説明

熱硬化性樹脂組成物及びその熱硬化性樹脂組成物を使用したプリプレグシート又は積層板

【課題】低誘電率、低誘電正接及びノンハロゲンの熱硬化性エポキシ樹脂組成物を提供し、さらに、その熱硬化性エポキシ樹脂組成物を使用したプリプレグシート又は積層板を提供する。
【解決手段】本発明の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む。硬化剤は、多官能基芳香族ポリエステル硬化剤に、フェノールフタレインベンゾオキサジンフェノール又はスチレン−無水マレイン酸共重合体を配合した混合硬化剤である。また、有機又は無機の編織又は不織の繊維強化材に熱硬化性樹脂組成物を含浸してプリプレグシートを形成することができる。また、そのプリプレグシートに金属箔を接合することにより、積層板を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグシート、プリント回路積層板、ビルドアップ層結合剤、接着剤、封止材料、FRP製品などに広く応用することができ、特に、プリント回路積層板及びビルドアップ層結合剤の製造に用いることができる低誘電率、低誘電正接(又は誘電損失と称す)及び難燃性である熱硬化性エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、優れた電気絶縁特性、機械特性及び接着特性を有するため、銅張り積層板のワニス(Varnish for Copper Clad Laminate)、半導体封止材料(Epoxy Encapsulant for Semiconductor)、高密度ビルドアップ層結合剤(Resin Coated Thin Core for HDI Application)、ソルダーマスク(Solder Mask)などの電気製品及び電子部品の領域に広く応用されている。一般に、エポキシ樹脂に配合される硬化剤は、ジシアンジアミド(Dicyandiamide)などのアミン硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤などである。
【0003】
電気製品又は電子部品は、信号伝送量が増大され、信号伝達損失が低減される方向に発展している。さらに、クラウドコンピューティング(Cloudy computing)による演算及び無汚染(Green material)が求められている。従って、材料の開発においても、低誘電率、低誘電正接、ノンハロゲンなどの特性が求められている。現段階におけるエポキシ樹脂に硬化剤が配合されてなる硬化物は、極性の高い水酸基を有するため、誘電正接(又は誘電損失と称す)を低減させるのが難しい。さらに、組成物に臭化物(例えば、テトラブロモビスフェノール A;TBBPA)又は臭化エポキシ樹脂を添加して難燃性(94−V0)を満足する必要があるため、ノンハロゲンにできない。従って、如何にして低誘電率及び低誘電正接の無汚染のノンハロゲン材料を開発するかは、非常に重要な課題であった。
【0004】
エポキシ樹脂が硬化するときに水酸基が発生しない硬化剤中、日立化成株式会社の特許文献1の芳香族多官能基ポリエステルを硬化剤として使用する硬化物は、高架橋密度(Tg=210〜290℃ by DMA)の硬化物を生産することができる。従って、耐熱性の高い電子部品又は電気領域の絶縁材料として使用することができる。しかし、上述の硬化物中には、未反応の水酸基又はカルボキシル基を有するため、硬化物は、誘電正接が高くなる上、難燃性を有さない(UL94−V0のレベルを満足できない)。また、大日本インキ株式会社の特許文献2においては、ナフタレンカルボン酸とα−ナフトールとが反応することにより得られる芳香族ポリエステル硬化剤が使用されることにより、生産されたエポキシ樹脂硬化物は、低誘電正接である。しかし、このエポキシ樹脂硬化物は、難燃性を有さない。さらに、末端基が硬化反応するとき、架橋に参与しないため、耐熱性に劣る。また、日立化成株式会社の特許文献3においては、ジヒドロベンゾオキサジン環を含む熱硬化性樹脂(Thermal setting resin containing dihydrobenzoxazine rings)及びノボラック型フェノール樹脂(Novolac phenolic resin)をエポキシ樹脂硬化剤として使用することにより、迅速に硬化する上、機械特性に優れ、難燃性(94−V0)の硬化物を生産できることが開示されている。しかし、この硬化物もノボラックと組み合わされるため、多くの水酸基が発生し、誘電率及び誘電正接を有効に低減することができない。また、特許文献4においては、スチレン−無水マレイン酸共重合体に、多官能アミン硬化剤(Multifunctional amine cross−linking agent)を組み合わせ、エポキシ樹脂と反応させることにより、高速で低損失の回路基板に応用できる硬化物が開示されている。しかし、特許文献4においては、リン系エポキシ樹脂を使用した場合でも、難燃性(94−V0)を満足できるか否か、及び、本来有する低誘電率及び低誘電正接が変化するか否かが開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−51517号公報
【特許文献2】特開2002−12650
【特許文献3】米国特許US5,945,222号公報
【特許文献4】米国特許US6,534,181号公告
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、低誘電率(Low Dielectric Constant)、低誘電正接(Low Dissipation Factor)及びノンハロゲンの熱硬化性エポキシ樹脂組成物を提供し、さらに、その熱硬化性エポキシ樹脂組成物を使用したプリプレグシート又は積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明は、熱硬化性樹脂組成物及びその熱硬化性樹脂組成物を使用したプリプレグシート又は積層板を提供するものである。熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む。硬化剤は、多官能基芳香族ポリエステル硬化剤に、フェノールフタレインベンゾオキサジンフェノール又はスチレン−無水マレイン酸共重合体を配合した混合硬化剤である。有機又は無機の編織又は不織の繊維強化材に熱硬化性樹脂組成物を含浸することにより、樹脂含浸シートを形成する。次に、樹脂含浸シートを金属箔が張られた基板に接合することにより、積層板を形成する。
【0008】
実施時、多官能基芳香族ポリエステル硬化剤は、分子鎖末端にアリルオキシカルボニル基を有する芳香族多価カルボキシル残基と芳香族多価水酸基との化合物反応によって形成される。そのエステル当量(Ester Equivalent)は、180〜500である。フェノールフタレインベンゾオキサジンフェノールの−OH値は、200〜700であり、窒素含有量は、4〜20wt%である。スチレン−無水マレイン酸共重合体の酸価(Acid value)は、100〜600である。
【0009】
実施時、エポキシ樹脂は、リン含有エポキシ樹脂、窒素含有エポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂又はそれらの組み合わせである。リン含有エポキシ樹脂は、DOPO−PNE、DOPO−CNE又はDOPO−HQの改質エポキシ樹脂である。そのリン含有量は、2〜10wt%である。また、そのエポキシ当量は、250〜800である。窒素含有エポキシ樹脂は、N,N−ジグリシジル(Diglycidyl)エポキシ樹脂、オキサゾリドン(Oxazolidone)環を有するエポキシ樹脂又はポリアミドイミドエポキシ樹脂(Polyamide−imide−epoxy;PAI−epoxy)である。その窒素含有量は、5〜20wt%である。また、そのエポキシ当量は、100〜1000である。ビスフェノールFエポキシ樹脂のエポキシ当量は、150〜1000である。
【0010】
実施時、熱硬化性樹脂組成物には、硬化触媒が添加される。熱硬化性樹脂組成物は、10〜90重量%のエポキシ樹脂、90〜10重量%の混合硬化剤及び0.01〜5重量%の硬化触媒を含む。混合硬化剤は、20〜95重量%の多官能基芳香族ポリエステル硬化剤及び5〜80重量%のフェノールフタレインベンゾオキサジンフェノールを含む。或いは、混合硬化剤は、20〜95重量%の多官能基芳香族ポリエステル硬化剤及び5〜80重量%のスチレン−無水マレイン酸共重合体を含む。硬化触媒は、イミダゾール(Imidazole)化合物、有機リン化合物、有機リン酸エステル化合物、リン酸塩、トリアルキルアミン、4−(ジメチルアミノ基)ピリジン、第4級アンモニウム塩又は尿素化合物である。
【0011】
実施時、溶剤を使用して熱硬化性樹脂組成物を溶解し、ワニス組成物を形成することができる。溶剤は、アミド類溶剤(N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ケトン類溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル類溶剤、芳香族炭化水素類溶剤又はモノエーテルグリコール類溶剤である。
【0012】
実施時、熱硬化性樹脂組成物には、無機充填剤が添加される。無機充填剤は、熱硬化性樹脂組成物の1〜30重量%を占める。無機充填剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化珪素又は球形及び破砕状の酸化アルミニウムである。また、無機充填剤の平均粒径は、0.01μm〜20μmである。
【0013】
実施時、熱硬化性樹脂組成物には、高熱伝達率の無機充填剤が添加される。高熱伝達率の無機充填剤は、熱硬化性樹脂組成物の10〜80重量%を占める。高熱伝達率の無機充填剤は、六方晶系及び球形の窒化アルミニウム、六法晶系及び球形の窒化ホウ素、球形及び破砕状の酸化アルミニウム、炭化珪素又はグラファイトである。炭化珪素は、六角晶系のα―炭化珪素及び立方晶系のβ―炭化珪素を含む。また、高熱伝達率の無機充填剤の平均粒径は、0.01μm〜20μmである。
【0014】
実施時、積層板の基材は、有機又は無機の繊維強化材からなり、熱硬化性樹脂組成物が含浸(Impregnated)される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、低誘電率及び低誘電正接である上、熱安定性(T−288)に優れる。また、硬化物は、極めて好適な難燃性(UL−94−V0)、電気特性及び機械特性を有する。従って、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、プリント回路積層板、ビルドアップ層結合剤、接着剤、封止材料、などに広く応用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態による熱硬化性樹脂組成物は、主に、エポキシ樹脂及び硬化剤からなる。
【0017】
エポキシ樹脂は、リン含有エポキシ樹脂、窒素含有エポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂又はそれらの組み合わせである。リン含有エポキシ樹脂は、DOPO−PNE、DOPO−CNE又はDOPO−HQの改質エポキシ樹脂である。そのリン含有量は、2〜10wt%である。そのエポキシ当量は、250〜800である。その具体的な構造を以下、化学式1〜3に示す。式中、n=0.5〜10である。好適なリン含有量は、3〜7wt%であり、エポキシ当量(EEW)は、300〜500である。
【0018】
【化1】


DOPO−PNE Epoxy
【0019】
【化2】


DOPO−CNE Epoxy
【0020】
【化3】


DOPO−HQ Epoxy
【0021】
窒素含有エポキシ樹脂は、N,N−ジグリシジル(Diglycidyl)エポキシ樹脂、オキサゾリドン(Oxazolidone)環を有するエポキシ樹脂又はポリアミドイミドエポキシ樹脂(Polyamide−imide−epoxy;PAI−epoxy)である。その窒素含有量は、5〜20wt%である。そのエポキシ当量は、100〜1000である。好適な窒素含有量は、6〜10wt%であり、好適なエポキシ当量(EEW)は、110〜700である。
【0022】
ビスフェノールFエポキシ樹脂のエポキシ当量は、150〜1000である。好適なエポキシ当量(EEW)は、160〜300である。
【0023】
硬化剤は、(1)多官能基芳香族ポリエステル硬化剤とフェノールフタレインベンゾオキサジンフェノール硬化剤とを開環後、エポキシ基と同時に開環架橋反応を行った混合硬化剤である。或いは、(2)多官能基芳香族ポリエステル硬化剤とスチレン−無水マレイン酸硬化剤とをエポキシ基と同時に開環架橋反応を行った混合硬化剤である。この硬化剤によって形成される硬化物中の未反応の水酸基又はカルボキシル基は極めて低く、リン含有及び窒素含有二(又は多)官能基エポキシ樹脂と架橋反応を行うことにより、難燃性のエポキシ樹脂を生成する。硬化剤(1)は、20〜95wt%の多官能基芳香族ポリエステル硬化剤を含み、多官能基芳香族ポリエステル硬化剤は、分子鎖末端にアリルオキシカルボニル基を有する芳香族多価カルボキシル残基と芳香族多価水酸基との化合物から形成される。また、硬化剤(1)は、5〜80wt%のフェノールフタレインベンゾオキサジンフェノール硬化剤を含む。硬化剤(2)は、20〜95wt%の多官能基芳香族ポリエステル硬化剤及び5〜80wt%のスチレン−無水マレイン酸硬化剤からなる。
【0024】
a:多官能基芳香族ポリエステル硬化剤
多官能基芳香族ポリエステル硬化剤のエステル当量(Ester Equivalent)は、180〜500である。多官能基芳香族ポリエステル硬化剤は、化学式4に示す構造からなる。
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、Qは、化学式5、化学式6、化学式7、化学式8又は化学式9に示す構造からなる。また、n=1〜10の整数である。)
【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
(式中、Xは、−CH、−C(CH、−SOである。)
【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
b:フェノールフタレインベンゾオキサジンフェノール
フェノールフタレインベンゾオキサジンフェノール硬化剤の−OH値は、200〜700であり、窒素含有量は、4〜20wt%である。好適な窒素含有量は、5〜10wt%及び水酸基当量(−OH値)は、200〜400である。フェノールフタレインベンゾオキサジンフェノール硬化剤は、化学式10に示す構造からなる。
【0034】
【化10】

【0035】
(式中、Rは、アリル基、未置換又は置換されたフェニル基、未置換又は置換されたC〜C−アルキル基、或いは、未置換又は置換されたC〜C−ナフテン基である。R及びRは、水素(hydrogen)芳香族(aromatic compound)又は脂肪族(aliphatic compound)である。)
【0036】
c:スチレン−無水マレイン酸硬化剤(Styrene−co−Maleic Anhydride;SMA)
スチレン−無水マレイン酸硬化剤の酸価は、100〜600である。好適な酸価は、300〜500である。スチレン−無水マレイン酸硬化剤は、化学式11に示す構造からなる。
【0037】
【化11】

【0038】
(式中、m=2〜12、n=1〜8である。m及びnは、整数であり、好ましくは、3〜5である。)
【0039】
本実施形態による熱硬化性樹脂組成物には、硬化触媒が添加される。熱硬化性樹脂組成物は、10〜90重量%のエポキシ樹脂、90〜10重量%の混合硬化剤及び0.01〜5重量%の硬化触媒を含む。混合硬化剤は、20〜95重量%の多官能基芳香族ポリエステル硬化剤及び5〜80重量%のフェノールフタレインベンゾオキサジンフェノールを含む。或いは、混合硬化剤は、20〜95重量%の多官能基芳香族ポリエステル硬化剤及び5〜80重量%のスチレン−無水マレイン酸共重合体を含む。硬化触媒は、イミダゾール(Imidazole)化合物、有機リン化合物、有機リン酸エステル化合物、リン酸塩、トリアルキルアミン、4−(ジメチルアミノ基)ピリジン、第4級アンモニウム塩又は尿素化合物である。硬化剤触媒の配合量は、0.01重量%より少ない。これにより、硬化反応速度が遅くなる。仮に、硬化剤触媒の配合量が5重量%を超える場合、エポキシ樹脂に自己重合(均一重合;homogeneous)が発生するため、多官能基芳香族ポリエステル硬化剤及びフェノールフタレインベンゾオキサジンフェノール硬化剤と、エポキシ樹脂との硬化反応が阻害される。
【0040】
また、プリント回路基板、ビルドアップ層結合剤及びCFRP(炭素繊維強化プラスチック)に用いられるエポキシ樹脂組成物を製造するために、溶剤を使用して上述のエポキシ樹脂組成物を溶解し、ワニス組成物(Varnish)を形成してもよい。一般に、ワニス組成物は、10〜70重量%であり、好ましくは、15〜65重量%である。溶剤は、アミド類溶剤(N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ケトン類溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル類溶剤、芳香族炭化水素類溶剤又はモノエーテルグリコール類溶剤である。
【0041】
本実施形態による熱硬化性樹脂組成物、硬化触媒及び溶剤の組成物には、用途によって無機充填剤を添加してもよい。無機充填剤は、熱硬化性樹脂組成物の1〜30重量%を占める。本実施形態による無機充填剤は、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、二酸化珪素(SiO)又は球形及び破砕状の酸化アルミニウム(Al)である。また、無機充填剤の平均粒径は、0.01μm〜20μmである。
【0042】
本実施形態による熱硬化性樹脂組成物、硬化触媒及び溶剤の組成物には、高熱伝達率の無機充填剤を添加し、高熱伝達率で低誘電正接の放熱絶縁プラスチック層又は基板を形成してもよい。高熱伝達率の無機充填剤は、熱硬化性樹脂組成物の10〜80重量%を占め、好ましくは、40〜65重量%を占める。本実施形態の無機充填剤は、六方晶系及び球形の窒化アルミニウム(AlN)、六法晶系及び球形の窒化ホウ素(BN)、球形及び破砕状の酸化アルミニウム(Al)、炭化珪素(SiC)又はグラファイト(Graphite)である。また、無機充填剤の平均粒径は、0.01μm〜20μmである。
【0043】
(実施例1)
表1Aから表1Dにエポキシ樹脂ワニス(Varnish)の実施例を示す。本実施例において、固体の多官能基芳香族ポリエステル硬化剤と、フェノールフタレインベンゾオキサジンフェノール又はスチレン−無水マレイン酸共重合体と、をメチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(glycol−methoxy ether acetate;PMA)の混合溶剤中に加えて攪拌しながら70℃に加熱し、混合硬化剤の混合物が透明状態になるまで攪拌し続けた。次に、混合物を25〜30℃になるまで降温した。次に、硬化触媒と、リン含有及び窒素含有エポキシ樹脂と、を順番に加えて均一に攪拌し、エポキシ樹脂ワニスを形成した。形成されたワニスの粘度は、約15±5秒(@25℃ by Cup♯3)であり、そのゲルタイムは、約250±20秒(@170℃ by hot platen)である。
【0044】
【表1A】

【0045】
【表1B】

【0046】
【表1C】

【0047】
【表1D】


【0048】
(実施例2)
上述の表1Aから表1Dに示す実施例によって製造したエポキシ樹脂ワニスを使用し、ガラス繊維強化プリプレグシート(Fiberglass Reinforced Prepreg)を製造した。まず、編織ガラス繊維強化材(7628のE−glass;210g/m)にワニスを含浸した。次に、2つのローラ(Roller)の隙間(Gap)に編織ガラス繊維強化材を通過させることにより、過多な樹脂を除去した。一般に、隙間距離は、約0.015インチである。次に、この編織ガラス繊維強化材を170℃のトンネル炉に通過させた。連続炉に停留させる時間は、約5〜6分である。プリプレグシートを冷却後、樹脂含有量を測定した。樹脂含有量は、ローラの隙間を調整することにより、調整することができる。有機又は無機の編織又は不織の繊維強化材プリプレグシートの固化程度を測定するために、静粘度(Melt visconsity;CAP2000@145℃)又はゲルタイム(Gel time@171℃)を測定した。粘度は、約200〜400cpであり、ゲルタイムは、約100〜140秒である。
【0049】
(実施例3)
実施例2によって製造したプリプレグシートを使用して積層板(銅張り基板)を製造した。まず、7628のプリプレグシートを18インチ×24インチに裁断した。次に、8枚のプリプレグシートを2枚の1オンスの銅箔間に積層した。次に、このCu−prepreg−Cu構造体を両鏡面ステンレス板内に配置した。最後に、この積層構造体を真空圧着装置内に搬送し、更なる硬化反応を行った。プリプレグシートは、少なくとも190℃以上の熱エネルギーを90分加えることによって固化反応が完了する。また、少なくとも285−psiの圧力を90分加える必要があり、これにより、プリプレグシート間及びプリプレグシートと銅箔との接合力が増強される。また、真空圧着装置の真空度は、700torr以上に維持する必要があり、これにより、硬化する過程において、空気(gas)がプリプレグシート内に残留するのが防止される。
【0050】
表2Aから表2Cは、実施例1〜実施例3において製造された銅張り基板の電気、機械及び物理特性を示す。
【0051】
【表2A】

【0052】
【表2B】

【0053】
【表2C】

【0054】
表2Aから表2Cから分かるように、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、低誘電率及び低誘電正接である上、熱安定性(T−288)に優れる。また、硬化物は、極めて好適な難燃性(UL−94−V0)、電気特性及び機械特性を有する。従って、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、プリント回路積層板、ビルドアップ層結合剤、接着剤、封止材料、などに広く応用することができる。
【0055】
上述の説明は、本発明の具体的な実施形態及び運用された技術手段を示すものであり、本明細書の記載内容に基づき、様々な変更及び修正を行うことができる。また、それらの変更及び修正が本明細書及び図面の示す範囲を逸脱しない場合、それらの変更及び修正は、本発明に含まれる。
【0056】
上述の内容から分かるように、本発明は、その目的を確実に達成することができるものであり、産業上の利用性及び実用性を有する熱硬化性樹脂組成物及びその熱硬化性樹脂組成物を使用したプリプレグシート又は積層板を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂及び硬化剤を含み、前記硬化剤は、多官能基芳香族ポリエステル硬化剤に、フェノールフタレインベンゾオキサジンフェノール(Phenolphthalein Benzoxazine Phenol)又はスチレン−無水マレイン酸(Styrene−co−Maleic Anhydride;SMA)共重合体を配合した混合硬化剤であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記多官能基芳香族ポリエステル硬化剤は、分子鎖末端にアリルオキシカルボニル基を有する芳香族多価カルボキシル残基と芳香族多価水酸基との化合物反応によって形成され、エステル当量(Ester Equivalent)は、180〜500であることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記フェノールフタレインベンゾオキサジンフェノールは、−OH値が200〜700であり、窒素含有量が4〜20wt%であることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記スチレン−無水マレイン酸共重合体の酸価(Acid value)は、100〜600であることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂は、リン含有エポキシ樹脂、窒素含有エポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記リン含有エポキシ樹脂は、DOPO−PNE、DOPO−CNE又はDOPO−HQの改質エポキシ樹脂であり、リン含有量は、2〜10wt%であり、エポキシ当量(EEW)は、250〜800であることを特徴とする請求項5記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記窒素含有エポキシ樹脂は、N,N−ジグリシジル(Diglycidyl)エポキシ樹脂、オキサゾリドン(Oxazolidone)環を有するエポキシ樹脂又はポリアミドイミドエポキシ樹脂(Polyamide−imide−epoxy;PAI−epoxy)であり、窒素含有量は、5〜20wt%であり、エポキシ当量は、100〜1000であることを特徴とする請求項5記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ビスフェノールFエポキシ樹脂のエポキシ当量は、150〜1000であることを特徴とする請求項5記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂組成物には、硬化触媒が添加されることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂組成物は、10〜90重量%のエポキシ樹脂、90〜10重量%の混合硬化剤及び0.01〜5重量%の硬化触媒を含むことを特徴とする請求項9記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記混合硬化剤は、20〜95重量%の多官能基芳香族ポリエステル硬化剤及び5〜80重量%のフェノールフタレインベンゾオキサジンフェノールを含むことを特徴とする請求項10記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記混合硬化剤は、20〜95重量%の多官能基芳香族ポリエステル硬化剤及び5〜80重量%のスチレン−無水マレイン酸共重合体を含むことを特徴とする請求項10記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記硬化触媒は、イミダゾール(Imidazole)化合物、有機リン化合物、有機リン酸エステル化合物、リン酸塩、トリアルキルアミン、4−(ジメチルアミノ基)ピリジン、第4級アンモニウム塩又は尿素化合物であることを特徴とする請求項9記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
前記熱硬化性樹脂組成物は、溶剤を使用して前記熱硬化性樹脂組成物を溶解して製造されるワニス組成物をさらに含むことを特徴とする請求項9記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
前記溶剤は、アミド類溶剤(N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ケトン類溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル類溶剤、芳香族炭化水素類溶剤又はモノエーテルグリコール類溶剤であることを特徴とする請求項14記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
前記熱硬化性樹脂組成物には、無機充填剤が添加され、前記無機充填剤は、前記熱硬化性樹脂組成物の1〜30重量%を占め、前記無機充填剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化珪素又は球形及び破砕状の酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項14記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
前記無機充填剤の平均粒径は、0.01μm〜20μmであることを特徴とする請求項16記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項18】
前記熱硬化性樹脂組成物には、高熱伝達率の無機充填剤が添加され、前記高熱伝達率の無機充填剤は、前記熱硬化性樹脂組成物の10〜80重量%を占め、前記高熱伝達率の無機充填剤は、六方晶系及び球形の窒化アルミニウム、六法晶系及び球形の窒化ホウ素、球形及び破砕状の酸化アルミニウム、炭化珪素又はグラファイトであることを特徴とする請求項14記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項19】
前記炭化珪素は、六角晶系のα―炭化珪素及び立方晶系のβ―炭化珪素を含むことを特徴とする請求項18記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項20】
前記高熱伝達率の無機充填剤の平均粒径は、0.01μm〜20μmであることを特徴とする請求項18記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項21】
強化材に熱硬化性樹脂組成物を含浸したプリプレグシート(A prepreg comprising)であって、
前記熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤を含み、前記硬化剤は、多官能基芳香族ポリエステル硬化剤に、フェノールフタレインベンゾオキサジンフェノール又はスチレン−無水マレイン酸共重合体を配合した混合硬化剤であることを特徴とするプリプレグシート。
【請求項22】
前記強化材は、有機又は無機の編織又は不織の繊維強化材であることを特徴とする請求項21記載のプリプレグシート。
【請求項23】
熱硬化性樹脂組成物を含み、前記熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤を含み、前記硬化剤は、多官能基芳香族ポリエステル硬化剤に、フェノールフタレインベンゾオキサジンフェノール又はスチレン−無水マレイン酸共重合体を配合した混合硬化剤である基材と、
前記基材の表面に接合される少なくとも1つの金属箔と、を含むことを特徴とする積層板。
【請求項24】
前記基材は、有機又は無機の編織又は不織の繊維強化材からなり、前記基材には、前記熱硬化性樹脂組成物が含浸(impregnated)されることを特徴とする請求項23記載の積層板。

【公開番号】特開2012−111807(P2012−111807A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259788(P2010−259788)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(505224433)合正科技股▲ふん▼有限公司 (6)
【Fターム(参考)】