説明

熱硬化性樹脂組成物、これから得られる硬化塗膜、カラーフィルタ及び表示装置

【課題】高い硬度の硬化塗膜が得られる熱硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】バインダー樹脂(A)、アミノトリアジン類(B)及び溶剤(C)を含有し、バインダー樹脂(A)が、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物(A1)と、水酸基を有する不飽和化合物(A2)とを構成モノマーとする共重合体であり、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物(A1)と水酸基を有する不飽和化合物(A2)との総モル数に対して、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物(A1)が25〜65モル%であり、水酸基を有する不飽和化合物(A2)が35〜75モル%である熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、この組成物を熱硬化することによって得られる硬化塗膜、並びにこの硬化塗膜を含むカラーフィルタ及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子及び液晶表示装置などのデバイス(電子デバイス)には、着色画素を形成したカラーフィルタ基板や、駆動素子及び配線を形成したアレイ基板などの部材が使用されている。これらの部材は製造工程中に過酷な処理(例えば、有機溶剤への浸漬、酸又はアルカリ溶液への浸漬、及びスパッタリングによる高温など)に曝されることがあるため、その表面に保護膜が設けられることがある。この保護膜には、前述の過酷な処理に対する耐性(例えば耐溶剤性など)や基板又は基材との密着性などに加えて、高い硬度が要求される。また前述のカラーフィルタは、構成部材として透明膜を備えている。この透明膜も、前述の保護膜と同様に、高い硬度が要求される。
【0003】
上述のような保護膜を形成するために、例えば特許文献1には、酸基を有するモノマーとアルコール系水酸基を有するモノマーと特定の式で表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの共重合体(A)、アミノトリアジン類(B)及び溶媒(C)を含む樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は、耐薬品性などに優れるとされている。
【0004】
しかし特許文献1に記載されている樹脂組成物では、得られる硬化塗膜の硬度が不充分であった。
【0005】
また前記基板には、カラーフィルタの他、種々の樹脂層が形成されている。さらに基板として、近年、プラスチック基板も採用されつつある。特許文献1の樹脂組成物は温度200℃で加熱硬化しているが、加熱温度が高すぎると、他の樹脂層やプラスチック基板に悪影響を及ぼす。
【特許文献1】特開平11−326623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い硬度の硬化塗膜が得られる熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の別の目的は、低温でも硬化できる熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意検討した結果、バインダー樹脂(A)、アミノトリアジン類(B)及び溶剤(C)を含有する熱硬化性樹脂組成物において、バインダー樹脂(A)中のカルボキシ基と水酸基との比率を適切に制御することによって、低温で樹脂組成物を硬化しても、高い硬度の硬化塗膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の熱硬化性樹脂組成物とは、バインダー樹脂(A)、アミノトリアジン類(B)及び溶剤(C)を含有し、バインダー樹脂(A)が、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物(A1)と、水酸基を有する不飽和化合物(A2)とを構成モノマーとする共重合体であり、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物(A1)と水酸基を有する不飽和化合物(A2)との総モル数に対して、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物(A1)が25〜65モル%であり、水酸基を有する不飽和化合物(A2)が35〜75モル%であることを特徴とする。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに熱酸発生剤(D)を含有していても良い。
【0009】
本発明には、前記熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜、並びにこの硬化塗膜によって基板の透明膜、保護膜、絶縁膜又はコート層が形成されているデバイスが含まれる。
硬化塗膜は、例えば、(1)前記熱硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布し、(2)この樹脂組成物から溶剤を除去して、塗膜を形成し、(3)温度150〜190℃で加熱することによって形成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、アミノトリアジン類(B)を含有し、且つ前記構成モノマー(A1)及び前記構成モノマー(A2)の共重合比が適切に制御されているため、低温で硬化しても、高い硬度の硬化塗膜を形成できる。この硬化塗膜は、透明性及び耐溶剤性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、バインダー樹脂(A)、アミノトリアジン類(B)及び溶剤(C)から構成される。なお前記バインダー樹脂(A)及びアミノトリアジン類(B)は、溶剤(C)に溶解していてもよく、分散していてもよい。以下、各成分について順に説明する。
【0012】
〈バインダー樹脂(A)〉
バインダー樹脂(A)は、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物(A1)(以下、単にモノマー(A1)という場合がある)と、水酸基を有する不飽和化合物(A2)(以下、単にモノマー(A2)という場合がある)とを構成モノマーとする共重合体であり、カルボキシ基と水酸基とを有する。この水酸基によって、バインダー樹脂(A)はアミノトリアジン類(B)と縮合反応し、硬化塗膜の硬度が高まる。また硬化温度を下げることもできる。一方、バインダー樹脂(A)のカルボキシ基は、アミノトリアジン類(B)と縮合するため、モノマー(A1)の共重合比(カルボキシ基の比率)が低すぎると、低温硬化性が低下する。
【0013】
不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物(A1)には、以下の化合物が含まれる。
例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸類;
マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類及びこの無水物;
コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、フタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]などの多価カルボン酸のモノ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]エステル類など。
本発明では、α−ヒドロキシアルキルアクリル酸(α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸)などの水酸基とカルボキシ基の両方を有する不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物は、モノマー(A1)として使用する。
上記モノマー(A1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお本明細書中、「(メタ)アクリル酸」との表記は、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。また「(メタ)アクリロイル基」、「(メタ)アクリロイルオキシ」及び「(メタ)アクリレート」の表記も同様である。
【0014】
モノマー(A1)としては、アクリル酸、メタクリル酸、及び無水マレイン酸が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。これらは共重合反応性に優れる。特に硬度及び透明性に優れた硬化塗膜が得られるメタクリル酸がより好ましい。
【0015】
水酸基を有する不飽和化合物(A2)としては、以下の(1)〜(2)のものが例示できる。
(1)水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物、例えば、
(i)2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;
(ii)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリオール(メタ)アクリレート;
(iii)2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε―カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに2塩基酸無水物とエチレンオキサイドとが付加した化合物、(メタ)アクリル酸のフェニルグリシジルエーテル付加物、グリシジルモノ(メタ)アクリレートのモノカルボン酸付加物、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルアセトアセテートなど。
(2)アリルアルコール、アリロキシエタノール、ヒドロキシスチレンなどの芳香族系化合物など。
モノマー(A2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
好ましいモノマー(A2)は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの共重合体は、硬度及び透明性に優れる。
【0017】
モノマー(A1)及び(A2)の総モル数に対する共重合比は、以下の通りである。
モノマー(A1);25〜65モル%(好ましくは30〜60モル%)
モノマー(A2);35〜75モル%(好ましくは40〜70モル%)
共重合比を前記範囲に調節すれば、硬化塗膜の硬度、低温硬化性、耐溶剤性、透過率、密着性などを良好にできる。
【0018】
バインダー樹脂(A)は、モノマー(A1)及びモノマー(A2)から構成するのが好ましいが、必要に応じて、他のモノマー(A3)を構成モノマーとしていても良い。
【0019】
バインダー樹脂(A)は、公知の方法で製造できる。例えば「高分子合成の実験法」(大津隆行著 発行所(株)化学同人 第1版第1刷 1972年3月1日発行)及びこの文献中で引用されている文献などを参考に、前記構成モノマーを共重合すればよい。一般的には、所定量の前記モノマー(A1)、モノマー(A2)、重合開始剤、及び溶剤、並びに必要に応じて他のモノマー(A3)を反応容器に仕込み、不活性ガス(例えば窒素)で反応容器内の雰囲気を置換した後、加熱・撹拌することによって、共重合体を製造できる。得られた共重合体は、反応液のまま、或いは濃縮又は希釈してからバインダー樹脂(A)として用いてもよく、再沈殿などの方法で反応溶液から分離してからバインダー樹脂(A)として用いてもよい。
【0020】
バインダー樹脂(A)の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、好ましくは3,000〜200,000、より好ましくは5,000〜50,000である。前記範囲の分子量であれば、熱硬化性樹脂組成物の塗布性が向上する。さらに得られる硬化塗膜の硬度、耐溶剤性及び透明性などを良好にできる。
【0021】
バインダー樹脂(A)の分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、好ましくは1.1〜6.0であり、より好ましくは1.2〜4.0である。前記範囲の分散度であれば、硬度、耐溶剤性及び透明性に優れた硬化塗膜が得られる。
【0022】
バインダー樹脂(A)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の固形分に対して、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜85質量%である。前記範囲の含有量であれば、硬度、耐溶剤性及び透明性に優れた硬化塗膜が得られる。
【0023】
〈アミノトリアジン類(B)〉
本発明ではアミノトリアジン類(B)の縮合反応を利用することによって、硬度に優れた硬化塗膜を形成できる。アミノトリアジン類(B)としては、例えば、式(1)のメラミン類又は式(2)のベンゾグアナミン類を使用できる。
【0024】
【化1】

【0025】
式(1)及び式(2)中、R1〜R10は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はCH2OR基を示し、前記Rは水素原子又はC1-6アルキル基を示す。ただし、式(1)ではR1〜R6のうち少なくとも2つ、好ましくは3つ以上、さらに好ましくは5つ以上がCH2OR基である。式(2)ではR7〜R10のうち少なくとも2つ、好ましくは3つ以上がCH2OR基である。
なお本発明において「Ca-b」とは、「炭素数がa以上、b以下」であることを意味する。
【0026】
式(1)で表されるメラミン類としては、例えば
アミノ基が6つのアルコキシメチル基(アルコキシメチロール基ともいう)で変性されているメラミン(ヘキサアルコキシメチルメラミン類(ヘキサアルコキシメチロールメラミン類))、好ましくはアミノ基が合わせて6つのC1-4アルコキシメチル基(特にメトキシメチル基、ブトキシメチル基)で変性されているメラミン、例えばヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン;
アミノ基が合わせて6つのアルコキシメチル基及びヒドロキシメチル基(メチロール基)で変性されているメラミン;
アミノ基が5つ以下のアルコキシメチル基で変性されているメラミン;
アミノ基が合わせて5つ以下のアルコキシメチル基及びヒドロキシメチル基で変性されているメラミン;
などが挙げられる。
【0027】
式(2)で表されるベンゾグアナミン類としては、例えば
アミノ基が4つのアルコキシメチル基(アルコキシメチロール基)で変性されているベンゾグアナミン(テトラアルコキシメチルベンゾグアナミン類(テトラアルコキシメチロールベンゾグアナミン類))、例えばテトラメトキシメチルベンゾグアナミン;
アミノ基が合わせて4つのアルコキシメチル基(特にメトキシメチル基)及びヒドロキシメチル基(メチロール基)で変性されているベンゾグアナミン;
アミノ基が3つ以下のアルコキシメチル基(特にメトキシメチル基)で変性されているベンゾグアナミン;
アミノ基が合わせて3つ以下のアルコキシメチル基(特にメトキシメチル基)及びヒドロキシメチル基で変性されているベンゾグアナミン;
などが挙げられる。
【0028】
式(1)又は式(2)で表される化合物は、例えば、サイメル300、同301、同303、同370、同325、同327、同701、同266、同267、同238、同1141、同272、同202、同1156、同1158、同1123、同1170、同1174、同UFR65及び同UFR300(以上、日本サイテックインダストリーズ(株)製);ニカラックMX−750、同MX−035、同MX−706、同MX−708、同MX−042、同MX−45、同MS−11、同MW−22、同MS−21、同MW−24X、同MS−001、同MX−002、同MX−730、同MW−30M、MX−45、同MX−500、同MX−520、同MX−43、同MX−417、同MX−410、及び同MW−30(以上、(株)三和ケミカル社製);並びにニカラックBX−4000、同SB−401、同BX−37、同SB−355、同SB−303、同SB−301、同BL−60、同SB−255、同SB−203、及び同SB−201(以上、(株)三和ケミカル社製)の商品名で市販されている。
【0029】
アミノトリアジン類(B)に含まれるメラミン類には、(メタ)アクリロイル変性メラミン類も含まれる。(メタ)アクリロイル変性メラミン類は、メラミン類(好ましくはヘキサアルコキシアルキルメラミン、特にヘキサメトキシメチルメラミン)を(メタ)アクリロイル基で変性し、かつホルムアルデヒドで縮合することによって得られる。この縮合物は、保存安定性が優れる一方、低温硬化性にも優れている。前記縮合物は、さらにアルコキシル基で変性されていてもよい。アルコキシル基で変性されていてもよい(メタ)アクリロイル基変性メラミンのホルムアルデヒド縮合物は、例えば、アルコキシアルキルメラミン類(好ましくはヘキサアルコキシアルキルメラミン、特にヘキサメトキシメチルメラミン)のアルコキシアルキル置換アミノ基を(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類(好ましくはヒドロキシエチルアクリレートなどのヒドロキシC1-2アルキル(メタ)アクリレート)と、必要に応じて脂肪族アルコール(好ましくはC1-12アルカノール)とで変性し、かつ前記メラミンをホルムアルデヒドで縮合することによって得られる。前記(メタ)アクリロイル基変性メラミン類のホルムアルデヒド縮合物は、「ニカラックMX−302」(三和ケミカル(株)製)等の商品名で市販されている。
【0030】
好ましいアミノトリアジン類(B)は、式(1)のメラミン類であり、より好ましくはアミノ基が合わせて6つのアルコキシメチル基又はヒドロキシメチル基で置換されたメラミン類、最も好ましくはヘキサアルコキシメチルメラミン類(特にヘキサメトキシメチルメラミン)である。なおメラミン類は、二量体又は三量体を形成していても良い。
【0031】
上述のアミノトリアジン類(B)は、単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
【0032】
アミノトリアジン類(B)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の固形分に対して、例えば、5〜30質量%程度、好ましくは10〜25質量%程度である。前記範囲の含有量であれば、硬度、低温硬化性、耐溶剤性及び透明性に優れた硬化塗膜が得られる。
【0033】
〈溶剤(C)〉
溶剤(C)は、熱硬化性樹脂組成物に含まれる各成分を均一に分散又は溶解できる限り特に限定されない。好ましい溶剤は、例えば、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類;
エチレングリコールアルキルエーテルアセテート(メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなど)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類;
メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;
エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類;
乳酸エチル(=「2−ヒドロキシプロピオン酸エチル」)、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類;
γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類等である。
これらは、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0034】
好ましい溶剤は、大気圧下の沸点が100〜200℃である溶剤である。このような溶剤としては、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、及びエステル類が使用でき、特に好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、及び3−メトキシプロピオン酸メチルが挙げられる。沸点が100〜200℃の溶剤を用いれば、熱硬化性樹脂組成物の塗布性と乾燥性を両立できる。
【0035】
溶剤(C)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは70〜85質量%である。溶剤(C)の含有量を前記範囲にすると、後述する塗布装置で熱硬化性樹脂組成物を塗布したときの塗布性が良好である。
【0036】
〈熱酸発生剤(D)〉
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、熱の作用により酸を発生する熱酸発生剤(D)を含んでいても良い。熱酸発生剤(D)を使用することで、前記バインダー樹脂(A)とアミノトリアジン類(B)との縮合反応を促進できる。熱酸発生剤(D)としては、例えば、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などのオニウム塩等を挙げることができる。好ましい熱酸発生剤(D)は、スルホニウム塩及びベンゾチアゾリウム塩である。熱酸発生剤(D)は、単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
【0037】
〈スルホニウム塩〉
スルホニウム塩としては、式(3)で表される塩が好ましい。
【0038】
【化2】

【0039】
式(3)中、R11〜R13は、互いに独立して、置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す。ただしR11〜R13のうち少なくとも1つは、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基である。X-は、1価のアニオンを表す。なお前記炭化水素基及びアリール基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0040】
炭素数1〜10の炭化水素基(以下、基本炭化水素基という場合がある)としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基;C1-10アルキル基;及びC5−8シクロアルキル基等を挙げることができる。
【0041】
基本炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、C1-5アルキル基、C3-6シクロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、−OR14、−COR15、−COOR16、−NR1718、−OCOOR19、及び−OCOR20等を挙げることができる(前記R14〜R18は、互いに独立に、水素原子、C1-5アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C6-10アリール基又はC7-11アラルキル基を表し、R19及びR20は、互いに独立に、C1-5アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C6-10アリール基又はC7-11アラルキル基を表す。)。
【0042】
置換基が結合した基本炭化水素基としては、置換アリール基、置換アラルキル基、置換アルキル基、置換シクロアルキル基などが例示できる。置換アリール基には、C1-4アルキルフェニル基、ジC1-4アルキルフェニル基、トリC1-4アルキルフェニル基、C1-4アルキルナフチル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、クロロ−メチルフェニル基、クロロ−ヒドロキシフェニル基、クロロ−メトキシフェニル基、クロロ−アセトフェニル基、クロロ−カルボキシフェニル基、クロロ−メトキシカルボニルフェニル基、クロロ−N,N−ジメチルアミノフェニル基、クロロ−メトキシカルボニルオキシフェニル基、クロロ−アセトキシフェニル基、ニトロフェニル基、ニトロ−ヒドロキシフェニル基、シアノフェニル基、シアノ−ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、トリヒドロキシフェニル基、C1-4アルキル−ヒドロキシフェニル基、ジC1-4アルキル−ヒドロキシフェニル基、C1-6アルコキシフェニル基、フェノキシフェニル基、ベンジルオキシフェニル基、アセトフェニル基、C2-6アルキルカルボニルフェニル基、フェニルカルボニルフェニル基、ベンジルカルボニルフェニル基、カルボキシフェニル基、C1-6アルコキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、ベンジルオキシカルボニルフェニル基、アミノフェニル基、N,N−ジC1-3アルキルアミノフェニル基、フェノキシカルボニルオキシフェニル基、ベンジルオキシカルボニルオキシフェニル基、アセトキシフェニル基、シクロヘキシルカルボニルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、ベンジルカルボニルオキシフェニル基、メトキシ−ヒドロキシフェニル基、アセト−ヒドロキシフェニル基、アセト−ヒドロキシベンジル基、メトキシカルボニル−ヒドロキシフェニル基、メトキシカルボニル−ヒドロキシフェニル基、N,N−ジメチルアミノ−ヒドロキシフェニル基、メトキシカルボニルオキシ−ヒドロキシフェニル基、アセトキシ−ヒドロキシベンジル基、フルオロC1-3アルキル−フェニル基、クロロC1-3アルキル−フェニル基等が含まれる。
【0043】
置換アラルキル基としては、C1-4アルキルベンジル基、ジC1-4アルキルベンジル基、トリC1-4アルキルベンジル基、クロロベンジル基、クロロ−メチルベンジル基、ジクロロベンジル基、ニトロベンジル基、シアノベンジル基、ヒドロキシベンジル基、C1-4アルキル−ヒドロキシベンジル基、ジC1-4アルキル−ヒドロキシベンジル基、ジヒドロキシベンジル基、トリヒドロキシベンジル基、C1-6アルコキシベンジル基、フェノキシベンジル基、ベンジルオキシベンジル基、アセトベンジル基、C2-6アルキルカルボニルベンジル基、ベンゾイルベンジル基、ベンジルカルボニルベンジル基、カルボキシベンジル基、C1-6アルコキシカルボニルベンジル基、フェノキシカルボニルベンジル基、ベンジルオキシカルボニルベンジル基、アミノベンジル基、N,N−ジC1-3アルキルアミノベンジル基、C1-6アルコキシカルボニルオキシベンジル基、フェノキシカルボニルオキシベンジル基、ベンジルオキシカルボニルオキシベンジル基、アセトキシベンジル基、シクロヘキシルカルボニルオキシベンジル基、ベンゾイルオキシベンジル基、ベンジルカルボニルオキシベンジル基、クロロ−ヒドロキシベンジル基、クロロ−C1-2アルコキシベンジル基、クロロ−アセトベンジル基、クロロ−カルボキシベンジル基、クロロ−N,N−ジメチルアミノベンジル基、クロロ−メトキシカルボニルオキシベンジル基、クロロ−アセトキシベンジル基、ニトロ−ヒドロキシベンジル基、シアノ−ヒドロキシベンジル基、メトキシ−ヒドロキシベンジル基、アセト−ヒドロキシベンジル基、メトキシカルボニル−ヒドロキシベンジル基、N,N−ジメチルアミノ−ヒドロキシベンジル基、メトキシカルボニルオキシ−ヒドロキシベンジル基、フルオロC1-3アルキル−ベンジル基、クロロC1-3アルキル−ベンジル基等が挙げられる。
【0044】
置換アルキル基は、例えば、フルオロC1-3アルキル基、クロロC1-4アルキル基、ニトロC1-4アルキル基、シアノC1-4アルキル基、ヒドロキシC1-4アルキル基、C1-2アルコキシC1-4アルキル基、アセトC1-4アルキル基、シクロヘキシルカルボニルC1-2アルキル基、フェニルカルボニルC1-2アルキル基、ベンジルカルボニルC1-2アルキル基、カルボキシC1-4アルキル基、C1-4アルコキシカルボニルC1-2アルキル基、シクロヘキルオキシカルボニルC1-2アルキル基、フェノキシカルボニルC1-2アルキル基、ベンジルオキシカルボニルC1-2アルキル基、アミノC1-4アルキル基、N,N−ジメチルアミノC1-4アルキル基、C1-4アルコキシカルボニルオキシC1-2アルキル基、シクロヘキルオキシカルボニルオキシC1-2アルキル基、フェノキシカルボニルオキシC1-2アルキル基、ベンジルオキシカルボニルオキシC1-2アルキル基、アセトキシC1-4アルキル基、ベンゾイルオキシC1-2アルキル基、ベンジルカルボニルオキシC1-2アルキル基等である。
【0045】
置換シクロアルキル基としては、クロロシクロへキシル基、ニトロシクロへキシル基、シアノシクロへキシル基、ヒドロキシシクロへキシル基、C1-2アルコキシシクロへキシル基、アセトシクロへキシル基、カルボキシシクロへキシル基、アミノシクロへキシル基、N,N−ジメチルアミノシクロへキシル基、アセトキシシクロへキシル基などの置換C5-6シクロヘキシル基が好ましい。
【0046】
前記基R11〜R13とS+から構成されるスルホニウムカチオンとしては、以下の(i)〜(iv)のスルホニウムカチオンが好ましい。
(i)1つのアリール基と2つのアルキル基とを有するスルホニウムカチオン類。
例えば、フェニル基、メチルフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メチル−ヒドロキシフェニル基、メチル−ヒドロキシ−ブチルフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、ベンジルオキシフェニル基、アセトフェニル基、ベンゾイルフェニル基、ベンジルカルボニルフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、ベンジルオキシカルボニルフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、メトキシカルボニルオキシフェニル基、フェノキシカルボニルオキシフェニル基、ベンジルオキシカルボニルオキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、クロロ−ヒドロキシフェニル基、及びクロロ−ヒドロキシフェニル基よりなる群から選ばれる1つのアリール基と、2つのメチル基とを有するスルホニウムカチオンなど。
【0047】
(ii)フェニル基、ベンジル基及びアルキル基を有するスルホニウムカチオン類。
例えば、フェニル基、メチルフェニル基、クロロフェニル基、クロロ−メチルフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メチル−ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシ−ブチルフェニル基、メチル−ヒドロキシ−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、アセトフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、メトキシカルボニルオキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、及びクロロ−ヒドロキシフェニル基よりなる群から選ばれる1つのフェニル基と、ベンジル基と、メチル基とを有するスルホニウムカチオン;
フェニル基、クロロフェニル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、アセトフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、メトキシカルボニルオキシフェニル基、アセトキシフェニル基、及びベンゾイルオキシフェニル基よりなる群から選ばれる1つのフェニル基と、メチルベンジル基と、メチル基とを有するスルホニウムカチオン;
フェニル基、クロロフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、アセトフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、メトキシカルボニルオキシフェニル基、アセトキシフェニル基、及びベンゾイルオキシフェニル基よりなる群から選ばれる1つのフェニル基と、ナフチルメチル基と、メチル基とを有するスルホニウムカチオン;
フェニル基と、クロロベンジル基、ジクロロベンジル基、ニトロベンジル基、シアノベンジル基、ヒドロキシベンジル基、メトキシベンジル基、アセトベンジル基、メトキシカルボニルベンジル基、N,N−ジメチルアミノベンジル基、メトキシカルボニルオキシベンジル基、及びアセトキシベンジル基よりなる群から選ばれる1つのベンジル基と、メチル基とを有するスルホニウムカチオン;
クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メチル−ヒドロキシフェニル基、メチル−ヒドロキシ−ブチルフェニル基、及びクロロ−ヒドロキシフェニル基よりなる群から選ばれる1つのフェニル基と、クロロベンジル基又はジクロロベンジル基と、メチル基とを有するスルホニウムカチオン;
ニトロフェニル基又はシアノフェニル基と、クロロベンジル基と、メチル基とを有するスルホニウムカチオン;
ヒドロキシフェニル基と、ニトロベンジル基、シアノベンジル基、ヒドロキシベンジル基、メトキシベンジル基、アセトベンジル基、メトキシカルボニルベンジル基、ジメチルアミノベンジル基、メトキシカルボニルオキシベンジル基、及びアセトキシベンジル基よりなる群から選ばれる1つのベンジル基と、メチル基とを有するスルホニウムカチオンなど。
【0048】
(iii)フェニル基及び2つのベンジル基を有するスルホニウムカチオン。
例えば、フェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メチル−ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシ−ブチルフェニル基、メチル−ヒドロキシ−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、アセトフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、メトキシカルボニルオキシフェニル基、アセトキシフェニル基、クロロ−ヒドロキシフェニル基、及びクロロ−ヒドロキシフェニル基よりなる群から選ばれる1つのフェニル基と、2つのベンジル基とを有するスルホニウムカチオンなど。
【0049】
(iv)フェニル基、無置換ベンジル基及び置換ベンジル基を有するスルホニウムカチオン。
例えば、フェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メチル−ヒドロキシフェニル基、メチル−ヒドロキシ−ブチルフェニル基、及びクロロ−ヒドロキシフェニル基よりなる群から選ばれる1つのフェニル基と、ベンジル基と、クロロベンジル基とを有するスルホニウムカチオン;
フェニル基、メチル−ヒドロキシ−ブチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メチル−ヒドロキシフェニル基、及びクロロ−ヒドロキシフェニル基よりなる群から選ばれる1つのフェニル基と、ベンジル基と、ジクロロベンジル基とを有するスルホニウムカチオンなど。
【0050】
式(3)のX-としては、例えば、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、及びスルホン酸イオン(例えばトリフルオロメタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、p−ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、1−ナフタレンスルホン酸イオン、1−ピレンスルホン酸イオンなど。好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオンなど)などが挙げられる。
【0051】
好ましいスルホニウム塩は、4−アセトキシフェニル・ジメチルスルホニウムカチオン、4−ヒドロキシフェニル・ベンジル・メチルスルホニウムカチオン、4−アセトキシフェニル・ベンジル・メチルスルホニウムカチオン、4−ヒドロキシフェニル・ジベンジルスルホニウムカチオン、又は4−アセトキシフェニル・ジベンジルスルホニウムカチオンと、AsF6-又はSbF6-との塩である。特に好ましいスルホニウム塩は、4−ヒドロキシフェニル・ベンジル・メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートである。
【0052】
スルホニウム塩は、例えば、サンエイドSI−60L、同SI−80L、同SI−100L、同SI−110L、同SI−145、同SI−150、同SI−160、同SI−180L、及び同SI−250(以上、三新化学工業(株)製);アデカオプトマーSP−170及び同SP−172(以上、(株)アデカ製)などの商品名で市販されている。
【0053】
〈ベンゾチアゾリウム塩〉
ベンゾチアゾリウム塩としては、式(4)で表される塩が好ましい。
【0054】
【化3】

【0055】
式(4)において、R21及びR22は1価の置換基を表し、nは0〜4の整数を表し、Y-は、1価のアニオンを表す。
21としては、例えば、置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基(特に置換されていてもよいベンジル基)を挙げることができる。
22としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基、−OR23、−COR24、−COOR25、−NR2627、−OCOOR28、−OCOR29等を挙げることができる(前記R23〜R27は、互いに独立に、水素原子、C1-5アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C6-10アリール基又はC7-11アラルキル基を表し、R28及びR29は、互いに独立に、C1-5アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C6-10アリール基又はC7-11アラルキル基を表す。)。
【0056】
式(4)のY-としては、例えば、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、及びスルホン酸イオン(例えばトリフルオロメタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、p−ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、1−ナフタレンスルホン酸イオン、又は1−ピレンスルホン酸イオンなど)などが挙げられる。
【0057】
好ましいベンゾチアゾリウム塩としては、3−ベンジルベンゾチアゾリウムカチオン類(例えば3−ベンジルベンゾチアゾリウムカチオン、3−(4−メトキシベンジル)ベンゾチアゾリウムカチオン、3−ベンジル−2−メチルベンゾチアゾリウムカチオン、3−ベンジル−2−クロロベンゾチアゾリウムカチオン、3−ベンジル−5−クロロベンゾチアゾリウムカチオン)と、AsF6-、SbF6-、PF6-、BF4-、トリフルオロメタンスルホン酸イオン又はp−トルエンスルホン酸イオンとの塩などが挙げられる。より好ましいベンゾチアゾリウム塩は、3−ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネートである。
【0058】
〈熱酸発生剤(D)の含有量〉
熱酸発生剤(D)を使用する場合、その含有量は、アミノトリアジン類(B)100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは1〜30質量部である。熱酸発生剤(D)の量が少なすぎると、縮合反応を促進する効果が充分に発揮されず、場合によっては硬化塗膜の耐溶剤性が低くなることがある。一方、この量が過剰であると、熱硬化性樹脂組成物の保存安定性が低下する。
【0059】
〈他の添加剤(E)〉
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、充填剤、他の高分子化合物、顔料分散剤、密着促進剤、熱ラジカル発生剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、連鎖移動剤などの他の添加剤(E)を添加しても良い。但し本発明の熱硬化性樹脂組成物はフォトリソグラフィでのパターン形成に用いることは予定しておらず、前述した他の添加剤(E)に光重合開始剤は含まれない。
【0060】
充填剤としては、例えば、ガラス、シリカ、アルミナなどが挙げられる。
他の高分子化合物としては、例えば、エポキシ樹脂及びマレイミド樹脂などの熱硬化性樹脂;並びにポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリフルオロアルキルアクリレート、ポリエステル及びポリウレタンなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0061】
顔料分散剤としては、1種又は2種以上の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤又はノニオン(非イオン)界面活性剤のいずれでもよい。
好ましい界面活性剤には、ポリオキシアルキレン系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールジエステル類など)、エステル系界面活性剤(ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類など)、3級アミン変性ポリウレタン類、ポリエチレンイミン類、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが含まれる。
界面活性剤は、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄化学(株)製)、エフトップ(トーケムプロダクツ社製)、メガファック(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラード(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード及びサーフロン(以上、旭硝子(株)製)、ソルスパース(ゼネカ(株)製)、EFKA(EFKA CHEMICALS社製)、PB821(味の素ファインテクノ(株)製)などの商品名で市販されており、これらを使用できる。
【0062】
密着促進剤は、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのシラン類である。
【0063】
熱ラジカル発生剤として、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。
紫外線吸収剤には、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノンが含まれる。
【0064】
凝集防止剤として、例えばポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
連鎖移動剤として、例えば、ドデシルメルカプタン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。
【0065】
前記熱硬化性樹脂組成物は、硬化塗膜にすることで種々の分野で利用できる。硬化塗膜は、例えば、(1)前記熱硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布する工程(塗布工程)、(2)塗布した熱硬化性樹脂組成物から溶剤を除去して塗膜を形成する工程、(3)加熱によって塗膜を硬化する工程(ポストベーク工程)によって形成される。本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いれば、ポストベーク工程の加熱を従来よりも低温(150〜190℃)で行うことが可能であり、しかも膜の硬度を高めることもできる。以下、各工程について順に説明する。
【0066】
(1)塗布工程
熱硬化性樹脂組成物の塗布には、例えば、スピンコーター、スリット&スピンコーター、スリットコーター(ダイコーター、カーテンフローコーターとも呼ばれることがある。)、インクジェットなどが使用できる。
【0067】
(2)溶剤の除去工程
熱硬化性樹脂組成物の塗布後に、例えば真空乾燥又はプリベークなど、好ましくはプリベークを行うことによって、平滑な未硬化塗膜を形成する。プリベークでは、例えば90℃程度の温度で数分間加熱する。溶剤除去後の塗膜厚さは、例えば、約0.1〜10μm程度である。
【0068】
(3)ポストベーク工程
未硬化塗膜に、通常150〜230℃で10〜120分間ポストベークを施すことによって、硬化塗膜を形成することができる。なお本発明の熱硬化性樹脂組成物は低温硬化性に優れており、ポストベーク温度が190℃以下であっても、高い硬度の硬化塗膜が形成される。
【0069】
本発明の硬化塗膜は、カラーフィルタの一部を構成する透明膜、並びに液晶表示装置に使用されるオーバーコート(保護膜ともいわれる)、絶縁膜及び着色パターンの膜厚をあわせるためのコート層などとして有用である。本発明の硬化塗膜を表示装置(例えば液晶表示装置など)に組み込むことにより、優れた品質の表示装置を高い歩留りで製造できる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお実施例では、含有量ないし使用量を表す「%」及び「部」は、断りが無いかぎり、「質量%」及び「質量部」を表す。
【0071】
合成例1〈樹脂Aaの製造〉
還流冷却器、滴下ロート及び攪拌機を備えたフラスコ内に、窒素を0.03L/分で流して窒素雰囲気とし、乳酸エチル50.00部を添加し、撹拌しながら90℃まで加熱した。次いでメタクリル酸10.33部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート36.4部、及び重合開始剤2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)3.28部を、乳酸エチル59.05部に溶解させた溶液を調製した。該溶液を、90℃に保温したフラスコ内に滴下ロートで1時間かけて滴下した。溶液の滴下終了後、90℃で4時間保持し、その後室温まで冷却して、共重合体(樹脂Aa)の溶液を得た。樹脂Aaでは、モノマー(A1)及びモノマー(A2)の総モル数に対して、モノマー(A1)(メタクリル酸)は30.0モル%であり、モノマー(A2)(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)は70.0モル%である。また樹脂Aaの重量平均分子量(Mw)は6400、分散度(Mw/Mn)は2.01である。
【0072】
合成例2〈樹脂Abの製造〉
還流冷却器、滴下ロート及び攪拌機を備えたフラスコ内に、窒素を0.03L/分で流して窒素雰囲気とし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50.00部を添加し、撹拌しながら90℃まで加熱した。次いでメタクリル酸1.72部、メタクリル酸メチル17.92部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10.41部、及び重合開始剤2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)1.64部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20.12部に溶解させた溶液を調製した。該溶液を、90℃に保温したフラスコ内に滴下ロートで1時間かけて滴下した。溶液の滴下終了後、90℃で4時間保持し、その後室温まで冷却して、共重合体(樹脂Ab)の溶液を得た。樹脂Abでは、モノマー(A1)及びモノマー(A2)の総モル数に対して、モノマー(A1)(メタクリル酸)は20.0モル%であり、モノマー(A2)(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)は80.0モル%である。また樹脂Abの重量平均分子量(Mw)は10000、分散度(Mw/Mn)は2.08である。
【0073】
〈樹脂の分子量測定〉
樹脂Aa及び樹脂Abの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)を、下記条件のGPC法で測定した。Mw及びMnはポリスチレン換算で算出した。
装置;K2479((株)島津製作所製)
カラム;SHIMADZU Shim−pack GPC−80M
カラム温度;40℃
溶媒;THF(テトラヒドロフラン)
流速;1.0mL/min
検出器;RI
【0074】
実施例1〈熱硬化性樹脂組成物1〜8の製造〉
表1に示す組成となるように、バインダー樹脂(A)、アミノトリアジン類(B)及び溶剤(C)を混合して、熱硬化性樹脂組成物1〜8を製造した。なお熱硬化性樹脂組成物2〜4には、表1に示す組成となるように熱酸発生剤(D)を添加した。
【0075】
【表1】

【0076】
〈硬化塗膜の製造〉
2インチ角のガラス基板(Eagle2000;コーニング社製)を、中性洗剤、水及びアルコールで順次洗浄し、乾燥してから、支持体として用いた。このガラス基板上に、熱硬化性樹脂組成物1〜8のそれぞれをスピンコートで塗布し、90℃で3分間プリベークした後、180℃で40分間ポストベークを行った。放冷後、この硬化塗膜の膜厚を測定した。
【0077】
〈硬化塗膜の特性評価〉
上述のようにして得られた硬化塗膜の鉛筆硬度、透過率、及び耐溶剤性を、以下のようにして測定した。これらの結果を表2に示す。
【0078】
(1)鉛筆硬度
JIS K5400に準じて、鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度が5H以上である硬化塗膜が得られた熱硬化性樹脂組成物を、表面硬化性に優れると評価した。
【0079】
(2)透過率
膜厚が1.4〜1.6μmになるように作製した硬化塗膜の膜厚を、膜厚測定装置(DEKTAK3;日本真空技術(株)製)で測定した。次いで硬化塗膜の400nmにおける透過率(%)を、顕微分光測光装置(OSP−SP200;OLYMPUS社製)で測定し、透過率を膜厚1.5μmのときの値に換算した。この換算値を表2に示す。
【0080】
(3)耐溶剤性
耐溶剤性として、以下の膜厚保持率、透過率保持率及び密着残存率を評価した。
(3−1)膜厚保持率及び透過率保持率
作製した硬化塗膜を40℃のN−メチルピロリドン中に40分間浸漬し、その前後で膜厚及び透過率を測定し、次式で計算される膜厚保持率及び透過率保持率を算出した。
膜厚保持率(%)=(浸漬後の膜厚(μm)/浸漬前の膜厚(μm))×100
透過率保持率(%)=(浸漬後の透過率(%)/浸漬前の透過率(%))×100
(3−2)密着残存率
40℃のN−メチルピロリドン中に40分間浸漬した後の硬化塗膜に、市販のカッターナイフを用いて、一辺が1mmである正方形を100個作製した。そして市販のセロハンテープを使用して、剥離試験を行い、剥離せずに基板上に残った正方形の数(密着残存率(%))を測定した。
【0081】
【表2】

【0082】
表1に示すように熱硬化性樹脂組成物1〜4は、アミノトリアジン類(B)を含有し、且つ構成モノマー(A1)及びモノマー(A2)の共重合比が適切な本発明例である。一方、熱硬化性樹脂組成物5はアミノトリアジン類(B)を含有しない比較例であり、熱硬化性樹脂組成物6〜8は、構成モノマー(A1)及びモノマー(A2)の共重合比が本発明の要件を満たさない比較例である。
【0083】
表2に示す結果から、アミノトリアジン類(B)を含有しない熱硬化性樹脂組成物5は、本発明例の熱硬化性樹脂1〜4に比べて、表面硬化性に劣ることが分かる。また熱硬化性樹脂6〜8は、他のモノマー(A3)としてメタクリル酸メチルを用いているにもかかわらず、本発明例の熱硬化性樹脂1〜4よりも表面硬化性に劣っている。メタクリル酸メチルのホモポリマーは高いガラス転移温度を有するので、共重合体の構成モノマーとしてメタクリル酸メチルを用いると、一般に硬度に優れた硬化塗膜が得られることが知られている。それにもかかわらず熱硬化性樹脂組成物6〜8からは、硬度に劣る硬化塗膜しか得られていない。この結果から、モノマー(A1)及びモノマー(A2)の共重合比を適切に制御することによって、硬度に優れた硬化塗膜が得られることが分かる。さらに本発明例の熱硬化性樹脂組成物1〜4から得られた硬化塗膜は、190℃以下の低温で硬化しても上記硬度が得られており、かつ透過率及び耐溶剤性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬度、低温硬化性、透明性及び耐溶剤性に優れた硬化塗膜を形成できる。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、透明膜(カラーフィルタの透明膜など)、並びに表示装置の保護膜(オーバーコート)、絶縁膜及びコート層などを形成するために有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂(A)、アミノトリアジン類(B)及び溶剤(C)を含有し、
バインダー樹脂(A)が、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物(A1)と、水酸基を有する不飽和化合物(A2)とを構成モノマーとする共重合体であり、
不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物(A1)と水酸基を有する不飽和化合物(A2)との総モル数に対して、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物(A1)が25〜65モル%であり、水酸基を有する不飽和化合物(A2)が35〜75モル%である
ことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに熱酸発生剤(D)を含有する請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物から製造されたことを特徴とする硬化塗膜。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布し、
この樹脂組成物から溶剤を除去して、塗膜を形成し、
温度150〜190℃で加熱することを特徴とする硬化塗膜の製造方法。
【請求項5】
基板の透明膜、保護膜、絶縁膜又はコート層が請求項3に記載の硬化塗膜で構成されていることを特徴とするデバイス。

【公開番号】特開2009−215328(P2009−215328A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56959(P2008−56959)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】