説明

熱硬化性ハードコート剤組成物、成形品、およびレンズ

【課題】耐擦傷性、密着性(特に、チオウレタン系、チオエポキシ系樹脂への密着性)および耐衝撃性に優れた熱硬化性ハードコート剤組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも下記の成分(A)〜(D)を含有し、成分(A)〜(C)の合計100重量部中、成分(A)が15〜70重量部、成分(B)が15〜70重量部および成分(C)が15〜70重量部、成分(D)が成分(A)〜(C)の合計100重量部に対して0.01〜10.0重量部であることを特徴とする熱硬化性ハードコート剤組成物。
成分(A):ポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物
成分(B):カチオン重合性基含有シルセスキオキサン化合物
成分(C):シラン化合物あるいはそれが部分的に縮合した化合物、または、それらの混合物
成分(D):金属キレート化合物
さらに、成分(E)として金属酸化物微粒子、成分(F)としてシリケート化合物、成分(G)としてジメチルシロキサン骨格を有する化合物を含有することを特徴とする熱硬化性ハードコート剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物、カチオン重合性基含有シルセスキオキサン化合物、シラン化合物および/またはそれが部分的に縮合した化合物、金属キレート化合物を少なくとも含有し、実用レベルの密着性を維持しつつ、耐擦傷性が高く、耐衝撃性に優れた熱硬化性ハードコート剤組成物、成形品、およびレンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼鏡用レンズとして、樹脂製レンズは軽量性、耐衝撃性、着色性などの理由から、ガラスレンズに代わり急速に普及している。従来これらの目的にはジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(以下D.A.C.と略す)をラジカル重合したものや、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メタクリレート(PMMA)などが用いられてきた。しかしながら、これらのレンズ樹脂はn=1.49〜1.58程度の屈折率であるためガラスレンズと同等の光学特性を得るためには、レンズの中心厚、コバ厚、および曲率を大きくする必要があり全体的に肉厚となるため、より屈折率の高い樹脂が求められてきた。
【0003】
かかる課題の対策として、特許文献1にはチオール化合物とイソシアネート化合物を熱重合しチオウレタン結合を形成して得られる樹脂が記載されており、n=1.60〜1.67程度の屈折率が得られている。
【0004】
また、特許文献2に記載されているチオエポキシ化合物の開環熱重合によりエピチオスルフィド結合を形成して得られる樹脂では、n=1.70以上の屈折率が得られている。
【0005】
一方、樹脂製レンズは軽量性、耐衝撃性、着色性などの利点に対し、表面の硬度、耐擦傷性がガラスレンズに比べ大きく劣るため、その対策として表面に擦傷が付くことを防止する、いわゆるハードコート処理が必要不可欠のものとなっている。
【0006】
このハードコート処理には熱硬化型のシリコーン系ハードコート剤が主として用いられている。その硬化被膜は耐擦傷性を有する反面、柔軟性に乏しいため耐衝撃性が不足する傾向にある。
【0007】
この耐衝撃性の不足を補うため、耐衝撃性を有する樹脂層をレンズ表面にさらにもう一層コートすることが行われている(特許文献3)。
【0008】
このように、樹脂製レンズ表面に耐擦傷性、および耐衝撃性ともに優れたコート処理を施すには、従来の技術では、耐擦傷性および耐衝撃性を付与するための別々の層を二層形成させる必要がある。したがって、塗布の回数が2回となり、作業効率の点から製造上コストがかさむという問題があった。
【0009】
一回の塗布のみで耐擦傷性、耐衝撃性を付与する方法として特許文献4や特許文献5などが存在するが、液の調製が複雑であり、保存安定性に乏しいなど、実用性の点で問題を有していた。
【0010】
【特許文献1】特開平9−110956号公報
【特許文献2】特開2002−194083号公報
【特許文献3】特開平05−214136号公報
【特許文献4】特開2005−139236号公報
【特許文献5】特開2007−119635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、一回の塗布のみで、実用レベルの密着性を維持しつつ、耐擦傷性、および耐衝撃性をともに付与できる熱硬化性ハードコート剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、これらの問題を解決するために、鋭意検討を行ったところ、ポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物、カチオン重合性基含有シルセスキオキサン化合物、シラン化合物、金属キレート化合物を少なくとも含有し、特定の組成比で配合された熱硬化性ハードコート剤組成物が実用レベルの密着性を維持しつつ、耐衝撃性および耐擦傷性が高くなることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、
[1]少なくとも下記の成分(A)〜(D)を含有し、成分(A)〜(C)の合計100重量部中、成分(A)が15〜70重量部、成分(B)が15〜70重量部および成分(C)が15〜70重量部、成分(D)が成分(A)〜(C)の合計100重量部に対して0.01〜10.0重量部であることを特徴とする熱硬化性ハードコート剤組成物。
成分(A):一般式(1)で表されるポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物
【0014】
【化1】

【0015】
(上記式中、Rは置換基を有してもよい鎖式脂肪族残基、置換基を有してもよい鎖式脂肪族ポリエーテル残基、置換基を有してもよい芳香族化合物残基、置換基を有してもよい環式脂肪族化合物残基、Rは水素またはメチル基であり、nは2以上の整数を表す。)
成分(B):カチオン重合性基含有シルセスキオキサン化合物
成分(C):一般式(2)で表されるシラン化合物あるいはそれが部分的に縮合した化合物、または、それらの混合物
【0016】
【化2】

【0017】
(上記式中、Rはカチオン重合性基を有する有機基であり、R、Rは、それぞれ独立に水素またはアルキル基であり、nは1〜3の整数を表す。)
成分(D):金属キレート化合物
【0018】
[2]成分(B)が、少なくとも一つ以上のカチオン重合性基を有する、一般式(3)で表される完全型籠状シルセスキオキサンまたは、一般式(4)で表される部分開裂型籠状シルセスキオキサンを含有することを特徴とする[1]に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
(i)完全型籠状シルセスキオキサン:(R−SiO3/2(3)
(ii)部分開裂型籠状シルセスキオキサン:(R−SiO3/2(O1/21+m (4)
(nは6〜18の整数、mは0または1〜3の整数を表し、R〜Rはカチオン重合性基、水素、アルキル基、シクロペンチル基またはシクロヘキシル基を表す。)
【0019】
[3]成分(B)が、少なくとも一つ以上のカチオン重合性基を有する、一般式(5)で表される完全型籠状シルセスキオキサンまたは、一般式(6)で表される部分開裂型籠状シルセスキオキサンを含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【0020】
【化3】

【0021】
(上記式中、R〜R26はそれぞれ、カチオン重合性基、水素、アルキル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基を表す。)
【0022】
[4]成分(E)として、金属酸化物微粒子をさらに含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【0023】
[5]成分(F)として、一般式(7)で表されるシリケート化合物をさらに含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【0024】
【化4】

【0025】
(上記式中、R27〜R30はそれぞれ独立にカチオン重合性基を有する有機基、水素、またはアルキル基であり、nは1〜10の整数を表す。)
【0026】
[6]成分(G)として、一般式(8)で表されるジメチルシロキサン骨格を有する化合物をさらに含有し、且つ(A)〜(C)の合計100重量部に対して、成分(G)の含有量が10.0重量部以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【0027】
【化5】

【0028】
(上記式中、xは1〜10,000の整数である。)
【0029】
[7]前記ジメチルシロキサン骨格を有する化合物が一般式(9)で示すポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンまたはシルセスキオキサンをジメチルシロキサンの主鎖または側鎖に結合させたものであることを特徴とする[6]に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【0030】
【化6】

【0031】
(上記式中、R31は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、R32は水素、炭素原子数1〜4のアルキル基、カチオン重合性基又はエチレン性不飽和基を表し、n、nは1〜5の整数、xは1〜70の整数、yは1〜30の整数、y/xは1以下である。)
【0032】
[8]成分(H)として紫外線吸収剤を1種以上含有し、且つ成分(F)の含有量が(A)〜(C)の合計100重量部に対して、0.1〜10重量部であることを特徴とする[1]乃至[7]に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【0033】
[9]成分(H)として320nm〜400nm(UV−A)に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤を1種以上含有することを特徴とする[8]に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【0034】
[10]320nm〜400nm(UV−A)に極大吸収波長を有する前記紫外線吸収剤が一般式(a1)で表される2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤であることを特徴とする[9]に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【0035】
【化7】

【0036】
(上記式中、Ra、Rb、Rcはそれぞれ独立に水酸基、水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。)
【0037】
[11]320nm〜400nm(UV−A)に極大吸収波長を有する前記紫外線吸収剤としてトリアジン系紫外線吸収剤および/またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を1種以上含有することを特徴とする[9]に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【0038】
[12]320nm〜400nm(UV−A)に極大吸収波長を有する前記紫外線吸収剤として少なくとも2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤と、トリアジン系紫外線吸収剤および/またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とが併用されることを特徴とする[9]に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【0039】
[13][1]〜[12]のいずれかに記載の熱硬化性ハードコート剤組成物を基材の表面に塗布し、次いで前記熱硬化性ハードコート剤組成物を硬化させてなる硬化膜を有する成形品。
【0040】
[14]前記基材がチオウレタン系樹脂またはチオエポキシ系樹脂から選ばれる少なくとも1つからなるものである[13]に記載の成形品。
【0041】
[15][1]〜[12]のいずれかに記載の熱硬化性ハードコート剤組成物を基材の表面に塗布し、次いで前記熱硬化性ハードコート剤組成物を硬化させてなる硬化塗膜を有するレンズ。
【0042】
[16]前記硬化塗膜の上にさらに反射防止膜を有することを特徴とする[15]に記載のレンズ。
【発明の効果】
【0043】
本発明の熱硬化性ハードコート剤組成物は、実用レベルの密着性を維持しつつ、耐擦傷性、耐衝撃性いずれにおいても優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0045】
少なくとも下記の成分(A)〜(D)を含有し、成分(A)〜(C)の合計100重量部中、成分(A)が15〜70重量部、成分(B)が15〜70重量部および成分(C)が15〜70重量部、成分(D)が成分(A)〜(C)の合計100重量部に対して0.01〜10.0重量部であることを特徴とするハードコート剤組成物。
成分(A):ポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物
成分(B):カチオン重合性基含有シルセスキオキサン化合物
成分(C):シラン化合物あるいはそれが部分的に縮合した化合物、または、それらの混合物
成分(D):金属キレート化合物
さらに、成分(E)として、金属酸化物微粒子、成分(F)として、シリケート化合物、成分(G)として、ジメチルシロキサン骨格を有する化合物を含有することを特徴とするハードコート剤組成物。
【0046】
本発明の成分(A)とは、一般式(1)で表されるポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物である。
【0047】
【化8】

【0048】
(上記式中、Rは置換基を有してもよい鎖式脂肪族残基、置換基を有してもよい鎖式脂肪族ポリエーテル残基、置換基を有してもよい芳香族化合物残基、置換基を有してもよい環式脂肪族化合物残基、Rは水素またはメチル基であり、nは2以上の整数を表す。)
【0049】
本発明における成分(A)としては、好ましくは、鎖式脂肪族ポリオールまたは鎖式脂肪族ポリエーテルポリオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールAより誘導され、水酸基を含有していてもよいポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物である。成分(A)は(メチル)グリシジルエーテル基を少なくとも2つ以上有する化合物である。
【0050】
成分(A)のポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物は、種々の方法により製造可能である。一般式(10)〜(18)で表される少なくとも2つ以上のポリオールと一般式(19)で表される(メチル)エピクロロヒドリンを塩基性化合物存在下、脱塩化水素反応により縮合させる方法が一般的である。
【0051】
【化9】

【0052】
(上記式中、pは1〜10の整数、qは0または1〜10の整数、r、rはそれぞれ独立に0または1〜10の整数、s、s.sはそれぞれ独立に0または1〜10の整数、t、tはそれぞれ独立に0または1〜4の整数、u、uはそれぞれ独立に0または1〜4の整数、R33、R34、R35、R36は水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0053】
上記において、炭素数1〜4のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−およびi−プロピル基、n−、i−およびt−ブチル基などが挙げられる。
【0054】
【化10】

【0055】
(上記式中、Rは水素またはメチル基を表す。)
【0056】
本発明の一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、例えば以下の化合物が挙げられる。
(メチル)グリシジルエーテル基を2個有する化合物としては、エチレングリコール(メチル)ジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジ(メチル)グリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジ(メチル)グリシジルエーテル、プロピレングリコール(メチル)ジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコール(メチル)ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール(メチル)グリシジルエーテル、グリセリンジ(メチル)グリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジ(メチル)グリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジ(メチル)グリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール(メチル)グリシジルエーテル、ビスフェノールAジ(メチル)グリシジルエーテル、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メチル)グリシジルエーテル、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メチル)グリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジ(メチル)グリシジルエーテル、エチレンオキサイド付加水添ビスフェノールAジ(メチル)グリシジルエーテル、プロピレンオキサイド付加水添ビスフェノールAジ(メチル)グリシジルエーテル、等が挙げられる。
【0057】
さらに(メチル)グリシジルエーテル基を3個以上有する化合物として、グリセリントリ(メチル)グリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリ(メチル)グリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メチル)グリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラ(メチル)グリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メチル)グリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタ(メチル)グリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラ(メチル)グリシジルエーテル、カルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0058】
化合物構造中(メチル)グリシジルエーテル基が一つの場合、硬化速度やハードコート性が不足する。化合物構造中に水酸基がある場合は(メチル)グリシジルエーテル基を2つ以上含有していればよく、硬化速度、ハードコート性、密着性を低下させるといった影響を及ぼさない。
これらの化合物は1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0059】
本発明における成分(B)のカチオン重合性基含有シルセスキオキサン化合物について説明する。本発明においては、カチオン重合性基を含有するシルセスキオキサン化合物であればよく、特に制限されるものではない。なお、カチオン重合性基については後述する。
【0060】
シルセスキオキサン化合物とは、アルコキシシラン、クロロシラン、シラノールなどの3官能性シランを加水分解することで得られる一般式(20)の基本骨格を有するシラン化合物のことであり、原料や合成の方法により、ランダム状と呼ばれる不規則の形態の他にラダー状や籠型(または籠状)(完全縮合ケージ型)構造体又はその部分開裂構造体(籠型構造からケイ素原子のうちの一部が欠けた構造や籠型構造の一部のケイ素−酸素結合が切断された構造のもの)等が知られている。
【0061】
【化11】

【0062】
(上記式中、Rは有機基を表す。)
【0063】
その内、籠状構造体と呼ばれるシルセスキオキサンがハードコート性に優れておりシルセスキオキサン中に含有していることが好ましい。当該構造体は、例えば、
(i)完全型籠状シルセスキオキサン:(R−SiO3/2(3)
(ii)部分開裂型籠状シルセスキオキサン:(R−SiO3/2(O1/21+m (4)
(nは6〜18の整数、mは0または1〜3の整数を表し、R〜Rはカチオン重合性基、水素、アルキル基、シクロペンチル基またはシクロヘキシル基を表す。)
で表される。
【0064】
(i)一般式(3)で表される完全籠型構造体のシルセスキオキサン(完全型籠状シルセスキオキサン)におけるnの値は、6〜18の偶数であり、好ましくは6〜14の偶数、より好ましくは8、10または12であり、さらに好ましくは8、または8、10および12の混合物である。一般式(3)で表される完全籠型構造体のシルセスキオキサンを一般式(21)から(25)に示す。
【0065】
例えば、(i−1):nが6の場合は三角柱型構造を有し、(i−2):nが8の場合は6面体型構造を有し、(i−3):nが10の場合は5角柱型構造を有し、(i−4):nが12の場合は8面体型構造を有し、(i−5):nが14の場合は9面体型構造を有することが知られている。
【0066】
【化12】

(上記式中、Rは有機基を表す。)
【0067】
(ii)一般式(4)で表される籠型構造体の部分開裂構造体のシルセスキオキサン(部分開裂型籠状シルセスキオキサン)は、(ii−1):籠型構造からケイ素原子のうちの一部が欠けた構造、または(ii−2):籠型構造の一部のケイ素−酸素結合が切断された構造のものを表す。一般式(4)で表される籠型構造体の部分開裂構造体を一般式(26)から(30)に示す。nの値は、6〜18であり、好ましくは6〜14である。mの値は、0〜3である。
【0068】
【化13】

【0069】
(上記式中、Rは有機基を表す。)
【0070】
籠状シルセスキオキサンは完全籠型構造体であっても、部分開裂構造体であっても籠状の形態をとっていればハードコート性の点で問題はない。
【0071】
当該化合物中の有機基の内、少なくとも一つがカチオン重合性の基を含んでいればよく、カチオン重合性基含有の完全型籠状構造体としては、一般式(5)で表される完全型籠状シルセスキオキサン、カチオン重合性基含有の籠型構造体の部分開裂構造体は一般式(6)で表される部分開裂型籠状シルセスキオキサンが、特に好ましいものとして挙げられる。
【0072】
【化14】

【0073】
(上記式中、R〜R26はそれぞれ、カチオン重合性基、水素、アルキル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基を表す。)
【0074】
カチオン重合性基としては、特に制限されるものではないが、好ましいカチオン重合性基としては、(メチル)グリシジルエーテル基((2−メチル)オキシランを含有する基)、オキセタニル基、エポキシシクロヘキシル基、ビニル基を有する基があげられる。硬化性、ハードコート性、密着性、化合物の入手のし易さなどから、一般式(31)〜(34)で表されるカチオン重合性基を有するシルセスキオキサンが好ましい。
【0075】
【化15】

【0076】
(上記式中、R37、R38はそれぞれ独立に水素またはメチル基、R39、R40はそれぞれ独立にメチル基またはエチル基を表す。a、b、c、dはそれぞれ独立に1〜10の整数を表す。b、dはそれぞれ独立に0または1を表す。)
【0077】
カチオン重合性基以外の有機基を含有する場合、水素、メチル基、エチル基、n−およびi−プロピル基、n−、i−およびt−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基などが好ましい。
【0078】
上記におけるアルキル基としては、特に限定されないが、より具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−、i−およびt−ブチル基、n−アミル基、i−アミル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。
これらの化合物は1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0079】
一般式(31)〜(34)で表されるカチオン重合性基を有するシルセスキオキサンとしては具体的に、テトラデカ〔2−(ブトキシメチル)オキシラン〕−シルセスキオキサン(14個すべての基が2−(ブトキシメチル)オキシラン基であるシルセスキオキサン:以下同様に表記する)、ドデカ〔2−(ブトキシメチル)オキシラン〕−シルセスキオキサン、デカ〔2−(ブトキシメチル)オキシラン〕−シルセスキオキサン、オクタ〔2−(ブトキシメチル)オキシラン〕−シルセスキオキサン、ヘキサ〔2−(ブトキシメチル)オキシラン〕−シルセスキオキサン、トリス〔2−(ブトキシメチル)オキシラン〕−エチル−シルセスキオキサン(2−(ブトキシメチル)オキシラン基を3つ有し、その他の基がエチル基であるシルセスキオキサン:以下同様に表記する)、トリス〔2−(ブトキシメチル)オキシラン〕−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、トリス〔2−(ブトキシメチル)オキシラン〕−シクロペンチル−シルセスキオキサン、トリス〔2−(ブトキシメチル)オキシラン〕−イソブチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)オキシラン−エチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)オキシラン−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)オキシラン−シクロペンチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)オキシラン−イソブチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)オキシラン−トリシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン(3つのシラノール基を有し、その他が2−(ブトキシメチル)オキシラン基及びシクロヘキシル基からなるシルセスキオキサン:以下同様に表記する)、2−(ブトキシメチル)オキシラン−トリシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)オキシラン−トリシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)オキシラン−ジシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)オキシラン−ジシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)オキシラン−ジシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)オキシラン−シラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)オキシラン−シラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)オキシラン−シラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、テトラデカ〔2−(ブトキシメチル)オキシラン−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン(14個すべての基が2−(ブトキシメチル)オキシラン−ジメチルシロキシ基であるシルセスキオキサン:以下同様に表記する)、ドデカ〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、デカ〔2−(ブトキシメチル)オキシラン−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、オクタ〔2−(ブトキシメチル)オキシラン−ジメチルシロキシ]−シルセスキオキサン、ヘキサ〔2−(ブトキシメチル)オキシラン−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、トリス〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−エチル−シルセスキオキサン、トリス〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、トリス〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シクロペンチル−シルセスキオキサン、トリス〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−エチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−トリシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−トリシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−トリシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−ジシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−ジシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−ジシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)オキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シラノール−イソブチルシルセスキオキサン、テトラデカ〔2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン〕−シルセスキオキサン、ドデカ〔2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン〕−シルセスキオキサン、デカ〔2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン〕−シルセスキオキサン、オクタ〔2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン〕−シルセスキオキサン、ヘキサ〔2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン〕−シルセスキオキサン、トリス〔2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン〕−エチル−シルセスキオキサン、トリス〔2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン〕−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、トリス〔2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン〕−シクロペンチル−シルセスキオキサン、トリス〔2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン〕−イソブチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシランエチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン−シクロペンチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン−イソブチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン−トリシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン−トリシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン−トリシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン−ジシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン−ジシラノ−ル−シクロペンチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン−ジシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン−シラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン−シラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン−シラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、テトラデカ〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、ドデカ〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、デカ〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、オクタ〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、ヘキサ〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、トリス〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−エチル−シルセスキオキサン、トリス〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、トリス〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シクロペンチル−シルセスキオキサン、トリス〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−エチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−トリシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−トリシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−トリシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−ジシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−ジシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−ジシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(2−(ブトキシメチル)−2−メチルオキシラン)−ジメチルシロキシ〕−シラノール−イソブチルシルセスキオキサン、テトラデカ(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シルセスキオキサン、ドデカ(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シルセスキオキサン、デカ(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シルセスキオキサン、オクタ(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シルセスキオキサン、ヘキサ(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シルセスキオキサン、トリス(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−エチル−シルセスキオキサン、トリス(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、トリス(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シクロペンチル−シルセスキオキサン、トリス(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−イソブチル−シルセスキオキサン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン−エチル−シルセスキオキサン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン−シクロペンチル−シルセスキオキサン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン−イソブチル−シルセスキオキサン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン−トリシラノ−ル−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン−トリシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン−トリシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン−ジシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン−ジシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン−ジシラノール−イソブチル
−シルセスキオキサン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン−シラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン−シラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン−シラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、テトラデカ〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、ドデカ〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、デカ〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、オクタ〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、ヘキサ〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、トリス〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−エチル−シルセスキオキサン、トリス〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、トリス〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シクロペンチル−シルセスキオキサン、トリス〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−エチル−シルセスキオキサン、〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−トリシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−トリシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−トリシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−ジシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−ジシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−ジシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、テトラデカ(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シルセスキオキサン、ドデカ(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シルセスキオキサン、デカ(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シルセスキオキサン、オクタ(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シルセスキオキサン、ヘキサ(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シルセスキオキサン、トリス(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−エチル−シルセスキオキサン、トリス(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、トリス(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−シクロペンチル−シルセスキオキサン、トリス(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−イソブチル−シルセスキオキサン、3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン−エチル−シルセスキオキサン、3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン−シクロペンチル−シルセスキオキサン、3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン−イソブチル−シルセスキオキサン、3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン−トリシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン−トリシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン−トリシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン−ジシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン−ジシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン−ジシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン−シラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン−シラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン−シラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、テトラデカ〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、ドデカ〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、デカ〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、オクタ〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、ヘキサ〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シルセスキオキサン、トリス〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−エチル−シルセスキオキサン、トリス〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、トリス〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シクロペンチル−シルセスキオキサン、トリス〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−エチル−シルセスキオキサン、〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−トリシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−トリシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−トリシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−ジシラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−ジシラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−ジシラノール−イソブチル−シルセスキオキサン、〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シラノール−シクロヘキシル−シルセスキオキサン、〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シラノール−シクロペンチル−シルセスキオキサン、〔(3−メチル−3−ブトキシメチルオキセタン)−ジメチルシロキシ〕−シラノール−イソブチル−シルセスキオキサンなどが挙げられる。
【0080】
ここで、カチオン重合性基含有籠状オルガノシルセスキオキサンとしては、市販のものも使用することができ、例えば、インターネット上のWEBサイト<http://www.hybridplastics.com/pdf/2006catalog.pdf>に記載されているEPO415(GlycidylCyclohexyl−POSS)、EPO416(GlycidylCyclopentyl−POSS)、EPO417(GlycidylEthyl−POSS)、EPO418(Glycidylisobutyl―POSS)、EPO435(Octaglycidyldimethylsilyl−POSS)、EPO421(TrisGlycidylCyclohexyl−POSS)、EPO420(TrisGlycidylCyclopentyl−POSS)、EPO422(TrisGlycidylEthyl−POSS)、EPO423(TrisGlycidylIsobutyl−POSS)(いずれも、Hybrid−Plastics社製 商品名)、インターネット上のWEBサイト<http://www.sigma−aldrich.co.jp/up_catalog/A−116.pdf>に記載されているPSS−Octa((3−propylglycidylether)−Dimethylsiloxy)substituted(アルドリッチ社製試薬)、東亞合成研究年報 TREND 1999 第3号及び東亞合成研究年報 TREND 2004 第7号に記載されているオキセタニルシルセスキオキサン(OX−SQ)、オキセタニルシルセスキオキサン(OX−SQ−H)(東亞合成社製 商品名)などがあり好適に使用することができる。
【0081】
本発明における成分(C)のシラン化合物またはそれが部分的に縮合した化合物について説明する。本発明で用いるシラン化合物は一般式(2)で表されるシラン化合物またはそれが部分的に縮合した化合物である。
【0082】
【化16】

【0083】
(上記式中、Rはカチオン重合性基を有する有機基であり、R、Rは、それぞれ独立に水素またはアルキル基であり、nは1〜3の整数を表す。)
【0084】
上記一般式(2)において、Rはカチオン重合性基を有する有機基であり、R、Rは、それぞれ独立に水素またはアルキル基を表す。
【0085】
上記におけるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−およびi−プロピル基、n−、i−およびt−ブチル基などが挙げられる。
【0086】
シラン化合物中のカチオン重合性基Rとしては、特に制限されるものではないが、好ましくは(メチル)グリシジルエーテル基、オキセタニル基、エポキシシクロヘキシル基を有する基等が挙げられる。硬化性、ハードコート性、密着性、化合物の入手のし易さなどから、一般式(35)〜(36)で表されるカチオン重合性基Rを有する、シラン化合物が好ましい。
【0087】
【化17】

【0088】
(上記式中、R41は水素またはメチル基、R42はメチル基またはエチル基を表す。e〜fはそれぞれ独立に1〜10の整数を表す。)
これらの化合物は1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0089】
これらのシラン化合物として具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、3−エチル−3−{[3−(トリメトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタンなどが挙げられる。
【0090】
これらの化合物は、3次元的な網目構造を形成することが可能であり、ハードコート性を上げることができる。さらにこれらの化合物はシランカップリング剤とも呼ばれており、チオウレタン系樹脂またはチオエポキシ系樹脂との密着性を促進する働きがある。また、これらのシラン化合物はそのままの状態で用いても構わないが、反応性をより高めるために、予め、アルコキシシリル基(Si−O−R)を塩酸水などの酸性触媒、またはアンモニア水などの塩基性触媒を用いて加水分解し、シラノール(Si−OH)の状態にして、または部分的に縮合し、シロキサン結合(Si−O−Si)が形成された状態にして用いるのがより好ましい。
【0091】
本発明において成分(A)〜(C)の合計100重量部中、成分(A)が15〜70重量部、成分(B)が15〜70重量部および成分(C)が15〜70重量部である。成分(A)が15重量部以上であると、膜が脆くなり充分な耐衝撃性が得られない可能性を低減できる。成分(A)が70重量部以下であると、十分な耐擦傷性が得られる。成分(B)が15重量部以上であると、充分な耐擦傷性、耐衝撃性が得られる。成分(B)が70重量部以下であると、硬化速度が低くなることによる系全体の反応速度の低下を抑制できる。成分(C)が15重量部以上であると、充分な硬化速度や耐擦傷性が得られる。成分(C)が70重量部以下であると、膜が脆くなることによる耐衝撃性の急激な低下を抑制できる。
【0092】
成分(D)の金属キレート化合物について説明する。本発明で用いる金属キレート化合物は硬化触媒として作用する。好ましい、金属キレート化合物は、Cu(II),Zn(II),Co(II),Ni(II),Be(II),Ce(III),Ta(III),Ti(III),Mn(III),La(III),Cr(III),V(III),Co(III),Fe(III),Al(III),Ce(IV),Zr(IV),V(IV)等を中心金属原子とするアセチルアセトネート、アミン,グリシン等のアミノ酸、ルイス酸、有機酸金属塩等が挙げられる。この中でも、硬化条件、コーティング液のポットライフなどにおいて、Al(III),Fe(III)のアセチルアセトネートがより好ましい。添加量は、成分(A)〜(C)の合計100重量部に対して0.01〜10.0重量部の範囲内が望ましい。成分(D)の含有量が0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上であると、充分な硬化速度や耐擦傷性が得られる。また、成分(D)の含有量が10.0重量部以下、より好ましくは7.0重量部以下であると、コーティング液のポットライフを確保できる。さらに過塩素酸類を併用して使用することも可能である。好ましい過塩素酸類としては、過塩素酸、過塩素酸アンモニウム、および過塩素酸マグネシウム等が挙げられる。
【0093】
成分(A)から(D)の特に好ましい組合せとして具体的には、成分(A)としてはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどの3官能グリシジルエーテル単独または、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの2管能グリシジルエーテルとの混合物、成分(B)としてはオキセタニル基、グリシジルエーテル基を有するシルセスキオキサン、成分(C)としては3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランまたはそれらの部分縮合物、成分(D)としてはAl(III)アセチルアセトネートである。
これにより、実用レベルの密着性を維持しつつ、耐擦傷性、耐衝撃性いずれにおいても優れていたハードコート剤樹脂組成物が得られる。
【0094】
成分(E)の金属酸化物微粒子について説明する。プラスチックレンズ基材の高屈折率化により、屈折率が1.6以上のプラスチックレンズ基材に少なくとも成分(A)〜(D)を含有するハードコート剤を塗布すると、ハードコート層により干渉縞が生じる。そのため、金属酸化物微粒子をハードコート層に配合して屈折率を調整することが好ましい。
【0095】
このような金属酸化物微粒子としては、Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In,Tiから選ばれる金属の1種又は2種以上の酸化物微粒子又は複合微粒子を例示することができる。具体的には、SiO,SnO,Sb,CeO,ZrO,TiO等の無機酸化物微粒子を、分散媒たとえば水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたもの、または、Si,A1,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In,Tiの無機酸化物の2種以上によって構成される複合微粒子を水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散したものを例示することができる。いずれも粒子径は約1〜300nmが好適である。
【0096】
さらにコーティング液中での分散安定性を高めるためにこれらの金属微粒子表面を有機ケイ素化合物で処理したものを使用することも可能である。
【0097】
この際用いられる有機ケイ素化合物としては、単官能性シラン、あるいは二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等がある。処理に際しては加水分解性基を未処理で行ってもあるいは加水分解して行ってもよい。また処理後は、加水分解性基が微粒子の−OH基と反応した状態が好ましいが、一部残存した状態でも安定性には何ら問題がない。
【0098】
金属酸化物微粒子のハードコート剤中の固形分に占める割合として、0重量部以上65重量部、特に55重量部以下であることが望ましい。65重量部以下であると、ハードコート層の白濁による外観の劣化を低減できる。
【0099】
成分(F)のシリケート化合物を添加して、ハードコート層の耐擦傷性を向上させることもできる。本発明で用いるシリケート化合物は4官能性アルコキシシラン、または4官能性アルコキシシランを部分的に加水分解することで得られる一般式(7)の基本骨格を有する化合物のことである。
【0100】
【化18】

【0101】
(上記式中、R27〜R30はそれぞれ独立にカチオン重合性基を有する有機基、水素、またはアルキル基であり、nは1〜10の整数を表す。)
【0102】
上記一般式(7)において、R27〜R30はそれぞれ独立にカチオン重合性基を有する有機基、水素、またはアルキル基を表す。
【0103】
上記におけるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−およびi−プロピル基、n−、i−およびt−ブチル基などが挙げられる。
【0104】
ここで、R27〜R30に少なくとも1つ以上カチオン重合性基を含有する、カチオン重合性基含有シリケート化合物は、アルコキシシリケートとカチオン重合性基含有アルコール化合物とのアルコール交換反応により製造することができる。カチオン重合性基としては、特に制限されるものではないが、好ましいカチオン重合性基としては、(メチル)グリシジルエーテル基((2−メチル)オキシランを含有する基)、オキセタニル基、エポキシシクロヘキシル基、ビニル基を有する基があげられる。
【0105】
本発明におけるカチオン重合性基含有シリケートとしては、(メチル)グリシジルエーテル基((2−メチル)オキシランを含有する基)含有シリケート、オキセタニルオキシ基含有シリケート、エポキシシクロヘキシルオキシ基含有シリケート等が挙げられる。硬化性、ハードコート性、密着性、化合物の入手のし易さなどから、一般式(37)〜(38)で表されるカチオン重合性基を有するシリケートが好ましい。
【0106】
【化19】

【0107】
(上記式中、R43は水素またはメチル基、R44はメチル基またはエチル基を表す。)
【0108】
一般式(37)および(38)で表されるカチオン重合性基を有するシリケートとしては具体的には、テトラキス(オキシラン−2−イル−メトキシ)(ポリ)シリケート、テトラキス(2−メチルオキシラン−2−イル−メトキシ)(ポリ)シリケート、テトラキス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕(ポリ)シリケート、テトラキス〔(3−メチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕(ポリ)シリケートが挙げられる。
カチオン重合性基に置換されていないアルコキシシリケートとしては、(ポリ)メトキシシリケート、(ポリ)エトキシシリケート、(ポリ)プロポキシシリケートが挙げられる。
【0109】
ここで、シリケート化合物としては市販のものも使用することが出来、例えば(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ基を含有し、nが平均5であるシリケートとしては、オキセタニルシリケート(OX−SC)、(東亞合成社製 商品名)、などがあり、メトキシ基またはエトキシ基を有する(ポリ)シリケートとしてはメチルシリケート(メトキシ基、nは1)、エチルシリケート(エトキシ基、nは1)、Mシリケート51(メトキシ基、nは平均4)、Mシリケート60(メトキシ基、nは平均9)、シリケート40(エトキシ基、nは平均5)、(いずれも多摩化学社製 商品名)などがあり好適に使用することができる。
【0110】
シリケート化合物のハードコート剤中の固形分に占める割合として、0重量部以上30重量部、特に20重量部以下であることが望ましい。30重量部以下であると、ハードコート層の白濁による外観の劣化を低減できる。
【0111】
本発明における成分(G)として、一般式(8)で表されるジメチルシロキサン骨格を有する化合物について説明する。一般的には一般式(9)で表されるジメチルシロキサンの側鎖の一部をエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのポリエーテルに変性したものや、シルセスキオキサンをジメチルシロキサン主鎖または側鎖に結合させたものなどが好適に用いられる。
【0112】
【化20】

【0113】
(上記式中、xは1〜10,000の整数である。)
【0114】
【化21】

【0115】
(上記式中、R31は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、R32は水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、カチオン重合性基又はエチレン性不飽和基を表し、n、nは1〜5の整数、xは1〜70の整数、yは1〜30の整数、y/xは1以下である。)
【0116】
成分(G)を添加することにより、表面張力を調製することができるため、樹脂表面にコートするときのハジキを防止したり、塗膜の平滑性を向上させたりする効果がある。また、ジメチルシロキサン部分が塗膜の表面にブリードする性質があるためすべり性が向上しより良好な耐擦傷性が期待できる。また、ポリエーテル変性されたものや、シルセスキオキサンが結合したものは溶解性に優れている。
【0117】
成分(G)の含有量は、成分(A)〜(C)の合計を100重量部に対し、0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上である。これにより、ハジキを防止したり、塗膜の平滑性を向上させたりすることができる。また、成分(G)の含有量は、成分(A)〜(C)の合計を100重量部に対し、10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。これにより、硬化性の低下を抑制し、表面状態を良好にすることができる。
【0118】
また、成分(G)の具体例は市販のものが使用でき、側鎖をポリエーテル変性されたジメチルシロキサン誘導体としては、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−375、(いずれも、BYK−Chemie(株)製 商品名)があげられる。主鎖または側鎖にシルセスキオキサンを結合させたものとしてはオキセタニルシルセスキオキサン(OX−SQSI20)(東亞合成社製 商品名)が挙げられる。
【0119】
本発明において、耐光性をより良好にするために、成分(H)を含有することができる。また、本発明において、成分(H)の含有割合は、成分(A)〜成分(C)の合計を100重量部としたとき、これに対し通常0.1〜10重量部が好ましい。さらに好ましくは、0.3〜6重量部である。成分(H)の含有割合を0.1重量部以上とすることにより耐光性がより良好となる。一方、成分(H)の含有割合を10重量部以下にすると、硬化性が低下したり、着色したりする可能性が低減できる。なお、紫外線吸収剤を添加する効果についてはカーボンアークランプあるいはキセノンランプを用いたサンシャインウエザーメーターを用い、擬似的な曝露を行うことにより確認することができる。
【0120】
本発明における成分(H)の紫外線吸収剤について説明する。
本発明に用いる成分(H)の紫外線吸収剤は、400nm以下の紫外線を吸収し、吸収剤自体は分解しないで安定な形、例えば熱エネルギーなどとして放出するような形態を有する化合物のことをいう。紫外線吸収剤は本発明において400nm以下の紫外線を遮断し、基材のチオウレタン系樹脂、チオエポキシ系樹脂の劣化を抑制する働きをする。紫外線吸収剤としては一般的に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機酸化物 などが挙げられる。このうち、太陽紫外線の内の約90%を占める320nmから400nm(UV−A)領域での極大吸収波長を有する紫外線吸収剤を1種または2種以上含有することが好ましく、一般式(a1)で表される2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤は400nm付近まで吸収を有するため、特に好ましい。
【0121】
【化22】

【0122】
(上記式中、Ra、Rb、Rcはそれぞれ独立に水酸基、水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。)
【0123】
このような2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、より具体的には、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシフェノン、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン(スミソープ100 住友化学製 商品名)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4'−メチルベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,4'−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノンが例示される。この内、320から400nm(UV−A)領域で、特に太陽光の光量が多い380nmから400nm領域での吸収が大きい、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノンが最も好適に使用できる。
【0124】
さらに、320nmから400nm(UV−A)領域での極大吸収波長を有する紫外線吸収剤として、極大吸収波長の異なるトリアジン系紫外線吸収剤および/またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を1種以上用いることができ、400nm以下の紫外線を効率的に遮断することができるので好ましい。
【0125】
トリアジン系紫外線吸収剤として、より具体的には、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン/2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2、4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(チヌビン400 チバスペシャリティ−・ケミカル製 商品名)、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジン(チヌビン411L チバスペシャリティ−・ケミカル製 商品名)が例示される。
【0126】
ベンゾトリアゾール誘導体として、より具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(チヌビンPS チバスペシャリティー・ケミカル製 商品名)、ベンゼンプロピオン酸,3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7〜9−アルキルエステル、(チヌビン99-2 チバスペシャリティー・ケミカル製 商品名)、オクチル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネ−ト(チヌビン109 チバスペシャリティー・ケミカル製 商品名)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ-t−ペンチルフェノール、(チヌビン328 チバスペシャリティ−・ケミカル製 商品名)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チヌビン928 チバスペシャリティー・ケミカル製 商品名)、α−[3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキソプロピル]−ω−ヒドロキシポリ(オキソー1,2−エタンジイル)/α−[3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキソプロピル]−ω−[3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキソプロポキシ]ポリ(オキシ−1,20エタンジイル)(チヌビン1130 チバスペシャリティー・ケミカル製 商品名)が例示される。
またさらに、少なくとも2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤と、トリアジン系紫外線吸収剤および/またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とが併用されてもよい。
【0127】
なお、本発明のハードコート剤組成物は溶剤を加えて粘度が調製される。好ましい溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコールメチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、N,N′−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエンなどが挙げられる。
【0128】
また、本発明のハードコート剤組成物100重量部に対して5重量部以下の範囲で、(メチル)グリシジルエーテル基を付加していない鎖式脂肪族ポリオールまたは鎖式脂肪族ポリエーテルポリオールを添加してもよく、例えば、前述の一般式(10)〜(18)に示した化合物が挙げられる。
【0129】
また、本発明のハードコート剤組成物100重量部に対して5重量部以下の範囲で、シランカップリング剤を添加してもよく、具体的には3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−モルホリノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等の三官能シラン、さらに、二官能シラン、すなわち、前記三官能シランの一部がアルキル基、フェニル基、ビニル基等で置換された二官能シラン、例えばジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0130】
本発明のハードコート剤組成物100重量部に対して5重量部以下の範囲で、帯電防止剤、酸化防止剤、分散染料・油溶染料・蛍光染料・顔料、フォトクロミック化合物、ヒンダードアミン・ヒンダードフェノール系等を添加しハードコート液の塗布性および硬化後の被膜性能を改良することもできる。特に酸化防止剤やヒンダードアミン、ヒンダードフェノール系等の耐光耐熱安定剤から選ばれる1種、もしくは2種以上を添加することによりハードコート被膜に優れた耐候性を付与することが可能である
【0131】
性能が損なわれない範囲、具体的には本発明のハードコート剤組成物100重量部に対して5重量部以下の範囲で、他の樹脂成分、具体的にはポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスチレン、アクリル樹脂、などを添加してもよい。
【0132】
[熱硬化性ハードコート剤組成物の調製方法]
調製方法は、公知の方法で行えばよく、特に限定されるものではないが、例えば以下の通りである。まず所望量の成分(A)〜(D)を遮光性の褐色ガラス容器あるいはポリ容器中で混合、必要に応じてハードコート剤組成物を温め(概ね50℃以下)、完全に混合させる。混合物が室温(23℃)の状態で成分(E)、(F)、および(G)、さらに必要に応じその他成分を添加し充分に混合する。さらに充分静置脱気してハードコート剤組成物とした。混合はマグネチックスターラーや攪拌器を用いたが、量や粘度に応じて、ミキサー、シェーカーなどを選択すればよい。
【0133】
[塗布方法、硬化方法]
上記のようにして調製したハードコート剤組成物の塗布(コート)方法、硬化方法としては、ディッピング法、スピンナー法、スプレー法あるいはフロー法により基材に、ハードコート剤組成物を塗布した後、100〜200℃の温度で数時間加熱乾燥することにより硬化させ、ハードコート剤組成物が硬化した被膜(ハードコート層)を形成することができる。特にチオウレタン系樹脂基材、チオエポキシ系樹脂機材にコートする場合の硬化温度としては、130℃以下が好ましい。130℃以上の温度で硬化させる場合、基材が変形したり、変色したりする可能性がある。
【0134】
[反射防止膜の形成]
前記方法にてプラスチックレンズ基材上に形成されたハードコート層の表面に、反射防止膜を形成することができる。反射防止膜は、ハードコート層の上に無機被膜、有機被膜の単層または多層で構成される。無機被膜の材質としては、SiO,SiO,ZrO,TiO,TiO,Ti,Ti,Al,Ta,CeO,MgO,Y,SnO,MgF,WO等の無機物が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。プラスチックレンズの場合は、低温で真空蒸着が可能なSiO,ZrO,TiO,Taが好ましい。
【0135】
無機被膜の成膜方法は、例えば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法、飽和溶液中での化学反応により析出させる方法等を採用することができる。真空蒸着法においては、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。
【0136】
有機被膜の材質は、プラスチックレンズやハードコート層の屈折率を考慮して選定され、真空蒸着法の他、スピンコート法、ディップコート法などの量産性に優れた塗装方法で成膜することができる。
【0137】
また、反射防止膜を形成する際には、ハードコート層の表面処理を行なうことが望ましい。この表面処理の具体的例としては、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理、アルゴンもしくは酸素雰囲気中での高周波放電によるプラズマ処理、アルゴンや酸素もしくは窒素などのイオンビーム照射処理などが挙げられる。
【0138】
更に、反射防止膜の表面を汚れ難く、あるいは汚れを拭き取りやすくするために、パーフルオロアルキル基等を含む含フッ素シラン化合物などを用いて反射防止膜の表面に撥水膜を形成することができ、また、防曇性を付与するためにスルフォン酸Na、スルフォン酸Kなどの親水性基を有する界面活性剤などを用いて反射防止膜の表面に親水膜を形成することもできる。
【0139】
[熱硬化性ハードコート剤組成物および硬化膜の評価方法]
・硬化膜(ハードコート剤組成物が硬化した被膜)の密着性評価方法:
JIS−K5600−5−6:1999年付着性試験(クロスカット法)が挙げられる。
好ましい状態は、膜を硬化させた状態で分類0(カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない)または分類1(カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない)である。また、後述の耐候性試験後の状態で分類0〜分類2(塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない)である。
・耐擦傷性の評価:
スチールウール(♯0000)による擦り試験が挙げられ、好ましくは500g荷重・10往復でキズなしである。
・硬化膜の耐衝撃性の評価方法:
重量が16g(16g:FDA(米国食品医薬品局)基準値、眼鏡レンズでの実用上の指標となっている。)、33g、45g、68g、114g、229g、540gの鋼球を、1270mmの高さより順に落下させ、試料の破壊を確認した。破壊が起きた一つ前の剛球の重量を耐衝撃の値とした。好ましい状態は、229gの剛球を落下させた場合でも変化なし、またはクラックが発生しても破片の飛散りが無い状態である。より好ましい状態は、540gの剛球を落下させた場合でも変化なし、またはクラックが発生しても破片の飛散りが無い状態である。
・ハードコート剤組成物の粘度の測定:
25℃においてE型粘度により測定した。好ましくは0.1〜500mPa・s、より好ましくは0.5〜100mPa・s、さらに好ましくは1〜50mPa・sである。
・ハードコート剤組成物の保存安定性:
一ヶ月間、室温で保存してゲル化の有無を調べた。
・硬化膜の屈折率の測定
アタゴ社製アッベ屈折計により測定した。
・硬化膜の外観の評価:
目視により行い、硬化膜にハジキ、途切れ、平滑でない、ゆず肌の発生などの欠陥がないことを確認した。
【0140】
[本発明の熱硬化性ハードコート剤組成物の用途]
本発明のハードコート剤組成物は樹脂などの基材に塗布・硬化すると耐擦傷性、耐衝撃性、密着性に優れ、透明性が非常に高いため、広い範囲で使用できる。特に、一回の塗布のみで済むため、作業効率が改善される利点がある。
【0141】
以下、作製例、解析例、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの作製例、解析例、実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0142】
《本発明の熱硬化性ハードコート剤組成物を含有するハードコート剤の調製と評価》
[作製例1]
<チオウレタン系樹脂の作製(1)>
式(39)で表されるノルボルネンジイソシアナート 50.6g、式(40)で表される1,2−ビス(2−メルカプトエチル)チオ−3−メルカプトプロパン 25.5g、式(41)で表される、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)23.9gとジブチル錫ジクロライド 0.02g、内部離型剤としてZelecUN(STEPAN社)0.125gを加えて攪拌し、減圧下で1時間脱泡した。1μmテフロン(登録商標)フィルターにて濾過後、ガラスモールドとガスケットよりなる成型モールドに注入した。この成型モールドを20℃から130℃まで徐々に昇温させながら、30時間で重合を行い、樹脂を合成した。重合終了後、徐々に冷却し合成された樹脂を成型モールドから取り出した。得られた樹脂を130℃にて2時間アニール処理し、中心厚1.15mmのレンズを得た。
【0143】
【化23】

【0144】
【化24】

【0145】
【化25】

【0146】
[作製例2]
<チオウレタン系樹脂の作製(2)>
式(42)で表されるm−キシリレンジイソシアナート 36.4g、式(40)で表される1,2−ビス(2−メルカプトエチル)チオ−3−メルカプトプロパン 33.6gとジブチル錫ジクロライド 0.01g、内部離型剤としてZelecUN(STEPAN社)0.07gを加えて攪拌し、減圧下で1時間脱泡した。1μmテフロン(登録商標)フィルターにて濾過後、ガラスモールドとガスケットよりなる成型モールドに注入した。この成型モールドを20℃から120℃まで徐々に昇温させながら、30時間で重合を行い、樹脂を合成した。重合終了後、徐々に冷却し合成された樹脂を成型モールドから取り出した。得られた樹脂を120℃にて3時間アニール処理し、中心厚1.15mmのレンズを得た。
【0147】
【化26】

【0148】
[作製例3]
<チオエポキシ系樹脂の作製(1)>
式(43)で表される、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド70.0g、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン0.014gとN,N−ジシクロヘキシルメチルアミン0.07gを加えて攪拌し、減圧下で1時間脱泡した。3μmテフロン(登録商標)フィルターにて濾過後、ガラスモールドとガスケットよりなる成型モールドに4時間かけ注入した。このモールドを30℃で10時間保温した後、20℃から80℃まで徐々に昇温して、20時間で重合い、樹脂を合成した。重合終了後、徐々に冷却し合成された樹脂を成型モールドから取り出した。得られた樹脂120℃にて3時間アニール処理し、中心厚1.15mmのレンズを得た。
【0149】
【化27】

【0150】
[作製例4]
成分(C)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン部分縮合物を次の方法で準備した。3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン236g(1mol)とイオン交換水27g(15mol)を混合し、さらに1%塩酸水0.5mlを添加し、室温で24hr攪拌し、さらに脱水トルエンを100g加えエバポレーターによりトルエン及び水を完全に除去し3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン部分縮合物とした。
【0151】
[解析例1]
<オキセタニル基を有するシルセスキオキサン:OX−SQ−Hの解析>
オキセタニル基を有するシルセスキオキサン:OX−SQ−H(東亞合成社製製品)の構造を特定するため、以下の方法により解析を行った。OX−SQ−HのFTIR測定結果を図1に示す。1090cm−1、1035cm−1にSi−O−Si結合に特有のピークが見られる一方、3335cm−1にはSi−OH特有のピークが観察された。29Si−NMRの測定結果を図2に示す。−48ppm、−57ppm、−66ppm付近に、非常に鋭いピークが観察された。この鋭いピークは規則正しい構造、すなわち籠状シルセスキオキサン構造に由来すると考えられる。これら解析結果から、OX−SQ−Hは少なくともシラノール基を有する部分開裂型籠状シルセスキオキサンを、または完全型籠状シルセスキオキサンとシラノール基を有する部分開裂型籠状シルセスキオキサン混合物を含んでいるものと推察された。
【0152】
[実施例1]
ポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物として、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(エポライト100MF 共栄社化学製 製品名)を10.0g、カチオン重合性基含有シルセスキオキサン化合物として、オキセタニル基を有するシルセスキオキサン:OX−SQ−H(東亞合成社製製品)を8.0g、シラン化合物あるいはそれが部分的に縮合した化合物、または、それらの混合物として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを20.0g、予め、作製例4により準備した3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの部分縮合物を4.0g、シリケート化合物として、Mシリケート51(多摩化学社製製品)を2.0g、金属キレート化合物として、Al(III)アセチルアセトネートを2.5g、金属酸化物微粒子として、メタノール分散酸化スズ−二酸化チタン−酸化ジルコニウム−五酸化アンチモン複合酸化物微粒子ゾルHIT30M1(日産化学(株)製、固形分濃度30重量% 製品名)104.0g(固形分重量:31.2g)、ジメチルシロキサン骨格を有する化合物として、ジメチルシリコーンにシルセスキオキサンが結合した化合物:OX−SQ−SI20(東亞合成社製製品)1.2g、ブチルセロソルブを80g、水20gをそれぞれ褐色瓶に精秤、充分攪拌した(計251.70g)。混合した状態で全く濁りのない透明な液体であった。混合物が室温(23℃)の状態でさらに充分静置脱気して、コーティング用ハードコート剤組成物とし、後述の方法で評価を行った。
【0153】
[実施例2]
ポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物として、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(エポライト100MF 共栄社化学製 製品名)を6.0g、エチレングリコールジグリシジルエーテル(エポライト40E 共栄社化学 製品名)を4.0g、カチオン重合性基含有シルセスキオキサン化合物として、オキセタニル基を有するシルセスキオキサン:OX−SQ−H(東亞合成社製製品)を9.2g、シラン化合物あるいはそれが部分的に縮合した化合物、または、それらの混合物として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを26.0g、金属キレート化合物として、Al(III)アセチルアセトネートを2.0g、金属酸化物微粒子として、メタノール分散酸化スズ−二酸化チタン−酸化ジルコニウム−五酸化アンチモン複合酸化物微粒子ゾルHIT30M1(日産化学(株)製、固形分濃度30重量% 製品名)104.0g(固形分重量:31.2g)、ジメチルシロキサン骨格を有する化合物として、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンBYK333(BYKケミー製、製品名)を0.06g、ブチルセロソルブを70.0g、0.1N塩酸水13.2gをそれぞれ褐色瓶に精秤、充分攪拌した(計234.46g)。混合した状態で全く濁りのない透明な液体であった。混合物が室温(23℃)の状態でさらに充分静置脱気して、コーティング用ハードコート剤組成物とし、後述の方法で評価を行った。
【0154】
[実施例3]
ポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物として、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(エポライト100MF 共栄社化学製 製品名)を6.0g、エチレングリコールジグリシジルエーテル(エポライト40E 共栄社化学 製品名)を4.0g、カチオン重合性基含有シルセスキオキサン化合物として、オキセタニル基を有するシルセスキオキサン:OX−SQ−H(東亞合成社製製品)を9.2g、シラン化合物あるいはそれが部分的に縮合した化合物、または、それらの混合物として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを26.0g、金属キレート化合物としてAl(III)アセチルアセトネートを2.0g、金属酸化物微粒子として、メタノール分散酸化ジルコニウム−酸化スズ−五酸化アンチモン−二酸化ケイ素複合酸化物微粒子ゾルHZ−307M6(日産化学(株)製、固形分濃度30重量% 製品名)を104.0g(固形分重量:31.2g)、ジメチルシロキサン骨格を有する化合物として、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンBYK333(BYKケミー製、製品名)を0.06g、ブチルセロソルブを70.0g、0.1N塩酸水13.2gをそれぞれ褐色瓶に精秤、充分攪拌した(計234.46g)。混合した状態で全く濁りのない透明な液体であった。混合物が室温(23℃)の状態でさらに充分静置脱気して、コーティング用ハードコート剤組成物とし、後述の方法で評価を行った。
【0155】
[実施例4〜12]
表1に示す組成により、実施例1〜3同様にコーティング用ハードコート剤組成物を調製し、後述の方法で評価を行った。
【0156】
[比較例1]
ポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物として、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(エポライト100MF 共栄社化学製 製品名)を6.0g、カチオン重合性基含有シルセスキオキサン化合物として、オキセタニル基を有するシルセスキオキサン:OX−SQ−H(東亞合成社製品)を40.0g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを3.0g、金属キレート化合物として、Al(III)アセチルアセトネートを2.0g、ジメチルシロキサン骨格を有する化合物として、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンBYK333(BYKケミー製、製品名)を0.06g、ブチルセロソルブ80.0g、メタノール80.0gをそれぞれ褐色瓶に精秤、充分攪拌した(計211.06g)。混合した状態で全く濁りのない透明な液体であった。混合物が室温(23℃)の状態でさらに充分静置脱気して、コーティング用ハードコート剤組成物とし、後述の方法で評価を行った。
【0157】
[比較例2]
シラン化合物あるいはそれが部分的に縮合した化合物、または、それらの混合物として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを42.0g、0.1N塩酸水13.2g、ブチルセロソルブ70gを加え、金属酸化物微粒子として、メタノール分散酸化スズ−二酸化チタン−酸化ジルコニウム−五酸化アンチモン複合酸化物微粒子ゾルHIT30M1(日産化学(株)製、固形分濃度30重量%)110g(固形分重量:33.0g)を加え充分攪拌した後、金属キレート化合物として、Al(III)アセチルアセトネート2.0g、ジメチルシロキサン骨格を有する化合物として、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンBYK333(BYKケミー製、製品名)0.06gを添加し(計237.26g)充分攪拌した。混合物が室温(23℃)の状態でさらに充分静置脱気して、コーティング用ハードコート剤組成物とし、後述の方法で評価を行った。
【0158】
[比較例3〜10]
表1に示す組成により、比較例1〜2同様にコーティング用ハードコート剤組成物を調製し、後述の方法で評価を行った。
【0159】
ハードコート剤組成物およびその硬化膜の評価は以下の通りに行った。評価結果を表1、2に示す。
[ハードコート層の形成]
実施例1〜12、比較例1〜10のそれぞれを作製例1〜3で得られた樹脂板にディップコートにて塗布し、80℃で30分間風乾した後、120℃から130℃の温度範囲で、2時間〜5時間焼成を行った。このようにして得られた硬化膜(ハードコート層)の膜厚は1.9〜2.5μmであった。このサンプルは温度23℃、相対湿度40〜50%の場所に保管し養生した。その後、ハードコート層の膜厚の確認を触針式表面形状測定器(DekTakIII アルバック社製)にて行った。
【0160】
〔1〕ハードコート剤組成物の粘度
実施例1〜12、比較例1〜10のハードコート剤組成物について、調製直後の粘度(25℃)をE型粘度計(東京計器社製)により測定した。評価結果を表1に示す。
【0161】
〔2〕ハードコート剤組成物の保存安定性
実施例1〜12、比較例1〜10のハードコート剤組成物について、一週間室温に保存し、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
A:ゲル化していない。
B:ゲル化した。
【0162】
〔3〕ハードコート剤組成物の製膜性(硬化膜の平滑性)
実施例1〜12、比較例1〜10のハードコート剤組成物について作製例1で成型した樹脂板上にディップコートにより製膜して硬化させ、以下の評価を行った。
A:コート・硬化後の膜が平滑であり、ハジキ、途切れ、ゆず肌の発生などの欠陥がない。
B:コート・硬化後の膜にハジキ、途切れ、ゆず肌の発生などの欠陥がないが、若干平滑性が劣る。
C:硬化後の膜が平滑でない、ハジキ、途切れ、ゆず肌の発生など外観上欠陥が認められる。
評価結果を表1に示す。
【0163】
〔4〕硬化膜の屈折率
実施例1〜12、比較例1〜10のそれぞれを作製例1の樹脂板上に硬化膜(ハードコート層)を形成したサンプルについて、アタゴ社製アッベ屈折計により測定した。
【0164】
〔5〕硬化膜の透明性
実施例1〜12、比較例1〜10のそれぞれを作製例1の樹脂板上に硬化膜(ハードコート層)を形成したサンプルについて外観を目視により、透過率を膜透過率計(島津UV2200)により400nm〜600nm間の透過率を測定した。
A:400nm〜600nm間で透過率が90%以上
B:400nm〜600nm間での透過率80%以上90%未満
C:400nm〜600nm間での透過率80%未満
評価結果を表1に示す。
【0165】
〔6〕ハードコート剤組成物の硬化性
硬化の確認は膜表面にタックがなく、つめで引っ掻いても膜剥がれがないものを完全硬化とした。
A:120℃・2時間の焼成で完全硬化した。
B:130℃・2時間〜5時間の焼成で完全硬化した。
C:完全硬化しない
評価結果を表1に示す。
【0166】
〔7〕密着性試験
実施例1〜12、比較例1〜10のそれぞれを作製例1〜3の樹脂板上に硬化膜(ハードコート層)を形成したサンプルについて、JIS−K5600付着性試験(クロスカット法)に沿って実施した。まずサンプルに等間隔スペーサを用いカッターナイフにて1mm間隔で切れ目を入れ、1mmのマス目を25個形成させる。その上へ透明感圧付着テープを貼り付け、60℃の角度で引き剥がし、コート被膜の残っているマス目をカウントした。
評価は以下の分類0の場合をAA、分類1〜2の場合をA、分類3の場合をB、分類4〜5の場合をCとした。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的または全面的にはがれている、クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%は超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的または全面的にはがれている、クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%は超えるが65%を上回ることはない。
分類5:はがれの程度が分類4を超える。
評価結果を表2に示す。
【0167】
〔8〕耐擦傷性試験
実施例1〜12、比較例1〜10のそれぞれを作製例1の樹脂板上に硬化膜(ハードコート層)を形成したサンプルについて、♯0000のスチールウール(日本スチールウール(株)製)で1000g及び500gの荷重をかけ、10往復、表面を摩擦し、傷のついた程度を目視で次の段階で判断した。
AA:1000g荷重で摩擦した範囲に全く傷がつかない。
A:500g荷重で摩擦した範囲に全く傷がつかない。
B:500g荷重で摩擦した範囲内に1〜9本の傷がつく。
C:500g荷重で摩擦した範囲内に10〜30本の傷がつく。
D:500g荷重で摩擦した範囲内に無数の(30本を超える)傷がつく。
評価結果を表2に示す。
【0168】
〔9〕耐衝撃性
実施例1〜12、比較例1〜10のそれぞれを作製例1の樹脂板上に硬化膜(ハードコート層)を形成したサンプルについて耐衝撃性を評価した。重量が16g(16g:FDA(米国食品医薬品局)基準値、眼鏡レンズでの実用上の指標となっている。)、33g、45g、68g、114g、229g、540gの鋼球を、1270mmの高さより順に落下させ、試料の破壊を確認する。破壊が起きた一つ前の剛球の重量を耐衝撃の値とした。
評価結果を表2に示す。
【0169】
〔10〕耐温水性
実施例1〜12、比較例1〜10のそれぞれを作製例1の樹脂板上に硬化膜(ハードコート層)を形成したサンプルについて、80℃の温水中に15分浸漬し外観の変化を調べた。
A:外観上の変化が見られない。
B:膜に膨潤などの変化が観察される。
C:膜にクラックが観察される。
評価結果を表2に示す。
【0170】
実施例1〜12において、上記〔1〕〜〔10〕の評価で良好な結果を得た。比較例1では成分(B)が多く成分(A)、(C)が少ないため、製膜性、透明性、硬化性、密着性、耐擦傷性が劣った。比較例2では成分(A)、(B)を含有しないため、充分な耐衝撃性が得られなかった。比較例3では成分(A)が少ないため、耐衝撃性が劣った。比較例4では成分(B)を含有しないため耐擦傷性、耐衝撃性がやや劣った。比較例5では成分(C)を含有しないため、密着性、耐擦傷性が劣った。比較例6では成分(D)を含有しないため、充分な硬化性が得られなかったため、評価することができなかった。比較例7では成分(D)が多いため、保存安定性が劣った。また、耐衝撃性もやや低下した。比較例8では成分(C)が少ないため、耐擦傷性が劣った。比較例9では成分(C)が少なく、成分(F)が多いため透明な硬化膜が得られなかった。また、耐擦傷性も低下した。比較例10では成分(A)が多く、成分(B)、(C)が少ないため、充分な耐擦傷性が得られなかった。また特に、成分(H)を含む実施例12では、耐光性が良好だった。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の組成物は、ポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物、カチオン重合性基含有シルセスキオキサン化合物、シラン化合物および/またはそれが部分的に縮合した化合物、金属キレート化合物を成分とし、加熱硬化により耐擦傷性、耐衝撃性、透明性に優れたコート層を形成できるため、各種コーティング剤用途や光学材料用途などに広く応用することができる。より具体的には眼鏡用レンズ、カメラ用レンズ、光記録・再生用機器のピックアップレンズおよび光学フィルムなどへのハードコート用途、プラズマディスプレイ前面板、液晶ディスプレイ前面板、ELディスプレイ前面板などへの反射防止処理、高密度記録光媒体の保護層、さらにプラスチック材料、金属材料、セラミックス材料およびガラス材料等の意匠性用途などに有用である。
【0172】
特に屈折率の高いチオウレタン系樹脂、チオエポキシ系樹脂への密着性が高いため、眼鏡用レンズのハードコート剤として有用である。
【0173】
【表1】

【0174】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】OX−SQ−HのFTIR測定結果を示す
【図2】OX−SQ−Hの29Si−NMR測定結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の成分(A)〜(D)を含有し、成分(A)〜(C)の合計100重量部中、成分(A)が15〜70重量部、成分(B)が15〜70重量部および成分(C)が15〜70重量部、成分(D)が成分(A)〜(C)の合計100重量部に対して0.01〜10.0重量部であることを特徴とする熱硬化性ハードコート剤組成物。
成分(A):一般式(1)で表されるポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物
【化1】


(上記式中、Rは置換基を有してもよい鎖式脂肪族残基、置換基を有してもよい鎖式脂肪族ポリエーテル残基、置換基を有してもよい芳香族化合物残基、置換基を有してもよい環式脂肪族化合物残基、Rは水素またはメチル基であり、nは2以上の整数を表す。)
成分(B):カチオン重合性基含有シルセスキオキサン化合物
成分(C):一般式(2)で表されるシラン化合物あるいはそれが部分的に縮合した化合物、または、それらの混合物
【化2】

(上記式中、Rはカチオン重合性基を有する有機基であり、R、Rは、それぞれ独立に水素またはアルキル基であり、nは1〜3の整数を表す。)
成分(D):金属キレート化合物
【請求項2】
成分(B)が、少なくとも一つ以上のカチオン重合性基を有する、一般式(3)で表される完全型籠状シルセスキオキサンまたは、一般式(4)で表される部分開裂型籠状シルセスキオキサンを含有することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
(i)完全型籠状シルセスキオキサン:(R−SiO3/2(3)
(ii)部分開裂型籠状シルセスキオキサン:(R−SiO3/2(O1/21+m (4)
(nは6〜18の整数、mは0または1〜3の整数を表し、R〜Rはカチオン重合性基、水素、アルキル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基を表す。)
【請求項3】
成分(B)が、少なくとも一つ以上のカチオン重合性基を有する、一般式(5)で表される完全型籠状シルセスキオキサンまたは、一般式(6)で表される部分開裂型籠状シルセスキオキサンを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【化3】

(上記式中、R〜R26はそれぞれ、カチオン重合性基、水素、アルキル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基を表す。)
【請求項4】
成分(E)として、金属酸化物微粒子をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【請求項5】
成分(F)として、一般式(7)で表されるシリケート化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【化4】

(上記式中、R27〜R30はそれぞれ独立にカチオン重合性基を有する有機基、水素、またはアルキル基であり、nは1〜10の整数を表す。)
【請求項6】
成分(G)として、一般式(8)で表されるジメチルシロキサン骨格を有する化合物をさらに含有し、且つ成分(A)〜(C)の合計100重量部に対して、成分(G)の含有量が10.0重量部以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【化5】

(上記式中、xは1〜10,000の整数である。)
【請求項7】
前記ジメチルシロキサン骨格を有する化合物が一般式(9)で示すポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンまたはシルセスキオキサンをジメチルシロキサンの主鎖または側鎖に結合させたものであることを特徴とする請求項6に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【化6】

(上記式中、R31は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、R32は水素、炭素原子数1〜4のアルキル基、カチオン重合性基又はエチレン性不飽和基を表し、n、nは1〜5の整数、xは1〜70の整数、yは1〜30の整数、y/xは1以下である。)
【請求項8】
成分(H)として紫外線吸収剤を1種以上含有し、且つ成分(H)の含有量が(A)〜(C)の合計100重量部に対して、0.1〜10重量部であることを特徴とする請求項1乃至7に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【請求項9】
成分(H)として320nm〜400nm(UV−A)に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤を1種以上含有することを特徴とする請求項8に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【請求項10】
320nm〜400nm(UV−A)に極大吸収波長を有する前記紫外線吸収剤が一般式(a1)で表される2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤であることを特徴とする請求項9に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【化7】

(上記式中、Ra、Rb、Rcはそれぞれ独立に水酸基、水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。)
【請求項11】
320nm〜400nm(UV−A)に極大吸収波長を有する前記紫外線吸収剤としてトリアジン系紫外線吸収剤および/またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を1種以上含有することを特徴とする請求項9に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【請求項12】
320nm〜400nm(UV−A)に極大吸収波長を有する前記紫外線吸収剤として少なくとも2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤と、トリアジン系紫外線吸収剤および/またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とが併用されることを特徴とする請求項9に記載の熱硬化性ハードコート剤組成物。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の熱硬化性ハードコート剤組成物を基材の表面に塗布し、次いで前記熱硬化性ハードコート剤組成物を硬化させてなる硬化膜を有する成形品。
【請求項14】
前記基材がチオウレタン系樹脂またはチオエポキシ系樹脂のうち少なくとも1つからなるものである請求項13に記載の成形品。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれかに記載の熱硬化性ハードコート剤組成物を基材の表面に塗布し、次いで前記熱硬化性ハードコート剤組成物を硬化させてなる硬化塗膜を有するレンズ。
【請求項16】
前記硬化塗膜の上にさらに反射防止膜を有することを特徴とする請求項15に記載のレンズ。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−256563(P2009−256563A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183602(P2008−183602)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】