説明

熱硬化型付加反応ポリイミド化合物、熱硬化型付加反応ポリイミド組成物、およびこれらを用いた半導体装置

【課題】硬化時に反応副生成物が無く、溶融温度が低く、有機溶剤への溶解性も高く、他材料系との複合化を行ないやすく、硬化物が高い耐熱性を持つ熱硬化型付加反応ポリイミド化合物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物は、分子式BAp(p=3または4)で表される、置換基Aで置換された芳香族化合物Bからなる熱硬化型付加反応ポリイミド化合物であって、前記置換基Aは下記式(1)に示す構造を有する置換基であり、



上記式(1)において、0≦n≦2の整数、0≦m≦3の整数、Rは炭素数6以上の単環式芳香族基、または炭素数6以上の芳香族基およびその誘導体のいずれか2以上が直接または架橋により相互に結合された複数環式芳香族基であって六員環の数が1または2の四価の置換基であり、芳香族化合物Bは、少なくとも炭素数3個を有する芳香族化合物であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化型付加反応ポリイミド化合物、熱硬化型付加反応ポリイミド組成物、および該化合物または該組成物を封止材に用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空、宇宙技術の進展に伴い、これらの分野において使用される材料は軽量化への開発が精力的に進んでおり、構造部材の一部についても樹脂との複合材料化が検討されている。また、産業機器や電鉄、自動車の進展に伴い、これらの分野において使用される半導体素子の使用温度も向上しており、当該分野で使用される材料についても耐熱性の要求が高まっている。
【0003】
これらの用途に対して、近年、200℃以上の温度でも長時間、熱分解による重量減少が少なく、硬化反応の際に反応副生成物が無く、他材料との複合化を行なう際に、樹脂の付着量を調節しやすく、かつ、無溶剤の場合でも、比較的低い温度で成形を行なうことができる材料が求められている。このような概念に基づいた技術として、特許文献1に開示された方法では、下記式(25)に示す、末端基となる化合物に4−フェニルエチニルフタル酸無水物を用いた化合物が提案されている。
【0004】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−312699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、式(25)に示される化合物では、反応温度に370℃を要し、成形時の温度に280℃を要するので、他材料との複合化を行なう際に、複合化する他材料にも同等以上の耐熱性が必要になることから、適用範囲が狭く、セラミック、ガラス、金属、カーボンなどの一部の耐熱性を有した材料としか複合化ができなかった。また、式(25)に示される化合物は、溶剤可溶性が低いため、他の材料に樹脂を付着させにくく、ガラスクロスや基材に樹脂を付着させたりする際は、固形分で45wt%程度以上の溶解性が無いと、必要な機械強度や絶縁性を得るために多数回塗布しなければならない課題があった。また、低粘度化をはかるために溶剤を添加した溶液を用いて半導体装置を封止する場合、溶解度が低いと、多数回の封止を行なわなければならず、作業性が低下する課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、これらの課題を解決する方法について鋭意検討を行なった結果、耐熱性は分子中の分岐構造によって向上し、融点や溶解性は、分子量や分子構造によって制御でき、これらは特に対称性を高めた構造で効果が高いことがわかった。また、硬化温度についても、共役結合を持つ低分子量型化合物を末端に導入すれば、反応副生成物を生じることなく、300℃以下で硬化できることがわかった。また、樹脂硬化物は、400℃以上の熱分解開始温度が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、末端にエチニルアニリン単位から得られる共役結合骨格を有し、単環式芳香族基または芳香族基が直接か架橋により相互に結合された複数環式芳香族基からなる酸無水物と、芳香族ジアミン化合物とからイミド骨格を形成した化合物Aと、トリアミンまたはテトラアミン構造を持つ芳香族化合物Bとが、単環式芳香族基または芳香族基が直接か架橋により相互に結合された複数環式芳香族基からなる酸無水物を介してイミド骨格を形成している、熱硬化型付加反応ポリイミド化合物および組成物について提案する。
【0009】
具体的には本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物は、分子式BAp(p=3または4)で表される、置換基Aで置換された芳香族化合物Bからなる熱硬化型付加反応ポリイミド化合物であって、上記置換基Aは、下記式(1)に示す構造を有する置換基であり、
【0010】
【化2】

【0011】
上記式(1)において、0≦n≦2の整数、0≦m≦3の整数、Rは単環式芳香族基、または芳香族基およびその誘導体のいずれか2以上が直接または架橋により相互に結合された複数環式芳香族基であって六員環の数が1または2の四価の置換基であり、上記芳香族化合物Bは、炭素数が少なくとも3である芳香族化合物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、300℃以下での硬化が可能であり、硬化時に反応副生成物が無く、溶融温度が低く、有機溶剤への溶解性も高く、他材料系との複合化を行ないやすく、硬化物が400℃以上の高い耐熱性を持つ熱硬化型付加反応ポリイミド化合物および該化合物からなる組成物、ならびにこれらの化合物または組成物を用いた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物の一例のDSCの結果を示す図である。
【図2】(a)は本発明に係る半導体装置の一例を模式的に示す図であり、(b)は図2(a)のII−IIによる断面図である。
【図3】(a)は本発明に係る半導体装置の別の一例を模式的に示す図であり、(b)は図3(a)のIII−IIIによる断面図である。
【図4】実施例2で製造された熱硬化型付加反応ポリイミド化合物のFT−IRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明において図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。
【0015】
本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物は、分子式BAp(p=3または4)で表される、置換基Aで置換された芳香族化合物Bからなる熱硬化型付加反応ポリイミド化合物であり、上記置換基Aは、下記式(1)に示す構造を有する。式(1)の左端αの位置において置換する。
【0016】
【化3】

【0017】
上記熱硬化型付加反応ポリイミド化合物において、p=3の場合、すなわちBA3の分子構造の模式図は下式(2)に示す構造であり、p=4の場合、すなわちBA4の分子構造の模式図は下式(3)に示す構造である。
【0018】
【化4】

【0019】
【化5】

【0020】
上記置換基Aについて、nおよびmは整数であり、上記式(1)に示されるように、nはベンゼン誘導体構造の繰り返し数を示し、mは上記ベンゼン誘導体構造を有する化合物および酸無水物からイミド骨格を形成した分子構造の繰り返し数を示す。これらの値を大きくすると、分子量が増大し、溶剤に対する溶解性が低下する。nが0≦n≦2、かつ、mが0≦m≦3を満たす場合は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)またはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に対する溶解度は45wt%以上が得られる。
【0021】
上記繰り返し数nを構成するベンゼン誘導体の構造は、下式(4)および式(5)で示す様に、架橋をする場合は、1,3位を介して酸素で架橋するのがよい。架橋構造の中に1,2位または、1,4位で架橋した構造を少なくとも一つ用いると、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)またはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に対する溶解度が大きく低下する。また、n≧3になると、分子量が大きくなり、溶解性が低下する。
【0022】
【化6】

【0023】
【化7】

【0024】
ここで、下記反応式(6)に示す様に、ポリイミドの骨格となるイミド環は、ジアミン化合物と酸無水物との脱水縮合によって形成されるので、繰り返し数nを構成するベンゼン誘導体の構造を有する化合物、すなわち繰り返し数mを構成するイミド骨格を形成するのに用いられるベンゼン誘導体の構造を有する化合物は、ジアミン化合物である、1,3−ジアミノベンゼン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンなどが望ましい。
【0025】
【化8】

【0026】
上記式(1)においてRは、単環式芳香族基、または、芳香族基およびその誘導体が直接または架橋により相互に結合された複数環式芳香族基からなる四価の置換基である。Rは、脂肪族炭化水素で形成されていると、溶剤可溶性や透明性が向上するが、耐熱性が低下する。芳香族基またはその誘導体が直接相互に結合される場合、これらは縮合複素環式芳香族基を形成する。また、芳香族基およびその誘導体のいずれか2以上が相互に架橋される場合、式(7)、式(8)または式(9)に示す様に炭素や酸素などの原子を介さないで架橋されているのがよい。酸素などの原子を介して架橋されていると、溶剤可溶性が高まるが、硬化物の耐熱性を低下させてしまう。
【0027】
【化9】

【0028】
【化10】

【0029】
【化11】

【0030】
また、単環式芳香族基、芳香族基およびその誘導体は、炭素数6以上であることが望ましい。Rが炭素数5の単環式芳香族、または、炭素数5の芳香族基が直接または架橋により相互に結合された複数環式芳香族基の場合、熱安定性に欠け、硬化物の耐熱性が得られない。ただし、炭素数が5であっても、炭素以外の原子を含むことで六員環を形成する場合(フラン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、フラザン、イミダゾール、ピリジン、ピリミジンなどの芳香族複素環)は、この限りではなく、上記Rとして適用することができ、Rが単環式芳香族複素環、芳香族複素環が直接または架橋により相互に結合された複数環式芳香族複素環であってもよい。このように炭素以外の原子を含むことで六員環を形成する場合は、六員環を構成する元素のうち3以上が炭素であることが望ましい。上記直接相互に結合されたとは、下記式(10)のような結合をいい、上記架橋により相互に結合されたとは、下記式(11)のような結合をいう。
【0031】
ここで、Rが複数環式芳香族基からなる場合、芳香族を形成する六員環は、1個または2個がよい。Rとして3個以上の六員環を持つと、分子量が増大し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)またはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に対する溶解度が低下する。
【0032】
上記反応式(6)に示す様に、ポリイミドの骨格となるイミド環は、ジアミン化合物と酸無水物との脱水縮合によって形成される。ここで用いる酸無水物には、ピロメリット酸無水物(下記式(10))、4,4’−ビフタル酸無水物(下記式(11))、4,3’−ビフタル酸無水物(下記式12)などが挙げられる。
【0033】
【化12】

【0034】
【化13】

【0035】
【化14】

【0036】
置換基Aは、ジアミン化合物と酸無水物との脱水縮合によって形成されるイミド骨格が繰り返し数m(0≦m≦3)で繰り返された分子の片末端に、共役結合を持つ化合物を備える。このような末端化合物として、2−エチニルアニリンまたは3−エチニルアニリンまたは4−エチニルアニリンがよいが、4−(3−アミノフェニル)−2−メチル−3−ブチン−2−オール、4−エチニルフタル酸無水物なども末端に用いることができる。4−フェニルエチニルフタル酸無水物の様な化合物は、立体障害も大きく、これらの化合物を用いると、反応温度が上昇する。
【0037】
ここで、耐熱性は、TGA(Thermogravimetry analysys)の5%重量減少時の温度として評価することができるが、これに限定するものではなく、電気規格調査会試験法(JEC−6151)を用いてもよく、小沢法を用いた耐熱寿命を用いてもよい。いずれの評価においても本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物は従来のこのような化合物に比べて耐熱性に優れるものである。
【0038】
上記式(1)において芳香族化合物Bは、下式(13)、式(14)、式(15)、または式(16)に示す様な対称性を有する三価または四価の芳香族化合物構造を含むことがよい。
【0039】
【化15】

【0040】
【化16】

【0041】
【化17】

【0042】
【化18】

【0043】
二価の化合物である場合、対称性の有無に関わらず、置換基Aとなる化合物が結合しても、線状に分子が増大するため、熱硬化しても耐熱性が向上しない。また、三価以上の化合物であっても、非対称の構造であれば、置換基Aとなる化合物が結合した時に分子のサイズが大きくなり、溶融温度が向上したり、溶解性が低下したりする。また、芳香族化合物Bが脂肪族炭化水素で形成されていると、溶解性や硬化物の柔軟性は向上するが、耐熱性が低下するため、芳香族炭化水素系を用いるのがよい。また、芳香族を形成する炭素数は3個以上であれば、炭素以外の原子に窒素、酸素、硫黄、リンなどを含む芳香族複素環であってもよい。
【0044】
上記式(1)に示す通り、置換基Aと芳香族化合物Bとは、イミド環により結合し、このイミド環を形成するには、酸無水物とジアミン化合物とが反応する。したがって、芳香族化合物Bは末端アミンの化合物であり、具体的には、メラミン(式(17))、1,3,5−トリアミノベンゼン(式(18))、1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン(式(19))、5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)−21H,23H−ポルフィン(式(20))などが挙げられる。
【0045】
【化19】

【0046】
【化20】

【0047】
【化21】

【0048】
【化22】

【0049】
ここで、メラミンに含まれるトリアジン環は、シアネート基を持つ化合物からでも生成できるため、熱硬化型付加反応ポリイミド化合物を得るために、シアネート基を持つ化合物を用いて、硬化時にトリアジン環を生成させる方法がある。しかしながら、トリアジン環の生成は反応制御が困難であり、安定した耐熱性が得られないため、メラミンなどを用いて、最初からトリアジン環を形成している化合物を用いるのがよい。また、1,3,5−トリアミノベンゼン等に含まれるベンゼン環についても、同様に最初からベンゼン環を形成しているのがよい。
【0050】
本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物は次のようにして製造することができる。
まず芳香族化合物Bの三価または四価の結合手のそれぞれに、イミド環の形成により酸無水物が置換した置換化合物を得る(下記式(21))。下式(21)〜(24)において芳香族化合物Bの1つの結合手を「b」と表わす。他の2つまたは3つの結合手の記載は省略しているが、これらの結合手においても同様の反応が進行する。具体的には、芳香族化合物Bを溶媒に溶解した溶液を、酸無水物を溶媒に溶解した溶液に10℃程度の低温で滴下して混合し、その後混合溶液の温度を30℃程度に昇温して攪拌後、トルエンなどの反応溶媒を加え、全体の液温を150℃程度に昇温してイミド環を形成させる。このとき副生成する水分はディーンスターク管などを反応装置に備えることによって除去する。こうして、イミド環を形成した化合物を含む第1の溶液を得る。
【0051】
【化23】

【0052】
続いて、ジアミノ化合物を溶媒に溶解した溶液に上記得られた第1の溶液を滴下した後、上記と同様に液温を昇温して攪拌後、トルエンなどの反応溶媒を加え、全体の液温を150℃程度に昇温してイミド環を形成する。上記と同様に、このとき副生成する水分はディーンスターク管などを反応装置に備えることによって除去する。こうして、イミド環を形成した化合物(下式(22))を含む第2の溶液を得る。
【0053】
【化24】

【0054】
次いで、酸無水物を溶媒に溶解した溶液に、上記第2の溶液を滴下した後、上記と同様に液温を昇温して攪拌後、トルエンなどの反応溶媒を加え、全体の液温を150℃程度に昇温してイミド環を形成させて式(23)に示す構造を有する化合物を含む第3の溶液を得る。上記と同様に、このとき副生成する水分はディーンスターク管などを反応装置に備えることによって除去する。
【0055】
【化25】

【0056】
次いで、末端化合物を溶媒に溶解した溶液に、上記第3の溶液を滴下した後、上記度同様に液温を昇温して攪拌後、トルエンなどの反応溶媒を加え、全体の液温を150℃程度に昇温してイミド環を形成させる。このとき副生成する水分はディーンスターク管などの反応装置を備えることによって除去する。こうして末端にエチニル骨格を導入した下式(24)に示す構造を有する化合物を含む第4の溶液を得る。
【0057】
【化26】

【0058】
得られた第4の溶液を減圧状態として、溶媒を除去することで、熱硬化型付加反応ポリイミド化合物を製造することができる。この場合のn数は、ジアミノ化合物の構造により調整することができ、m数は1となる。
【0059】
上記式(1)におけるm数を変える場合は、上記第2の溶液に対して、第1の溶液または第2の溶液を用いた反応を繰り返し、その後、酸無水物および末端化合物を上述の方法により導入することで、m数の増大した熱効果型付加反応ポリイミド化合物を製造することができる。なお、上記製造方法に限られず、本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物の構造の化合物を合成することが可能な他の合成経路を用いてもよい。
【0060】
図1に、後述の実施例の製造方法にそって、置換基Aを構成する単位の形成に用いられる末端化合物としてエチニルアニリン、酸無水物として4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物として1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを用い、芳香族化合物Bとしてメラミンを用いて、n=2、m=1で製造された化合物のDSC(Differential Scanning Calorimetry)の結果を示す。この結果より、後述の実施例において製造された化合物の反応は、約250℃で起こることがわかった。また、上記化合物を用いて製造された本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物は、いずれも230以上275℃未満の間に硬化温度があることがわかった。
【0061】
次に、DSCを測定した化合物の溶融温度を測定した結果、215〜225℃の範囲にあることがわかった。また、上記の原料物を用いて製造された化合物の溶融温度は、いずれも200〜275℃にある。ここで、硬化物に複数の特性を持たせるために、化合物どうしを混合してもよい。溶融温度を利用して、液体状態で撹拌すると、固体状態で粉砕して撹拌するよりも均一な混合物を得ることができ、硬化後も個々の化合物が分離することなく、均一な硬化物が得られる。ここで、溶融温度の範囲に硬化温度があると、短時間(例えば30分程度)で硬化反応が進行してしまうため、硬化温度は、溶融温度の範囲外にあるのがよい。
【0062】
本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物を用いて熱硬化型付加反応ポリイミド組成物を構成する場合、上記本発明の化合物の単独の配合量または2以上の化合物を混合した合計量が、該組成物に混合する全樹脂量のうち80wt%以上であることが望ましい。また、本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド組成物には他の組成による化合物成分が含まれていても構わない。たとえば、溶解度が著しく低い化合物が複数含まれていても、主成分となる本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物が80wt%以上であれば、硬化物の物性を大きく左右しないためである。また、上記本発明の化合物を作製する際に、4≦mの溶解度が低い化合物が生成する可能性があるが、組成物を構成する全樹脂量の45wt%未満であれば、このような溶解度が低い化合物が含まれても構わない。
【0063】
上記のように熱硬化型付加反応ポリイミド化合物の複数を混合して組成物を構成する場合は、これら複数の化合物を硬化温度未満の温度で溶融混合することが好ましい。硬化温度未満の温度で溶融混合することで、硬化反応を起こすことなく、これらを均一に混合することが可能となる。
【0064】
また、本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物を含む組成物の硬化物は、DSC測定により400℃以上の熱分解開始温度が得られることが確認された。
【0065】
作製した熱硬化型付加反応ポリイミド化合物または組成物を用いて、図2(a)または図3(a)に示すパワーモジュールを封止する際、反応副生成物が無ければ、一度の封止でモジュール全体を絶縁することができる。従って、副生成物を発生するために、薄膜を複数回塗布したり、長時間の硬化時間にしたりしてモジュール全体を封止する工程に比べて、製造工程を簡略化できる。
【0066】
また、作製した熱硬化型付加反応ポリイミド化合物を用いると、半導体素子が高温になる場合でも、熱分解を抑えることができ、パワーモジュールの絶縁信頼性を向上できる。
【0067】
図2(a)および図2(b)、ならびに図3(a)および図3(b)により本発明に関わる半導体装置について説明する。図2(a)は本発明に係る半導体装置の一例を模式的に示す図であり、図2(b)は図2(a)のII−IIによる断面図である。図3(a)は本発明に係る半導体装置の別の一例を模式的に示す図であり、図3(b)は図3(a)のIII−IIIによる断面図である。
【0068】
これらの半導体装置10,20は、電極2を表面に形成した基板1、半導体素子3、配線4、端子9、ベース板6、およびケース7を備え、封止樹脂8により封止される。図2(a)および図3(a)において封止樹脂8は省略している。
【0069】
半導体素子3は電気信号の切換、増幅などを行なう素子であり、通常Si素子であるがこれに限定するものではなくGaAs、InP、SiCなどの化合物材料を用いた素子でもよく、半導体特性が得られるものであれば構わない。電極2上には半導体素子3が少なくとも1個搭載されるが、これに限定するものではなく複数の半導体素子を搭載してもよい。また、半導体装置10,20の中に、SiCとSi、SiとGaNなど複数種類の半導体素子を搭載してもよいことは、言うまでも無い。
【0070】
基板1は、半導体素子3を搭載し、ベース板6との間を絶縁するための基板である。基板1に用いられる材料は、アルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素などが用いられるが、これらに限定するものではなく、窒化珪素、シリカなどを用いてもよく、樹脂にセラミック粒子を充填したものでも構わない。セラミック粒子の材質は、通常、アルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素が用いられるがこれに限定するものではない。粒子の形状は、通常、球状や粒状が用いられるが、これに限定するものではなく、破砕状やリンペン状を用いてもよい。
【0071】
基板1の電極2、端子9はモジュールの外部に電力を供給したり、モジュールからの電気信号を伝達したりする配線路である。通常は銅を用いるがこれに限定するものではなく、銀、アルミニウム、金など導電性を持つ金属であれば構わない。また金属表面は防錆のため金、ニッケルなどのめっきを施しても構わない。さらに、基板1の電極2はエッチングにより作製されるが、この方法に限定されるものではなく、打ち抜き加工で作製してもよく、所定の形状に加工できる方法であれば構わない。
【0072】
配線4は、電極2や端子9から半導体素子3に電力や電気信号を伝達する線である。通常は、アルミニウムや金が用いられるが、これに限定するものではなく、銅など導電性を持つ金属であれば構わない。また金属表面は防錆のため金、ニッケルなどのめっきを施しても構わない。
【0073】
ケース7は、電極2を固定し、半導体装置10,20の外形を形成する絶縁性の樹脂であり、エポキシ樹脂中にアルミナ、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどのセラミック微粒子を充填させたものを用いるがこれに限定するものではなく、微粒子は、ダイヤモンドや樹脂でもよく、絶縁性樹脂は、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエステル、ポリブチレンテレフタラート(PBT)など成形できる樹脂であればよい。微粒子の粒子形状は通常球状粒子を用いるがこれに限定するものではなく、粒状、破砕状、りん片状などを用いてもよい。
【0074】
ベース板6は、通常、銅、アルミニウムなどの金属板を用いるがこれに限定するものではなく、AlSiCなどの合金を用いてもよく、樹脂中にセラミック粒子やガラス繊維を充填した複合材料を用いてもよい。またベース板は放熱性を高めるために通常放熱フィンに固定されるが、これに限定するものではなくベース板の内部に冷却媒体を流して冷却効率を高めてもよい。
【0075】
ここで、半導体装置10,20における封止樹脂8で封止する体積は、5cc〜100ccであることが知られている。本発明の化合物の比重は、その構造から1.3〜1.5g/cm3であり、NMPの比重は約1.02g/cm3、DMFの比重は約0.94g/cm3であることから、作製した化合物のNMP溶液またはDMF溶液を用いて半導体装置を10回以内で目的の封止量の98%以上を封止するには、溶液の濃度が45wt%以上必要である。溶液の濃度が45wt%以下になると、封止の回数が10回以上になり、作業性が低下してしまうと共に、硬化時の熱応力で界面剥離などが発生し、絶縁性を著しく損なう。このような観点から、本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物のNMP溶液またはDMF溶液の濃度が45wt%以上であることが望ましく、これらの溶媒のそれぞれに対して45wt%以上の溶解性であることが望ましい。化合物の比重はJIS規格、Z8807に従った固体比重測定方法により決定した。
【0076】
本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物および熱硬化型付加反応ポリイミド組成物は、硬化時に反応副生成物が無く、溶融温度が低く、有機溶剤への溶解性も高く、他材料系との複合化を行ないやすく、また、硬化物が高い耐熱性を持つので、これらの化合物および組成物を封止材に用いた半導体装置は硬化時に封止材によるダメージがなく、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において製造された化合物の構造の同定は、GPC測定(Gel Permeation Chromatography)、IRスペクトル測定により行なった。測定条件は、GPC測定では、溶媒にテトラヒドロフランを用いて濃度を0.1〜0.5wt%に調節した溶液を使用して測定し、FT−IRスペクトル測定では、KBr法を用いて400cm-1〜4600cm-1の範囲を測定した。
【0078】
置換基Aを構成する各化合物の末端化合物に3−エチニルアニリン、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを使用し、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物Bにメラミンを使用し、n=2、m=1にした熱硬化型付加反応ポリイミド化合物の作製方法を示す。
【0079】
メラミン 0.01mol(1.26g)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP) 100mLに溶解させ、溶液aを作製する。次に、4,4’−ビフタル酸無水物 0.03mol(8.83g)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP) 100mLに溶解させ、溶液bを作製する。10℃に保った溶液bを撹拌しながら、溶液bに0.1mL/秒〜1mL/秒の速度で溶液aを滴下した。
【0080】
溶液aの全量を滴下後に液温を30℃に昇温して、30℃で1時間撹拌した後、トルエン 100mLを添加した反応液の液温を150℃に昇温した。150℃の温度条件下で、イミド環生成の時に副生成する水分を、トルエンとの共沸により取り除き、ディーンスターク管を用いてトルエンだけを反応液中に戻しながら、6時間反応させて溶液cを作製した。溶液cは反応後に静置して室温に冷却した。
【0081】
次に、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン 0.03mol(8.76g)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP) 100mLに溶解させ、溶液dを作製した。次に、10℃に保った溶液dを撹拌しながら、溶液dに0.1mL/秒〜1mL/秒の速度で溶液cを滴下した。
【0082】
溶液cの全量を滴下後に液温を30℃に昇温して、30℃で1時間撹拌した後、トルエン 50mLを添加した反応液の液温を150℃に昇温した。150℃の温度条件下で、イミド環生成の時に副生成する水分を、トルエンとの共沸により取り除き、ディーンスターク管を用いてトルエンだけを反応液中に戻しながら、6時間反応させて溶液eを作製した。溶液eは反応後に静置して室温に冷却した。
【0083】
次に、4,4’−ビフタル酸無水物 0.03mol(8.83g)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP) 100mLに溶解させ、溶液fを作製した。次に、10℃に保った溶液fを撹拌しながら、溶液fに0.1mL/秒〜1mL/秒の速度で溶液eを滴下した。
【0084】
溶液eの全量を滴下後に液温を30℃に昇温して、30℃で1時間撹拌した後、トルエン 50mLを添加した反応液の液温を150℃に昇温した。150℃の温度条件下で、イミド環生成の時に副生成する水分を、トルエンとの共沸により取り除き、ディーンスターク管を用いてトルエンだけを反応液中に戻しながら、6時間反応させて溶液gを作製した。溶液gは反応後に静置して室温に冷却した。
【0085】
次に、3−エチニルアニリン 0.03mol(3.51g)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP) 100mLに溶解させ、溶液hを作製した。次に、10℃に保った溶液hを撹拌しながら、溶液hに0.1mL/秒〜1mL/秒の速度で溶液gを滴下した。
【0086】
溶液gの全量を滴下後に液温を30℃に昇温して、30℃で1時間撹拌した後、トルエン 50mLを添加した反応液の液温を150℃に昇温した。150℃の温度条件下で、イミド環生成の時に副生成する水分を、トルエンとの共沸により取り除き、ディーンスターク管を用いてトルエンだけを反応液中に戻しながら、6時間反応させて溶液iを作製した。
【0087】
溶液iから減圧状態で、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびトルエンを除去して、熱硬化型付加反応ポリイミド化合物を取り出した。得られた熱硬化型付加反応ポリイミド化合物の構造をGPS測定、およびFT−IRスペクトル測定により同定したところ、後述の表1〜表4に記載の置換基および繰り返し単位を有する本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物を確認した。これらの熱硬化型付加反応ポリイミド化合物の代表的なものとして、実施例2で得られた化合物のFT−IRスペクトル測定のチャートを図4に示す。
【0088】
また、置換基Aを構成する末端化合物として4−フェニルエチニルフタル酸無水物、4−エチニルフタル酸無水物を用いる場合、これらの0.03molをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の100mLに溶解させ溶液jEP、溶液jEを作製し、次に、10℃に保った溶液jEP、溶液jEを撹拌しながら、それぞれの溶液に0.1mL/秒〜1mL/秒の速度で溶液eを滴下した。
【0089】
溶液eの全量を滴下後に液温を30℃に昇温して、30℃で1時間撹拌した後、トルエン 50mLを添加した反応液の液温を150℃に昇温した。150℃の温度条件下で、イミド環生成の時に副生成する水分を、トルエンとの共沸により取り除き、ディーンスターク管を用いてトルエンだけを反応液中に戻しながら、6時間反応させて溶液kEP、溶液kEを作製した。溶液kEP、溶液kEは反応後に静置して室温に冷却した。
【0090】
溶液kEP、溶液kEから減圧状態で、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびトルエンを除去して、熱硬化型付加反応ポリイミド化合物をそれぞれ取り出した。
【0091】
m数を変える場合は、溶液dと溶液fを繰り返し添加して、その後酸無水物および末端化合物を導入して、熱硬化型付加反応ポリイミド化合物を作製した。
【0092】
置換基Aを形成する酸無水物、ジアミン化合物、および末端化合物には、以下のものを表1〜表3に従い用いた。これらの配合比は、上記製造方法と同様とした。
【0093】
酸無水物として、ピロメリット酸無水物、4,4’−ビフタル酸無水物、または(4,3’−ビフタル酸無水物を用いた。
【0094】
ジアミン化合物として、1,3−ジアミノベンゼン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、または、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いた。
【0095】
末端化合物(表中、「末端」)として、2−エチニルアニリン、3−エチニルアニリン、4−エチニルアニリン、4−(3−アミノフェニル)−2−メチル−3−ブチン−2−オール、4−フェニルエチニルフタル酸無水物、または、4−エチニルフタル酸無水物、を用いた。
【0096】
また、置換される芳香族化合物Bである対称性化合物(表中、「対称性化合物」)として、メラミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン、または、5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)−21H,23H−ポルフィンを用いた。
【0097】
表1〜表3の組合せで、上述と同様の合成方法にて熱硬化型付加反応ポリイミド化合物を作製し、溶解度と、溶融温度と、硬化温度と、耐熱性の評価結果を表1〜表3に示す。
【0098】
溶解度は、25℃に調節したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の100g、または、25℃に調節したN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の100gに上記得られた化合物を溶解させ、不溶物ができるまで溶解させた重量により決定した。溶融温度は、1.0mmφのガラスキャピラリ内に上記化合物を入れ、1℃/minの昇温速度で温度を上げながら、化合物が融解する温度を測定した。硬化温度は、図1に示すようなDSCの結果により決定した。また、耐熱性はTGAの5%重量減少時の温度として評価した。
【0099】
【表1】

【0100】
実施例1〜実施例4および比較例1では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物(表中「アミン」、以下同様)に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物(表中「対称性化合物」、以下同様)にメラミン、末端化合物(表中「末端」、以下同様)に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=2の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)またはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、m=0の時も同様に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。さらに、硬化温度が、溶融温度の範囲外になることも明らかになった。
【0101】
これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる。たとえば、実施例1、実施例2、実施例3の化合物であれば、235℃の温度で各化合物を溶融させながら、30分の撹拌を行ない、均一な混合物を得ることができた。一方、m=4の化合物(比較例1)は、溶融温度の範囲と硬化温度が重なってしまうことから、溶融させながら、均一な化合物を得ることができない。
【0102】
実施例5〜6および比較例2では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物にメラミン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=1の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、例えば、30分程度の短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0103】
実施例7〜8および比較例3では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ジアミノベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物にメラミン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=1の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0104】
実施例9〜11および比較例4では、酸無水物にピロメリット酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物にメラミン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=2の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、m=0の時も同様に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0105】
実施例12〜13および比較例5では、酸無水物にピロメリット酸無水物、ジアミン化合物に3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物にメラミン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=1の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0106】
実施例14〜15および比較例6では、酸無水物にピロメリット酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ジアミノベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物にメラミン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=0の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0107】
次に、実施例1〜15について、酸無水物に4,3’−ビフタル酸無水物を使用した場合は、酸無水物に4,3’−ビフタル酸無水物を使用した実施例と同じ結果が得られたことから、記載については省略する。また、比較例1〜6についてもそれぞれ酸無水物として4,3’−ビフタル酸無水物を用いた場合と4,4’−ビフタル酸無水物を用いた場合とは同じ結果となった。
【0108】
【表2】

【0109】
実施例16〜18および比較例7では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物に1,3,5−トリアミノベンゼン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=2の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。m=0の時も同様に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0110】
実施例19〜20および比較例8では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物に1,3,5−トリアミノベンゼン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=1の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0111】
実施例21〜22および比較例9では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ジアミノベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物に1,3,5−トリアミノベンゼン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=0の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0112】
実施例23〜25および比較例10では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物に1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=2の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。m=0の時も同様に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0113】
実施例26〜27および比較例11では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物に1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=1の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0114】
実施例28〜29および比較例12では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ジアミノベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物に1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=0の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0115】
【表3】

【0116】
実施例30〜32および比較例13では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物に5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)−21H,23H−ポルフィン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=2の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。m=0の時も同様に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0117】
実施例33〜34および比較例14では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物に5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)−21H,23H−ポルフィン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=1の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0118】
実施例35〜36および比較例15では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ジアミノベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物に5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)−21H,23H−ポルフィン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いた例を示す。この結果より、n=0の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0119】
次に、実施例1〜36の範囲で末端化合物に2−エチニルアニリンまたは、4−エチニルアニリンを使用した時は、3−エチニルアニリンを使用した時とそれぞれ同じ結果であったことから、記載を省略する。また、比較例1〜15についても同様に末端化合物を変更した実験を行なったところ、末端化合物以外が同じ場合の上記各比較例と同じ結果となった。
【0120】
実施例37〜38および比較例16では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物にメラミン、末端化合物に4−(3−アミノフェニル)−2−メチル−3−ブチン−2−オールを用いた例を示す。この結果より、n=2の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0121】
実施例39〜40および比較例17では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物にメラミン、末端化合物に4−フェニルエチニルフタル酸無水物を用いた例を示す。この結果より、n=2の時に1≦m≦3であっても、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度は45wt%以上を得られないことが明らかになった。
【0122】
実施例41〜42および比較例18では、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物にメラミン、末端化合物に4−エチニルフタル酸無水物を用いた例を示す。この結果より、n=2の時に1≦m≦3であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のそれぞれに対する溶解度が45wt%以上得られることが明らかになった。また、これらの化合物は、溶融温度が硬化温度よりも低いため、短時間であれば、複数の化合物を溶融させて撹拌することができる事も明らかになった。
【0123】
上述の作製方法にて熱硬化型付加反応ポリイミド化合物を作製する場合、m数の中の酸無水物およびジアミン化合物は全て同じでなくてもよい。また、m数の中で、複数の酸無水物またはジアミン化合物を用いれば、中間の性質が得られることは言うまでもない。
【0124】
次に、酸無水物に4,4’−ビフタル酸無水物、ジアミン化合物に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、対称性を有する三価または四価の芳香族化合物にメラミン、末端化合物に3−エチニルアニリンを用いて作製した化合物の混合比と物性の関係を表4に示す。これらのmの繰り返し数の相違は、上述のように溶液dと溶液fを繰り返し添加することによる。
【0125】
【表4】

【0126】
実施例43では、全樹脂量比でm=1を79wt%、m=4を12wt%、m=5を5wt%、m=6を4wt%に配合した。この結果より、0≦m≦3の範囲で配合する成分が79wt%以下になると、本来の物性値である、m=1の物性値とは大きく外れ、硬化温度が、溶融温度の範囲に重なってしまうことが明らかになった。
【0127】
一方、実施例44〜48では、0≦m≦3の範囲で配合する成分が80wt%以上になると、配合する成分の一番多い物性値に近くなり、硬化温度が、溶融温度の範囲に重ならない事が明らかになった。
【0128】
次に作製した化合物を用いて、半導体素子を搭載した半導体装置について説明する。
図2(a)および図2(b)に、サイズが約100mm×50mm×30mmのケース型の半導体装置の模式図を示す。
【0129】
この半導体装置10では、AlNセラミック板の上に銅電極2が設けられた基板1を使用し、半導体素子3には5.0×4.0mmと5.0mm×6.0mmのSiC素子を搭載し、2.0mm厚の銅ベース板6の上に金属接合材を使用して基板1が搭載されている。ケース7にはPPS(ポリフェニレンサルファイド)を使用し、封止に必要な封止樹脂8の体積は、10cm3である。このケース型半導体装置10に作製した化合物を含む熱硬化型付加反応ポリイミド組成物を封止樹脂として用いて内部の封止を行ない、−40℃と250℃のヒートサイクル試験を50サイクル実施した後に絶縁破壊試験した。
【0130】
封止の方法は、溶剤を使用する場合は、作製した化合物をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に45wt%溶かした溶液の10cm3を30℃のケース型半導体装置の内部に注ぎ込み、200Torrで泡が無くなるまで脱泡する。脱泡した後は760Torrに戻し、ケースごと150℃で3時間加熱し、緩やかにNMPを除去した後、1℃/minの昇温速度で表1〜表3に示す硬化温度まで昇温して、その温度で3時間加熱し、樹脂を硬化させた。次に、硬化した樹脂の上から更に約6.3cm3の溶液を注ぎ込み、200Torrで泡が無くなるまで脱泡する。脱泡した後は760Torrに戻し、ケースごと150℃で3時間加熱し、緩やかにNMPを除去した後、1℃/minの昇温速度で表1〜表3に示す硬化温度まで昇温して、その温度で3時間加熱し、樹脂を硬化させた。同様の方法にて、封止された樹脂の量を考慮しながら、ケース内部に溶液を注ぎ込み、脱泡と溶剤除去を行ない、樹脂を硬化させた。樹脂の注入は、10cm3の98%(9.8cm3)を超えるまで繰り返し行なった。
【0131】
溶剤を使用しない場合は、作製した化合物を溶融温度で加熱攪拌した後、10Torrの減圧下で泡が無くなるまで脱泡し、使用する封止樹脂の溶融温度に加熱したケース型半導体装置の内部に、10Torrのままで溶融した樹脂を10cm3注入する。注入後は760Torrに戻し、表1〜表3に示す硬化温度において、3時間で硬化を行なった。
【0132】
絶縁破壊電圧は、30秒間試験電圧を保持しながら、0.5kVステップで昇圧し、短絡する電圧を求めた。
【0133】
表5〜表7に絶縁破壊試験結果を示す。溶剤を使用する場合(表中「溶剤使用注入」)は、45wt%の溶解度が得られない化合物については、10回以上の注入を行ない、封止体積の98%以上を封止した。この結果より、45wt%以上の溶解度がある化合物については、7.0kVの高い絶縁を得られることが明らかになった。また、溶解度が45wt%以下になり、注入回数が10回を超えたものは、絶縁破壊電圧が1.0kVしか得られないことが明らかになった。破壊電圧が低い半導体装置は、樹脂の層間やケース付近に剥離が発生していたことから、剥離が絶縁破壊電圧を低下させていることが明らかになった。
【0134】
また、溶剤を使用しない場合(表中「無溶剤注入」)は、硬化温度が溶融温度の範囲外になっている化合物では、7.0kVの高い絶縁を得られることが明らかになった。また、溶解度が45wt%以下で硬化温度が溶融温度の範囲内になっている化合物では、絶縁破壊電圧が1.0kVしか得られないことが明らかになった。絶縁破壊電圧が低い半導体装置では、封止不十分な箇所が残っており、注入の際に化合物の硬化が進んでしまったことが原因であることがわかった。
【0135】
ケース型の半導体装置に作製した化合物を注入する際、樹脂にAl23、SiO2、BN、AlNなどのセラミックフィラーを充填しておいてもよく、フィラー形状や、粒度分などの制御を行なってもよいことは言うまでも無い。
【0136】
【表5】

【0137】
【表6】

【0138】
【表7】

【0139】
次に、図3(a)および図3(b)にサイズが約50mm×70mm×7mmの金型成形で作製する半導体装置20を示す。
【0140】
この半導体装置20では、エポキシ樹脂にセラミック粉を充填して硬化させた板(基板1)を介して2.0mm厚の電極2と0.1mm厚のベース板6が設けられており、半導体素子3には5.0×4.0mmと5.0mm×6.0mmのSiC素子を搭載されている。この半導体装置20の封止に必要な樹脂の体積は、10cm3であり、作製した化合物を含む熱硬化型付加反応ポリイミド組成物を用いて内部の封止を行ない、−40℃と250℃のヒートサイクル試験を50サイクル実施した後に絶縁破壊試験した。
【0141】
半導体装置の封止は、半導体素子を搭載した電極や基板などを金型内の所定の位置に設置した後、6Torrで金型内を減圧し、溶融温度に加熱した化合物を100kg/cm2の圧力で注入した。注入後は金型内を760Torrに戻し、3時間で樹脂硬化させてから金型より取出し出した。
【0142】
表5〜表7に絶縁破壊試験結果を示す。硬化温度が溶融温度の範囲外になっている化合物では、7.0kVの高い絶縁を得られることが明らかになった。また、硬化温度が溶融温度の範囲内になっている化合物では、絶縁破壊電圧が1.0kVしか得られないことが明らかになった。絶縁破壊電圧が低い半導体装置では、封止が不十分な箇所が残っており、注入の際に化合物の硬化が進んでしまったことが原因であることがわかった。
【0143】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0144】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物および組成物は、硬化時に反応副生成物が無く、溶融温度が低く、有機溶剤への溶解性も高く、他材料系との複合化を行ないやすく、硬化物が高い耐熱性を持つので、半導体装置の封止樹脂に限らず、このような硬化特性等が要求される分野において用いることができる。
【符号の説明】
【0146】
1 基板、2 電極、3 半導体素子、4 配線、6 ベース板、7 ケース、8 封止樹脂、9 端子、10,20 半導体素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子式BAp(p=3または4)で表される、置換基Aで置換された芳香族化合物Bからなる熱硬化型付加反応ポリイミド化合物であって、
前記置換基Aは、下記式(1)に示す構造を有する置換基であり、
【化1】

上記式(1)において、0≦n≦2の整数、0≦m≦3の整数、Rは単環式芳香族基、または芳香族基およびその誘導体のいずれか2以上が直接または架橋により相互に結合された複数環式芳香族基であって六員環の数が1または2の四価の置換基であり、
前記芳香族化合物Bは、炭素数が少なくとも3である芳香族化合物である、熱硬化型付加反応ポリイミド化合物。
【請求項2】
N−メチル−2−ピロリドンまたはN,N−ジメチルホルムアミドに対する溶解度が45質量%以上である、請求項1に記載の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物。
【請求項3】
硬化温度が230℃以上275℃未満である、請求項1または2に記載の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化型付加反応ポリイミド化合物の複数を、硬化温度未満の温度で溶融混合した熱硬化型付加反応ポリイミド組成物。
【請求項5】
分子式BAP(p=3または4)で表わされる、置換基Aで置換された芳香族化合物Bからなる熱硬化型付加反応ポリイミド化合物を含む熱硬化型付加反応ポリイミド組成物であって、
前記置換基Aは、酸無水物とジアミン化合物との反応により形成される繰り返し単位の片末端に末端化合物が置換した下記式(1)で示される構造を有し、
【化2】

前記酸無水物は、ピロメリット酸無水物、4,4’−ビフタル酸無水物、または、4,3’−ビフタル酸無水物であり、前記ジアミン化合物は、1、3−ジアミノベンゼン、3,3’ジアミノジフェニルエーテル、または、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンであり、前記末端化合物は、2−エチニルアニリン、3−エチニルアニリン、または、4−エチニルアニリンであり、
前記芳香族化合物Bは、対称性を有する化合物であって、メラミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン、または5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)−21H,23H−ポルフィンであり、
上記式(1)において0≦n≦2、0≦m≦3を満たす化合物の単独の配合量または2以上の化合物を混合した合計配合量が、組成物を構成する全樹脂質量の80%以上である、熱硬化型付加反応ポリイミド組成物。
【請求項6】
分子式BAp(p=3または4)で表される、置換基Aで置換された芳香族化合物Bからなる熱硬化型付加反応ポリイミド化合物であって、
前記置換基Aは、下記式(1)に示す構造を有する置換基であり、
【化3】

上記式(1)において、0≦n≦2の整数、0≦m≦3の整数、Rは単環式芳香族基、または芳香族基およびその誘導体のいずれか2以上が直接または架橋により相互に結合された複数環式芳香族基であって六員環の数が1または2の四価の置換基であり、
前記芳香族化合物Bは、炭素数が少なくとも3である芳香族化合物である、熱硬化型付加反応ポリイミド化合物を用いて、半導体素子を封止したことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−132168(P2011−132168A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292681(P2009−292681)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】