説明

熱硬化性シリコーン樹脂用組成物

【課題】半硬化状態での保存安定性に優れ、かつ、透明性、耐熱性、及び接着性に優れる、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物、及び、該組成物の成形体である接着剤シートを提供すること。
【解決手段】(1)式(I):


(式中、Rは一価の炭化水素基を示し、nは20〜10000の整数であり、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる両末端シラノール型シリコーン樹脂、(2)トリアルコキシシラン、及び(3)縮合触媒を含有してなる、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物に関する。さらに詳しくは、半硬化状態での保存安定性に優れ、かつ、透明性、耐熱性、及び接着性に優れる、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物、及び、該組成物の成形体である接着剤シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般照明への応用が検討されている高出力白色LED装置には、種々の用途で透明性と耐熱性に優れた接着剤が使用されている。例えば、特許文献1では、透光性支持体とLEDチップとを固定する接着剤が開示されており、該接着剤は、エポシキ樹脂、シリコーン樹脂や水ガラス等で構成されている。
【0003】
また、特許文献2では、蛍光体プレートをLED上に配置する際に、シリコーン、低融点ガラス、透明接着剤等の材料で調製された接着剤を使用している。特許文献3では、LEDチップの基板と、基台に形成された光反射層とを、シリコーン系接着剤で接着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3852465号公報
【特許文献2】特開2007−273998号公報
【特許文献3】特開2007−311401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来用いられている接着剤は、未だ十分満足できるものではない。即ち、エポキシ樹脂は、LEDチップの発熱によって劣化して変色しやすく、使用により光束の低下を招きやすい。シリコーン樹脂は、耐熱変色性に優れているものの、200℃以上の条件下では環状シロキサンの発生を伴う熱分解が起こりやすく、これにより、装置の周囲が汚染されるという問題がある。また、ガラスは、耐熱変色性と耐熱分解性に優れているが、軟化温度が高く、しかも硬くて脆い性質を有するため、加工性や耐クラック性に劣る。
【0006】
本発明の課題は、半硬化状態での保存安定性に優れ、かつ、透明性、耐熱性、及び接着性に優れる、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物、及び、該組成物の成形体である接着剤シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
〔1〕 (1)式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rは一価の炭化水素基を示し、nは20〜10000の整数であり、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる両末端シラノール型シリコーン樹脂、(2)トリアルコキシシラン、及び(3)縮合触媒を含有してなる、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物、ならびに
〔2〕 前記〔1〕記載の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物を基材の上に塗工して乾燥することにより成形させてなる、シリコーン接着剤シート
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、半硬化状態での保存安定性に優れ、かつ、透明性、耐熱性、及び接着性に優れるシリコーン樹脂を提供できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、縮合反応により樹脂化する成分を含有するものであって、具体的には、(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂、(2)トリアルコキシシラン、及び(3)縮合触媒を含有し、(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂が、式(I):
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Rは一価の炭化水素基を示し、nは20〜10000の整数であり、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物であることに大きな特徴を有する。
【0014】
本発明の組成物において縮合反応に関与する官能基は、(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂のシラノール基と、(2)トリアルコキシシランのアルコキシシリル基である。これらの官能基は、式(I)の基本骨格であるシロキサン構造〔-(SiRO)-〕が特定の長さを有するために、組成物中での存在割合(密度)が低くなる。また、式(I)中のRの立体障害によって、ヒドロキシ基の反応性が低い。従って、本発明の組成物は、安定な半硬化状態を形成することができるため、かかる状態で被着体に良好に接着し、その後、全硬化させることによって、いわゆる硬化型接着剤となる。またさらに、上記のように、式(I)中のRの立体障害によって、ヒドロキシ基の反応性が低いために、半硬化状態での保存安定性にも優れるものとなる。なお、本明細書において、半硬化状態(Bステージ)とは、溶剤に可溶なAステージと、完全硬化したCステージの間の状態であって、硬化、ゲル化が若干進行し、溶剤に膨潤するが完全に溶解せず、加熱によって軟化するが溶融しない状態のことを意味し、全硬化状態とは、完全に硬化、ゲル化が進行した状態のことを意味する。
【0015】
また、トリアルコキシシランは、縮合反応の副生成物がアルコールであり、シリコーン樹脂の熱分解に影響を及ぼすことが少ない。また、その沸点が低い場合には、硬化時に樹脂から除去されやすい。
【0016】
またさらに、シロキサン骨格は、可視光領域に吸収が無いことから、耐光性にも優れる。従って、本発明の組成物は、シリコーン樹脂本来の高い耐熱性、及び透明性が発揮され、かつ、接着性にも優れるものと考えられる。
【0017】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、(1)前記式(I)で表わされる両末端シラノール型シリコーン樹脂、(2)トリアルコキシシラン、及び(3)縮合触媒を含有する。
【0018】
(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂
本発明における両末端シラノール型シリコーン樹脂としては、各成分との相溶性の観点から、式(I):
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、Rは一価の炭化水素基を示し、nは20〜10000の整数であり、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物である。
【0021】
式(I)におけるRは、一価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製のしやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性及び耐光性の観点から、メチル基が好ましい。なお、式(I)において、全てのRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基であることが好ましい。
【0022】
式(I)中のnは、20〜10000の整数であるが、半硬化状態の安定性や取り扱い性の観点から、好ましくは50〜1000の整数である。
【0023】
かかる式(I)で表される化合物としては、両末端シラノール型ポリジメチルシロキサン、両末端シラノール型ポリメチルフェニルシロキサン、両末端シラノール型ポリジフェニルシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rが全てメチル基、nが50〜1000の整数である化合物が好ましい。
【0024】
式(I)で表される化合物は、半硬化状態の安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1,000,000、より好ましくは3,000〜300,000であることが望ましい。なお、本明細書において、シリコーン誘導体の分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0025】
両末端シラノール型シリコーン樹脂の含有量、即ち、式(I)で表される化合物の含有量は、組成物に含まれるシリコーン誘導体の総量中、1〜99.99重量%が好ましく、50〜99.99重量%がより好ましく、80〜99.99重量%がさらに好ましい。
【0026】
(2)トリアルコキシシラン
本発明におけるトリアルコキシシランとしては、特に限定はないが、各成分との相溶性の観点から、式(II):
−Si(X) (II)
(式中、Rは一価の有機基、Xはアルコキシ基を示し、但し、3個のXは同一でも異なっていてもよい)
で表される化合物が好ましい。
【0027】
式(II)におけるRは、一価の有機基を示し、その炭素数は、調製のしやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、スチリル基、ノルボルネニル基、2-(3,4)-エポキシシクロヘキシルエチル基、3-グリシドキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基、3-アミノプロピル基、N-フェニル-3-アミノプロピル基、3-ウレイドプロピル基、3-クロロプロピル基、3-メルカプトプロピル基、3-イソシアネートプロピル基等が例示される。なかでも、縮合反応に対する反応性、及び樹脂の接着性の観点から、ビニル基、及び3-グリシドキシプロピル基が好ましい。
【0028】
式(II)におけるXはアルコキシ基を示し、安定性及び取り扱い性の観点から、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシロキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。なお、式(II)において、3個のXは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基であることが好ましい。
【0029】
かかる式(II)で表される化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rがビニル基、Xが全てメトキシ基である、ビニルトリメトキシシラン、及びRが3-グリシドキシプロピル基、Xが全てメトキシ基である、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0030】
トリアルコキシシランにおける式(II)で表される化合物の総含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0031】
トリアルコキシシランの総含有量は、組成物に含まれるシリコーン誘導体の総量中、0.01〜99重量%が好ましく、0.01〜50重量%がより好ましく、0.01〜20重量%がさらに好ましい。
【0032】
また、トリアルコキシシランの総含有量は、両末端シラノール型シリコーン樹脂100重量部に対して、得られる硬化物の強度の観点から、0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
【0033】
また、両末端シラノール型シリコーンオイルとトリアルコキシシランの重量比は、両末端シラノール型シリコーンオイルのSiOH基とトリアルコキシシランのSiX基を過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比(SiOH/SiX)が、20/1〜0.2/1が好ましく、10/1〜0.5/1がより好ましく、実質的に当量(1/1)であることがさらに好ましい。前記モル比が、20/1以下であれば、本発明の組成物を半硬化させた際に適度な強靭性を有する半硬化物が得られ、0.2/1以上であれば、トリアルコキシシランが多くなりすぎず、得られる樹脂の耐熱性が良好となる。
【0034】
(3)縮合触媒
本発明における縮合触媒としては、両末端シラノール型シリコーン樹脂のシラノール基と、トリアルコキシシランのアルコキシシリル基との縮合反応を触媒する化合物であれば特に限定はないが、相溶性及び熱分解性の観点から、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0035】
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドは、アルカリ性を呈する化合物であるが、130〜140℃で分解すると、アルカリ性が大きく低下する。従って、例えば、150℃で熱硬化させた後の樹脂には、アルカリ分が減少する。一方、シリコーン樹脂は、一般に、硬化触媒として配合される酸、アルカリ、金属等の触媒作用によって熱分解をおこしやすいが、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドは前記特性を有するため、縮合触媒として好適に用いることができる。
【0036】
本発明においては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド以外の他の縮合触媒も用いることができる。他の縮合触媒としては、塩酸、酢酸、ギ酸、硫酸等の酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム等の塩基;アルミニウム、チタン、亜鉛、スズ等の金属系触媒が例示される。縮合触媒における、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの含有量は、20重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0037】
組成物における縮合触媒の含有量は、両末端シラノール型シリコーン樹脂100モルに対して、0.01〜50モルが好ましく、0.1〜5モルがより好ましい。
【0038】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、上記以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0039】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂、(2)トリアルコキシシラン、及び(3)縮合触媒を含有するものであれば、特に限定なく調製することができる。具体的には、(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂、(2)トリアルコキシシラン、及び(3)縮合触媒、必要に応じて、前記添加剤や有機溶媒を、好ましくは0〜100℃で5分〜24時間攪拌することにより調製することができる。
【0040】
有機溶媒としては、特に限定はないが、シリコーン誘導体と縮合触媒の相溶性を高める観点から、2−プロパノールが好ましい。有機溶媒の存在量は、両末端シラノール型シリコーンオイルとトリアルコキシシランの総量100重量部に対して、3〜100重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。3重量部以上であると反応進行性が良好であり、100重量部以下であると組成物の硬化段階における発泡が低減される。
【0041】
また、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、該組成物をそのまま又は該組成物の有機溶媒溶液を、例えば、表面を剥離処理した離型シート(例えば、ポリエチレン基材)の上にキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに塗工し、溶媒の除去が可能な程度の温度で加熱して乾燥することによりシート状に成形することができる。加熱温度は、使用される溶媒の種類によって一概には決定されないが、本発明の組成物は、この加熱によって、溶媒の除去に加えて、縮合反応を行ったシリコーン接着剤シートを調製することができる。従って、本発明はまた、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物を半硬化させた、シリコーン接着剤シートを提供する。
【0042】
加熱温度は、20〜200℃が好ましく、40〜150℃がより好ましい。加熱時間は、0.1〜60分が好ましく、1〜20分がより好ましい。
【0043】
本発明のシリコーン接着剤シートは、半硬化状態であるために、例えば、光半導体装置のLEDが搭載された基板の上にそのまま積層後、さらにその上に封止樹脂シート等を積層して、高温で加熱して接着剤シートを完全に硬化させることにより光半導体装置を調製することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0045】
〔シリコーン誘導体の分子量〕
ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算にて求める。
【0046】
実施例1
表1に示す組成のシリコーン樹脂用組成物を得た。具体的には、両末端シラノール型シリコーン樹脂〔式(I)中のRが全てメチル基、n=155で表わされる化合物、平均分子量11,500〕100g(8.70mmol)、トリアルコキシシランとして、ビニルトリメトキシシラン〔式(II)中のRがビニル基、Xが全てメトキシ基で表わされる化合物〕0.86g(5.8mmol)〔両末端シラノール型シリコーン樹脂のSiOH基のモル数と、トリアルコキシシランのSiX基の総モル数の比(SiOH/SiX)=1/1〕、及び、有機溶媒として、2−プロパノール10mL(両末端シラノール型シリコーンオイルとトリアルコキシシランの総量100重量部に対して7.7重量部)を攪拌混合後、縮合触媒として、テトラメチルアンモニウムメタノールヒドロキシド溶液(濃度10重量%)0.16mL(触媒量:0.18mmol、両末端シラノール型シリコーン樹脂100モルに対して2.0モル)を加え、室温(25℃)で1時間攪拌した後、16時間静置して、シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0047】
実施例2
実施例1において、ビニルトリメトキシシランを0.86g(5.8mmol)用いる代わりに、ビニルトリメトキシシラン0.77g(5.20mmol)と、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン〔式(II)中のRが3-グリシドキシプロピル基、Xが全てメトキシ基で表わされる化合物〕0.14g(0.59mmol)の混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た。なお、モル比(SiOH/SiX)は1/1であった。
【0048】
実施例3
実施例1において、ビニルトリメトキシシランを0.86g(5.8mmol)用いる代わりに、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン1.4g(5.9mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た。なお、モル比(SiOH/SiX)は1/1であった。
【0049】
実施例4
実施例1において、テトラメチルアンモニウムメタノールヒドロキシド溶液(濃度10重量%)の使用量を、0.16mL(触媒量:0.18mmol)から、0.32mL(触媒量:0.36mmol、両末端シラノール型シリコーン樹脂100モルに対して4.0モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0050】
比較例1
実施例1において、両末端シラノール型シリコーン樹脂〔式(I)中のRが全てメチル基、n=155で表わされる化合物、平均分子量11,500〕100g(8.70mmol)用いる代わりに、両末端シラノール型シリコーン樹脂〔式(I)中のRが全てメチル基、n=13で表わされる化合物、平均分子量1,000〕8.7g(8.70mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0051】
【表1】

【0052】
得られた組成物を用いて、以下の方法に従って、半硬化物、及び全硬化物を調製した。なお、市販の二液混合型シリコーンエラストマー(旭化成ワッカーシリコーン社製、加熱硬化型高粘度品)のA液10gとB液10gをよく混合して、シリコーン樹脂用組成物を調製し(25℃における粘度は15000mPa・s)、参考例1として同様に半硬化物、及び全硬化物を調製した。
【0053】
半硬化物の調製例1
実施例1〜4、比較例1、又は参考例1の組成物を、二液混合型シリコーンエラストマー(旭化成ワッカーシリコーン社製、加熱硬化型高粘度品)から調製した厚さ100μmのシート上に、500μm又は300μmの厚さに塗工し、実施例1〜4及び比較例1の組成物は80℃で20分加熱して、参考例1の組成物は室温(25℃)で16時間放置して、シート状の半硬化物(シート)を調製した。
【0054】
全硬化物の調製例1
上記で得られたシートについて、実施例1〜4及び比較例1のシートは150℃で5時間加熱して、参考例1のシートは150℃で1時間加熱して、全硬化物を調製した。
【0055】
得られた半硬化物、全硬化物について、以下の試験例1〜4に従って、特性を評価した。結果を表2に示す。
【0056】
試験例1(保存安定性)
調製直後と室温(25℃)で24時間保存後の半硬化物について、デジタル測長計(MS-5C、ニコン社製)を用いて、センサーヘッドで7g/mm2の荷重をかけた際に、半硬化物の表面からセンサーヘッドが沈んだ距離を測定し、以下の式に基づいてシート硬度を求めた。
シート硬度=[1−{センサーヘッドが沈んだ距離(μm)/半硬化物の膜厚(μm)}]×100
【0057】
次に、得られたシート硬度の比率(保存後/調製直後×100)を硬度維持率(%)とし、以下の評価基準に従って、保存安定性を評価した。
【0058】
〔保存安定性の評価基準〕
A:硬度維持率が95%超、105%未満
B:硬度維持率が80〜95%、105〜120%
C:硬度維持率が80%未満、120%超
【0059】
試験例2(透明性)
各全硬化物の波長450nmにおける光透過率(%)を、分光光度計(U−4100、日立ハイテク社製)を用いて測定した。光透過率が高いほど透明性に優れることを示す。
【0060】
試験例3(耐熱性)
各全硬化物を150℃の温風型乾燥機内に静置し、100時間経過後の全硬化物の外観を目視で観察し、保存前の状態から変色のないものを「○」、あるものを「×」とした。また、200℃の温風型乾燥機内に静置し、24時間経過後の全硬化物の重量を保存前の重量で除した値を残存率(%)とした。保存後の外観の変化がなく、残存率が高いほど耐熱性に優れることを示す。
【0061】
試験例4(接着性)
各半硬化物を、シリコンウエハ又はPETフィルムに積層し、減圧下、160℃で加熱しながら、0.2MPaの圧力で5分間圧着させ、その後150℃で5時間加熱して硬化物を調製した。得られた硬化物について、180°ピール試験に従って、その剥離力を測定した。剥離力が高いほど接着性に優れることを示す。
【0062】
【表2】

【0063】
結果、実施例の組成物は、比較例に比べて、保存安定性が高く、かつ、透明性、耐熱性、接着性のいずれもに優れる樹脂を提供できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、例えば、液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイや広告看板等の半導体素子を製造する際に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)式(I):
【化1】

(式中、Rは一価の炭化水素基を示し、nは20〜10000の整数であり、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる両末端シラノール型シリコーン樹脂、(2)トリアルコキシシラン、及び(3)縮合触媒を含有してなる、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物。
【請求項2】
トリアルコキシシランが、式(II):
−Si(X) (II)
(式中、Rは一価の有機基、Xはアルコキシ基を示し、但し、3個のXは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
縮合触媒がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含有してなる、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物を基材の上に塗工して乾燥することにより成形させてなる、シリコーン接着剤シート。

【公開番号】特開2011−42760(P2011−42760A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193103(P2009−193103)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】