説明

熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルム及びその製造方法

【課題】環状オレフィンモノマーを開環メタセシス重合して得られる熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂を含み、封止材、プリプレグ、接着剤に使用される樹脂との十分な離型性を有するフィルムを提供する。
【解決手段】熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムを、環状オレフィンモノマー、極性基変性ハロゲン化炭化水素、必要に応じて熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含む重合性組成物を開環メタセシス重合して得る。重合性組成物は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して0.1〜6質量部の極性基変性ハロゲン化炭化水素を含むと共に、40質量部以下の熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ、LED等の半導体封止工程、多層プリント配線板製造時の積層熱プレス工程、フレキシブルプリント配線板製造時のカバーレイ貼付工程等の実装工程の歩留まり向上に寄与する熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップ、LED等の半導体素子の小型化及び薄型化が、携帯電話等のモバイル機器の小型化及び薄型化に伴い、進んでいる。これらの素子を封止している封止チップ形状も変化している。最近では、従来の表面実装用素子に見られる、リードフレームが封止チップから伸びるように配置された形状のチップは主流ではなくなり、端子が素子上に直接配置される形状であるチップ・サイズ・パッケージ(CSP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、クアッド・フラット・ノウリード・パッケージ(QFN)等の形状の実装用封止チップが主流になりつつある。これらの形状は、実装面積が小さいという利点を有し、機器の小型化に貢献している。更に、これらの形状の実装用封止チップは薄く、封止膜厚の薄化に貢献している。
【0003】
しかし、製品の割れ、封止材の端子部からのはみ出しが、これらの形状の実装用封止チップの製造工程で発生しやすく、製造歩留まりが低下する。離型フィルムによるアシスト成形を用いる封止方法が、歩留まり向上のため検討された(例えば、特許文献1及び2参照)。当該封止方法で使用される離型フィルムの材料であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)及びポリイミドは高価であり、当該離型フィルムは廃棄時に焼却処理できない。
【0004】
一方、メタセシス重合触媒とメタセシス重合可能なシクロオレフィン類を含む液状物をキャリアー上で重合させて得られる架橋樹脂フィルムが離型フィルムとして検討された(例えば、特許文献3参照)。しかし、当該フィルムは、封止材、プリプレグ、接着剤に使用される樹脂との十分な離型性を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−167841号公報
【特許文献2】特開2001−250838号公報
【特許文献3】特開2001−253934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近、環状オレフィンモノマーを開環メタセシス重合して得られる熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂を含み、封止材、プリプレグ、接着剤に使用される樹脂との十分な離型性を有するフィルムが希求されていたが、このようなフィルムは見出されていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、環状オレフィンモノマーを開環メタセシス重合して得られる熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂を含み、封止材、プリプレグ、接着剤に使用される樹脂との十分な離型性を有するフィルムとその製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、環状オレフィンモノマーを開環メタセシス重合して得られる熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂に加えて極性基変性ハロゲン化炭化水素を含有する熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂組成物からなるフィルムが、封止材、プリプレグ、接着剤に使用される樹脂との十分な離型性を有することを見出し、本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムとその製造方法を完成させるに至った。
本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、環状オレフィンモノマー、極性基変性ハロゲン化炭化水素、必要に応じて熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含む重合性組成物を開環メタセシス重合して得られ、重合性組成物は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して0.1〜6質量部の極性基変性ハロゲン化炭化水素を含むと共に、40質量部以下の熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含む。上記重合性組成物は、好ましくは、上記環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して5〜40質量部の熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含む。
【0008】
上記極性基変性ハロゲン化炭化水素は、好ましくは構造中にフッ素を有する。好ましい上記極性基変性ハロゲン化炭化水素は(メタ)アクリル変性ハロゲン化炭化水素である。更に好ましい上記極性基変性ハロゲン化炭化水素は(メタ)アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンである。特に好ましい上記極性基変性ハロゲン化炭化水素は炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマーで変性されたポリテトラフルオロエチレンである。
【0009】
好ましい上記環状オレフィンモノマーはノルボルネン系モノマーである。上記熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムの好ましい用途は半導体封止工程に用いられる離型フィルム及びプリント基板製造用の離型フィルムである。
【0010】
本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法は、環状オレフィンモノマー、極性基変性ハロゲン化炭化水素、必要に応じて熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含む重合性組成物を、重合触媒を含む組成物の存在下に開環メタセシス重合する工程を含み、重合性組成物は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して0.1〜6質量部の極性基変性ハロゲン化炭化水素を含むと共に、40質量部以下の熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含んでいる。
【0011】
本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法で使用される上記重合性組成物は、好ましくは、上記環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して5〜40質量部の熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含んでいる。
好ましくは、上記重合性組成物と上記重合触媒を含む組成物を支持体上に塗布し、開環メタセシス重合を上記支持体上で行う。好ましい上記重合触媒はルテニウムカルベン錯体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、封止材、プリプレグ、接着剤に使用される樹脂との十分な離型性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムの原料の1つである環状オレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。その具体例は、ノルボルネン系モノマー、単環環状オレフィン等である。好ましい環状オレフィンモノマーはノルボルネン系モノマーである。ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を含むモノマーである。ノルボルネン系モノマーの具体例は、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、テトラシクロドデセン類などである。これらは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、アリール基などの炭化水素基;カルボキシル基、酸無水物基などの極性基を置換基として含有し得る。
ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環の二重結合以外に、さらに二重結合を有していてもよい。離型フィルムの離型性の向上の観点から、好ましいノルボルネン系モノマーは、非極性の、すなわち炭素原子と水素原子のみで構成されるノルボルネン系モノマーである。
【0014】
非極性のノルボルネン系モノマーの具体例は、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンとも言う。)などの非極性のジシクロペンタジエン類;
【0015】
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチレンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキセニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンテニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−フェニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどの非極性のテトラシクロドデセン類;
【0016】
2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシル−2−ノルボルネン、5−シクロペンチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキセニル−2−ノルボルネン、5−シクロペンテニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンとも言う。)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセンとも言う。)などの非極性のノルボルネン類;
【0017】
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4,10−ジエン、ペンタシクロ[9.2.1.14,7.02,10.03,8]ペンタデカ−5,12−ジエン、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エンなどの五環体以上の非極性の環状オレフィン類などである。
【0018】
入手容易性とフィルムの耐熱性向上の観点から、好ましい非極性ノルボルネン系モノマーは、非極性ジシクロペンタジエン類、非極性テトラシクロドデセン類であり、より好ましい非極性ノルボルネン系モノマーは、非極性ジシクロペンタジエン類である。
【0019】
極性基を含むノルボルネン系モノマーの具体例は、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−メタノール、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、酢酸5−ノルボルネン−2−イル、5−ノルボルネン−2−メタノール、5−ノルボルネン−2−オール、5−ノルボルネン−2−カルボニトリル、2−アセチル−5−ノルボルネン、7−オキサ−2−ノルボルネンなどである。
【0020】
単環環状オレフィンの具体例は、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエン、及び置換基を有するこれらの誘導体である。
【0021】
これらの環状オレフィンモノマーは1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いられる。単環環状オレフィンの添加量は、環状オレフィンモノマーの全量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。単環環状オレフィンの添加量が多すぎると、フィルムの耐熱性が不十分となる場合がある。
【0022】
環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物からなる混合物を含む重合性組成物は、重合触媒を含む組成物の存在下に開環メタセシス重合される。重合触媒は、環状オレフィンモノマーを開環メタセシス重合させる。当該重合触媒は特定の触媒に限定されない。
【0023】
遷移金属原子を中心にして、イオン、原子、多原子イオン及び/又は化合物が複数結合してなる錯体が、重合触媒として用いられる。5族、6族及び8族(長周期型周期表、以下同じ)の原子が、遷移金属原子として使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、好ましい5族の原子はタンタルであり、好ましい6族の原子はモリブデン、タングステンであり、好ましい8族の原子はルテニウム、オスミウムである。
【0024】
好ましい重合触媒は、8族のルテニウム、オスミウムの錯体であり、特に好ましい重合触媒は、ルテニウムカルベン錯体である。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れるため、残留未反応モノマーが少ない架橋環状オレフィン重合体が生産性よく得られる。
【0025】
ルテニウムカルベン錯体の具体例は、触媒活性の観点から、以下の式(1)又は式(2)で表される錯体である。
【0026】
【化1】

【0027】
式(1)及び(2)において、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。X1及びX2はそれぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を示す。L1及びL2はそれぞれ独立して、中性電子供与性化合物を表す。また、R1とR2は互いに結合して、ヘテロ原子を含んでいてもよく、脂肪族環又は芳香族環を形成していてもよい。さらに、R1、R2、X1、X2、L1及びL2は、任意の組合せで互いに結合して多座キレート化配位子を形成していてもよい。
【0028】
本発明におけるヘテロ原子は、周期表15族及び16族の原子である。ヘテロ原子の具体例は、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、砒素原子(As)、セレン原子(Se)などである。カルベン化合物の安定性の観点から、好ましいヘテロ原子はN、O、P、及びSであり、特に好ましいヘテロ原子はNである。
【0029】
中性電子供与性化合物は、ヘテロ原子含有カルベン化合物とその他の中性電子供与性化合物に大別される。重合触媒の活性の観点から、好ましい中性電子供与性化合物は、ヘテロ原子含有カルベン化合物である。カルベン炭素の両側にヘテロ原子が隣接して結合しているヘテロ原子含有カルベン化合物が好ましく、カルベン炭素原子とその両側のヘテロ原子とを含んでヘテロ環が形成されているヘテロ原子含有カルベン化合物がより好ましい。カルベン炭素に隣接するヘテロ原子は、好ましくは嵩高い置換基を有している。
【0030】
好ましいヘテロ原子含有カルベン化合物の具体例は、以下の式(3)又は式(4)で示される化合物である。
【0031】
【化2】

【0032】
式(3)及び式(4)において、R3〜R6はそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20個の炭化水素基を表す。R3〜R6は任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
【0033】
前記式(3)又は式(4)で表される化合物の具体例は、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1−シクロヘキシル−3−メシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどである。
【0034】
前記式(3)又は式(4)で示される化合物のほかに、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3,4−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジヒドロチアゾール−2−イリデンなどのヘテロ原子含有カルベン化合物を用い得る。
【0035】
ヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子である。当該中性電子供与性化合物の具体例は、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネート類などである。好ましい中性電子供与性化合物は、ホスフィン類、エーテル類及びピリジン類であり、より好ましい中性電子供与性化合物はトリアルキルホスフィンである。
【0036】
前記式(1)及び式(2)において、アニオン(陰イオン)性配位子X1とX2は、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、その具体例は、弗素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、沃素原子(I)などのハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基などである。好ましい配位子ハロゲン原子であり、より好ましい配位子は塩素原子である。
【0037】
前記式(1)において、X2とL2が互いに結合して多座キレート化配位子を形成しているルテニウムカルベン錯体の例は、下式(5)で表されるシフ塩基配位錯体である。
【0038】
【化3】

【0039】
式(5)において、Zは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NR12、PR12又はAsR12を表し、R12は、R1およびR2で例示したものと同様である。
【0040】
式(5)中、R7〜R9は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基を表す。ヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基の具体例は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数2〜20のアルキニルオキシ基、アリールオキシ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、炭素数1〜20のカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホン酸基、アリールスルホン酸基、炭素数1〜20のホスホン酸基、アリールホスホン酸基、炭素数1〜20のアルキルアンモニウム基、アリールアンモニウム基等である。
これらのヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。置換基の例は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、アリール基である。1価の有機基が環を形成する場合、環は、芳香環、脂環及びヘテロ環のいずれであってもよい。
【0041】
式(5)中、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又はヘテロアリール基を表し、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。当該置換基の例は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、アリール基である。R10及びR11が環を形成する場合、環は、芳香環、脂環及びヘテロ環のいずれであってもよい。
【0042】
前記式(1)で表される錯体化合物の具体例は、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(3−フェニル−1H−インデン−1−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)[(フェニルチオ)メチレン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、ヘテロ原子含有カルベン化合物及び中性電子供与性化合物が各々1つ結合したルテニウム錯体化合物;
【0043】
ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、2つの中性電子供与性化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
【0044】
ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリドなどの、2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
【0045】
式(6)で表される、X2とL2が互いに結合して多座キレート化配位子を形成しているルテニウムカルベン錯体;などである。
【0046】
【化4】

【0047】
式(6)において、Mesはメシチル基を表す。R7及びR8は、それぞれ、水素原子又はメチル基であって、少なくとも一方はメチル基である。R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい1価の有機基を表す。なお、「1価の有機基」は、上述したR7〜R9と同様のものである。
【0048】
前記式(2)で表される錯体化合物の具体例は、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t−ブチルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリドなどである。
【0049】
最も好ましい錯体化合物は、前記式(1)で表され、かつ配位子として前記式(3)または(4)で表される化合物を1つ有するものである。
【0050】
これらのルテニウムカルベン錯体は、(a)Org. Lett., 1999年, 第1巻, 953頁、(b)Tetrahedron. Lett., 1999年, 第40巻,2247頁、(c)国際公開第2003/062253号などに記載された方法によって製造される。
【0051】
重合触媒の使用量は、(重合触媒中の金属原子:環状オレフィンモノマー)のモル比で、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。重合触媒の量が少なすぎると、重合反応率が低下して重合体中にモノマーが残留したり、架橋重合体の架橋度が低下して、得られるフィルムの耐熱性が低下したりするおそれがある。重合触媒の量が多すぎると、製造コストの上昇を招き、また反応速度が速くなりすぎて、後述する塊状重合時のフィルム成形が困難になる場合がある。
【0052】
重合触媒は、重合活性を制御し、重合反応率を向上させる目的で活性剤(共触媒)と併用され得る。活性剤の具体例は、アルミニウム、スカンジウム、スズ、珪素のアルキル化物、ハロゲン化物、アルコキシ化物及びアリールオキシ化物などである。活性剤の更なる具体例は、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド等のアルミニウム化合物;トリアルコキシスカンジウム等のスカンジウム化合物;テトラアルコキシチタン等のチタン化合物;テトラアルキルズズ、テトラアルコキシスズ等のスズ化合物;テトラアルコキシジルコニウム等のジルコニウム化合物;ジメチルモノクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラクロロシラン、ビシクロヘプテニルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のシラン化合物などである。
活性剤の使用量は、(重合触媒中の金属原子:活性剤)のモル比で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
【0053】
重合触媒は、重合活性を制御し、重合反応速度を調節する目的で重合調節剤と併用され得る。重合調節剤の具体例は、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタンなどのリン化合物;エーテル、エステル、ニトリルなどのルイス塩基等である。これらの使用量は、重合触媒1モルに対し通常0.01〜50モル、好ましくは0.05〜10モルである。
【0054】
本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法は、溶液重合法、塊状重合法のいずれでもよいが、溶媒除去の工程が不要で、重合と同時にフィルム形状に成形された樹脂組成物を得られるとの観点から、塊状重合法が好ましい。
【0055】
塊状重合法は、環状オレフィンモノマー及び極性基変性ハロゲン化炭化水素を含む重合性組成物を、重合触媒、必要に応じ用いられる添加剤の存在下に開環メタセシス重合してフィルム形状に成形する工程を含む。
環状オレフィンモノマーは開環メタセシス重合されて、環状オレフィン重合体が得られ、更に、当該環状オレフィン重合体は、開環メタセシス重合後または開環メタセシス重合と同時に、架橋されて架橋環状オレフィン重合体が得られると考えられる。
【0056】
環状オレフィン重合体の三次元架橋構造は、1,2−ジクロロベンゼンに対する溶解性により確認される。環状オレフィン重合体を1,2−ジクロロベンゼンに23℃で24時間浸漬させ、得られた溶液を80メッシュの金網でろ過したときの不溶分で表される架橋度は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上である。架橋度が低すぎると、所望の耐熱性と機械的強度が発現せず、未架橋成分が基板、金型、プレス装置等を汚染する恐れがある。
【0057】
本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムは極性基変性ハロゲン化炭化水素を含有する。極性基変性ハロゲン化炭化水素は、極性基を有する化合物で変性されたハロゲン化炭化水素化合物である。
【0058】
極性基は、炭素及び水素以外の原子を有する官能基であり、特定の官能基に限定されない。極性基の具体例は、カルボキシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のエステル基;水酸基;フォルミル基、アセチル基等のアシル基;メルカプト基;アミノ基;ヒドラジノ基等である。但し、本発明では、極性基は、ハロゲン基(ハロゲン原子)そのものではない。
ハロゲン化炭化水素化合物は、構造中にハロゲンを有する炭化水素化合物であり、特定の化合物に限定されない。ハロゲン化炭化水素化合物の具体例は、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化脂環式炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ハロゲン化ポリスチレン等である。
【0059】
好ましいハロゲンはフッ素である。好ましい極性基変性ハロゲン化炭化水素は、(メタ)アクリル変性ハロゲン化炭化水素であり、更に好ましい極性基変性ハロゲン化炭化水素は(メタ)アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンであり、特に好ましい極性基変性ハロゲン化炭化水素は炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマーで変性されたポリテトラフルオロエチレンである。
【0060】
炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマーは、炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレートを含む単量体をラジカル重合、イオン重合等の重合方法で重合して得られるポリマーである。ポリテトラフルオロエチレンを炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマーで変性する方法は公知であり、当該方法は、例えば、特開平11−124478号公報に開示されている。炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマーで変性されたポリテトラフルオロエチレンは市販されている。当該市販品の具体例は、三菱レイヨン(株)製メタブレンA−3000である。
【0061】
極性基変性ハロゲン化炭化水素の配合量は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して0.1〜6質量部である。好ましい当該配合量は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して1.0〜5.5質量部である。更に好ましい当該配合量は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して1.2〜5質量部である。
【0062】
本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、必要に応じて熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含有する。熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の具体例は、特開昭63−264646号公報、特開昭64−1705号公報、特開平1−168724号公報、特開平1−168725号公報などに開示されるノルボルネン環を有するモノマーの開環重合体の水素添加物;特開平6−136057号公報、特開平7−258362号公報などに開示されている環状オレフィン、環状ジエンの付加重合体の水素添加物などである。これらの熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物は市販されており、市販品の具体例は、日本ゼオン株式会社製ZEONEX(登録商標)、ZEONOR(ゼオノア:登録商標)、三井化学株式会社製APEL(登録商標)、APO(登録商標)、JSR(株)製ARTON(登録商標)、ポリプラスチック株式会社製TOPAS (登録商標)などである。これらのなかでも、フィルム成形性、耐薬品性などの観点からノルボルネン環を有するモノマーの開環重合体の水素添加物が好ましい。
【0063】
ノルボルネン環を有するモノマーは、ノルボルネン環を含むモノマーである。ノルボルネン系モノマーの具体例は上記されるとおりである。
【0064】
環状ジエンの具体例は、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエンなどの単環ジエン;前記ノルボルネン環を有するモノマーのうち不飽和結合を2個有するものである。
【0065】
さらに、上記の開環重合および付加重合いずれの場合も、それぞれの重合系に共重合可能な各種のモノマーを混合して共重合してもよい。共重合可能なモノマーの具体例は、上記ノルボルネン環を有するモノマー、α−オレフィン、環状オレフィン、環状ジエンの他に、ブタジエン、イソプレンなどの直鎖または分岐のジエン類である。重合はランダムであっても、ブロック型であっても、交互型であってもよく、また、付加重合で1,2−付加と1,4−付加がある場合どちらが主であってもよいし、ほぼ同じ割合であってもよい。
【0066】
熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の水素添加率は、耐熱劣化性、耐光劣化性などの観点から、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。水素添加の方法および触媒は公知のものである。
【0067】
好ましくは、触媒などの残査は水素添加反応後の溶液から公知の方法で除去または低減される。熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物は、触媒などを溶解した状態で含む溶剤を濾過法にて除去し、さらに加熱または真空加熱する方法や、沈殿凝集法で金属汚染物を除去した樹脂溶液を直接加熱または真空加熱して、溶剤を除去する方法などにより乾燥され、単離される。
【0068】
熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の数平均分子量は、トルエン溶媒によるGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)法で測定される、標準ポリスチレン換算にて求める値で10,000〜200,000、好ましくは20,000〜150,000、より好ましくは25,000〜120,000である。数平均分子量が小さすぎるとフィルムの機械的強度が劣り、大きすぎるとフィルム成形時の成形性が悪くなる。
【0069】
熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の配合量は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して40質量部以下である。好ましい当該配合量は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して5〜40質量部である。熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物は、フィルムの離型性を向上させる。熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の配合量が多すぎると、熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物が環状オレフィンモノマーに溶解されない。
【0070】
各種の添加剤を、各種の用途、目的に応じたフィルムの特性改質、機能付与、成形作業性の改善などを目的として、本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムに含有させられる。そのような添加剤の具体例は、酸化防止剤、充填材、消泡剤、発泡剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、難燃剤、湿潤剤、分散剤、離型滑剤、可塑剤などである。好ましくは、酸化防止剤を、架橋環状オレフィン重合体の耐久性および保存安定性を向上するため、含有させる。
【0071】
酸化防止剤の具体例は、パラベンゾキノン、トルキノン、ナフトキノン等のキノン類;ハイドロキノン、パラ−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ジ−t−ブチル・パラクレゾール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール等のフェノール類;ナフテン酸銅やオクテン酸銅等の銅塩;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムマレエート、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類;キノンジオキシムやメチルエチルケトオキシム等のオキシム類;トリエチルアミン塩酸塩やジブチルアミン塩酸塩等のアミン塩酸塩類である。これら酸化防止剤の種類及び量は、架橋環状オレフィン重合体の高温時の機械的特性、フィルム形成作業性、保存安定性等の条件により適宜選択される。フェノール類が、架橋環状オレフィン重合体との相溶性が高く、均等に分散され、フィルムの耐久性および保存安定性を向上させるため、好ましい。酸化防止剤は、1種類または複数併用して使用される。酸化防止剤の使用量は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対し通常0.001〜10質量部である。
【0072】
充填材の具体例は、シリカ、珪砂、ガラス粉、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレーなどの無機充填材;木粉、ポリエステルビーズ、ポリスチレンビーズなどの有機充填材である。充填材は、架橋環状オレフィン重合体の収縮率、弾性率、熱伝導率、導電性などの物性を向上させる。
充填材の粒径、形状、アスペクト比、品位などのグレードは、架橋環状オレフィン重合体の物性により、適宜決定される。これらの充填材の使用量は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対し、好ましくは5〜400質量部、より好ましくは10〜300質量部である。
【0073】
離型滑剤の具体例は、シリコーンオイル、ステアリン酸亜鉛等である。離型滑剤は、フィルムの成形性、離型性、ハンドリング性などを改良し、フィルムに潤滑剤特性などの機能を付与する。離型滑剤の使用量は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対し、好ましくは0.1〜200質量部である。
【0074】
上記環状オレフィンモノマー及び極性基変性ハロゲン化炭化水素を含む重合性組成物を、重合触媒を含む組成物及び必要に応じて用いられる添加剤の存在下に開環メタセシス重合する。重合触媒は、必要に応じて、少量の不活性溶剤に溶解又は懸濁して使用される。当該溶媒の具体例は、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;インデン、テトラヒドロナフタレンなどの脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素などである。好ましい溶媒は、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、および脂環と芳香環とを有する炭化水素である。重合触媒としての活性を低下させない液状の老化防止剤又は可塑剤を溶剤として用いてもよい。
【0075】
上記環状オレフィンモノマー、極性基変性ハロゲン化炭化水素、重合触媒を含む組成物及び必要に応じて用いられる添加剤を含む組成物の室温における粘度は、所望のフィルムの厚みにもよるが、通常3〜30,000Pa・s、好ましくは5〜500Pa・sである。上記組成物の粘度は極性基変性ハロゲン化炭化水素の種類および使用量により調整される。
【0076】
上記組成物を塊状重合してフィルム形状に成形する方法の具体例は、上記組成物を支持体上に注ぐか又は塗布し塊状重合する方法、上記組成物を型内で塊状重合する方法である。上記組成物を支持体上に注ぐか又は塗布し塊状重合する方法は、薄く均一なフィルムを連続的に製造できるので、より好ましい。
【0077】
樹脂、ガラス、金属など一般公知の素材が、上記支持体として選択される。樹脂の具体例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレートなどのポリエステル;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;ナイロンなどのポリアミド;ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂;であり、入手が容易なポリエステルが好ましい。支持体の好ましい形状は、材料が金属又は樹脂であればドラム又はベルトである。好ましい支持体は、入手が容易で安価な樹脂フィルムである。
【0078】
上記組成物を支持体へ塗布する方法は特に制限されない。当該方法の具体例は、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法などである。
【0079】
上記組成物を、必要に応じ重合触媒が活性を発現する温度まで加熱して塊状重合する。重合温度は、通常0〜250℃、好ましくは20〜200℃である。上記組成物の加熱方法は特に制約されない。当該加熱方法の具体例は、加熱プレート上で加熱する方法、プレス機を用いて加圧しながら加熱(熱プレス)する方法、加熱したローラーで押圧する方法、加熱炉を用いる方法などである。重合反応時間は、重合触媒の量および加熱温度により適宜決定されるが、通常1分間〜24時間である。
【0080】
環状オレフィン重合体は架橋される。架橋は重合後又は重合と同時に行われる。重合と同時に行う架橋は、より少ない工程で工業的に有利に本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムを得られるので、より好ましい。
【0081】
架橋方法の具体例は、(a)環状オレフィンモノマーの少なくとも一部として架橋性モノマーを用いて、これを重合させ三次元架橋構造を有する重合体を得る方法;(b)上記組成物に架橋剤を添加して塊状重合を行い、さらに重合と同時または重合後に架橋反応を行って架橋する方法;(c)環状オレフィン重合体に光または電子線を照射し、重合後に架橋反応を行って架橋する方法;である。これらの方法の2以上を併用してもよい。フィルムの物性制御のし易さと経済性の点から、(a)の方法が好ましい。
【0082】
炭素−炭素二重結合を2以上有する環状オレフィンモノマーが、(a)の方法に用いられる架橋性モノマーとして用いられる。当該環状オレフィンモノマー具体例は、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエンである。架橋性モノマーの使用量及び重合時の加熱温度により架橋密度を制御できる。架橋性モノマーの使用量は、フィルムの用途に応じて適正な架橋密度が様々であるため特に限定されない。架橋性モノマーの好ましい使用量は、環状オレフィンモノマー全量中の架橋性モノマーの割合で0.1〜100モル%である。
【0083】
公知の熱架橋剤及び光架橋剤が、(b)の方法に用いられる架橋剤として用いられる。好ましい熱架橋剤は、有機過酸化物、ジアゾ化合物、非極性ラジカル発生剤などのラジカル発生剤である。架橋剤の使用量は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。熱架橋剤を用いる場合の架橋を行う温度は、通常100〜250℃、好ましくは150〜200℃である。架橋する時間は特に制約されないが、通常数分間から数時間である。
【0084】
本発明における塊状重合および架橋は、好ましくは酸素および水の不存在下で行われる。当該塊状重合及び架橋方法の具体例は、(1)窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で塊状重合および架橋を行う方法(2)真空下で塊状重合および架橋を行う方法、(3)支持体上に塗布した上記組成物を樹脂フィルムなどで覆って密閉した状態で塊状重合および架橋を行う方法である。当該樹脂フィルムの具体例は、前記支持体として例示したものである。酸素または水の存在下で塊状重合および架橋を行うと、得られるフィルムの表面が酸化され、所望の離型性能を発揮することが困難となる場合がある。
【0085】
溶液重合によりフィルムを得る方法は以下のとおりである。まず環状オレフィンモノマーおよび重合触媒を公知の溶液重合法で重合して環状オレフィン重合体を得る。次いで、この環状オレフィン重合体、極性基変性ハロゲン化炭化水素、架橋剤及び必要に応じ用いられる添加剤を混合し、公知の成形法によりフィルムを成形する。成形後または成形と同時に、環状オレフィン重合体を架橋させて架橋環状オレフィン重合体を形成し、本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムを得る。使用される熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物、添加剤および架橋剤の種類および量、架橋方法は、前記塊状重合による方法と同様である。
【0086】
本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムの厚さは、用途に応じて適正値が様々であり、特に限定されないが、通常、0.5〜5,000μmであり、ハンドリング性の観点から、好ましい当該厚さは5〜500μmである。本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムの表面は、平滑であってもよいが、エンボス加工により凹凸形状を形成されていてもよい。
【0087】
有機物、無機物、金属などの異種素材よりなる層を、気相反応、コーティング、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、CVD、無電解メッキなど公知の表面処理技術を用いて、本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルム表面に形成してもよい。例えば、SiO2、MgF2、フッ素樹脂などの離型性を向上させる素材よりなる薄膜をフィルム表面層に設けたり、フッ素ガス、CF系プリカーサで表面処理を行い、フィルム表面をフッ素化できる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り質量基準である。
【0089】
各特性の測定及び評価は下記のとおりに行った。
(1)ポリテトラフルオロエチレン粉末の環状オレフィンモノマーへの分散性
表1及び表2に示される質量のポリテトラフルオロエチレン粉末及び環状オレフィンモノマーをガラス瓶に秤量し、ウォーターバス中で80℃で24時間攪拌し、更に当該ガラス瓶をウォーターバスから取り出して室温で24時間静置し、ポリテトラフルオロエチレン粉末の分散性を目視により下記基準に従って評価した。
A;ポリテトラフルオロエチレン粉末が均一に環状オレフィンモノマー中に分散している。
B−1;ポリテトラフルオロエチレン粉末が膨潤し、反応原液の粘度が大きすぎる。
B−2;ポリテトラフルオロエチレン粉末が均一に環状オレフィンモノマー中に分散せず、沈殿している。
【0090】
(2)熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の環状オレフィンモノマーへの溶解性
表1及び表2に示される質量の熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物及び環状オレフィンモノマーをガラス瓶に秤量し、ウォーターバス中で80℃で24時間攪拌し、熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を環状オレフィンモノマーに溶解させた。熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の環状オレフィンモノマーへの溶解性を目視により下記基準に従って評価した。
A;熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物が環状オレフィンモノマーに溶解した。
B;熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物が環状オレフィンモノマーに溶解しなかった。
【0091】
(3)耐プリプレグ剥離力
300mm×300mmに打ち抜かれたプリント基板積層用プリプレグ(パナソニック電工(株)製FR−4 R−1661(G)GBタイプ)の両面を、各実施例又は比較例の離型フィルムではさんで真空プレス中に挿入し、1.0MPa、180℃で70分間加熱硬化した後、40℃まで冷却して、得られた試料を真空プレスから取り出した。25mm×150mmの試験片を当該試料から切り出し、180度剥離力をJIS K 6854-2 に従って測定した。当該剥離力を耐プリプレグ剥離力とした。
【0092】
実施例1〜6及び比較例1〜5
表1及び表2に示される質量のポリテトラフルオロエチレン粉末、熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物及び酸化防止剤を、混合環状オレフィンモノマー(ジシクロペンタジエン及び対称型トリシクロペンタジエン)に分散又は溶解して反応原液を得た。次に、表1及び表2に示される質量の式(7)の構造を有するルテニウム触媒を上記反応原液に添加し、ラインミキサーで混合し、キャスト製膜を厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製キャリアフィルム上で25℃で行った。その後、加熱を窒素雰囲気下、200℃で5分間行い、離型フィルムを得た。結果を表1及び表2に示す。
【0093】
【化5】

【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
1)日本ゼオン(株)製ZEONOR1060R
2)三菱レイヨン(株)製メタブレンA−3000
3)旭硝子(株)製Fluon PTFE CD1
4)チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製IRGANOX1010
5)RIMTEC(株)製VC843
【0097】
実施例1〜6の離型フィルムの離型性は高かった。極性基変性ハロゲン化炭化水素を含まない比較例1の離型フィルムの離型性は高くなかった。極性基変性ハロゲン化炭化水素の配合量が多すぎた比較例2は、反応原液中のポリテトラフルオロエチレン粉末が膨潤し、当該反応原液の粘度が大きすぎてキャスト製膜できなかった。極性基変性ハロゲン化炭化水素を含まず、未変性ハロゲン化炭化水素を含む比較例3〜5は、使用された反応原液中のポリテトラフルオロエチレン粉末が分散せず、沈殿していたので、キャスト製膜できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、半導体装置の製造における半導体封止工程に好適に用いられる。本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムを用いて半導体封止を行う方法は特に限定されない。当該半導体封止方法の具体例は、(I)半導体チップを搭載したリードフレームと片側の金型内面との間に、リードフレーム基板と接触するように離型フィルムを介在させて樹脂封止する方法、(II)半導体チップを搭載したリードフレーム基板の、半導体チップ面と少なくとも片側の金型内面の間に、封止時にチップと金型の間に封止材料が充填されるように、離型フィルムを介在させて樹脂封止する方法、すなわち、離型フィルムを上金型、下金型内面の少なくとも一方の側に介在させる方法である。
更に、本発明の熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムは、プリント基板製造時及びフレキシブルプリント基板のカバーレイ貼付工程時の離型フィルムとして好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィンモノマー、極性基変性ハロゲン化炭化水素、必要に応じて熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含む重合性組成物を開環メタセシス重合して得られ、
重合性組成物は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して0.1〜6質量部の極性基変性ハロゲン化炭化水素を含むと共に、40質量部以下の熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含む、熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
【請求項2】
上記重合性組成物は、上記環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して5〜40質量部の熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含む、請求項1に記載されている熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
【請求項3】
上記極性基変性ハロゲン化炭化水素が構造中にフッ素を有する、請求項1又は2に記載されている熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
【請求項4】
上記極性基変性ハロゲン化炭化水素が(メタ)アクリル変性ハロゲン化炭化水素である、請求項1〜3のいずれか1項に記載されている熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
【請求項5】
上記極性基変性ハロゲン化炭化水素が(メタ)アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載されている熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
【請求項6】
上記極性基変性ハロゲン化炭化水素が、炭素数5〜30のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマーで変性されたポリテトラフルオロエチレンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載されている熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
【請求項7】
上記環状オレフィンモノマーがノルボルネン系モノマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載されている熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
【請求項8】
半導体封止工程に用いられる離型フィルムである、請求項1〜7のいずれか1項に記載されている熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
【請求項9】
プリント基板製造用の離型フィルムである、請求項1〜7のいずれか1項に記載されている熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルム。
【請求項10】
環状オレフィンモノマー、極性基変性ハロゲン化炭化水素、必要に応じて熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含む重合性組成物を、重合触媒を含む組成物の存在下に開環メタセシス重合する工程を含み、
重合性組成物は、環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して0.1〜6質量部の極性基変性ハロゲン化炭化水素を含むと共に、40質量部以下の熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含む、請求項1に記載されている熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項11】
上記重合性組成物が、上記環状オレフィンモノマー及び熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物の合計質量100質量部に対して5〜40質量部の熱可塑性環状オレフィン重合体水素添加物を含む、請求項10に記載されている熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項12】
上記重合性組成物と上記重合触媒を含む組成物を支持体上に塗布し、開環メタセシス重合を上記支持体上で行う、請求項10又は11に記載されている熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項13】
上記重合触媒がルテニウムカルベン錯体である、請求項10〜12のいずれか1項に記載されている熱硬化性架橋環状オレフィン樹脂フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2012−7117(P2012−7117A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145806(P2010−145806)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】