説明

熱硬化性樹脂組成物、それを用いたドライフィルムおよびプリント配線板

【課題】ソルダーレジスト用の組成物としての、優れた隠蔽性とレーザ加工に適した特性とを兼ね備えた熱硬化性樹脂組成物、それを用いたドライフィルムおよびプリント配線板を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂と、(B)着色剤と、(C)硬化剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物である。(B)着色剤が、波長350〜550nmまたは570〜700nmの範囲のうち、いずれか一方または両方の範囲内に吸光度のピークを有し、かつ、レーザー加工に使用されるレーザーの発振波長に吸収を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱硬化性樹脂組成物、それを用いたドライフィルムおよびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器などに用いられるプリント配線板において、電子部品を実装する際には、回路パターンの形成された基板上の接続孔を除く領域に、樹脂組成物を塗布するかまたはドライフィルム上の乾燥塗膜をラミネートした後、硬化してなるソルダーレジストが形成される。このソルダーレジストは、不必要な部分へのはんだの付着を防止するとともに、回路の導体を保護するものである。
【0003】
また、ソルダーレジストには、回路パターンの、熱ないし湿気等による変色や、電気的な変色、傷、汚れなどを隠蔽して、プリント配線板の外観性の悪化を防止する役割もある。そのため、隠蔽性を向上するために、ソルダーレジストを形成するために用いられる樹脂組成物やドライフィルムには通常、着色剤が添加される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、近年、電子機器の小型化や高機能化の要求に基づき、プリント配線板についても回路パターンの微細化が進んでおり、これに伴い、ソルダーレジストについてもより一層薄膜化が進んでいる。その結果、ソルダーレジストの隠蔽性が低下して、下層である回路の変色等がソルダーレジストを通して見えてしまい、外観不良に繋がるという問題が生じていた。よって、他の要求性能を損なうことなく、外観不良の発生を防止できるソルダーレジストの実現が求められていた。
【0005】
また、熱硬化性樹脂組成物を用いて基板上にソルダーレジストパターンを形成する場合、実装用のビアホールは、通常、レーザー光の照射により形成される。したがってソルダーレジストには、レーザ加工に適した特性を備えていることも望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−258613号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ソルダーレジスト用の組成物としての、優れた隠蔽性とレーザ加工に適した特性とを兼ね備えた熱硬化性樹脂組成物、それを用いたドライフィルムおよびプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、ソルダーレジスト用の熱硬化性樹脂組成物中に配合する着色剤として、特定の吸光度ピークおよび吸収波長を有するものを用いることで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)着色剤と、(C)硬化剤とを含有する、銅回路上に形成される熱硬化性樹脂組成物において、
前記(B)着色剤が、波長350〜550nmまたは570〜700nmの範囲のうち、いずれか一方または両方の範囲内に吸光度のピークを有し、かつ、レーザー加工に使用されるレーザーの発振波長に吸収を有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、前記レーザーは、好適には炭酸ガスレーザー、UV−YAGレーザーおよびエキシマレーザーのうちから選択されるいずれかである。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、さらに、(D)無機充填剤として、その屈折率と、樹脂成分の屈折率との差が0.05以上であるものの1種または2種以上を、固形分換算として、30〜80質量%含有することが好ましい。
【0011】
また、本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、上記本発明の熱硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜を備えることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明のプリント配線板は、回路パターンが形成された基板上に、上記本発明の熱硬化性樹脂組成物、または、キャリアフィルム上に該熱硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜を備えるドライフィルム、を用いて形成してなる硬化膜を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記構成としたことにより、ソルダーレジスト用の組成物としての、優れた隠蔽性とレーザ加工に適した特性とを兼ね備えた熱硬化性樹脂組成物、それを用いたドライフィルムおよびプリント配線板を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】酸化前後における銅の吸光度スペクトルの差を示すグラフである。
【図2】実施例で用いたPigment Blue 15:3のUV−vis(紫外・可視)スペクトルである。
【図3】実施例で用いたPigment Yellow 147のUV−vis(紫外・可視)スペクトルである。
【図4】実施例で用いたPigment Red 177のUV−vis(紫外・可視)スペクトルである。
【図5】実施例で用いたPigment Blue 15:3およびPigment Yellow 147のIR(赤外吸収)スペクトルである。
【図6】(a),(b)は、実施例2および比較例1の開口部(焦点ボトム)をそれぞれ示す写真である。
【図7】実施例で用いたPigment Blue 15:1のUV−vis(紫外・可視)スペクトルである。
【図8】実施例で用いたPigment Blue 15:1のIR(赤外吸収)スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)着色剤と、(C)硬化剤とを必須成分として含有するものであって、(B)着色剤として、特定の吸光度ピークおよび吸収波長を有するものを用いた点に特徴がある。
【0016】
具体的には、(B)着色剤として、銅回路の酸化を隠蔽するのに適した特定の波長に吸光度のピークを有し、かつ、レーザー加工に使用されるレーザーの発振波長に吸収を有するものを用いる。上記特定の波長領域は、図1に示すように、回路パターンを形成する銅の酸化前後における吸光度スペクトルの差を取ったとき、強度の強い2つの波長範囲に対応する。よって、(B)着色剤が、これら2つの波長領域のうち少なくとも一方に吸光度のピークを有するものとすることで、下層の銅からなる回路の変色を、効果的に隠蔽することが可能となる。この2つの波長領域は、具体的には、350nm〜550nmおよび570nm〜700nmの範囲であり、好ましくは400nm〜550nmおよび570nm〜650nmの範囲であり、より好ましくは430nm〜530nmおよび580nm〜640nmの範囲であり、さらに好ましくは430nm〜520nmおよび580nm〜630nmの範囲であり、最も好ましくは460nm〜500nmおよび580nm〜620nmの範囲である。また、(B)着色剤が、レーザー加工に使用されるレーザーの発振波長に吸収を有するものとすることで、より低いエネルギーで、ソルダーレジストのレーザー加工を行うことが可能となる。かかるレーザー加工に用いられるレーザーとしては、気体レーザー、固体レーザーおよび他の産業用に用いられる各種レーザーを挙げることができ、好適には、気体レーザーとしては炭酸ガスレーザーおよびエキシマレーザーであり、固体レーザーとしてはUV−YAGレーザーである。より好適には、炭酸ガスレーザーおよびUV−YAGレーザーである。これらのレーザーの発振波長は、JIS C6802「レーザー製品の安全基準」に規定される方法により測定されるものである。
【0017】
本発明において、かかる(B)着色剤としては、上記2つの波長領域のうち少なくとも一方に吸光度のピークを有し、かつ、レーザー加工に使用されるレーザーの発振波長に吸収を有するものであれば、1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。使用可能な着色剤としては、青、緑、黄、赤などの公知の着色剤を混合して使用することができ、顔料、染料および色素のうちのいずれでもよい。具体的には、フタロシアニン系であるPigmentBlue15:1、Pigment Blue15:3、アンスラキノン系であるPigment Red177等を挙げることができる。
【0018】
なお、単独では上記2つの波長領域に十分な吸光度のピークを持たない着色剤についても、2つ以上を組み合わせて用いることで、銅回路の酸化を隠蔽するのに十分な吸光度のピークを持つものとすることが可能である場合もある。この場合、用いる着色剤の少なくとも一つが、レーザー加工に使用されるレーザーの発振波長に吸収を有するものであればよい。(B)着色剤の配合量は、好適には、固形分換算として、組成物全体の0.05〜5質量%の範囲とする。着色剤の配合量が上記範囲よりも少ないと、十分な隠蔽性を得られないおそれがあり、一方、上記範囲よりも多いと、ソルダーレジストとしての熱的特性や電気的特性等を損なうおそれがあり、いずれも好ましくない。
【0019】
本発明においては、(B)着色剤として、上記条件を満足するものを用いるものであればよく、これにより本発明の所期の効果を得ることができ、それ以外の点については、常法に従い適宜実施することができ、特に制限されるものではない。
【0020】
(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アミノクレゾール型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂などが用いられる。これらエポキシ樹脂は、単独で、あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
【0021】
特に、得られる組成物を用いてドライフィルムとした場合において良好なフィルム特性を得るためには、(A)エポキシ樹脂として、20℃で液状のエポキシ樹脂と、40℃で固形のエポキシ樹脂との混合物を用いることが好ましい。その配合割合としては、好適には、エポキシ樹脂の総量中に、固形分換算として、20℃で液状のエポキシ樹脂を10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは25〜60質量%の割合で配合するものとする。これは、20℃で液状のエポキシ樹脂の配合量が、10質量%未満であるとフィルム化が困難となり、一方、80質量%を超えると、フィルム表面が粗化されやすくなるためである。ここで、本発明における「液状」の判定は、特開2010−180355号公報に記載の判定方法に基づいて実施することができる。
【0022】
20℃で液状のエポキシ樹脂としては、例えば、828(三菱化学社製)、YD−128(東都化成社製)、840,850(DIC社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、806,807(三菱化学社製)、YDF−170(東都化成社製)、830,835,N−730A(DIC社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、ZX−1059(東都化成社製)などのビスフェノールA、F混合物、YX−8000,8034(三菱化学社製)、ST−3000(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、630(三菱化学社製)、ELM−100(住友化学社製)などのアミノフェノール型エポキシ樹脂、HP−820(DIC社製)などのアルキルフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0023】
また、40℃で固形のエポキシ樹脂としては、例えば、エピクロン1050,同3050(DIC社製)、エピコート1001,同1002,同1003(三菱化学社製)、エポトートYD−011,同YD−012(東都化成社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポトートYDF−2001,同2004(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、YDB−400(東都化成社製)、EPICLON152,153(DIC社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、EXA−1514(DIC社製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、N−770,775(DIC社製)、EPPN−201H,RE−306(日本化薬社製)、152,154(三菱化学社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、EOCN−102S,103S,104S(日本化薬社製)、YDCN−701,702,703,704(東都化成社製)、N−660,670,680(DIC社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、157S70(三菱化学社製)、N−865(DIC社製)などのビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、YX−4000(三菱化学社製)、NC−3000(日本化薬社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、NC−7000L(日本化薬社製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、HP−7200(DIC社製)、XD−1000(日本化薬社製)などのジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、EPPN−501H,502H(日本化薬社製)、1031S(三菱化学社製)、HP−5000(DIC社製)などのトリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0024】
また、(A)エポキシ樹脂として、レゾルシノール型エポキシ樹脂を含有させることも好ましい。レゾルシノール型エポキシ樹脂を用いると銅回路の酸化が抑制され、外観性の低下を抑制する効果が得られる。特に、薄膜形成の際には、顕著な効果がある。レゾルシノール型エポキシ樹脂としては、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0025】
(C)硬化剤としては、エポキシ硬化剤として、従来公知の各種エポキシ樹脂硬化剤やエポキシ樹脂硬化促進剤を用いることができる。具体的には例えば、フェノール樹脂、イミダゾール化合物、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂、酸無水物、脂肪族アミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、第3級アミン、ジシアンジアミド、グアニジン類、またはこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもののほか、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム、テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物、DBUもしくはその誘導体などを挙げることができ、硬化剤または硬化促進剤のいかんに拘らず、単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0026】
上記エポキシ硬化剤の中でも、フェノール樹脂やイミダゾール化合物、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂などが好適であり、特にはフェノール樹脂やイミダゾール化合物を含有することが好ましく、さらには、少なくともフェノール樹脂を含有することが好ましい。フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、クレゾール/ナフトール樹脂、ポリビニルフェノール類、フェノール/ナフトール樹脂等の公知慣用のものを、単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0027】
かかるフェノール樹脂としては、具体的には、フェノライトTD−2090,同2131,ベスモールCZ−256−A(DIC社製)、シヨウノールBRG−555,同BRG−556(昭和電工社製)、ミレックスXLC−4L,同XLC−LL(三井化学社製)、PP−700,同1000,DPP−M,同3H,DPA−145,同155(新日本石油化学社製)、SK−レジンHE100C,SK−レジンHE510,同900(住金ケミカル社製)、HF−1M,HF−3M,HF−4M,H−4(明和化成社製)、NHN,CBN(日本化薬社製)、HPC−9500(DIC社製)などを挙げることができ、これらフェノール樹脂を、単独で、あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
【0028】
上記フェノール樹脂は、(A)エポキシ樹脂中のエポキシ基と、フェノール樹脂中の水酸基との比率が、水酸基/エポキシ基(当量比)=0.2〜2となるような割合で配合することが好ましい。水酸基/エポキシ基(当量比)を上記範囲内とすることで、デスミア工程におけるフィルム表面の粗化を防止することができる。より好ましくは水酸基/エポキシ基(当量比)=0.2〜1.5であり、さらに好ましくは水酸基/エポキシ基(当量比)=0.3〜1.0である。
【0029】
上記ポリカルボン酸およびその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物およびその酸無水物であり、例えば(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物などの他、カルボン酸末端イミド樹脂等のカルボン酸末端を有する樹脂が挙げられる。市販品としては、BASFジャパン社製のジョンクリル(商品群名)、サートマー社製のSMAレジン(商品群名)、新日本理化社製のポリアゼライン酸無水物、DIC社製のV−8000、V−8002等のカルボン酸末端ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0030】
上記シアネートエステル樹脂は、一分子中に2個以上のシアネートエステル基(−OCN)を有する化合物である。シアネートエステル樹脂は、公知のものをいずれも使用することができる。シアネートエステル樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、アルキルフェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂が挙げられる。また、一部がトリアジン化したプレポリマーであってもよい。シアネートエステル樹脂の市販品としては、ロンザジャパン社製のフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂PT30、ロンザジャパン社製のビスフェノールA型ジシアネートで一部がトリアジン化されたプレポリマーBA230、ロンザジャパン社製のジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル樹脂DT−4000、DT−7000等が挙げられる。
【0031】
上記活性エステル樹脂は、一分子中に2個以上の活性エステル基を有する樹脂である。活性エステル樹脂は、一般に、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。中でも、ヒドロキシ化合物としてフェノール化合物またはナフトール化合物を用いて得られる活性エステル化合物が好ましい。フェノール化合物またはナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。市販されている活性エステル化合物としては、例えば、DIC社製EXB−9451、EXB−9460、三菱化学社製DC808、YLH1030)などが挙げられる。
【0032】
(C)硬化剤の配合量としては、固形分換算として、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、1〜70質量部の範囲とすることが好ましい。(C)硬化剤の配合量が上記範囲よりも少ないと、硬化不足となるおそれがあり、一方、上記範囲を超えて多量に配合しても、硬化促進効果を増大させることはなく、かえって耐熱性や機械強度を損なう問題が生じ易いので、好ましくない。より好ましくは5〜65質量部であり、さらに好ましくは10〜50質量部である。
【0033】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、上記(A)エポキシ樹脂、(B)着色剤および(C)硬化剤に加えて、さらに、(D)無機充填剤を配合することが好ましい。かかる(D)無機充填剤としては、好適には、その屈折率と、樹脂成分の屈折率との差が0.05以上であるものを用いる。樹脂成分との間の屈折率差が大きい無機充填剤を用いることで、組成物の隠蔽性をより高めることができる。ここで、本発明において樹脂成分とは、(A)エポキシ樹脂を初めとする、組成物中に含まれる樹脂の混合物を意味する。一般的に、樹脂成分の屈折率は1.51〜1.59であるので、無機充填剤の屈折率は、具体的には1.46以下または1.64以上とすることが好ましい。また、本発明においては、(D)無機充填剤として、レーザー加工性に優れるものを用いることも好ましい。
【0034】
その屈折率と、樹脂成分の屈折率との差が0.05以上の(D)無機充填剤としては、例えば、硫酸バリウム(屈折率:1.64)、シリカ(屈折率:1.46)、酸化アルミニウム(屈折率:1.76)、酸化チタン(屈折率:2.52)などを用いることができる。また、レーザー加工性に優れる(D)無機充填剤としては、炭酸ガスレーザーの波長帯に強い吸収ピークを持ち、かつ、ビアホール形成の際に無機充填剤の残渣が残り難いものとして、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等が好ましく、また、より残渣が残らないものとして、硫酸バリウムがより好ましい。これら無機充填剤は、単独で、あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
【0035】
そのほか、マイカ、アルミナ等の金属酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物なども用いることが可能である。
【0036】
(D)無機充填剤の配合量は、固形分換算として、30〜80質量%であることが望ましい。無機充填剤の配合量がこの範囲より少ないと、組成物、または、その組成物から形成されるドライフィルムを用いて得られる硬化膜の硬度などの塗膜性能が不十分となるおそれがあり、また、レーザー加工性も低下する。一方、無機充填剤の配合量がこの範囲を超えると、樹脂フィルムと積層した際にその界面で剥離が生じ、クラックを生ずる原因となるおそれがある。また、レベリング性などの塗布性が劣化して、レーザー加工後のデスミア工程でビアホールの側面や周囲から脱粒が生じ、ビアホールの形状が不安定となるおそれもある。無機充填剤の配合量は、より好ましくは30〜70質量%であり、さらに好ましくは35〜70質量%である。なお、上記無機充填剤の平均粒子径は、好適には、レーザー回折散乱法により測定される粒子径による平均粒子径で0.01μm以上10μm未満であり、より好適には0.05μm以上5μm未満、さらに好適には0.1μm以上2μm未満である。
【0037】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに、フェノキシ樹脂、硬化触媒、添加剤、溶剤などを配合してもよい。
【0038】
フェノキシ樹脂は、造膜性を改善するために配合することができ、例えば、1256,4250,4275,YX8100BH30,YX6954BH30(三菱化学社製)、YP50,YP50S,YP55U,YP70,ZX−1356−2,FX−316,YPB−43C,ERF−001M30,YPS−007A30,FX−293AM40(東都化成社製)等が挙げられる。これらフェノキシ樹脂は、単独で、あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
【0039】
硬化触媒としては、ジシアンジアミド、芳香族アミン、イミダゾール類、酸無水物などを用いることができる。具体的には、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物など、また、市販されているものとしては、例えば、四国化成工業社製の、2MZ−A,2MZ−OK,2PHZ,2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N,U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU,DBN,U−CATSA102,U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などを挙げることができる。これら硬化触媒は、単独で、あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
【0040】
また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、これら密着性付与剤としても機能する化合物を、熱硬化触媒と併用することが好ましい。
【0041】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらにウレタン化触媒を加えることができる。ウレタン化触媒としては、錫系触媒、金属塩化物、金属アセチルアセトネート塩、金属硫酸塩、アミン化合物およびアミン塩よりなる群から選択される1種以上のウレタン化触媒を使用することが好ましい。
【0042】
上記錫系触媒としては、例えば、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物、無機錫化合物などが挙げられる。
【0043】
上記金属塩化物としては、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属の塩化物で、例えば、塩化第二コバルト、塩化第一ニッケル、塩化第二鉄などが挙げられる。
【0044】
上記金属アセチルアセトネート塩は、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属のアセチルアセトネート塩であり、例えば、コバルトアセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネートなどが挙げられる。
【0045】
上記金属硫酸塩としては、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属の硫酸塩で、例えば、硫酸銅などが挙げられる。
【0046】
また、本発明では、反応触媒として金属化合物を使用することができる。中でも、コバルトアセチルアセトナートが好適であり、その金属化合物の添加量は、熱硬化性樹脂組成物に対し、金属換算で10〜500ppm、好ましくは25〜200ppmの範囲である。
【0047】
添加剤としては、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤のうちの少なくともいずれか1種、ヒドロキシベンゾフェノン類、ヒドロキシベンゾエート類、ベンゾトリアゾール類、シアノアクリレート類、トリスヒドロキシメタン系エポキシ樹脂、テトラキスヒドロキシエタン系エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の紫外線吸収剤、エポキシ系、ビニル系、アクリル系、メタクリル系、アミノ系、フェニル系、メルカプト系、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、レオロジー調整剤、酸化防止剤、防錆剤などの公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0048】
溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを用いることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。これら溶剤は、単独で、あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。なお、溶剤の配合量は、組成物の印刷性やフィルム形成性に基づき、選定することができる。
【0049】
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、上記本発明の熱硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥してなる乾燥塗膜を備えるものである。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、キャリアフィルム上に塗布し、乾燥させ、必要に応じて保護フィルムをラミネートしながら巻き取ることで、ドライフィルムの形態とすることができる。
【0050】
キャリアフィルムの材質としては、好適にはポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることができ、その他、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース、ポリエーテルサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどを用いることができる。キャリアフィルムの厚みは、好適には8〜60μmである。キャリアフィルムの厚みが薄いほど、キャリアフィルム上から加工した際のレーザー加工性は向上するが、厚さが8μm未満であると、ビアホール周辺のレーザー照射によるダメージを抑制することが困難となる。一方、キャリアフィルムの厚みが60μmを超えると、レーザー光の透過率が低下して、開口径が小さくなる。キャリアフィルムの厚みは、より好ましくは10〜50μmであり、さらに好ましくは12〜38μmである。
【0051】
保護フィルムの材質としては、キャリアフィルムに用いるものと同様のものを用いることができ、好適にはPETまたはPPである。保護フィルムの厚みは、好適には5〜50μmである。保護フィルムの厚みが5μm未満であると、保護フィルムをラミネートする際のハンドリングが悪化する傾向にある。一方、保護フィルムの厚みが50μmを超えると、ドライフィルムの形態にした際の巻き径が大きくなりすぎて、搬送・取り扱いが困難となる。保護フィルムの厚みは、より好ましくは8〜38μmであり、さらに好ましくは10〜30μmである。
【0052】
ここで、熱硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法などの方法を用いることができる。また、揮発乾燥方法としては、熱風循環式乾燥炉、IR(赤外線)炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど、蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて、乾燥機内の熱風を、向流接触させる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方法を用いることができる。
【0053】
また、本発明のプリント配線板は、回路パターンが形成された基板上に、上記本発明の熱硬化性樹脂組成物、または、ドライフィルムを用いて得られる硬化膜を有するものである。ここで、本発明のプリント配線板は、上記本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて製造してもよく、上記本発明のドライフィルムを用いて製造してもよい。その製造方法について、以下に説明する。
【0054】
まず、回路パターンが形成された基板に対し、脱脂やソフトエッチングなどの前処理を行う。その後、有機溶剤を用いて、塗布方法に適した粘度に調整された熱硬化性樹脂組成物を、上記基板上に、乾燥膜厚で10〜50μmとなるように塗布する。次いで、40〜120℃の温度で、組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの乾燥塗膜を形成する。
【0055】
なお、上記乾燥塗膜の形成工程においては、上記本発明のドライフィルムを基板上にラミネートすることにより、乾燥塗膜を形成することもできる。この場合、ラミネート後のキャリアフィルムは、ラミネート後、熱硬化後、レーザー加工後またはデスミア処理後のいずれかに、剥離すればよい。
【0056】
次に、乾燥塗膜が形成された基板を、130〜200℃で30〜120分間加熱し、熱硬化させて、硬化膜(樹脂絶縁層)を形成する。次に、このようにして形成された樹脂絶縁層の、回路パターンが形成された基板上の所定の位置に対応する位置に、レーザーを照射してビアホールを形成し、回路配線を露出させることで、プリント配線板を製造することができる。
【0057】
この際、ビアホール内の回路配線上に除去しきれないで残留した成分(スミア)が存在する場合には、このスミアを、過マンガン酸塩溶液等のデスミア処理の薬液を用いて分解除去するデスミア処理を行う。このデスミア処理には、プラズマを用いることができる。このようなプラズマ処理においては、例えば、真空プラズマ装置や、常圧プラズマ装置などを用いることができ、酸素やアルゴン、ヘリウム、四フッ化炭素などのガスを用いたプラズマ、および、これらの混合ガスのプラズマなど、公知のプラズマを用いることができる。
【0058】
なお、両面基板や多層基板においても、上記と同様にして、熱硬化性樹脂組成物、または、ドライフィルムを用いて硬化膜を形成し、レーザーによりビアホールを形成した後、所望に応じデスミア処理を行えばよい。
【0059】
このようにして製造されたプリント配線板には、さらに、回路配線に金めっきを施し、あるいはプリフラックス処理した後、実装される半導体チップなどの電子部品を、金バンプやはんだバンプにより接合して、搭載することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記表中に示す各成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルを用いて混練して、各実施例および比較例の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0061】
【表1】

*1)ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(20℃で液状)(三菱化学社製,エポキシ当量184〜194)
*2)レゾルシノール型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製,エポキシ当量117)
*3)ナフトール型エポキシ樹脂(DIC社製,エポキシ当量135〜165)
*4)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製,エポキシ当量200〜230)の固形分60%のシクロヘキサノン溶液
*5)フェノールノボラック樹脂(DIC社製,s.p.78〜82℃)の固形分60%のシクロヘキサノン溶液
*6)フェノキシ樹脂(三菱化学社製)の固形分30%のシクロヘキサノン溶液
*7)Pigment Blue 15:3(UV−visスペクトル(図2),IRスペクトル(図5))
*8)Pigment Yellow 147(UV−visスペクトル(図3),IRスペクトル(図5))
*9)Pigment Red 177(UV−visスペクトル(図4))
*10)球状シリカ(アドマテックス社製)
*11)硫酸バリウム(堺化学社製)
*12)イミダゾール(四国化成工業社製)
*13)溶剤
*14)*1,*3,*4,*5,*6の混合物(実施例5は*2,*3,*4,*5,*6の混合物)の屈折率である。
*15)Pigment Blue 15:1(UV−visスペクトル(図7),IRスペクトル(図8))
【0062】
(実施例1〜6、比較例1〜2)
表1のようにして調製した各熱硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いて、乾燥後の膜厚が30μmとなるように、厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに順次塗布し、90℃で乾燥させて、各ドライフィルムを作製した。
【0063】
次に、回路基板として、銅厚18μmの導電層が形成された400mm×300mm×厚み0.8mmの両面銅張積層板(MCL−E−679FGR,日立化成工業社製)を用い、これに処理剤(CZ−8100+CL−8300,メック社製)を用いて前処理を施すことにより、銅エッチング量1μm相当のプロファイルを形成した。この前処理の施された銅張積層板に、各ドライフィルムを、2チャンバー式真空ラミネーター(CVP−300,ニチゴーモートン社製)により、ラミネート温度100℃、真空度5mmHg以下、圧力5kg/cmの条件でラミネートし、170℃で1時間加熱硬化することにより硬化膜を形成して、評価用基板を作製した。
【0064】
<レーザー加工性>
評価用各基板の硬化膜に対し、炭酸ガスレーザー(LC−2K2,日立ビアメカニクス社製)を用いて波長9.3μmのレーザー光を照射して、硬化膜にビアホールを形成した。照射条件は、開口径が65μmとなる条件とし、アパチャーは3.1mm、出力は1.5W、パルス幅は20μsec、バーストモードは2ショットとした。
【0065】
このような処理が行われた評価用各基板について、顕微鏡観察による評価を行った。具体的には、評価用基板の表面状態を、レーザー顕微鏡(VK−8500,KEYENCE社製)により観察して、レーザー加工後のトップ径およびボトム径を測長し、レーザー加工性を評価した。結果は、顔料を含まない比較例1と比較して、レーザー加工後のボトム径が大きくかつビア底のスミアが少ない場合を◎、レーザー加工後のボトム径が大きい場合を○、 レーザー加工後のボトム径が変わらない場合を×とした。その結果を、表2に示す。また、図6(a)に実施例2の、図6(b)に比較例1の開口部(焦点ボトム)の写真図をそれぞれ示す。
【0066】
【表2】

【0067】
表2に示す結果から明らかなように、実施例1,2,3,4,5,6については、顔料を含まない比較例1よりもボトム径が大きく、レーザー加工性の向上が確認された。また、実施例4については比較例1よりもビア底のスミアの量が少なくなっていることが確認された。一方、比較例2については、顔料を含まない比較例1とボトム径が変わらず、レーザー加工性の向上は確認されなかった。
【0068】
<遮蔽性>
評価用各基板につき、硬化膜上からの銅回路の変色を目視により確認して、回路の隠蔽性について評価した。変色が確認されない場合を○、変色がわずかに確認された場合を△、変色が確認された場合を×とした。その結果を、表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
表3中に示す結果から明らかなように、実施例1,2,3,4,5,6については、評価用基板の全面において、硬化膜による隠蔽性が高く、変色が確認されなかった。これに対し、比較例1、2については、変色が確認された。また、レゾルシノール型エポキシ樹脂を用いた実施例5については、評価用基板の全面において銅回路の酸化が抑制され、外観性の低下を抑制する効果が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、(B)着色剤と、(C)硬化剤とを含有する、銅回路上に形成される熱硬化性樹脂組成物において、
前記(B)着色剤が、波長350〜550nmまたは570〜700nmの範囲のうち、いずれか一方または両方の範囲内に吸光度のピークを有し、かつ、レーザー加工に使用されるレーザーの発振波長に吸収を有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記レーザーが、炭酸ガスレーザー、UV−YAGレーザーおよびエキシマレーザーのうちから選択されるいずれかである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(D)無機充填剤として、その屈折率と、樹脂成分の屈折率との差が0.05以上であるものの1種または2種以上を、固形分換算として、30〜80質量%含有する請求項1または2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
キャリアフィルム上に、請求項1〜3のうちいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜を備えることを特徴とするドライフィルム。
【請求項5】
回路パターンが形成された基板上に、請求項1〜3のうちいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物、または、キャリアフィルム上に該熱硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜を備えるドライフィルム、を用いて形成してなる硬化膜を有することを特徴とするプリント配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−10945(P2013−10945A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−120016(P2012−120016)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(310024066)太陽インキ製造株式会社 (16)
【Fターム(参考)】