説明

熱硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いたプリプレグ、積層板及び多層プリント配線板

【課題】良好な樹脂硬化性、すなわちプリプレグ積層時に、高温かつ長時間の処理を必要とせず、且つワニスやプリプレグの硬化性や保存安定性が良好であり、耐薬品性、耐熱性、接着性に優れる樹脂組成物、及びこれを用いたプリプレグ、積層板、多層プリント配線板を提供する。
【解決手段】1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)を有機溶媒中で反応させて製造される不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)、熱硬化性樹脂(B)及び、イソシアネートマスクイミダゾールやエポキシマスクイミダゾールなどの変性イミダゾール化合物(C)を含有する熱硬化性樹脂組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージやプリント配線板用に好適な熱硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いたプリプレグ、積層板、及び多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、多機能化が一段と進み、これに伴い、LSIやチップ部品等の高集積化が進みその形態も多ピン化、小型化へと急速に変化している。このため多層プリント配線板は、電子部品の実装密度を向上するために、微細配線化の開発が進められている。
これらの要求に合致する多層プリント配線板の製造方法として、ビルトアップ方式があり、軽量化や小型化、微細化に適した手法として主流になりつつある。
【0003】
また、環境意識の高まりから燃焼時に有害な物質を発生する可能性がある材料は電子部品も含めて規制する動きが活発になっている。従来の多層プリント配線板には、難燃化のためにブロム化合物が使用されてきたが、燃焼時に有害な物質を発生する可能性があるので、近い将来にこのブロム化合物が使用できなくなるものと予想される。
電子部品を多層プリント配線板に接続するために一般的に用いられるはんだも鉛を含まない鉛フリーはんだが実用化されつつある。この鉛フリーはんだは、従来の共晶はんだよりも使用温度が約20〜30℃高くなることから従来にも増して材料には高い耐熱性が必要になっている。
【0004】
さらに、前記ビルドアップ構造の多層プリント配線板において、高密度化をするために層数の増加と共に、ビア部分のフィルド化、スタック化が進んでいる。しかしながら、多層プリント配線板の薄型化のためにガラスクロスを含まない絶縁樹脂層は、熱膨脹率が大きい傾向を示すため、フィルド化、スタック化したビアの銅との熱膨張率の差が、接続信頼性に大きく影響し、信頼性の懸念材料になっている。このようなことから、絶縁樹脂層には熱膨脹率の小さい材料が要求されるようになってきた。
【0005】
絶縁樹脂層において熱膨脹率を小さくするには、一般に熱膨脹率の小さい無機フィラーを多量に充填し、絶縁層全体の熱膨張率を低下させる方法が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような方法では、流動性の低下や、絶縁信頼性の低下など、多くの問題が発生し易い。
また、樹脂の選択又は改良により、低熱膨張を達成することが試みられている。例えば、芳香環を有するエポキシ樹脂の例としては、2官能のナフタレン骨格、あるいはビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を用いた低熱膨張性を有する加圧成形用樹脂組成物があるが(特許文献2参照)、充填材を80〜92.5容量%配合している。また、配線板用の樹脂組成物の低熱膨張率化は、従来、架橋密度を高め、ガラス転移温度(Tg)を高くして熱膨張率を低減する方法が一般的である(特許文献3及び4参照)。しかしながら、架橋密度を高めることは官能基間の分子鎖を短くする必要があるが、一定以上分子鎖を短くすることは反応性や樹脂強度等の点から困難である。
【0006】
さらに、耐熱性、低熱膨張に有用であると考えられるイミド骨格の導入も試みられており、例えば、イミド基を有する芳香族ジアミンとエポキシ樹脂を用いたビルトアップ用熱硬化性組成物が提案されている(特許文献5参照)。しかし、低分子ポリイミド化合物をエポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合、その殆どがエポキシ樹脂の特性と変わらない場合が多い。
【0007】
プリント配線板用積層板としては、エポキシ樹脂を主剤とした樹脂組成物とガラス織布とを硬化・一体成形したものが一般的である。エポキシ樹脂は、絶縁性や耐熱性、コスト等のバランスに優れるが、近年のプリント配線板の高密度実装、高多層化構成に伴う耐熱性向上への要請に対応するには、どうしてもその耐熱性の上昇には限界がある。
また、前記の特許文献2では、エポキシ樹脂は熱膨張率が大きいため、芳香環を有するエポキシ樹脂の選択やシリカ等の無機充填材を高充填化することで低熱膨張化が図られている。しかし、無機充填材の充填量を増やすことは、吸湿による絶縁信頼性の低下や樹脂−配線層の密着不足、プレス成形不良を起こすことが知られている。
【0008】
一方、高密度実装、高多層化積層板に広く使用されているポリビスマレイミド樹脂は、その耐熱性は非常に優れているものの、吸湿性が高く、接着性に難点がある。また、エポキシ樹脂に比べ、積層時に高温、長時間を必要とし生産性が悪いという欠点がある。即ち、一般的に、エポキシ樹脂の場合180℃以下の温度で硬化可能であるが、ポリビスマレイミド樹脂を積層する場合は220℃以上の高温でかつ長時間の処理が必要である。
このためナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂などでポリマレイミド樹脂を変性してなる変性イミド樹脂を使用することが提案されている(例えば、特許文献6参照)。この変性イミド樹脂組成物は吸湿性や接着性が改良されるものの、メチルエチルケトン等の汎用性溶剤への可溶性を付与するために水酸基とエポキシ基を含有する低分子化合物で変性するので、得られる変性イミド樹脂の耐熱性がポリビスマレイミド樹脂と比較すると大幅に劣るという問題があった。
【0009】
さらに、プリント配線板用樹脂組成物のワニスやプリプレグには保存安定性が必要であり、硬化剤や硬化促進剤には潜在性が高く、樹脂組成物の長期保存が可能な材料を用いることが必須である。特にフェノール硬化系や芳香族アミン硬化系などにおいて硬化促進剤としてイミダゾール化合物が好適に用いられるが、これらは潜在性が十分ではなく、長期保存することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−182851号公報
【特許文献2】特開平5−148343号公報
【特許文献3】特開2000−243864号公報
【特許文献4】特開2000−114727号公報
【特許文献5】特開2000−17148号公報
【特許文献6】特開平6−263843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、こうした現状に鑑み、良好な樹脂硬化性、すなわちプリプレグ積層時に、高温かつ長時間の処理を必要とせず、且つワニスやプリプレグの硬化性や保存安定性が良好であり、耐薬品性、耐熱性、接着性に優れる熱硬化性樹脂組成物、及びこれを用いたプリプレグ、積層板、多層プリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、マレイミド化合物とアミン化合物を反応させて製造される不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)、熱硬化性樹脂(B)において、特定の変性イミダゾール化合物(C)を用いることで、極めて良好な樹脂硬化性や保存安定性が得られ、上記の目的を達成しうること見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、かかる知見にもとづいて完成したものである。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の熱硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いたプリプレグ、積層板及び多層プリント配線板を提供するものである。
1.1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)を反応させて得られる不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)、熱硬化性樹脂(B)及び下記一般式(I)又は一般式(II)で表される変性イミダゾール化合物(C)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【0014】
【化1】

(式中、R3、R4、R5及びR6は各々独立に、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり、Aはアルキレン基又は芳香族炭化水素基である。)
【0015】
【化2】

(式中、R3、R4、R5及びR6は各々独立に、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基又はフェニル基を示し、Bは単結合、アルキレン基、アルキリデン基、エーテル基又はスルフォニル基を示す。)
【0016】
2.さらに、下記一般式(III)で表される酸性置換基を有するアミン化合物(D)を含有する上記1の熱硬化性樹脂組成物。
【化3】

(式(III)中、R1は各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を、R2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
【0017】
3.さらに、無機充填材(E)を含有する上記1又は2の熱硬化性樹脂組成物。
4.さらに、モリブデン化合物(F)を含有する上記1〜3のいずれかの熱硬化性樹脂組成物。
5.さらに、難燃性を付与するリン含有化合物(G)を含有する上記1〜4のいずれかの熱硬化性樹脂組成物。
6.さらに、化学粗化可能な化合物(H)を含有する上記1〜5のいずれかの熱硬化性樹脂組成物。
7.熱硬化性樹脂(B)が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂及びメラミン樹脂から選ばれた少なくとも一種である上記1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
8.無機充填材(E)が、溶融球状シリカ及び/又は熱分解温度が300℃以上の金属水和物である上記3〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
9.上記1〜8のいずれかの熱硬化性絶縁樹脂組成物の半硬化状態のフィルムが支持体表面に形成された支持体付絶縁フィルム。
10.上記1〜8のいずれかの熱硬化性樹脂組成物を繊維シート状補強基材に塗工し、Bステージ化して得られたプリプレグ。
11.回路基板と絶縁樹脂層を有する積層板であって、絶縁樹脂層が、(1)上記1〜8のいずれかの熱硬化性絶縁樹脂組成物、(2)上記9の支持体付絶縁フィルム、(3)上記10のプリプレグのいずれかを用いて形成された積層板。
12.上記11の積層板を用いて製造された多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0018】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を使用して得られる樹脂ワニスは硬化性や保存安定性が良好であり、これにより得られるプリプレグは良好な硬化性を有し、積層時に、高温かつ長時間の処理を必要とせず、得られた積層板は耐薬品性、耐熱性、接着性に優れることから、これを用いた電気・電子機器の材料として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)を反応させて製造される不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)、熱硬化性樹脂(B)及び前記一般式(I)又は一般式(II)で表される変性イミダゾール化合物(C)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【0020】
先ず、不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)は、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)を反応させて得られる。該反応は有機溶媒中で行うことが好ましい。
【0021】
上記の1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)としては、例えば、N,N'−エチレンビスマレイミド、N,N'−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N'−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N'−[1,3−(2−メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N'−[1,3−(4−メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N'−(1,4−フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4−マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4−ビス(4−マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル] −1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2'−ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド(例えば大和化成(株)製、商品名:BMI−2300など)等が挙げられ、これらのマレイミド化合物は、単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中で、反応率が高く、より高耐熱性化できるビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、N,N'−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ポリフェニルメタンマレイミドが好ましく、溶剤への溶解性の点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンが特に好ましい。
【0022】
1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)としては、特に限定されるものではないが、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノメシチレン、m−キシレン−2,5−ジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ビス(アミノ−t−ブチル)トルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノデュレン、4,5−ジアミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、3−ビス(3−アミノベンジル)ベンゼン、4−ビス(4−アミノベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、4−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、3−ビス(3−(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、4−ビス(4−(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、3−ビス(α,α−ジメチル−3−アミノベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(α,α−ジメチル−3−アミノベンジル)ベンゼン、3−ビス(α,α−ジメチル−4−アミノベンジル)ベンゼン、ビス(4−メチルアミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、ビス[(4−アミノフェニル)−2−プロピル]1,4−ベンゼン、2,5−ジアミノベンゼンスルホン酸、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'、5,5'−テトラメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメチル、5,5'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、3,3'−ジアミノジフェニルエタン、4,4'−ジアミノジフェニルエタン、2,2'−ジアミノジフェニルプロパン、3,3'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、2,2'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3−(2',4'−ジアミノフェノキシ)プロパンスルホン酸、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノ−t−ブチルフェニル)エ−テル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル−2,2'−ジスルホン酸、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ベンジジン、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル−6,6'−ジスルホン酸、2,2',5,5'−テトラクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ
)ビフェニル、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノ−3,3'−ビフェニルジオール、1,5−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、9,9'−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9'−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−2,7−ジスルホン酸、9,9'−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)フルオレン、ジアミノアントラキノン、3,7−ジアミノ−2,8−ジメチルジベンゾチオフェンスルホン等の芳香族アミン類、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ジアミノポリシロキサン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾ−ル、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の脂肪族アミン類、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−アリル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−アクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン等のグアナミン化合物類が挙げられる。
【0023】
1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)としては、これらの中で、良好な反応性や耐熱性を有する芳香族アミン類であるm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ベンジジン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノ−3,3'−ビフェニルジオール及びグアナミン化合物類であるベンゾグアナミンが好ましく、安価である点からp−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ベンゾグアナミンがより好ましく、溶媒への溶解性の点から4,4'−ジアミノジフェニルメタンが特に好ましい。これらは単独で、または2種類以上混合して用いることもできる。
【0024】
マレイミド化合物(a)とアミン化合物(b)の反応で使用される有機溶媒は、特に制限されないが、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチルエステルやγ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、溶解性の点からシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ−ブチロラクトンが好ましく、低毒性であることや揮発性が高く残溶剤として残りにくい点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0025】
ここでマレイミド化合物(a)とアミン化合物(b)の使用比率は、アミン化合物(b)の−NH2基の当量(Tb)に対するマレイミド化合物(a)のマレイミド基の当量(Ta)の当量比(Ta/Tb)が1.0<(Ta/Tb)≦10.0の範囲であることが好ましく、該当量比(Ta/Tb)が2.0≦(Ta/Tb)≦10.0の範囲であることがさらに好ましい。該当量比(Ta/Tb)を上記範囲とすることにより、保存安定性、有機溶剤への溶解性、銅箔接着性及び耐熱性に優れる熱硬化性樹脂組成物が得られる。
また、有機溶媒の使用量は、マレイミド化合物(a)とアミン化合物(b)の総和100質量部当たり、10〜1000質量部とすることが好ましく、100〜500質量部とすることがより好ましく、200〜500質量部とすることが特に好ましい。有機溶剤の配合量を上記範囲とすることにより、有機溶媒への溶解性が不足することがなく、短時間で反応を行うことができる。
【0026】
マレイミド化合物(a)とアミン化合物(b)の反応温度は、50〜200℃であることが好ましく、70〜160℃であることが特に好ましい。反応時間は0.1〜10時間であることが好ましく、1〜6時間であることが特に好ましい。
なお、この反応には任意に反応触媒を使用することができる。反応触媒の例としては、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を混合して使用できる。
反応方法は特に制限されないが、例えば、攪拌機と還流冷却器付の反応装置を使用して還流させながら反応を行うことができ、不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)が製造される。
【0027】
次に、熱硬化性樹脂(B)としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、成形性や電気絶縁性の点からエポキシ樹脂、シアネート樹脂が好ましい。
【0028】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物およびこれらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの中で、耐熱性、難燃性の点からビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0029】
シアネート樹脂としては、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂などのビスフェノール型シアネート樹脂およびこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどを挙げることができる。これらの中で耐熱性、難燃性の点からノボラック型シアネート樹脂が好ましい。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0030】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記の不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)および熱硬化性樹脂(B)と共に、特定の変性イミダゾール化合物(C)を含有することを特徴とするものであり、プリプレグ積層時に、高温かつ長時間の処理を必要とせず、且つワニスやプリプレグの安定性が良好であり、耐薬品性、耐熱性、接着性に優れる熱硬化性樹脂が得られる。
【0031】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、変性イミダゾール化合物(C)として、特に下記一般式(I)で表されるイソシアネートマスクイミダゾール及び/又は一般式(II)で表されるエポキシマスクイミダゾールが使用される。
一般式(I)で表されるイソシアネートマスクイミダゾールとしては第一工業製薬(株)製、商品名:G8009Lなどを挙げることができ、一般式(II)で表されるエポキシマスクイミダゾールとしてはJER社製、商品名:P200H50などを挙げることができる。
【0032】
【化4】

(式中、R3、R4、R5及びR6は各々独立に、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり、Aはアルキレン基又は芳香族炭化水素基である。)
【0033】
【化5】

(式中、R3、R4、R5及びR6は各々独立に、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基又はフェニル基を示し、Bは単結合、アルキレン基、アルキリデン基、エーテル基又はスルフォニル基を示す。)
【0034】
上記の変性イミダゾール化合物(C)は何種類を併用しても良い。変性イミダゾール化合物(C)の配合量は、熱硬化性樹脂(B)100質量部に対し、0.01〜10質量部が好ましい。0.01質量部以上とすることにより良好な硬化性が得られ、10質量部以下とすることにより良好な保存安定性が得られる。
【0035】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに下記一般式(III)で表される酸性置換基を有するアミン化合物(D)を含有させることができる。この場合、不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)とアミン化合物(D)は、熱硬化性樹脂組成物の配合前に有機溶媒中で反応させ、プレポリマーとして調製することが好ましい。
【0036】
【化6】

(式(III)中、R1は各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を、R2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
【0037】
一般式(III)に示す酸性置換基を有するアミン化合物(D)としては、例えば、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、o−アミノ安息香酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3,5−ジヒドロキシアニリン、3,5−ジカルボキシアニリン等が挙げられ、これらの中で、溶解性や合成の収率の点からm−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸及び3,5−ジヒドロキシアニリンが好ましく、耐熱性の点からm−アミノフェノール及びp−アミノフェノールがより好ましく、低毒性である点からm−アミノフェノールが特に好ましい。
【0038】
不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)とアミン化合物(D)の反応で使用される有機溶媒としては、前記のマレイミド化合物(a)とアミン化合物(b)の反応で使用される溶媒と同様のものを使用することができ、マレイミド化合物(a)とアミン化合物(b)を有機溶媒中で反応させて製造された不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)と、一般式(III)に示す酸性置換基を有するアミン化合物(D)を反応させ、プレポリマーとした後に、熱硬化性樹脂組成物に配合することが好ましい。
【0039】
ここで不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)と酸性置換基を有するアミン化合物(D)の使用量は、アミン化合物(D)の−NH2基の当量(TD)に対する樹脂組成物(A)のマレイミド基の当量(TA)の当量比(TA/TD)が1.0<(TA/TD)≦10.0の範囲であることが好ましく、該当量比(TA/TD)が2.0≦(TA/TD)≦10.0の範囲であることがさらに好ましい。該当量比(TA/TD)を上記範囲とすることにより、保存安定性、有機溶剤への溶解性、銅箔接着性及び耐熱性に優れる熱硬化性樹脂組成物が得られる。
また、有機溶媒の使用量は、不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)と酸性置換基を有するアミン化合物(D)の総和100質量部当たり、10〜1000質量部とすることが好ましく、100〜500質量部とすることがより好ましく、200〜500質量部とすることが特に好ましい。有機溶剤の配合量を上記範囲とすることにより、有機溶媒への溶解性が不足することなく、短時間で反応を行うことができる。
【0040】
不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)と酸性置換基を有するアミン化合物(D)の反応温度は、50〜200℃であることが好ましく、70〜160℃であることが特に好ましい。反応時間は0.1〜10時間であることが好ましく、1〜6時間であることが特に好ましい。
また、この反応には任意に反応触媒を使用することができる。反応触媒は、特に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0041】
本発明の熱硬化性樹脂組成物では、耐熱性を向上し、熱膨張率を低下させるために、無機充填材(E)を含有させることが好ましい。
無機充填材(E)としては、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、EガラスやTガラス、Dガラス等のガラス粉や中空ガラスビーズ等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0042】
これらの中で、誘電特性、耐熱性、低熱膨張性の点からシリカが特に好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられ、乾式法シリカとしてはさらに、製造法の違いにより破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融球状シリカが挙げられる。
これらの中で低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性から溶融球状シリカが好ましく、耐熱性の点から熱分解温度が300℃以上の金属水和物が好ましく、両者を組合わせることにより特に低熱膨張性、耐熱性及び難燃性に優れた熱硬化性樹脂組成物が得られる。
無機充填材(E)として溶融球状シリカを用いる場合、その平均粒子径は0.1〜10μmであることが好ましく、0.3〜8μmであることがより好ましい。溶融球状シリ
カの平均粒子径を0.1μm以上にすることで、樹脂に高充填した際の流動性を良好に保つことができ、さらに10μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らし粗大粒子起因の不良の発生を抑えることができる。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、ちょうど体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において無機充填材(E)を含有させる場合には、樹脂組成物全体の10〜60体積%であることが好ましく、20〜50体積%であることがより好ましい。無機充填材の含有量を樹脂組成物全体の10〜60体積%にすることで、熱硬化性樹脂組成物の成形性と低熱膨張性を良好に保つことができる。
【0043】
本発明の熱硬化性樹脂組成物では、樹脂組成物の接着性を良好に保つために、モリブデン化合物(F)を含有させることが好ましい。
モリブデン化合物(F)としては、例えば、三酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、ケイモリブデン酸などのモリブデン酸化物およびモリブデン酸化合物、ホウ化モリブデン、二ケイ化モリブデン、窒化モリブデン、炭化モリブデン等のモリブデン化合物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、水溶性及び毒性が低く、高電気絶縁性で、ドリル加工性の低下防止効果が良好である点から、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウムが好ましい。モリブデン化合物としてモリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウムを用いる場合、これらのモリブデン化合物をタルク、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム等に担持させて使用することにより、樹脂組成物を有機溶媒に溶かしてワニス化する際の沈降防止や分散性向上を図ることができる。このようなモリブデン化合物として、例えば、シャーウィン・ウィリアムズ(株)製KEMGARD911C、KEMGARD1100が挙げられる。
モリブデン化合物(F)の含有量は、樹脂組成物全体の0.02〜20体積%であることが好ましく、0.1〜15体積%であることがより好ましい。モリブデン化合物の含有量を樹脂組成物全体の0.02〜20体積%にすることで、ドリル加工性が低下せずに樹脂組成物の接着性を良好に保つことができる。
【0044】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、更に難燃性を付与するリン含有化合物(G)を含有させることができ、リン原子を含んだ反応性官能基を有する化合物が好ましい。このリン原子を含んだ反応性官能基は、不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)、熱硬化性樹脂、変性イミダゾール化合物(C)および酸性置換基を有するアミン化合物(D)の官能基の何れか一つ以上と反応する。
難燃性を付与するリン含有化合物(G)としては、例えば、リン含有エポキシ樹脂、リン含有フェノール樹脂、フェノキシホスファゼン化合物、縮合型リン酸エステル化合物、ジホスフィン酸塩等が挙げられる。特にこれらを併用することが有効である。
市販されているリン含有化合物で、反応性官能基を有さない化合物としては、エクソリットOP930(クラリアントジャパン(株)製、製品名、リン含有率23質量%)がある。また、反応性官能基を有するリン含有化合物としては、例えば、リン含有エポキシ化合物であるFX−305(東都化成(株)製、製品名、リン含有率;約3質量%)など、リン含有フェノール化合物であるHCA−HQ(三光(株)製、製品名、リン含有率;約9質量%)や、公知の方法によって作製したリン含有フェノールも使用することができる。リン含有フェノール化合物としては、例えば、米国特許2007/0221890に記載されている方法によって作製されたリン含有フェノールが溶剤に可溶であり、凝集物が形成されにくく、微細配線の形成の点で好ましい。
【0045】
本発明の樹脂組成物には、さらに化学粗化可能な化合物(H)を含有させることができる。化学粗化可能な化合物(H)は、デスミア処理によって、後述する絶縁樹脂層表面に微細な粗化形状を形成する化合物であれば特に問わないが、架橋ゴム粒子、ポリビニルアセタール樹脂が好ましく、最も好ましくは、架橋ゴム粒子である。
【0046】
上記の架橋ゴム粒子としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。
コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。
【0047】
コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N〔以上、商品名、ガンツ化成(株)製〕、メタブレンKW−4426〔商品名、三菱レイヨン(株)製〕、EXL−2655〔商品名:ローム・アンド・ハース(株)製〕等が挙げられる。
架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91〔平均粒径0.5μm、JSR(株)製〕などが挙げられる。
架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500〔平均粒径0.5μm、JSR(株)製〕などが挙げられる。
アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒径0.1μm)、W450A(平均粒径0.2μm)〔以上、三菱レイヨン(株)製〕を挙げられる。
架橋ゴム粒子は、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0048】
架橋ゴム粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.2〜0.6μmの範囲である。架橋ゴム粒子の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤に架橋ゴム粒子を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー〔FPAR−1000;大塚電子(株)製〕を用いて、ゴム粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定される。
【0049】
ポリビニルアセタール樹脂としては、その種類、水酸基量、アセチル基量は特に限定されないが、数平均重合度は1000〜2500のものが好ましい。この範囲にあると、はんだ耐熱性が確保でき、また、ワニスの粘度、取り扱い性も良好である。ここでポリビニルアセタール樹脂の数平均重合度は、たとえば、その原料であるポリ酢酸ビニルの数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる標準ポリスチレンの検量線を用いて測定する)から決定することができる。また、カルボン酸変性品などを用いることもできる。
【0050】
ポリビニルアセタール樹脂として、例えば、積水化学工業(株)製の商品名、エスレックBX−1、BX−2、BX−5、BX−55、BX−7、BH−3、BH−S、KS−3Z、KS−5、KS−5Z、KS−8、KS−23Z、電気化学工業(株)製の商品名、電化ブチラール4000−2、5000A、6000C、6000EPが挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂は単独で、または2種類以上混合して用いることもできる。
【0051】
リン含有化合物(G)に由来するリン原子含有率は樹脂成分100質量部当たり2.0質量部以下であることが好ましい。(G)成分を添加することにより難燃性が向上し、2.0質量%以下であると、難燃剤の特性によるガラス転移温度(Tg)の向上や熱膨張係数の低下、導体層との接着力の向上を得ることができる。
化学粗化可能な化合物(H)の含有量は、樹脂成分100質量部当たり5質量部以下とすることが好ましい。(H)成分を添加することにより絶縁樹脂層と導体層の接着強度が高くなり、5質量部以下とすることにより、配線間の絶縁信頼性が不十分になることがない。
【0052】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、上記成分以外に、本発明の目的に反しない範囲で、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、エラストマー、有機充填材、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び接着性向上剤等を使用できる。
硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、アミノトリアジンノボラック樹脂等の多官能フェノール化合物、ベンゾグアナミン、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等のアミン化合物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
また、硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、変性イミダゾール(C)以外のイミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、第二級アミン類、第三級アミン類、及び第四級アンモニウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0053】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。
エラストマーの例としては、ポリブタジエン、アクリロニトリル、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、フェノール変性ポリブタジエン及びカルボキシ変性アクリロニトリル等が挙げられる。
【0054】
有機充填材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等よりなる均一構造の樹脂フィラー、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、共役ジエン系樹脂等よりなるゴム状態のコア層と、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、シアン化ビニル系樹脂等よりなるガラス状態のシェル層を持つコアシェル構造の樹脂フィラー等が挙げられる。
【0055】
難燃剤としては、臭素や塩素を含有する含ハロゲン系難燃剤、スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤、シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤が挙げられる。
【0056】
紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系やヒンダードアミン系酸化防止剤、光重合開始剤としてはベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系の光重合開始剤、蛍光増白剤としてはスチルベン誘導体の蛍光増白剤、接着性向上剤としては尿素シラン等の尿素化合物やシラン系、チタネート系、アルミネート系等のカップリング剤などが挙げられる。
【0057】
本発明の熱硬化性樹脂組成物はプリプレグに用いられるため、最終的には、各成分が有機溶媒中に溶解もしくは分散されたワニスの状態とすることが好ましい。
この際に用いる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、溶解性の点からメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、低毒性である点からメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
また、配合時、無機充填材をシラン系、チタネート系等のカップリング剤、シリコーンオリゴマー等の表面処理剤で前処理又はインテグラルブレンド処理することが好ましい。
最終的に得られるワニス中の樹脂組成物は、ワニス全体の40〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。ワニス中の樹脂組成物の含有量を40〜90質量%にすることで、塗工性を良好に保ち、適切な樹脂組成物付着量のプリプレグを得ることができる。
【0058】
本発明の支持体付絶縁フィルムは、樹脂組成物の半硬化状態のフィルムが支持体表面に形成されているものである。(A)、(B)及び(C)成分を配合した樹脂組成物、又は更に(D)〜(H)成分を加えた樹脂組成物を、支持体フィルムに塗布し、乾燥によってワニス中の溶剤を揮発させ、半硬化(Bステージ化)させて樹脂組成物層を形成することができる。ただし、この半硬化状態は、樹脂組成物を硬化する際に、絶縁樹脂層とそれを形成する回路パターン基板の接着力が確保される状態で、また、回路パターン基板の埋めこみ性(流動性)が確保される状態であることが望ましい。塗工方法(塗工機)としては、ダイコーター、コンマコータ、バーコータ、キスコータ、ロールコーター等が利用でき、絶縁樹脂層の厚みによって適宜使用される。乾燥方法としては、加熱、あるいは熱風吹きつけなどを用いることができる。
【0059】
樹脂組成物を支持体フィルムに塗布した後の乾燥条件は、特に限定されないが、該樹脂組成物層への有機溶剤の含有量が通常の10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。ワニス中の有機溶剤量、有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることにより、絶縁樹脂組成物層が形成される。乾燥条件は、予め簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することが好ましい。
【0060】
支持体付絶縁フィルムにおいて形成される絶縁樹脂組成物層の厚さは、通常、回路基板が有する導体層の厚さ以上とする。導体層の厚さは5〜70μmであることが好ましく、プリント配線板の軽薄短小化のために、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることが最も好ましい。
【0061】
支持体付絶縁フィルムにおける支持体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどからなるフィルム、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持体及び後述する保護フィルムには、マット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してもよい。
【0062】
支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、より好ましくは25〜50μmである。絶縁樹脂組成物層の支持体が密着していない面には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば1〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、異物混入を防止することができる。
支持体付絶縁フィルムは、ロール状に巻き取って貯蔵することもできる。
【0063】
本発明の支持体付絶縁フィルムを用いて積層板を形成し、多層プリント配線板を製造する方法の形態としては、例えば、支持体付絶縁フィルムを、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。回路基板に用いられる基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる積層板及び該積層板から製造される多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっているものも、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0064】
上記ラミネートにおいて、支持体付絶縁フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて支持体付絶縁フィルム及び回路基板をプレヒートし、支持体付絶縁フィルムを加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。本発明の支持体付絶縁フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネート条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは0.1〜1.1MPaとし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
【0065】
支持体付絶縁フィルムを回路基板にラミネートした後、室温付近に冷却してから、支持体を剥離する場合は剥離し、熱硬化することにより回路基板に絶縁樹脂層を形成することができる。熱硬化の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃〜220℃で20分〜180分、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。
【0066】
絶縁樹脂層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合は、ここで剥離する。次いで必要により、回路基板上に形成された絶縁層に穴開けを行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけは、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけが最も一般的な方法である。
【0067】
次いで、乾式メッキ又は湿式メッキにより絶縁樹脂層上に導体層を形成する。乾式メッキとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式メッキの場合は、まず、硬化した絶縁樹脂組成物層の表面を、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理し、凸凹のアンカーを形成する。酸化剤としては、特に過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性過マンガン酸水溶液)が好ましく用いられる。次いで、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。その後のパターン形成の方法として、例えば、公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0068】
本発明のプリプレグは、前記した熱硬化性樹脂組成物を、繊維シート状補強基材に塗工し、Bステージ化して得られたものである。以下、本発明のプリプレグについて詳述する。
本発明のプリプレグは、熱硬化性樹脂組成物を、繊維シート状補強基材に含浸又は、吹付け、押出し等の方法で塗工し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して製造することができる。
プリプレグの繊維シート状補強基材として、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物繊維、ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレン等の有機繊維、並びにそれらの混合物等が挙げられる。これらの基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。
繊維シート状補強基材の厚さは、特に制限されず、例えば、約0.03〜0.5mmを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。該基材に対する樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で、20〜90質量%となるように、基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて、本発明のプリプレグを得ることができる。
【0069】
なお、熱硬化性樹脂組成物を、繊維シート状補強基材に含浸させる方法としては、次のホットメルト法又はソルベント法により行うことが好ましい。
ホットメルト法は、樹脂を有機溶剤に溶解することなく、該樹脂との剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状補強基材にラミネートする、あるいは樹脂を、有機溶剤に溶解することなく、ダイコーターによりシート状補強基材に直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。
またソルベント法は、支持体付絶縁フィルムと同様にして樹脂を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、このワニスにシート状補強基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状補強基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。
【0070】
本発明の積層板は、前述のプリプレグを用いて積層成形して得られたものである。例えば、プリプレグを1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅及びアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより積層板を製造することができる。金属箔は、電気絶縁材料用途で用いるものであれば特に制限されない。
成形条件は、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力2〜100kg/cm2、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。
また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
【0071】
本発明の多層プリント配線板は前述の積層板を用いて製造されたものであり、プリント配線板前記積層板の表面に回路を形成して製造される。
すなわち、本発明の積層板の導体層を通常のエッチング法によって配線加工し、前述のプリプレグを介して配線加工した積層板を複数積層し、加熱プレス加工することによって一括して多層化する。その後、ドリル加工又はレーザー加工によるスルーホール又はブラインドビアホールの形成と、メッキ又は導電性ペーストによる層間配線の形成を経て多層プリント配線板を製造することができる。
【実施例】
【0072】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
なお、各実施例及び比較例で得られたワニスおよび銅張積層板の性能測定・評価を以下の方法により行った。
【0073】
(ワニス)
(1)硬化性(ゲル化するまでの時間)
各実施例及び比較例で得られたワニス0.5mlを試料とし,160℃に設定した日新科学社製ゲルタイマーを用い,試料投入からゲル化するまでの時間(T0)を計測した。
(2)保存安定性
各実施例及び比較例で得られたワニスを40℃で3日保管した後、上記の硬化性と同様にゲル化するまでの時間(T1)を計測し、次式により保存安定率を求めた。
保存安定率=T1/T0×100(%)
【0074】
(銅張積層板)
(1)耐熱性(ガラス転移温度Tg:℃)
各実施例及び比較例で得られた銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、評価基板のZ方向の熱膨張特性を観察することによりTgを求め、耐熱性を評価した。
(2)熱膨張率(ppm/℃)
各実施例及び比較例で得られた銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、評価基板のZ方向のTg未満の熱膨張特性を観察することにより評価した。
(3)銅箔接着性(銅箔ピール強度:kN/m)
各実施例及び比較例で得られた銅張積層板の銅箔部の一部をレジストにて被覆して銅エッチング液に浸漬することにより3mm幅の銅箔を残した評価基板を作製し、引張り試験機を用いて銅箔の接着性(ピール強度)を測定した。
(4)吸湿性(吸水率:%)
各実施例及び比較例で得られた銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板を作製し、平山製作所(株)製プレッシャー・クッカー試験装置を用いて、121℃、2atmの条件で5時間までプレッシャー・クッカー処理を行った後、評価基板の吸水率を測定した。
(5)耐薬品性(質量変化率:質量%)
各実施例及び比較例で得られた銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板を作製し、18質量%塩酸又は10質量%NaOH水溶液に40℃で30分浸漬した後の質量変化率(質量減少量(g)/処理前試験片質量(g)×100)を算出した。
【0075】
製造例1〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−1)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:569.30gと、4,4'−ジアミノジフェニルメタン:59.04g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:350.00gを入れ、還流させながら5時間反応させて不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−1)の溶液を得た。
【0076】
製造例2〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−2)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:555.04gと、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン:73.84g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:350.00gを入れ、還流させながら5時間反応させて不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−2)の溶液を得た。
【0077】
製造例3〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−3)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:556.53gと、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン:72.29g、及びジメチルアセトアミド:350.00gを入れ、100℃で5時間反応させて不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−3)の溶液を得た。
【0078】
製造例4〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−4)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ポリフェニルメタンマレイミド:562.69gと、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン:66.03g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:350.00gを入れ、還流させながら5時間反応させて不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−4)の溶液を得た。
【0079】
製造例5〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−5)粉末の製造〕
蒸気加熱装置を付けた容積1リットルのニーダーに、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:358.00gと4,4'−ジアミノジフェニルメタン:54.50gを入れ、135〜140℃で15分間加熱混練した後冷却し、粉砕して不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−5)の粉末を得た。
【0080】
製造例6〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−6)粉末の製造〕
蒸気加熱装置を付けた容積1リットルのニーダーに、ポリフェニルメタンマレイミド:358.00gと3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン:68.50gを入れ、135〜140℃で15分間加熱混練した後冷却し、粉砕して不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−6)の粉末を得た。
【0081】
製造例7〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−7)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル:38.60gと、2,2'−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン:478.50gと、p−アミノフェノール:22.90g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:360.00gを入れ、還流温度で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−7)の溶液を得た。
【0082】
製造例8〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−8)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル:69.10gと、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン:429.90gと、p−アミノフェノール:41.00g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:360.00gを入れ、還流温度で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−8)の溶液を得た。
【0083】
製造例9〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−9)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル:32.20gと、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド:475.20gと、p−アミノフェノール:32.60g、及びジメチルアセトアミド:360.00gを入れ、100℃で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−9)の溶液を得た。
【0084】
製造例10〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−10)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、o‐ジアニシジン:36.70gと、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド:471.10gと、p−アミノフェノール:32.20g、及びジメチルアセトアミド:360.00gを入れ、100℃で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−10)の溶液を得た。
【0085】
製造例11〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−11)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−アミノフェニル)スルホン:40.20gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:464.40gと、p−アミノフェノール:35.40g、及びジメチルアセトアミド:360.00gを入れ、100℃で4時間反応させて、酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−11)の溶液を得た。
【0086】
製造例12〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−12)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン:44.80gと、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン:472.60gと、p−アミノフェノール:22.60g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:360.00gを入れ、還流温度で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−12)の溶液を得た。
【0087】
製造例13〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−13)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン:79.40gと、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン:420.50gと、p−アミノフェノール:40.10g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:360.00gを入れ、還流温度で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−13)の溶液を得た。
【0088】
製造例14〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−14)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、o‐トリジンスルホン:44.10gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:460.80gと、p−アミノフェノール:35.10g、及びジメチルアセトアミド:360.00gを入れ、100℃で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−14)の溶液を得た。
【0089】
製造例15〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−15)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:358.00gと、p−アミノフェノール:54.50g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:412.50gを入れ、還流させながら5時間反応させて酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−15)の溶液を得た。
【0090】
製造例16〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−16)溶液の製造〕の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ポリフェニルメタンマレイミド:358.0gと、p−アミノフェノール:54.50g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:412.50gを入れ、還流させながら5時間反応させて酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−16)の溶液を得た。
【0091】
製造例17〔不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−17)溶液の製造〕
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル:360.00gと、p−アミノフェノール:54.50g、及びジメチルアセトアミド:414.50gを入れ、100℃で2時間反応させて酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A−17)の溶液を得た。
【0092】
実施例1〜31、比較例1〜6
(1)硬化剤として、製造例1〜17で得られた不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)の溶液、
(2)熱硬化性樹脂(B)として、ノボラック型シアネート樹脂〔ロンザジャパン(株)製、商品名:PT−30〕、ビスフェノールAジシアネートプレポリマー〔ロンザジャパン(株)製、商品名:BA230〕、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名、EXA−4710〕、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名:NC−3000−H〕、2官能ナフタレン型エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名、HP−4032D〕、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂〔東都化成(株)製、商品名:ESN−175〕、2官能ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂〔東都化成(株)製、商品名:ESN−375〕、ビフェニル型エポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:YX−4000〕、アントラセン型エポキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:YX−8800〕、
(3)変性イミダゾール(C)として、イソシアネートマスクイミダゾール〔第一工業製薬(株)製、商品名:G8009L〕、エポキシマスクイミダゾール〔JER社製、商品名:P200H50〕、
(4)酸性置換基を有するアミン化合物(D)としてp−アミノフェノール〔イハラケミカル(株)製〕、
(5)無機充填剤(E)として溶融シリカ〔アドマテック(株)製、商品名:SC2050−KC〕、水酸化アルミニウム〔昭和電工(株)製、商品名:HP−360〕、ベーマイト〔河合石灰工業(株)製、商品名:BMT−3LV〕、
(6)モリブデン化合物(F)としてモリブデン酸亜鉛(シャーウィン・ウィリアムズ(株)製、商品名:KEMGARD1100)
(7)難燃性を付与するリン含有化合物(G)として、リン含有エポキシ樹脂〔東都化成(株)製、商品名:エポトートZX−1548−3、リン含有量3質量%〕、リン含有フェノール樹脂〔三光化学(株)製、商品名:HCA−HQ、リン含有量9.6質量%〕、縮合型リン酸エステル化合物〔第八化学工業(株)、商品名:PX−200、リン含有量9質量%〕、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩〔クラリアント(株)製、商品名:OP−930、リン含有量3.5質量%〕
(8)化学粗化可能な化合物(H)として、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子:XER−91〔JSR(株)製〕、コアシェル型ゴム粒子:スタフィロイドAC3832〔商品名、ガンツ化成(株)製〕及びポリビニルアセタール樹脂:KS−23Z〔商品名、積水化学工業(株)製〕
(9)エポキシ樹脂硬化剤(I)として、アミノトリアジンノボラック樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名:LA−3018〕、ベンゾグアナミン〔日本触媒(株)製〕、ジシアンジアミド〔大栄化学工業(株)製〕
(10)希釈溶剤にメチルエチルケトンを使用して第1表〜第6表に示した配合割合(質量部)で混合して樹脂含有量(樹脂成分の合計)65質量%の均一なワニスを作製した。
なお、比較例では、変性イミダゾール(C)に代えて、硬化促進剤(未変性イミダゾール)である2−フェニルイミダゾール〔四国化成(株)製、商品名:2PZ〕および2−エチル−4-メチルイミダゾール〔四国化成(株)製、商品名:2E4MZ〕を使用した。
上記のイソシアネートマスクイミダゾール〔G8009L〕は、一般式(I)において、R3及びR5がCH3、R4及びR6がC25、AがCH4である変性イミダゾールであり、エポキシマスクイミダゾール〔P200H50〕は、一般式(II)において、R3及びR5が水素、R4及びR6がフェニル基、BがC(CH32である変性イミダゾールである。
【0093】
このようにして作製したワニスを用いて前記の方法によりワニスの硬化性(ゲル化するまでの時間)および保存安定性を評価した。
次に、上記ワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して樹脂含有量50質量%のプリプレグを得た。次に、このプリプレグを4枚重ね、18μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力2.5MPa、温度185℃で90分間プレスを行って、銅張積層板を作製した。
得られた銅張積層板について、前記の方法により耐熱性(ガラス転移温度)、熱膨張率、銅箔接着性、吸湿性および耐薬品性を測定・評価した。結果を第1表〜第6表に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
【表4】

【0098】
【表5】

【0099】
【表6】

【0100】
第1表、第2表および第4表〜第6表から明らかなように、本発明の実施例はいずれも、ワニスの硬化性、保存安定性に優れる。一方、第3表の比較例では、変性イミダゾール化合物(C)を含まないため硬化性、保存安定性の何れかが著しく劣っている。
また、第1表、第2表および第4表〜第6表から明らかなように本発明の実施例はいずれも、耐熱性(Tg)、銅箔接着性、耐吸湿性、耐薬品性に優れる。一方、第3表の比較例では、変性イミダゾール化合物(C)を含まないためこれらの特性の何れかが著しく劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)を反応させて得られる不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物(A)、熱硬化性樹脂(B)及び下記一般式(I)又は一般式(II)で表される変性イミダゾール化合物(C)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式中、R3、R4、R5及びR6は各々独立に、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり、Aはアルキレン基又は芳香族炭化水素基である。)
【化2】

(式中、R3、R4、R5及びR6は各々独立に、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基又はフェニル基を示し、Bは単結合、アルキレン基、アルキリデン基、エーテル基又はスルフォニル基を示す。)
【請求項2】
さらに、下記一般式(III)で表される酸性置換基を有するアミン化合物(D)を含有
する請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化3】

(式(III)中、R1は各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を、R2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
【請求項3】
さらに、無機充填材(E)を含有する請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、モリブデン化合物(F)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、難燃性を付与するリン含有化合物(G)を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、化学粗化可能な化合物(H)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬
化性樹脂組成物。
【請求項7】
熱硬化性樹脂(B)が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂及びメラミン樹脂から選ばれた少なくとも一種である請求項1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
無機充填材(E)が、溶融球状シリカ及び/又は熱分解温度が300℃以上の金属水和物である請求項3〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の半硬化状態のフィルムが支持体表面に形成された支持体付絶縁フィルム。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を繊維シート状補強基材に塗工し、Bステージ化して得られたプリプレグ。
【請求項11】
回路基板と絶縁樹脂層を有する積層板であって、絶縁樹脂層が、(1)請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物、(2)請求項9に記載の支持体付絶縁フィルム、(3)請求項10に記載のプリプレグのいずれかを用いて形成された積層板。
【請求項12】
請求項11に記載の積層板を用いて製造された多層プリント配線板。

【公開番号】特開2013−64136(P2013−64136A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−239553(P2012−239553)
【出願日】平成24年10月30日(2012.10.30)
【分割の表示】特願2010−12543(P2010−12543)の分割
【原出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】