説明

熱硬化性成形材料

【課題】成形時における樹脂汚れの発生を低減し成形性に十分に優れる熱硬化性成形材料、これを用いた光半導体素子搭載用基板及びその製造方法、並びに光半導体装置を提供すること。
【解決手段】
(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含有する熱硬化性成形材料であって、ICIコーンプレート型粘度計によって測定される(B)硬化剤の粘度が、150℃で1.0〜1000mPa・sである、熱硬化性成形材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、エポキシ樹脂成形材料、光半導体素子搭載用基板及びその製造方法、並びに光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の光半導体素子と蛍光体とを組み合わせた光半導体装置は、エネルギー効率が高く、寿命が長いことから、屋外用ディスプレイ、携帯液晶バックライト、車載用途に使用され、その需要が拡大しつつある。これに伴いLEDデバイスの高輝度化が進んでおり、素子の発熱量増大によるジャンクション温度の上昇や、直接的な光エネルギーの増大による光半導体装置の劣化を防ぐことが求められている。
【0003】
特許文献1には、エポキシ樹脂と酸無水物等の硬化剤とからなる熱硬化性樹脂組成物を用いた光半導体素子搭載用基板が開示されている。
【0004】
一般に、酸無水物はエポキシ樹脂の硬化剤として用いられ、また、ジアミンとの反応によりポリイミド化合物を得るための原料として用いられる。酸無水物は、安価で、透明性、電気絶縁性、耐薬品性、耐湿性及び接着性に優れており、電気絶縁材料、半導体装置材料、光半導体封止材料、接着材料、塗料材料等の様々な用途で用いられている。また、酸無水物の一種として、多価カルボン酸の重縮合によって形成されるポリカルボン酸無水物があり、例えば、ポリアゼライン酸、ポリセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸の分子間脱水縮合反応によって得られるポリカルボン酸無水物が市販されている。
【0005】
ところで、酸無水物のその他用途として、特許文献2では、脂肪族及び芳香族ジカルボン酸を分子間で縮合して得られる、平均分子量が20000を超える高分子量のポリカルボン酸無水物(多価カルボン酸縮合体)の使用が生体医学用途において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−140207号公報
【特許文献2】特開昭63−258924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の硬化剤として実用化されている酸無水物系硬化剤は、ポリアミン、フェノールノボラック及びイミダゾール系硬化剤ほど種類が豊富ではない。上述のポリカルボン酸無水物は、エポキシ樹脂用の硬化剤として分子設計されたものではなく、その用途は限られている。
【0008】
また、酸無水物系硬化剤には、耐紫外線特性、耐熱着色性及び各種光学特性に優れた光学材料への適用にむけて脂環式構造を導入することが試みられている。しかし、従来の脂環式酸無水物は、一般的に融点が40℃未満と低く、用途に制限があった。一方、ジアミンと組み合わせてポリイミド樹脂を形成するために従来用いられている芳香族又は直鎖状若しくは環状脂肪族のテトラカルボン酸無水物の多くは、その融点が150℃以上であり、ポリイミド樹脂の原料以外への適用は困難であった。
【0009】
また、従来の熱硬化性樹脂組成物は、トランスファー成形によって光半導体搭載用基板を製造しようとした場合、成形時に成形金型の上型と下型との隙間に樹脂組成物が染み出し、樹脂よごれが発生しやすい傾向がある。加熱成形時に樹脂よごれが発生すると、光半導体素子搭載領域となる基板の開口部(凹部)に樹脂よごれが張り出し、光半導体素子を搭載する際の障害になる。また、開口部に光半導体素子を搭載できたとしても、樹脂汚れは、光半導体素子と金属配線とをボンディングワイヤなどによって電気的に接続する際の接続不良等の障害を引き起こすことがある。そのため、基板の開口部に樹脂汚れが存在する場合には、光半導体素子搭載用基板の製造プロセスに樹脂よごれの除去工程が追加される。このような除去工程は、作業性を低下させ、製造時間のロスとなり製造コストの増加に繋がり易いため、樹脂汚れを低減することが望まれている。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、成形時における樹脂汚れの発生を低減し成形性に十分に優れる熱硬化性樹脂組成物及びエポキシ樹脂成形材料、これを用いた光半導体素子搭載用基板及びその製造方法、並びに光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、(B)硬化剤が、下記一般式(1)で表される成分を有する多価カルボン酸縮合体を含む熱硬化性樹脂組成物を提供する。式(1)中、Rは、2価の有機基を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよく、Rは、1価の有機基を示し、同一分子中の2個のRは同一でも異なっていてもよく、nは1以上の整数を示す。
【化1】

【0012】
上記成分を含む多価カルボン酸縮合体を含有する(B)硬化剤は、例えば、トランスファー成形用材料として用いられたときに、流動性、成形性、作業性、保存安定性及び配合設計の自由度の観点から求められる適度な融点や粘度を容易に達成することが可能である。よって、上述の構成を備える本発明の熱硬化性樹脂組成物は、成形時における樹脂汚れの発生を低減し成形性に十分に優れるものとなる。
【0013】
上記Rは、脂肪族炭化水素環を有し該脂肪族炭化水素環がハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基で置換されていてもよい2価の基であり、上記Rは、酸無水物基又はカルボン酸エステル基で置換されていてもよい1価の炭化水素基であることが好ましい。
【0014】
また、上記Rは、下記一般式(10)で表される2価の基であることが好ましい。式(10)中、mは0〜4の整数を示し、Rはハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4の炭化水素基を示し、mが2〜4であるとき複数のRは同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。
【化2】

【0015】
上記Rは、下記化学式(20)で表される1価の基、又は、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ナフタレン及び水素化ビフェニルから選ばれる環式脂肪族炭化水素から水素原子を除くことにより誘導される1価の基であることが好ましい。
【化3】

【0016】
熱硬化性樹脂組成物の着色を抑制する観点から、上記一般式(1)で表される成分は、下記一般式(1a)で表される成分を含むことが好ましい。式(1a)中、mは0〜4の整数を示し、Rはハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4の炭化水素基を示し、mが2〜4であるとき複数のRは同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよく、nは1以上の整数を示す。
【化4】

【0017】
上記多価カルボン酸縮合体の数平均分子量は、好ましくは200〜20000である。
【0018】
ICIコーンプレート型粘度計によって測定される多価カルボン酸縮合体の粘度は、150℃で10〜30000mPa・sであることが好ましい。
【0019】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、(B)硬化剤の配合量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して10〜150質量部であることが好ましい。
【0020】
本発明の熱硬化性樹脂組成物では、(B)硬化剤が、多価カルボン酸が分子内で閉環縮合してなる酸無水物を更に含むことができる。また、(B)硬化剤が、下記化学式(3)で表される多価カルボン酸縮合体を更に含むことができる。この場合、(A)エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基と、エポキシ基と反応可能な(B)硬化剤中の酸無水物基との当量比が、1:0.3〜1:1.2であることが好ましい。これにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物の成形時における樹脂汚れをより一層低減することができる。
【化5】

【0021】
硬化後、可視光から近紫外光領域における光反射率を高くできることから、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(D)白色顔料を更に含有することが好ましい。
【0022】
(D)白色顔料は、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機物を含むことが好ましい。
【0023】
熱硬化性樹脂組成物中における分散性を向上する観点から、(D)白色顔料の中心粒径は、0.1〜50μmであることが好ましい。
【0024】
(D)白色顔料の配合量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して10〜85体積%であると、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、より成形性に優れるものとなる。
【0025】
また、本発明は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、ICIコーンプレート型粘度計によって測定される(B)硬化剤の粘度が、150℃で1.0〜1000mPa・sである熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0026】
さらに、本発明は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含有するエポキシ樹脂成形材料であって、(B)硬化剤が多価カルボン酸縮合体を含むエポキシ樹脂成形材料を提供する。
【0027】
本発明はまた、底面及び壁面から構成される凹部を有し、凹部の底面が光半導体素子搭載部であり、凹部の壁面の少なくとも一部が本発明の熱硬化性樹脂組成物又はエポキシ樹脂成形材料の硬化物からなる光半導体素子搭載用基板を提供する。
【0028】
本発明はさらに、底面及び壁面から構成される凹部を有する光半導体素子搭載用基板の製造方法であって、凹部の壁面の少なくとも一部を、本発明の熱硬化性樹脂組成物又はエポキシ樹脂成形材料を用いて形成する工程を備える光半導体素子搭載用基板の製造方法を提供する。
【0029】
本発明は、底面及び壁面から構成される凹部を有する光半導体素子搭載用基板と、光半導体素子搭載用基板の凹部内に設けられた光半導体素子と、凹部を充填して光半導体素子を封止する封止樹脂部とを備え、凹部の壁面の少なくとも一部が本発明の熱硬化性樹脂組成物又はエポキシ樹脂成形材料の硬化物からなる光半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、成形時における樹脂汚れの発生を低減し成形性に十分に優れる熱硬化性樹脂組成物、エポキシ樹脂成形材料、これを用いた光半導体素子搭載用基板及びその製造方法、並びに光半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の光半導体素子搭載用基板の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の光半導体素子搭載用基板を製造する工程の一実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明の光半導体素子搭載用基板に光半導体素子を搭載した状態の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図5】本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図6】本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図7】バリ長さの測定時に使用するバリ測定用金型の構造及びバリを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又はそれに対応する「メタクリレート」を意味する。
【0033】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含有するものであり、(B)硬化剤が、上記一般式(1)で表される成分を有する多価カルボン酸縮合体を含むものである。
【0034】
また、本発明の別の実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、ICIコーンプレート型粘度計によって測定される(B)硬化剤の粘度が、150℃で1.0〜1000mPa・sである。
【0035】
<(A)エポキシ樹脂>
(A)エポキシ樹脂としては、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているものを用いることができる。エポキシ樹脂として、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びアルキル置換ビスフェノール等のジグリシジルエーテル、ジアミノジフェニルメタン及びイソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、並びに脂環族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、及び、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸ジグリシジルエステルが、比較的着色が少ないことから好ましい。同様の理由から、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸及びメチルナジック酸等のジカルボン酸のジグリシジルエステルも好適である。芳香環が水素化された脂環式構造を有する核水素化トリメリット酸、核水素化ピロメリット酸等のグリシジルエステルも挙げられる。シラン化合物を有機溶媒、有機塩基及び水の存在下に加熱して、加水分解・縮合させることにより製造される、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンも挙げられる。また、(A)成分として、グリシジル(メタ)アクリレート単量体と、これと重合可能な単量体との共重合体である、下記式(7)で示されるエポキシ樹脂を用いることもできる。
【0037】
【化6】

【0038】
式(7)中、Rはグリシジル基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜6の飽和若しくは不飽和の1価の炭化水素基を示し、Rは1価の飽和炭化水素基を示す。a及びbは正の整数を示す。
【0039】
硬化物の着色を抑制するために、エポキシ樹脂は、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ナフタレン及び水素化ビフェニルから選ばれる環式脂肪族炭化水素から水素原子を除くことにより誘導される脂肪族炭化水素基を有する脂環式エポキシ樹脂であることも好ましい。上記環式脂肪族炭化水素は、ハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基で置換されていてもよい。
【0040】
<(B)硬化剤>
本実施形態に係る硬化剤は、多価カルボン酸縮合体を含むものであればよく、ICIコーンプレート型粘度計によって測定される(B)硬化剤の粘度が、150℃で1.0〜1000mPa・sであることが好ましく、10〜200mPa・sであることがより好ましい。(B)硬化剤の粘度が、係る特定範囲内にあることにより、例えば、多価カルボン酸縮合体を配合した熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形に用いたときに、バリ発生が抑制されるなど、良好な成形性が得られる。硬化剤の粘度を調整する方法としては、多価カルボン酸縮合体の平均分子量を制御することなどにより多価カルボン酸縮合体の粘度を調整する方法や、多価カルボン酸縮合体と、併用可能な硬化剤との配合比を調整する方法が挙げられる。
【0041】
(B)硬化剤の粘度を調整するのに望ましい多価カルボン酸縮合体の粘度は、150℃で10〜30000mPa・sであることが好ましく、10〜10000mPa・sであることがより好ましい。上記温度範囲における多価カルボン酸縮合体の粘度が10mPa・s未満では、トランスファー成形時の樹脂汚れの発生を抑える効果が低くなる傾向にあり、30000mPa・sを超えると、トランスファー成形時の金型内で熱硬化性樹脂組成物の流動性が低下する傾向にある。多価カルボン酸縮合体の粘度は、例えばReseach Equipment(London)LTD.製のICIコーンプレート型粘度計を用いて測定することができる。
【0042】
本明細書において「多価カルボン酸縮合体」とは、2以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸の1種又は2種以上が分子間で縮合して形成される重合体を意味する。より詳細には、多価カルボン酸縮合体は、2以上のカルボキル基を有する2分子以上のモノマーの分子間で、それぞれが有するカルボキシ基が脱水縮合することにより酸無水物基(酸無水物結合)を生成し、生成した酸無水物基によって各モノマー単位が鎖状又は環状に連結されている重合体である。一方、「多価カルボン酸のカルボキシル基を分子内で脱水縮合させて得ることのできる酸無水物化合物」とは、2以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸のカルボキシル基が分子内で脱水縮合して酸無水物基を生成し、生成した酸無水物基を含む環状構造が形成されている酸無水物化合物を意味する。
【0043】
本実施形態に係る多価カルボン酸縮合体は、通常、重合度の異なる複数の成分から構成され、繰り返し単位及び末端基の構成が異なる複数の成分を含み得る。本実施形態に係る多価カルボン酸縮合体は、下記一般式(1)で表される成分を主成分として含むことが好ましい。式(1)中、Rは2価の有機基を示し、Rは1価の有機基を示す。好ましくは、式(1)の成分の割合は多価カルボン酸縮合体全量を基準として60質量%以上である。
【0044】
【化7】

【0045】
式(1)中のRは飽和炭化水素環を有する2価の飽和炭化水素基であることが好ましい。Rが飽和炭化水素環を有する飽和炭化水素基であることにより、当該多価カルボン酸縮合体はエポキシ樹脂の透明な硬化物を形成させることが可能である。同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよい。Rの飽和炭化水素環はハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基で置換されていてもよい。飽和炭化水素環を置換する炭化水素基は好ましくは飽和炭化水素基である。飽和炭化水素環は単環でもよいし、2以上の環から構成される縮合環、ポリシクロ環、スピロ環又は環集合であってもよい。Rの炭素数は好ましくは3〜15である。
【0046】
は一般式(1)で表される成分(重合体)を得るために用いられるモノマーとしての多価カルボン酸からカルボキシル基を除いて誘導される基である。モノマーとしての多価カルボン酸は、重縮合の反応温度よりも高い沸点を有することが好ましい。
【0047】
より具体的には、Rはシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ナフタレン及び水素化ビフェニルから選ばれる環式脂肪族炭化水素から水素原子を除くことにより誘導される2価の基であることが好ましい。Rがこれらの基であることにより、透明で熱による着色の少ない硬化物が得られるという効果がより一層顕著に奏される。これら環式飽和炭化水素は、ハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基(好ましくは飽和炭化水素基)で置換されていてもよい。
【0048】
特に、Rは1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はこれらの誘導体からカルボキシル基を除いて誘導される基であることが好ましい。すなわち、Rは下記一般式(10)で表される2価の基であることが好ましい。式(10)中、mは0〜4の整数を示す。Rはハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4の炭化水素基を示す。mが2〜4であるとき、複数のRは同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。
【0049】
【化8】

【0050】
式(1)中の末端基であるRは酸無水物基又はカルボン酸エステル基で置換されていてもよい1価の炭化水素基を示す。2個のRは同一でも異なっていてもよい。Rは、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2〜15の脂肪族若しくは芳香族モノカルボン酸(安息香酸等)からカルボキシル基を除くことにより誘導される1価の基であってもよい。
【0051】
は、好ましくは、下記化学式(20)で表される1価の基、又は、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ナフタレン及び水素化ビフェニルから選ばれる環式脂肪族炭化水素から水素原子を除くことにより誘導される1価の基である。Rがこれらの基であることにより、熱による着色の少ない硬化物が得られるという効果がより一層顕著に奏される。また、Rがこれらの基であると、多価カルボン酸縮合体中のカルボン酸残基の濃度が低減すると共に、分子量の分散を抑えることができる。
【0052】
【化9】

【0053】
が上記一般式(10)で表される2価の基であり、同時に、Rが上記化学式(20)で表される1価の基であってもよい。すなわち、本実施形態に係る多価カルボン酸縮合体は、一般式(1)で表される成分として、下記一般式(1a)で表される成分を含んでいてもよい。
【0054】
【化10】

【0055】
式(1)及び(1a)のnは1以上の整数を示し、好ましくは1〜200の整数である。
【0056】
多価カルボン酸縮合体の数平均分子量Mnは、200〜20000であることが好ましく、300〜20000であることがより好ましく、300〜10000であることが更に好ましい。Mnが200未満では、粘度が低くなりすぎて熱硬化性樹脂組成物のトランスファー成形時の樹脂汚れの発生を抑制し難くなる傾向があり、20000を超えると、エポキシ樹脂との相溶性が低下する傾向や、熱硬化性樹脂組成物のトランスファー成形時の流動性が低下する傾向がある。
【0057】
本発明で用いられる数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて下記条件で測定することで得られる。
(GPC条件)
ポンプ:L−6200型(株式会社日立製作所製、商品名)
カラム:TSKgel―G5000HXL及びTSKgel−G2000HXL(東ソー株式会社製、商品名)
検出器:L−3300RI型(株式会社日立製作所製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:30℃
流量:1.0mL/分
【0058】
本実施形態に係る多価カルボン酸縮合体は、多価カルボン酸及び必要に応じて用いられるモノカルボン酸を含む反応液中で脱水縮合させることにより、得られる。例えば、下記一般式(5)で表される多価カルボン酸及び下記一般式(6)で表されるモノカルボン酸を含む反応液中で、それぞれが有するカルボキシル基を分子間で脱水縮合させる工程を備える方法によって得ることができる。
【0059】
【化11】

【0060】
脱水縮合の反応液は、例えば、多価カルボン酸及びモノカルボン酸と、これらを溶解する無水酢酸又は無水プロピオン酸、塩化アセチル、脂肪族酸塩化物及び有機塩基(トリメチルアミン等)から選ばれる脱水剤とを含有する。例えば、反応液を5〜60分にわたって窒素雰囲気下で還流した後、反応液の温度を180℃まで上昇させて窒素気流下の開放系で、生成する酢酸及び水を留去することにより重縮合を進行させる。揮発成分の発生が認められなくなった時点で、反応容器内を減圧しながら180℃の温度で3時間にわたって、より好ましくは8時間にわたって溶融状態で重縮合を進行させる。生成した多価カルボン酸縮合体を、無水酢酸等の非プロトン性溶媒を用いた再結晶や再沈殿法によって精製してもよい。なお、脱水縮合反応において、目的のICIコーンプレート粘度、数平均分子量、軟化点が得られるように適宜反応条件を変えることができ、ここに示した反応条件に限られるものではない。
【0061】
係る方法によって得られる多価カルボン酸縮合体は、式(6)のモノカルボン酸の2分子との縮合物、式(5)の多価カルボン酸と式(6)のモノカルボン酸との縮合物、多価カルボン酸及びモノカルボン酸の未反応物、並びに、無水酢酸及び無水プロピオン酸等の反応試薬と多価カルボン酸又はモノカルボン酸とが縮合反応して生成する酸無水物のような副生成物を含んでいる場合がある。これら副生成物は、精製によって除いてもよく、また、混合物のまま硬化剤として用いることもできる。
【0062】
本発明で用いられる多価カルボン酸縮合体は、縮合反応前の多価カルボン酸とモノカルボン酸の仕込み組成比で生成物のICIコーンプレート粘度、数平均分子量及び軟化点を目的に応じて調整することができる。多価カルボン酸の比率が多くなるほど、ICIコーンプレート粘度、数平均分子量、軟化点が増加する傾向にある。但し、縮合反応の条件によっては必ずしも上記のような傾向を示すわけではなく、脱水縮合反応の条件である反応温度、減圧度、反応時間の要素も加味する必要がある。
【0063】
多価カルボン酸縮合体の軟化点は、20〜200℃であることが好ましく、20〜130℃であることがより好ましく、30〜90℃であることが更に好ましい。これにより、多価カルボン酸縮合体を含む樹脂組成物中に2本ロールミル等を用いて無機フィラーを分散させる場合に、良好な分散性及び作業性が得られる。無機フィラーの分散性に優れることは、トランスファー成形用の熱硬化性樹脂組成物等において特に重要である。また、ロールミルを用いて熱硬化性樹脂組成物を製造する際の混練性の観点から、多価カルボン酸縮合体の軟化点が30〜80℃であることが好ましく、30〜50℃であることがより好ましい。軟化点が20℃未満では熱硬化性樹脂組成物の製造時においてハンドリング性、混練性及び分散性が低下し、トランスファー成形時の樹脂汚れの発生を効果的に抑える難くなる傾向がある。軟化点が200℃を超えると、トランスファー成形によって100〜200℃に加熱した場合に樹脂組成物中に硬化剤が溶け残る可能性があり、均一な成形体が得られ難くなる傾向がある。多価カルボン酸縮合体の軟化点は、主鎖の構造の選択と数平均分子量の調整で所望の範囲にすることができる。一般に、モノマーとして調査の二価カルボン酸を用いると軟化点を低くすることができ、また、極性の高い構造を導入すると軟化点を高くすることができる。また、一般に、数平均分子量を大きくすれば軟化点を低下させることができる。
【0064】
本実施形態の硬化性樹脂組成物において、多価カルボン酸縮合体の含有量は、(B)硬化剤全体を基準として、10〜100質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることが更に好ましい。
【0065】
なお、(B)硬化剤は、多価カルボン酸が分子内で閉環縮合してなる酸無水物を更に含んでいてもよい。この場合、(A)エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基と、エポキシ基と反応可能な(B)硬化剤中の酸無水物基との当量比が、1:0.3〜1:1.2であることが好ましい。これにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物の成形時における樹脂汚れをより一層低減することができる。
【0066】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物において、(B)硬化剤として、上記多価カルボン酸縮合体と共に、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されている硬化剤を併用することができる。このような硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応するものであれば、特に限定されないが、無色又は淡黄色であることが好ましい。このような硬化剤として、例えば、酸無水物系硬化剤、イソシアヌル酸誘導体系硬化剤、フェノール系硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸が挙げられる。イソシアヌル酸誘導体としては、1,3,5−トリス(1−カルボキシメチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。これらの硬化剤の中では、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸又は1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートを用いることが好ましい。また、上記硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。これらの併用可能な硬化剤を含む場合、多価カルボン酸縮合体との配合比率を変えることによって、(B)硬化剤の全体としての粘度を調整することができ、好ましい。
【0067】
上述の併用可能な硬化剤は、分子量が100〜400であることが好ましい。また、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香環を有する酸無水物よりも、芳香環の不飽和結合のすべてを水素化した無水物が好ましい。酸無水物系硬化剤として、ポリイミド樹脂の原料として一般的に使用される酸無水物を用いてもよい。
【0068】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、(B)硬化剤の配合量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、1〜150質量部であることが好ましく、樹脂汚れを抑制するという観点から、50〜120質量部であることがより好ましい。
【0069】
また、(B)硬化剤は、(A)エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、当該エポキシ基との反応可能な(B)硬化剤中の活性基(酸無水物基又は水酸基)が0.5〜0.9当量となるように配合することが好ましく、0.7〜0.8当量となることがより好ましい。上記活性基が0.5当量未満では、熱硬化性樹脂組成物の硬化速度が遅くなると共に、得られる硬化体のガラス転移温度が低くなり、充分な弾性率が得られ難くなる傾向がある。一方、上記活性基が0.9当量を超えると、硬化後の強度が低下する傾向がある。
【0070】
<(C)硬化促進剤>
本発明の熱硬化性樹脂組成物には必要に応じて(C)硬化促進剤(硬化触媒)を配合することができる。(C)硬化促進剤としては、(A)及び(B)成分間の硬化反応を促進させるような触媒機能を有するものであれば、特に限定されることなく用いることができる。硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物、イミダゾール化合物、有機リン化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの硬化促進剤の中でも、アミン化合物、イミダゾール化合物又は有機リン化合物を用いることが好ましい。アミン化合物としては、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールが挙げられる。また、イミダゾール化合物として、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾールが挙げられる。更に、有機リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフェニルボレートが挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
上記(C)硬化促進剤の配合量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、0.01〜8質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の含有量が、0.01質量部未満では、十分な硬化促進効果を得られない場合があり、8質量部を超えると、得られる成形体に変色が見られる場合がある。
【0072】
<(D)白色顔料>
光半導体装置等に利用可能な白色の成形樹脂として用いる場合には、本発明の熱硬化性樹脂組成物に更に(D)白色顔料を含むことが好ましい。(D)白色顔料としては、公知のものを使用することができ、特に限定されない。白色顔料として、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上併用することができる。無機中空粒子としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、シラス(白砂)が挙げられる。白色顔料の粒径は、中心粒径が0.1〜50μmであることが好ましい。この中心粒径が0.1μm未満であると粒子が凝集しやすく分散性が低下する傾向があり、50μmを超えると熱硬化性樹脂組成物からなる硬化物の反射特性が十分に得られ難くなる。
【0073】
(D)白色顔料の配合量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、10〜85体積%であることが好ましく、20〜75体積%であることがより好ましい。この配合量が10体積%未満であると硬化後の熱硬化性樹脂組成物の光反射特性が十分に得られ難い傾向があり、85体積%を超えると熱硬化性樹脂組成物の成形性が低下する傾向がある。
【0074】
また、熱硬化性樹脂組成物が(D)白色顔料と共に後述する無機充填剤を含有する場合、(D)白色顔料と無機充填材との合計配合量が、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、10〜85体積%であると、熱硬化性樹脂組成物の成形性をより一層向上することができる。
【0075】
<その他の成分>
(無機充填材)
熱硬化性樹脂組成物は成形性を調整するために、無機充填材を含むことが好ましい。なお、無機充填剤として、上記白色顔料と同様のものを用いてもよい。無機充填材として、例えば、シリカ、酸化アンチモン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、アルミナ、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素が挙げられる。熱伝導性、光反射特性、成形性及び難燃性の点から、無機充填剤は、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムからなる群から選ばれる2種以上の混合物であることが好ましい。無機充填材の平均粒径は、白色顔料とのパッキング性を向上させる観点から、1〜100μmであることが好ましく、1〜40μmであることがより好ましい。本実施形態の熱硬化性樹脂組成物における無機充填剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、1〜1000質量部であることが好ましく、1〜800質量部であることがより好ましい。
【0076】
(カップリング剤)
熱硬化性樹脂組成物には、熱硬化性樹脂成分である(A)〜(C)成分と、(D)白色顔料及び必要に応じて添加される無機充填材との接着性を向上させる観点からカップリング剤を添加することが好ましい。カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤及びチタネート系カップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、一般にエポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系及びこれらの複合系が挙げられ、任意の添加量で用いることができる。なお、カップリング剤の配合量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0077】
また、本実施形態の樹熱硬化性脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、離型剤、イオン捕捉剤等の添加剤を添加してもよい。
【0078】
[熱硬化性樹脂組成物の作製方法]
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上記した各種成分を均一に分散混合することで得ることができ、その手段や条件等は特に限定されない。熱硬化性樹脂組成物を作製する一般的な方法として、各成分を押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダー等によって混練した後、混練物を冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。各成分を混練する際には、分散性を向上する観点から、溶融状態で行うことが好ましい。混練の条件は、各成分の種類や配合量により適宜決定すればよく、例えば、15〜100℃で5〜40分間混練することが好ましく、20〜100℃で10〜30分間混練することがより好ましい。混練温度が15℃未満であると、各成分を混練させ難くなり、分散性も低下する傾向にあり、100℃を超えると、樹脂組成物の高分子量化が進行し、樹脂組成物が硬化してしまう可能性がある。また、混練時間が5分未満であると、トランスファー成形時に樹脂バリが発生してしまう可能性がある。混練時間が40分を超えると、樹脂組成物の高分子量化が進行し、樹脂組成物が硬化してしまう可能性がある。
【0079】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を予め混合する予備混合工程を経た後に、他の成分を加えて、ロールミルや押出機により混練することによって製造することもできる。例えば、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の少なくとも一方が、0〜35℃で液状である場合、又は、100〜200℃で10mPa・s未満の低粘度である場合には、予備混合工程を行うことが好ましい。このような(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を用いて予備混合を行うことで得られる熱硬化性樹脂組成物は、貯蔵安定性が向上し、トランスファー成形時の成形性により優れるものとなる。
【0080】
上記予備混合工程における予備混合物の粘度は、100〜150℃で10〜10000mPa・sであることが好ましく、100℃での粘度が10〜10000mPa・sであることがより好ましい。該粘度が10mPa・s未満ではトランスファー成形時にバリが発生しやすくなり、10000mPa・sを超えると成形時の流動性が低下し、金型に熱硬化性樹脂組成物を流し込み難くなり、成形性が低下する傾向がある。
【0081】
上記予備混合工程において、析出物が発生することにより粘度の増加を防ぐ観点から、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の硬化反応物であるゲル等が析出して析出物による予備混合物に白濁が生じないように混合条件を調製することが好ましい。「析出物による白濁」とは、電磁波の可視光領域における散乱があることを示す。より具体的には光のレイリー散乱、ミー散乱、回折散乱現象を生じるような、散乱中心を有する微粒子が存在しないことを示す。
【0082】
予備混合工程において、具体的には、(A)エポキシ100質量部及び(B)硬化剤120質量部を耐熱ガラス製の容器に秤量し、この混合容器をシリコーンオイルや水等の流体を媒体としたヒーターを用いて、35〜180℃で加熱する方法を用いることができる。加熱方法としては上記の方法に限定されるものではなく、熱電対、電磁波照射等を用いることができ、さらに溶解を促進するために超音波を照射してもよい。
【0083】
また、予備混合工程において、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤は、熱硬化性樹脂組成物に配合する(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の一部を予備混合することが可能である。具体的には、(A)エポキシ樹脂100質量部に対し、(B)硬化剤120質量部含む熱硬化性樹脂組成物を製造する場合、まず、(A)エポキシ樹脂50質量部及び(B)硬化剤120質量部を耐熱ガラス製の容器に秤量し、この混合容器をシリコーンオイルや水などの流体を媒体としたヒーターを用いて35〜180℃で加熱することで予備混合物を得る。そして、得られた予備混合物と、残りの(A)エポキシ樹脂50質量部、(C)硬化促進剤及びその他の成分とをロール混練などにより混合し熱硬化性樹脂組成物を製造してもよい。
【0084】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、室温付近(15〜30℃)において、加圧成形しタブレットを作製可能であり、熱硬化後の、波長350〜800nmにおける光反射率が80%以上であることが好ましい。上記加圧成形は、例えば、室温において、5〜50MPa、1〜5秒間程度の条件で行うことができる。上記光反射率が80%未満では、光半導体装置の輝度向上に充分寄与できない傾向があり、より好ましい光反射率は90%以上である。
【0085】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、成形温度100℃〜200℃、成形圧力5〜20MPa、成形時間60〜180秒の条件でトランスファー成形した時のバリの長さが5mm以下となることが好ましい。バリの長さが5mmを超えると、光半導体素子搭載用基板を作製する際、光半導体素子搭載領域となる開口部(凹部)に樹脂汚れが発生し、光半導体素子を搭載する際の障害となる可能性があり、また、光半導体素子と金属配線とを電気的に接続する際の障害になる可能性がある。半導体装置製造時の作業性の観点から、上記バリ長さは、3mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが更に好ましい。
【0086】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、高い透明性及び耐熱性を必要とする電気絶縁材料、光半導体封止材料、接着材料、塗料材料並びにトランスファー成形用エポキシ樹脂成形材料など様々な用途において有用である。
【0087】
[エポキシ樹脂成形材料]
本発明のエポキシ樹脂成形材料は、上記(A)エポキシ樹脂及び上記(B)硬化剤を含有するエポキシ樹脂成形材料であって、(B)硬化剤が上述の多価カルボン酸縮合体を含むものである。
【0088】
[光半導体素子搭載用基板]
本発明の半導体素子搭載用基板は、底面及び壁面から構成される凹部を有し、凹部の底面が光半導体素子搭載部であり、凹部の壁面の少なくとも一部が本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるものである。図1は、本発明の光半導体素子搭載用基板の一実施形態を示す斜視図である。光半導体素子搭載用基板110は、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105と、リフレクター103とを備え、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105とリフレクター103とから形成された凹部200を有している。すなわち、凹部200の底面はNi/Agめっき104が形成された金属配線105から構成され、凹部200の壁面はリフレクター103から構成されるものであり、リフレクター103は、上記本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる成形体である。
【0089】
本発明の光半導体素子搭載用基板の製造方法は特に限定されないが、例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いたトランスファー成形により製造することができる。図2は、本発明の光半導体素子搭載用基板を製造する工程の一実施形態を示す概略図である。光半導体素子搭載用基板は、例えば、金属箔から打ち抜きやエッチング等の公知の方法により金属配線105を形成し、電気めっきによりNi/Agめっき104を施す工程(図2(a))、次いで、該金属配線105を所定形状の金型151に配置し、金型151の樹脂注入口150から本発明の熱硬化性樹脂組成物を注入し、所定の条件でトランスファー成形する工程(図2(b))、そして、金型151を外す工程(図2(c))を経て製造することができる。このようにして、光半導体素子搭載用基板には、熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるリフレクター103に周囲を囲まれてなる光半導体素子搭載領域(凹部)200が形成される。なお、上記トランスファー成形の条件としては、金型温度170〜200℃、成形圧力0.5〜20MPaで60〜120秒間、アフターキュア温度120℃〜180℃で1〜3時間が好ましい。
【0090】
[光半導体装置]
本発明の光半導体装置は、上記光半導体素子搭載用基板と、光半導体素子搭載用基板の凹部内に設けられた光半導体素子と、凹部を充填して光半導体素子を封止する封止樹脂部とを備えるものである。
【0091】
図3は、本発明の光半導体素子搭載用基板110に光半導体素子100を搭載した状態の一実施形態を示す斜視図である。図3に示すように、光半導体素子100は、光半導体素子搭載用基板110の光半導体素子搭載領域(凹部)200の所定位置に搭載され、金属配線105とボンディングワイヤ102により電気的に接続される。図4及び5は、本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図4及び5に示すように、光半導体装置は、光半導体素子搭載用基板110と、光半導体素子搭載用基板110の凹部200内の所定位置に設けられた光半導体素子100と、凹部200を充填して光半導体素子を封止する蛍光体106を含む透明封止樹脂101からなる封止樹脂部とを備えており、光半導体素子100とNi/Agめっき104が形成された金属配線105とがボンディングワイヤ102又ははんだバンプ107により電気的に接続されている。
【0092】
図6もまた、本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図6に示す光半導体装置では、リフレクター303が形成されたリード304上の所定位置にダイボンド材306を介してLED素子300が配置され、LED素子300とリード304とがボンディングワイヤ301により電気的に接続され、蛍光体305を含む透明封止樹脂302によりLED体素子300が封止されている。
【0093】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0094】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0095】
<多価カルボン酸縮合体の作製>
下記の合成例A1、A2及びA3にそれぞれ示した繰り返し単位用モノマーと両末端用のモノマーとを、無水酢酸中で5〜60分にわたって窒素雰囲気下で還流した後、温度を180℃まで上昇させ、窒素気流下、開放系で反応によって生成した酢酸及び水を留去した。揮発成分が認められなくなったところで、反応容器内を減圧しながら180℃の温度で1〜15時間にわたって溶融縮合し、多価カルボン酸縮合体を得た。
(合成例A1)
繰り返し単位:水素化テレフタル酸(東京化成社製);125g
両末端:水素化−1,2−無水トリメリット酸(三菱ガス化学社製);126g
(合成例A2)
繰り返し単位:水素化テレフタル酸(東京化成社製);218g
両末端:水素化無水トリメリット酸(三菱ガス化学社製);86g
(合成例A3)
繰り返し単位:なし
両末端:水素化−1,2−無水トリメリット酸(三菱ガス化学社製);100g
【0096】
<多価カルボン酸縮合体の特性評価>
合成例A1A、2及びA3の多価カルボン酸縮合体の数平均分子量、粘度、軟化点及び外観を評価した。その結果を表1に示す。
【0097】
数平均分子量Mnは、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した。
・装置:ポンプ(株式会社日立製作所製、商品名:L−6200型)、カラム(東ソー株式会社製、商品名:TSKgel―G5000HXL、TSKgel−G2000HXL)、検出器(株式会社日立製作所製、商品名:L−3300RI型)
・溶離液:テトラヒドロフラン、流量1.0mL/分
・測定温度:30℃
【0098】
粘度測定は、Reseach Equipment(London)LTD.製のICIコーンプレート型粘度計を用いて行った。なお、表2及び3には樹脂組成物に含まれる硬化剤成分をすべて混合した際の150℃における粘度を示した。
【0099】
軟化点は、JIS K 2207準拠の環球式軟化点試験法を用いて測定した。外観については目視で判断した。
【0100】
【表1】

【0101】
上記合成例で得られた多価カルボン酸縮合体は、軟化点及び粘度ともに熱硬化性樹脂組成物を製造するには非常に扱い易い性状となり、硬化剤として熱硬化性樹脂組成物に好適に用いることができる。
【0102】
<熱硬化性樹脂組成物の作製>
(実施例1〜14、比較例1〜3)
表2に示した配合比(質量部)に従い、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤を予備混合した後、残りの成分を加え、ミキサーを用いて十分混合した後、ミキシングロールにより所定条件で溶融混練し、冷却、粉砕を行い、実施例1〜14及び比較例1〜2の熱硬化性樹脂組成物を作製した。
【0103】
<熱硬化性樹脂組成物の評価>
得られた熱硬化性樹脂組成物を成形金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、キュア時間90秒の条件でトランスファー成形し、下記の評価を行った。評価結果を表2及び3に示す。
【0104】
(光反射性試験)
得られた熱硬化性樹脂組成物を上述の条件でトランスファー成形した後、150℃で2時間ポストキュアして、厚み1.0mmのテストピースを作製した。積分球型分光光度計V−750型(日本分光株式会社製、商品名)を用いて、波長400nmにおける上記テストピースの初期光学反射率(光反射率)を測定した。そして、下記の評価基準により光反射特性を評価した。
A:光波長400nmにおいて光反射率80%以上
B:光波長400nmにおいて光反射率70%以上、80%未満
C:光波長400nmにおいて光反射率70%未満
【0105】
(トランスファー成形性)
(スパイラルフロー)
EMMI−1−66の規格に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、熱硬化性樹脂組成物を上記条件でトランスファー成形し、そのときの流動距離(cm)を求めた。
【0106】
(バリ長さ)
得られた熱硬化性樹脂組成物を、ポットを用いて、バリ測定用金型(図7を参照)に流し込み、次いで硬化させることによって熱硬化性樹脂組成物を成形した。なお、成形時の金型温度は180℃、成形圧力は6.9MPa、樹脂の流し込み時間(トランスファー時間)は10秒であり、硬化温度は180℃、硬化時間は90秒とした。成形後、バリ測定用金型の上型を外し、成形時に金型の上型と下型との隙間を流れて生じたバリの長さの最大値を、ノギスを使用して測定した。
【0107】
図7は、バリ長さの測定時に使用するバリ測定用金型の構造及びバリを模式的に示した図であり、(a)は側面断面図、(b)は平面図である。図7に示したように、バリ測定用金型は、一対の上型400と下型401とから構成され、上型400は樹脂注入口402を有する。また、下型401は、樹脂注入口402に対向するキャビティ403と、キャビティ403から金型外周部に向かって伸びる6本のスリット404、405、406、407、408及び409を有する。バリは、図7に示したように、熱硬化性樹脂組成物がキャビティ403の外延から各スリットに沿って流れ込み硬化した部分(樹脂バリ)410を意味する。ここで、本発明で規定する「バリの長さ」とは、図7に示すバリ測定用金型を用いトランスファー成形を行った際の、金型中心のキャビティ403から、金型の上型400と下型401との合わせ目の隙間にはみ出した硬化物(樹脂バリ410)の放射方向の最大長さをノギスで測定した値である。また、バリ測定用金型の寸法は、上型400及び下型401の外形が(140mm)×(140mm)、樹脂注入口の径が上部7mm、下部4mm、キャビティの径が30mm、キャビティの深さが4mmであり、6本のスリット404から409の深さは、順に75、50、30、20、10及び2μmである。
【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
表2及び3中、*1〜9は以下の通りである。
*1:トリスグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量100、日産化学社製、商品名:TEPIC−S)
*2:3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学社製、商品名:セロキサイド2021P)
*3:ヘキサヒドロ無水フタル酸(和光純薬工業社製)
*4:水素化−1,2−無水トリメリット酸(三菱ガス化学社製)
*5:テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチエート(日本化学工業社製、商品名:PX−4ET)
*6:トリメトキシエポキシシラン(東レダウコーニング社製、商品名:A−187)
*7:溶融シリカ(電気化学工業社製、商品名:FB−301)
*8:中空粒子(住友3M社製、商品名:S60−HS)
*9:アルミナ(アドマテックス社製、商品名:AO−25R)
【0111】
表2に示したように、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、光反射特性に優れ、バリを低減、すなわち、樹脂汚れを十分に低減することが可能である。
【0112】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いてトランスファー成形することにより、光半導体素子搭載領域の樹脂汚れが十分に低減した光半導体素子搭載用基板を作製することができる。これにより、光半導体素子搭載領域の開口部に光半導体素子を搭載でき、光半導体素子と金属配線とをボンディングワイヤなど公知の方法により電気的に接続することが可能になる。また、本発明によれば、光半導体素子搭載用基板の製造工程においてバリを除去する工程が不要となりコストや製造時間など生産性の面で非常に有利となる。
【符号の説明】
【0113】
100…光半導体素子、101…透明封止樹脂、102…ボンディングワイヤ、103…熱硬化性樹脂組成物の硬化物(リフレクター)、104…Ni/Agめっき、105…金属配線、106…蛍光体、107…はんだバンプ、110…光半導体素子搭載用基板、200…光半導体素子搭載領域、150…樹脂注入口、151…金型、300…LED素子、301…ボンディングワイヤ、302…透明封止樹脂、303…リフレクター、304…リード、305…蛍光体、306…ダイボンド材、400…バリ測定用金型(上型)、401…バリ測定用金型(下型)、402…樹脂注入口、403…キャビティ、404…スリット(75μm)、405…スリット(50μm)、406…スリット(30μm)、407…スリット(20μm)、408…スリット(10μm)、409…スリット(2μm)、410…樹脂バリ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含有する熱硬化性成形材料であって、
ICIコーンプレート型粘度計によって測定される前記(B)硬化剤の粘度が、150℃で1.0〜1000mPa・sである、熱硬化性成形材料。
【請求項2】
前記(B)硬化剤が多価カルボン酸縮合体を含む、請求項1記載の熱硬化性成形材料。
【請求項3】
前記多価カルボン酸縮合体の数平均分子量が300〜20000である、請求項2記載の熱硬化性成形材料。
【請求項4】
ICIコーンプレート型粘度計によって測定される前記多価カルボン酸縮合体の粘度が、150℃で10〜30000mPa・sである、請求項2又は3記載の熱硬化性成形材料。
【請求項5】
前記多価カルボン酸縮合体が下記一般式(1)で表される成分を含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性成形材料。
【化1】


[式(1)中、Rは2価の有機基を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよく、Rは1価の有機基を示し、同一分子中の2個のRは同一でも異なっていてもよく、nは1以上の整数を示す。]
【請求項6】
前記Rが、脂肪族炭化水素環を有し該脂肪族炭化水素環がハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基で置換されていてもよい2価の基であり、前記Rが、酸無水物基又はカルボン酸エステル基で置換されていてもよい1価の炭化水素基である、請求項5記載の熱硬化性成形材料。
【請求項7】
前記Rが下記一般式(10)で表される2価の基である、請求項5記載の熱硬化性成形材料。
【化2】


[式(10)中、mは0〜4の整数を示し、Rはハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4の炭化水素基を示し、mが2〜4であるとき複数のRは同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。]
【請求項8】
前記Rが、下記化学式(20)で表される1価の基、又は、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ナフタレン及び水素化ビフェニルから選ばれる環式脂肪族炭化水素から水素原子を除くことにより誘導される1価の基である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の熱硬化性成形材料。
【化3】

【請求項9】
前記一般式(1)で表される成分が、下記一般式(1a)で表される成分を含む、請求項5記載の熱硬化性成形材料。
【化4】


[式(1a)中、mは0〜4の整数を示し、Rはハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4の炭化水素基を示し、mが2〜4であるとき複数のRは同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよく、nは1以上の整数を示す。]
【請求項10】
前記(B)硬化剤が、下記化学式(3)で表される多価カルボン酸縮合体を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱硬化性成形材料。
【化5】

【請求項11】
前記(B)硬化剤が、多価カルボン酸が分子内で閉環縮合してなる酸無水物を更に含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱硬化性成形材料。
【請求項12】
前記(B)硬化剤の配合量が、前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対して10〜150質量部である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱硬化性成形材料。
【請求項13】
(A)エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基と、当該エポキシ基と反応可能な(B)硬化剤中に含まれる酸無水物基との当量比が、1:0.3〜1:1.2である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱硬化性成形材料。
【請求項14】
(D)白色顔料を更に含有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の熱硬化性成形材料。
【請求項15】
前記(D)白色顔料が、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機物を含む、請求項14記載の熱硬化性成形材料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−242095(P2010−242095A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158083(P2010−158083)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2009−3838(P2009−3838)の分割
【原出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】