説明

熱硬化性樹脂の硬化率予測方法

【課題】実際の硬化特性により一致するモデルを用いることで、適切な温度と時間の組み合わせによる熱硬化性樹脂の加工条件が容易に得られるなど、熱硬化性樹脂の特性が容易に把握できるようにする。
【解決手段】熱硬化性樹脂の硬化率Pを、硬化速度常数K(K>0)と時間tを用いて以下の式(1),式(2),及び式(3)により求める。
P=1−exp{−(K・t)1/N}・・・(1)
K=α0exp{−QK/(kT)}・・・(2)
N=β0exp{−QN/(kT)}・・・(3)
なお、QKは、熱硬化性樹脂が硬化するための活性化エネルギーを示し、QNは(3)式における活性化エネルギーに相当し、Tは加えた熱の絶対温度、kはボルツマン常数である。また、α0は、熱硬化性樹脂の硬化のために有効な熱硬化性樹脂の分子同士の衝突の確率を示す頻度因子、β0は、(3)式における頻度因子に相当する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤や塗料などに用いられる熱硬化性樹脂の硬化率予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体などの電子部品実装やプリント配線板製造などでは、エポキシ樹脂を代表とする熱硬化性樹脂が多く用いられている。例えば、フリップチップ実装では、配線基板とこれに実装される半導体チップとの間に、アンダーフィルと呼ばれる熱硬化性樹脂が用いられている。熱硬化性樹脂は、加熱により硬化するプラスチックであり、鎖のように細長い高分子から枝状に出ている側鎖が,別の高分子の側鎖と結合する架橋反応が加熱によって進行し、高分子同士が3次元的に結合して硬化する樹脂である。エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂は、3次元の架橋構造を持つことから,熱可塑性樹脂に比べると耐熱性や耐薬品性などの物性に優れている(非特許文献1,2参照)。
【0003】
【非特許文献1】森 寛爾,「粘弾性測定による塗膜硬化解析」,豊田中央研究所R&Dレビュー,Vol.29,No.2,pp56−62,1994
【非特許文献2】エポキシ樹脂技術協会編、「総説エポキシ樹脂」、応用編II、pp.6−9、2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特徴を有する熱硬化性樹脂は、利用される加工プロセスの中で加熱硬化させて使用している。この加熱硬化条件は、熱硬化性樹脂を提供している樹脂材料メーカが硬化物物性として保証可能な推奨条件を基本とし、この推奨条件に多少の経験的知見を付加して条件設定することが多い。しかし、硬化工程をより積極的に制御して低温化又は短時間化あるいはこれらを組み合わせた多段硬化など、より最適な加工プロセスを開発する上では、樹脂材料毎の硬化挙動を適切に把握することが求められる。
【0005】
例えば、従来より、熱硬化性樹脂の硬化率を時間の関数で示したKJMA(Kolmogorov-Johnson-Mehl-Avrmi)モデルがあり、これにより、硬化開始より所定時間後の硬化状態を推定することが可能である。KJMAモデルでは、「硬化率P=1−exp(−Ztm)」により、硬化率Pを常数Zを用いて時間tの関数で示している。しかしながら、KJMAモデルを用いると、推定される硬化特性は、図27の実線(曲線)に示すようになるが、これが、黒三角,黒丸,黒四角で示す実際の硬化特性とあまり一致しないという問題があった。なお、図27では、上記式中の指数mを一定として扱うため、各反応温度毎の解析で得られた値の平均値を用いて推定した結果を示している。また、黒三角は、反応温度180℃における実際の硬化特性を示し、黒丸は、反応温度150℃における実際の硬化特性を示し、黒四角は、反応温度120℃における実際の硬化特性を示している。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、実際の硬化特性により一致するモデルを用いることで、適切な温度と時間の組み合わせによる熱硬化性樹脂の加工条件が容易に得られるなど、熱硬化性樹脂の特性が容易に把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る熱硬化性樹脂の硬化率予測方法は、所望とする熱硬化性樹脂に所定の熱を加えたときの所定時間後の硬化率を予測する熱硬化性樹脂の硬化率予測方法において、所定時間t後の硬化率Pを、P=1−exp{−(K・t)1/N}よりなる第1の式と、第1常数QK,第2常数α0,加えた熱の絶対温度T,及びボルツマン常数kを用いて第1の式のKを規定するK=α0exp{−QK/(kT)}よりなる第2の式と、第3常数QN,第4常数β0,加えた熱の絶対温度T,及びボルツマン常数kを用いて第1の式のNを規定するN=β0exp{−QN/(kT)}よりなる第3の式とにより予測するようにしたものである。この方法では、温度依存性を考慮したNの近似値を求め、この値を用いてKを算出する。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、P=1−exp{−(K・t)1/N}よりなる第1の式のNを、第3常数QN,第4常数β0,絶対温度T,及びボルツマン常数kを用いてN=β0exp{−QN/(kT)}より規定するようにしたので、適切な温度と時間の組み合わせによる熱硬化性樹脂の加工条件が容易に得られるなど、熱硬化性樹脂の特性が容易に把握できるようになるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。本発明では、熱硬化性樹脂に所定の熱を加えたときの所定時間後の硬化率Pを、硬化速度常数K(K>0)と時間tを用いて以下の式(1),式(2),及び式(3)により求めるようにした。
【0010】
P=1−exp{−(K・t)1/N}・・・(1)
K=α0exp{−QK/(kT)}・・・(2)
N=β0exp{−QN/(kT)}・・・(3)
【0011】
ここで、式(1)における指数N(N>0)は、ワイブル(Weibull)モデルにおける形状因子m(又はKJMAモデルにおけるAvrami常数m)の逆数であり、近似的には反応次数に相当する値(概ね0.5≦N≦1.2の場合)を示す常数である。また、式(1)における硬化速度常数K及び常数Nは,アレニウス(Arrhenius)型の温度依存性を持つと仮定して、式(2)及び式(3)で示すものとした。ここで、QKは、熱硬化性樹脂が硬化するための活性化エネルギーを示す常数(第1常数)であり、QNは式(3)における活性化エネルギーに相当する常数(第3常数)、Tは加えた熱の絶対温度、kはボルツマン常数である。また、α0は、熱硬化性樹脂の硬化のために有効な熱硬化性樹脂の分子同士の衝突の確率を示す頻度因子(第2常数)であり、β0は、式(3)における頻度因子に相当する常数(第4常数)である。なお、硬化速度常数K及頻度因子びα0は[時間-1]の次元を持ち、常数N及び常数β0は無次元である。また、一般にQK>0であるが、常数QNは主にゼロに近い正又は負の値を示す。
【0012】
例えば、150℃で30分間加熱することで99%硬化し、この硬化温度(150℃)における常数Nが0.80,活性化エネルギー(常数)QKが0.80eV,常数QNが0.30eVである熱硬化性樹脂について、加熱の時間と硬化率との関係を式(1)により求めると、図1に示すような硬化率曲線が得られる。このように表すことで、化学的反応率と機械的硬化率の違いは、常数Nの違いで総括的に表現できる。またn乗モデルとの比較より常数Nが小さいほど分子内の架橋点(反応基)数が多いなどの反応次数に関する情報や、KJMAモデルとの比較より常数Nが小さいほど硬化物は3次元的成長を行うなど、硬化過程の固相成長に関する幾何学的情報が得られる。なお、化学的反応率,n乗モデル,及びKJMAモデルについては、以降に詳述する。
【0013】
ここで、各常数の決定について説明する。上記式(1)の両辺の対数を2回とって整理すると、以下の式(4)で示されるようになる。
【0014】
【数1】

【0015】
式(4)は、縦軸にln[−ln(1−P)]、横軸にlntをとってグラフ化すると、傾き1/Nの直線になることを示している。従って、実験を行った種々の反応温度毎に各々の反応温度における経過時間t毎の硬化率Pの実験値Pを用い、式(4)から得られる値を上述した定義の縦軸と横軸を用いたグラフにプロットし、最小2乗法で近似直線を求め、求めた近似直線の傾きから、各反応温度における常数Nの値(実験値)を求めることができる。
【0016】
例えば、対象の熱硬化性樹脂を所定の温度で加熱して完全硬化状態とし、この状態における剪断強度を剪断強度試験器で測定し、測定された剪断強度S0を硬化率99%とする。次に、この熱硬化性樹脂に、例えば、反応温度100℃を時間t1加えたときの剪断強度S1を剪断強度S0で除することで、反応温度100℃を時間t1加えたときの実験値P1を求めることができる。同様にして、反応温度100℃を時間t2加えたときの実験値P2、反応温度100℃を時間t3加えたときの実験値P3・・・を求め、得られた実験値P1,P2,P3,・・・を用いて式(4)の左辺を時間tの対数に対してプロットして近似直線を求め、この傾きから反応温度100℃における常数Nの実験値を求めることができる。これらを、反応温度110℃、反応温度120℃、反応温度130℃・・・と、各反応温度毎に行う。
【0017】
なお、上述では、剪断強度により硬化率の実験値を求めるようにしたが、引張り強度試験器により得られる引張り強度、粘弾性測定装置により得られる粘弾性、示差熱走査型熱量計により得られる熱量、フーリエ変換赤外分光光度計により測定される反応基のピークの状態(減小)により、硬化率の実験値を求めるようにしても良い。
【0018】
次に、式(3)の両辺の対数をとり整理すると以下の式(5)で示されるようになる。
【0019】
【数2】

【0020】
式(5)は、縦軸に各温度毎に求めた常数Nの対数lnN,横軸に各反応温度の絶対温度の逆数1/Tをとってグラフ化すると、切片がlnβ0で傾き−QN/kの直線になることを示している。従って、各反応温度における常数Nの実験値を用い、式(5)から得られる値を上述した定義の縦軸と横軸を用いたグラフにプロットし、最小2乗法で近似直線を求め、求めた近似直線の傾きと切片より、常数QN及び常数β0を求めることができる。さらに、ここで求めた常数QN及び常数β0を用い、上記式(5)より各反応温度毎の常数Nの近似値を求めておく。
【0021】
次に、再度式(1)を用い、この両辺の対数をとって整理すると、以下の式(6)で示されるようになる。
【0022】
【数3】

【0023】
式(6)は、縦軸に−ln(1−P)、横軸にt1/Nをとってグラフ化すると、傾きK1/Nの直線になることを示している。従って、実験を行った各反応温度毎に、各々の反応温度における経過時間t毎に硬化率Pの実験値を用い、式(6)から得られる値を上述した定義の縦軸と横軸を用いたグラフにプロットし、最小2乗法で近似直線を求め、求めた近似直線の傾きより硬化速度常数Kを求めることができる。なお、これらのことにより求めた硬化速度常数Kは、実験値Pと常数Nの近似値より求めた第1次的な近似値となる。なお、上記式(4)から常数Nを求めた段階で、同様に切片からも硬化速度常数Kを求めることができるが、この段階の常数Nは、近似値を求める前の値であるため、硬化速度常数Kの値に影響してバラツキの多い数値となる。このため、先ず、他の反応温度のデータを含めて温度依存性を考慮した常数Nの近似値を求め、この値を用いて硬化速度常数Kを算出する方が、より確からしい値を得ることができる。
【0024】
次に、式(2)の両辺の対数をとり整理すると以下の式(7)のようになる。
【0025】
【数4】

【0026】
式(7)は、縦軸に各温度毎に求めた硬化速度常数Kの対数lnK、横軸に絶対温度の逆数1/Tをとってグラフ化すると、切片がlnα0で傾き−QK/kの直線になることを示している。従って、上記式(6)より求めた各反応温度における硬化速度常数Kを用いて上述した定義の縦軸と横軸を用いたグラフにプロットし、最小2乗法で近似直線を求め、求めた近似直線の傾きと切片より、活性化エネルギーQKと頻度因子α0とを求めることができる。なお、ここで求めた活性化エネルギーQKと頻度因子α0を用いて式(7)より求めた硬化速度常数Kが、各温度における最終的な近似値となる。
【0027】
上述した式(4)〜式(7)を用いた手順により各常数(QK,QN,α0,β0)の統計的な近似値を求め、これらにより任意の反応温度における硬化速度常数Kと常数N及び硬化率Pを求めることができる。
【0028】
次に、硬化率曲線の算出について、より具体的に説明する。以下では、住友スリーエム株式会社製の接着フィルム「スーパーエポキシテープNo.1520」を例に、同社より公開されている接着強度データを用い、各常数の抽出と硬化率曲線の作成とを行う例を示す。公開されている接着強度データは、図2に示すように、接着強度と硬化時間の関係を示すグラフである。これより数値を読み取り、180℃・30分の硬化処理における強度を硬化率99.9%と仮定し、図3及び以下の表1に示すように、各温度と時間における強度データを比率へと換算する。
【0029】
【表1】

【0030】
次に、表1に示すデータを用い、図4に示すように、ln[−ln(1−P)]を縦軸とし、lntを横軸としたグラフにプロットし、各温度毎に最小2乗法で近似直線を求め、求めた近似直線の傾きの逆数より常数Nの実験値を求める。これにより、常数Nは、120℃,150℃,180℃の各温度に対して、各々N=0.32,0.49,0.82となり、温度に対して比較的大きな依存性を示すことが判る。
【0031】
次に、上述のようにして求めた常数Nを用い、図5に示すように対数lnNを縦軸とし、絶対温度の逆数1/Tを横軸としたグラフにプロットし、最小2乗法で近似直線を求め、求めた近似直線の傾き−QN/kより活性化エネルギーQN、切片lnβ0より頻度因子β0を求める。これにより、常数Nがアレニウス型の温度依存性に従っていると仮定した場合の近似値として任意の温度における常数Nを求めることができる。なお、具体的に求めた数値は以下の表2に示すとおりである。
【0032】
【表2】

【0033】
次に、上述したことにより求めたアレニウス型の温度依存性に従った常数N(表2参照)を用い、図6に示すように−ln(1−P)を縦軸とし、t1/Nを横軸としたグラフにプロットし、最小2乗法で原点を通る近似曲線を求め、求めた近似曲線の傾きK1/Nより硬化速度常数Kを求める。なお、図6は、グラフ表示の見やすさを考慮して両対数グラフとして示しているため、切片がK1/Nとなる。これは、実質的には、式(4)において、横軸を1/N(lnt)としたグラフにプロットし、切片より1/N(lnK)を求めることと同様であるが、最小2乗法で近似直線を求める際に、原点を通る直線と仮定した方がより容易に確からしい近似解が得られるからである。ここで求めた硬化速度常数Kは、120℃,150℃,180℃に対して、各々K=4.09×10-2,9.28×10-2,3.04×10-1となり、温度に対して依存性を示すことが判る。
【0034】
次に、上述したことにより求めた硬化速度常数Kを用い、図7に示すように対数lnKを縦軸とし、絶対温度の逆数1/Tを横軸としたグラフにプロットし、最小2乗法で近似直線を求め、求めた近似曲線の傾き−QK/kより活性化エネルギーQK,切片lnα0より頻度因子α0を求める。これにより、常数Nがアレニウス型の温度依存性に従っていると仮定した場合の近似値として、任意の温度における硬化速度常数Kを求めることができる。なお、具体的に求めた数値は以下の表3に示すとおりである。
【0035】
【表3】

【0036】
以上に説明したことにより求めた各常数を用いて硬化曲線を描き、図3に示した硬化率データと比較した結果を図8及び図9に示す。図8は、線形表示であり、図9は対数表示である。図8及び図9に示すように、120℃,20分の値が、曲線からやや外れるが、他のプロットはほぼ曲線に従った硬化率を示しており、この接着フィルムの硬化特性は、本発明に係る式(1),(2),(3)によるモデルによって近似可能であることが判る。
【0037】
なお、上述した各式を用いて熱硬化性樹脂の硬化率を求める場合に、以下の点に注意を要する。
(1)常数Nの温度依存性は、必ずしもアレニウス型であるとは限らない。従って、実測挙動と理論モデルを比較することで樹脂材料の適切な硬化温度帯を考察することが望ましい。
(2)常数Nが温度によって変化するということは、温度差が小さければ異なる温度の曲線が、例えば、95%以上(m>0)の高硬化率又は5%以下(m<0)の低硬化率の範囲など、いずれかの時点で交差して硬化率が逆転する場合があることを意味している。このような場合には、この現象を無視するか又は実測値(時間又は硬化率)に対して補正項を導入することが必要になる。
(3)測定の初期状態で硬化率が明らかにゼロではない場合には、実測値t’に対してt=t’−t0となる位置因子t0を導入する、又は実測硬化率P’に対してP=(1−P0)P’+P0となる初期硬化率P0を導入するなどの工夫が必要となる場合がある。しかしこれらの補正項は計算では求められず、理論曲線と実測値のズレをみて調整する必要があるので扱いには注意を要する。
(4)実験データから硬化率を求めるには、全ての温度帯におけるデータの最大値を99.0%などに仮定して個々の比率を求める方法が良いと考えられるが、最大値が温度によって大きく変わる場合には、その最大強度の定義の仕方に考察を要する。
【0038】
ここで、従来よりあるモデルを用いた解析シミュレーションと、上述した本願発明との比較について説明する。前述したように、従来より熱硬化性樹脂の硬化率を時間の関数で示したKJMAモデルがあり、「硬化率P=1−exp(−Ztm)」により、硬化率Pを常数Zを用いて時間tの関数で示している。
【0039】
この式で示す指数m(常数m:本発明に係るモデルにおける1/N)は、温度依存性を考慮していないため、複数の温度で実験を行う場合には、各反応温度毎にある具体的な常数mの値を用いた硬化モデル式を、各々作成する必要がある。また、常数Zは、速度常数に対応するためにアレニウス型の温度依存性を持つものと推定されるが、上記の式から判るように、常数Zの次数が1/mであるから、常数mが温度に伴って変化すると、単位系の次元自体が温度毎に異なるという不具合が生じる。この結果として、常数Zの温度依存性が、アレニウス型で近似できなくなる。従って、KJMAモデルは、常数mに温度依存性がある材料の硬化反応の解析には適していないものと考えられる。
【0040】
例えば、前述した接着フィルムの硬化率のデータを上記KJMAモデルで解析すると、図27に示したような硬化率曲線となり、実際とは明らかに異なる曲線になる。これは、使用するデータを「硬化率P=1−exp(−Ztm)」の式に基づいて各温度毎に得られた速度常数Zを、絶対温度の逆数で整理すると、直線から外れた曲線となるにもかかわらず、常数Zがアレニウス型の温度依存性を持つと仮定して全温度における近似曲線を統一的に求めているからである。
【0041】
例えば、図2に示した接着フィルムのデータを用いて従来モデルとの比較を行うと、次に示すようになる。
【0042】
先ず、1次反応モデルについて説明する。上記接着フィルムの硬化が1次反応と仮定した場合の以下の式(8)で示す速度式(指数分布関数と同等)を用いた解析で、本発明に係るモデルのN=1に相当する解析方法であり、速度常数は式(2)と同様なアレニウス型の温度依存性を持つものと仮定する。
【0043】
P(t)=1−exp(−K・t)・・・(8)
【0044】
この場合、図10に示すように、硬化率が低いデータでは、線で示す実験データから大きく外れ、明らかにモデルが一致していないことが判る。なお、図10(a)は、線形表示、図10(b)は、対数表示である。
【0045】
次に、KJMAモデルについて説明する。KJMAモデルでは、「硬化率P=1−exp(−Ztm)」の式を用いるが、式中の指数m(常数m)は個々の温度毎に得られた解析値を用いる解析法で、速度常数Zはアレニウス型の温度依存性を持つものと仮定する。この方法では、各温度の実験データの整理には適用可能であるが、他の温度の常数mを予測することができず、常数mは各温度毎に異なる値を用いる。このモデルによる解析では、図11に示すように、常数mに実験データの解析値を用いるので、各温度毎には曲線の傾きはよく反映されるが、速度常数Zにアレニウス型で近似した値を使用しているため、実験データから外れる部分がある。
【0046】
次に、塗料の粘弾性変化による機械的硬化曲線(塗膜硬化解析)に適用した場合について説明する。自動車,建材,各種用具などに用いられる熱硬化性樹脂塗料を用いた塗膜の硬化挙動は、硬化温度や硬化時間を予測して加工仕様を決定する上で把握しなければならない特性である。このような塗膜硬化解析に、本発明に係る熱硬化性樹脂の硬化率予測方法を適用した場合について説明する。
【0047】
具体的な例として、非特許文献1に示されているポリエステル/メラニン樹脂における110℃から160℃の硬化測定データに基づき、本発明に係る硬化モデルを用いて解析を行う。なお、上記文献では、この硬化を1次反応速度式に位置因子を導入した実験式で、各々の温度毎にカーブフィッティングを行っているが、反応速度常数(硬化速度常数)の温度依存性は120℃以上でアレニウス型に従い、これ以下では直線から外れることが示されている。
【0048】
先ず、上記文献では、専用に開発された測定装置を用いて塗膜硬化挙動を粘弾性として測定し、これを比率として規格化している。この比率は、機械的硬化率Pと等価と考えると、図12に示すように表すことができる。このデータをもとに、前述した本発明の方法による手順と同様に本発明に係るモデルを用いて解析した結果の硬化率曲線を図13に示し、反応速度常数の温度依存性を図14に示す。また、この解析から得られた各常数は、以下の表4に示すとおりである。
【0049】
【表4】

【0050】
また、上記の解析結果との比較として、位置因子による補正を含まない最も基本的な1次反応モデルを用い、かつ、135℃,150℃、160℃における反応速度常数の温度依存性が、このまま120℃及び110℃まで適用できるものと直線近似した場合の硬化挙動(硬化率曲線)を図15に示し、反応速度常数の温度依存性を図16に示す。
【0051】
図13〜図16による比較から、本発明に係るモデルを用いれば、位置因子による補正を行う必要がなく、極めて単純な4個の常数(QK,QN,α0,β0)で実験を行った全ての温度帯で、硬化挙動を近似できていることが判る。これらの結果より、上記塗膜の硬化挙動は、常数Nが110℃から160℃の範囲で0.44から1.07まで変化しており、常数Nと反応次数との相関から考察すれば、低温では低次反応であるが、高い温度ほど反応次数が増加し、150℃から160℃の付近では、1次反応に見えることを示している。
【0052】
なお、従来よりあるKJMAモデルを用いて常数mを表4に示す常数Nの逆数の平均値(m=1.85)を一律に用いた解析を行うと、図17に示すようになり、120℃付近では比較的実際の状態とよく一致しているが、全温度帯では、ほとんどがプロット(実際の状態)と一致していない。このように、実際の材料を測定したデータでは、1次反応又はこれを拡張したn次反応速度式のような指数部を固定値としたモデル式では近似できない場合が多く、このような材料は指数部に温度を変数とする関数を用いた、本発明に係るモデルが適していることが判る。
【0053】
次に、エポキシ系のアンダーフィル樹脂に、本発明を適用した場合について説明する。図18及び以下の表5は、エポキシ系アンダーフィル樹脂の1種について、示差熱走査型熱量計による化学的反応率を、本発明に係るモデルによって解析した結果である。この例では、低温の場合には、反応率が概ね90%で止まってしまう硬化特性を持っているものと考えられ、本発明に係るモデルで解析する場合には、90%までの各温度4点を用いて各常数を抽出して反応率曲線を描いた。
【0054】
【表5】

【0055】
上記の例では、図19(a)に示すように、硬化速度常数Kの温度依存性は、アレニウス型によく従い、常数Nの温度依存性は、図19(b)に示すように、アレニウスプロットの直線性には乏しい。しかしながら、図18に示す本発明の熱硬化性樹脂の硬化率予測方法による反応率曲線によれば、反応率が90%以下の領域では、全般によく近似できている。
【0056】
なお、低温における反応率が90%程度で停止してしまうような硬化は、低温で分子の移動性が乏しい状態では、3次元網目構造が形成されていく過程で未反応基が取り残される現象によるものと推定される。このように、未反応基が取り残された場合には、イオン性不純物濃度が比較的高くなり、また、水酸基が多く残れば吸水率や誘電率に影響を与える可能性があり、硬化物性としては好ましくない。
【0057】
以上に説明したように、本発明に係るモデルで予想される反応率と実際の反応率とを比較することで、適用可能な硬化温度の下限を定量的に示すことにも、本発明の熱硬化性樹脂の硬化率予測方法が応用可能と考えられる。また、上述した式(4)〜式(7)を用いた手順により求めた各常数(QK,QN,α0,β0)を、対象となる熱硬化性樹脂の物性値として用いることもできる。例えば、未知の材料に対して上述した式(4)〜式(7)を用いた手順により各常数(QK,QN,α0,β0)を求め、求めた各常数を、すでに既知となっている材料の物性値としてある各常数と比較することで、未知の材料の定性(同定)を行うことができる。
【0058】
また、各常数の算出は、式(4)〜式(7)を用いた各ステップの手順をプログラムとしてコンピュータにより処理させることで実施できる。例えば、図20に示すように、演算処理部2001と、主記憶部2002と、外部記憶部2003と、入力部2004と、表示部2005と、プリンター2006とを備えたコンピュータを用いればよい。
【0059】
このコンピュータにおいて、例えば、磁気記録装置である外部記憶部2003に、入力された反応温度と、この反応温度における複数の実験値Pと加熱時間tとの組のデータにより、複数の「ln[−ln(1−P)]」と「lnt」との組を算出し、式(4)の関係より、最小2乗法により1/Nを求め、求めた1/Nの逆数を求めて常数Nとし、これらを各反応温度毎に繰り返して各反応温度毎に常数Nを算出するステップ1と、ステップ1で求めた各常数Nの実測値を用い、式(5)の関係より、最小2乗法により常数QN及び常数β0を求めるステップ2と、ステップ2で求めた常数QN及び常数β0を用いて式(5)より各反応温度毎の常数Nの近似値を求めるステップ3と、入力された複数の実験値P及び加熱時間tの組のデータとステップ3で求めた常数Nの近似値とを用い、式(6)の関係より、最小2乗法により、各反応温度毎に硬化速度常数Kを求めるステップ4と、ステップ4で求めた各反応温度毎の硬化速度常数Kを用い、式(7)の関係より、活性化エネルギーQKと頻度因子α0とを求めるステップ5とを少なくとも備えたプログラムなどが記憶されている。また、ステップ5で求めたQKとα0を用いて式(7)より硬化速度常数Kを求めてこれを各反応温度における最終的な近似値とするステップが、このプログラムに含まれていても良い。
【0060】
このように外部記憶部2003に記憶されているプログラムが、演算処理部2001により、主記憶部2002に展開して実行され、この実行の結果が表示部2005にリアルタイムに表示され、また、プリンター2006により印刷出力される。また、処理結果は、外部記憶部2003に記憶される。また、演算処理に必要な反応温度、複数の実験値Pと加熱時間tとの組などの情報(データ)は、操作者の操作により入力部2004より入力され、主記憶部2002に一時記憶され、また、外部記憶部2003に記憶される。これらの記憶された実験値などのデータを用い、主記憶部2002に展開されたプログラムを実行することで、演算処理部2001は、各常数(QK,QN,α0,β0)を算出する。
【0061】
また、算出された常数(QK,QN,α0,β0)を、外部記憶部2003に記憶されているすでに求められている各常数(QK,QN,α0,β0)と熱硬化性樹脂との組のデータベースと比較し、一致する熱硬化性樹脂の情報を検索して出力させるプログラムを備えるようにしても良い。このプログラムが、演算処理部2001に実行されることで、入力された情報をもとに、熱硬化性樹脂の定性情報が得られる。
【0062】
ところで、上記接着フィルムやアンダーフィル樹脂などの各種樹脂について、ダイシェアテストなどの機械的強度測定方法によって硬化因子を解析すると、硬化速度常数Kと常数Nの温度依存性(活性化エネルギー)の傾向は、ほぼ無関係であることが判明している。この調査において、常数Nと温度依存性については、常数Nが小さくなるに従って、常数QNが徐々に減少して正負の符号が逆転する。従って、通常は、温度が高いほど対数表示した曲線の傾きは緩やかになるが、常数Nが元々小さくなる急峻な反応を行う樹脂では、温度が高くなるに従い傾きがさらに急峻になる逆の傾向に向かうことも判明している。
【0063】
また、KJMAモデルで解析した場合には、活性化エネルギーQZが材料毎に大きく異なって見えることが多くみられたが、これは、常数Nの影響であることが判明している。さらに、活性化エネルギーQKと常数Nとの関係に関しては、常数Nとはほぼ無関係に、活性化エネルギーQKが0.5eVと1.1eV近辺の値を示す2つのグループに分類されることも判明している。なお、活性化エネルギーが小さいと温度変化に対して敏感に反応速度が変化することを意味しており、材料メーカが低温(−20℃以下)での保存を推奨しているような材料は、活性化エネルギーが小さく、逆に、常温又は10℃以下での保存でよい接着フィルムなどでは、活性化エネルギーが大きい傾向が見られる。
【0064】
ところで、前述した熱硬化性樹脂の硬化率予測方法は、熱硬化性樹脂の硬化挙動を接着強度などの機械的硬化率を指標として把握するために、硬化率を温度と時間の関数として表現できる反応速度論的硬化モデルを検討の結果、得られたものである。この検討において、発明者は、ワイブル(Weibull)型累積分布関数と同様なKJMAモデルを基本とし、この形状因子と尺度因子の温度依存性を加味した新たなモデルによって熱硬化性樹脂の硬化率を近似的に予測できることを見出した。
【0065】
以下、より詳細に説明する。先ず、熱硬化性樹脂の反応機構について説明すると、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂は、エポキシ基を持つ分子の分子鎖生長だけが行われる反応率30%以下の第1段階(A Stage)、生長した直鎖状高分子のエーテル側鎖による架橋反応が起こり始める反応率50〜60%の第2段階(B Stage)を経て、3次元架橋反応が盛んに起こり網目状の強固な結合により硬化する第3段階(C Stage)にいたるとされている(非特許文献2参照)。
【0066】
この場合、接着強度や弾性率は、第1段階ではほとんど上昇せず、第2段階以降で徐々に発現し、第3段階で所定の硬化物物性が得られる。従って、図21に示すように、示差熱走査型熱量計(Differential Scanning Caloriemeter、以降「DSC」と記す)などで測定した化学的な反応率と、ダイシェア試験などで得られる機械的な強度を指標とする硬化率とは、異なる上昇曲線を描くことになる。この曲線は、横軸に時間の対数、縦軸に反応率又は硬化率をとるとシグモイド(Sigmoid)曲線と呼ばれるS字曲線状となり、この曲線を数式化(関数の特定)することで、任意の温度と時間における反応率又は硬化率を求めることができるようになる。さらに、曲線を数式化した関数の係数(因子)を抽出することで、樹脂の硬化特性を数種類の数値データに置き換えて極めてシンプルに記述できることになる。
以下、化学反応速度論と確率密度関数等の信頼性工学との類似性、幾何学的核成長を考慮した等温結晶化理論など踏まえ、上述した曲線の数式化について述べる。
【0067】
1.0 化学反応速度論からのアプローチ
1.1 1次反応モデルと指数分布
複雑な熱硬化性樹脂の反応モデルを論じる前に、先ず、単純な化学反応における反応速度の基本的な考え方について解説する。例えば、図22に示すように、ある瞬間において10個の未反応(丸)、3個の反応済み(四角)の状態から単位時間内に新たに2個が反応(六角)して、8個の未反応、5個の反応済み状態になる現象において、これまでもこの先も「新たに反応をする数(六角)」が「未反応数(丸)によって決まる」というルールに従ってっていると仮定する。
【0068】
次に、このルールが「未反応数の一定割合が反応する。(比例常数Kとの掛け算)」となることを仮定すると今回の反応は2個(=10個×K)なのでK=0.2となる。Kは常に一定なので、同様に次の単位時間では(10−2)個×K(=0.2)=1.6個、この次の単位時間では(10−2−1.6)個×0.2=1.28個・・となり単位時間に反応する数は減ってくる。しかし、反応済みの量は、勢いは衰えるものの3+2+1.6+1.28個・・・と増えていく。
【0069】
以上のことをより一般的に表現すると次のとおりとなる。
「物質Aから何らかの反応で物質Bが生成される場合、物質Aの初期濃度をa、t時間後までの累積反応量(Bの生成量)をxとすれば、単位時間当たりの反応量dx/dtは、このdtにおける未反応量CAに比例し、この比例常数(反応速度常数)をKとする。」
このモデルは、未反応量の1次関数で表されるので1次反応モデルと呼ばれ、数式で表現すると以下のとおりとなる。なお、反応速度常数Kは[時間-1]の次元を持つ。
【0070】
dx/dt=K・CA・・・(10)
【0071】
さらに、未反応量CAは初期濃度aからt時間後までの累積反応量xを差し引いたものであるから「dx/dt=K・CA=K(a−x)」のようになる。よって、累積反応量xを時間tの関数として表現するためには、変数分離して微分方程式を解けばよい。
【0072】
dx/dt=K(a−x) ・・・(11)
dx/(a−x)=Kdt
∫dx/(a−x)=∫Kdt
−ln(a−x)=K・t+const.
【0073】
ここで、t=0でx=0であるから、const.=−lnaとなる。また、時間tの関数として表す反応率P(t)は累積反応量xと初期濃度aとの比(=x/a)であるから、t時間後の反応率P(t)は反応速度常数(硬化速度常数)Kを用いて次のように表される。
【0074】
−ln(a−x)=K・t−lna
−ln{(a−x)/a}=K・t
−ln{1−P(t)}=K・t・・・(12)
P(t)=1−exp(−K・t)・・・(13)
【0075】
つまり、単位時間当たりの反応量が未反応量に比例する(1次関数として表される)と仮定すると式(13)が得られる。
この反応率曲線は、t=1000でP(t)=0.99に達する場合を例にすると、式(13),式(12)及び式(12)の両辺の対数をとった以下の式(14)より図23に示すようになる。
【0076】
ln{−ln(1−P(t))}=lnt+lnK・・・(14)
【0077】
一方、AからBへの反応を「Aが故障してBとなる」と信頼性工学上の言葉で言い換えれば、単位時間当たりの反応量は単位時間当たりの故障数となり反応率は累積故障分布関数と等価の意味となる。これら反応速度論と信頼性工学の相関を説明すると、よく知られているように次のとおりとなる。
【0078】
母数aとしてt時間までの累積故障数xとして、単位時間当たりの故障数dx/dtは未故障数(=a−x)と比例常数λとの積と仮定すると以下のように示すことができる。
【0079】
dx/dt=λ(a−x) ・・・(15)
dx/(a−x)=λdt
∫dx/(a−x)=∫λdt
−ln(a−x)=λ・t+const.
【0080】
ここで、t=0でx=0であるから、const.=−lnaとなり、累積故障分布関数(
cumulative distribution function)F(t)は、累積故障数xと母数aとの比(=x/a)であるから、次のような指数分布関数(exponential distribution function)が得られる。
【0081】
−ln(a−x)=λ・t−lna
−ln{(a−x)/a}=λ・t
−ln{1−F(t)}=λ・t・・・(16)
F(t)=1−exp(−λ・t)・・・(17)
【0082】
なお、式(17)を微分して故障確率密度関数(Probability density function)f(t)として表すと次のとおりとなる。
【0083】
dF(t)/dt=f(t)=λexp(−λ・t)・・・(18)
【0084】
故障率関数(failure rate function又は、hazard rate function)λ(t)は、t時間後の残存数n(t)のうち、次の単位時間当たりに故障する個数の比率である。
【0085】
λ(t)={−dn(t)/dt}/n(t)・・・(19)
【0086】
式(19)右辺の分母と分子を母数aで割ったもので言い換えると故障率λ(t)とはt時間後に母数aに対する残存量の割合n(t)/a(=信頼度R(t))の中で、次の単位時間に故障する確率−(dn(t)/a)/dt(=故障確率密度関数f(t))の割合を示すので、次の式で与えられる。
【0087】
λ(t)=f(t)/R(t)={dF(t)/dt}/R(t)={−dR(t)/dt}/R(t)・・・(20)
【0088】
これを積分してt=0のときにR(t)=1とすると、次の通りとなる。
【0089】
λ(t)dt=−dR(t)/R(t)・・・(21)
【0090】
【数5】

【0091】
また、故障率関数λ(t)の積分量である累積ハザードH(t)を用いると以下で表される。
【0092】
【数6】

【0093】
従って、累積故障分布関数」F(t)の基本形態は指数型であり、細部はλ(t)の形により関数の形が変わる。
【0094】
【数7】

【0095】
すなわち、指数分布における式(18)の仮定とはλ(t)=λであることを示しており、式(24)の指数部内を以下の式に示すようにt=0からtまで積分することで式(20)が得られる。
【0096】
【数8】

【0097】
また、式(11)と式(19)とは本質的な意味は等しく、式(11)において両辺をaで割り、これを式(20)と比較すると次のような相互関係となり、この比が反応速度常数Kであり、また故障率関数λ(t)となる。
【0098】
左辺:(dx/a)/dt 単位時間当たりの反応率変化→確率密度関数f(t)と等価
右辺:(a−x)/a 未反応量(残存量)の割合→信頼度関数R(t)と等価
【0099】
従って、ある関数がその微分型の関数との比で関係付けられいることが指数型となる所以となる。つまり、「単位時間当たりに変化する数量」が、「変化せず残存している数量」との比で表される場合は、この比の累積変化が指数型の増加関数となり、特に上記比が「時間に依らず常に一定の常数」で表される、いわゆる「構成要素一つ一つには何ら依存性が認められないランダムに生じる現象」は、指数分布を示すことになる。
【0100】
以上に示したとおり、化学反応における最も基本的な1次反応は、本質的に指数分布と全く同じ仮定に基づくモデルであり、1次反応率曲線は指数分布の累積分布関数で表される。
【0101】
1.2 n次反応におけるn乗モデルとワイブル分布
上述した図22を用いて説明した1次反応は、物質A単独の反応であり、この場合、未反応量CAのみを考え、反応速度常数Kとの積が瞬間の反応量となるものとしたが、これは図24のように「グランドに多くの人が目隠しをして自由に動き回っており、ある瞬間毎に出現しまた消滅する『水溜』に靴が入ったらグランドを出なければならない。」というゲームを行っていることに例えると、ある瞬間に「水溜」に靴が入りグランドから出ることが単位時間当たりに反応する量に相当すると考えれば良い。
【0102】
グランド内に残された人は徐々に減っていくが、ある瞬間の時点で、グランドに残っている人が多ければ多いほど「水溜」に入る人は多く、グランドに残っている人が減れば「水溜」に入る人も減る。また、「水溜」ができること自体の数(確率)が多ければ、「水溜」に入る人も多い。このグランドにいる人が、反応系に存在する分子の量つまり濃度であり、「水溜」ができる確率が、反応速度常数を示す。これらのことを信頼性工学上の言葉で云えば、濃度は残存率(=信頼度)であり、反応速度常数は故障率にあたる。
【0103】
次に、A,Bの2物質が反応して物質Cが生成される場合には、同様の考えを当てはめれば、「グランドにいる人は男女からなり、男と女が同時に『水溜』に入ると2人揃ってグランドから出る。」というゲームのルールになっているものと考えると良い。2人が水溜に入る確率は各々の確率の積であり、2つの物質が反応する場合は、未反応Aの濃度CAと未反応Bの濃度CBの積になる。なお、この例えでは、厳密には反応速度常数Kが2乗となるが、1個の常数として扱えば、各々の未反応成分濃度の積と反応速度常数の積として表される。
【0104】
上述のことを数式で表現すれば、未反応Aの初期濃度をa,未反応Bの初期濃度をbとして次のように表される。
【0105】
dx/dt=K・CA・CB=K(a−x)(b−x)
dx/{(a−x)(b−x)}=Kdt
∫dx/{(a−x)(b−x)}=∫Kdt・・・(25)
【0106】
これをより一般化し、物質A,B,C,D.・・・という複数物質の反応において、単位時間当たりの反応量(生成量)が、各々の物質のべき乗の積に比例するとき、このべき乗の和を反応次数と呼ぶ。これを数式として表すと「dx/dt=K(CAa・CBb・CCc・CDd・・・) n次反応とは、n=a+b+c+d+・・・」となる。
【0107】
自然界における反応は、複数物質が複雑に反応するものであるが、反応速度として見ると律速(速度の遅い)となる反応のみを考えれば良く、エポキシ系樹脂の場合でも、よく知られているように、以下に示す、式(26)、式(27)、式(28)(カマールの式,αは反応率)など高々数種類の積で近似できる場合が多い。
【0108】
dx/dt=K(1−x)(1/r−x)(b+x)・・・(26)
dx/dt=K(a0−x)2(b0+x)・・・(27)
dα/dt=(K1+K2αm)(1−α)n・・・(28)
【0109】
これらの中で最も単純な近似として単位時間当たりの反応量が物質A濃度のn乗に比例する(n乗モデル)とすると、aを初期濃度として下式のようになる。なお、自明ながらa>0,x>0,t>0,n>0である。
【0110】
【数9】

【0111】
これを1.1項の説明と同様に積分すると次のようになる。
【0112】
【数10】

【0113】
この反応率曲線は、t=1000でP(t)=0.99に達する場合を例にすると、式(14)及び図23と同様に、以下の式(31)及び式(32)より図25に示すようになる。なお、図25は、n次反応率曲線の形(n=0.8)である。
【0114】
【数11】

【0115】
ここまでは、図24に示したように、複数物質の反応によるn次反応を考えたが、熱硬化性有機分子のように1分子内に複数(i個)の官能基を持つ場合は、1分子内の官能基全てが反応してやっと1分子の反応が終わることになる。
この場合、官能基1個が反応する確率をpとし、i個の官能基で同時に起きる確率はpのi乗となる。よって分子1個の確率pとしてみると濃度が1/i乗になったということに等しい。つまり、反応速度式は下式のとおりとなる。
【0116】
dx/dt=K(a−x)1/i ・・・(33)
【0117】
なお、反応次数の定義は濃度の指数部の和であるから、このような場合には反応次数nは式(29)で表した場合に1以下となる。
【0118】
一方、1.1項において1次反応における反応率が指数分布における累積分布関数に一致することを述べたが、指数分布に形状因子(shape parameter)m(m>0)を導入して拡張したワイブル分布(weibull distribution)がn次反応における反応率に対応していることが予想される。
【0119】
Pw(t)=1−exp{−(Kt)m}・・・(34)
【0120】
t=1000でP(t)=0.99に達するなどの反応終止点がわかっている反応について反応率曲線を推定することを想定した場合、式(34)のワイブル型累積分布関数(以下、ワイブルモデル」と呼ぶ)と式(30)のn乗モデルの反応率曲線を比較すると、反応次数nと形状因子mの逆数は、お互いに大小関係が同じであり、特に反応次数nが0.5〜1.2及び反応率Pが40%以上の範囲において、n≒1/mの関係にある。
【0121】
熱硬化性樹脂の反応率を求める場合には、反応量を未反応分子の濃度として測定するのではなく、DSC(示差熱走査型熱量計)では全体の化学反応における発熱量の割合、フーリエ変換赤外分光光度計(Fourier Transform Infarred Spectroscopy,以降「FT−IR」と記す)では、特定官能基に基づく吸収波長強度の割合を求めることになるので、反応に係わる分子数や官能基数を正確に反映した反応速度式となるわけではない。さらに、分子が近接してから架橋反応による3次元網目構造が発展して硬化するモデルを考えると、官能基が自由に動き回って反応すべき相手と出会うというよりも官能基同士が対となった状態を考え、この1対としての存在量(濃度)として反応速度を考えた方が良い。従って、架橋反応による熱硬化性樹脂の化学的な反応率は、官能基の種類によらず、指数分布である1次反応速度式に近い反応次数を示すことが多いと考えられる。
【0122】
つまり、これらを考え合わせると、式(34)と式(30)は数式としては全く異なるが、反応次数nが1前後と予想される実際の硬化反応を実験的に調べる範囲においては、ワイブルモデルに基づいて実験データの解析が適用でき、その形状因子の逆数からおおよその反応次数を予測できることになる。
【0123】
また、式(28)で示したカマール(Kamal)モデルを用いた解析結果を、1次反応モデル(m=1.0)とワイブルモデル(m=1.2)の双方で比較すると、特に着目すべき高硬化率の領域においては、ワイブルモデルがよく一致した曲線になることがわかる。
【0124】
なお、信頼性工学におけるワイブルモデルは、尺度因子(scale parameter)ηを用いて式(35a)及び式(35b)のように表される。よって、式(34)におけるKは、ηの逆数に相当する。ちなみに、式(35a)においてt=ηとするとPw(η)=1−exp(−(1)m)=0.632となり、mの値に依らず累積故障率63.2%に達する時間がηに相当する。このため、ηは特性寿命(characteristic life)と呼ばれることもある。
【0125】
【数12】

【0126】
また、式(24)より累積ハザードH(t)は、以下の式(36)となるので、この微分である故障率λ(t)は式(37)となる。
【0127】
【数13】

【0128】
1次反応である指数分布(m=1)の場合には、λ(t)が時間に依らず一定のλであり、時間軸上でランダムな反応を意味していたが、ワイブルモデルに従う反応は時間とともに反応する割合が変化し、ある反応率に同じ時間で到達する場合で比較すると、m>1(反応次数nが1よりも小さい)の場合には、反応が時間とともに増加して反応率が急激に立ち上がる曲線となる。つまり、1分子内に官能基数の多い分子が反応する反応次数が1以下の場合には、ワイブルモデルで表した場合の形状因子mが1以上の値をとることが予想される。
【0129】
1.3 反応速度常数の温度依存性
1次反応を含めたn次反応及びワイブル型累積故障率関数で表したモデルにおける反応速度常数K(すなわち、尺度因子ηの逆数)が、アレニウス型の温度依存性を持つと仮定すれば下式のとおり表すことができる。ここでQは、活性化エネルギー、Tは絶対温度、kはボルツマン常数、α0は頻度因子である。
【0130】
【数14】

【0131】
さらに、式(38)の両辺の対数をとり整理すると以下の式(39)に示すとおり、1/Tと1nKは線形関係となることがわかる。よって、直線の傾きが−Q/k、切片がlnα0となることより、Qとα0を求めることができる。
【0132】
【数15】

【0133】
なお、このことに関連し、はんだ材料の疲労寿命試験では、以下の式(40)に示す「Coffin−Mansonの修正式」と呼ばれる寿命予測式に基づく解析が行われる。これは、疲労寿命をある累積不良率に達する応力繰り返しサイクル数Nfとして定義し、これがアレニウス型の温度依存性を持つと仮定して活性化エネルギーや歪み量・温度などの環境条件の依存性から、実際の使用状態における応力繰り返しサイクル数Nfを予測するものである。
【0134】
【数16】

【0135】
累積不良率Pが応力繰り返し数Ncを変数としたワイブルモデルに従う場合には、式(35a)の時間tを応力繰り返し数Ncに置き換えると式(41)となり、応力繰り返し数Ncで整理すると式(42)となる。
【0136】
【数17】

【0137】
よって、累積不良率Pの基準を設定すると、これに対応する応力繰り返し数Ncが求められる。例えば、前述のとおりP=0.632とすれば,Nc=ηとなる。そこで、寿命として定義する不良率Pfと,そのときの応力繰り返し数Ncを応力繰り返しサイクル数Nfとすれば、式(38)より以下の式(43)が得られ、式(40)と同様な式となる。
【0138】
【数18】

【0139】
すなわち、式(38)と式(40)の「Coffin−Mansonの修正式」は温度依存性を示す部分において全く等価な意味を成すものであることがわかる。従って、他の常数部分に温度依存性がなく、温度サイクル試験などの寿命試験結果がワイブルモデルに従ってっていると仮定すれば、式(43)のみを用いて寿命予測が可能である。また、疲労寿命以外の場合でもワイブルモデルで表される現象に温度依存性が認められる場合には、尺度因子ηの逆数(=K)を式(38)に当てはめることで活性化エネルギーを求めることができ、さらに未知の温度帯における現象を予測することができる。
【0140】
2.0 幾何学的等温結晶化理論からのアプローチ
1.0項では個々の分子を中心に化学反応を考えたが、実際の熱硬化性樹脂の場合には、液相から固相に変化する結晶化又は相転移の現象に似ている。従って、幾何学的核成長を考慮した等温結晶化理論として知られ、またDSCなどの熱解析でよく用いられるKJMAモデルを適用すると次のとおりとなる。
【0141】
このモデルは、先ず、図26(a)に示すように初期の核発生の後に、図26(b)に示すように発生した核(ドメイン)同士が接触及び重なり合わずに素直に成長することを仮定した場合、固相体積(結晶化度又は相変化度)の単位時間当たりの微小変化の割合は、液相体積の中で単位時間当たりに固相に微小変化する割合に等しいとするものである。
【0142】
ここで全体積Vtotalに対する固相体積Vの割合fと、割合fの変化率df、液相の中で固相に変化する変化率dfexとすれば、よく知られているように、以下のように表される。
【0143】
【数19】

【0144】
これは1.0項に説明した式(20)と比較して信頼性工学用語に書き直すと、fは累積分布関数F(t)、(1−f)は信頼度R(t)、dfは累積分布関数の微分である確率密度関数f(t)、dfexは故障率λ(t)、fexは累積ハザードH(t)に対応する。
【0145】
これより、式(44)は、以下に示す式(45)のように置き換えることができ、式(21)〜(23)と同様に下記のようになる。
【0146】
【数20】

【0147】
よって、式(44)を解くと以下に示す式(46)が得られる。
【0148】
f=1−exp(−fex)・・・(46)
【0149】
次に、核が発生した固相が3次元的に半径rの球として等方成長する場合、成長した球状の微粒子の体積vは、半径rの3乗に比例し、半径rが時間tに比例して成長すると仮定すれば、比例常数Dとして次のように表すことができる。
【0150】
【数21】

【0151】
また、fexは、液相中における累積固相増加量Vの割合であり、これは個々の核成長している粒子数N個分の総和となる。
【0152】
【数22】

【0153】
よって式(48)を式(46)に代入すると以下の式(49)が得られる。
【0154】
【数23】

【0155】
また、式(49)の指数部の常数をまとめてZとおけば最終的に以下の式(50)が得られる。
【0156】
【数24】

【0157】
つまり、式(47)で体積が時間の3乗に比例して成長すると仮定することで式(50)においても指数部は時間の3乗に比例する。同様に、核成長が1次元的な樹枝状成長であれば、体積は時間の1乗に比例し、2次元的な薄片状成長であれば体積は時間の2乗に比例する。またさらに、液相から固相に変化する際、界面反応律速ならば核成長半径は時間の1乗に比例し、拡散による物質移動律速ならば1/2乗に比例することが予想される。
【0158】
実際の現象においてはこれらが複雑に合わさったものである可能性があるため、KJMAモデルの一般式は、以下の式(51)のように表される。
f=1−exp(−Ztm)・・・(51)
【0159】
式(51)の指数m(m>0)は、特にアブラミ(Avrami)常数と呼ばれており、上記のような幾何学的成長に関連付けて、以下の表6に示すような値をとるとされている。これによると、アブラミ常数mが小さいほど1次元的で拡散律速の固相成長であり、逆に常数mが大きいほど3次元的で界面反応律速の固相成長となるなどの情報が得られる。
【0160】
【表6】

【0161】
なお、このように表した常数Zは[時間-1/m]の次元を持つことになる。本来KJMAモデルは等温結晶化で良く用いられるものであり、常数mが変化することを考慮していない。常数mが常に一定と仮定すればデータ解析上で特に支障が生じることはないが、温度によって変化し、これを含めて硬化率を記述しようとすると常数の次元が変化することは好ましくない。
【0162】
よって、さらに式(51)を書き直し、K=Z1/mとなる硬化速度常数Kを用いて以下の式(52)のように表現する場合もある。なお、この式(52)は式(34)及び式(35a),(35b)で示したワイブルモデルに一致する。
f=1−exp{−(Kt)m}・・・(52)
【0163】
つまり、KJMAモデルから類推すれば、信頼性工学上でワイブルモデルに従う故障とは、式(36)に示すとおり累積ハザードが時間のm乗となるが、これは時間の関数で表される素反応が引き金となり、この素反応のべき乗で現象が広がり、最終的な故障にいたるメカニズムに相当することが予想される。また、反応次数との相関を考えると、m>1となる反応とは、官能基数が多く、べき乗的に反応が進むn<1の低次反応に相当することを意味しており、化学反応的なイメージと一致する。
【0164】
また、式(38)で示した反応速度常数の温度依存性と同様に、KJMAモデルにおいて硬化速度常数Kがアレニウス型の温度依存性を持つと仮定すれば、以下の式(53)のとおりに表すことができる。ここで、Qkは活性化エネルギーに相当する常数、Tは絶対温度、kはボルツマン常数、α0は頻度因子である。
【0165】
【数25】

【0166】
なお、式(51)で表したZと式(52)で表した硬化速度常数Kとの間には、K=Z1/mの関係にあるので、式(39)と同様に両辺の対数をとり整理すると、下記の式(54)に示す関係にあるため、式(51)で表した場合の活性化エネルギーQzをmで割ったものがQKに相当する関係にある。
【0167】
【数26】

【0168】
3.0 熱硬化性樹脂の硬化モデル構築(本発明による新たなモデルの導入)
図21に示した熱硬化性樹脂の硬化反応模式図において、化学反応としては1.1項に説明した式(11)に示す1次反応又は1.2項の式(26)〜(28)に示した反応種の濃度から求めた反応速度式が最も正しいものと考えられるが、これらの式を適用できるのは、反応系が予測できる場合に限られ、未知の樹脂材料に対しても幅広く応用できる保証がない。まして機械的な強度に基づいた硬化率を表現することができない。
【0169】
そこで機械的強度の発現が、架橋反応による重合や液相から固相に変化した相変化の結果で生じるとみなし、1.2項で示したn乗モデルとワイブルモデルの相関及び結果的にはワイブルモデルと全く同様な関数として得られる2.0項で示したKJMAモデルを用い、前述した式(1),(2),及び(3)に示すように熱硬化性樹脂の硬化率を表すことにした。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明の実施の形態における熱硬化性樹脂の硬化率予測方法により求めた硬化率曲線の例を示す説明図である。
【図2】住友スリーエム株式会社製の接着フィルム「スーパーエポキシテープNo.1520」に接着強度データを示す説明図である。
【図3】各温度と時間における強度データを比率へと換算した結果を示す説明図である。
【図4】表1に示すデータを用い、縦軸にln[−ln(1−P)]、横軸lntとしてプロットした結果を示す説明図である。
【図5】常数Nを用い、縦軸に対数lnN、横軸に絶対温度の逆数1/Tをプロットした結果を示す説明図である。
【図6】常数N(表2参照)を用い、縦軸に−ln(1−P)、横軸にt1/Nをプロットした結果を示す説明図である。
【図7】硬化速度常数Kを用い、縦軸に対数lnK、横軸に絶対温度の逆数1/Tをプロットした結果を示す説明図である。
【図8】本発明の方法により各常数を用いて硬化曲線を描き、実際の硬化率データと比較した結果を示す説明図である。
【図9】本発明の方法により各常数を用いて硬化曲線を描き、実際の硬化率データと比較した結果を示す説明図である。
【図10】1次反応モデルにより硬化曲線を描き、実際の硬化率データと比較した結果を示す説明図である。
【図11】KJMAモデルにより硬化曲線を描き、実際の硬化率データと比較した結果を示す説明図である。
【図12】塗膜硬化挙動を粘弾性として測定してた結果を規格化した比率を機械的硬化率Pと等価と考えて示した説明図である。
【図13】図12に示すデータをもとに、本発明に係るモデルを用いて解析した結果の硬化率曲線を示す説明図である。
【図14】図12に示すデータをもとに、本発明に係るモデルを用いて解析した結果による速度常数の温度依存性を示す説明図である。
【図15】図12に示すデータをもとに、1次反応モデルを用いて解析した結果の硬化率曲線を示す説明図である。
【図16】図12に示すデータをもとに、1次反応モデルを用いて解析した結果による速度常数の温度依存性を示す説明図である。
【図17】図12に示すデータをもとに、KJMAモデルを用いて解析した結果の硬化率曲線を示す説明図である。
【図18】エポキシ系アンダーフィル樹脂の1種について、示差熱走査型熱量計による化学的反応率を、本発明に係るモデルによって解析した結果の反応率曲線を示す説明図である。
【図19】エポキシ系アンダーフィル樹脂の1種について、示差熱走査型熱量計による化学的反応率を、本発明に係るモデルによって解析した結果における硬化速度常数Kの温度依存性(a)と、常数Nの温度依存性(b)を示す説明図である。
【図20】本発明の実施の形態に係る熱硬化性樹脂の硬化率予測方法を実施するコンピュータの構成例を示す構成図である。
【図21】示差熱走査型熱量計などで測定した化学的な反応率を示す上昇曲線と、ダイシェア試験などで得られる機械的な強度を指標とする硬化率を示す上昇曲線との比較を示す説明図である。
【図22】単純な化学反応における反応速度の基本的な考え方について解説する説明図である。
【図23】単位時間当たりの反応量が未反応量に比例する(1次関数として表される)と仮定したときの反応率曲線を説明する説明図である。
【図24】1次反応は、物質A単独の反応であるとし、未反応量CAのみを考え、反応速度常数Kとの積が瞬間の反応量となるものとした場合の反応を説明するための説明図である。
【図25】単位時間当たりの反応量が物質A濃度のn乗に比例する(n乗モデル)としたときの反応率曲線の一例を示す説明図である。
【図26】KJMAモデルにおける反応を説明するための説明図である。
【図27】KJMAモデルを用いて推定される硬化特性の一例を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望とする熱硬化性樹脂に所定の熱を加えたときの所定時間後の硬化率を予測する熱硬化性樹脂の硬化率予測方法において、
所定時間t後の硬化率Pを、
P=1−exp{−(K・t)1/N}よりなる第1の式と、
第1常数QK,第2常数α0,加えた熱の絶対温度T,及びボルツマン常数kを用いて前記第1の式のKを規定するK=α0exp{−QK/(kT)}よりなる第2の式と、
第3常数QN,第4常数β0,加えた熱の絶対温度T,及びボルツマン常数kを用いて前記第1の式のNを規定するN=β0exp{−QN/(kT)}よりなる第3の式と
により予測する
ことを特徴とする熱硬化性樹脂の硬化率予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2008−1878(P2008−1878A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254135(P2006−254135)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000227836)日本アビオニクス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】