説明

熱硬化型オーバーコート樹脂組成物

【課題】優れた貯蔵安定性を示しながらも、耐熱性、透明性、残膜率、平坦化率及び接着性が良好である。また、バインダー樹脂の構造や潜在性熱硬化剤の種類や組成比を変化させオーバーコートで求められる物性を調節することが可能なので、TFT‐LCDなどに用いられるカラーフィルターのオーバーコート材料として有効に用いられるオーバーコート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】バインダー樹脂3重量%ないし50重量%;潜在性硬化剤0重量%ないし15重量%;シリコン系化合物0.01重量%ないし15重量%及び有機溶媒20重量%ないし96.99重量%を含有することを特徴とする熱硬化型オーバーコート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TFT‐LCDなどに用いられるカラーフィルターのオーバーコート(overcoat)を形成するための熱硬化型オーバーコート樹脂組成物に関するものであって、さらに詳しくは、貯蔵安定性及び耐熱性などの物性に優れており、TFT‐LCDカラーフィルターのオーバーコート材料として有効に用いられ得る熱硬化型オーバーコート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
TFT‐LCDは最も成長速度が速い平板表示素子の一つであって、今後表示素子市場を主導して行くことと期待されている。このようなTFT‐LCDの大面積化のためには現在使われているガラスの大型化が伴われるべきであって、これによりカラーフィルター層の平坦化がなされるべきである。したがって、TFT‐LCDの大面積化を成すためには、カラーフィルター層の平坦化のためのオーバーコート材料の開発が必須である。
【0003】
現在、オーバーコート材料としては、UVタイプと熱硬化タイプの二種類があるが、ガラスが大型化されるにつれてUV照射をワンショット(one shot)でし難くなった。従って、熱硬化タイプのオーバーコートの開発が切実に必要となった(例えば、特許文献1)。しかし、従来の熱硬化型オーバーコートは、2液型エポキシタイプであって貯蔵安定性の問題のため使用前にバインダー溶液と硬化液とを混合した後、数時間以内に消耗しなければならないという工程上の短所がある。
【特許文献1】特開平6−250013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、前述した問題点を解決して、優れた貯蔵安定性を示しながらも、耐熱性、透明性、残膜率、平坦化率及び接着性が良好であるため、TFT‐LCDなどに用いられるカラーフィルターのオーバーコート材料として有効に用いられ得る熱硬化型オーバーコート樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の目的を果たすために、本発明は、下記化学式1または化学式2で表されるバインダー樹脂3重量%ないし50重量%、潜在性硬化剤0重量%ないし15重量%、シリコン系化合物0.01重量%ないし15重量%及び有機溶媒20重量%ないし96.99重量%を含有することを特徴とする熱硬化型オーバーコート樹脂組成物を提供する。
【0006】
【化1】

【0007】
上記化学式1において、R、R、Rは、独立的に水素またはメチル基であり、Rは、水素または炭素原子数が1〜16であるアルキルあるいは芳香族化合物であり、Rは、化学式10または化学式11であり、R13は、エポキシ基が含まれた炭素原子数が2〜12であるアルキル、シクロアルキルまたは芳香族化合物であり、R14は、エポキシ基が含まれた炭素原子数が2〜10であるアルキル、シクロアルキルあるいは芳香族化合物であり、xとyは、各重合単位のモル比であって、xは、0.02〜0.80、yは、0.20〜0.98である。上記化学式1のバインダー樹脂は、各重合単位の配列順序に拘束されないランダム共重合体でも良い。
【0008】
【化2】

【0009】
上記化学式2において、R、R、R、Rは、独立的に水素またはメチル基であり、R10は、水素または炭素原子数が1〜16であるアルキルまたはシクロアルキルまたは芳香族化合物であり、R11は、化学式12または化学式13であり、R15とR16は、エポキシ基を含む炭素原子数が2〜10であるアルキルあるいはシクロアルキルあるいは芳香族化合物であり、R12は、炭素原子数が1ないし10であるアルコキシまたは化学式14または化学式15であり、R17は、水素または炭素原子数が1〜14であるアルキルあるいはシクロアルキルあるいは芳香族化合物またはシランであり、R18は、水素または炭素原子数が1ないし14であるアルキルまたはシクロアルキルまたはアルコキシあるいは芳香族化合物である。
【0010】
上記化学式2において、l、m、nは、各重合単位のモル比であって、lは、0.02〜0.70、mは、0.10〜0.60及びnは、0.01〜0.60である共重合体である。上記化学式2のバインダー樹脂は、各重合単位の配列順序に拘束されないランダム共重合体でも良い。
上記化学式1または化学式2で表されるバインダー樹脂は、平均分子量が2,000ないし300,000であり、分散度が1.0ないし10.0であるものを用いることが望ましく、平均分子量が3,000ないし100,000であり、分散度が1.5ないし5.0であるものを用いることがさらに望ましい。
【0011】
本発明による潜在性硬化剤は、総樹脂固形分を基準にして0重量%ないし15重量%含まれることができる。本発明による潜在性硬化剤としては、下記化学式3で表される化合物、下記化学式4で表される化合物、下記化学式5で表される化合物、下記化学式6で表される化合物、下記化学式7で表される化合物及び下記化学式8で表される化合物から成る群より選択された何れか一つ以上の化合物が用いられ得る:
【0012】
【化3】

【0013】
上記化学式3において、R19は、アルキル基またはアリール基であり;
【0014】
【化4】

【0015】
上記化学式4において、R20は、アルキル基またはアリール基であり;
【0016】
【化5】

【0017】
上記化学式5において、R21及びR22は、それぞれアルキル基またはアリール基であり、Xは、塩素イオン、ブロムイオン、ヨードイオン、アルキルスルホネートイオン、ペルフルオロアルキルスルホネートイオン、フェニルスルホネート誘導体イオン、化学式16、化学式17、化学式18および化学式19から成る群より選択された何れか一つであり;
【0018】
【化6】

【0019】
上記化学式6において、R23、R24及びR25は、互いに独立的にアルキル基またはアリール基であり、Xは、塩素イオン、ブロムイオン、ヨードイオン、アルキルスルホネートイオン、ペルフルオロアルキルスルホネートイオン、フェニルスルホネート誘導体イオン、化学式16、化学式17、化学式18および化学式19から成る群より選択された何れか一つであり;
【0020】
【化7】

【0021】
上記化学式7において、R26、R27、R28及びR29は、互いに独立的にアルキル基またはアリール基であり、Xは、塩素イオン、ブロムイオン、ヨードイオン、アルキルスルホネートイオン、ペルフルオロアルキルスルホネートイオン、フェニルスルホネート誘導体イオン、化学式16、化学式17、化学式18および化学式19から成る群より選択された何れか一つであり;
【0022】
【化8】

【0023】
上記化学式8において、R30及びR31は、互いに独立的にアルキル基またはアリール基である。
本発明の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物において、潜在性硬化剤として上記化学式3ないし化学式8で表される化合物を添加しエポキシ基の硬化反応を促進させるための触媒として用いることができる。
以下、本発明の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物について詳しく説明する。
本発明の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物は、上記化学式1または化学式2で表されるバインダー樹脂を含む。
上記化学式1において、R、R、Rは、独立的に水素またはメチル基であり、Rは、水素または炭素原子数が1〜16であるアルキルあるいは芳香族化合物である。
は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t‐ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、2‐ヒドロキシエチル、エトキシメチル、フェニル、ベンジル、4‐ヒドロキシフェニル、3‐ヒドロキシフェニルである。
【0024】
上記化学式1のRは、化学式10または化学式11であり、R13とR14は、例えば、グリシジル、3,4‐エポキシブチル、2,3‐エポキシシクロヘキシル、3,4‐エポキシシクロヘキシル、2‐グリシジルオキシ‐1‐プロピル、3‐メチルオキセタン‐3‐メチル、3‐エチルオキセタン‐3‐メチル、6,7‐エポキシヘプチルなどである。
【0025】
上記化学式2において、R、R、R、Rは、独立的に水素またはメチル基であり、R10は、水素または炭素原子数が1〜16であるアルキルあるいは芳香族化合物である。
10は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t‐ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、2‐ヒドロキシエチル、エトキシメチル、フェニル、ベンジル、4‐ヒドロキシフェニル、3‐ヒドロキシフェニルなどである。
【0026】
上記化学式2のR11は、化学式12または化学式13であり、R15とR16は、例えば、グリシジル、3,4‐エポキシブチル、2,3‐エポキシシクロヘキシル、3,4‐エポキシシクロヘキシル、2‐グリシジルオキシ‐1‐プロピル、3‐メチルオキセタン‐3‐メチル、3‐エチルオキセタン‐3‐メチル、6,7‐エポキシヘプチルである。
【0027】
上記化学式2のR12は、炭素原子数が1ないし10であるアルコキシまたは化学式14または化学式15であり、R17は、例えば、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t‐ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、γ‐ブチロラクチル、アダマンチル、メチルアダマンチル、ジシクロフェンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロフェンタニル‐1‐エチル、ジシクロペンテニル‐1‐エチル、イソボニル、ジメチルアミノエチル、フェニル、ベンジル、4‐アセトキシフェニル、2‐ヒドロキシエチル、エトキシメチル、1‐エトキシエチル、4‐ヒドロキシフェニル、3‐ヒドロキシフェニル、トリメトキシ(エトキシ)シリル、メチルジメトキシシリル、フェニルジメトキシシリル、ジメチルメトキシ(エトキシ)シリル、トリメトキシ(エトキシ)シリルオキシプロピルなどである。R18は、例えば、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t‐ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヒドロキシ、1‐エトキシエチルオキシ、1‐エトキシメチルオキシ、アセトキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t‐ブトキシ、シクロヘキシルオキシなどであり、一つあるいは二つ以上を共に用いることができる。
【0028】
上記化学式1または化学式2で表されるバインダー樹脂は、3重量%ないし50重量%含有され、耐熱性に優れており230℃以上の高温工程においても殆ど分解されないため液晶汚染を最小化することができ、高温硬化後にも高透過率を維持することができ、側鎖にエポキシ基と反応性の高いカルボン酸などの反応性作用基がないため常温保管する際に貯蔵安定性に優れている長所がある。
【0029】
上記化学式1と化学式2の共重合体は、ラジカル重合開始剤と溶媒との存在下でラジカル反応により製造することができる。望ましくは、上記化学式1と化学式2で表されるバインダー樹脂は、平均分子量が2,000ないし300,000であり、分散度が1.0ないし10.0であり、さらに望ましくは、平均分子量が3,000ないし100,000であり、分散度が1.5ないし5.0である。
【0030】
また、本発明の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物は、総樹脂固形分を基準にして潜在性硬化剤0重量%ないし15重量%を含むことができる。上記潜在性硬化剤としては、上記化学式3で表される化合物、上記化学式4で表される化合物、上記化学式5で表される化合物、上記化学式6で表される化合物、上記化学式7で表される化合物及び上記化学式8で表される化合物から成る群より選択された何れか一つまたは2種以上の化合物が用いられ得る。
【0031】
上記化学式3で表される化合物は、ジカルボン酸サイクリック無水物であって、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、トリメリト酸無水物などを挙げることができる。
【0032】
上記化学式4で表される化合物は、テトラカルボン酸二無水物であって、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラ‐カルボン酸二無水物、ビフェニルテトラ‐カルボン酸二無水物、プロピル‐2,2‐ジフェニルテトラ‐カルボン酸二無水物、ヘキサフルオロプロピリデン‐2,2‐ジフェニルテトラ‐カルボン酸二無水物などを挙げることができる。上記化合物は、全て非イオン性タイプの潜在性硬化剤である。
【0033】
また、化学式5ないし化学式8で表される化合物は、酸発生(acid generator)タイプの潜在性硬化剤であって、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、ジ−(4‐t‐ブチルベンゼン)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニル4‐メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、S‐(2‐ナフタレンカルボニルメチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジメチル(4‐ナフトール)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、N‐スクシンイミジル10‐カンフルスルホネート、N‐(1,2,3,6‐テトラヒドロフタルイミジル)‐P‐トルエンスルホネート、N‐(1,8‐ナフタレンジカルボキシイミジル)‐10‐カンフルスルホネート、N‐(1,8‐ナフタレンカルボキシイミジル)‐P‐トルエンスルホネートなどを挙げることができる。
【0034】
化学式1または化学式2で表されるバインダー樹脂、非イオン性タイプの潜在性硬化剤及び酸発生タイプの潜在性硬化剤の種類と組成を適切に調節することで、オーバーコートで求められる物性を変化させることができる。
また、本発明の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物は、総樹脂固形分を基準にしてシリコン系化合物0.01重量%ないし15重量%を含む。熱硬化型オーバーコート樹脂組成物にアミン基またはエポキシ基を持つシリコン系化合物を添加すれば、接着力が向上し硬化後耐熱特性を向上させる効果がある。シリコン系化合物としては、シランまたはシロキサンまたはシラザン系添加剤を望ましく用いることができ、さらに望ましくは、炭素原子数が4〜40であるシランまたはシロキサンまたはシラザン化合物であり、具体的な例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、(3‐グリシドキシプロピル)トリメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐グリシドキシプロピル)メチルジメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシ(エトキシ)シラン、3,4‐エポキシブチルトリメトキシ(エトキシ)シラン、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシ(エトキシ)シラン、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐アミノプロピル)トリメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐アミノプロピル)ジメチルメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐アミノプロピル)メチルジメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐ヒドロキシプロピル)トリメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐ヒドロキシプロピル)メチルジメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐チオニルプロピル)トリメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐チオニルプロピル)メチルジメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐アクリロキシプロピル)トリメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐アクリロキシプロピル)メチルジメトキシ(エトキシ)シラン、ペンタシクロオクタシロキサン(POSS)誘導体、ヘキサアルキルトリシロキサン、オクタアルキルシクロテトラシロキサン、シルセスキオキサン誘導体、ヘキサメチルジシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザンなどを単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0035】
上記のような組成成分は溶媒に添加して用い、溶媒としては、バインダー樹脂、潜在性硬化剤及びその他添加剤との相溶性に優れた有機溶媒を用いることが有効である。上記のような目的で用いられる溶剤としては、エチルアセテート、ブチルアセテート、メチルメトキシプロピオネート、エチルエトキシプロピオネート、エチルラクテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールメチルアセテート、ジエチレングリコールエチルアセテート、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチル‐2‐ピロリドン、γ‐ブチロラクトン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジグリム(Diglyme)、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタンのうち選択された溶媒を単独でまたはこれらを2種以上混合して用いることができる。
【0036】
また、本発明の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物は、コーティング性と固形分含量を調節するために粘度を2cpsないし60cpsに調節することが望ましく、このような範囲に粘度を調節すれば、コーティング後薄膜のピンホール(pin‐hole)がなく、また薄膜の厚さを調節するのにより有利である。さらに望ましい粘度は、3cpsないし30cpsである。
【0037】
本発明の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物には、オーバーコート用組成物に通常用いられるレベリング剤、消泡剤などを適量添加することができ、必要に応じて、保存安定剤、ストライエーション(striation)防止剤、可塑剤などの相溶性がある添加剤をさらに添加することができる。
【発明の効果】
【0038】
上記のように、本発明による熱硬化型オーバーコート樹脂組成物は、優れた貯蔵安定性を示しながらも、耐熱性、透明性、残膜率、平坦化率及び接着性が良好である。また、バインダー樹脂の構造や潜在性熱硬化剤の種類や組成比を変化させてオーバーコートで求められる物性を調節することが可能なので、TFT‐LCDなどに用いられるカラーフィルターのオーバーコートとして有用に用いられ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例及び比較例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は種々の形態に変形され得、本発明の範囲が以下で詳述する実施例に限定されるものとして解釈されてはいけない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0040】
<実施例1>
撹拌器が設けられている反応混合槽に、下記表1の実施例1に記載されたバインダー樹脂成分と組成に従って化学式1で表されたバインダー樹脂溶液、(3‐グリシドキシプロピル)トリメトキシシランを順次添加し、溶媒を加えて常温で撹拌する。溶媒を加えてオーバーコート樹脂組成物の粘度を15cpsに調節する。表1に記載されたバランス(Balance)は、バインダー樹脂の含量比及び(3‐グリシドキシプロピル)トリメトキシシランの含量比を除いた含量比として溶媒を添加することを意味する。すなわち、バインダー樹脂25重量%及び(3‐グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン3重量%を除いた72重量%の溶媒を添加することを意味する。
【0041】
<実施例2〜29>
実施例1と同様の方法で下記表1及び表2に記載された成分と組成に従って化学式1または化学式2で表されたバインダー樹脂溶液、潜在性硬化剤、シリコン系化合物を順次添加し、溶媒を加えて常温で撹拌する。溶媒を加えてオーバーコート樹脂組成物の粘度を15cpsに調節する。表1及び表2に記載されたバランス(Balance)は、バインダー樹脂の含量比、潜在性硬化剤の含量比及びシリコン系化合物の含量比を除いた含量比として溶媒を添加することを意味する。例えば、実施例8においては、バインダー樹脂25重量%、潜在性硬化剤10重量%及びオクタメチルシクロテトラシロキサン4重量%を除いた61重量%の溶媒を添加することを意味する。
【0042】
実施例中で潜在性硬化剤Iないし潜在性硬化剤VIIは、それぞれ、無水フタル酸(I)、ピロメリト酸二無水物(II)、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート(III)、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート(IV)、トリフェニルスルホニウムカンフルスルホネート(V)、ジフェニル4‐メチルフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート(VI)、N‐(1,2,3,6‐テトラヒドロフタルイミジル)‐P‐トルエンスルホネート(VII)である。
【0043】
<比較例>
上記実施例のバインダー樹脂の代わり化学式9で表されるバインダー樹脂を用い、組成物の成分及び含量を表3に記載された組成に従って変化させたことを除いては、実施例と同様の方法でオーバーコート樹脂組成物を製造した。
【0044】
【化9】

【0045】
上記化学式9において、nは、1ないし10である。
【0046】
以上の実施例及び比較例においてオーバーコート樹脂組成物の評価は、シリコンウエハーまたはガラス板などの基板上で施し、レジスト組成物の熱的特性の調査、UV透過率、残膜率、貯蔵安定性の性能評価を行い、その結果は下記表4に示した。
【0047】
(1)UV透過率
組成物を基板上にスピンコーターを用いて500rpmの速度で20秒間塗布した後、90℃で3分間プリベーク(prebake)し、250℃のオーブンで60分間硬化してレジスト膜を形成し、UVを透過して400nmでの透過率を測定した。
【0048】
(2)残膜率
組成物を基板上にスピンコートし、プリベークした後の厚さと、250℃のオーブンで1時間硬化した後に形成された膜の厚さとの割合(%)を示す。
【0049】
(3)貯蔵安定性
組成物を常温で一ヶ月間放置した後粘度変化が5cps以内に入れば「優秀」とし、粘度変化が5cps以上であれば「不良」と判定した。
【0050】
(4)接着力
ガラス基板に組成物をコートしオーブンで硬化した後、ラインパターンを100等分して、2気圧の水蒸気圧条件で6時間PCT(Pressure Cooking Test)した後、ラインパターンをテープを用いて垂直方向に剥離させて、パターンが剥離されないものを「優秀」とし、パターンの剥離が認められるものを「不良」と判定した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
上記表4からわかるように、本発明に従って化学式1または化学式2のバインダーと化学式3ないし化学式8の潜在性熱硬化剤とシリコン系化合物とを混合して製造した熱硬化型オーバーコート樹脂組成物は、耐熱性、透明性、残膜率、平坦性に優れているだけでなく、ガラス表面との付着性が改善し、貯蔵安定性も非常に優れていることがわかる。
【0056】
図1は、オーバーコートが形成されたTFT‐LCD用カラーフィルターの模式図を示したものであり、図2は、実施例23による熱硬化型オーバーコート樹脂組成物の熱硬化後の熱重量分解度を示したグラフである。熱硬化後オーバーコート樹脂組成物の熱重量分解度では300℃まで安定した熱的特性を維持することがわかる。図3は、実施例23による熱硬化型オーバーコート樹脂組成物を220℃、230℃及び250℃のオーブンで各々1時間熱硬化した後、透過度を測定したグラフである。図2および図3からわかるように、実施例23による組成物は熱硬化後の熱的安定性に優れており、高温硬化後にも高い透過率を維持することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】オーバーコートが形成されたTFT‐LCD用カラーフィルターの模式図。
【図2】実施例23による熱硬化型オーバーコート樹脂組成物の熱硬化後の熱重量分解度を示したグラフ。
【図3】実施例23による熱硬化型オーバーコート樹脂組成物の熱硬化後の透過度を示したグラフ。
【符号の説明】
【0058】
1 カラーフィルター
2 ブラックマトリックス
3 オーバーコート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1または化学式2で表されるバインダー樹脂3重量%ないし50重量%;
潜在性硬化剤0重量%ないし15重量%;
シリコン系化合物0.01重量%ないし15重量%;及び
有機溶媒20重量%ないし96.99重量%を含有することを特徴とする熱硬化型オーバーコート樹脂組成物:
【化1】

上記化学式1において、
、R、Rは、独立的に水素またはメチル基であり、
は、水素または炭素原子数が1〜16であるアルキルあるいは芳香族化合物であり、
は、化学式10または化学式11であって、上記R13は、エポキシ基が含まれた炭素原子数が2〜12であるアルキル、シクロアルキルまたは芳香族化合物であり、R14は、エポキシ基が含まれた炭素原子数が2〜10であるアルキル、シクロアルキルあるいは芳香族化合物であり、
xとyは、各重合単位のモル比であって、xは、0.02〜0.80、yは、0.20〜0.98であり、上記化学式1のバインダー樹脂は各重合単位の配列順序に拘束されず、
【化2】

上記化学式2において、
、R、R、Rは、独立的に水素またはメチル基であり、
10は、水素または炭素原子数が1〜16であるアルキル、シクロアルキルまたは芳香族化合物であり、
11は、化学式12または化学式13であり、ここで、R15とR16は、エポキシ基が含まれた炭素原子数が2〜10であるアルキル、シクロアルキルあるいは芳香族化合物であり、
12は、炭素原子数が1ないし10であるアルコキシ、化学式14または化学式15であり、ここで、R17は、水素、炭素原子数が1〜14であるアルキル、シクロアルキル、芳香族化合物またはシランであり、
18は、水素、炭素原子数が1ないし14であるアルキル、シクロアルキル、アルコキシあるいは芳香族化合物であり、
l、m、nは、各重合単位のモル比であって、lは、0.02〜0.70、mは、0.10〜0.60及びnは、0.01〜0.60であり、上記化学式2のバインダー樹脂は各重合単位の配列順序に拘束されない。
【請求項2】
上記化学式1または化学式2で表されるバインダー樹脂は、平均分子量が2,000ないし300,000であり、分散度が1.0ないし10.0であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物。
【請求項3】
上記潜在性硬化剤は、下記化学式3ないし化学式8で表される化合物のうち何れか一つまたは二つ以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物:
【化3】

上記化学式3において、R19は、アルキル基またはアリール基である;
【化4】

上記化学式4において、R20は、アルキル基またはアリール基である;
【化5】

上記化学式5において、R21及びR22は、それぞれアルキル基またはアリール基であり、Xは、塩素イオン、ブロムイオン、ヨードイオン、アルキルスルホネートイオン、ペルフルオロアルキルスルホネートイオン、フェニルスルホネート誘導体イオン、化学式16、化学式17、化学式18および化学式19から成る群より選択された何れか一つである;
【化6】

上記化学式6において、R23、R24及びR25は、互いに独立的にアルキル基またはアリール基であり、Xは、塩素イオン、ブロムイオン、ヨードイオン、アルキルスルホネートイオン、ペルフルオロアルキルスルホネートイオン、フェニルスルホネート誘導体イオン、化学式16、化学式17、化学式18および化学式19から成る群より選択された何れか一つである;
【化7】

上記化学式7において、R26、R27、R28及びR29は、互いに独立的にアルキル基またはアリール基であり、Xは、塩素イオン、ブロムイオン、ヨードイオン、アルキルスルホネートイオン、ペルフルオロアルキルスルホネートイオン、フェニルスルホネート誘導体イオン、化学式16、化学式17、化学式18および化学式19から成る群より選択された何れか一つである;
【化8】

上記化学式8において、R30及びR31は、互いに独立的にアルキル基またはアリール基である。
【請求項4】
上記化学式3で表される化合物は、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデシルコハク酸無水物及びトリメリト酸無水物から成る群より選択された何れか一つであることを特徴とする請求項3に記載の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物。
【請求項5】
上記化学式4で表される化合物は、ピロメリト酸二無水物、ヘキサフルオロプロピリデン‐2,2‐ジフェニルテトラ‐カルボン酸二無水物、プロピル‐2,2‐ジフェニルテトラ‐カルボン酸二無水物、ビフェニルテトラ‐カルボン酸二無水物及びベンゾフェノンテトラ‐カルボン酸二無水物から成る群より選択された何れか一つであることを特徴とする請求項3に記載の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物。
【請求項6】
上記化学式5ないし化学式8で表される化合物は、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、ジ−(4‐t‐ブチルベンゼン)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニル4‐メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、S‐(2‐ナフタレンカルボニルメチル)テトラヒドロチオペニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジメチル(4‐ナフトール)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、N‐スクシンイミジル10‐カンフルスルホネート、N‐(1,2,3,6‐テトラヒドロフタルイミジル)‐P‐トルエンスルホネート、N‐(1,8‐ナフタレンジカルボキシイミジル)‐10‐カンフルスルホネート及びN‐(1,8‐ナフタレンカルボキシイミジル)‐P‐トルエンスルホネートから成る群より選択された何れか一つであることを特徴とする請求項3に記載の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物。
【請求項7】
上記シリコン系化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、(3‐グリシドキシプロピル)トリメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐グリシドキシプロピル)メチルジメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシ(エトキシ)シラン、3,4‐エポキシブチルトリメトキシ(エトキシ)シラン、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシ(エトキシ)シラン、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐アミノプロピル)トリメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐アミノプロピル)ジメチルメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐アミノプロピル)メチルジメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐ヒドロキシプロピル)トリメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐ヒドロキシプロピル)メチルジメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐チオニルプロピル)トリメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐チオニルプロピル)メチルジメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐アクリロキシプロピル)トリメトキシ(エトキシ)シラン、(3‐アクリロキシプロピル)メチルジメトキシ(エトキシ)シラン、ペンタシクロオクタシロキサン(POSS)誘導体、ヘキサアルキルトリシロキサン、オクタアルキルシクロテトラシロキサン、シルセスキオキサン誘導体、ヘキサメチルジシラザン及びオクタメチルシクロテトラシラザンから成る群より選択された何れか一つまたは2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物。
【請求項8】
粘度が2cpsないし60cpsになるように溶媒を添加することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物。
【請求項9】
上記有機溶媒は、エチルアセテート、ブチルアセテート、メチルメトキシプロピオネート、エチルエトキシプロピオネート、エチルラクテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールメチルアセテート、ジエチレングリコールエチルアセテート、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン, ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチル‐2‐ピロリドン、γ‐ブチロラクトン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジグリム(Diglyme)、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタンから成る群より選択された何れか一つまたは2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化型オーバーコート樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−174750(P2008−174750A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9731(P2008−9731)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(506423947)サムヤンイーエムエス カンパニー.,リミテッド. (5)
【氏名又は名称原語表記】SamyangEMS Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】