説明

熱硬化性フラン樹脂組成物、フラン樹脂硬化物及びそれらの製造方法

【課題】十分なクリープ性能を有し、ポットライフの長期化が実現できる熱硬化性フラン樹脂組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】フラン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)とを主として含有する熱硬化性フラン樹脂組成物であって、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)の含有量がフラン樹脂(A)100重量部に対し0.3〜4.5重量部であることを特徴とする熱硬化性フラン樹脂組成物を提供する。熱反応型潜在性酸硬化剤(C)は、無機アンモニウム塩、1級アミン塩、2級アミン塩、及び3級アミン塩からなる群から選択される少なくとも1種の熱反応型潜在性酸硬化剤であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性フラン樹脂組成物、フラン樹脂硬化物及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラン樹脂と硬化剤からなる熱硬化性フラン樹脂組成物を加熱硬化させることにより、フラン樹脂の硬化物を得るフラン樹脂組成物およびフラン樹脂の製造方法において、フラン樹脂と反応性希釈剤および硬化剤からなる熱硬化性フラン樹脂組成物の製造方法が例示されている(特許文献1)。この方法によると、フラン樹脂単体と比較して初期強度を大幅に改善することができる。しかしながら、クリープ性能および収縮率に関して改善されてはいるものの、未だ十分でないという課題があった。
【0003】
これらの課題を解決する方法として、例えば硬化剤の添加量を増やすという方法が挙げられる。硬化剤の添加量を増やすことによりフラン樹脂の硬化度が向上し、曲げ試験(DIN EN ISO 178(JIS K 7171))のクリープ線図における弾性係数の低下率を小さくすることができる。しかしながら、硬化剤を増やすことにより、ポットライフが短くなり、実用的でないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2010−263721号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、このような事情の下、十分なクリープ性能を有し、ポットライフの長期化が実現できる熱硬化性フラン樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
また、本発明の別の課題は、上記熱硬化性フラン樹脂組成物を用いた、十分なクリープ性能を有するフラン樹脂硬化物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、フラン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)とを主として含有する熱硬化性フラン樹脂組成物であって、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)の含有量がフラン樹脂(A)100重量部に対し0.3〜4.5重量部であることを特徴とする、熱硬化性フラン樹脂組成物を提供する。
上記熱反応型潜在性酸硬化剤(C)の含有量は、前記フラン樹脂(A)100重量部に対し0.5〜3.5重量部であることが好ましい。
また、上記熱反応型潜在性酸硬化剤(C)は、無機アンモニウム塩、1級アミン塩、2級アミン塩、及び3級アミン塩からなる群から選択される少なくとも1種の熱反応型潜在性酸硬化剤であることが好ましい。
さらに、上記熱反応型潜在性酸硬化剤(C)は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化ジメチルアンモニウム、塩化エチルアンモニウム、及び塩化ジエチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
さらにまた、上記硬化剤(B)は、有機酸もしくは無機酸であることが好ましい。
【0007】
また、本発明は、フラン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)とを主として含有する熱硬化性フラン樹脂組成物の製造方法であって、フラン樹脂(A)100重量部に対し、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)を0.3〜4.5重量部添加することを特徴とする、熱硬化性フラン樹脂組成物の製造方法を提供する。
熱反応型潜在性酸硬化剤(C)の添加量は、フラン樹脂(A)100重量部に対し、0.5〜3.5重量部であることが好ましい。
さらに、上記熱反応型潜在性酸硬化剤(C)は水もしくはフルフリルアルコールに希釈して添加することが好ましい。
また、上記熱反応型潜在性酸硬化剤(C)は、無機アンモニウム塩、1級アミン塩、2級アミン塩、及び3級アミン塩からなる群から選択される少なくとも1種の熱反応型潜在性酸硬化剤であることが好ましい。
またさらに、上記熱反応型潜在性酸硬化剤(C)は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化ジメチルアンモニウム、塩化エチルアンモニウム、及び塩化ジエチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0008】
さらに、本発明は、上記熱硬化性フラン樹脂組成物を加熱硬化して得られたフラン樹脂硬化物を提供する。
上記フラン樹脂硬化物は、さらに、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維あるいは有機繊維からなる織物もしくは不織布の基材を含んでいることが好ましい。
【0009】
さらにまた、本発明は、上記熱硬化性フラン樹脂組成物を加熱硬化させることを特徴とする、フラン樹脂硬化物の製造方法を提供する。
上記熱硬化性フラン樹脂組成物はガラス繊維、金属繊維あるいは有機繊維からなる織物もしくは不織布の基材に含浸させた後に上記加熱硬化させることが好ましい。
さらに、上記加熱硬化は60℃〜100℃で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分なクリープ性能を有し、ポットライフの長期化が実現できる熱硬化性フラン樹脂組成物およびその製造方法、ならびに、上記熱硬化性フラン樹脂組成物を用いた、十分な長期の機械的強度(クリープ性能)を有するフラン樹脂硬化物およびその製造方法が提供される。また、本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物、及びフラン樹脂硬化物は、十分な長期の機械的強度(クリープ性能)を有する鋼管ライニング、メジセメントならびにFRPなどとして使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[熱硬化性フラン樹脂組成物]
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物は、フラン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)とを主として含有する熱硬化性フラン樹脂組成物であって、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)の含有量がフラン樹脂(A)100重量部に対し0.3〜4.5重量部であることを特徴とする。本明細書において、「主として含有する」とは、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは60〜100重量%、さらに好ましくは70〜100重量%含有することを意味する。
【0012】
熱硬化性フラン樹脂組成物において長期の機械的強度(クリープ性能)を向上させる場合、硬化剤の添加量を増やせばクリープ性能は向上するが、硬化開始が早く、実用的でない。硬化剤の添加量を増やす代わりに、硬化剤による反応開始をトリガーに硬化を促進させる潜在触媒を所定量使用することが有効と考えられる。本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物は、所定量の潜在触媒(熱反応型潜在性酸硬化剤)を含有するため、曲げ試験(DIN EN ISO 178(JIS K 7171))のクリープ線図における弾性係数の低下率を小さくすることができ、クリープ線図の傾きが改善され、クリープ性能が向上する。
【0013】
<フラン樹脂(A)>
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物に含まれるフラン樹脂(A)は、フランもしくはフラン誘導体とアルデヒド類を酸性触媒の存在下で重合させて得られる。フラン樹脂(A)は、フランもしくはフラン誘導体とアルデヒド類を所定時間加熱攪拌した後冷却することにより得られる。重合が促進しないようにアルカリを加え中和することで反応を停止させることができる。
【0014】
フラン誘導体としては、フルフラール、フルフリルアルコール等が好ましく、中でもフルフリルアルコールがより好ましい。使用されるフルフリルアルコールとしては特に限定されないが、好ましくは純度90%以上、中でも95%以上であるのがよい。
【0015】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒドが好ましく、特にパラホルムアルデヒドがよい。アルデヒドとしては、反応条件下にホルムアルデヒドを離脱できるものであれば特に限定されない。
【0016】
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物におけるフラン樹脂(A)の含有量は、好ましくは50〜98重量%であり、より好ましくは60〜98重量%である。このような範囲とすることにより、クリープ性能が効果的に向上された硬化物を製造しやすくなる。
【0017】
<硬化剤(B)>
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物に含まれる硬化剤(B)は、フラン樹脂を硬化しうるものであれば、特に限定されず、例えば硫酸、リン酸、塩酸等の無機酸、あるいは有機スルホン酸、有機カルボン酸等の有機酸などが挙げられる。
【0018】
有機スルホン酸としては、例えばパラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、シュウ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸等が挙げられる。上記例示の硬化剤は、単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0019】
本発明においては、硬化剤(B)による反応開始をトリガーとして、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)により熱硬化性フラン樹脂組成物の硬化が促進される。そのための硬化剤(B)の含有量は、フラン樹脂100重量部に対して1.5〜4.5重量部が好ましいが、中でも2.5〜3.5重量部がより好ましい。硬化剤(B)の含有量が1.5重量部より少ないと、硬化剤(B)の熱反応型潜在性酸硬化剤(C)による熱硬化性フラン樹脂組成物の反応を促進させるトリガーとしての効果が発現されにくい。硬化剤(B)の含有量が4.5重量部より多いと、ポットライフが短くなり実用的でない場合がある。
【0020】
<熱反応型潜在性酸硬化剤(C)>
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物は、上記硬化剤(B)に加えて熱反応型潜在性酸硬化剤(C)を含有する。熱反応型潜在性酸硬化剤(C)としては、フラン樹脂(A)に含有する成分と常温では反応しにくく硬化時の加熱ですばやく反応し酸を発生させるものであれば特に限定されないが、常温時の安定性と硬化時の加熱による反応速度の点から、無機アンモニウム塩、1級アミン塩、2級アミン塩、3級アミン塩の少なくともいずれかを含有することが好ましく、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化ジメチルアンモニウム、塩化エチルアンモニウム、塩化ジエチルアンモニウムの少なくともいずれかを含有することが特に好ましい。上記例示の熱反応型潜在性酸硬化剤は、単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0021】
熱反応型潜在性酸硬化剤(C)の含有量は、フラン樹脂(A)100重量部に対し0.3〜4.5重量部であり、フラン樹脂(A)100重量部に対し0.5〜3.5重量部であることが好ましい。このような範囲とすることにより、クリープ性能を効果的に向上できる。熱反応型潜在性酸硬化剤(C)の含有量が0.3重量部より少ないと、潜在触媒としての効果が発揮されずクリープ性能の向上が認められない。熱反応型潜在性酸硬化剤(C)の含有量が4.5重量部より多いと、初期強度およびクリープ性能の低下が認められる。
【0022】
<反応性希釈剤>
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物は、粘度調整や反応性調整の点から、反応性希釈剤を含んでいてもよい。その際、反応性希釈剤としては、粘度が低く、フラン樹脂と相溶性があり、熱硬化性フラン樹脂組成物が硬化する際に反応・固化するものであれば特に限定されないが、例えば、フルフリルアルコール単独、フルフラール単独、あるいはフルフリルアルコールとフルフラールの混合物が好ましい。
【0023】
反応性希釈剤の含有量は、反応性希釈剤の種類、フラン樹脂の粘度により異なるが、少なすぎると基材への含浸性が低下するおそれがあり、一方、多すぎると基材に含浸後、タレが発生するおそれがあることから、フラン樹脂100重量部に対して、10〜130重量部であることが好ましく、40〜110重量部がより好ましい。
【0024】
<フィラー>
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物はフィラーを含んでいても良い。フィラーとしては、例えば無機フィラー、炭素粉末、木粉、樹脂粉末有機フィラーなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン等の金属水酸化物や金属酸化物、亜鉛などの金属粉末、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛などの金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、マイカ、タルク、ベントナイト、ゼオライト、シリカゲル、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらの無機フィラーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
フィラーの含有量としては、フラン樹脂(A)100重量部に対して、例えば10〜90重量部、好ましくは30〜90重量部、より好ましくは50〜90重量部の範囲とするのがよい。このような範囲とすることにより、初期弾性係数を向上できる。
<粘度>
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物は、それを既設管更生用ライニング材などの用途にガラス繊維強化樹脂のベース樹脂として用いる場合、粘度が高すぎるとガラス繊維に浸透せず、粘度が低すぎると樹脂が下側に偏在して上部に未含浸の部分を生じる場合があるため、粘度が400mPa・s以上7000mPa・s以下であるのが望ましい。
【0027】
<その他の成分>
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じ、可塑剤、整泡剤などの任意成分を含有していてもよい。
可塑剤としては、例えばフタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル、エポキシ系可塑剤などが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
整泡剤としては、例えばひまし油、ひまし油誘導体、ポリシロキサン系化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
[熱硬化性フラン樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物の製造方法は、フラン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)とを主として含有する熱硬化性フラン樹脂組成物の製造方法であって、フラン樹脂(A)100重量部に対し、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)を0.3〜4.5重量部添加することを特徴とする。「主として含有する」とは、上記と同様の意味である。
【0029】
フラン樹脂(A)、硬化剤(B)および熱反応型潜在性酸硬化剤(C)については、上記のものが使用できる。また添加量は、上記含有量に対応する量とすることができる。
【0030】
熱反応型潜在性酸硬化剤(C)は、水もしくはフルフリルアルコールに希釈して添加してもよい。
【0031】
[フラン樹脂硬化物]
本発明のフラン樹脂硬化物は、上記の熱硬化性フラン樹脂組成物を加熱硬化することにより得られる。
【0032】
<基材>
本発明のフラン樹脂硬化物は、さらに、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維あるいは紙、綿、麻などの有機繊維からなる織物もしくは不織布の基材を含んでいてもよい。これらの基材は、単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0033】
[フラン樹脂硬化物の製造方法]
本発明のフラン樹脂硬化物の製造方法は、上記の熱硬化性フラン樹脂組成物を加熱硬化させることを特徴とする。
【0034】
<加熱硬化>
熱硬化性フラン樹脂組成物の加熱硬化は、熱硬化性フラン樹脂組成物もしくは熱硬化性フラン樹脂組成物を上記基材に含浸させたものを所定の形状の容器もしくは金型に納め、60℃〜100℃に調整された恒温槽、恒温水槽内で熱硬化性フラン樹脂組成物を硬化させて行うことができる。もしくは、容器あるいは金型内に60℃〜100℃に調整された熱風もしくは熱水を循環させ、熱硬化性フラン樹脂組成物を硬化させて行うことができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によりなんら限定されるものではない。
【0036】
<実施例1>
フラン樹脂50重量部に対しフルフリルアルコール50重量部、硬化剤(パラトルエンスルホン酸 65重量%水溶液)3重量部、フィラー(BASF社 トランスリンク#445)60重量部、塩化エチルアンモニウム水溶液(37.5%濃度)を塩化エチルアンモニウムとして0.5重量部を添加した後、ホモディスパーを用い、1000rpmで10分間攪拌し、熱硬化性フラン樹脂組成物を得た。
これを長さ230mm×幅230mm×厚さ5mmの不織布に含浸させた後、長さ240mm×幅240mm×厚さ5mmの金型に入れ、オーブン内温度70℃で1時間加熱後、オーブン内温度を90℃に昇温し3時間加熱硬化させた後、オーブン内で室温まで冷却し、熱硬化フラン樹脂板を得た。
【0037】
<実施例2>
塩化エチルアンモニウム1.5重量部を用い、他は実施例1と同様にして熱硬化フラン樹脂板を得た。
【0038】
<実施例3>
塩化エチルアンモニウム2.5重量部を用い、他は実施例1と同様にして熱硬化フラン樹脂板を得た。
【0039】
<実施例4>
塩化エチルアンモニウム3.5重量部を用い、他は実施例1と同様にして熱硬化フラン樹脂板を得た。
【0040】
<比較例1>
フラン樹脂66.7重量部、フルフリルアルコール33.3重量部、フィラー(BASF社 トランスリンク#445)60重量部、硬化剤(パラトルエンスルホン酸 65重量%水溶液)3重量部を用い、他は実施例1と同様の方法で熱硬化フラン樹脂板を得た。
【0041】
<比較例2>
塩化エチルアンモニウム4.6重量部を用い、他は実施例1と同様にして熱硬化フラン樹脂板を得た。
【0042】
<変位>
実施例1から実施例4および比較例1,2で得られたフラン樹脂板より、100mm×幅15mmの試験片を切り出し、3点曲げ試験(DIN EN ISO178 (JIS K 7171))により変位を測定した。
50年後の変位の予測値を、DIN EN 761に記載の方法により算出した。
【0043】
<収縮率>
実施例1から実施例4および比較例1,2で得られたフラン樹脂板より、100mm×幅100mmの試験片を切り出し、縦方向および横方向の寸法変化を測定し収縮率を求めた。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示すように、本発明の実施例1から実施例4においては、長期の変位量が低下した。すなわちクリープ性能の向上が実現できる熱硬化性フラン樹脂組成物となった。
また、表1に示すように、本発明の実施例1から実施例4においては、硬化後の収縮率を小さくできる熱硬化性フラン樹脂組成物となった。
【0046】
以上より、塩化エチルアンモニウムを熱反応型潜在性酸硬化剤として添加することにより、フラン樹脂硬化物のクリープ特性が改善されることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の熱硬化性フラン樹脂組成物、及びフラン樹脂硬化物は、十分な長期の機械的強度(クリープ性能)を有する鋼管ライニング、メジセメントならびにFRPなどとして使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)とを主として含有する熱硬化性フラン樹脂組成物であって、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)の含有量がフラン樹脂(A)100重量部に対し0.3〜4.5重量部であることを特徴とする、熱硬化性フラン樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱反応型潜在性酸硬化剤(C)の含有量が、前記フラン樹脂(A)100重量部に対し0.5〜3.5重量部である、請求項1記載の熱硬化性フラン樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱反応型潜在性酸硬化剤(C)が、無機アンモニウム塩、1級アミン塩、2級アミン塩、及び3級アミン塩からなる群から選択される少なくとも1種の熱反応型潜在性酸硬化剤である、請求項1又は2記載の熱硬化性フラン樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱反応型潜在性酸硬化剤(C)が、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化ジメチルアンモニウム、塩化エチルアンモニウム、及び塩化ジエチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項3記載の熱硬化性フラン樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化剤(B)が、有機酸もしくは無機酸である、請求項1〜4の何れか1項に記載の熱硬化性フラン樹脂組成物。
【請求項6】
フラン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)とを主として含有する熱硬化性フラン樹脂組成物の製造方法であって、フラン樹脂(A)100重量部に対し、熱反応型潜在性酸硬化剤(C)を0.3〜4.5重量部添加することを特徴とする、熱硬化性フラン樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
熱反応型潜在性酸硬化剤(C)の添加量が、フラン樹脂(A)100重量部に対し、0.5〜3.5重量部である、請求項6記載の熱硬化性フラン樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記熱反応型潜在性酸硬化剤(C)を水もしくはフルフリルアルコールに希釈して添加する、請求項6又は7記載の熱硬化性フラン樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記熱反応型潜在性酸硬化剤(C)が、無機アンモニウム塩、1級アミン塩、2級アミン塩、及び3級アミン塩からなる群から選択される少なくとも1種の熱反応型潜在性酸硬化剤である、請求項6〜8の何れか1項に記載の熱硬化性フラン樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記熱反応型潜在性酸硬化剤(C)が、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化ジメチルアンモニウム、塩化エチルアンモニウム、及び塩化ジエチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項9に記載の熱硬化性フラン樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜5の何れか1項に記載の熱硬化性フラン樹脂組成物を加熱硬化して得られたフラン樹脂硬化物。
【請求項12】
さらに、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維あるいは有機繊維からなる織物もしくは不織布の基材を含む、請求項11記載のフラン樹脂硬化物。
【請求項13】
請求項1〜5の何れか1項に記載の熱硬化性フラン樹脂組成物を加熱硬化させることを特徴とする、フラン樹脂硬化物の製造方法。
【請求項14】
前記熱硬化性フラン樹脂組成物をガラス繊維、金属繊維あるいは有機繊維からなる織物もしくは不織布の基材に含浸させた後に前記加熱硬化させる、請求項13記載のフラン樹脂硬化物の製造方法。