説明

熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物を用いた光学部材

【課題】 透明性に優れ、硬化時の硬化収縮を十分に低減することができ、且つ、長期間にわたって硬化物の着色、クラックの発生及び被着体との間の界面はく離の発生を十分に抑制することが可能な熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物と、(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物と、(C)ヒドロシリル化触媒と、を含有し、上記吸着剤が固体塩基及び/又は固体酸である、熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物を用いた光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学部材用樹脂には透明性や耐光性に優れるアクリル系樹脂が一般に多用されている。また、光・電子機器分野に利用される光学部材用樹脂には、電子基板等への実装プロセスや高温動作下での耐熱性や機械特性が求められ、エポキシ系樹脂が広く用いられている。
【0003】
しかし、近年、光・電子機器分野でも高強度のレーザ光や青色光、近紫外光の利用が広がりつつあり、従来以上に透明性、耐熱性及び耐光性に優れた樹脂が求められている。
【0004】
一般にエポキシ樹脂は可視域での透明性は高いが、紫外から近紫外域では十分な透明性が得られない。その中でも脂環式ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどを用いたエポキシ樹脂は、比較的透明性が高いものの、熱や光によって着色し易いなどの問題点がある。
【0005】
こうしたエポキシ樹脂の着色の問題を改善する方法として、例えば、特許文献1及び2には、脂環式ビスフェノールAジグリシジルエーテルに含まれる着色原因の一つである不純物を低減する方法が開示されている。
【0006】
また、上記の脂環式エポキシと酸無水物とからなる硬化物は、破断強度、靭性が芳香族エポキシを用いた場合よりも劣るため、成形物における被着体との間の界面はく離や、硬化物へのクラックの発生が問題視されている。さらに、硬化時に酸無水物が揮発して容積が減少する点も問題となっている。
【0007】
また、アクリル系樹脂を用いた硬化物は、透明性、耐光着色性、耐熱着色性に優れるが、吸水率が高く、破断強度などの機械特性が必ずしも十分とは言えず、さらなる特性の向上が求められている。また、アクリル系樹脂は硬化収縮が比較的大きく、硬化時に容積が減少してしまう問題がある。
【0008】
一方、シリコーン樹脂を用いた硬化物は、紫外から可視域にかけての透明性が高く、耐光着色性、耐熱着色性に優れているため、光学部材への使用が検討され始めている。しかし、シリコーン樹脂は、透湿性が高く、接着性が低く、線膨張係数が高く、また軟らかいために、複雑な形状を有する成型品が得られず、ホコリや指紋がつきやすいなどの問題点がある。
【0009】
これらの問題点を改善するため、例えば、特許文献3には、軟らかさの原因となるシリコーン樹脂のジメチルシロキサン骨格のメチル基の一部をフェニル基に置換する方法が開示されている。また、特許文献4には、シリコーン樹脂とエポキシ樹脂とを複合化する方法が開示されている。
【0010】
しかしながら、上記特許文献3及び4に記載された方法であっても、得られる成型品の長期信頼性が必ずしも十分ではなく、経時的に界面はく離やクラックが発生しやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−171439号公報
【特許文献2】特開2004−075894号公報
【特許文献3】特開2004−292807号公報
【特許文献4】特開2005−171021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、透明性に優れ、硬化時の硬化収縮を十分に低減することができ、且つ、長期間にわたって硬化物の着色、クラックの発生及び被着体との間の界面はく離の発生を十分に抑制することが可能な熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物を用いた光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物と、(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物と、(C)ヒドロシリル化触媒と、を含有し、上記吸着剤が固体塩基及び/又は固体酸である、熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0014】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物の分子量は、300〜2500であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物のケイ素比は、0.45以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物の40℃から200℃まで昇温した場合の質量減少率は、10%以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物の1分子中のヒドロシリル基の数は、2以上であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物は、25℃で液体であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物は、(a1)炭素−炭素二重結合を有する化合物と(a2)ヒドロシリル基を有する化合物とを、(a3)ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させて得られる化合物であることが好ましい。
【0020】
ここで、上記(a1)炭素−炭素二重結合を有する化合物は、脂肪族基及び脂環式基を有するものであることが好ましい。
【0021】
また、上記(a1)炭素−炭素二重結合を有する化合物は、炭素−炭素二重結合を1分子中に1つ有するものであることが好ましい。
【0022】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物の1分子中の炭素−炭素二重結合の数は、2以上であることが好ましい。
【0023】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物の40℃から200℃まで昇温した場合の質量減少率は、10%以下であることが好ましい。
【0024】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物は、25℃で液体であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物は、脂環式基、脂肪族基及び複素環基からなる群より選択される少なくとも一種の基を含むものであることが好ましい。
【0026】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物のヒドロシリル基と、上記(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物の炭素−炭素二重結合との当量比(ヒドロシリル基/炭素−炭素二重結合)は、1/1.4〜1/0.6であることが好ましい。
【0027】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物と、上記(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物との混合液を光路長10mmの透明セルに入れ、分光光度計を用いて波長550nmの光の透過率を測定した場合の測定値が、70%以上であることが好ましい。
【0028】
本発明はまた、上記本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物からなる光学部材を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、透明性に優れ、硬化時の硬化収縮を十分に低減することができ、且つ、長期間にわたって硬化物の着色、クラックの発生及び被着体との間の界面はく離の発生を十分に抑制することが可能な熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物を用いた光学部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の光学部材を備えた光半導体素子の一例を示す概略端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0032】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物(以下、場合により「(A)成分」という)と、(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物(以下、場合により「(B)成分」という)と、(C)ヒドロシリル化触媒(以下、場合により「(C)成分」という)と、を含有し、上記吸着剤が固体塩基及び/又は固体酸である、熱硬化性樹脂組成物である。この熱硬化性樹脂組成物は、取り扱い性の観点から、常温(25℃)で液体であることが好ましい。
【0033】
従来、シリコーン樹脂は、透明性が高く耐着色性に優れるが、各種部材への親和性(密着性)に乏しく、信頼性の点で課題があった。そこで本発明では、炭素数が2以上の有機基とヒドロシリル基とを1分子中に共存させ、予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む有機化合物との相溶性を高めて、有機−無機複合化を行うようにした。
【0034】
一般的に、有機物である樹脂とケイ素を含有する無機物とを複合化する方法として、樹脂中でのゾルゲル法や樹脂中でクレイの層をはく離する方法等がある。これらの方法ではそれぞれ、反応の進行に伴い水が析出することや、透明性などの点で課題が大きい。
【0035】
これに対し、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する本発明の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させた場合には、反応に伴う析出物がなく、透明性の高い硬化物が得られることを見出した。
【0036】
さらに、(A)成分が炭素数2以上の有機基を有することにより、当該(A)成分の沸点が上昇し、硬化時の材料の揮発を抑制できることを見出した。
【0037】
また、(B)成分として予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物を用い、且つ、上記吸着剤として固体塩基及び/又は固体酸を用いることで、化合物中に含まれる微量なイオン性不純物が十分に除かれるため、耐熱着色性が高く、また硬化物の架橋構造を緻密なものとし、硬化物の硬度や被着体との接着性を向上できることを見出した。
【0038】
そして、本発明の熱硬化性樹脂組成物によれば、透明性に優れ、硬化時の硬化収縮を十分に低減することができ、且つ、長期間にわたって硬化物の着色を抑制し、クラックの発生及び被着体との間の界面はく離の発生を十分に抑制することが可能となる。
【0039】
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0040】
本発明における(A)炭素数が2以上の有機基とヒドロシリル基を含む化合物の分子量は、硬化時の揮発を防ぐ観点から300以上であることが好ましく、また、(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物との相溶性を確保する観点から2500以下であることが好ましい。また、上記効果をより十分に得る観点から、上記(A)成分の分子量は400〜750であることがより好ましい。
【0041】
本発明における(A)炭素数が2以上の有機基とヒドロシリル基を含む化合物のケイ素比は、各種部材への密着性を高めるために、0.45以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.22以下であることがさらに好ましい。また、(B)成分との相溶性の観点から、(A)成分のケイ素比は0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましい。
【0042】
ここで、本発明における上記(A)成分のケイ素比とは、1分子中のケイ素原子の数とケイ素原子の原子量とを乗じた値を(A)成分の分子量で除した数値を意味し、次式により定義される。
【0043】
【数1】



【0044】
本発明における(A)炭素数が2以上の有機基とヒドロシリル基を含む化合物の40℃から200℃まで昇温した場合の質量減少率は、硬化時の化合物の揮発による目減りを抑制する観点から、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0045】
本発明における(A)炭素数が2以上の有機基とヒドロシリル基を含む化合物の1分子中のヒドロシリル基の数は、硬化時の架橋密度を上げて信頼性を高めるために2以上であることが好ましい。ヒドロシリル基の数が2未満であると十分な架橋密度が得られず、硬化物が軟化しやすい傾向がある。
【0046】
また、(A)炭素数が2以上の有機基とヒドロシリル基を含む化合物は、ヒドロシリル基が環状に結合した構造を有する環状ケイ素化合物であることが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化時の硬化収縮をより十分に低減することができ、且つ、長期間にわたって硬化物のクラックの発生及び被着体との間の界面はく離の発生をより十分に抑制することが可能となる。
【0047】
本発明における(A)炭素数が2以上の有機基とヒドロシリル基を含む化合物は、取り扱いやすさから、常温(25℃)で液体であることが好ましい。
【0048】
また、本発明における(A)炭素数が2以上の有機基とヒドロシリル基を含む化合物は、(a1)炭素−炭素二重結合を有する化合物(以下、場合により「(a1)成分」という)と、(a2)ヒドロシリル基を有する化合物(以下、場合により「(a2)成分」という)とを、(a3)ヒドロシリル化触媒(以下、場合により「(a3)成分」という)の存在下で反応させて得られる化合物であることが好ましい。
【0049】
ここで、(a1)炭素−炭素二重結合を有する化合物は、重合硬化性、透明性及び色相の点から、脂肪族基及び脂環式基を有するものであることが好ましく、脂環式基であることが特に好ましい。(a1)成分として脂環式基を有する化合物を用いた場合、最終的に得られる硬化物の透明性が高く、吸水率が低く、透湿性が低く、耐熱性が高くなり、硬化収縮率が小さくなる傾向がある。
【0050】
本発明における(a1)炭素−炭素二重結合を有する化合物は、炭素−炭素二重結合を1分子中に1つ有するものであることが好ましい。(a1)成分が炭素−炭素二重結合を1分子中に2つ以上有するものであると、(a1)成分と(a2)成分との反応物である(A)成分が3次元架橋体となり、(B)成分との混合物が液状ではなくゲル状になりやすくなる。
【0051】
本発明における(a1)炭素−炭素二重結合を有する化合物の例としては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニルメチル、(メタ)アクリル酸フェニルノルボルニル、(メタ)アクリル酸シアノノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸メンチル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル、(メタ)アクリル酸シクロデシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ペンタメチルピペリジル、(メタ)アクリル酸テトラメチルピペリジル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(3−(メタ)アクリロキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン等の(メタ)アクリル酸エステル類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−フルオロスチレン、α−クロルスチレン、α−ブロモスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、スチレン等のビニレン類、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニルマレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)マレイミド、N−(4−ベンジルフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド等のマレイミド類、ジシクロペンタニルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、1−エチル−ビニロキシシクロヘキサノール、トリシクロデカンモノメタノールビニルエーテル、トリシクロデシルビニルエーテル、トリシクロデシルビニルエーテルの位置異性体モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、ビニルカプロラクトン、ビニルシクロヘキサン、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビニレンカーボネート、ビニル2−エチルエキノネート、ビニルネオデカノエート、ビニルネオノナノエート、5−ビニル−2−ノルボルネン、4−(ビニロキシ)ブチルステアレート、ビニルプロピオネート等のビニルエーテル類、βピネン、αピネン等の天然物素材が挙げられる。
【0052】
これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中で、脂環式基を有するメタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル、トリシクロデシルビニルエーテル、トリシクロデシルビニルエーテルの位置異性体が硬化物の透明性、低吸水率性、低透湿性、高耐熱性、低収縮性の点で好ましい。
【0053】
本発明における(a2)ヒドロシリル基を有する化合物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(ジクロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、シクロトリシロキサン、メチルヒドロシロキサンオリゴマー、ヒドロシロキサンオリゴマー等が挙げられ、(a1)成分との相溶性や反応性の点から、特に、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサンが好ましい。
【0054】
本発明における(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物の1分子中の炭素−炭素二重結合の数は、硬化後に高密度な三次元架橋構造を形成して信頼性を高めるために、2つ以上であることが好ましい。1分子中の炭素−炭素二重結合の数が2つ未満であると、硬化物が軟化する傾向がある。
【0055】
本発明における(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物の40℃から200℃まで昇温した場合の質量減少率は、硬化時の化合物の揮発による目減りを抑制するために、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0056】
本発明における(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物は、取り扱いやすさから、常温(25℃)で液体であることが好ましい。
【0057】
また、本発明における(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物は、相溶性、硬さの点から、脂環式基、脂肪族基及び複素環基からなる群より選択される少なくとも一種の基を含むものであることが好ましい。
【0058】
本発明における(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物の例としては、例えば、ジシククロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ビニル、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリレート類、トリアリルイソシアヌレート等のアリレート類、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シデカノールビニルエーテル、トリシクロデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジオールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジオールジビニルエーテル、水添ビスフェノールAジビニルエーテル等のビニルエーテル類、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、ジメチルシロキサンジビニル等のビニル化合物類、リモネン、1,5−ヘキサジエン、1,8−ノナジエン、ブタジエン、ポリブタジエン等の二重結合を有する化合物が挙げられる。
【0059】
これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いても良い。これらの中でも、硬化物の色相等の観点から、トリアリルイソシアヌレート、トリシクロデシルビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、水添ビスフェノールAジビニルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジアクリレートジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンが特に好ましい。
【0060】
本発明において、(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物のヒドロシリル基と、(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物の炭素−炭素二重結合との当量比(ヒドロシリル基/炭素−炭素二重結合)は、1/1.4〜1/0.6であることが好ましく、1/1.3〜1/0.7であることがより好ましい。この当量比が1/1.4未満であると、(B)成分の炭素−炭素二重結合が多く、硬化物が着色して透明性が低下する傾向があり、1/0.6を超えると、得られる硬化物の硬度が低下する傾向がある。
【0061】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、(A)成分及び(B)成分の含有量は、上記当量比(ヒドロシリル基/炭素−炭素二重結合)の条件を満たすように適宜調節することが好ましいが、通常、(A)成分の含有量を、(A)成分及び(B)成分の総量を基準として60〜90質量%とすることが好ましく、70〜90質量%とすることがより好ましい。
【0062】
また、本発明において、(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物及び(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物の混合物は、可視光に対して透明であることが好ましい。これら(A)成分と(B)成分とを混合した時の混合物が不透明な場合、得られる硬化物が白濁する傾向がある。より具体的には、(A)成分と(B)成分との混合液を光路長10mmの透明セルに入れ、分光光度計を用いて波長550nmの光の透過率を測定した場合の測定値が、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。この透過率が70%以上であることにより、得られる硬化物の白濁を十分に抑制することができる。
【0063】
本発明において、(C)成分及び(a3)成分として用いられるヒドロシリル化触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等の周知の触媒が使用できる。その具体例としては、例えば、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、四塩化白金、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンなどのアルケニルシロキサンとの錯体、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ロジウム化合物、これらの白金系触媒を、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂中に分散もしくはカプセル化した樹脂粉末が挙げられる。
【0064】
これらの中でも、着色が少ないという点から、白金を含む触媒が好ましく、塩化白金酸、四塩化白金、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンなどのアルケニルシロキサンとの錯体、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体等が特に好ましい。
【0065】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、(C)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の種類などよって適宜調節されるが、通常、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.00001〜0.5質量部であることが好ましく、0.00001〜0.3質量部であることがより好ましい。
【0066】
本発明における(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物において、炭素−炭素二重結合を含む化合物を処理する吸着剤としては、固体酸及び/又は固体塩基の性質を有する吸着剤が使用される。固体酸及び/又は固体塩基としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素等を含む、以下の組成式で示される吸着剤が使用される。吸着剤の組成式としては、例えば、MgO、Al(OH)・xHO、2.5MgO・Al・xHO、Al(OH)・NaHCO、MgAl(OH)16CO・4HO、2MgO・6SiO・xHO、Al・9SiO・HO、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg0.7Al0.31.15等が挙げられる。
【0067】
これらの中では、2MgO・6SiO・xHO、Al・9SiO・HO、Mg4.5.Al(OH)13CO、3.5HO、Mg0.7Al0.31.15が着色を抑制する効果が大きく、特に好ましい。
【0068】
本発明において、(B)成分を構成する炭素−炭素二重結合を含む化合物を吸着剤で処理する方法は、炭素−炭素二重結合を含む化合物に吸着剤を加えて、攪拌する方法や超音波を施す等の方法が挙げられる。この際に、吸着剤の効果を高めるために、有機溶媒を加えても良い。
【0069】
本発明において、炭素−炭素二重結合を含む化合物を吸着剤で処理する際、吸着剤の量は(B)成分の種類等によって適宜調節されるが、通常、炭素−炭素二重結合を含む化合物の総量100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましい。吸着剤の量が0.1質量部未満であると耐熱着色性に対する効果が少なくなる傾向がある。また、20質量部を超えると(B)成分の収量が少なくなる。
【0070】
本発明において、炭素−炭素二重結合を含む化合物を吸着剤で処理する際の温度は、炭素−炭素二重結合を含む化合物の種類などによって適宜調節されるが、室温〜150℃であることが好ましい。
【0071】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、上記成分以外に、ヒンダードアミン系の光安定剤、フェノール系やリン系の酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤、エチニルシクロヘキサノール等の重合調整剤等を添加することができる。また、成形性の観点から、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0072】
次に、本発明の光学部材について説明する。本発明の光学部材は、上述した本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物からなるものである。
【0073】
本発明の光学部材は、上述した本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されているため、光学的透明性が十分に高く、長期間にわたって着色、クラックの発生及び被着体との間の界面はく離の発生を十分に抑制することが可能である。
【0074】
本発明の光学部材としては、例えば、透明基板、レンズ、接着剤、光導波路、発光ダイオード(LED)、フォトトランジスタ、フォトダイオード、固体撮像素子等の光半導体素子用途の光学部材が挙げられる。
【0075】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた光学部材の製造方法として、例えば、熱硬化性樹脂組成物を所望の部分に注型、ポッティング又は金型へ流し込み、加熱によって硬化させる方法が挙げられる。
【0076】
硬化条件は、最終的に残存するモノマーが5質量%以下となる温度及び時間とすることが望ましい。かかる硬化条件は、(A)炭素数2以上の有機基とヒドロシリル基を含む化合物、(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物及び(C)ヒドロシリル化触媒等の種類、組み合わせ、添加物の添加量によるが、60〜150℃で1〜10時間程度とすることが望ましい。また、急激な硬化反応によって発生する内部応力を低減するために、硬化温度を段階的に昇温することが望ましい。
【0077】
図1は、本発明の光学部材を備えた光半導体素子の一例を示す概略端面図である。図1に示す光半導体素子100は、チップ型又は表面実装型と呼ばれる発光ダイオードである。光半導体素子100は、発光ダイオード素子2と、発光ダイオード素子2を封止するように設けられた透明な光学部材1とを備える。
【0078】
発光ダイオード素子2は、ケース部材5により形成されたキャビティー10の底部に配置されている。発光ダイオード素子2は、接着層20を介してリードフレーム7aに電気的に接続されており、ワイヤー8を介してリードフレーム7bと電気的に接続されている。
【0079】
光学部材1は、発光ダイオード素子2を覆うと共にキャビティー10を充填している。光学部材1は、例えば、上述した本発明の熱硬化性樹脂組成物をキャビティー10内に流し込み、キャビティー10内の熱硬化性樹脂組成物を加熱によって硬化する方法により形成される。
【0080】
なお、図1において、光学部材1の外表面S1は平坦であるが、本発明はこれに限られない。例えば、光学部材の外表面を凹レンズ状又は凸レンズ状とすることにより、光半導体素子に集光機能を付与してもよい。
【0081】
以上説明した本発明の熱硬化性樹脂組成物は、その硬化物の光学的透明性が十分に高く、硬化時の硬化収縮を十分に低減することができ、且つ、長期間にわたって硬化物の着色を抑制し、クラックの発生及び被着体との間の界面はく離の発生を十分に抑制することが可能である。
【0082】
また、その硬化物は、透明基板、レンズ、接着剤、光導波路、発光ダイオード(LED)、フォトトランジスタ、フォトダイオード、固体撮像素子等の光半導体素子用途の光学部材として好適である。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0084】
(実施例1)
100mlのスクリュー管に、(a1)成分としてのメタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル(日立化成工業株式会社製、以下、「TCDMA」という)6.47質量部、(a2)成分としての1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(和光純薬株式会社製、以下、「TMCTS」という)3.53質量部、及び、エチニルシクロヘキサノール0.015質量部(和光純薬株式会社製)を入れ、均一になるまで混合した。
【0085】
その後、(a3)成分としての白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体(和光純薬株式会社製、Pt含有量:1.7質量%)0.020質量部を添加して溶液を得た。
【0086】
この溶液をオーブン中で、100℃で1時間、125℃で2時間及び150℃で1時間の条件で加熱することにより、炭素数2以上の有機基とヒドロシリル基とを有する環状ケイ素化合物((A)成分)を得た。得られた環状ケイ素化合物は、常温(25℃)で液状であった。
【0087】
20mlのスクリュー管に、トリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製、以下、「TAIC」という)5.00質量部、及び、固体塩基であるAl(OH)・xHO(協和化学工業株式会社製、xは結晶水のモル数)0.25質量部を入れた。そのスクリュー管を70℃に加温し、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら1.5時間加熱した。加熱終了後、Al(OH)・xHOを、遠心分離機を用いて除去し、固体塩基により処理を施したトリアリルイソシアヌレート((B)成分)3.00質量部を得た。この固体塩基により処理を施したトリアリルイソシアヌレートは、常温(25℃)で液状であった。
【0088】
次に、上記の環状ケイ素化合物10質量部を含む100mlのスクリュー管内に、上記の固体塩基により処理を施したトリアリルイソシアヌレート2.45質量部、及び、エチニルシクロヘキサノール0.015質量部(和光純薬株式会社)を入れて均一になるまで混合した。
【0089】
その後、(C)成分としての白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体(和光純薬株式会社製、Pt含有量:1.7質量%)0.020質量部を添加し、熱硬化性樹脂組成物の溶液を得た。
【0090】
この熱硬化性樹脂組成物の溶液をオーブン中で、100℃で1時間、125℃で2時間及び150℃で1時間の条件で加熱して、厚さ1mm及び3mmの測定用の硬化物をそれぞれ得た。
【0091】
また、熱硬化性樹脂組成物の溶液を、縦3.2mm×横2.6mm×高さ1.8mmのSMD型PKGに注ぎ、オーブン中で100℃1時間、125℃2時間、150℃1時間加熱して、表面実装型パッケージを作製した。
【0092】
(実施例2)
トリアリルイソシアヌレートを処理する吸着剤として、Al(OH)・xHOにかえて、固体塩基であるMgAl(OH)16CO・4HOを用いた以外は実施例1と同様の方法により、熱硬化性樹脂組成物の溶液、硬化物及び表面実装型パッケージを得た。
【0093】
(実施例3)
トリアリルイソシアヌレートを処理する吸着剤として、Al(OH)・xHOにかえて、固体酸である2MgO・6SiO・xHOを用いた以外は実施例1と同様の方法により、熱硬化性樹脂組成物の溶液、硬化物及び表面実装型パッケージを得た。
【0094】
(実施例4)
トリアリルイソシアヌレートを処理する吸着剤として、Al(OH)・xHOにかえて、固体酸であるAl・9SiO・HOを用いた以外は実施例1と同様の方法により、熱硬化性樹脂組成物の溶液、硬化物及び表面実装型パッケージを得た。
【0095】
(実施例5)
トリアリルイソシアヌレートを処理する吸着剤として、Al(OH)・xHOにかえて、固体塩基であるMg4.5Al(OH)13CO・3.5HOを用いた以外は実施例1と同様の方法により、熱硬化性樹脂組成物の溶液、硬化物及び表面実装型パッケージを得た。
【0096】
(実施例6)
トリアリルイソシアヌレートを処理する吸着剤として、Al(OH)・xHOにかえて、固体酸であるMg0.7Al0.31.15を用いた以外は実施例1と同様の方法により、熱硬化性樹脂組成物の溶液、硬化物及び表面実装型パッケージを得た。
【0097】
(比較例1)
100mlのスクリュー管に、(a1)成分としてのメタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル(日立化成工業株式会社製、以下、「TCDMA」という)6.47質量部、(a2)成分としての1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(和光純薬株式会社製、以下、「TMCTS」という)3.53質量部、及び、エチニルシクロヘキサノール0.015質量部(和光純薬株式会社製)を入れ、均一になるまで混合した。
【0098】
その後、(a3)成分としての白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体(和光純薬株式会社製、Pt含有量:1.7質量%)0.020質量部を添加して溶液を得た。
【0099】
この溶液をオーブン中で、100℃で1時間、125℃で2時間及び150℃で1時間の条件で加熱することにより、炭素数2以上の有機基とヒドロシリル基とを有する環状ケイ素化合物((A)成分)を得た。得られた環状ケイ素化合物は、常温(25℃)で液状であった。
【0100】
次に、上記の環状ケイ素化合物10質量部を含む100mlのスクリュー管内に、トリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製、以下、「TAIC」という)2.45質量部、及び、エチニルシクロヘキサノール0.015質量部(和光純薬株式会社)を入れて均一になるまで混合した。
【0101】
その後、(C)成分としての白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体(和光純薬株式会社製、Pt含有量:1.7質量%)0.020質量部を添加し、熱硬化性樹脂組成物の溶液を得た。
【0102】
この熱硬化性樹脂組成物の溶液をオーブン中で、100℃で1時間、125℃で2時間及び150℃で1時間の条件で加熱して、厚さ1mm及び3mmの測定用の硬化物をそれぞれ得た。
【0103】
また、この熱硬化性樹脂組成物の溶液を用いて、実施例1と同様の手順で表面実装型パッケージを作製した。
【0104】
(比較例2)
トリアリルイソシアヌレートを処理する吸着剤として、Al(OH)・xHOにかえて、アルミナ(和光純薬株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、熱硬化性樹脂組成物の溶液、硬化物及び表面実装型パッケージを得た。
【0105】
(比較例3)
トリアリルイソシアヌレートを処理する吸着剤として、Al(OH)・xHOにかえて、活性炭(和光純薬株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、熱硬化性樹脂組成物の溶液、硬化物及び表面実装型パッケージを得た。
【0106】
上記実施例及び比較例の熱硬化性樹脂組成物における、各成分の配合量及び(A)成分のヒドロシリル基と(B)成分の炭素−炭素二重結合とのモル比(ヒドロシリル基/炭素−炭素二重結合)をまとめて表1に示す。
【0107】
【表1】



【0108】
上記実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂組成物を構成する各成分、表面実装型パッケージ及び物性測定用の硬化物について、以下の各種特性の測定を行った。なお、比較例におけるトリアリルイソシアヌレート(TAIC)は、吸着剤により処理していないか、又は、固体酸及び固体塩基のいずれにも該当しない吸着剤により処理したものであり、本願における(B)成分には該当しないが、ここでは便宜上(B)成分という。
【0109】
<(A)成分の分子量>
(A)成分の分子量を算出した結果を表2に示す。
【0110】
<(A)成分のケイ素比>
(A)成分のケイ素比を算出した結果を表2に示す。なお、ケイ素比は、1分子中のケイ素原子の数と原子量とを乗じた値を分子量で除した数値である。
【0111】
<(A)成分の質量減少率>
(A)成分の200℃における質量減少率を測定した。具体的には、(A)成分を試料とし、TG/DTA装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製、商品名:TG/DTA6000)を用いて、試料を40℃から200℃まで加熱(昇温速度:10℃/分)し、40℃の時の質量を100%として、200℃の時の質量から減少率を次式で計算した。結果を表2に示す。
【0112】
【数2】



【0113】
<(B)成分の質量減少率>
(B)成分の200℃における質量減少率を、上記(A)成分の質量減少率と同様の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0114】
<透明性の評価>
スクリュー管に(A)成分及び(B)成分のみを上記表1に示した比率で入れ、混合した状態で蛍光灯に透かし、透明な液体の場合を「A」、白濁した液体の場合を「B」として透明性を目視評価した。結果を表2に示す。
【0115】
<硬化物の硬度の測定>
物性測定用の硬化物(3mm厚)のショア硬度Aを、硬度計(デュアルメータ、タイプA)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0116】
<目減りの評価>
熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化により封止した直後の表面実装型パッケージについて、封止樹脂の容積減少による目減りの有無を目視にて観察し、目減りが確認されない場合を「A」、目減りが確認される場合を「B」として評価した。結果を表2に示す。
【0117】
<界面はく離の評価>
熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化により封止した直後の表面実装型パッケージについて、封止樹脂とポリフタルアミド製パッケージ又はリードフレームとの間に界面はく離が生じているかどうかを目視にて観察し、界面はく離が確認されない場合を「A」、界面はく離が確認される場合を「B」として評価した。結果を表2に示す。
【0118】
<クラックの評価>
熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化により封止した直後の表面実装型パッケージについて、封止樹脂へのクラックの発生の有無を目視にて観察し、クラックが確認されない場合を「A」、クラックが確認される場合を「B」として評価した。結果を表2に示す。
【0119】
<長期信頼性の評価>
表面実装型パッケージに対し、冷熱サイクル試験機で、−40℃で30分間、85℃で30分間を1サイクルとして10サイクル処理した。冷熱サイクル試験後の表面実装型パッケージについて、界面はく離及びクラックの有無を上記と同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0120】
<耐熱着色性の評価>
硬化物(1mm厚)を試験片とし、その黄色度について、試験片(厚さ1mm)を150度のオーブンに入れ72時間放置した後、黄色度計(日本電色工業株式会社製、商品名:COH−300)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0121】
【表2】



【符号の説明】
【0122】
1…光学部材、2…発光ダイオード素子、5…ケース部材、7a,7b…リードフレーム、8…ワイヤー、10…キャビティー、20…接着層、100…光半導体素子。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物と、
(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物と、
(C)ヒドロシリル化触媒と、
を含有し、
前記吸着剤が固体塩基及び/又は固体酸である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物の分子量が、300〜2500である、請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物のケイ素比が、0.45以下である、請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物の40℃から200℃まで昇温した場合の質量減少率が、10%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物の1分子中のヒドロシリル基の数が、2以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物が、25℃で液体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物が、(a1)炭素−炭素二重結合を有する化合物と(a2)ヒドロシリル基を有する化合物とを、(a3)ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させて得られる化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(a1)炭素−炭素二重結合を有する化合物が、脂肪族基及び脂環式基を有するものである、請求項7記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(a1)炭素−炭素二重結合を有する化合物が、炭素−炭素二重結合を1分子中に1つ有するものである、請求項7又は8記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物の1分子中の炭素−炭素二重結合の数が、2以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物の40℃から200℃まで昇温した場合の質量減少率が、10%以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物が、25℃で液体である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物が、脂環式基、脂肪族基及び複素環基からなる群より選択される少なくとも一種の基を含むものである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
前記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物のヒドロシリル基と、前記(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物の炭素−炭素二重結合との当量比(ヒドロシリル基/炭素−炭素二重結合)が、1/1.4〜1/0.6である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
前記(A)炭素数が2以上の有機基及びヒドロシリル基を含む化合物と、前記(B)予め吸着剤で処理を施した炭素−炭素二重結合を含む化合物との混合液を光路長10mmの透明セルに入れ、分光光度計を用いて波長550nmの光の透過率を測定した場合の測定値が、70%以上である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物からなる光学部材。


【図1】
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【公開番号】特開2010−7064(P2010−7064A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128156(P2009−128156)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】