説明

熱硬化性乾燥剤及びその製造方法

(a)少なくとも60wt%の乾燥剤、10wt%以下の湿潤化剤、5wt%以下の加工助剤、及び10〜30wt%の熱硬化性樹脂を含んでなる組成物をブレンドする工程;(b)工程(a)でブレンドされた組成物を製品又は付形物へと形成する工程;及び(c)工程(b)の製品又は付形物を加熱して該樹脂を架橋する工程;を含む、乾燥剤製品を形成する方法。少なくとも70wt%の乾燥剤と熱硬化性結合剤樹脂とを含んでなる乾燥剤製品も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾燥剤に関し、より詳細にはモルド成形可能な乾燥剤製品に関する。
【背景技術】
【0002】
水分吸収可能な製品へとモルド成形又は形成(form)することができる樹脂へ、様々なタイプの乾燥剤を組み込むことが知られている。そのようなタイプの樹脂の1つは種々の熱可塑性物質である。熱可塑性物質製品はその吸収容量の水分を吸収するが、再び使用できるように再活性化させることが容易にはできない。なぜならば、製品中に配置された乾燥剤を有効に再活性化させるべく水分を十分に排除するために必要とされる温度でこの製品は溶融し、若しくは少なくとも変形するからである。さらに、熱可塑性物質、ワックス、及びクレーのような結合剤は、結合剤中に配置された乾燥剤を活性化するために必要とされる高い活性化温度に耐えられない。これにより、これら結合剤で作られた製品及び付形物は、使用することはできるが、リサイクル又は再活性化はできないことになる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の概要
本発明には、(a)少なくとも60wt%の乾燥剤、10wt%以下の湿潤化剤、5wt%以下の加工助剤、及び10〜30wt%の熱硬化性樹脂を含む組成物をブレンドするブレンド工程;
(b)工程(a)でブレンドされた組成物を製品又は付形物へと形成する付形工程;そして
(c)工程(b)で得られた製品又は付形物を加熱して樹脂を架橋させる加熱工程
を含む、乾燥剤製品を形成する方法が含まれる。
【0004】
少なくとも70wt%の乾燥剤及び熱硬化性結合剤樹脂を含む乾燥剤製品も含まれる。好ましくはこの製品は5〜30wt%で存在する結合剤樹脂を含む。好ましい結合剤樹脂は、フェノール樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシド樹脂、メラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、及びシリコン樹脂からなる群から選択される。
【0005】
発明の詳細な説明
本発明は、タブレットやバー(bar)のような付形物や他の寸法的に安定な製品へとプレス加工可能であるか又はモルド成形可能であり、次いで硬化させて寸法安定性製品を形成することができる、モルド成形可能な乾燥剤材料を提供する。この硬化された製品は、高温で加熱することにより、製品や付形物の損傷や変形なしに活性化させることができ、用いることができ、そして再活性化させることができる。本発明のこの側面は熱硬化性樹脂を結合剤として用いることにより達成される。この熱硬化性樹脂は硬化中に架橋して、その形態の物理的形状や特性を維持しながら高温で活性化及び再活性化できる形態でその中の乾燥剤を結合する。
【0006】
本発明の一般的な利点は、最終生成物又は付形物(例えばタブレット)が、高い強度(熱可塑性物質により結合された生成物と比較して)を有する点と、その製品に熱が後から導入されるときに変形しないという点である。熱硬化性樹脂結合剤が硬化してしまうと、熱によりこの製品を軟化させることはできない。この製品を壊すことができる唯一の方法は、この製品を約1000゜F(537.8℃)以上、又はある場合には1500゜F(815.6℃)以上(用いられる樹脂に応じて)に加熱することであり、これらの温度は典型的な熱硬化性結合剤が灰化する温度である。フェノール架橋樹脂のような本発明に用いられる典型的な架橋樹脂は、約1100゜F(593.3℃)までの温度に耐えるだろう。熱硬化性樹脂結合剤を用いる本発明の方法で製造された製品は、その吸収容量の水を吸収した後に再活性化させることができる。これは、乾燥剤製品が再使用又はリサイクル可能であることを意味する。熱可塑性製品がその吸収容量の水分を吸収すると、その製品は乾燥剤を再活性化させるのに必要な温度で溶融するので、再活性化させて再使用することができない。
【0007】
熱可塑性製品の形成の場合のように、熱硬化性樹脂で製造された乾燥剤製品は、混合工程から付形工程そして加熱及び硬化工程の処理工程中に水分を吸収する。熱硬化性樹脂で製造された製品は高温で活性化させて水分を除去することができるだろうが、熱可塑性樹脂で製造された製品は溶融又は変形するのでこれら高温まで加熱することができないだろう。例えば、熱可塑性樹脂とモレキュラーシーブで製造された製品は最高で5〜10%の水分を含み、この水分を活性化中に除去することはできないだろう。これは当然、製品の吸収容量と有用性を低下させる。一方、本発明に従って熱硬化性樹脂を結合剤として用いると、この樹脂はモレキュラーシーブの活性化に用いられるより高い温度に耐えることができ、水を2%未満の水分まで除去することができる。この側面は、本発明の熱硬化性樹脂で製造された製品に、より高い吸収容量を与え、それにより、有用性を高めることを可能とする。
【0008】
本発明は、一態様において、熱で硬化/熱硬化する熱硬化性樹脂を用いるので、本プロセス中に樹脂が架橋するにつれて揮発性物質が排出されるようになる。このプロセスのために、樹脂/結合剤は熱可塑性樹脂よりも多孔性となり、水分をよりよく吸収できる製品がもたらされるだろう。言い換えると、結合剤及びれから形成された製品は、水分や他の物質をより迅速に吸収することを可能とする、より多孔性なものになるだろう。
【0009】
自己硬化性又は触媒硬化性にかかわらず、ほぼすべての熱硬化性樹脂を本発明で用いることができる。熱硬化性樹脂は加熱されたときに硬化又は架橋する樹脂である。触媒を必要としないタイプの熱硬化性樹脂の一部には、フェノール樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシド樹脂、メラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン、及びシリコン等がある。熱硬化性という用語は、添加剤により誘導される架橋が可能な材料にも適用される。分子成分の架橋反応は、熱、放射線、又は硬化剤としても知られる触媒により誘導することができる。例えば、線状ポリエチレンは放射線又は化学反応により熱硬化性樹脂へと架橋され得る。一例として、自己硬化性ではないがヘキサメチレンテトラアミンのような触媒の添加で自発的に硬化する、ノボラック樹脂として知られるタイプのフェノール樹脂がある。
【0010】
上記の通り、本発明には、結合剤とブレンドされて次いで加圧機において製品又は付形物へとプレス加工される吸着剤/乾燥剤粒子が含まれる。本発明のこの特徴が有利であるのは一部には大量製造を可能とするからである。これら製品は、鋳型におけるような他の方法によって形成することもできる。製品をプレス加工した後、この製品を高温のオーブンで加熱してそれにより硬化させて熱硬化性結合剤を架橋させる。加熱プロセスは乾燥剤を活性化/再活性化させる第二の目的に寄与する。乾燥剤を活性化させることにより、加工中に乾燥剤に吸収された水分が除去される。硬化及び活性化は、プロセスに応じて、2つの異なる工程であってもよいし1工程であってもよい。任意には、真空オーブンを活性化プロセスに用いてより多くの水分を除去する。
【実施例】
【0011】
本発明の一態様において、3402gの3Aモレキュラーシーブパウダーを、Durez 29-733(Durez はAddison, TexasのDurez Corporationのフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を含む樹脂についての登録商標である)として知られるフェノール樹脂652gへと混合機内で添加し、5分間混合した。次いで、81gのモルド成形潤滑剤、今回はSterotex(SterotexはAbitec Corporationの潤滑剤として用いられる粉末化植物ステアリンについての登録商標である)として商業的に知られる植物油、を添加し、得られる混合物をさらに10分間混合した。次いで、410gの湿潤化剤、今回はイソプロピルアルコール(適する他の湿潤化剤は当業者に知られているだろう)、を添加し、得られる湿潤混合物をさらに10分間混合した。最後に、455gの4Aモレキュラーシーブパウダーを添加し、得られる混合物をさらに10分間混合した。その後、このブレンド物を平らな表面に置き、約20分間乾燥させておき、イソプロピルアルコールの一部を蒸発させた。次いでこの材料から製品をプレス加工した。
【0012】
好ましい態様において、4Aモレキュラーシーブの一部を添加して、乾燥剤として添加される3Aモレキュラーシーブのみを有するブレンド物と比べて、ブレンド物の流動性を改良させた。意図する用途や適用に応じて、シリカゲルや5A又は10Aのような様々なサイズのモレキュラーシーブのような、他の乾燥剤及びサイズを用いることができるだろう。この流動性は加工パラメータに依存して重要となるかもしれない。なぜならば、小さなダイ空孔がブレンド物で充填されプレス加工又はモルド成形されるような場合には、相対的に流動自在のブレンド物が望ましいからである。例えば、ダイ空孔が正しく充填されなければ、この製品は適切な圧力を受けず、プレス加工後に十分な強度を有しないだろう。さらなる問題にはモルド成形された製品の質量及びサイズに関する誤差が含まれるだろう。これは、工具の損傷や破損をもたらし得るボイド又は応力点を有する生成物を生じるだろう。
【0013】
硬化前に、この製品は、先行技術組成物と比べて良好な生強度(green strength)を示す。この1つの理由は湿潤化剤である。好ましい硬化プロセスは99℃(210゜F)で開始され、温度を12時間かけて193℃(380゜F)まで高める。湿潤化剤は、このプロセス中に完全でなくても大部分蒸発する。製品を硬化した後、この製品を最小27インチの真空器内で210℃(410゜F)で24時間かけて活性化させた。この活性化プロセスはモレキュラーシーブから残りの水分及び/又は湿潤化剤をすべて除去するために行われた。
【0014】
硬化プロセスは最終製品の用途に応じて重要である。樹脂が適切に硬化されないと、とりわけ硬化が速すぎると、この製品はひび割れし得る。例示的な硬化サイクルが試料製品に成功裡に用いられ、これには、製品をより低温で短期間で硬化させて、次いでより高温でより長い時間さらに硬化させる複数工程のプロセスが含まれる。そのような例の1つは、製品を210゜F(98.9℃)で2時間硬化させて、次いで、380゜F(193.3℃)で8時間硬化させることを含む硬化サイクルである。温度は徐々に210゜F(98.9℃)から280゜F(137.8℃)へと高められた。加えて、上記のように、水分を除去し活性化させるために製品を好ましくはさらに処理する。例となる活性化工程は、例えば60torr、210゜F(98.9℃)の真空オーブンに22時間、製品を置くことだろう。
【0015】
熱硬化性樹脂を使用すると、完全に乾燥していて湿潤化剤を用いない混合物の製造が可能となる。例示的なそのような配合物は、モレキュラーシーブ83%、熱硬化性樹脂15%、及び流動性を補助するための加工助剤としての潤滑剤2%を用いて作製された。しかし、加工パラメータに依存して、より少ない潤滑剤、0%までの潤滑剤でさえ、本発明の生成物を製造するために用いることができるだろう。
【0016】
本発明のさらなる側面は、上記の利点を有するが従来のモルド成形又はプレス加工操作では容易には形成できないであろう製品を形成するために、架橋された製品をさらに機械加工することができる点である。例えば、破砕操作は熱可塑性製品を破壊し変形させるであろう熱を発生させるが、本発明に従って製造された製品には容易に行うことができた。その上、特定の製品又は付形物はモルド成形又はプレス加工単独では形成ないだろうから、多少の機械加工が必要であろう。本発明に従って形成された製品は、先行技術の組成物の欠点なくこの機械加工を行うことができる。
【0017】
さらなる例
実施例1
次のものを実験用ブレンド機内で混合した:830gの3Aモレキュラーシーブパウダー;210gのフェノール樹脂、即ちDurez樹脂29-733;20gのSterotex植物油;及び100gのイソプロピルアルコール。このブレンド物は以下に示すブレンドのように良好に流動しなかったが、本発明に従った構成であり、意図するプロセスにとって流動性が適切であれば用いることができる。
【0018】
実施例2
次のものを実験用ブレンド機内で混合した:830gの3Aモレキュラーシーブパウダー;159gのフェノール樹脂、即ちDurez樹脂29-733;20gのSterotex植物油;100gのイソプロピルアルコール;及び53gの4Aモレキュラーシーブパウダー。このブレンド物は良好に流動した。このブレンド物で製品を形成した。
【0019】
実施例3
次のものを実験用ブレンド機内で混合した:415gの3Aモレキュラーシーブパウダー;75gのフェノール樹脂、即ちDurez樹脂29-733;10gのSterotex植物油;及び100gの4Aモレキュラーシーブ。
【0020】
ロータリープレス上でこの混合物から製品を製造し、3トン、5トン、及び9トンの圧力下でプレス加工した。1/2インチ(1.27cm)の直径と5/32インチ(0.40cm)の厚さを有するディスクとして実施例の製品を形成した。これら製品を硬化させ、上記の手順に従って乾燥剤を活性化させた。
【0021】
このような製品については多くの用途があり、この製品を特別な用途に用いるのに適するあらゆる形状へとプレス加工することができる。このような用途の例には、暗視望遠鏡又は器材のような電気光学装置内へと配置するためのバーへと材料をプレスすることが含まれる。
【0022】
本発明は本明細書中で特定の態様を参照しながら例示され説明されるが、本発明は示された詳細へと限定されることを意図しない。むしろ、特許請求の範囲及び均等の範囲内の本発明から逸脱しない多様な変形がなされてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥剤製品を形成する方法であって:
(a)少なくとも60wt%の乾燥剤
10wt%以下の湿潤化剤、
5wt%以下の加工助剤、及び
10〜30wt%の熱硬化性樹脂
を含んでなる組成物をブレンドするブレンド工程;
(b)工程(a)でブレンドされた組成物を製品又は付形物へと形成する付形工程;及び、
(c)工程(b)の製品又は付形物を加熱して該樹脂を架橋させる加熱工程
を含んでなる方法。
【請求項2】
加熱工程(c)が、該樹脂を架橋して該乾燥剤を活性化させるのに十分な時間、該製品又は付形物を加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブレンド工程(a)が、乾燥剤としてモレキュラーシーブを添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ブレンド工程(a)が、3A、4A、5A、10Aのモレキュラーシーブパウダー及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるサイズを有するモレキュラーシーブパウダーである乾燥剤を添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該湿潤化剤がイソプロプルアルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシド樹脂、メラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、及びシリコン樹脂からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該熱硬化性樹脂が自己硬化性でなく、かつ、工程(b)及び(c)の間に硬化剤を添加する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(d)工程(c)からの架橋された製品又は付形物を機械加工する工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも70wt%の乾燥剤と、熱硬化性結合剤樹脂とを含んでなる、乾燥剤製品。
【請求項10】
該結合剤樹脂が5〜30wt%存在する、請求項9に記載の乾燥剤製品。
【請求項11】
該結合剤樹脂が、フェノール樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシド樹脂、メラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、及びシリコン樹脂からなる群から選択される、請求項9に記載の乾燥剤製品。

【公表番号】特表2008−515622(P2008−515622A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535680(P2007−535680)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/030470
【国際公開番号】WO2006/044034
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(503264031)マルチソーブ テクノロジーズ インコーポレイティド (12)
【Fターム(参考)】