説明

熱硬化性微粒子およびその製造方法

【課題】本発明の目的は、熱により反応する官能基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂からなる、平均粒径が0.5〜100μmの熱硬化性微粒子を提供することにある。また、熱硬化性樹脂バインダーや熱硬化性単量体とともに使用した場合、被膜の固着性や鉛筆硬度向上に効果のある熱硬化性微粒子を提供する。さらには、耐熱性、耐候性を損なうことなく、環境負荷の原因となるホルムアルデヒド揮発量を低減する熱硬化性微粒子組成物を提供する。
【解決手段】下記構造式(1)の官能基と、トリアジン骨格とを有するアミノ樹脂からなる、平均粒径が0.5〜100μmの熱硬化性微粒子。
構造式(1)
【化1】



(ただし、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱により硬化する熱硬化性微粒子に関し、さらに詳しくは、ミクロンサイズであり、かつ、粒度分布の狭い熱硬化性単分散微粒子に関する。本発明にて得られる熱硬化性微粒子は、熱硬化性樹脂バインダーや熱硬化性単量体に添加して使用することができ、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、フィルム補強剤、機械強度改質のための樹脂改質剤、マット剤、滑剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来から、メラミン樹脂を含むアミノ樹脂微粒子は、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、フィルム補強剤、機械強度改質のための樹脂改質剤、マット剤、滑剤などとして利用されてきた。これら用途に使用する場合、一般的には、樹脂バインダーと混合し、コーティング剤として使用される。これらに利用するアミノ樹脂微粒子としては、例えば、アミノ樹脂水溶液に硫酸等の触媒を加え、攪拌下該樹脂を重合させ微細樹脂とする方法(特許文献1参照)は古くから知られている。また、メラミンとアルデヒド化合物との水溶性初期縮合物あるいはメラミンのメチルエーテル化物と水溶性樹脂を含む溶液に、酸触媒を加えてメラミン微粒子を得る方法(特許文献2参照)が開示されている。得られる樹脂微粒子は、いずれもメラミンの高耐熱性、耐候性という特徴を有する三次元架橋微粒子である。これらはメラミンのトリアジン骨格に結合しているメチロール基同士の縮合により、硬度が高くなり、熱硬化性微粒子として利用されている。しかし、樹脂バインダーと混合し、コーティング剤として使用する場合、微粒子自体に樹脂バインダーと反応し得る官能基を積極的に導入していないため、微粒子がコーティング膜から脱落するという問題が発生する。この問題を解消するため、微粒子合成の際に縮合に使われなかったメチロール基を樹脂バインダーとの反応に利用することも可能であるが、残存量の制御が難しく、またメチロール基同士の反応ではホルマリンが揮発するため、環境や人体への負荷が大きい。
【特許文献1】特公昭46−28087号公報
【特許文献2】特開平4−304220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、熱により反応する官能基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂からなる、平均粒径が0.5〜100μmの熱硬化性微粒子を提供することにある。また、熱硬化性樹脂バインダーや熱硬化性単量体とともに使用した場合、被膜の固着性や鉛筆硬度向上に効果のある熱硬化性微粒子を提供する。さらには、耐熱性、耐候性を損なうことなく、環境負荷の原因となるホルムアルデヒド揮発量を低減する熱硬化性微粒子組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、下記構造式(1)の官能基と、トリアジン骨格とを有するアミノ樹脂からなる、平均粒径が0.5〜100μmの熱硬化性微粒子に関する。
【0005】
構造式(1)
【0006】
【化1】


(ただし、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)
【0007】
さらに本発明は、粒子径の変動係数が、10%未満である上記熱硬化性微粒子に関する。
【0008】
さらに本発明は、構造式(1)の官能基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂が、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、構造式(1)の官能基と水酸基とを有する化合物(C)を縮合反応させてなる上記熱硬化性微粒子に関する。
【0009】
さらに本発明は、構造式(1)の官能基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂が、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、構造式(1)と水酸基とを有する化合物(C)を、シリカ化合物(D)を含む水性液体中で、縮合反応させてなる上記熱硬化性微粒子に関する。
【0010】
さらに本発明は、上記熱硬化性微粒子と、熱硬化性樹脂バインダーおよび/または熱硬化性単量体とを含んでなる熱硬化性組成物に関する。
【0011】
さらに本発明は、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、下記構造式(1)の官能基と水酸基とを有する化合物(C)を縮合反応させることを特徴とする熱硬化性微粒子の製造方法に関する。
【0012】
構造式(1)
【0013】
【化2】


(ただし、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)
【0014】
さらに本発明は、トリアジン環を有するアルデヒド化合物と縮合しうる化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、構造式(1)の官能基と水酸基とを有する化合物(C)を、シリカ化合物(D)を含む水性液体中で、縮合反応させることを特徴とする上記熱硬化性微粒子の製造方法に関する。
【0015】
さらに本発明は、縮合反応工程が、塩基性下で行う工程と、酸触媒存在下で行う工程との、2つの工程からなる上記熱硬化性微粒子の製造方法に関する。
【0016】
さらに本発明は、酸触媒が、多塩基酸である上記熱硬化性微粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、熱により反応する官能基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂からなる熱硬化性微粒子を提供することができた。さらに詳しくは、熱硬化性コーティング剤に添加して使用した場合、被膜の固着性や鉛筆硬度向上に効果のある熱硬化性微粒子を提供できた。本発明により得られる熱硬化性微粒子は、熱硬化性コーティング剤として使用することができ、フィルムあるいはコーティング膜に均一に分散し、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、フィルム補強剤、機械強度改質のための樹脂改質剤、マット剤、滑剤として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明でいう熱硬化性微粒子は、下記構造式(1)で示されるトリメチレンオキシ基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂であることを特徴とする。
【0019】
構造式(1)
【0020】
【化3】


(ただし、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)
【0021】
トリメチレンオキシ基は、4員環の環状エーテル基であり、一般的に環状エーテル基として知られるエポキシ基よりも環歪は小さいが、塩基性が大きく、熱的に安定であり、熱分解温度が高く、耐熱性のある官能基である。熱硬化性、UVカチオン硬化性を有する。
【0022】
本発明の熱硬化性微粒子は、上記構造式(1)のトリメチレンオキシ基を有しているため、比較的高温で熱硬化がおきる。トリメチレンオキシ基は、微粒子中のどこに存在してもかまわず、熱によって該官能基とカルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、フェノール性水酸基などの官能基と反応させることができる。この反応は、樹脂微粒子内部および、該官能基を含む樹脂微粒子と熱硬化性樹脂バインダーや熱硬化性単量体との反応に使うことができる。これによって樹脂微粒子の硬度が強化し、さらには被膜の硬度と固着性が強化される。さらに、コーティング膜の熱硬化の際、ホルムアルデヒドなどの環境負荷化合物の揮発量を低減する。
【0023】
該微粒子に含まれるトリメチレンオキシ基は、該微粒子を構成する樹脂中、5.0×10-5〜2.0×10-3mol/gであることが好ましく、さらには2.0×10-4〜1.7×10-3mol/gであることがより好ましい。この範囲より少ない添加量では、硬度が上がらない場合があり、またこれ以上の添加量では、微粒子合成時に凝集が起こり、樹脂微粒子を作製することができない場合がある。
【0024】
微粒子中のトリメチレンオキシ基の存在は、赤外分光法にて行う。赤外分光法では、トリメチレンオキシ環の存在は、980cm-1付近に現れるスペクトルピークによって観測できる。
【0025】
さらに、本発明の熱硬化性微粒子は、平均粒径が0.5〜100μmで変動係数が10%未満の単分散な熱硬化性微粒子であることを特徴とする。この範囲の粒径を有する単分散微粒子は特に、光拡散剤、光散乱剤、スペーサーといった光学用途での利用への期待が大きく、粒径がそろっていることも重要な要素となっている。そこで本発明では、近年需要が高まる光学用途への利用も可能な粒径範囲と分布をもつ熱硬化性微粒子であることを特徴としている。
【0026】
本発明で言う平均粒径は、光学顕微鏡で測定した100個の粒子の数平均であり、変動係数は、その100個の粒子径を統計計算し、次式によって求められた数値である。
【0027】
変動係数(%)=(標準偏差/平均粒径)×100
【0028】
上記構造式(1)のトリメチレンオキシ基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂は、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、上記構造式(1)の官能基と水酸基とを有する化合物(C)を縮合反応させて得ることができる。
【0029】
本発明のアルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)は、トリアジン環を有するアミノ化合物のことであり、例えばメラミン、ベンゾグアナミンやアセトグアナミンなどのグアナミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種類以上併用することもできる。通常、最も安価で官能基も多いメラミンを主体的に用い、他のトリアジン系単量体を共縮合させて諸物性を調節する。
【0030】
また、本発明では、上述のアルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)と共縮合しうる化合物、例えば尿素、チオ尿素、エチレン尿素などの尿素類、フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、レゾルシン、ハイドロキノン、ピロガロールなどのフェノール類、アニリン等を併用することも可能である。
【0031】
本発明のアルデヒド化合物(B)とは、脂肪族、脂環族、芳香族、複素環アルデヒド化合物、それらの縮合体やアルデヒド化合物を発生しうる化合物などが挙げられる。たとえば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、パラホルムアルデヒド、パラアセトアルデヒド等が挙げられる。好ましくは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドであり、溶媒として水に溶解した水溶液が用いられる。ホルムアルデヒドの水溶液である、市販の濃度37%ホルマリン水溶液が最も安価であり容易に使用することができる。
【0032】
本発明の上記構造式(1)の官能基と水酸基とを有する化合物(C)とは、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等が挙げられる。
【0033】
本発明の熱硬化性微粒子を構成する、アミノ樹脂の製造は、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、上記構造式(1)の官能基と水酸基とを有する化合物(C)を縮合反応させて得ることができるが、その縮合反応は、塩基性下で行う工程と、酸触媒存在下で行う工程との2つの工程からなる。
【0034】
アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)と、アルデヒド化合物(B)との反応は、例えば、メラミンとホルムアルデヒドであれば、メラミン1モルに対してホルムアルデヒド6モルまで反応させることができる。通常、等モルで反応させると直鎖状樹脂が生成する。架橋構造を付与させ微粒子とするためには、さらに数割のアルデヒド化合物(B)が必要とされる。理論的には、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)に対して1.0倍モルより多いアルデヒド化合物(B)によって本発明の微粒子が合成される。
【0035】
本発明の熱硬化性微粒子は、塩基性下での縮合反応工程で得られた縮合生成物が、酸触媒存在下での縮合反応工程において三次元架橋により不溶化して形成される。よって、ある程度アルデヒド化合物(B)が過剰な方が均一な微粒子を得やすい。アルデヒド化合物(B)が少ないと反応初期の架橋点が減り、二次元架橋のまま不溶化、あるいは微粒子の生成過程で粒子同士の癒着の原因になるため、異形微粒子、融着微粒子、あるいは凝集微粒子が目立つようになり、単分散な微粒子を得ることができない場合がある。しかし、あまり過剰にアルデヒド化合物(B)が存在すると、未反応物として系内に残存し、環境汚染の原因のとなる場合がある。このため本発明では、アルデヒド化合物(B)はアルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)に対して2.0〜4.0倍モルが好ましく、さらには2.5〜3.5倍モル用いることがより好ましい。
【0036】
まず、塩基性下での縮合反応工程について説明する。この工程では、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、上記構造式(1)の官能基と水酸基とを有する化合物(C)を同時に仕込む場合と、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)を仕込む場合の二通りの方法があるが、特に限定される物ではない。この工程では、アルデヒド化合物(B)のアルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)への付加反応が主に起こり、縮合反応がわずかに進行している状態である。よって、生成する縮合物は、比較的低分子量であり、水溶性の状態で得られる。また、上記構造式(1)の官能基と水酸基とを有する化合物(C)を使用した場合、化合物(C)の水酸基が縮合反応に一部取り込まれると推測される。
【0037】
この工程では、反応液が塩基性であれば無触媒でもよく、必要あればアルカリ触媒を使用することもできる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、トリエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また2種類以上を併用することも可能である。
【0038】
また、メチロールメラミン、アルキルメチロール化メラミン、メチロールベンゾグアナミン、アルキルメチロール化ベンゾグアナミンなどは、トリアジン系単量体とホルムアルデヒドとの水溶性縮合物であるから、これらの化合物も使用することができる。
【0039】
反応温度は、15〜100℃の範囲が好ましく、さらには20〜90℃であることがより好ましい。
【0040】
次に、酸触媒存在下での縮合反応工程について説明する。この工程では、塩基性下での縮合反応工程で得られた縮合生成物を、さらに縮合して目的の微粒子を得る工程である。この工程で、上記構造式(1)の官能基と水酸基とを有する化合物(C)を添加してもよい。この工程で、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、上記構造式(1)の官能基と水酸基とを有する化合物(C)が互いに縮合して微粒子を形成する。この縮合反応により、本発明の微粒子に、トリメチレンオキシ基が導入されることになる。
【0041】
本発明は、酸触媒として、多塩基酸を用いることに特徴がある。 多塩基酸とは、1分子中に塩基を中和することのできる水素原子が2個以上含まれている酸、すなわち塩基度が2以上の酸のことである。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸類、またマレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸類、さらにはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸類、そして硫酸などの無機酸類といった二塩基酸が挙げられる。また、トリカルバリル酸、ベンゼントリカルボン酸などのトリカルボン酸類、そしてリン酸、ヒ酸、ホウ酸などの無機酸といった三塩基酸が挙げられる。さらにベンゼンテトラカルボン酸などの四塩基酸、ベンゼンヘキサカルボン酸などの六塩基酸が挙げられるが、これに限るものではない。
【0042】
このうち、1分子内に塩基を中和することのできる水素原子が2個以上含まれているカルボン酸、すなわち上記多塩基酸のうち、ジカルボン酸類、トリカルボン酸類、テトラカルボン酸類、さらにはヘキサカルボン酸類などの使用がより好ましい。また、モノオールポリカルボン酸、ジオールポリカルボン酸類などのように、1分子内にカルボキシル基以外の官能基を有するカルボン酸含有化合物もこれに含まれる。さらには酸無水物なども用いることができる。これらは2種類以上を併用することもできる。これらの、酸触媒を用いることで、系内に余分な無機物を混在させることなく微粒子を製造することができ、光学材料等の特殊な用途における無機物の除去操作を省くことができる。
【0043】
その他の酸触媒としては、例えば、塩酸等の無機酸、酢酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ポリオキシエチレンおよびその誘導体のスルホン化物等の有機酸などを用いても微粒子を得ることは可能であるが、微粒子の単分散性は劣る。
【0044】
酸触媒の添加量は、重合系がpH6以下になる量が好ましく、より好ましくは、pHが2〜5になるようにする。pHが6より高いと粒度分布が広くなる、凝集が発生する等の原因となる場合がある。
【0045】
酸触媒添加後、10秒〜5分で白濁するが、内部架橋を完結させるためさらに1時間以上そのままの温度で攪拌を続ける。架橋が不十分だと、後処理で微粒子が融着したり破壊したりする場合がある。初期の反応温度が40℃以下の低温である場合は、内部架橋の進行を促進するため、途中昇温してもよい。
【0046】
次に、本発明に使用するシリカ化合物(D)について説明する。本発明で使用されるシリカ化合物(D)は、微粒子の分散安定剤として機能する。特に、粒子を形成する酸触媒存在下での縮合反応工程に使用するのが好ましい。粒径1〜100nmのシリカ粒子がSiO2として10〜50重量%、コロイド状に分散しているものが好ましく、市販の各種グレードが使用できる。例えば、ルドックス(デュポン株式会社製)、スノーテックス(日産化学工業株式会社製)、Cataloid(触媒化成工業株式会社製)、アデライトAT(旭電化工業株式会社製)等が挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0047】
本発明は、酸性領域における縮合反応によって微粒子を生成させるため、pH7未満の水分散体であり、酸性領域で安定に使用できるシリカ化合物(D)を用いるのが好ましい。例えば、ルドックスTMA(デュポン株式会社製)、スノーテックスO(日産化学工業株式会社製)、スノーテックスOXS(日産化学工業株式会社)CatalodSN(媒化成工業株式会社製)、アデライトAT−20Q(旭電化工業株式会社製)等の酸性シリカ化合物や、ルドックスAM(デュポン株式会社製)、スノーテックスC(日産化学工業株式会社製)、CataloidSC−30(触媒化成工業株式会社製)、アデライトAT−20A(旭電化工業株式会社製)等の特殊処理によりpH変動に影響されないシリカ化合物(D)が挙げられる。
【0048】
シリカ化合物(D)の添加量は、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)とアルデヒド化合物(B)とを合計した重量に対して、0.5〜20重量%であることが好ましい。0.5重量%より少ないと微粒子が安定化せず凝集物が多くなり、20重量%より多いと粒子表面に残存し、結果的に被覆されるシリカ量が多くなって熱硬化性樹脂の特徴を損なう場合がある。より好ましくは、1〜15重量%である。
【0049】
また、必要に応じて分散安定剤を併用することができる。分散安定剤とは、ミセルを形成し得る界面活性剤、もしくは分散安定剤としての役割を果たす高分子量物のことをいう。例えば、界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウムのようなアルキルスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルベンゼンスルホン酸塩といったアニオン性界面活性剤、
ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートのようなアルキルアミン塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライドのような四級アンモニウム塩類といったカチオン性界面活性剤、
さらに、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドといった両性界面活性剤、またさらには、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルのようなポリエチレングリコールアルキルエーテル等といった非イオン性界面活性剤が挙げられる。さらに、これら界面活性剤にエチレン性不飽和単量体と共重合可能な官能基が結合されているものも界面活性剤として使用することができる。
【0050】
また、高分子量の分散安定剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、その共重合体およびこれらの中和物ならびにポリメタクリル酸、その共重合体およびこれらの中和物、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これらは併用することもできる。
【0051】
縮合反応の溶媒には、原則的には水を使用する。所望によっては本発明の特徴を損なわない程度にアルコールを加えることも可能であるが、メチロール基がアルコールによりエーテル化し、アルコールに対して親和性が高くなると、微粒子を生成せず溶液全体がゲル化する場合があるので必要最低限に抑える必要がある。
【0052】
得られた熱硬化性微粒子は、そのまま水性分散体、もしくは一般的なろ過・乾燥操作により粉末状の粒子として得ることができるが、非水系有機溶媒に置換して、非水系微粒子分散体とすることも可能である。
【0053】
非水系有機溶媒とは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、メチルセロソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、等のケトン類;などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
本発明の熱硬化性微粒子は、熱硬化性樹脂バインダーや熱硬化性単量体に添加して、熱硬化性のコーティング剤として使用することができる。熱硬化性のコーティング剤として使用する場合、熱硬化性樹脂バインダー、熱硬化性単量体、触媒などの混合物に熱硬化性樹脂微粒子を添加して使用する。
【0055】
熱硬化性樹脂バインダーとしては、例えば、熱硬化性官能基を有する、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル酸性基含有ウレタン樹脂、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂などが挙げられる。本発明の熱硬化性組成物は、硬化塗膜の物性を調整する目的で、熱硬化性官能基を有さない上記樹脂バインダーを併用することができる。
【0056】
ここでいう熱硬化性官能基とは、熱によって反応し得る官能基であれば特に制限はない。本発明の熱硬化性樹脂微粒子中のトリメチレンオキシ基と熱によって反応しうる官能基が好ましい。熱硬化性樹脂バインダーは、熱硬化性官能基を分子中に2個以上有する必要がある。トリメチレンオキシ基と反応しうる官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基、フェノール性水酸基などが挙げられる。その他、公知の硬化反応を示す官能基を組み合わせて使用することができる。例えば、カルボキシル基と反応しうる官能基としては、エポキシ基、ビニル基、カルボジイミド基、イソシアネート基、スルトン基、アジリジン基、テトラヒドロフラン誘導体基などが挙げられ、水酸基と反応し得る官能基としては、エポキシ基、酸無水物基、テトラヒドロフラン誘導体基、ビニルエーテル基、カルボキシル基、イソシアネート基、アジリジン基、カプロラクトン基、フェノール基などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0057】
次に、熱硬化性単量体は、上述の熱硬化性官能基を分子内に2個以上有する低分子化合物である。以下に熱硬化性単量体を具体的に例示する。
【0058】
カルボキシル基を2個以上有する熱硬化性単量体としては、安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサン二酸、クエン酸、マレイン酸、メチルナディク酸、ドデセニルコハク酸、セバシン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸類、ピロメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェノール酸等が挙げられる。また、上記単量体の中で酸無水環を形成した単量体も同様に使用することができる。
【0059】
酸無水物基を2個以上有する熱硬化性単量体としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物などの脂肪族テトラカルボン酸無水物;
ピロメリット酸無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸無水物などの芳香族テトラカルボン酸無水物;
3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸無水物などの多環式テトラカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0060】
フェノール性水酸基を2個以上有する熱硬化性単量体としては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、1,4−ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フロログリシノール等が挙げられる。
【0061】
さらに、上記熱硬化性官能基を組み合わせた単量体も使用できる。例えば、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、プロトカテキュ酸などを挙げることができる。場合によっては、フェノール性アミノ基を有した化合物も使用できる。例えば、p−アミノ安息香酸、アントラニル酸、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノールなどを挙げることができる。
【0062】
その他、エポキシ基、ビニル基、カルボジイミド基、イソシアネート基、スルトン基、アジリジン基、テトラヒドロフラン誘導体基、アルコキシシリル基、ビニルエーテル基、カプロラクトン基、フェノール基等の官能基を有する化合物も使用することができる。
【0063】
硬化塗膜の物性を調整する目的で、熱硬化性単量体と併用して、単官能の単量体も使用することができる。
【0064】
本発明において、上記した熱硬化性樹脂バインダーや熱硬化性単量体は、それぞれ一種のみを用いてもよいし、複数を併用してもよい。ただし、長期間混合した状態で保存する必要がある場合は、硬化性組成物同士が保存温度において互いに反応しにくい熱硬化性化合物の組み合わせを選択することが好ましい。
【0065】
また、本発明の熱硬化性樹脂および熱硬化性組成物を、熱硬化させる場合、50〜400℃で熱硬化させることが好ましく、更に好ましくは、100〜300℃で熱硬化させることが好ましい。硬化させる温度が50℃未満の場合、硬化が充分に進行せず、所望の耐熱性が得られない場合がある。また、硬化させる温度が400℃より高い場合、特に長時間過熱した場合において、本発明の硬化性材料は、熱劣化を起こす場合がある。
【0066】
触媒とは、熱硬化反応を促進させるための化合物であり、トリメチレンオキシ基の場合、触媒としてベンジルジメチルアミン、トルエンスルホン酸、アルコキシチタンを用いることが好ましい。また他の反応性官能基の場合、官能基の組み合わせに応じて適宜選択する。例えば、カルボキシル基とエポキシ基との付加反応にはアミン系触媒を用いることが好ましい。
【0067】
触媒は、熱硬化性化合物に対して0〜10%添加することが好ましく、更には0〜5%添加することがより好ましい。
【0068】
本発明の熱硬化性微粒子を使用した熱硬化性組成物は、有機溶剤を含まない硬化性組成物としても、有機溶剤を含む硬化性組成物としても用いることができる。有機溶剤を含む場合には、各種基材に塗布し、前記有機溶剤を揮発させた後に硬化に必要な熱エネルギーを加えればよい。有機溶剤としては、公知のものを使用することができる。具体的には、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、トルエン、メチルプロピレングリコールアセテート等が挙げられる。
【0069】
この他、目的を損なわない範囲で任意成分として、さらに溶剤、染料、顔料、酸化防止剤、重合禁止剤、レベリング剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤、フィラー等を添加することができる。
【0070】
本発明の熱硬化性微粒子は、熱により反応性を発現する微粒子である。また、粒径0.5〜100μmかつ変動係数10%以下の微粒子である。本発明の熱硬化性微粒子は、熱硬化性のコーティング剤に添加して使用でき、例えば、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、フィルム補強剤、機械強度改質のための樹脂改質剤、マット剤、滑剤等、微粒子の一般用途から精密用途まで幅広く使用できる。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権
利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例において「部」及び「%」とあるのは、特に指定のない限り、すべて重量基準であるものとする。
【0072】
(実施例1)
攪拌機、還流冷却器、温度計がついた反応器に37%ホルマリン液122部(1.5mol)、トリエチルアミン0.3部仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水600部、メラミン63部(0.5mol)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン26部(0.20mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、分散安定剤としてスノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH3〜4)59部、続いてシュウ酸20部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH4.1であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分8.5%、平均粒径1.32μm、変動係数8.85%の単分散微粒子分散液であった。
【0073】
得られた分散液を減圧濾過装置にてデカンテーションし、更に水3000部を3回に分けて洗浄した。回収した微粒子は、さらに加熱真空機にて80℃、5時間減圧乾燥後、粉砕機で微細化した。
【0074】
(実施例2)
攪拌機、還流冷却器、温度計がついた反応器に37%ホルマリン液122部(1.5mol)、トリエチルアミン0.3部仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水600部、メラミン63部(0.5mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン26部(0.20mol)、分散安定剤としてスノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH3〜4)59部、続いてイタコン酸25部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH4.0であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分8.5%、平均粒径1.65μm、変動係数7.42%の単分散微粒子分散液であった。
【0075】
得られた分散液を減圧濾過装置にてデカンテーションし、更に水3000部を3回に分けて洗浄した。回収した微粒子は、さらに加熱真空機にて80℃、8時間減圧乾燥後、粉砕機で微細化した。
【0076】
(実施例3)
攪拌機、還流冷却器、温度計がついた反応器に37%ホルマリン液122部(1.5mol)、トリエチルアミン0.3部仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水600部、メラミン50部(0.4mol)、ベンゾグアナミン19部(0.1mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンおよびベンゾグアナミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン26部(0.20mol)、分散安定剤としてスノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH3〜4)59部、続いてコハク酸25部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH3.9であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分8.5%、平均粒径2.36μm、変動係数6.77%の単分散微粒子分散液であった。
【0077】
得られた分散液を減圧濾過装置にてデカンテーションし、更に水3000部を3回に分けて洗浄した。回収した微粒子は、さらに加熱真空機にて80℃、8時間減圧乾燥後、粉砕機で微細化した。
【0078】
(比較例1)
攪拌機、還流冷却器、温度計がついた反応器に37%ホルマリン液113部(1.4mol)、トリエチルアミン0.3部仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水600部、メラミン63部(0.5mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、分散安定剤としてスノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH3〜4)59部、続いてシュウ酸20部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH4.1であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分8.2%、平均粒径1.13μm、変動係数5.01%の単分散微粒子分散液であった。
【0079】
得られた分散液を減圧濾過装置にてデカンテーションし、更に水3000部を3回に分けて洗浄した。回収した微粒子は、さらに加熱真空機にて80℃、8時間減圧乾燥後、粉砕機で微細化した。
【0080】
(比較例2)
攪拌機、還流冷却器、温度計がついた反応器に37%ホルマリン液113部(1.4mol)、トリエチルアミン0.3部仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水600部、メラミン63部(0.5mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、分散安定剤としてスノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH3〜4)59部、続いてプロピオン酸20部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH4.5であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分8.2%、平均粒径1.65μm、変動係数18.24%の微粒子分散液であった。
【0081】
得られた分散液を減圧濾過装置にてデカンテーションし、更に水3000部を3回に分けて洗浄した。回収した微粒子は、さらに加熱真空機にて80℃、8時間減圧乾燥後、粉砕機で微細化した。
【0082】
<樹脂微粒子組成物の評価>
上記で得られた各樹脂微粒子10部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート828(エポキシ当量190、ジャパンエポキシレジン株式会社製)1部、ピロメリット酸無水物1.2部、ベンジルジメチルアミン0.006部とを混合し、ガラス板にアプリケーターで膜厚が10μmになるように塗工し、200℃のオーブンで1時間硬化させた塗工物を作製した。このようにして作製した樹脂微粒子組成物は、以下の評価に用いた。
【0083】
鉛筆硬度は、JIS K5400 8.4.2に従って試験を行った。なお、「2H」以上が実用レベルであると判断した。
【0084】
固着性は、200gの荷重をかけながら#1000のスチールウールで塗膜を10往復させた後、塗膜上にでた粉を目視で観察した。なお、「○」以上が実用レベルと判断した。
【0085】
ホルマリン漏出量は、試料20mgと吸着剤を200℃で1時間加熱し、揮発性成分を吸着剤に捕集後、吸着剤を260℃で加熱し、脱着した捕集成分をGC−MSで測定した。
【0086】
各実施例、比較例の結果は表1にまとめた。
【0087】
【表1】

【0088】
表1より明らかな通り、本発明の実施例1〜3は、比較例1および2と比べると固着性、鉛筆硬度のバランスがよく、ホルマリン漏出量も減少していた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の熱硬化性微粒子は、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、フィルム補強剤、機械強度改質のための樹脂改質剤、マット剤、滑剤等、微粒子の一般用途から精密用途まで幅広く使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)の官能基と、トリアジン骨格とを有するアミノ樹脂からなる、平均粒径が0.5〜100μmの熱硬化性微粒子。
構造式(1)
【化1】


(ただし、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)
【請求項2】
粒子径の変動係数が、10%未満である請求項1記載の熱硬化性微粒子。
【請求項3】
構造式(1)の官能基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂が、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、構造式(1)の官能基と水酸基とを有する化合物(C)を縮合反応させてなる請求項1または2記載の熱硬化性微粒子。
【請求項4】
構造式(1)の官能基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂が、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、構造式(1)と水酸基とを有する化合物(C)を、シリカ化合物(D)を含む水性液体中で、縮合反応させてなる請求項1または2記載の熱硬化性微粒子。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の熱硬化性微粒子と、熱硬化性樹脂バインダーおよび/または熱硬化性単量体とを含んでなる熱硬化性組成物。
【請求項6】
アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、下記構造式(1)の官能基と水酸基とを有する化合物(C)を縮合反応させることを特徴とする熱硬化性微粒子の製造方法。
構造式(1)
【化2】


(ただし、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)
【請求項7】
トリアジン環を有するアルデヒド化合物と縮合しうる化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、構造式(1)の官能基と水酸基とを有する化合物(C)を、シリカ化合物(D)を含む水性液体中で、縮合反応させることを特徴とする熱硬化性微粒子の製造方法。
【請求項8】
縮合反応工程が、塩基性下で行う工程と、酸触媒存在下で行う工程との、2つの工程からなる請求項6または7記載の熱硬化性微粒子の製造方法。
【請求項9】
酸触媒が、多塩基酸である請求項6〜8いずれか記載の熱硬化性微粒子の製造方法。



【公開番号】特開2008−19369(P2008−19369A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193706(P2006−193706)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】