説明

熱硬化性樹脂組成物、金属張積層板およびプリント配線板

【課題】水酸化マグネシウムを高充填させても粘度の増加が起こらない、難燃性およびハンドリング性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供すること、さらに、この組成物から樹脂絶縁層が形成された金属張積層板およびプリント配線板を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)1分子中にエステル基と2つ以上の不飽和二重結合とを有するラジカル重合性化合物と、(B)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、(C)ケイ素化合物及びアルミニウム化合物の一方または両方からなる被覆層を表面に有する水酸化マグネシウムとを含有することを特徴とする、熱硬化性樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性に優れた新規な熱硬化性樹脂組成物に関し、特に、難燃性が要求されるプリント配線板等の絶縁材として好適に用いられる熱硬化性樹脂組成物に関する。さらに本発明は、このような熱硬化性樹脂組成物を用いた金属張積層板およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント配線板等を製造するための連続工法に用いられる樹脂としては、無溶剤系樹脂で速硬化する樹脂が好ましいため、炭素-炭素不飽和結合を持つ樹脂が材料として好適に使用される。さらに炭素-炭素不飽和結合を持つ樹脂の中で広く用いられている樹脂としてはビニルエステル樹脂等がある。このようなエステル樹脂は、炭素-炭素不飽和結合に加えてエステル結合を持つことが特徴である。
【0003】
一方、金属水酸化物である水酸化マグネシウムは、難燃剤として多くのエンジニアリングプラスチックや電子材料に用いられている。
【0004】
しかしながら、水酸化マグネシウムは難燃剤であると同時に、エステル樹脂の増粘剤として広く知られており、ビニルエステル樹脂のようなエステル結合を有する樹脂に対して水酸化マグネシウムを用いると、ワニスの粘度が著しく増大しハンドリング性が非常に困難になるという問題があった。
【0005】
この問題に対して、これまでに、特定の形状を有する水酸化マグネシウムを含有させることにより、粘度増加を抑えて、水酸化マグネシウムをエステル系樹脂に高充填させることが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6−74346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、水酸化マグネシウムを高充填させたことによる粘度増大を十分に抑えられたとは言い難く、よりいっそう樹脂の粘度を下げるための改良が必要とされていた。
【0008】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物に特殊な水酸化マグネシウムを高充填させることにより、難燃性を確保し、かつハンドリング性に優れた低粘度の熱硬化性樹脂組成物を提供すること、さらに、この組成物から樹脂絶縁層が形成された金属張積層板およびプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の手段により前記課題を解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、(A)1分子中にエステル基と2つ以上の不飽和二重結合とを有するラジカル重合性化合物と、(B)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、(C)ケイ素化合物及びアルミニウム化合物の一方または両方からなる被覆層を表面に有する水酸化マグネシウムとを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物、前記組成物によって樹脂絶縁層が形成された金属張積層板およびプリント配線板を包含する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水酸化マグネシウムを高充填させても樹脂粘度の増加が起こらない、難燃性及びハンドリング性に優れた熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。また、前記組成物によって樹脂絶縁層が形成された高難燃性金属張積層板および高難燃性プリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(熱硬化性樹脂組成物)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)1分子中にエステル基と2つ以上の不飽和二重結合とを有するラジカル重合性化合物と、(B)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、(C)ケイ素化合物及びアルミニウム化合物の一方または両方からなる被覆層を表面に有する水酸化マグネシウムとを含有することを特徴とする。
【0013】
本発明における、(A)1分子中にエステル基と2つ以上の不飽和二重結合とを有するラジカル重合性化合物とは、1分子中にエステル基と少なくとも2個以上のラジカル重合性の不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物である。このように、1分子中に2個以上の不飽和二重結合を有する架橋性ラジカル重合性化合物を用いることにより、得られる樹脂硬化物に極めて緻密な架橋構造が形成され、硬化物のTgを著しく向上させることができる。
【0014】
このようなラジカル重合性化合物(A)の具体例としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、ジシクロペンタジエンジメタクリレート、ジシクロペンタジエンジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセリンジメタクリレート、グリセリンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、無水メタクリル酸等のような1分子中に2個以上の不飽和二重結合を有する架橋性単量体;ビスフェノールA型エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応物であるビニルエステル樹脂(例えば、DIC株式会社製)等のビニルエステル樹脂;ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等と無水マレイン酸やフマル酸等の多塩基不飽和酸との反応物である不飽和ポリエステル樹脂のようなものが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
これらの中では、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、ジシクロペンタジエンジメタクリレート、ジシクロペンタジエンジアクリレート、A型エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応物であるビニルエステル樹脂が絶縁信頼性という観点から好ましい。
【0016】
また、1分子中に2個以上の不飽和二重結合を有する架橋性単量体とビニルエステル樹脂とを含有するものも、より緻密な架橋構造を形成して、より高いTgを有する硬化物を与える点から好ましい。
【0017】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物中の前記(A)成分の含有割合としては、熱硬化性樹脂組成物全量中に通常1〜99質量%であり、さらには10〜90質量%であることがより好ましい。
【0018】
次に、(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、本発明の効果を妨げない範囲で特に限定なく、あらゆるエポキシ樹脂を使用することができる。
【0019】
より具体的な例示としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの中では、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。
【0020】
なお、前記(B)成分のエポキシ樹脂のエポキシ当量としては、平均で150〜500程度であることが好ましい。
【0021】
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物中の前記(B)成分の含有割合としては、熱硬化性樹脂組成物全量中に1〜99質量%、さらには10〜90質量%であることが好ましい。 さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(C)ケイ素化合物及びアルミニウム化合物の一方または両方からなる被覆層を有する水酸化マグネシウムを含有する。
【0022】
水酸化マグネシウムの被覆層を構成するケイ素化合物としては、二酸化ケイ素などが挙げられ、また、アルミニウム化合物としては、アルミナなどが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。なかでも、好ましくは、二酸化ケイ素及びアルミナの両方からなるからなる被覆層を有する水酸化マグネシウムを用いる。
【0023】
水酸化マグネシウムの表面に被覆層を形成する方法としては特に限定はなく、水酸化マグネシウム全体を覆うように被覆層を構成できる方法であれば、乾式法、半乾式法、湿式法のいずれの公知の技術を用いても行うことができる。具体的には、例えば、ケイ素化合物を用いる場合、水酸化マグネシウムのスラリー中に水溶性ケイ酸塩を添加した後、酸を加えて、ケイ酸塩を中和することによって、水酸化マグネシウム粒子の表面にシリカからなる被覆層を形成する。
【0024】
水酸化マグネシウムに対するケイ素化合物及び/又はアルミニウム化合物の使用割合は、被覆層の厚みが0.01〜0.05μm程度になるような割合であればよく、例えば、二酸化ケイ素を用いる場合、水酸化マグネシウムに対してSiO2換算にて0.1〜20質量%である。また、アルミナを用いる場合は、水酸化マグネシウムに対して0.03〜10質量%程度である。
【0025】
さらに好ましくは、本発明の水酸化マグネシウムは、上述したような被覆層の上に、有機シラン化合物からなる表面処理剤層を有する。
【0026】
表面処理剤層を構成する化合物としては、一般に表面処理剤として用いられ得る化合物であれば特に限定なく用いることができるが、具体例としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸アルカリ金属塩、多価アルコール高級脂肪酸エステル、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤、オルガノシラン、オルガノシロキサン、オルガノシラザンなどが挙げられる。なかでも、好適な例示として、シランカップリング剤、オルガノシラン等が挙げられる。
【0027】
水酸化マグネシウムに対する有機シラン化合物の使用割合は、通常、0.1〜20質量%程度であり、より好ましくは0.5〜15質量%である。
【0028】
表面処理剤層を上述の被覆層上に積層する方法については、被覆層を有する水酸化マグネシウムの表面をさらに被覆する方法であり、乾式法、半乾式法、湿式法のいずれを用いてもよい。具体的には、例えば、水酸化マグネシウムのスラリー中にエマルジョン、水溶液等の適宜の形態にて表面処理剤を加え、適当な温度範囲で攪拌、混合した後、水酸化マグネシウム粒子を濾過、水洗、乾燥し、粉砕することで得られる。
【0029】
なお、本発明における(C)水酸化マグネシウムとしては、市販のものを利用することもでき、例えば、堺化学工業(株)製のMZG−6、MGZ−5等が具体例として挙げられる。
【0030】
このような(C)水酸化マグネシウムの含有量については、熱硬化性樹脂組成物全量中に20〜60質量%であり、さらに好ましくは30〜60質量%である。
【0031】
また、(C)水酸化マグネシウムの平均粒子径は、0.5〜5μmであり、より好ましくは、1〜3μmである。
【0032】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、前述の必須成分(A)〜(C)以外にさらに硬化反応を促進するために硬化促進剤を含有させることが好ましい。硬化促進剤としては上述した本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進することができるものであれば、特に限定なく使用することができる。具体的には、例えば、2−メチルイミダゾールやシアノエチルイミダゾール等のイミダゾール類;オクタン酸亜鉛、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト等の金属石鹸;トリフェニルホスフィンなどの有機リン化合物;トリエチルアミンなどのアミン化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7などの塩基類等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明において硬化促進剤を含有する場合には、熱硬化性樹脂組成物全量中に、0.01〜3重量%程度であることが好ましい。
【0034】
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記(A)〜(C)成分以外にその他のラジカル重合性モノマーを含有させてもよい。そのような重合性モノマーの具体例としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ハロゲン化スチレン等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸アリルエステル;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアン化ビニル、シアン化ビニリデンなどのビニルモノマー;などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の添加剤、例えば、ラジカル重合開始剤、難燃剤、難燃助剤、レベリング剤、着色剤等を必要に応じて含有してもよい。好ましくは、本発明の熱硬化性樹脂組成物はラジカル重合開始剤を含有しており、本発明にて用いられ得るラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、ベンゾイルパーオキシド、イソブチルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ブタン等のパーオキシケタール類、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等のアルキルパーエステル類、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチルカーボネート等のパーカーボネート類等の勇気過酸化物や過酸化水素等の無機過酸化物が挙げられる。これらは市販のものを利用することもでき、例えば、パークミルH-80(日本油脂製)などが具体例として挙げられる。
【0036】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、通常、ワニス状に調製されて用いられる。このようなワニスは、例えば、以下のようにして調製される。
【0037】
つまり、上述した熱硬化性樹脂組成物の各成分を配合し、必要に応じてさらに無機充填剤などを添加して、ボールミル、ビーズミル、ミキサー、ブレンダー等を用いて均一に分散・混合し、ワニス状に調製することができる。
【0038】
本発明の熱硬化性樹脂組成物のワニスの粘度は、水酸化マグネシウムを高充填しているにも関わらず、100〜15000cps程度ときわめて低粘度であり、ハンドリング性に優れている。
【0039】
一般に、エステル結合を有する樹脂に対して水酸化マグネシウムを用いると粘度が著しく増大しハンドリング性が非常に悪くなるが、このような粘度の増大は水酸化マグネシウム中のマグネシウムイオンがエステル結合と配位するためと考えられている。本発明に係る熱硬化性樹脂組成物では、上述したような特殊な被覆層を有する水酸化マグネシウムを用いているため、水酸化マグネシウム表面にマグネシウムイオンが存在しないので、エステル結合を有する樹脂に水酸化マグネシウムを高充填させても樹脂粘度の増大が抑えられると考えられる。そのため、本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、難燃剤として有効な水酸化マグネシウムを樹脂に高充填させることができ、高い難燃性を達成することができる一方で、低粘度でハンドリング性や加工性などにおいても優れている。
【0040】
(積層板)
そして、本発明の金属張積層板の製造方法は、上記エポキシ樹脂組成物を基材に含浸する工程と、上記樹脂組成物が含浸された基材の少なくとも1面に銅箔などの金属箔を張り合わせる工程と、前記樹脂組成物を硬化させる工程とを有する。
【0041】
具体的には、例えば、基材を巻回した基材ロールから、塗布工程に基材を連続的に供給し、前記ガラス基材に上記ワニス状の樹脂組成物を塗布して含浸させ、樹脂が含浸された基材表面に金属箔を張り合わせ、樹脂成分を硬化させる。
【0042】
なお、樹脂組成物中のラジカル重合性化合物はラジカル重合するために、酸素との接触により硬化性が低下する。そのために、両面に金属箔が張り合わせられているか、片面のみに金属箔を張り合わせる場合には、他の一面にはPETフィルムを張り合わせることにより、空気との接触を抑制することが好ましい。
【0043】
本発明の製造方法によれば、上記各工程を連続的に行うことができるために、金属張積層板の連続生産が可能になるという利点がある。
【0044】
(多層プリント配線板)
上述のようにして作製された積層体の表面の金属箔をエッチング加工等して回路形成をすることによって、積層体の表面に回路として導体パターンを設けたプリント配線板を得ることができる。
【0045】
以下に、本発明について、実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
はじめに、本実施例で用いた原材料をまとめて示す。
〈ラジカル重合化合物〉
・成分(A):新中村化学工業(株)製、ラジカル重合性モノマー(トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート)「DCP」
・成分(A):DIC(株)製、ビニルエステル樹脂「EXP2641」
・スチレンモノマー:新日鐵化学製
〈エポキシ樹脂成分〉
・成分(B):クレゾールノボラック型エポキシ、DIC(株)製、「N−740」(エポキシ当量182)
〈水酸化マグネシウム〉
・成分(C):被覆層および表面処理剤層を有する水酸化マグネシウム、堺化学工業(株)製、「MGZ−6」(平均粒子径:2μm)
・成分(C):被覆層および表面処理剤層を有する水酸化マグネシウム、堺化学工業(株)製、「MGZ−5」(平均粒子径:0.8μm)
・無処理水酸化マグネシウム(被覆層および表面処理剤層なし):堺化学工業(株)製、「MGZ−0」(平均粒子径:0.8μm)
・水酸化マグネシウム(表面処理剤層のみ):堺化学工業(株)製、「MGZ−6R」(平均粒子径:2μm)
・無処理水酸化マグネシウム:アルベマール(株)製、「マグニフィンH5」(平均粒子径:0.8μm)
・無処理水酸化マグネシウム:タテホ化学工業(株)製、「エコーマグPZ−1」(平均粒子径:1.2μm)
〈硬化促進剤〉
・シアノエチルイミダゾール:四国化成工業(株)製「2E4MZ」
〈ラジカル重合開始剤〉
・パークミルH−80:日本油脂社製。
【0047】
(実施例1〜3および比較例1〜4)
表1に示した、配合組成(質量部)を配合し、プライミクス製ホモディスパーを用いて分散・混合することにより樹脂ワニスを調整した。
【0048】
次に、銅箔(JTC、日鉱金属製)の上に、ガラスクロス(1504タイプ、平織り)を、重ねたのち、ワニスを含浸した。そして、ワニスを含浸した後、さらに、上面に銅箔を配し、110℃で15分間加熱乾燥し、さらに200℃で15分間加熱乾燥して、銅張り積層板を得た。
【0049】
上記のようにして得られた樹脂ワニスおよび銅張り積層板を評価用サンプルとして用いて、以下に示す方法により、粘度およびエッチング後外観の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0050】
[粘度]
実施例1〜3および比較例1〜4の樹脂ワニスの粘度を、B型粘度計(トキメック社製)で測定した。単位はcpsである。
【0051】
[エッチング後外観]
上記で得られた銅張り積層板を、山縣機械製塩化第二銅液エッチングマシンを用いて銅箔を除去して、エッチング後の外観を評価した。銅箔除去後のサンプルを観察し、ボイド、カスレ、白化が存在しなければOKとし、反対にボイド、カスレ、白化のいずれかが存在すればNGと評価した。
【0052】
【表1】

【0053】
(結果)
表1の結果より、本発明に係る実施例1〜3の熱硬化性樹脂組成物は、何れも水酸化マグネシウムを高充填させているにも関わらず、低い粘度を示した。さらに、いずれの実施例の樹脂の硬化物もエッチング後の外観は良好であった。
【0054】
また、特に、本発明に係る水酸化マグネシウムの中でも、粒子径の大きな水酸化マグネシウムを用いると、粘度がきわめて低くなることもわかった。
【0055】
一方、本発明に係る水酸化マグネシウム(C)の代わりに、無処理水酸化マグネシウム、あるいは表面処理剤層のみを有する水酸化マグネシウムを用いた比較例の熱硬化性樹脂組成物では、水酸化マグネシウムの粒子径に関わらず、水酸化マグネシウムを高充填させたためにいずれもワニス粘度が非常に高くなり、その硬化物のエッチング後の外観も不良であった。
【0056】
以上、説明したように、本発明の一つの実施態様である熱硬化性樹脂組成物は、A)1分子中にエステル基と2つ以上の不飽和二重結合とを有するラジカル重合性化合物と、(B)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、(C)ケイ素化合物及びアルミニウム化合物の一方または両方からなる被覆層を表面に有する水酸化マグネシウムとを含有することを特徴とし、前記熱硬化性樹脂組成物を使用することにより、水酸化マグネシウムを高充填しても樹脂粘度の増大が起こらないため、高い難燃性および優れたハンドリング性・加工性を有する基材を得ることができる。
【0057】
さらに、前記水酸化マグネシウムが、前記被覆層の上に、さらに有機シラン化合物からなる表面処理剤層を有することが好ましい。このような水酸化マグネシウムを用いることにより、上記効果がより確実に得られる。
【0058】
また、前記被覆層が、水酸化マグネシウムに対してSiO換算にて0.1〜20質量%の二酸化ケイ素であることがより好ましい。
【0059】
そして、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、前記(C)水酸化マグネシウムの含有量が全樹脂組成物中20〜60質量%とすることにより、より高い難燃性を確実に達成し得る。
【0060】
さらに、前記(C)水酸化マグネシウムの平均粒子径が0.5μm〜5μmであれば、より低粘度の熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0061】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、粘度が100〜15000cpsであることが好ましい。
【0062】
本発明の別の実施態様である銅張積層板は、前記熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させ、あるいは銅箔に塗装し硬化させてなる樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層表面に張り合わされた銅箔層あるいは基材とを備える銅張積層板である。
【0063】
また、本発明のプリント配線板は、前記銅張積層板の表面の銅箔を部分的に除去することにより回路形成して得られたことを特徴とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中にエステル基と2つ以上の不飽和二重結合とを有するラジカル重合性化合物と、(B)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、(C)ケイ素化合物及びアルミニウム化合物の一方または両方からなる被覆層を表面に有する水酸化マグネシウムとを含有することを特徴とする、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記水酸化マグネシウムが、前記被覆層の上に、さらに表面処理剤層を有する、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記被覆層が、水酸化マグネシウムに対してSiO換算にて0.1〜20質量%の二酸化ケイ素である、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)水酸化マグネシウムの含有量が全樹脂組成物中20〜60質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)水酸化マグネシウムの平均粒子径が0.5μm〜5μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
粘度が100〜15000cpsである、請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させ、あるいは金属箔に塗装し硬化させてなる樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層表面に張り合わされた金属箔層あるいは基材とを備える金属張積層板。
【請求項8】
請求項7に記載された金属張積層板の表面の金属箔を部分的に除去することにより回路形成して得られるプリント配線板。

【公開番号】特開2012−111827(P2012−111827A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261145(P2010−261145)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】