説明

熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、金属張り積層板及びプリント配線板

【課題】外観が黒色であり、プリント配線板としてガラス転移点(Tg)の低下を起こさず、かつ絶縁性及び信頼性の低下がなく、蛍光を検知する方式による外観検査が可能な積層板を製造するために好適な熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、金属張り積層板およびプリント配線板を提供する。
【解決手段】染料を含有してなる黒色の熱硬化性樹脂組成物において、染料としてアントラキノン系化合物を0.05〜5質量%含む熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、金属張り積層板およびプリント配線板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、および該組成物を用いて得られた電気・電子機器等に用いられる、プリプレグ、金属張り積層板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体搭載用パッケージなどの用途に用いられるプリント配線板の基板は、黒色を基調とするものが主流となっている。
それは、ワイヤボンディング等の接続の良否識別が容易になること、及び露光工程において、紫外線が反対面に透過して反対面にあるレジストが感光して、いわゆる裏ぼけを起こすのを防ぐためである。
基板を黒色とする手法としては、積層板を製造するためのプリプレグに黒色の繊維基材を用いる方法や、熱硬化性樹脂組成物にカーボンブラック、スピリットブラックなどのカーボン系顔料を配合する手法が知られている。
【0003】
ところが、黒色の繊維基材を用いて基板を黒色とする方法では、繊維基材が十分な黒さを有していない場合があり、外観上の問題があった。
また、熱硬化性樹脂組成物にカーボンブラック、スピリットブラック等のカーボン系顔料を配合する手法では、カーボン自体が導電性を有するために、基板の絶縁性低下、及び電食による回路間の絶縁低下を生じやすかった。
このため、プリント配線板としての信頼性(以下、単に信頼性とする。)が低下するという問題があった。
また、有機系黒色染料としては、金属錯塩アゾ系染料(例えば、特許文献1参照)などがある。
しかしながら、金属錯塩アゾ系染料は樹脂の硬化反応を阻害するため、樹脂硬化物のガラス転移点(Tg)が低下するといった問題が発生する。
また、金属錯体中の金属イオンが必ずしも安定ではなく、電食による回路間の絶縁低下を発生しやすく、このためプリント配線板としての信頼性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−45581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来技術の問題点を解消し、外観が黒色であり、プリント配線板としてガラス転移点(Tg)の低下を起こさず、かつ絶縁性及び信頼性の低下がなく、蛍光を検知する方式による外観検査が可能な積層板を製造するために好適な熱硬化性樹脂組成物、該組成物を用いて得られたプリプレグ、金属張り積層板およびプリント配線板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、熱硬化性樹脂組成物にアントラキノン系染料を配合した時に、プリント配線板としてガラス転移点(Tg)の低下を起こさず、かつ絶縁性及び信頼性の低下がなく、蛍光を検知する方式による外観検査が可能な黒色の積層板とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下に関する。
1.染料を含有してなる黒色の熱硬化性樹脂組成物において、染料としてアントラキノン系化合物を0.05〜5質量%含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物、
2.樹脂組成物中の樹脂成分全量に対して、無機充填剤を20〜70質量%含む、上記1に記載の熱硬化性樹脂組成物、
3.上記1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物を有機溶媒に溶解又は分散したワニスを基材に含浸し、乾燥してなるプリプレグ、
4.上記3に記載のプリプレグを積層し、硬化させて得られた金属張り積層板、
5.上記4に記載の金属張り積層板を使用して作製されたプリント配線板
【発明の効果】
【0008】
外観が黒色であり、プリント配線板としてガラス転移点(Tg)の低下を起こさず、かつ絶縁性及び信頼性の低下がなく、蛍光を検知する方式による外観検査が可能な積層板を製造するために好適な熱硬化性樹脂組成物、該組成物を用いて得られたプリプレグ、金属張り積層板およびプリント配線板を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、染料を含有してなり、かつ該染料としてアントラキノン系化合物を0.05〜5質量%含むことを特徴とする。
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物について詳述する。
【0010】
本発明の熱硬化性樹脂組成物のベースとなる熱硬化性樹脂としては、積層板製造において汎用されている熱硬化性樹脂を用いることができ、特に制限はない。
例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。
なかでも、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
エポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であればよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多官能フェノール類のグリシジルエーテル化合物、二官能アルコール類のグリシジルエーテル化合物、およびそれらの水素添加物等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、硬化後の樹脂組成物のガラス転移点(Tg)や耐熱性を向上するためには、分子内に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
このような樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0011】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いた時には、エポキシ樹脂を硬化させるために、硬化剤及び硬化促進剤を配合することができる。
硬化剤としては、従来公知の種々のものを使用することができ、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂等の多官能性フェノール樹脂等を挙げることができる。
これら硬化剤は、何種類か併用することも可能である。
また、硬化剤は、用いられるエポキシ樹脂の量に応じて必要とされる範囲で配合される。
硬化剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、硬化剤の官能基が、通常、0.8〜1.2当量の範囲、好ましくは0.9〜1.1当量の範囲、より好ましくは0.95〜1.05当量の範囲となるように配合される。
硬化剤の官能基の当量が上記範囲内であると、ガラス転移点(Tg)が上昇し、吸湿性がないため、はんだ耐熱性が向上する。
すなわち、硬化剤の官能基が0.8当量未満の場合、及び1.2当量を超えるいずれの場合も、ガラス転移点(Tg)が低くなり、吸湿しやすくなるため、はんだ耐熱性が低下する傾向にある。
【0012】
また、硬化促進剤としては、従来公知のものを種々使用することができ、特に制限はない。
例えば、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、硬化促進剤としてはイミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
これら硬化促進剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
この硬化剤は、用いられるエポキシ樹脂の量に応じて必要とされる範囲で配合される。
該硬化促進剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部程度、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.05〜1質量部の範囲で配合される。
【0013】
本発明では、熱硬化性樹脂に、アントラキノン系の染料を配合する。
アントラキノン系染料が熱硬化性樹脂に均一に配合されるためには、有機溶媒可溶性のアントラキノン系染料であることが好ましい。
アントラキノン系染料は、官能基の種類や構造により、黄、オレンジ、赤、バイオレット、青、緑、茶、黒の様々な色彩を発現可能である。
これらのアントラキノン系染料を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して黒色化してもよい。
また、必要に応じて、アントラキノン系以外の染料を併用することもできる。
アントラキノン系以外の染料としては、例えば、アゾ(モノアゾ、ジスアゾ等)染料、アゾ−メチン染料、キノリン染料、ケトンイミン染料、フルオロン染料、ニトロ染料、キサンテン染料、アセナフテン染料、キノフタロン染料、アミノケトン染料、メチン染料、ペリレン染料、クマリン染料、ペリノン染料、トリフェニル染料、トリアリルメタン染料、フタロシアニン染料、インクロフェノール染料、アジン染料等が挙げられる。
【0014】
本発明のアントラキノン系染料は、熱硬化性樹脂組成物中に、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%、より好ましくは0.3〜1質量%配合される。
配合量が上記範囲内であると、十分な着色の効果が得られると共に、樹脂硬化物の特性が低下することがない。
すなわち、配合量が0.05質量%未満であると十分な着色の効果が得られず、5質量%を超えて多量に配合しても着色の効果は変わらず、樹脂硬化物の特性が低下する。
【0015】
本発明の樹脂組成物では、樹脂硬化物の熱膨張率の低減や高弾性率化、機械特性の改善、耐熱特性の改善等を目的として、無機充填剤を配合することができる。
無機充填剤の種類は、特に制約はなく、例えば、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化チタン、マイカ、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ、ガラス短繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカや炭化ケイ素ウィスカ等が用いられる。
さらに、これらを数種類用いてもよい。
【0016】
無機充填剤の配合量は、樹脂組成物中の樹脂成分全量に対して、通常、20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
配合量が上記範囲内であると、無機充填剤を用いることによる低熱膨張率や高弾性率等の効果が得られるとともに、樹脂の流動性が悪化することがなく、加熱加圧成形時の成形性が良好であって、かすれが発生し難い。
すなわち、配合量が20質量%未満では、充填剤を充填することによる低熱膨張率や高弾性率等の効果が得られない。
一方、70質量%を超えると、樹脂の流動性が悪くなり、加熱加圧成形時の成形性が悪化し、かすれが発生する。
【0017】
上記無機充填剤を配合する場合、樹脂と無機充填剤の界面接着性や無機充填剤の分散性を向上させるために、各種カップリング剤やシリコーン重合体等を用いて無機充填剤の表面処理をすることが好ましい。
カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等が用いられる。
シラン系カップリング剤としては、炭素官能性シランが用いられ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(2、3−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シラン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル(メチル)ジメトキシシランのようなアミノ基含有シラン;3−(トリメトキシリル)プロピルテトラメチルアンモニウムクロリドのようなカチオン性シラン;ビニルトリエトキシシランのようなビニル基含有シラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのようなアクリル基含有シラン;および3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シランなどが例示される。
一方、チタネート系カップリング剤としては、チタンプロポキシド、チタンブトキシドのようなチタン酸アルキルエステルが例示される。
カップリング剤やシリコーン重合体は、2種以上併用してもよく、その配合量は、特に制限はない。
【0018】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、更に着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線
遮蔽剤などを適宜配合することができる。
【0019】
上記樹脂材料及び無機充填剤を希釈してワニス化するために溶媒が用いられる。
この溶媒には特に限定はなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N、N−ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール等があり、これらは何種類かを混合してもよい。
また、ワニスの固形分濃度は、特に制限はなく、樹脂組成や無機充填剤の種類及び配合量等により適宜変更できるが、通常、50〜80質量%の範囲、好ましくは60〜75質量%である。
ワニスの固形分濃度が上記範囲内であると、ワニス粘度が良好で、かつプリプレグの樹脂分が低下せず、プリプレグの外観等が優れている。
ワニスの固形分濃度が50質量%より低いと、ワニス粘度が低いためプリプレグの樹脂分が低くなりすぎ、80質量%より高いとワニスの増粘等によりプリプレグの外観等が著しく悪化(低下)しやすい。
【0020】
次に、本発明のプリプレグは、前述した本発明の熱硬化性樹脂組成物を、有機溶媒に溶解又は分散したワニスを基材に含浸し、乾燥してなるものであって、印刷配線板用として好適に用いられる。
具体的には、上記各成分を配合して得たワニスを、基材に含浸させ、例えば、乾燥炉中で、通常、80〜200℃の範囲、好ましくは100〜180℃の範囲で乾燥させることにより、印刷配線板用プリプレグを得る。
基材としては、金属箔張り積層板や多層印刷配線板を製造する際に用いられるものであれば、特に制限されないが、通常織布や不織布等の繊維基材が用いられる。
繊維基材としては、例えば、ガラス、アルミナ、アスベスト、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維やアラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維等及びこれらの混抄系があり、特にガラス繊維の織布が好ましく用いられる。
【0021】
次に、本発明の金属張り積層板は、前述した本発明のプリプレグを積層し、硬化させて得られるものであ。
本発明のプリプレグを、1枚だけで又は適宜任意枚数を積層してその片面若しくは両面に金属箔を重ねて、150〜200℃程度、好ましくは170〜190℃、1.0〜8.0MPa程度、好ましくは1.5〜6.0MPa程度の範囲で加熱加圧して金属張り積層板とすることができる。
上記金属箔としては銅箔、アルミ箔等が使用される。
金属箔の厚さは用途にもよるが、通常、10〜100μm、好ましくは10〜80μmのものが好適に用いられる。
この金属張り積層板をサブトラクト法や穴開け加工などの種々の通常用いられる方法により加工することで、プリント配線板を得ることができる。
【0022】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた積層板は、黒色であり、電食による絶縁信頼性に優れている。
本発明はまた、前記本発明の金属張り積層板を使用して作製されたプリント配線板をも提供する。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例について説明する。
本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0024】
実施例1
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂69質量部(大日本インキ化学工業株式会社製エピクロンN−865)、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂31質量部(大日本インキ化学工業株式会社製エピクロン153)、フェノールノボラック樹脂40質量部(明和化成社製HF−4)、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.15質量部、アントラキノン系染料(中央合成化学(株)製試作品A)0.5質量部をメチルエチルケトンに溶解し、固形分70質量%のワニスを調製した。
このワニスを、厚さ約0.1mmのガラス布(日東紡績株式会社製 商品名:GA−7010S136、#2116、E−ガラス)に含浸後、加熱乾燥して樹脂分50質量%のプリプレグを得た。
これらプリプレグ2枚または4枚を重ね、その両側に厚みが12μmの銅箔を重ね、175℃、60分、3.0MPaのプレス条件で両面銅張り積層板を作製した。
【0025】
実施例2
染料として、アントラキノン系染料(中央合成化学(株)製、試作品A)0.4質量部及びジスアゾ系染料(中央合成化学(株)製、商品名:Chuo Sudan Black141)0.1質量部を用いた他は、実施例1と同様にして両面銅張り積層板を作製した。
【0026】
実施例3
無機充填剤として、シリカ80質量部(アドマテックス社製SO−25H)を用いた他は、実施例1と同様にして両面銅張り積層板を作製した。
【0027】
比較例1
染料を使用しない他は、実施例1と同様にしてワニスを調製した。
このワニスを、厚さ約0.1mmの黒色ガラス布(日東紡績株式会社製 商品名:GA−7010XB07、#2116、E−ガラス)に含浸後、加熱乾燥した他は、実施例1と同様にして両面銅張り積層板を作製した。
【0028】
比較例2
染料として、カーボンブラック0.5質量部を用いた他は、実施例1と同様にして両面銅張り積層板を作製した。
【0029】
比較例3
染料として、金属錯塩アゾ系染料(中央合成化学(株)製、商品名:Neo Super Black C−832)0.5質量部を用いた他は、実施例1と同様にして両面銅張り積層板を作製した。
【0030】
得られた両面銅張り積層板の外観(エッチング後)、紫外線透過率、ガラス転移温度、耐電食性の評価を行った。
それらの結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
試験方法は以下の通りである。
外観:両面銅張り積層板をエッチング方法により銅箔を全面除去した後、目視により評価した。
紫外線透過率:プリプレグ2枚を重ねて作製した両面銅張り積層板をエッチング後、紫外線を照射して透過率を評価した。
紫外線は350nmおよび420nmとした。
ガラス転移温度:プリプレグ4枚を重ねて作製した両面銅張り積層板をエッチング後、熱機械分析装置(Thermo Mechanical Analyzer)により測定した。
耐電食性:プリプレグ4枚を重ねて作製した両面銅張り積層板に壁間距離(穴の側壁間の最短距離)300μm、穴径0.4mmで表裏の回路を電気的に接続した回路パターンを作製し、温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿槽中にて、この回路間に直流100Vの電圧を1000時間印加した。その後の回路間の絶縁抵抗(単位Ω)を測定することにより、耐電食性を評価した。
【0033】
表1の結果より、アントラキノン系染料を配合した実施例1〜3は、積層板の外観が黒色で、紫外線透過率が小さく、ガラス転移点(Tg)が低下せず、電食による絶縁低下がないことから、絶縁信頼性が良好である。
これに対して、黒色系ガラス織布を用いた比較例1においては、紫外線透過率が大きく、両面同時露光による裏かぶり現象が発生する恐れがある。
また、染料としてカーボンブラックを配合した比較例2は、電食による絶縁低下が大きいことから、絶縁信頼性が良好ではない。
また、金属錯塩アゾ染料を用いた比較例3では、硬化物のガラス転移点(Tg)が大幅に低下しており、絶縁信頼性もやや劣る。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、紫外線を十分に遮蔽することができ、且つ黒色を基調とする積層板を得ることができる。
そして、この積層板は紫外線遮蔽性が良好であることから、両面同時露光によりプリント配線板とすることができ、またワイヤボンディングの良否識別も容易で、電食による絶縁低下がないことから信頼性に優れたプリント配線板を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料を含有してなる黒色の熱硬化性樹脂組成物において、染料としてアントラキノン系化合物を0.05〜5質量%含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂組成物中の樹脂成分全量に対して、無機充填剤を20〜70質量%含む、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物を有機溶媒に溶解又は分散したワニスを基材に含浸し、乾燥してなるプリプレグ。
【請求項4】
請求項3に記載のプリプレグを積層し、硬化させて得られた金属張り積層板。
【請求項5】
請求項4に記載の金属張り積層板を使用して作製されたプリント配線板。

【公開番号】特開2012−153898(P2012−153898A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−83808(P2012−83808)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【分割の表示】特願2007−39288(P2007−39288)の分割
【原出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】