレンもしくはアルキリデン結合基からなる場合もある。
【0174】
式(21)中のArおよびAr'は、それぞれ独立に、フェニレン、ビフェニレン、ターフェニレン、ナフチレンなどのモノ-、またはポリ炭素環状芳香族基である。
【0175】
Yは、有機、無機、または有機金属基、例えば、ハロゲン、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素;Eが、Xに類似した一価の炭化水素基である一般式OEのエーテル基;Rによって表される種類の一価の炭化水素基;または、他の置換基、例えば、ニトロ、シアノなどであって、前記置換基は基本的に不活性であるが、但し、アリール核当り少なくとも1個、好ましくは2個のハロゲン原子が存在する置換基である。
【0176】
存在する場合、Xは、独立に、一価の炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、デシルなどのアルキル基;フェニル、ナフチル、ビフェニル、キシリル、トリルなどのアリール基;ベンジル、エチルフェニルなどのアリールアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシルなどの脂環状基である。一価の炭化水素基それ自体は、不活性な置換基を含有してもよい。
【0177】
dは、独立に、1から、ArまたはAr'を含む芳香族環上で置換された置換可能な水素数に等しい最大値までである。eは、独立に、0から、R上の置換可能な水素数に等しい最大値までである。a、bおよびcは、独立に、0を含む整数である。bが0でない場合、aもcも0になることができない。そうでなければ、aまたはcのいずれかは、0になることができるが、しかし両方は不可能である。bが0である場合、芳香族基は、炭素-炭素直接結合によって結合する。
【0178】
芳香族基、ArおよびAr'上のヒドロキシルおよびY置換基は、芳香族環上でオルト、メタ、またはパラ位に変わることができ、基は、相互に任意の可能な幾何学的関係にあり得る。
【0179】
以下が、その代表であるビスフェノールは、上記の式の範囲内に含まれる2,2-ビス-(3,5-ジクロロフェニル)-プロパン; ビス-(2-クロロフェニル)-メタン; ビス(2,6-ジブロモフェニル)-メタン; 1,1-ビス-(4-ヨードフェニル)-エタン; 1,2-ビス-(2,6-ジクロロフェニル)-エタン; 1,1-ビス-(2-クロロ-4-ヨードフェニル)エタン; 1,1-ビス-(2-クロロ-4-メチルフェニル)-エタン; 1,1-ビス-(3,5-ジクロロフェニル)-エタン; 2,2-ビス-(3-フェニル-4-ブロモフェニル)-エタン; 2,6-ビス-(4,6-ジクロロナフチル)-プロパン; 2,2-ビス-(2,6-ジクロロフェニル)-ペンタン; 2,2-ビス-(3,5-ジブロモフェニル)-ヘキサン; ビス-(4-クロロフェニル)-フェニル-メタン; ビス-(3,5-ジクロロフェニル)-シクロヘキシルメタン; ビス-(3-ニトロ-4-ブロモフェニル)-メタン; ビス-(4-ヒドロキシ-2,6-ジクロロ-3-メトキシフェニル)-メタン; および2,2-ビス-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン 2,2 ビス-(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン。上記の構造式内に以下も含まれる:1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジブロモベンゼン、1,3-ジクロロ-4-ヒドロキシベンゼン、および2,2'-ジクロロビフェニル、多臭素化1,4-ジフェノキシベンゼン、2,4'-ジブロモビフェニル、および2,4'-ジクロロビフェニルなどのビフェニル、ならびにデカブロモジフェニルオキシドなど。
【0180】
ビスフェノールAと、テトラブロモビスフェノールAと、カーボネート前駆体、例えば、ホスゲンとのコポリカーボネートなどのオリゴマー性およびポリマー性ハロゲン化芳香族化合物も有用である。金属共力剤、例えば、酸化アンチモンも難燃剤とともに使用し得る。存在する場合、ハロゲン含有難燃剤は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.1から10重量%の量において存在し得る。
【0181】
無機難燃剤、例えば、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム(リマール塩)、ペルフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、およびジフェニルスルホンスルホン酸カリウムなどのスルホン酸C2〜16アルキル塩の塩;例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびバリウム)と、無機酸複合体、例えば、Na2CO3、K2CO3、MgCO3、CaCO3、およびBaCO3などのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸塩におけるオキソ-アニオンと、あるいは、Li3A1F6、BaSiF6、KBF4、K3AlF6、KAlF4、K2SiF6、および/またはNa3AlF6などにおけるフルオロ-アニオン複合体とを反応させることによって形成される塩も使用し得る。存在する場合、無機難燃剤塩は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.1から5重量%の量において存在し得る。
【0182】
放射線安定剤、詳細にはγ線安定剤も存在し得る。適切なγ線安定剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、meso-2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,4-ヘキサンジオールなどのジオール;1,2-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオールなどの脂環状アルコール;2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール(ピナコール)などの分枝非環状ジオール、およびポリオール、ならびにアルコキシ置換環状または非環状アルカンが挙げられる。不飽和部位を有するアルケノールも有用な種類のアルコールであり、その例として、4-メチル-4-ペンテン-2-オール、3-メチル-ペンテン-3-オール、2-メチル-4-ペンテン-2-オール、2,4-ジメチル-4-ペン-2-オール、および9-デセン-l-オールが挙げられる。他の種類の適切なアルコールは、少なくとも1つのヒドロキシ置換第三級炭素を有する第三級アルコールである。こうした例として、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)、2-フェニル-2-ブタノール、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、2-フェニル-2-ブタノールなど、および1-ヒドロキシ-1-メチルシクロヘキサンなどの脂環状第三級炭素が挙げられる。他の種類の適切なアルコールは、芳香族環内の不飽和炭素に結合した飽和炭素上のヒドロキシ置換を有するヒドロキシメチル芳香族である。ヒドロキシ置換飽和炭素は、メチロール基(-CH2OH)であってよいか、あるいは例えば、R4が複合炭化水素または単純炭化水素である(-CR4HOH)または(-CR420H)の場合のようなより複雑な炭化水素基のメンバーであってもよい。具体的なヒドロキシメチル芳香族は、ベンズヒドロール、1,3-ベンゼンジメタノール、ベンジルアルコール、4-ベンジルオキシベンジルアルコール、およびベンジルベンジルアルコールであってよい。具体的なアルコールは、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコールとも呼称される)、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールである。存在する場合、放射線安定剤は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.001から1重量%、より詳細には0.01から0.5重量%の量において通常、使用される。
【0183】
ドリップ防止剤、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフィブリル形成もしくは非フィブリル形成フルオロポリマーも使用し得る。ドリップ防止剤は、上記の剛性コポリマー、例えば、スチレンアクリロニトリルコポリマー(SAN)によって封入され得る。SAN中に封入されたPTFEは、TSANとして知られている。封入フルオロポリマーは、フルオロポリマー、例えば水性分散体の存在下で、封入用ポリマーを重合させることによって作製し得る。TSANは、組成物中により容易に分散し得るという点で、PTFEよりも著しく優れた利点を提供し得る。適切なTSANは、封入フルオロポリマーの全重量に対して、例えば、50重量%のPTFEと50重量%のSANとを含み得る。SANは、コポリマーの全重量に対して、例えば、75重量%のスチレンと25重量%のアクリロニトリルとを含み得る。あるいは、フルオロポリマーは、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂やSANなどの第2のポリマーと何らかの仕方で予備ブレンドすることによって、ドリップ防止剤として使用するための凝集材料を形成することもできる。封入フルオロポリマーを製造するために、いずれの方法も使用し得る。存在する場合、ドリップ防止剤は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.1から5重量%の量において使用し得る。
【0184】
使用し得る加工助剤の非限定例として、Doverlube(登録商標)FL-599(Dover Chemical Corporationから入手可能)、Polyoxyter(登録商標)(Polychem Alloy Inc.から入手可能)、Glycolube P(Lonza Chemical Companyから入手可能)、ペンタエリトリトールテトラステアラートであるMetablen A-3000(Mitsubishi Rayonから入手可能)、ネオペンチルグリコールジベンゾアートなどが挙げられる。存在する場合、加工助剤は、熱可塑性組成物に使用される成分(i)のポリカーボネートの重量に対して、0.001から1重量%の量において使用し得る。
【0185】
熱可塑性組成物は、当技術分野で一般に利用される方法、例えば、一実施形態では、粉末ポリカーボネート、および任意選択の任意の添加剤(複数可)をHENSCHEL-Mixer(登録商標)高速ミキサーで最初にブレンドすることで進めるという1つの仕方で製造し得る。限定されないが、ハンドミキシングを含めての他の低せん断法もこのブレンディングを実施し得る。次いで、ブレンドをホッパーを介して押出機の投入口に供給する。あるいは、1つまたは複数の成分は、投入口および/または下降部でサイドスタッファーから押出機に直接供給することによって組成物中に組み込んでもよい。添加剤は、所望のポリマー性樹脂とともにマスターバッチに混合してマスターバッチにして、押出機に供給してもよい。押出機は、一般に、組成物を流動させるのに必要とされるより高い温度で操作される。押出物は、水バッチ内で直ちに急冷され、ペレット化される。こうして調製されたペレットは、押出物を切断する場合、長さ1/4インチでよく、所望であればより短くてもよい。かかるペレットは、次の成形、成型、または形成のために使用し得る。
【0186】
特定の実施形態では、熱可塑性物品を調製する方法は、ポリカーボネート、および任意の任意選択の添加剤(複数可)を溶融合せをすることによって熱可塑性組成物を形成するステップを含む。溶融合せは、押出しによって行い得る。一実施形態では、ポリカーボネートと任意選択の任意の添加剤(複数可)の割合は、機械性能を望ましい水準に保ちつつ、熱可塑性組成物の光学特性が最高になるように選択される。
【0187】
特定の実施形態では、押出機は、二軸押出機である。押出機は、通常、180から385℃、詳細には200から330℃、より詳細には220から300℃の温度で操作されるが、金型温度は異なっていてもよい。押し出された熱可塑性組成物は、水中で急冷され、ペレット化される。
【0188】
熱可塑性組成物を含む成型、形成、成形品も提供される。熱可塑性組成物は、射出成形、押出、回転成形、ブロー成形、および熱成形などの多様な手段によって有用な成型品に成形し得る。特定の実施形態では、成形は、射出成形によって行われる。望ましくは、熱可塑性組成物は、優れた金型充填能力を有し、例えば、ホログラフィー用貯蔵媒体を含めての光学媒体、薄い部品、ボトル、管類、ビーカー、遠沈管、ピペット、グルコースメーター、吸引器、シリンジ、透析付属品、試料用バイアル、血液袋、ペトリ皿、スパチュラ、連結器、トロカール、ストップコック、ルアロック、Y部位、カテーテル、人工肺格納器、トレイ、歯科器具などの物品を形成するのに有用である。
【0189】
本開示は、以下の非限定実施例によってさらに例示される。
【0190】
(実施例)
(実施例1)
BPA/HPHPコポリマー-5重量%HPHP
機械的攪拌器、窒素バイパス、還流コンデンサ、管状反応器、およびpHプローブを備えた500mLモートンフラスコに、BPA(22.8g、0.1モル)、蒸留水(100mL)、塩化メチレン(100mL)、トリエチルアミン(200mL)、およびp-クミルフェノール(0.64g、約3モル%)を仕込んだ。管状反応器排出物は、浸漬管を介してモートンフラスコに入った。ホスゲンを0.75g/分で管状反応器から8分間添加しながら、25重量%のNaOH水溶液でpHを10.5に調整し、維持した。その後、ホスゲン流速を0.41g/分に減少し、HPHPストック溶液を管状反応器に供給した。HPHPストック溶液(塩化メチレン150g中のHPHP3.06gおよびトリエチルアミン8.86mL)の流速20.0g/分で、直列の5つの管状混合セクション(各混合セクションは、外径1/4インチ×長さ7インチのKo-Flo(登録商標)スタテックミキサーを含む)を使用してHPHPクロロホルメートの製造を実施した。管をこれらの条件下で3分間運転することによって5重量%のHPHP(BPAの重量に対して)を反応容器に送達した。所要量のHPHPを送達した後、HPHPストック溶液を停止し、追加の8分間ホスゲン流速を0.75g/分に上昇させた。次いで、ポリマー溶液をブラインから分離し、1N HC1で2回、脱イオン水で3回洗浄した。ブレンダー中でポリマー溶液を熱水によりほぐし、ポリマーをろ過し、水で洗浄し、110℃の真空オーブン中で終夜乾燥した。ポリマーのプロトンNMR分析により、HPHPが完全に組み込まれていることが分かった。コポリマーのTgは、131.8℃であり、Mwは、45,200(ポリスチレン標準)であった。圧縮成形フィルムは透明であった。
【0191】
(実施例2)
BPA/HPHPコポリマー-10重量%HPHP
機械的攪拌器、窒素バイパス、還流コンデンサ、管状反応器、およびpHプローブを備えた500mLモートンフラスコに、BPA(22.8g、0.1モル)、蒸留水(83mL)、塩化メチレン(103mL)、およびp-クミルフェノール(0.64g、約3モル%)を仕込んだ。50重量%のNaOH水溶液でpHを10.5に調整し、維持した。HPHPストック溶液(塩化メチレン285.3g中のHPHP6.0gおよびトリエチルアミン11.9mL)の流速20.0g/分で、5つの管状混合セクションを使用してHPHPクロロホルメートの製造を実施した。管をこれらの条件下で6.3分間運転し、ホスゲン流1.55g/分によって10重量%のHPHP(2.53g HPHP)を反応容器に送達した。HPHPを送達した後、追加の4.5分間ホスゲン流速を1.00g/分に減少させた。ポリマー溶液をブラインから分離し、1N HC1で2回、脱イオン水で3回洗浄した。ブレンダー中でポリマー溶液を熱水によりほぐし、ポリマーをろ過し、水で洗浄し、110℃の真空オーブン中で終夜乾燥した。ポリマーのプロトンNMR分析により、HPHPが完全に組み込まれていることが分かった。コポリマーのTgは、119.7℃であり、Mwは、44,478(ポリスチレン標準)であった。圧縮成形フィルムは透明であった。
【0192】
(実施例3)
BPI/HPHPコポリマー-5重量%HPHP
機械的攪拌器、窒素バイパス、還流コンデンサ、管状反応器、およびpHプローブを備えた500mLモートンフラスコに、BPI(22.8g、0.07モル)、蒸留水(83mL)、塩化メチレン(103mL)、およびp-クミルフェノール(0.47g、約3モル%)を仕込んだ。50重量%のNaOH水溶液でpHを10.5に調整し、維持した。HPHPストック溶液(塩化メチレン285.3g中にHPHP6.0gおよびトリエチルアミン11.9mLを溶解)の流速20.0g/分で、5つの管状混合セクションを使用してHPHPクロロホルメートの製造を実施した。管をこれらの条件下で3.0分間運転し、ホスゲン流1.55g/分によって5重量%のHPHP(1.2g HPHP)を反応容器に送達した。HPHPを送達した後、追加の5.2分間ホスゲン流速を1.00g/分に減少させた。ポリマー溶液をブラインから分離し、1N HC1で2回、脱イオン水で3回洗浄した。ブレンダー中でポリマー溶液を熱水によりほぐし、ポリマーをろ過し、水で洗浄し、110℃の真空オーブン中で終夜乾燥した。ポリマーのプロトンNMR分析により、HPHPが完全に組み込まれていることが分かった。コポリマーのTgは、201.8℃であり、Mwは、52,847(ポリスチレン標準)であった。圧縮成形フィルムは透明であった。
【0193】
代表的な実施形態を例示のために述べたが、前記説明は、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。従って、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、当業者なら多様な変形形態、適応形態、および代替形態を実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(H-1)
【化1】

[式中、Rhは、式(H-2)
【化2】

(式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、およびR28は、独立に、水素、C1〜C6アルキル基、またはハロゲン置換C1〜C6アルキル基である)
を有する基である]
のカーボネート構造反復単位を含むポリカーボネート。
【請求項2】
カーボネート構造反復単位が、式(H-3)
【化3】

を有する、請求項1に記載のポリカーボネート。
【請求項3】
式(A-1)
【化4】

[式中、A1およびA2はそれぞれ、二価の単環状アリール基であり、Y1は、A1をA2から隔てる1つまたは2つの原子を有する架橋基である]
のカーボネート構造反復単位をさらに含む、請求項1に記載のポリカーボネート。
【請求項4】
式(A-2)
【化5】

[式中、RaおよびRbはそれぞれ、ハロゲン原子または一価の炭化水素基を表し、同じでも異なっていてもよく;pおよびqは、それぞれ独立に、0から4の整数であり;Xaは、式(5)
【化6】

(式中、RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、または一価の直鎖または環状炭化水素基を表し、Reは、二価の炭化水素基である)
の基のうちの1つを表す]
のカーボネート構造反復単位をさらに含む、請求項1に記載のポリカーボネート。
【請求項5】
式(A-3)
【化7】

のカーボネート構造反復単位をさらに含む、請求項1に記載のポリカーボネート。
【請求項6】
式(A-4)
【化8】

のカーボネート構造反復単位をさらに含む、請求項1に記載のポリカーボネート。
【請求項7】
約15,000から約100,000の重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1に記載のポリカーボネート。
【請求項8】
約0.1重量%から約40重量%の式(H-1)のカーボネート構造反復単位と、約60重量%から約99.9重量%の式(A-1)のカーボネート構造反復単位とを含む、請求項3に記載のポリカーボネート。
【請求項9】
約2重量%から約20重量%の式(H-1)のカーボネート構造反復単位と、約80重量%から約98重量%の式(A-1)のカーボネート構造反復単位とを含む、請求項8に記載のポリカーボネート。
【請求項10】
約3重量%から約10重量%の式(H-1)のカーボネート構造反復単位と、約90重量%から約97重量%の式(A-1)のカーボネート構造反復単位とを含む、請求項9に記載のポリカーボネート。
【請求項11】
式(H-1)のカーボネート構造反復単位が、式(H-3)単位
【化9】

を含み、
式(A-1)のカーボネート構造反復単位が、式(A-3)単位、式(A-4)単位、またはそれらの混合物
【化10】

を含む、請求項8に記載のポリカーボネート。
【請求項12】
コポリエステル-ポリカーボネートを含む、請求項1に記載のポリカーボネート。
【請求項13】
ポリエステル反復単位が、式(6)
【化11】

[式中、Dは、C2〜10アルキレン基、C6〜20脂環状基、C6〜20芳香族基、およびその中でアルキレン基が炭素原子2から6個を含有するポリオキシアルキレン基からなる群から選択されるジヒドロキシ化合物から誘導される二価基であり;Tは、C2〜10アルキレン基、C6〜20脂環状基、C6〜20アルキル芳香族基、およびC6〜20芳香族基からなる群から選択されるジカルボン酸から誘導される二価基である]
を有する、請求項12に記載のポリカーボネート。
【請求項14】
ポリシロキサンポリカーボネートのコポリマーを含む、請求項1に記載のポリカーボネート。
【請求項15】
式(H-1)単位が、式(H-4)
【化12】

のジヒドロキシ化合物から誘導される、請求項1に記載のポリカーボネート。
【請求項16】
式(H-3)単位が、式(H-5)
【化13】

のジヒドロキシ化合物から誘導される、請求項2に記載のポリカーボネート。
【請求項17】
式(H-3)単位が、式(H-6)
【化14】

のビスクロロホルメート化合物から誘導される、請求項2に記載のポリカーボネート。
【請求項18】
式(H-1)
【化15】

[式中、Rhは、式(H-2)
【化16】

(式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、およびR28は、独立に、水素、C1〜C6アルキル基、またはハロゲン置換C1〜C6アルキル基である)
を有する基である]
のカーボネート構造反復単位を含むポリカーボネートを含む熱可塑性組成物。
【請求項19】
式(H-1)のカーボネート構造反復単位が、式(H-3)単位
【化17】

を含む、請求項18に記載の熱可塑性組成物。
【請求項20】
加水分解安定剤、衝撃改質剤、フィラー/補強材、視覚効果増強剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外光吸収剤、可塑剤、離型剤、潤滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、難燃剤、加工助剤、放射線安定剤、およびドリップ防止剤からなる群から選択される1つまたは複数の添加剤をさらに含む、請求項18に記載の熱可塑性組成物。
【請求項21】
請求項18に記載の熱可塑性組成物から作製される熱的に安定な物品。

【公表番号】特表2009−522428(P2009−522428A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549516(P2008−549516)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/049655
【国際公開番号】WO2007/081593
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】