説明

熱硬化性塗料組成物

【課題】 耐擦り傷性、耐酸性及び耐久性に優れ、しかも耐汚染性に優れた塗膜を形成することができ、自動車用上塗塗料として好適に利用することができる熱硬化性塗料組成物を提供する。
【解決手段】 基体樹脂が、
(A)水酸基価が50〜400mgKOH/gであり、ラクトン化合物に基づく構成単位を20〜70質量%含有する水酸基含有ラクトン変性樹脂と、
(B)水酸基価が50〜150mgKOH/gであり、環構造を有するラジカル重合性単量体に基づく構成単位を10〜80質量%含有する水酸基及び環構造含有アクリル樹脂とからなり、
架橋用樹脂がイソシアネート化合物である熱硬化性塗料組成物であって、(A)/(B)の樹脂固形分質量比が95/5〜20/80である熱硬化性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐擦り傷性、耐酸性及び耐久性に優れ、しかも耐汚染性に優れた塗膜を形成することができ、自動車用上塗塗料として好適に利用することができる熱硬化性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車塗装分野においては、水酸基含有アクリル樹脂と、水酸基と反応する官能基を有する架橋剤からなる塗料組成物が多く使用されている。これらの塗料組成物に使用される、水酸基含有アクリル樹脂は、従来、水酸基を有するラジカル重合性単量体とその他のラジカル重合性単量体の共重合体が主に用いられているが、近年、自動車塗装分野においては、塗料、特にクリヤー塗料に、塗膜の耐酸性雨性、耐洗車傷性が要求され、耐擦り傷性及び耐久性に優れた塗膜を形成できる塗料の開発が急務となっている。
【0003】
耐酸性、擦り傷性に優れた塗膜を得る方法として、(A)(メタ)アクリル酸誘導体単位を含有する酸価25〜125mgKOH/g、水酸基価30〜150mgKOH/gのアクリル系共重合体と、(B)エポキシ基をもつ不飽和単量体単位を含有するエポキシ当量230〜1500、水酸基価30〜150mgKOH/gのアクリル系共重合体であって、(A)及び(B)成分が、水酸基をもつアクリル系単量体のε−カプロラクトン変性物である不飽和単量体を含有していても良い共重合体であって、さらには、(C)アミノ樹脂を必須成分とする塗料組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この塗料組成物では、塗膜の耐擦り傷性と耐汚染性の両立が難しいという欠点があった。
【0004】
また、同じく2種類の水酸基含有樹脂を用いて塗膜の仕上り外観、塗膜硬度、塗膜の耐酸性雨性、耐擦り傷性に優れ、かつ、高固形分である塗料組成物として、(A)重量平均分子量が1000以下、かつ水酸基価が200〜800mgKOH/gの水酸基含有ラクトン変性オリゴマーを5〜30重量%、(B)重量平均分子量が1000〜6000、かつ水酸基価が50〜200mgKOH/gの水酸基含有樹脂を5〜50重量%、(C)ポリイソシアネート化合物を30〜70重量%及び(D)メラミン樹脂を3〜30重量%含有する高固形分塗料組成物が知られていた(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この塗料組成物では、塗膜の耐汚染性が不十分であるという欠点があった。
【0005】
また、塗膜の耐汚染性、耐衝撃性に優れ、同時に、外観性、耐候性、耐水性等にも優れた塗料組成物として、(a)水酸基価が75〜250mgKOH/gであり、かつ酸価が0.5〜50mgKOH/gであるアクリル系ポリオール樹脂100質量部に対して、ラクトン化合物を10〜200質量部加え、無触媒下で開環付加反応させることにより得られるラクトン変性アクリル系ポリオール樹脂30〜90質量部、(b)ポリイソシアネート化合物10〜70質量部、及び(c)特定のアルコキシシランの部分加水分解縮合物0.01〜20質量部を必須成分とする塗料組成物が知られている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この塗料組成物では、リコート密着性が不十分という欠点があった。
【0006】
また、塗膜に弾力を与える塗料組成物として、数平均分子量が1,500〜15,000であり、芳香族環の含有量が0.9〜3.3個/kg樹脂であり、ラクトン含有量が20〜60重量%であり、水酸基価が56〜300mgKOH/gであり、しかも、分子の仮想的中心から放射状に複数分岐を有し、その分岐から更に複数の分岐が伸びているスターバースト型ポリエステルオリゴマーと、アミノプラスト樹脂、イソシアネートプレポリマー及びブロックされたイソシアネートプレポリマーからなる群から選択される硬化剤とを含有する塗料用樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、この塗料組成物では、自動車用上塗り塗料として用いた場合、塗膜の耐候性が不十分であるという欠点があった。
【0007】
また、低温硬化性、塗膜の付着性、仕上り性などに優れたクリヤー塗料組成物として、(a)4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートモノマー、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにε−カプロラクトンを開環重合させることにより得られるε−カプロラクトン変性ビニルモノマーより選ばれる1級水酸基含有モノマー8〜30重量%、(b)2級水酸基含有モノマー10〜40重量%及び(c)その他の重合性不飽和モノマー30〜82重量%をラジカル共重合することにより得られる水酸基価が80〜160mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂(A)及び硬化剤(B)を、アクリル樹脂(A)と硬化剤(B)との合計固形分を基準にして、アクリル樹脂(A)
60〜90重量%及び硬化剤(B) 10〜40重量%の割合で含んでなる塗料組成物が知られている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、この塗料組成物では、塗膜の耐擦り傷性が不十分という欠点があった。
【0008】
【特許文献1】特開平5−171103号公報
【特許文献2】特開2002−105397号公報
【特許文献3】特開2003−313493号公報
【特許文献4】特開平9−157589号公報
【特許文献5】特開2004−314060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、耐擦り傷性、耐酸性及び耐久性に優れ、しかも耐汚染性に優れた塗膜を形成することができ、自動車用上塗塗料として好適に利用することができる熱硬化性塗料組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく種々の検討を重ねた結果、ラクトン化合物に基づく構成単位を含有する水酸基含有ラクトン変性樹脂と、環構造を有するラジカル重合性単量体に基づく構成単位を含有する水酸基及び環構造含有アクリル樹脂との混合物を、イソシアネート化合物を用いて硬化した熱硬化性塗料組成物が、塗膜の耐擦り傷性及び耐久性に優れ、しかも耐汚染性にも優れ、自動車用上塗塗料として好適に利用することができる熱硬化性塗料組成物を提供することを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、基体樹脂が、
(A)水酸基価が50〜400mgKOH/gあり、ラクトン化合物に基づく構成単位を20〜70質量%含有する水酸基含有ラクトン変性樹脂と、
(B)水酸基価が50〜150mgKOH/gであり、環構造を有するラジカル重合性単量体に基づく構成単位を10〜80重量%含有する水酸基含有アクリル化合物とからなり、
架橋用樹脂がイソシアネート化合物である熱硬化性塗料組成物であって、(A)/(B)の樹脂固形分質量比が95/5〜20/80であることを特徴とする熱硬化性塗料組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、上記熱硬化性塗料組成物において、(B)の環構造を有するラジカル重合性単量体がスチレン、シクロへキシルメタクリレート、シクロへキシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート及びイソボルニルアクリレートから選ばれる1種類以上のモノマーである熱硬化性塗料組成物を提供する。
また、本発明は、上記熱硬化性塗料組成物において、(A)の水酸基含有ラクトン変性樹脂が、水酸基を有するラジカル重合性単量体とその他のラジカル重合性単量体を共重合してえられる水酸基含有アクリル樹脂に、ラクトン化合物を開環付加反応させることにより得られる、水酸基価が50〜400mgKOH/gであって、ラクトン化合物に基づく構成単位を20〜70質量%含有する水酸基含有ラクトン変性樹脂である熱硬化性塗料組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、上記熱硬化性塗料組成物において、(A)の水酸基含有ラクトン変性樹脂が、(a)1個のカルボキシル基と2個以上の水酸基を有する酸化合物、(b)エポキシ基を有するラジカル重合性単量体、及び(c)その他のラジカル重合性単量体とを共重合して得られる水酸基含有樹脂にラクトン化合物を開環付加反応させることにより得られる水酸基含有ラクトン変性樹脂であり、水酸基価が50〜400mgKOH/g、ラクトン化合物に基づく構成単位を20〜70質量%含有する熱硬化性塗料組成物を提供する。
さらに、本発明は、上記熱硬化性塗料組成物において、(a)の酸化合物が2,2−ジメチロールブタン酸または2,2−ジメチロールプロピオン酸である熱硬化性塗料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱硬化性塗料組成物を用いることによって、耐擦り傷性、耐酸性及び耐久性に優れた塗膜が得られ、加えて、耐汚染性に優れた塗膜が得られる。本発明の熱硬化性塗料組成物は、自動車用上塗塗料として利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に用いられる(A)の水酸基含有ラクトン変性樹脂は、水酸基価が50〜400mgKOH/gであり、ラクトン化合物に基づく構成単位を20〜70質量%含有する樹脂である。
(A)の水酸基含有ラクトン変性樹脂の水酸基価のより好ましい範囲は、100〜350mgKOH/gであり、特に好ましい範囲は、150〜330mgKOH/gである。(A)の水酸基含有ラクトン変性樹脂の水酸基価が50mgKOH/g未満の場合、耐候性、及び、耐酸性が不十分であり、水酸基価が400mgKOH/gを超える場合、硬化剤との相溶性が低下のため塗膜の外観性が低下する。
また、A)の水酸基含有ラクトン変性樹脂のラクトン化合物に基づく構成単位のより好ましい含有量は、20〜60質量%であり、特に好ましい範囲は、20〜50質量%である。ラクトン化合物に基づく構成単位の含有量が20質量%未満の場合、塗膜の耐擦り傷性が不十分であり、ラクトン化合物に基づく構成単位の含有量が70質量%を超える場合、塗膜の耐汚染性が不十分である。
【0016】
(A)の水酸基含有ラクトン変性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは2,500〜15,000であり、より好ましくは、2,500〜12,000である。重量平均分子量が、2,500未満の場合は、塗膜の耐候性が低下することがあり、15000を超える場合には、塗膜の外観性が低下することがある。
(A)の水酸基含有ラクトン変性樹脂は、ラクトン化合物に基づく構成単位を含有しない水酸基含有樹脂又はラクトン化合物に基づく構成単位を含有する水酸基含有樹脂にラクトン化合物を、開環付加反応させることにより得ることができ、また、ラクトン化合物を開環付加反応させた水酸基含有ラジカル重合性単量体と他のラジカル重合性単量体を共重合することにより得ることができる。ラクトン化合物の開環付加反応は、無触媒下で行うことが好ましい。このラクトン変性により、本発明の上塗り塗料組成物から形成される硬化塗膜にはゴム弾性が付与され、高度な耐擦り傷性が発現する。
【0017】
水酸基含有樹脂としては、水酸基含有アクリル樹脂や、(a)1個のカルボキシル基と2個以上の水酸基を有する酸化合物、(b)エポキシ基を有するラジカル重合性単量体、及び(c)その他のラジカル重合性単量体とを共重合して得られる水酸基含有樹脂を挙げることができる。
水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有ラジカル重合性単量体、及びその他のラジカル重合性単量体の混合物を、通常のラジカル重合開始剤を用いて、通常の有機溶剤中で、通常のラジカル共重合することにより得ることができる。なお、ラクトン化合物で変性した(メタ)アクリル酸エステルなどのラクトン変性ラジカル重合性単量体を用いる場合は、水酸基含有ラジカル重合性単量体として、ラジカル共重合において用いる。この場合、ラクトン変性ラジカル重合性単量体を、得られる共重合体の水酸基価が50〜400mgKOH/gであって、ラクトン化合物に基づく構成単位の含有量が20〜70質量%になるように共重合させた場合は、得られる共重合体は、本発明の水酸基含有ラクトン変性樹脂になる。ラクトン変性ラジカル重合性単量体は、水酸基含有ラジカル重合性単量体にラクトン化合物を開環付加させたものが好ましく、水酸基含有ラジカル重合性単量体の水酸基1モルに対し、ラクトン化合物を3モル以上開環付加させたものがより好ましく、ラクトン化合物を4モル以上開環付加させたものがさらに好ましく、ラクトン化合物を4〜6モル開環付加させたものが特に好ましい。
【0018】
水酸基含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、アクリル酸−6−ヒドロキシヘキシル、アクリル酸とバーサチック酸グリシジルエステルの付加体、メタクリル酸‐2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−6−ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸とバーサチック酸グリシジルエステルの付加体;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル又はメタクリル酸4−ヒドロキシブチルのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらの水酸基含有ビニル系モノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
その他のラジカル重合性単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸パーフルオロアルキル、メタクリル酸パーフルオロアルキル、アクリル酸−N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−N−ジメチルアミノエチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニルなどが挙げられる。また、カルボキシル基を含有したラジカル重合性単量体であるアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸なども用いることができる。これらのラジカル重合性単量体は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4'−アゾビス−4−シアノ吉草酸、1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレートなどのアゾ化合物;メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノンペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、t−ブチルヒドロペルオキンド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシネオデカネート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシアセテートなどの有機過酸化物などが挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
ラジカル重合開始剤の配合量には、特に制限はないが、ラジカル重合性単量体の全量に対して0.01〜20質量%にすることが好ましい。また、ラジカル重合温度は、ラジカル重合開始剤の種類によってよって異なるが、50〜200℃の条件で行うことが好ましく、80〜160℃の条件で行うことがさらに好ましい。
上記水酸基含有樹脂の製造において用いられる有機溶剤は、例えば、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、メトキシプロピルアセテート、酢酸イソブチル、酢酸3−メトキシブチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン等のエーテル系溶剤、アセトニトリル、バレロニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等の含窒素系溶剤が挙げられる。有機溶剤は1種単独であっても、あるいは2種以上の複数種類の混合溶剤であっても差し支えない。この際、水酸基含有樹脂の固形分濃度は樹脂の分散安定性を損なわない範囲において任意に選ぶことができるが、通常固形分濃度で10〜70質量%である。
【0022】
また、他の水酸基含有樹脂である、(a)1個のカルボキシル基と2個以上の水酸基を有する酸化合物、(b)エポキシ基を有するラジカル重合性単量体、及び(c)その他のラジカル重合性単量体とを共重合して得られる水酸基含有樹脂において、(a)成分である1個のカルボキシル基と2個以上の水酸基を含有する化合物としては、2,2−ジメチロールアルカン酸が好ましく、具体的な例としては、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸などを挙げることができる。なかでも、2,2−ジメチロールブタン酸または2,2−ジメチロールプロピオン酸が、硬化剤との相溶性に優れた、高水酸基価かつ低極性な樹脂を提供するので好ましい。(a)成分の1個のカルボキシル基と2個以上の水酸基を有する酸化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
この(a)成分の酸化合物は、(b)成分である、エポキシ基を有するラジカル重合性単量体との付加反応により、樹脂組成物に水酸基を与えるものである。この(a)成分の酸化合物と(b)成分のエポキシ基との付加反応は、(b)成分の単量体と(c)成分の単量体との共重合よりも前でも、共重合時でもよく、また、共重合が完了した後でもよい。
(a)成分の酸化合物の配合量は、(b)成分の量、及び、樹脂組成物の水酸基価に依存するが、(b)成分のエポキシ基に対して、モル比で1.2倍以下の範囲で用いられることが望ましい。(a)成分の酸がエポキシ基に対し、モル比で1.2倍よりも多い場合、未反応の酸が樹脂組成物中で析出する場合があり、好ましくない。 (a)成分の酸化合物の配合量の下限値は、特に制限ないが、樹脂固形分中5質量%以上が好ましい。(a)成分の酸化合物のカルボキシル基が(b)成分のエポキシ基よりも過剰な場合、(a)成分の酸化合物の過剰なカルボキシル基は、(b)成分のエポキシ基と反応できないので、重合性二重結合を有しない(a)成分の酸化合物が未反応のまま、本発明の塗料用水酸基含有樹脂組成物中に存在していてもよい。一方、(b)成分のエポキシ基が(a)成分の酸化合物のカルボキシル基よりも過剰な場合、得られる水酸基含有樹脂は、エポキシ基を有していてもよい。
【0024】
また、(b)成分である、エポキシ基を有するラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチルなどが挙げられ、1種又は2種以上の混合物として用いられる。
(c)成分である、その他のラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、及び、水酸基を含有したラジカル重合性単量体として、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アリルアルコール、アクリル酸とバーサチック酸グリシジルエステルの付加物、メタクリル酸とバーサチック酸グリシジルエステルの付加物、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。(c)成分のその他のラジカル重合性単量体は、1種又は2種以上の混合物として用いられる。
【0025】
また、ラクトン化合物は、ラクトン変性した(メタ)アクリル酸エステルなどのラクトン変性ラジカル重合性単量体を用いた場合、(c)成分として水酸基含有樹脂の共重合体の中に導入することができ、そのラクトン変性ラジカル重合性単量体を、得られる共重合体の水酸基価が50〜400mgKOH/gであって、ラクトン化合物に基づく構成単位の含有量が20〜70質量%になるように共重合させた場合は、得られる共重合体は、本発明の水酸基含有ラクトン変性樹脂になる。ラクトン変性ラジカル重合性単量体は、水酸基含有ラジカル重合性単量体にラクトン化合物を開環付加させたものが好ましく、水酸基含有ラジカル重合性単量体の水酸基1モルに対し、ラクトン化合物を3モル以上開環付加させたものがより好ましく、ラクトン化合物を4モル以上開環付加させたものがさらに好ましく、ラクトン化合物を4〜6モル開環付加させたものが特に好ましい。
【0026】
また、上記(a)、(b)及び(c)の反応中に、ε−カプロラクトンなどのラクトン化合物を開環付加反応させることができる。この場合、得られる共重合体の水酸基価が50〜400mgKOH/gであって、ラクトン化合物に基づく構成単位の含有量が20〜70質量%になるように開環付加反応させた場合は、得られる共重合体は、本発明の水酸基含有ラクトン変性樹脂になる。
ラジカル重合開始剤、及び、ラジカル共重合の条件等は、上記水酸基含有アクリル樹脂の場合と同一条件で行えばよい。
【0027】
この水酸基含有樹脂の製造において用いられる有機溶剤は、(a)成分のカルボキシル基、(b)成分のエポキシ基と反応する官能基を有さないものが好ましく、具体的な例としては、上述の水酸基含有アクリル樹脂の項で記載した有機溶剤であり、有機溶剤は1種単独であっても、あるいは2種以上の複数種類の混合溶剤であっても差し支えない。この際、水酸基含有樹脂の固形分濃度は樹脂の分散安定性を損なわない範囲において任意に選ぶことができるが、通常固形分濃度で10〜70質量%である。
(A)の水酸基含有ラクトン変性樹脂は、上記水酸基含有樹脂にラクトン化合物を加え、開環付加反応させることにより得ることができる。
【0028】
該ラクトン化合物としては、例えば、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−ノナノイックラクトン、δ−ドデカノラクトンなどが挙げられ、ε−カプロラクトンが特に好ましい。これらのラクトン化合物は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ラクトン化合物を変性した(メタ)アクリル酸エステルを用いることができ、市販品として、例えば、ダイセル化学工業(株)製のプラクセルFM−1、プラクセルFM−2、プラクセルFM−3、プラクセルFM−4などが知られている。
【0029】
このラクトン化合物の開環付加反応は、無触媒下で行うことが好ましい。
また、このラクトン化合物の開環付加反応は、有機溶剤中で行うことが好ましい。有機溶剤の具体的な例としては、上述の水酸基含有アクリル樹脂の項で記載した有機溶剤であり、有機溶剤は1種単独であっても、あるいは2種以上の複数種類の混合溶剤であっても差し支えない。この際、(A)の水酸基含有ラクトン変性樹脂の固形分濃度は樹脂の分散安定性を損なわない範囲において任意に選ぶことができるが、通常固形分濃度で10〜70質量%である。
【0030】
本発明に用いられる(B)の水酸基及び環構造含有アクリル樹脂は、水酸基価が50〜150mgKOH/gであり、環構造を有するラジカル重合性単量体に基づく構成単位を10〜80質量%含有するアクリル樹脂である。アクリル樹脂の環構造部が塗膜の耐汚染性を高める。
(B)の水酸基及び環構造含有アクリル樹脂の水酸基価のより好ましい範囲は、60〜140mgKOH/gであり、特に好ましい範囲は、80〜140mgKOH/gである。水酸基価が50mgKOH/g未満の場合、塗膜の耐候性が不十分であり、水酸基価が150mgKOH/gを超える場合、塗膜の耐擦り傷性が不十分である。
また、環構造を有するラジカル重合性単量体に基づく構成単位のより好ましい含有量は、20〜70質量%であり、特に好ましい範囲は、30〜70質量%である。
【0031】
環構造を有するラジカル重合性単量体に基づく構成単位の含有量が、10質量%未満の場合、塗膜の耐汚染性が不十分であり、環構造を有するラジカル重合性単量体に基づく構成単位の含有量が80質量%を超える場合、塗膜の耐擦り傷性が不十分である。
ここで、環構造としては、5員環以上の環構造が好ましく、6員環以上の環構造がより好ましく、6〜8員環の環構造が更に好ましい。環構造は、芳香族環構造であってもよいし、脂環式環構造であってもよい。また、環構造部は置換基を有していてもよい。置換基としては、メチル基、エチル基などの炭化水素基や、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子等が挙げられる。
環構造部の含有量は、(B)の水酸基及び環構造含有アクリル樹脂中、7〜60質量%が好ましく、20〜55質量%がより好ましい。
【0032】
本発明に用いられる(B)の水酸基及び環構造含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは2,500〜15,000であり、より好ましくは、2,500〜12,000である。重量平均分子量が、2,500未満の場合は、塗膜の耐候性が不十分となることがあり、15,000を超える場合には、塗膜の外観性が低下することがある。
この(B)成分は、環構造を有するラジカル重合性単量体、水酸基含有ラジカル重合性単量体、及びその他のラジカル重合性単量体の混合物を、通常のラジカル重合開始剤を用いて、通常の有機溶剤中で、通常のラジカル共重合することにより得ることができる。
【0033】
環構造を有するラジカル重合性単量体の具体的な化合物としては、スチレン、シクロへキシルメタクリレート、シクロへキシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロへキシルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロへキシルメタクレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレートがあり、特に、スチレン、シクロへキシルメタクリレート、シクロへキシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレートが、耐擦り傷性と耐汚染性の両立の点で好ましい。環構造を有するラジカル重合性単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
水酸基含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、アクリル酸−6−ヒドロキシヘキシル、アクリル酸とバーサチック酸グリシジルエステルの付加体、メタクリル酸‐2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−6−ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸とバーサチック酸グリシジルエステルの付加体などが挙げられる。これらの水酸基含有ラジカル重合性単量体は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
但し、(B)の水酸基及び環構造含有アクリル樹脂は、ラクトン化合物に基づく構成単位を含有しないことが、水酸基含有ラクトン変性樹脂(A)と水酸基及び環構造含有樹脂(B)との相乗効果を高めるためにも望ましい。
【0035】
その他のラジカル重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸パーフルオロアルキル、メタクリル酸パーフルオロアルキル、アクリル酸アダマンチル、メタクリル酸アダマンチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸−N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−N−ジメチルアミノエチル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニルなどが挙げられる。これらのその他のラジカル重合性単量体は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
ラジカル重合開始剤、溶剤、ラジカル共重合の条件等は、前記水酸基含有樹脂の場合と同一条件で行えばよい。
(A)/(B)の樹脂固形分の質量比率は(A)/(B)が95/5〜20/80が好ましい。より好ましくは、90/10〜30/70であり、特に好ましくは、90/10〜50/50である。(A)の割合が95/5より多い場合、塗膜の耐汚染性が低下し、(B)の割合が80/20より多い場合、塗膜の耐擦り傷性が低下する。
(A)/(B)混合物を硬化させるイソシアネート化合物としては特に制限なく、イソシアネート基及び/又はブロックイソシアネート基を1分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート基を1分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、ヘキサンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネートのようなイソシアネートモノマーと呼ばれる化合物、これらのビウレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパンなどとのアダクト体のようなポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(A)と(B)との混合物とイソシアネート化合物との比率は、反応に寄与する官能基の割合で決定され、(A)及び(B)の2種類の水酸基含有樹脂のトータル水酸基当量と、イソシアネート化合物との当量比が0.5/1〜1/0.5の範囲になることが好ましい。より好ましい当量比は、0.7/1〜1/0.7であり、特に好ましい当量比は、0.8/1〜1/0.8である。水酸基の当量比が0.5/1.0よりも少ない場合、耐候性が不十分であり、1/0.5よりも多い場合、耐溶剤性が不十分である。
【0038】
本発明の熱硬化性塗料組成物には、上記成分以外に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等の酸化防止剤、有機樹脂微粒子、脂肪酸アマイド系ワックス、ポリアマイド系ワックス、ポリエチレン系ワックス、酸化ポリエチレン系ワックス、シリカ、有機ベントナイト、尿素化合物系粘性調整剤等の粘性調整剤、シリコーン系表面処理剤、ビニル化合物系表面調整剤等の表面調整剤、シリコーン系消泡剤、ビニル化合物系消泡剤等の消泡剤を適宜配合することができる。また、着色顔料として、酸化チタン、亜鉛華、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、カーボンブラック等の無機系着色顔料、フタロシアニンブルー、スレンブルー、フタロシアニングリーン、不溶性アゾ、溶性アゾ、ペリレン、キナクリドンレッド、チオインジゴレッド、ジオキサジンバイオレッド、アンスラピリミジンイエロー、キノフタロンイエロー等の有機系着色顔料、光輝剤としてアルミニウム紛、ニッケル紛、パールマイカ等を適宜配合することができる。
【0039】
本発明の熱硬化性組成物には、有機溶剤を配合することができる。有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、テレビン油、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)製、商品名)、ソルベッソ#150(エクソン化学(株)製、商品名)等の芳香族炭化水素、ヘキサン、へブタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル、モノメチルエーテル、酢酸メトキシブチル等のエステル及びエーテルエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、メチルイソアミルケトン、エチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソプロピル等のケトン類、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類、ジメチルスルオキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0040】
本発明の熱硬化性組成物は、金属素材、樹脂素材等の被覆物に塗布する上塗り塗料に用いることができる。本発明の熱硬化性組成物は被塗物上に上塗り塗料としてそのまま塗布されるか、あるいは下塗り、中塗り塗膜上に塗布される。塗布仕様としては、単独での1コート塗装、ベースコートとの組み合わせでの2コート塗装、3コート塗装あるいは、上塗り塗膜上のオーバーコート塗装が可能である。本発明の熱硬化性組成物は、クリヤー塗料として、また、顔料あるいは光輝材を含むエナメル塗料として使用することができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例及び比較例をあげて本発明をより詳細に説明する。なお、特に明記しない限り「部」及び「%」は、それぞ「質量部」及び「質量%」を意味する。
(製造例1)
<A−1〜3、5、7の製造>
温度計、攪拌機、還流冷却機、滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、表1に記載した数量のメトキシプロピルアセテートを反応溶剤として仕込み140℃に昇温した。続いて、滴下成分として記載した単量体及び重合開始剤の混合物を滴下ロートより2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間還流温度を保ち内容物を100℃まで冷却した。100℃まで冷却後、追加触媒を滴下した。その後100℃の温度で3時間保ったところで重合反応を終了し、樹脂A−1〜3、5、7の溶液を得た。
なお、表中の「プラクセルFM−4」は、ヒドロキシエチルメタクリレートの水酸基1モルにε−カプロラクトン4モルが付加した単量体であり、ダイセル化学工業(株)から市販されている。
【0042】
(製造例2)
<A−4、6の製造>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、表1に記載した数量のメトキシプロピルアセテート、2,2−ジメチロールブタン酸を仕込み、窒素気流下攪拌しながら加熱し140℃を保った。次に、140℃の温度で滴下成分として記載した単量体及び重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、140℃の温度を1時間保った後、反応温度を110℃に下げた。その後、追加触媒を滴下し、さらに110℃の温度を2時間保った後、ε-カプロラクトンを仕込み、150℃の温度を3時間保ったところで反応を終了し、樹脂A−4、6を得た。
【0043】
【表1】

【0044】
(製造例3)
<B−1〜7の製造>
温度計、攪拌機、還流冷却機、滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、表2記載のキシレンを反応溶剤として仕込み140℃に昇温した。続いて、滴下成分として記載した単量体及び重合開始剤の混合物を滴下ロートより2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間還流温度を保ち内容物を100℃まで冷却した。100℃まで冷却後、追加触媒を滴下した。その後100℃の温度で3時間保ったところで重合反応を終了し、樹脂B−1〜7の溶液を得た。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例1〜5
<クリヤー塗料の製造>
表3に記載した原料を順次混合して均一になるように撹拌し、クリヤー塗料を作成した。
比較例1〜7
<クリヤー塗料の製造>
表4に記載した原料を順次混合して均一になるように撹拌し、クリヤー塗料を作成した。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
≪表3及び表4の注記≫
1)デスモジュールN3200:商品名、住化バイエルウレタン(株)製、液状HDIのビュレットタイプ樹脂(不揮発分100質量%、NCO含有率23質量%)
2)チヌビン900:紫外線吸収剤、商品名、チバスペシャルティケミカルス社製の20質量%キシレン溶液
3)チヌビン292:光安定剤、商品名、チバスペシャルティケミカルス社製の20質量%キシレン溶液
4)BYK−300:表面調整剤、商品名、ビックケミー社製の10質量%キシレン溶液
5)ソルベッソ100:商品名、エッソ社製、芳香族石油ナフサ
【0050】
試験片の作成及び塗膜性能の検討
リン酸亜鉛処理軟鋼板にカチオン電着塗料アクアNo.4200(商品名、BASFコーティングスジャパン(株)製)を乾燥膜厚20μmとなるよう電着塗装して175℃で25分間焼き付け、さらに中塗り塗料ハイエピコNo.560(商品名、BASFコーティングスジャパン(株)製)を乾燥膜厚30μmとなるようエアスプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けた。次に、溶剤系ベースコート塗料であるベルコートNo.6000黒(商品名、BASFコーティングスジャパン(株)製、塗色:黒)を乾燥膜厚15μmとなるようエアスプレー塗装し20℃で3分間セット後、クリヤー塗料をソルベッソ100(商品名、エッソ(株)製、芳香族石油ナフサ)で塗装粘度(フォードカップNo.4、20℃で25秒)に希釈したものをウェット・オン・ウェット方式でそれぞれ乾燥膜厚40μmとなるようエアスプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けて試験片を作成した。
なお、実施例のいずれの場合も耐汚染性の試験板のみは、ベースコート塗料をベルコートNo.6000白(商品名、BASFコーティングスジャパン(株)製、塗色:白)に替えて用いた。
得られた試験片の塗膜性能を下記の評価方法により評価した。それらの結果を表5及び表6に示した。
【0051】
(1)外観性
目視観察により、次の基準に従い評価した。
○:塗膜に蛍光灯を映すと、蛍光灯が鮮明に映る。
△:塗膜に蛍光灯を映すと、蛍光灯の周囲(輪郭)がややぼやける。
×:塗膜に蛍光灯を映すと、蛍光灯の周囲(輪郭)が著しくぼやける。
【0052】
(2)耐洗車傷性
耐擦り傷性:試験板上に泥水(JIS Z−8901−84 8種ダスト/水/中性洗剤=10/99/1質量比で混合したもの)をハケで塗布後、自動車用洗車機にて洗車ブラシを150rpmで10秒間回転させ、試験板を流水にて洗浄する。以上の操作を2回繰り返した後、試験板表面の擦り傷の程度を色彩色差計(CR−331 ミノルタカメラ(株)製)によりL*値を測定した。次式によりΔL*値を算出し、その値から耐擦り傷性を評価した。
ΔL*値=試験後のL*値−試験前のL*
◎;ΔL*値が1未満
○;ΔL*値が1以上2未満
△;ΔL*値が2以上3未満
×;ΔL*値が3以上
【0053】
(3)耐酸性
40質量%硫酸2mlを試験板上にスポット上に乗せ、60℃で30分間放置後、塗膜の異常を目視で判定した。
○;塗膜に異常なし
△;光沢低下あり
×;著しくツヤビケあり
(4)耐溶剤性
キシレンを湿らせたガーゼに、加重約1kgfを加えて10往復した際の変化を目視観察により、次の基準に従い評価した。
○:変化無し
△:部分的に溶解
×:完全に溶解
【0054】
(5)耐候性
サンシャインカーボンアーク灯式促進耐候性試験機(JIS K−5400(1990)9.8.1)を用いて3000時間曝露後、塗膜の状態を目視判定した。
○;塗膜に異常なし
△;光沢低下あり
×;著しくツヤビケあり
(6)耐汚染性
試験板上に汚染水(JIS Z−8901−84 8種ダスト/水/カーボンブラック/イエローオーカー=1.3/98/0.5/0.2質量比で混合したもの)を塗布後、50℃で10分乾燥させ8サイクル実施後、水洗しながらネル布で一定の力で塗膜を洗浄し、汚染の残り程度を色彩色差計(CR−331 ミノルタカメラ(株)製)でL*値を測定することにより評価した。次式により、ΔL*値を算出し、その値から耐汚染性を評価した。
ΔL*値=試験後のL*値−試験前のL*
◎;ΔL*値が2未満
○;ΔL*値が2以上4未満
△;ΔL*値が4以上8未満
×;ΔL*値が8以上
【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
実施例1〜5は塗膜の耐洗車傷性、耐汚染性、外観性、耐酸性、耐候性、耐溶剤性が良好だった。比較例1は水酸基含有樹脂(A)のラクトン化合物量が多かったため塗膜の耐汚染性が不十分だった。比較例2は水酸基含有樹脂(A)の水酸基価が高すぎるため塗膜の外観性が不十分だった。さらに、比較例2は水酸基含有樹脂(A)のラクトン化合物量が少なかったため塗膜の耐洗車傷性が不十分だった。比較例3は水酸基含有樹脂(A)の水酸基価が低すぎるため塗膜の耐候性、耐酸性が不十分であった。比較例4は水酸基含有樹脂(B)の環構造を有するラジカル重合性単量体の量が多すぎるため塗膜の耐洗車傷性が不十分だった。さらに、比較例4は水酸基含有樹脂(B)の水酸基価が低くすぎたため塗膜の耐候性が不十分だった。比較例5は水酸基含有樹脂(B)の環構造を有するラジカル重合性単量体の量が少なすぎるため塗膜の耐汚染性が不十分だった。さらに、比較例5は水酸基含有樹脂(B)の水酸基価が高すぎたため塗膜の耐洗車傷性が不十分だった。比較例6は水酸基含有樹脂(A)/(B)の質量比率において(A)の割合が高すぎるため、塗膜の耐汚染性が不十分だった。比較例7は水酸基含有樹脂(A)/(B)の質量比率において(A)の割合が低すぎるため、塗膜の耐洗車傷性が不十分だった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の熱硬化性塗料組成物は、種々の塗装に利用することができ、特に自動車塗装に好適に利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体樹脂が、
(A)水酸基価が50〜400mgKOH/gであり、ラクトン化合物に基づく構成単位を20〜70質量%含有する水酸基含有ラクトン変性樹脂と、
(B)水酸基価が50〜150mgKOH/gであり、環構造を有するラジカル重合性単量体に基づく構成単位を10〜80質量%含有する水酸基及び環構造含有アクリル樹脂とからなり、
架橋用樹脂がイソシアネート化合物である熱硬化性塗料組成物であって、(A)/(B)の樹脂固形分質量比が95/5〜20/80であることを特徴とする熱硬化性塗料組成物。
【請求項2】
(B)の環構造を有するラジカル重合性単量体が、スチレン、シクロへキシルメタクリレート、シクロへキシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、及びイソボルニルアクリレートから選ばれる1種以上のモノマーである請求項1に記載の熱硬化性塗料組成物。
【請求項3】
(A)の水酸基含有ラクトン変性樹脂が、水酸基を有するラジカル重合性単量体とその他のラジカル重合性単量体とを共重合して得られる水酸基含有アクリル樹脂に、ラクトン化合物を開環付加反応させることにより得られる水酸基価が50〜400mgKOH/gであり、ラクトン化合物に基づく構成単位を20〜70質量含有する水酸基含有ラクトン変性樹脂である請求項1記載の熱硬化性塗料組成物。
【請求項4】
(A)の水酸基含有ラクトン変性樹脂が、(a)1個のカルボキシル基と2個以上の水酸基を有する酸化合物、(b)エポキシ基を有するラジカル重合性単量体、及び(c)その他のラジカル重合性単量体とを共重合して得られる水酸基含有樹脂に、ラクトン化合物を開環付加反応させることにより得られる水酸基含有ラクトン変性樹脂であり、水酸基価が50〜400mgKOH/gであり、ラクトン化合物に基づく構成単位を20〜70質量%含有する請求項1記載の熱硬化性塗料組成物。
【請求項5】
(a)の酸化合物が2,2−ジメチロールブタン酸または2,2−ジメチロールプロピオン酸である請求項4記載の熱硬化性塗料組成物。

【公開番号】特開2006−348172(P2006−348172A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176181(P2005−176181)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(599076424)BASFコーティングスジャパン株式会社 (59)
【Fターム(参考)】