説明

熱硬化ウレタンエラストマー形成性組成物およびその製造方法

【課題】
自動車用グラスラン、給紙ロールに代表される小型ロールなどの産業機器の構成部品においては、反発弾性や永久伸び及び圧縮永久歪みが良好なものが求められている。しかし、従来の注型用ポリウレタンエラストマー組成物では、反発弾性と永久伸び及び圧縮永久歪みを共に満足できるものではなかった。
【解決手段】
イソシアネート基末端プレポリマーと、硬化剤として水酸基含有高分子ポリオールと、分子量500〜2,500の公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオールと、分子量150未満の2官能グリコールから成る、注型用ポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いることにより、得られる注型ポリウレタンエラストマー組成物は優れた反発弾性と永久伸びを有することができる。その結果、自動車用グラスランやロール部材等に使用することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注型用ポリウレタンエラストマー組成物、及び該組成物を用いたポリウレタンエラストマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
注型用ポリウレタンエラストマー組成物は、優れた物性や種々の用途への汎用性及び経済性や環境問題適応性などにより、自動車用グラスラン、給紙ロールに代表される小型ロール、種々の産業機器の構成部品として好適に使用することができる。
【0003】
注型用ポリウレタンエラストマー組成物において、前記の産業機器用途として、反発弾性が高く、長期間の使用にも耐え得るように永久伸びや圧縮永久歪みの良好なものが求められている。しかし、従来から使用されている鎖延長剤として、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)/トリメチロールプロパン(TMP)を使用したポリエステル系ポリウレタンエラストマー組成物では、反発弾性が30%以下であり、必要な特性を満足できない(後述の比較例7)。また、反発弾性を向上させることを目的として、TMPの添加量を減らしたのでは、反発弾性は向上するものの、永久伸びが悪化してしまう(後述の比較例8)。従って、1,4−BD/TMP系の注型用ポリウレタンエラストマーでは、本発明の課題として求められている特性は満足できないものとなってしまう。
【0004】
また、注型用ポリウレタンエラストマー組成物として、イソシアネート基末端プレポリマーと、2官能高分子ポリオールと3官能以上の高分子ポリオールと直鎖状低分子ジオールからなる硬化剤を使用した、反発弾性が60%以上のクリーニングブレードに関する先行技術として、特許文献1が存在する。
しかし、当該先行技術では3官能ポリオール成分としてラクトン系ポリオールを使用しているため、反発弾性特性は満足しているものの、永久伸びが悪く、自動車用グラスランで求められている特性は満足できない。さらには、圧縮永久歪みも悪く、給紙ロールに代表される小型ロールの分野使用することが困難となってしまう。
【0005】
【特許文献1】特開2001−255801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、自動車用グラスランや給紙ロールなどの産業機器分野で求められている、反発弾性、永久伸び、圧縮永久歪みの各物性が良好である注型用ポリウレタンエラストマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、自動車用グラスラン、給紙ロールに代表される小型ロールなどの産業機器の構成部品として求められている特性を満足するために、イソシアネート基末端プレポリマーと、硬化剤として、分子量500〜2,500の公称平均官能基数が2であるポリエステルポリオールと、二塩基酸と分子量500以下のトリオール及び分子量300以下のグリコールからなる分子量500〜2,500の公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオールと、分子量150未満のグリコールの混合物から注型用ポリウレタンエラストマー組成物を得ることにより、反発弾性、永久伸び、圧縮永久歪みが良好な注型用ポリウレタンエラストマー組成物を得ることを見出し本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、次のI〜VIIである。
I. イソシアネートプレポリマー(A)と、硬化剤(B)とからなるポリウレタン樹脂形成性組成物であって、
(A)が、有機ポリイソシアネート(a1)と水酸基含有化合物(a2)からなるイソシアネート基末端プレポリマーであり、
(B)が、分子量500〜2,500の公称平均官能基数が2であるポリエステルポリオール(b1)と、二塩基酸(b21)と分子量500以下のトリオール(b22)及び分子量300以下のグリコール(b23)とからなる分子量500〜2,500の公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオール(b2)と、分子量150未満のグリコール(b3)の混合物であり、
(A)と(B)から得られる組成物の樹脂中の有機ポリイソシアネート(a1)の含有量が、1.06〜1.17mmol/gで、かつ、架橋剤濃度が0.11〜0.16mmol/gである、高反発かつ低歪みであることを特徴とする注型用ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
II.(b2)が、トリメチロールプロパンと、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと、アジピン酸からなる公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオールである、上記Iに記載の注型用ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
III. (b2)が、トリメチロールプロパンと、1,4−ブタンジオールと、アジピン酸からなる公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオールである、上記Iに記載の注型用ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
IV. (b2)が、トリメチロールプロパンと3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とからなる公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオール、及び、トリメチロールプロパンと1,4−ブタンジオールとアジピン酸とからなる公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオールからなる上記Iに注型用ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
V. 上記IからIVいずれかに記載の注型用ポリウレタンエラストマー組成物からなるロール部材。
VI.上記IからIVいずれかに記載の注型用ポリウレタンエラストマー組成物からなる自動車用グラスラン。
VII. 上記IからIVいずれかに記載の注型用ポリウレタンエラストマー形成性組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により得られる注型ポリウレタンエラストマー組成物は、反発弾性が40%以上で、かつ、永久伸びが1.3%以下、さらには圧縮永久歪が2.0%以下であるため、得られる注型用ポリウレタンエラストマー組成物は、自動車用グラスラン、給紙ロールに代表される小型ロールなどの産業機器の構成部材として好適に使用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について、課題を解決するための手段として、以下に前述した本発明の実施の形態を具体的に詳しく説明する。
【0011】
本発明におけるイソシアネート基末端プレポリマー(A)は、有機ポリイソシアネート(a1)と、水酸基含有化合物(a2)とを、イソシアネート基/水酸基(モル比)が1.6〜20となる割合で仕込み、この系を、温度50〜100℃で1〜5時間反応させることにより、特定のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を得ることができる。
【0012】
本発明における有機ポリイソシアネート(a1)としては、従来から使用されているものが使用できる。このような有機ポリイソシアネートには、例えば炭素数6〜20の芳香族
ポリイソシアネート[1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等];炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート[エチレンジイソシアネート、ヘキサメトレンジイソシアネート等];炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート[キシレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等];炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート;およびこれら2種以上の混合物が挙げられる。この中でも、炭素数6〜20の芳香族ポリイソシアネートが好ましく、より好ましいのは2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであり、最適なものは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0013】
本発明における水酸基含有化合物(a2)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール等の1種又は2種以上の混合物が挙げられるが、この中でも好ましいものはポリエステルポリオールである。これらの分子量は、平均分子量50〜5,000であり、中でも、数平均分子量300〜4,000が好ましく、さらに好ましいのは、数平均分子量500〜3,000である。
【0014】
ポリエーテルグリコールとしては、ポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(プロピレンエーテル)グリコール及びポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(以下「PTMG」と略記)等を挙げることができる。これらは、エチレングリコール(以下「EG」と略記)、1,3−ブタンジオール(以下「1,3−BD」と略記)、1,4−ブタンジオール(以下「1,4−BD」と略記)、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール(以下「1,2−PG」と略記)、1,3−プロピレングリコール(以下「1,3−PG」と略記)等の短鎖ジオールを開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド及びテトラヒドロフラン等の環式エーテルを開環重合して製造されるポリエーテル等の1種又は2種以上とからのポリエーテルポリオールである。この中でも好ましいのは、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールである。
【0015】
ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA等の1種又は2種以上と、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、シュウ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の1種又は2種以上とからのポリエステルポリオールである。この中でも好ましいのは、アジピン酸と1,4−ブタンジオールのポリエステルポリオールである。
【0016】
ポリカーボネートジオールとしては、上述した短鎖ジオールと、ジフェニルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート等の低分子カーボネートからの縮重合によって得られるものが挙げられる。また、これらのポリカーボネートの混合物も使用できる。
【0017】
必要に応じて、NCO/OH反応を促進するための触媒を、プレポリマーの製造時に添加することができる。適当な触媒は、既知のアミン化合物または有機金属化合物または4級アンモニウム塩等が挙げられる。
例として、以下の化合物を触媒として使用することができる:トリエチルアミン、トリブ
チルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノジエチルエーテル、ビス(ジメ
チルアミノプロピル)ウレア、N-メチル-およびN-エチルモルホリン、N,N’-ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE)、N-シクロヘキシルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルピペラジン、N-ジメチル-アミノエチル-ピペリジン、1,2-ジメチルイミダ
ゾール、N-ヒドロキシプロピルイミダゾール、1-アザシクロ[2.2.0]オクタン、1,
4-ジアザシクロ[2.2.2]オクタン(Dabco)およびアルカノールアミン化合物(
例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチル-およびN-エ
チルジエタノールアミン)、ジメチルアミノエタノール、2-(N,N-ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N,N’,N-トリス(ジアルキルアミノアルキルジアルキルアミノアル
キル)ヘキサヒドロトリアジン(例えば、N,N’,N-トリス(ジメチルアミノプロピル)-
s-ヘキサヒドロトリアジン)、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、鉛オクトエートおよび、スズ
塩(例えば、スズジオクトエート、スズジエチルヘキソエート、ジブチルスズジラウレートおよび/またはジブチルジラウリルスズメルカプチド)、2,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(例えば、テトラ
メチルアンモニウムヒドロキシド)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)、アルカリ金属アルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシドおよびカリウムイソプロポキシド)、および/または10〜20個の炭素原子および、必要に応じて、ペンダントOH基を有する長鎖脂肪酸のアルカリ金属塩、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0018】
さらに必要に応じて、プレポリマーの製造時に、既存の酸化防止剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、反応調整剤などを添加することができる。
【0019】
イソシアネート基末端プレポリマーのNCO含有量としては、5.0〜25.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは8.0〜20.0質量%、最も好ましいのは10.0〜18.0質量%とされる。
NCO含有量が5.0質量%未満であるイソシアネート基末端プレポリマーは、粘度が高くて流動性に劣るものであり、これを主剤とする組成物の注型操作が困難となる。一方、NCO含有量が25.0質量%を超えるイソシアネート基末端プレポリマーは、活性水素化合物(硬化剤)との反応性が過大であり、これを主剤とする組成物(硬化剤との混合物)は、流動性が急激に低下して注型操作が困難となる。また、保存時や使用時に安定性が著しく低下し、成形不良を起こしやすいなどの弊害もある。
【0020】
本発明により得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、75℃において、好ましくは50〜3,000mm2/s、より好ましくは、100〜2,500mm2/sの動的
粘度を有する。
粘度が50mm2/s未満であるイソシアネート基末端プレポリマーは、硬化剤との粘度差が大きく、混合時にうまく液が混ざりにくいといった問題がある。一方、粘度が3,000mm2/sを超えるイソシアネート基末端プレポリマーは、初期粘度が高く、活性水
素化合物(硬化剤)との反応により流動性が急激に低下して注型操作が困難となる。
【0021】
本発明における硬化剤(B)は、分子量500〜2,500の公称平均官能基数が2であるポリエステルポリオール(b1)と、二塩基酸(b21)と分子量500以下のトリオール(b22)及び分子量300以下のグリコール(b23)からなる分子量500〜2,500の公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオール(b2)と、分子量150未満のグリコール(b3)から構成される。
ここで「公称平均官能基数」とは、メーカーの製造案内等で記載された官能基数である。又は、仕込み量から計算して求められる官能基数である。
【0022】
本発明のポリエステルポリオール(b1)としては、前記(a2)で使用されるポリエステルポリオールのうち、分子量が500〜2,500の公称平均官能基数が2であるポリエステルポリオールが好適に使用できる。イソシアネートプレポリマーで使用した(a2)と同じポリエステルポリオールを使用することが好ましい。
【0023】
本発明の公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオール(b2)は、二塩基酸(b21)と分子量500以下のトリオール(b22)及び分子量300以下のグリコール(b23)からなる。このうち、(b21)としては、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、シュウ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の一般的に使用されている二塩基酸のうちの1種又は2種以上の混合物が挙げられる。(b22)としては、トリメチロールプロパン、グリセリン等の一般的に使用されている分子量500以下のトリオールが使用できる。(b23)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。(b21)と(b22)と(b23)の脱水縮合により得られるポリエステルポリオール(b2)は、数平均分子量500〜2,500であることが好ましく、1,000〜2,000がより好ましい。数平均分子量が500未満のものは、得られる注型用エラストマー組成物の反発弾性が低くなり、目的とする効果を達成できないなどの問題があり、2,500より大きいと(b3)との相溶性が悪く成形物の外観が白濁してしまい、物性が不均一となるなどの問題が発生する。
(b2)として好ましいのは、トリメチロールプロパンと3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び/又は1,4−ブタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルポリオールであり、最も好ましいものはトリメチロールプロパンと3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルポリオールである。
【0024】
本発明の分子量150未満のジオール(b3)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2−メチルー1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができ、これらは単独または2種類以上を組み合わせて使用することもできる。本発明においては、本発明で所望される成型物において好適な硬度や機械物性が得られるとの観点から、これらのうち1,4−ブタンジオールが特に好ましい。
【0025】
本発明により得られる樹脂組成は、樹脂全体に対しての有機ポリイソシアネート(a1)の含有量が1.06〜1.17mmol/gの範囲になければならず、好ましくは1.07〜1.15mmol/g、さらに好ましくは1.10〜1.13mmol/gの範囲である。有機ポリイソシアネート(a1)の含有量が1.06mmol/g未満だと、永久伸びや圧縮永久歪みが悪化してしまい、併せてその他の物性も低下してしまう。有機ポリイソシアネート(a1)の含有量が1.17mmol/gを超える場合は、反発弾性、永久伸び及び圧縮永久ひずみ共に悪化してしまい、樹脂が脆くなってしまうなどの弊害も生じる。
・樹脂中の有機ポリイソシアネート(a1)の含有量は次式で表される。

[{a1/(a1+a2)×A}/(a1Mn)]/(A+B)×1000

a1:イソシアネートプレポリマー中(A)の有機ポリイソシアネート(a1)の配合
量(g)
a2:イソシアネートプレポリマー中(A)の水酸基含有化合物(a2)の配合量
(g)
A:イソシアネートプレポリマー(A)の配合量(g)
B:硬化剤(B)の配合量(g)
a1Mn:有機ポリイソシアネート(a1)の分子量

これに加えて、本発明により得られる樹脂組成物は、樹脂全体に対しての3官能ポリオール成分の含有量(本明細書中においては架橋剤濃度と記載する)が0.11〜0.16mmol/gの範囲になければならず、好ましくは0.12〜0.15mmol/g、さらに好ましくは、0.13〜0.14mmol/gである。架橋剤濃度が0.11mmol/g未満だと、永久伸びや圧縮永久歪みが悪化してしまい、0.16mmol/gを超えると反発弾性、永久伸び及び圧縮永久歪み共に悪化してしまう。
・樹脂中の架橋剤濃度は次式で表される。

{b2/(b1+b2+b3)×B/(b2Mn)}/(A+B)×1000

b1:硬化剤(B)中の2官能ポリエステル(b1)の配合量(g)
b2:硬化剤(B)中の3官能ポリエステル(b2)の配合量(g)
b3:硬化剤(B)中のグリコール(b3)の配合量(g)
A:イソシアネートプレポリマー(A)の配合量(g)
B:硬化剤(B)の配合量(g)
b2Mn:3官能ポリエステル(b2)の分子量

【0026】
本発明における注型ポリウレタンエラストマー成型物は、本発明における形成性組成物、即ち、前記イソシアネート基末端プレポリマー(A)と硬化剤(B)からなる組成物を型内で熱硬化させることにより得ることができる。
【0027】
イソシアネート基末端プレポリマー(A)と硬化剤(B)の混合時に、前述の触媒や既存の酸化防止剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、反応調整剤などを予め添加することができ、触媒は硬化剤(B)に添加することが好ましい。
【0028】
本発明における2液注型ポリウレタンエラストマー成型物の製造方法は、本発明におけるイソシアネート基末端プレポリマー(A)と前記硬化剤(B)とを混合して本発明の形成性組成物を得る工程と、得られた該組成物を型に注入する工程と、該組成物を型内で加熱することにより硬化させる工程を含む。
【0029】
本発明の組成物において、イソシアネート基末端プレポリマー(A)と硬化剤(B)の混合割合(配合比R)としては、主剤(A)を構成するイソシアネート成分の有するイソシアネート基と;硬化剤(B)を構成するポリオール成分の有する活性水素基とのモル比(イソシアネート基/活性水素基)が0.8〜1.6となるような割合であることが好ましく、更に好ましくは0.9〜1.4となるような割合、特に好ましくは1.0〜1.2となるような割合とされる。
【0030】
本発明の注型用ポリウレタンエラストマー組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、有機ポリイソシアネートと高分子ポリオールからなるウレタンプレポリマーと低分子グリコール等の鎖延長剤を反応させるプレポリマー法;本発明のように高分子ポリオールをプレポリマー側と硬化剤側両方に組み込んだイソシアネート基末端プレポリマー(A)と硬化剤(B)を混合反応させるセミワンショット法;構成成分すべてを同時に混合して反応させるワンショット法等を挙げることができる。
この中でも、作業性や反応時の発熱などを考慮するとセミワンショット法が好ましい。
【0031】
本発明の注型用ウレタンエラストマー成型物の具体的な製造手順としては、上記各原料と成形型を用い、例えば以下のようにして製造される。
1.イソシアネート基末端プレポリマー(A)、硬化剤(B)を均一に混合し脱泡する。2.プレヒートした成形型に液を流し込み(注型)、加熱して硬化反応させる。このときの温度は60〜200℃程度である。
3.しばらく加熱状態でおき、流し込んだ液が硬化したら、硬化物を型から取り出す(脱型)。
4.必要に応じて、脱型後の成型物を後加熱してもよい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって何ら限定して解釈されるものではない。なお、以下において「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を意味するものとする。
【0033】
<プレポリマー合成例>
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、ピュアMDI(ミリオネート−MT、日本ポリウレタン工業(株)製)544部と、液温が50℃に達したところで、数平均分子量:Mn=2, 000のポリブチレンアジペート:BA−2000(日本ポリウレタン工業(株)製)を456部添加し、窒素雰囲気下、75℃で3時間にわたり攪拌混合することによって反応させて、NCO含有量;16.4%、粘度;200mm2/s(75℃)のイソシアネート基末端プレポリマーを得た。以下、これをイソシアネート基末端プレポリマー「P−1」とする。
【0034】
<調製例1>
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、数平均分子量:Mn=1,000のポリブチレンアジペートBA−1000を345部と、数平均分子量:Mn=2,000の3官能ポリエステルポリオール:F−2010を558部と、1,4−BDを97部と、TEDAを0.2部添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって硬化剤を得た。以下、これを硬化剤「B−1」とする。
【0035】
<調製例2>
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、BA−1000を257部と数平均分子量:Mn=2,000のポリブチレンアジペートBA−2000を376部と、数平均分子量:Mn=1,000の3官能ポリエステルポリオール:F−1010を279部と、1,4−BDを88部と、TEDAを0.2部添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって硬化剤を得た。以下、これを硬化剤「B−2」とする。
【0036】
<調製例3>
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を
窒素置換した。これに、BA−1000を255部とBA−2000を377部と、数平均分子量:Mn=1,000の3官能ポリエステルポリオールAを280部と、1,4−BDを88部と、TEDAを0.2部添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって硬化剤を得た。以下、これを硬化剤「B−3」とする。
【0037】
<調製例4>
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、BA−1000を345部と、数平均分子量:Mn=2,000の3官能ポリラクトンポリオールPCL−320を558部と、1,4−BDを97部と、TEDAを0.2部添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって硬化剤を得た。以下、これを硬化剤「B−4」とする。
【0038】
<調製例5>
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、BA−1000を35部と、数平均分子量:Mn=3,000の官能ポリエステルポリオール:F−3010を840部と、1,4−BDを125部と、TEDAを0.2部添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって硬化剤を得た。以下、これを硬化剤「B−5」とする。
【0039】
<調製例6>
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、BA−1000を207部と、F−2010を693部と、1,4−BDを100部と、TEDAを0.2部添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって硬化剤を得た。以下、これを硬化剤「B−6」とする。
【0040】
<調製例7>
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、BA−1000を435部とBA−2000を70部と、F−2010を408部と、1,4−BDを96部と、TEDAを0.2部添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって硬化剤を得た。以下、これを硬化剤「B−7」とする。
【0041】
<調製例8>
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、BA−1000を275部と、F−2010を600部と、1,4−BDを125部と、TEDAを0.2部添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって硬化剤を得た。以下、これを硬化剤「B−8」とする。
【0042】
<調製例9>
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、BA−2000を377部と、F−2010を527部と、1,4−BDを96部と、TEDAを0.2部添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって硬化剤を得た。以下、これを硬化剤「B−9」とする。
【0043】
<調製例10>
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、BA−2000を874部と、1,4−BDを88部と、TMPを38部と、TEDAを0.2部添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって硬化剤を得た。以下、これを硬化剤「B−10」とする。
【0044】
<調製例11>
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、BA−2000を874部と、1,4−BDを101部と、TMPを25部と、TEDAを0.2部添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって硬化剤を得た。以下、これを硬化剤「B−11」とする。
【0045】
調整例1〜11で得た硬化剤B1〜B11を表1、表2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】




【0048】
<本発明で使用する原料の略称の説明>
ピュアMDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート異性体を99%以上含有するジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業株式会社製)
BA−1000:数平均分子量Mnが1,000であるポリブチレンアジペート(日本ポリウレタン工業株式会社製)
BA−2000:数平均分子量Mnが2,000であるポリブチレンアジペート(日本ポリウレタン工業株式会社製)
ポリオールA:1,4−ブタンジオールが337部とトリメチロールプロパンが116部とアジピン酸が547部を反応させることにより得られる、数平均分子量が1,000、公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオール
F−1010:3−メチルー1,5−ペンタンジオールとトリメチロールプロパンとアジピン酸からなる、公称平均官能基数が3であり、数平均分子量が1,000であるポリエ
ステルポリオール(クラレポリオールF−1010、株式会社クラレ製) F−2010:3−メチルー1,5−ペンタンジオールとトリメチロールプロパンとアジピン酸からなる、公称平均官能基数が3であり、数平均分子量が2,000であるポリエステルポリオール(クラレポリオールF−2010、株式会社クラレ製)
F−3010:3−メチルー1,5−ペンタンジオールとトリメチロールプロパンとアジピン酸からなる、公称平均官能基数が3であり、数平均分子量が3,000であるポリエステルポリオール(クラレポリオールF−3010、株式会社クラレ製) PCL−320:数平均分子量が2,000であり、公称平均官能基数が3であるポリカプロラクトンポリオール(プラクセルPCL−320、ダイセル化学工業株式会社製)
TMP:トリメチロールプロパン(三菱ガス化学株式会社製)
1,4−BD:1,4−ブタンジオール(東ソー株式会社製)
TEDA:トリエチレンジアミン(東ソー株式会社製)
【0049】
<実施例1〜3、比較例1〜8>
表1に記載する配合に従って、イソシアネートプレポリマーP−1と硬化剤B1〜B11を80℃に加熱して、アジターで30秒混合攪拌させ、その後遠心成形器に注入し、130℃で60分間反応硬化させてシート状(厚さ:2mm)のポリウレタンエラストマー組成物を得た。得られたシート状のポリウレタンエラストマー組成物を室温(25℃)で1週間後キュアさせた後、各物性を測定した。結果を表3に記載する。
表3中の「イソシアネート含有量」とは、明細書中の「有機ポリイソシアネート(a1)の含有量」を略記したものである。
【0050】
【表3】

【0051】
表1に記載の物性の測定は以下に記載する方法で実施した。
【0052】
本発明で記載している水酸基含有化合物の数平均分子量は、製造メーカーの成績表の記載値、又は末端水酸基定量法により算出した。
【0053】
(硬度の測定方法)
JIS−K6253に規定するデュロメータータイプAを使用し、JIS−K7312に準じて測定を行なった。
【0054】
(機械物性の測定方法)
得られたウレタンエラストマー成型物の各々について、JIS−K7312に準拠して、引張強度、破断伸び、引裂強度、および反発弾性を測定した。
ここに、硬度、引張強度、破断伸び、引裂強度の測定は、温度23℃,相対湿度50%の恒温恒湿環境下で行った。
【0055】
(永久伸びの測定方法)
JIS−K7312に示す1号ダンベル状試験片を用い、中央部に40mmの標線を付け、10分間100%伸張を行い、開放を行なった後10分間静置し、標線間距離を測定した。この結果から、最初の標線間距離に対しての残留歪率を算出して永久伸びとした。
【0056】
(圧縮永久歪み)
JIS7312に準拠して測定を行なった。圧縮率:25%、70℃で22時間放置後温度23℃,相対湿度50%の恒温恒湿環境下で30分間放冷後測定。
【0057】
(貯蔵弾性率の測定方法)
〔tanδピーク温度〕
まず、エラストマー組成物を構成する硬化体を、50mm×5mm×2mmに成形採寸して、試料を準備した。ついで、この試料を、引張治具のチャック間が38mmになるようにセットし、加振振幅−25μm〜+25μm、最小加重振幅0gf、プリロード荷重50.0gf、周波数11Hzの正弦波歪を与え、−50℃〜150℃の範囲におけるtanδ(損失正接)を、昇温速度2℃/minで2℃毎に測定した。(使用機器:オリエンテック製DDV−25FP)
【0058】
(シート外観)
目視にてシートを確認にて、透明性が高いものを○、白濁しているものを×とした。白濁すると、得られるシートの物性が不均一となってしまう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネートプレポリマー(A)と、硬化剤(B)とからなるポリウレタン樹脂形成性組成物であって、
(A)が、有機ポリイソシアネート(a1)と水酸基含有化合物(a2)からなるイソシアネート基末端プレポリマーであり、
(B)が、分子量500〜2,500の公称平均官能基数が2であるポリエステルポリオール(b1)と、二塩基酸(b21)と分子量500以下のトリオール(b22)及び分子量300以下のグリコール(b23)とからなる分子量500〜2,500の公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオール(b2)と、分子量150未満のグリコール(b3)の混合物であり、
(A)と(B)から得られる組成物の樹脂中の有機ポリイソシアネート(a1)の含有量が、1.06〜1.17mmol/gで、かつ、架橋剤濃度が0.11〜0.16mmol/gである、高反発かつ低歪みであることを特徴とする注型用ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項2】
(b2)が、トリメチロールプロパンと、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと、アジピン酸からなる公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオールである、請求項1記載の注型用ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項3】
(b2)が、トリメチロールプロパンと、1,4−ブタンジオールと、アジピン酸からなる公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオールである、請求項1に記載の注型用ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項4】
(b2)が、トリメチロールプロパンと3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とからなる公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオール、及び、トリメチロールプロパンと1,4−ブタンジオールとアジピン酸とからなる公称平均官能基数が3であるポリエステルポリオールからなる請求項1に注型用ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の注型用ポリウレタンエラストマー組成物からなるロール部材。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の注型用ポリウレタンエラストマー組成物からなる自動車用グラスラン。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載の注型用ポリウレタンエラストマー形成性組成物の製造方法。






























【公開番号】特開2008−133413(P2008−133413A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47484(P2007−47484)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】