説明

熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びにそれを用いたプリント配線板

【課題】硬化物が、低反り性、冷熱サイクル特性等に優れ、かつ、Bステージ状態における塗膜の割れの発生が抑制された熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、並びにそれを用いたプリント配線板を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)球状の二酸化珪素および/または球状の酸化アルミニウム、および、(D)ブロック共重合体、を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びにそれを用いたプリント配線板に関し、詳しくは、低反り性、冷熱サイクル特性に優れた硬化物を得ることができ、かつ、Bステージ状態における塗膜の割れの発生が抑制された熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びにそれを用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジストとして、カバーレイフィルムと呼ばれるポリイミドフィルムをパターンに合わせた金型で打ち抜いた後、接着剤を用いて貼り付けるタイプや、可撓性を有する被膜を形成する紫外線硬化型、熱硬化型のソルダーレジストインキをスクリーン印刷により塗布するタイプ、可撓性を有する被膜を形成する液状フォトソルダーレジストインキのタイプなどが用いられている。
【0003】
上記のうち、カバーレイフィルムは、銅箔との追随性に問題があるため、高精度なパターンを形成することができない。一方、紫外線硬化型ソルダーレジストインキ及び液状フォトソルダーレジストインキは、基材のポリイミドとの密着性、および可撓性の点で未だ改良の余地がある。また、ソルダーレジストインキの硬化収縮及び硬化後の冷却収縮が大きいため反りが生じてしまうという不具合が発生することがある。
【0004】
上記のような紫外線硬化型ソルダーレジストに対して、一般的に熱硬化性樹脂組成物からなるソルダーレジストが、ポリイミド基材との密着性、可撓性に優れることが知られている。熱硬化性樹脂組成物からなるソルダーレジストとしては、例えば特許文献1および2記載のものが挙げられる。
【0005】
一方、プリント配線板やフレキシブルプリント配線板は、様々な機器に実装され使用される。その為、温度など環境の急激な変化に対しても耐性を有することが求められる。従って、ソルダーレジストについても高い温度変化耐性が要求されるが、熱硬化性樹脂と、基材や銅、アンダーフィルなどの基板形成材料との線膨張係数(CTE)の差が大きい場合、TCT(サーマルサイクル試験)においてレジストにクラックが生じるという問題がある。
【0006】
これに対して、熱硬化性樹脂のCTEを周辺部材の材料のCTEと合わせることが近年広く行われている。例えば、熱硬化性樹脂に無機フィラーを高充填することにより、CTEを低下させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平5−75032号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2006−117922号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、無機フィラーを高充填した場合、熱硬化性樹脂組成物のBステージ状態(半硬化状態)において、乾燥塗膜に割れが発生してしまうという問題があった。また、熱硬化性樹脂組成物を十分に硬化させた後では、基板が大きく反ってしまうという問題もあった。さらに、冷熱サイクル特性においても、従来技術では十分に満足できるレベルではなく、改善の余地があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、硬化物が、低反り性、冷熱サイクル特性等に優れ、かつ、Bステージ状態における塗膜の割れの発生が抑制された熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、並びにそれを用いたプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エポキシ樹脂、硬化剤、特定のフィラー、ブロック共重合体を含む熱硬化性樹脂組成物とすることで上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)球状の二酸化珪素および/または球状の酸化アルミニウム、および、(D)ブロック共重合体、を含有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記(D)ブロック共重合体が、20℃以上30℃以下で固体であるものであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記(D)ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が50000以上300000以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が3以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記(D)ブロック共重合体が、下記式(I)、
X−Y−X (I)
(式中、Xはガラス転移点Tgが0℃以上のポリマー単位であり、Yはガラス転移点Tgが0℃未満のポリマー単位である。)
で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、Yがポリn−ブチル(メタ)アクリレートを含み、Xがポリメチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物全体に対する前記(C)球状の二酸化珪素および/または球状の酸化アルミニウムの量が50wt%以上であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記(B)エポキシ樹脂用硬化剤がフェノール樹脂であることが好ましい。
【0018】
本発明の熱硬化性フィルムは、上記いずれかの熱硬化性樹脂組成物を、フィルム上に塗布乾燥して得られることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の硬化物は、上記いずれかの熱硬化性樹脂組成物、又は熱硬化性フィルムを加熱硬化させてなることを特徴とするものである。
【0020】
本発明のプリント配線板は、上記硬化物を具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、硬化物が低反り性、冷熱サイクル特性に優れ、かつ、Bステージ状態における塗膜の割れの発生が抑制された熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、並びにそれを用いたプリント配線板を提供する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例の硬化後基板反り評価における、各評価に対応する基板の外観例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)球状の二酸化珪素および/または球状の酸化アルミニウム、および、(D)ブロック共重合体、を含有するものである。これにより、硬化物が基材との密着性、耐折性、低反り性、電気絶縁性等に優れ、かつ、Bステージ状態における塗膜の割れの発生が抑制された熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。Bステージ状態とは、熱硬化性樹脂の加熱硬化反応の中間段階であり、樹脂は加熱により軟化して膨張するが、ある種の液体と接触しても完全には溶融又は溶解しない段階である。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0024】
[(A)エポキシ樹脂]
上記(A)エポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する公知慣用の多官能エポキシ樹脂が使用できる。エポキシ樹脂は、液状であってもよく、固形又は半固形であってもよい。
【0025】
(A)エポキシ樹脂としては、例えば、三菱化学社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、BASFジャパン社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL903、DIC社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、BASFジャパン社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、BASFジャパン社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、NC−3000、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299、新日鐵化学社製のYDCN−700−2、YDCN−700−3、YDCN−700−5,YDCN−700−7、YDCN−700−10、YDCN−704 YDCN−704A、DIC社製のエピクロンN−680、N−690、N−695(いずれも商品名)等のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のエピクロン830、三菱化学社製jER807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004、BASFジャパン社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER604、東都化成社製のエポトートYH−434、BASFジャパン社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;BASFジャパン社製のアラルダイドCY−350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、BASFジャパン社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、ADEKA社製EPX−30、DIC社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL−931、BASFジャパン社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;BASFジャパン社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学社製ESN−190、ESN−360、DIC社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR−102、YR−450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、又はそれらの混合物が好ましい。
これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(A)エポキシ樹脂の熱硬化性樹脂組成物中の含有率は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分を基準として、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは20〜60質量%である。
【0027】
[(B)エポキシ樹脂用硬化剤]
(B)エポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ基と反応する基を有する化合物であり、エポキシ樹脂用硬化剤として公知のものをいずれも使用することができる。エポキシ樹脂用硬化剤としては、多官能フェノール化合物、ポリカルボン酸及びその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂、脂肪族又は芳香族の一級又は二級アミン、ポリアミド樹脂、ポリメルカプト化合物などが挙げられる。これらの中で、多官能フェノール化合物、及びポリカルボン酸及びその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂が好ましく、多官能フェノール化合物がより好ましい。
【0028】
上記多官能フェノール化合物は、一分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する多官能フェノール化合物であればよく、公知慣用のものが使用できる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのノボラック樹脂、ビニルフェノール共重合樹脂などが挙げられる。また、これらのフェノール類とアルデヒド類とトリアジン環を有する化合物の重縮合物であるトリアジン環含有ノボラック樹脂であってもよい。フェノール化合物の中でも、フェノール樹脂が好ましく、フェノールノボラック樹脂が、反応性が高く、耐熱性を上げる効果も高いためより好ましい。エポキシ樹脂用硬化剤として用いられる市販の多官能フェノール化合物としては、例えば、(株)岐阜セラツク社製GPX−41等のクレゾールノボラック樹脂、明和化成社製MEH−7500H等のトリスフェノールメタン型フェノール樹脂、明和化成社製MEH−7851−4H等のビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、明和化成社製HF−1M H60等のフェノールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0029】
上記ポリカルボン酸及びその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物及びその酸無水物であり、例えば(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物などの他、カルボン酸末端イミド樹脂等のカルボン酸末端を有する樹脂が挙げられる。市販品としては、BASF社製のジョンクリル(商品群名)、サートマー社製のSMAレジン(商品群名)、新日本理化社製のポリアゼライン酸無水物、DIC社製のV−8000、V−8002等のカルボン酸末端ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0030】
上記シアネートエステル樹脂は、一分子中に2個以上のシアネートエステル基(−OCN)を有する化合物である。シアネートエステル樹脂は、公知のものをいずれも使用することができる。シアネートエステル樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、アルキルフェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂が挙げられる。また、一部がトリアジン化したプレポリマーであってもよい。シアネートエステル樹脂の市販品としては、ロンザジャパン社製のフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂PT30、ロンザジャパン社製のビスフェノールA型ジシアネートで一部がトリアジン化されたプレポリマーBA230、ロンザジャパン社製のジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル樹脂DT−4000、DT−7000等が挙げられる。
【0031】
上記活性エステル樹脂は、一分子中に2個以上の活性エステル基を有する樹脂である。活性エステル樹脂は、一般に、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。中でも、ヒドロキシ化合物としてフェノール化合物またはナフトール化合物を用いて得られる活性エステル化合物が好ましい。フェノール化合物またはナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。市販されている活性エステル化合物としては、例えば、DIC社製EXB−9451、EXB−9460、三菱化学社製DC808、YLH1030)などが挙げられる。
【0032】
エポキシ樹脂用硬化剤の配合割合は、上記エポキシ樹脂1モルに対して、エポキシ樹脂用硬化剤中のエポキシ基と反応する基が0.3〜1.5モルであることが好ましく、0.4〜1.3モルであることがより好ましい。このモル数比の範囲から外れる場合、ラミネート性の低下や、絶縁信頼性の低下の懸念がある。
【0033】
[(C)球状の二酸化珪素および/または球状の酸化アルミニウム]
(C)成分は、球状の二酸化珪素(球状シリカとも称する)、球状酸化アルミニウム(球状アルミナとも称する)、または、球状二酸化珪素および球状酸化アルミニウムである。
球状二酸化珪素は、電子材料用途のフィラーとして使用可能な球状二酸化珪素であればいずれでもよい。平均粒径(D50)が好ましくは0.1〜10μmである。平均粒径は、レーザー回折法により測定される。表面をシランカップリング剤で処理したものであってもよい。
【0034】
(C)成分は、球状であればよく、真球のものに限定されるものではない。好適な(C)成分として例えば以下のように測定される真球度が、0.8以上のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
真球度は以下のように測定される。SEMで写真を撮り、その観察される粒子の面積と周囲長から、(真球度)={4π×(面積)÷(周囲長)2}で算出される値として算出する。具体的には画像処理装置を用いて100個の粒子について測定した平均値を採用する。
【0035】
球状シリカ粒子、球状アルミナの製造方法は、特に限定されるものでなく当業者に知られた方法を適用することができる。例えば、VMC(Vap−erized Metal Combustion)法により、シリコン粉末又はアルミニウム粉末を燃焼して製造することができる。VMC法とは、酸素を含む雰囲気中でバーナーにより化学炎を形成し、この化学炎中に目的とする酸化物粒子の一部を構成する金属粉末を粉塵雲が形成される程度の量投入し、爆燃を起こさせて酸化物粒子を得る方法である。
【0036】
市販されている球状シリカとしては、アドマテック社製SOシリーズ、東亜合成社製HPSシリーズ(HPS−0500、HPS−1000、HPS3500など)、等が挙げられる。
【0037】
上記球状アルミナは、電子材料用途のフィラーとして使用可能な球状アルミナであればいずれでもよい。平均粒径(D50)が好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは0.1〜10μmである。また、真球度は、好ましくは0.8以上である。
【0038】
市販されている球状アルミナとしては、アドマテックス社製AOシリーズ、アドマテックス社製TC−975c、昭和電工社製アルナビーズ/CBシリーズ、等が挙げられる。
【0039】
球状シリカ、球状アルミナは、樹脂中での分散性が良好であり、また、硬化被膜のクラックの起点となる面を持たないため、折り曲げ耐性を向上させるなどの効果が期待できる。また、冷熱サイクル特性に優れる。さらに球状アルミナについては、放熱性にも優れる。
【0040】
これら球状シリカ、球状アルミナは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(C)成分の配合量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは、50質量%以上であり、より好ましくは50〜90質量%である。上記範囲を超えて多量に配合すると、ドライフィルムとして基材にラミネートする際に、基材や回路への埋め込みが不十分になり、一方、少なすぎると、冷熱サイクル特性が悪化するという問題が生じるため好ましくない。
【0041】
[(D)ブロック共重合体]
(D)ブロック共重合体とは、性質の異なる二種類以上のポリマーが、共有結合で繋がり長い連鎖になった分子構造の共重合体のことである。20℃〜30℃の範囲において固体であるものが好ましい。この範囲内において固体であればよく、この範囲外の温度においても固体であってもよい。上記温度範囲において固体であることによりドライフィルム化したときや基板に塗布し仮乾燥したときのタック性に優れる。
【0042】
本発明で用いるブロック共重合体としてはX−Y−X、あるいはX−Y−X’型ブロック共重合体が好ましい。X−Y−XあるいはX−Y−X’型ブロック共重合体のうち、中央のYがソフトブロックでありガラス転移点Tgが低く、好ましくは0℃未満であり、その両外側X又はX’がハードブロックでありTgが高く、好ましくは0℃以上のポリマー単位により構成されているものが好ましい。ガラス転移点Tgは示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
また、X−Y−XあるいはX−Y−X’型ブロック共重合体のうち、X又はX’がTgが50℃以上のポリマー単位からなり、YがTgが−20℃以下であるポリマー単位からなるブロック共重合体がさらに好ましい。
また、X−Y−XあるいはX−Y−X’型ブロック共重合体のうち、X又はX’が上記(A)エポキシ樹脂との相溶性が高いものが好ましく、Yが上記(A)エポキシ樹脂との相溶性が低いものが好ましい。このように、両端のブロックがマトリックスに相溶であり、中央のブロックがマトリックスに不相溶であるブロック共重合体とすることで、マトリックス中において特異的な構造を示しやすくなると考えられる。
【0043】
X又はX’として、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)などを含むことが好ましく、Yとしてポリn−ブチルアクリレート(PBA)、ポリブタジエン(PB)などを含むことが好ましい。また、X又はX’成分の一部にスチレンユニット、水酸基含有ユニット、カルボキシル基含有ユニット、エポキシ含有ユニット、N置換アクリルアミドユニット等に代表される前述に記載したエポキシ樹脂と相溶性に優れる親水性ユニットを導入し、更に相溶性を向上させることが可能となる。
【0044】
ブロック共重合体の市販品としては、アルケマ社製のリビング重合を用いて製造されるアクリル系トリブロックコポリマーが挙げられる。ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリメチルメタアクリレートに代表されるSBMタイプ、ポリメチルメタアクリレート−ポリブチルアクリレート−ポリメチルメタアクリレートに代表されるMAMタイプ、更にはカルボン酸変性や親水基変性処理されたMAM NタイプやMAM Aタイプが挙げられる。SBMタイプとしてはE41、E40、E21、E20等が挙げられ、MAMタイプとしてはM51、M52、M53、M22等が挙げられ、MAM Nタイプとしては52N、22N、MAM AタイプとしてはSM4032XM10等が挙げられる。
また、株式会社クラレ製のクラリティもメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルより誘導されるブロック共重合体である。
【0045】
また本発明に用いるブロック共重合体としては3元以上のブロック共重合体が好ましく、リビング重合法により合成された分子構造が精密にコントロールされたブロック共重合体が本発明の効果を得る上でより好ましい。これは、リビング重合法により合成されたブロック共重合体は分子量分布が狭く、それぞれのユニットの特徴が明確になるためであると考えられる。用いるブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は3以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、更に好ましくは2.0以下である。
【0046】
上記のような(メタ)アクリレートポリマーブロックを含むブロック共重合体は、例えば、特開2007−516326号、特開2005−515281号明細書記載の方法、特に、下記式(1)〜(4)のいずれかで表されるアルコキシアミン化合物を開始剤としてY単位を重合した後に、X単位を重合することにより好適に得ることができる。

(式中、nは2を表し、Zは、2価の有機基を表し、好ましくは、1,2−エタンジオキシ、1,3−プロパンジオキシ、1,4−ブタンジオキシ、1,6−ヘキサンジオキシ、1,3,5−トリス(2−エトキシ)シアヌル酸、ポリアミノアミン、例えばポリエチレンアミン、1,3,5−トリス(2−エチルアミノ)シアヌル酸、ポリチオキシ、ホスホネートまたはポリホスホネートの中から選択されるものである。Arは2価のアリール基を表す。)
【0047】
ブロック共重合体の重量平均分子量は好ましくは20,000〜400,000、より好ましくは50,000〜300,000の範囲である。重量平均分子量が20,000未満であると、目的とする強靭性、柔軟性の効果が得られず、熱硬化性樹脂組成物をドライフィルム化した時や基板に塗布し仮乾燥した時のタック性にも劣る。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、熱硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、印刷性、加工性が著しく悪くなることがある。重量平均分子量が50000以上であると、外部からの衝撃に対する緩和性において優れた効果が得られる。
【0048】
上記ブロック共重合体の配合量は、前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、固形分換算で1〜50質量部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜35質量部である。1質量部未満ではその効果が期待できず、50質量部以上では加工性や得られる硬化物のデスミア耐性の悪化が懸念されるため好ましくない。
【0049】
(熱硬化性成分)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、耐熱性、絶縁信頼性等の特性を向上させる目的で更にその他の熱硬化性成分を含んでいてもよい。熱硬化性成分としては、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、シクロカーボネート化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。
【0050】
上記アミノ樹脂としては、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体などのアミノ樹脂が挙げられる。例えばメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物及びメチロール尿素化合物などがある。さらに、アルコキシメチル化メラミン化合物、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン化合物、アルコキシメチル化グリコールウリル化合物及びアルコキシメチル化尿素化合物は、それぞれのメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物及びメチロール尿素化合物のメチロール基をアルコキシメチル基に変換することにより得られる。このアルコキシメチル基の種類については特に限定されるものではなく、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等とすることができる。特に人体や環境に優しいホルマリン濃度が0.2%以下のメラミン誘導体が好ましい。
【0051】
上記アミノ樹脂の市販品としては、例えばサイメル300、同301、同303、同370、同325、同327、同701、同266、同267、同238、同1141、同272、同202、同1156、同1158、同1123、同1170、同1174、同UFR65、同300(以上、三井サイアナミッド(株)製)、ニカラックMx−750、同Mx−032、同Mx−270、同Mx−280、同Mx−290、同Mx−706、同Mx−708、同Mx−40、同Mx−31、同Ms−11、同Mw−30、同Mw−30HM、同Mw−390、同Mw−100LM、同Mw−750LM、(以上、(株)三和ケミカル製)等を挙げることができる。
【0052】
上記イソシアネート化合物としては、分子中に複数のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を用いることができる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが用いられる。芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート及び2,4−トリレンダイマーが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びイソホロンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートの具体例としてはビシクロヘプタントリイソシアネートが挙げられる。並びに先に挙げられたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体が挙げられる。
【0053】
ブロックイソシアネート化合物に含まれるブロック化イソシアネート基は、イソシアネート基がブロック剤との反応により保護されて一時的に不活性化された基である。所定温度に加熱されたときにそのブロック剤が解離してイソシアネート基が生成する。
【0054】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。ブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等が挙げられる。ブロックイソシアネート化合物を合成する為に用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、先に例示したような化合物が挙げられる。
【0055】
イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール及びエチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、δ−パレロラクタム、γ−ブチロラクタム及びβ−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル及び乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド及びマレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;キシリジン、アニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミン及びプロピレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0056】
ブロックイソシアネート化合物は市販のものであってもよく、例えば、スミジュールBL−3175、BL−4165、BL−1100、BL−1265、デスモジュールTPLS−2957、TPLS−2062、TPLS−2078、TPLS−2117、デスモサーム2170、デスモサーム2265(以上、住友バイエルウレタン社製、商品名)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(以上、日本ポリウレタン工業社製、商品名)、B−830、B−815、B−846、B−870、B−874、B−882(以上、三井武田ケミカル社製、商品名)、TPA−B80E、17B−60PX、E402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。なお、スミジュールBL−3175、BL−4265はブロック剤としてメチルエチルオキシムを用いて得られるものである。
【0057】
上記ポリイソシアネート化合物またはブロックイソシアネート化合物の配合量は、前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは、2〜70質量部である。前記配合量が、1質量部未満の場合、十分な塗膜の強靭性が得られないことがあり、好ましくない。一方、100質量部を超えた場合、保存安定性が低下することがあるので好ましくない。
【0058】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらにウレタン化触媒を加えることができる。ウレタン化触媒としては、錫系触媒、金属塩化物、金属アセチルアセトネート塩、金属硫酸塩、アミン化合物、又は/及びアミン塩よりなる群から選択される1種以上のウレタン化触媒を使用することが好ましい。
【0059】
前記錫系触媒としては、例えばスタナスオクトエート、ジブチルすずジラウレートなどの有機すず化合物、無機すず化合物などが挙げられる。
【0060】
前記金属塩化物としては、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属の塩化物で、例えば、塩化第二コバルト、塩化第一ニッケル、塩化第二鉄などが挙げられる。
【0061】
前記金属アセチルアセトネート塩は、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属のアセチルアセトネート塩であり、例えば、コバルトアセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネートなどが挙げられる。
【0062】
前記金属硫酸塩としては、Cr、Mn、Co、Ni、Fe、CuおよびAlからなる群から選ばれる金属の硫酸塩で、例えば、硫酸銅などが挙げられる。
【0063】
前記マレイミド化合物としては、多官能脂肪族/脂環族マレイミド、多官能芳香族マレイミドが挙げられる。多官能脂肪族/脂環族マレイミドとしては、例えば、N,N’−メチレンビスマレイミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸とを脱水エステル化して得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドエステル化合物、トリス(カーバメートヘキシル)イソシアヌレートと脂肪族/脂環族マレイミドアルコールとをウレタン化して得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドウレタン化合物等のイソシアヌル骨格ポリマレイミド類;イソホロンビスウレタンビス(N−エチルマレイミド)、トリエチレングリコールビス(マレイミドエチルカーボネート)、脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸と各種脂肪族/脂環族ポリオールとを脱水エステル化、又は脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸エステルと各種脂肪族/脂環族ポリオールとをエステル交換反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドエステル化合物類;脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸と各種脂肪族/脂環族ポリエポキシドとをエーテル開環反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドエステル化合物類、脂肪族/脂環族マレイミドアルコールと各種脂肪族/脂環族ポリイソシアネートとをウレタン化反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドウレタン化合物類等がある。
【0064】
多官能芳香族マレイミドとしては、マレイミドカルボン酸と各種芳香族ポリオールとを脱水エステル化、又はマレイミドカルボン酸エステルと各種芳香族ポリオールとをエステル交換反応して得られる芳香族ポリマレイミドエステル化合物類、マレイミドカルボン酸と各種芳香族ポリエポキシドとをエーテル開環反応して得られる芳香族ポリマレイミドエステル化合物類、マレイミドアルコールと各種芳香族ポリイソシアネートとをウレタン化反応して得られる芳香族ポリマレイミドウレタン化合物類の如き芳香族多官能マレイミド類等がある。
【0065】
多官能芳香族マレイミドの具体例としては、例えば、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−2,4−トリレンビスマレイミド、N,N’−2,6−トリレンビスマレイミド、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4’−〔3,3’−ジメチル−ビフェニレン〕ビスマレイミド、N,N’−4,4’−〔3,3’−ジメチルジフェニルメタン〕ビスマレイミド、N,N’−4,4’−〔3,3’−ジエチルジフェニルメタン〕ビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−t−ブチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−s−ブチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,1−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕デカン、1,1−ビス〔2−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)−5−t−ブチルフェニル〕−2−メチルプロパン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス〔1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−(1,1−ジメチルエチル)ベンゼン〕、4,4’−メチレン−ビス〔1−(4−マレイミドフェノキシ)−2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)ベンゼン〕、4,4’−メチレン−ビス〔1−(4−マレイミドフェノキシ)−2,6−ジ−s−ブチルベンゼン〕、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス〔1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、4,4’−メチレンビス〔1−(マレイミドフェノキシ)−2−ノニルベンゼン〕、4,4’−(1−メチルエチリデン)−ビス〔1−(マレイミドフェノキシ)−2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)ベンゼン〕、4,4’−(2−エチルヘキシリデン)−ビス〔1−(マレイミドフェノキシ)−ベンゼン〕、4,4’−(1−メチルヘプチリデン)−ビス〔1−(マレイミドフェノキシ)−ベンゼン〕、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス〔1−(マレイミドフェノキシ)−3−メチルベンゼン〕、2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3,5−ジメチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3,5−ジメチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−エチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−エチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、ビス〔3−メチル−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3,5−ジメチル−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−エチル−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、3,8−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕−トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカン、4,8−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕−トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカン、3,9−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕−トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカン、4,9−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕−トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカン、1,8−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メンタン、1,8−ビス〔3−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メンタン、1,8−ビス〔3,5−ジメチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メンタン等を挙げることができる。
【0066】
前記マレイミド化合物の市販品としては、例えばBMI−1000、BMI−1000H、BMI−1000S、BMI−1100、BMI−1100H、BMI−2000、BMI−2300、BMI−3000、BMI−3000H、BMI−4000、BMI−5100、BMI−7000、BMI−7000H、及びBMI−TMH(以上、大和化成工業社製)、MIA−200(DIC社製)等を挙げることができる。
【0067】
これらのビスマレイミド誘導体は常法により合成してもよく、市販品を用いてもよい。特にビスマレイミド誘導体の中で、環境に負荷をかけない点からは、分子内にハロゲン原子を含有しない物が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
前記ベンゾオキサジン化合物としてはビスフェノールA型ベンゾオキサジン、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン、ビスフェノールS型ベンゾオキサジン等が挙げられる。これらの市販品としては、「F−a」(四国化成社製)を挙げることができる。
【0069】
前記オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を含有していれば特に限定されない。これら市販品としてはエポクロス(日本触媒社製)のK−2010E、K−2020E、K−2030E、WS−500、WS−700、RPS−1005が挙げられる。
【0070】
前記カルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド等が挙げられる。
【0071】
前記シクロカーボネート化合物としては、環状化合物でカーボネート結合を有していれば特に限定されない。例としては多官能構造を有するアルキレンカーボネート化合物が挙げられる。
【0072】
前記多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0073】
前記エピスルフィド樹脂としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のYL7000(ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂)などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0074】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化触媒を含有することが好ましい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業(株)製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT(登録商標)3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体、北興化学工業(株)製のテトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレートや、テトラフェニルフォスフォニウムテトラ−p−トリルボレートなどを用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0075】
熱硬化触媒の配合量は、前記エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。また、金属触媒の量としては、シアネートエステル樹脂100質量部に対し、金属換算で10〜500ppm、好ましくは25〜200ppmの範囲である。
【0076】
(着色剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、着色剤を配合することができる。着色剤としては、赤、青、緑、黄などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。具体的には、カラーインデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されているものを挙げることができる。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しない着色剤であることが好ましい。
【0077】
赤色着色剤:
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などが挙げられる。
【0078】
青色着色剤:
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物があり、上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0079】
緑色着色剤:
緑色着色剤としては、同様にフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系があり、上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0080】
黄色着色剤:
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられる。
【0081】
その他、色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色、黒などの着色剤を加えてもよい。
【0082】
(フィラー)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、上記(C)成分以外のフィラーを配合することができる。このようなフィラーとしては、公知慣用の無機又は有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、ノイブルグ珪土粒子、及びタルクが好ましく用いられる。また、難燃性を付与する目的で、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイトなども使用することができる。さらに、1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物や前記多官能エポキシ樹脂にナノシリカを分散したHanse−Chemie社製のNANOCRYL(商品名) XP 0396、XP 0596、XP 0733、XP 0746、XP 0765、XP 0768、XP 0953、XP 0954、XP 1045(何れも製品グレード名)や、Hanse−Chemie社製のNANOPOX(商品名) XP 0516、XP 0525、XP 0314(何れも製品グレード名)も使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
(バインダーポリマー)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には得られる硬化物の可撓性、指触乾燥性の向上を目的に慣用公知のバインダーポリマーを使用することができる。バインダーポリマーとしてはセルロース系、ポリエステル系、フェノキシ樹脂系ポリマー、ポリビニルアセタール系、ポリビニルブチラール系、ポリアミド系、ポリアミドイミド系が好ましい。セルロース系ポリマーとしてはイーストマン社製セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)シリーズが挙げられ、ポリエステル系ポリマーとしては東洋紡社製バイロンシリーズ、フェノキシ樹脂系ポリマーの具体例としては東都化成(株)製FX280、FX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YX8100、YL6954、YL6974等が挙げられる。ポリビニルアセタール系ポリマーの具体例としては、積水化学工業(株)製エスレックKSシリーズ、ポリビニルブチラール系ポリマーの具体例としては、積水化学工業(株)製エスレックBシリーズ、ポリアミド系ポリマーとしては日立化成工業(株)製KS5000シリーズ、日本化薬(株)製BPシリーズ、さらにポリアミドイミド系ポリマーとしては日立化成工業(株)製KS9000シリーズ等が挙げられる。上記バインダーポリマーは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0084】
上記バインダーポリマーの添加量は上記(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは1〜30質量部、特に好ましくは、5〜30質量部である。バインダーポリマーの配合量が、50質量部を超えた場合、熱硬化性樹脂組成物のデスミア耐性の悪化が懸念されるため好ましくない。
【0085】
(エラストマー)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、更なる柔軟性の付与、硬化物の脆さの改善などを目的にエラストマーを配合することができる。エラストマーとしては、例えばポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステルウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステルアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマーが挙げられる。また、種々の骨格を有するエポキシ樹脂の一部又は全部のエポキシ基を両末端カルボン酸変性型ブタジエン−アクリロニトリルゴムで変性した樹脂なども使用できる。更にはエポキシ含有ポリブタジエン系エラストマー、アクリル含有ポリブタジエン系エラストマー、水酸基含有ポリブタジエン系エラストマー、水酸基含有イソプレン系エラストマー等も使用することができる。エラストマーは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0086】
(密着促進剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には層間の密着性、又は熱硬化性樹脂層と基材との密着性を向上させるために密着促進剤を用いることができる。密着促進剤としては、例えば、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、3−モルホリノメチル−1−フェニル−トリアゾール−2−チオン、5−アミノ−3−モルホリノメチル−チアゾール−2−チオン、2−メルカプト−5−メチルチオ−チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、アミノ基含有ベンゾトリアゾール、シランカップリング剤などがある。
【0087】
(酸化防止剤)
高分子材料の多くは、一度酸化が始まると、次々と連鎖的に酸化劣化が起き、高分子素材の機能低下をもたらすことから、本発明の熱硬化性樹脂組成物には酸化を防ぐために(1)発生したラジカルを無効化するようなラジカル補足剤または/及び(2)発生した過酸化物を無害な物質に分解し、新たなラジカルが発生しないようにする過酸化物分解剤などの酸化防止剤を添加することができる。
【0088】
ラジカル補足剤として働く酸化防止剤としては、具体的な化合物としては、ヒドロキノン、4−tert−ブチルカテコール、2−t−ブチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジーt−ブチルーp−クレゾール、2,2−メチレンービスー(4−メチルー6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3’,5’ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン等のフェノール系、メタキノン、ベンゾキノン等のキノン系化合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、フェノチアジン等のアミン系化合物等などがあげられる。
【0089】
ラジカル補足剤は市販のものであってもよく、例えば、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−330、アデカスタブAO−20、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−68、アデカスタブLA−87(以上、ADEKA社製、商品名)、IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、TINUVIN 111FDL、TINUVIN 123、TINUVIN 144、TINUVIN 152、TINUVIN 292、TINUVIN 5100(以上、BASFジャパン社製、商品名)などが挙げられる。過酸化物分解剤として働く酸化防止剤としては、具体的な化合物としてトリフェニルフォスファイト等のリン系化合物、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート等の硫黄系化合物などが挙げられる。
【0090】
過酸化物分解剤は市販のものであってもよく、例えば、アデカスタブTPP(ADEKA社製、商品名)、マークAO−412S(ADEKA社製、商品名)、スミライザーTPS(住友化学製、商品名)などが挙げられる。
【0091】
上記の酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
(紫外線吸収剤)
高分子材料は光を吸収し、それにより分解・劣化を起こすことから、本発明の熱硬化性樹脂組成物は紫外線に対する安定化対策を行うために、上記酸化防止剤の他に、紫外線吸収剤を使用することができる。
紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シンナメート誘導体、アントラニレート誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体などが挙げられる。具体的なベンゾフェノン誘導体の例としては2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン及び2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなど;具体的なベンゾエート誘導体の例としては2−エチルヘキシルサリチレート、フェニルサリチレート、p−t−ブチルフェニルサリチレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート及びヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなど;具体的なベンゾトリアゾール誘導体の例としては2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)エンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール;具体的なトリアジン誘導体の例としてはヒドロキシフェニルトリアジン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどが挙げられる。
【0093】
紫外線吸収剤としては市販のものであってもよく、例えば、TINUVIN PS、TINUVIN 99−2、TINUVIN 109、TINUVIN 384−2、TINUVIN 900、TINUVIN 928、TINUVIN 1130、TINUVIN 400、TINUVIN 405、TINUVIN 460、TINUVIN 479(以上、BASFジャパン社製、商品名)などが挙げられる。
上記の紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。上記酸化防止剤と併用することで本発明の熱硬化性樹脂組成物より得られる成形物の安定化が図れる。
【0094】
(その他の添加剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、ハイドロタルサイト、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、防錆剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0095】
(有機溶剤)
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記(A)エポキシ樹脂の合成や組成物の調整のため、又は基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
【0096】
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0097】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、キャリアフィルム(支持体)と、該キャリアフィルム上に形成された上記熱硬化性樹脂組成物からなる層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。さらには、ガラスクロス、ガラスおよびアラミド不織布等のシート状繊維質基材に塗工および/または含浸させて半硬化させたプリプレグシートとしてもよい。
ドライフィルム化に際しては、本発明の熱硬化性樹脂組成物を前記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10〜150μm、好ましくは10〜60μmの範囲で適宜選択される。
【0098】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
【0099】
キャリアフィルム上に本発明の熱硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥し熱硬化性樹脂組成物層を形成した後、さらに、その熱硬化性樹脂組成物層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、熱硬化性樹脂組成物層の表面に剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。
剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離するときに熱硬化性樹脂組成物層とキャリアフィルムとの接着力よりも熱硬化性樹脂組成物層とカバーフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0100】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜130℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。また、上記組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったドライフィルムの場合、ラミネーター等により熱硬化性樹脂組成物層が基材と接触するように基材上に張り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、樹脂絶縁層を形成できる。
【0101】
上記基材としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR−4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0102】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法及びノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0103】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記(A)エポキシ樹脂のエポキシ基と、(B)エポキシ樹脂用硬化剤が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【実施例】
【0104】
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
下記表1〜表3記載の配合に従って、実施例/比較例に記載の材料をそれぞれ配合、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて混錬し、熱硬化性樹脂組成物を調製した。表中の値は、特に断りが無い限り、質量部である。
【0105】
<基板の作製>
上記のようにして調製した熱硬化性樹脂組成物(ワニス)を液状塗布、および、DF(ドライフィルム)化して、基板を作製した。前者はロールコーター(ファーネス社)にて、回路基板に液状塗布した。後者はPETフィルム上にアプリケーターにより塗布、乾燥し熱硬化性樹脂層を作製した。その後、その上にカバーフィルムを張り合わせてDFとした。塗布乾燥、DF何れも所定の条件で熱硬化して、硬化物を形成した。
液状塗布、DFそれぞれについての詳細な作製方法は以下に示す。
【0106】
(液状塗布)
銅厚15μmで回路が形成されている板厚0.4mmの両面プリント配線基板を用意し、メック社CZ−8100を使用して、前処理を行った。その後、ロールコーター(ファーネス社)を用い、前記前処理を行ったプリント配線基板に熱硬化性樹脂組成物を乾燥後で20μmになるように調整し塗布をおこなった。その後、熱風循環式乾燥炉にて170℃/60minにて熱硬化し、硬化物を形成した。
【0107】
(ドライフィルム)
キャリアフィルムとして、38μmの厚みのPETフィルム上に、前記熱硬化性樹脂組成物をアプリケーターを用いて塗布し90℃/10min乾燥し、膜厚が20μmになるように熱硬化性樹脂層を形成した。さらにその上にカバーフィルムを張り合わせてDFを作製した。その後、銅厚15μmで回路が形成されている板厚0.4mmの両面プリント配線板を用意し、メック社CZ−8100を使用して前処理を行った基板に、真空ラミネーターを用いてカバーフィルムを剥がしたDFをラミネートした。ラミネート条件は温度100℃/圧力5kg/cmでおこなった。その後、PETフィルムを剥離したのちに170℃/60minにて熱硬化することで硬化物を形成した。
【0108】
【表1】

※1:三菱化学社製 828
※2:DIC社製 HP−4032
※3:DIC社製N−665 H60をシクロヘキサノンに溶解。固形分60%
※4:明和化成社製HF−1M H60をシクロヘキサノンに溶解。固形分60%
※5:DIC社製 V−8000
※6:DIC社製 EXB−9460−65T
※7:ロンザ社製 PT30
※8:アルケマ社製 MMA/nBA/MMAブロック共重合体。親水処理。(MAM M52N H30)をシクロヘキサノンに溶解。固形分30%
※9:アルケマ社製 MMA/nBA/MMAブロック共重合体。(MAM M52 H30)をシクロヘキサノンに溶解。固形分30%
※10:アルケマ社製 MMA/nBA/MMAブロック共重合体。(MAM M53 H30)をシクロヘキサノンに溶解。固形分30%
※11:三菱レイヨン社製BR−87 H30 Mw25000 固形分30%
※12:根上工業社製AS−3000E H30 Mw65000 固形分30%
※13:三菱化学社製YX6954 BH30 固形分30%
※14:アドマテックス社製SO−C2 D50=0.5μm
※15:アドマテックス社製AO−502 D50=0.6μm
※16:アドマテックス社製TC−975C D50=4μm
※17:ヒューズレックス社製ヒューズレックスWX D50=1.5μm
※18:フタロシアニンブルー
※19:クロモフタルイエロー
※20:四国化成社製1B2PZ
※21:コバルトアセチルアセトナートのDMF1%溶液
【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
<試験方法>
(Bステージ状態)
キャリアフィルムとして、38μmの厚みのPETフィルム上に、前記熱硬化性樹脂組成物をアプリケーターを用いて、90℃/10minにて乾燥した後に膜厚が20μmになるように塗布し、Bステージ状態(半硬化状態)のDFを作製した。その後、得られた熱硬化性樹脂組成物が形成されているDFの所定のサイズにスリット加工を行い、DFの状態を確認した。
○:スリット加工後、乾燥塗膜の割れや樹脂の粉落ちが確認されない
△:スリット加工後、乾燥塗膜の割れが僅かに確認された
×:スリット加工後、乾燥塗膜の割れや、樹脂の粉落ちが確認された
【0112】
(液状塗布ハンドリングクラック)
銅厚15μmで回路が形成されている板厚0.4mm、サイズ500mm×410mmの両面プリント配線基板を用意し、メック社CZ−8100を使用して、前処理を行った。その後、ロールコーター(ファーネス社)を用い、上記前処理を行ったプリント配線板に熱硬化性樹脂組成物を、90℃/10minにて乾燥後に膜厚が20μmになるように調整し塗布をおこなった。両面同時塗工であるため吊り下げ乾燥を行い、乾燥後の取り出し/搬送の際、乾燥塗膜の割れを目視により下記基準に従って評価した。
○:乾燥後、塗膜の割れが確認されない
△:乾燥後、塗膜の割れが僅かに確認された
×:乾燥後、塗膜の割れが確認された
【0113】
(硬化後基板反り)
18μm銅箔の光沢面上に、それぞれの熱硬化性樹脂組成物をアプリケーターにより片面塗布(硬化後厚み約20μm)。その後熱風循環式乾燥炉にて170℃/60minにて硬化させ、反りの状態を目視により下記基準に従って評価した。また、それぞれの評価に該当する基板の外観例を図1に示す。図1の左から順に、下記×に該当する基板の外観例(2例)、△に該当する基板の外観例(2例)、○に該当する基板の該当例(2例)を表す。
○:反りの程度が小さい
△:ソリが見られる
×:硬化物が筒状に収縮した
【0114】
(レーザー加工性)
銅厚15μmの銅張り積層板に、実施例/比較例に記載の熱硬化性樹脂組成物を、硬化後で約20μmの厚みになるようにそれぞれ形成した。液状と記載のものは、前記手順に従いロールコーターにより、DFと記載のものも同様に、上記の手順に従いPETフィルム上に塗布しDFを作製したのち、回路基板にラミネートし、上記と同様に硬化反応を行ってそれぞれ基板を作製した。その基板において、レーザー加工性の評価をおこなった。光源はCO2レーザー(10.6μm)で加工性を比較した。加工性の優劣をつけるために、全て同条件でレーザー加工を行った。加工性を下記基準に従って評価した。
CO2レーザー(日立ビアメカニクス社)
加工径狙いはトップ径65μm/ボトム50μm
条件:アパチャー(マスク径):3.1mm/パルス幅20μsec/出力2W/周波数5kHz/ショット数:バースト3ショット
○:狙い加工径との差が±2μm未満でかつ、加工穴壁が滑らかな状態
△:狙い加工径との差が±2μm未満だが、加工穴壁に凹凸が見られる状態
×:狙い加工径との差が±2μm以上
【0115】
(デスミア耐性)
銅厚15μm、板厚0.4μmの銅張り積層板に、実施例/比較例に記載の熱硬化性樹脂組成物を、硬化後で約20μmの厚みになるようにそれぞれ形成し、上記と同様に硬化反応を行って基板について、下記デスミア処理条件および評価基準に従って、過マンガン酸デスミア水溶液(湿式法)によるデスミア耐性を評価した。
デスミア処理条件(ローム&ハース社)
膨潤 MLB−211 温度80℃/時間10min
過マンガン酸 MLB−213 温度80℃/時間15min
還元 MLB−216 温度50℃/時間5min
評価基準
○:表面粗度Raが0.15μm未満
○△:表面粗度Raが0.15〜0.3μm
△:表面粗度Raが0.3μm超・0.5μm未満
×:表面粗度Raが0.5μm以上
【0116】
(冷熱サイクル特性)
上記した条件でレーザー加工を行い、トップ径65μm/ボトム径50μmのレーザービアを形成した基板について、上記と同様にデスミア処理を行い、レーザービアの底部のスミア除去をおこなった。その後、市販品の無電解ニッケルめっき浴および無電解金メッキ浴を用いて、ニッケル0.5μm、金メッキ0.03μmの条件でメッキを行い、レーザービア底部に金メッキ処理を施した。
このようにして得られた各基板について、冷熱サイクル特性の評価をおこなった。処理条件は、−65℃で30min、150℃で30minを1サイクルとして熱履歴を加え、2000サイクル経過後で、熱硬化性樹脂組成物表面およびレーザービア周辺部の状態を光学顕微鏡にて観察した。観察穴数は100穴とした。
◎:クラックの発生数が10%未満
○:クラックの発生数が10〜20%
△:クラックの発生穴数が20%超・30%未満
×:クラックの発生穴数が30%以上
【0117】
以上の試験により得られた結果を下記表4および表5に示す。
【0118】
【表4】

【0119】
【表5】

【0120】
上記表5の結果から明らかなように、ブロック共重合体が配合されていない比較例1〜3、5〜7の熱硬化性樹脂組成物を用いた場合、DF化試験ではスリット加工を行ったときフィルムの割れや粉落ちが確認され、液状試験塗布の際には乾燥後の取り出し/搬送の際に同様にフィルムの割れが確認された。また硬化後の基板の反りが発生した。また、比較例1と3の比較から、球状シリカではなく溶融不定形シリカを用いると、冷熱サイクル特性が悪くなったことが確認できる。また、比較例4から、ブロック共重合体を用いたとしても、球状シリカでは無く溶融不定形シリカを用いると、レーザー加工後の加工壁面の凹凸に加え、冷熱サイクル特性が悪くなった。
それに対して、上記表4および表5の結果から明らかなように、本発明にかかる実施例1〜13の熱硬化性樹脂組成物を用いた場合、DF化時、液状塗布時のいずれにおいても、クラックの発生などの不具合発生が抑制されており、硬化後の基板の反りが少なく、レーザー加工性、デスミア耐性および冷熱サイクル特性についても良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)エポキシ樹脂用硬化剤、
(C)球状の二酸化珪素および/または球状の酸化アルミニウム、および、
(D)ブロック共重合体、
を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)ブロック共重合体が、20℃以上30℃以下で固体である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が50000以上300000以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が3以下である請求項1または2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)ブロック共重合体が、下記式(I)、
X−Y−X (I)
(式中、Xはガラス転移点Tgが0℃以上のポリマー単位であり、Yはガラス転移点Tgが0℃未満のポリマー単位である。)
で表されるブロック共重合体である請求項1〜3のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記式(I)のYがポリn−ブチル(メタ)アクリレートを含み、Xがポリメチル(メタ)アクリレートを含む請求項4記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
熱硬化性樹脂組成物全体に対する前記(C)球状の二酸化珪素および/または球状の酸化アルミニウムの量が50wt%以上である請求項1〜5のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)エポキシ樹脂用硬化剤がフェノール樹脂である請求項1〜6のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物を、フィルム上に塗布乾燥して得られることを特徴とする熱硬化性フィルム。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物、又は請求項8記載の熱硬化性フィルムを加熱硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項10】
請求項9記載の硬化物を具備することを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2013−95839(P2013−95839A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239566(P2011−239566)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(310024066)太陽インキ製造株式会社 (16)
【Fターム(参考)】