説明

熱硬化性樹脂組成物及びウレタン硬化物

【課題】振動吸収特性、耐候性及び耐湿熱性に優れ、且つ透湿性の低い熱硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(1)未水添又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール50〜100質量%及び(2)可塑剤50〜0質量%の合計100質量部と、(3)脂肪族系ジイソシアネート又は芳香族系ジイソシアネート0.1〜150質量部を含有してなる、熱硬化性樹脂組成物、並びに該熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られるウレタン硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物及びウレタン硬化物に関する。更に詳しくは、振動吸収特性、耐候性及び耐湿熱性が高く、且つ透湿性の低い熱硬化性樹脂組成物、並びに該熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られるウレタン硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の用途に利用される熱硬化性樹脂組成物が数多く開発されており、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール等のポリオールとポリイソシアネートとを必須成分とする熱硬化性樹脂組成物等が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−263630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を含有する樹脂組成物では、耐候性や耐湿熱性に乏しく、特許文献1のように、ポリオールにアクリレートをグラフト重合させるなどの工夫が必要になる。また、ポリブタジエンポリオール等を用いた熱硬化性樹脂組成物等の場合は、振動吸収特性に乏しく、制振材等としては適さない。
そこで、例えば制振材、ガスケット、粘着剤、封止材、ポッティング剤、塗料等のあらゆる用途に利用可能な、振動吸収特性、耐候性及び耐湿熱性に優れ、且つ透湿性の低い樹脂組成物の開発が望まれている。
そこで、本発明の課題は、振動吸収特性、耐候性及び耐湿熱性に優れ、且つ透湿性の低い熱硬化性樹脂組成物、並びに該熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られるウレタン硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、未水添又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールを用いることにより、振動吸収特性、耐候性及び耐湿熱性に優れ、且つ透湿性の低い熱硬化性樹脂組成物を提供し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[7]に関する。
[1](1)未水添又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール50〜100質量%及び(2)可塑剤50〜0質量%の合計100質量部と、(3)脂肪族系ジイソシアネート又は芳香族系ジイソシアネート0.1〜150質量部を含有してなる、熱硬化性樹脂組成物。
[2]前記成分(1)が、未水添又は水添スチレン/ブタジエン共重合体ポリオールである、上記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[3]前記成分(1)が水添スチレン/ブタジエン共重合体ポリオールである、上記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[4]前記成分(3)が脂肪族系ジイソシアネートである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[5]前記成分(2)が、成分(1)及び(2)の合計量に対して5〜50質量%である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[6]さらに、(4)触媒を、成分(1)及び(2)の合計量100質量部に対して0.01〜10質量部含有してなる、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物が硬化して得られるウレタン硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱硬化性樹脂組成物及びウレタン硬化物は、振動吸収特性、耐候性及び耐湿熱性に優れており、且つ透湿性が低いため、種々の用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明は、(1)未水添又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール50〜100質量%及び(2)可塑剤50〜0質量%の合計100質量部と、(3)脂肪族系ジイソシアネート又は芳香族系ジイソシアネート0.1〜150質量部を含有してなる熱硬化性樹脂組成物である。
以下、上記成分(1)〜(3)について順に説明する。
【0009】
((1)未水添又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール)
成分(1)は、未水添又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールである。共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール中の共役ジエン単位としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン由来のものが挙げられ、1,3−ブタジエン由来であることが好ましい。また、共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール中の芳香族ビニル単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン由来のものが挙げられ、スチレン由来であることが好ましい。よって、未水添又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールとしては、振動吸収特性、耐候性及び耐湿熱性に優れ、且つ透湿性が低いという観点から、未水添又は水添スチレン−ブタジエン共重合体ポリオールが好ましく、水添スチレン−ブタジエン共重合体ポリオールがより好ましい。
【0010】
未水添又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールの重量平均分子量に特に制限はないが、好ましくは1,000〜20,000であり、より好ましくは3,000〜10,000である。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GP)法を用いたポリスチレン換算により求めた値である。
重量平均分子量が1,000以上であれば、硬化物の硬度が低くなり好ましい。一方、重量平均分子量が20,000以下であれば、成形する際に取り扱いやすい粘度となり好ましい。
また、未水添又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールの分子量分布は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.2以下である。分子量分布が3以下であると、該共重合体ポリオール中の低分子量成分や高分子量成分による様々な影響を抑制することができる。特に、粘度は分子量の影響を大きく受けるため、分子量のわずかなブレは粘度バラツキとなる。
水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールの水添率に特に制限はないが、耐候性等の観点から、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上(いずれも100モル%を含む。)である。
共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール中の芳香族ビニル由来の構成単位の含有量(以下、芳香族ビニル含有量と称する。)に特に制限はないが、全構成単位に対して、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
【0011】
このような未水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールは、下記工程(A)〜(B)、水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールは、下記工程(A)〜(C)により容易に製造することができる。
(A)飽和炭化水素系溶媒中で、ジリチウム開始剤により共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル系単量体を共重合して共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体を製造する工程。
(B)前記共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体とアルキレンオキシドとを反応させて、共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールを製造する工程。
(C)前記共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールに水素添加反応し、水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールを製造する工程。
【0012】
前記工程(A)の反応はリビングアニオン重合であるために、分子量及び分子量分布を制御して重合できる。分子量は、ジリチウム開始剤と上記単量体の量により所定の分子量の重合体を重合することが可能である。また、所望により、ランダマイザーの存在下にアニオン重合をさせてもよい。
次に、工程(B)として、上記工程(A)で得られた共重合体の、リビングアニオンである重合体末端とアルキレンオキシドとを当量反応させることにより、両末端に水酸基を有する共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールを得ることができる。
さらに、工程(C)として、主鎖に二重結合を有する工程(B)で得られた共重合体ポリオールに水素添加反応(以下、水添反応という)を行うことにより、主鎖に不飽和二重結合を持たない水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールを得ることができる。
【0013】
前記工程(A)で用いるジリチウム開始剤としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。例えば、特公平1−53681号公報には、モノリチウム化合物を第三級アミンの存在下に、2置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素と反応させてジリチウム開始剤を製造する方法が記載されている。
ジリチウム開始剤を製造するときに用いる第三級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン等の低級脂肪族アミンやN,N−ジフェニルメチルアミン等が挙げられる。これらの中でも、トリエチルアミンが好ましい。
また、上記2置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素としては、例えば、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,4−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,3−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン、1,4−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン等が好ましく挙げられる。
【0014】
前記ジリチウム開始剤の調製、及び共重合体の製造において用いる溶媒としては、反応に不活性な有機溶剤であればよく、脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶媒が用いられる。なお、該溶媒については、特開2007−145949号公報を参照できる。
【0015】
また、工程(B)で用いるアルキレンオキシドとしては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド等が挙げられる。このポリオール化反応(工程(B))は、重合反応(工程(A))の直後に行うのが好ましい。
【0016】
工程(C)の水添反応は、有機溶媒中、水素加圧下及び水添触媒の存在下、工程(B)で得られた共重合体ポリオールに水素添加することによって行われる。
本発明方法で用いる水添触媒は、パラジウム−カーボン、還元ニッケル、ロジウム系等不均一系触媒:又はナフテン酸ニッケル、オクタン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物あるいはナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト等の有機コバルト化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物もしくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムのような有機リチウム化合物を組合せた均一触媒が使用できる。共触媒として、テトラハイドロフラン、エチレグリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物を用いてもよい。
また、他の水添反応方法としては、例えば上記水添前の共重合体ポリオールを、ジシクロペンタジエニルチタンハライド、有機カルボン酸ニッケル、有機カルボン酸ニッケルと周期律表第I〜III族の有機金属化合物からなる水素化触媒、カーボン、シリカ、ケイソウ土等で担持されたニッケル、白金、バラジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム金属触媒やコバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム錯体等を触媒として、1〜100気圧に加圧された水素下、あるいはリチウムアルミニウムハイドライド、p−トルエンスルホニルヒドラジドの存在下、もしくはZr−Ti−Fe−V−Cr合金、Zr−Ti−Nb−Fe−V−Cr合金、LaNi5合金等の水素貯蔵合金の存在下、あるいは1〜100気圧に加圧された水素下で、水素化する方法、また、ジ−p−トリル−ビス(1−シクロペンタジエニル)チタニウム/シクロヘキサン溶液とn−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液を水素下で混合して得られる水素化触媒を用いて、1〜100気圧に加圧された水素下で、水素添加する方法等を挙げることができる。
【0017】
また、工程(C)の水添反応の温度は、通常、好ましくは50〜180℃、より好ましくは70〜150℃である。また、該水添反応は、好ましくは5〜100気圧(5,066.25〜101,325hPa)、より好ましくは10〜50気圧(10132.5〜50,662.5hPa)の水素圧にて行われる。反応温度及び水素圧がこの範囲であれば、触媒活性を高く維持でき、触媒の失活や副反応等が起こり難いため好ましい。
【0018】
((2)可塑剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物中の各成分を充分に混合するため、可塑剤を用いることができる。特に、30℃以下の温度にて熱硬化性樹脂組成物を調製する場合には、可塑剤を用いることが好ましく、通常、35℃以上(好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上)にて調製する場合には特に可塑剤を使用しなくてもよいことが多い。
可塑剤の使用量は、成分(1)及び(2)の合計量中、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。
可塑剤としては、ウレタン系樹脂組成物に用いられる通常の可塑剤を使用することができる。具体的には、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリオクチルなどのリン酸エステル系可塑剤;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル系可塑剤;水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等のポリアルキレン系可塑剤;パラフィン系可塑剤;ナフテン系可塑剤;パラフィン−ナフテン系混合可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ系可塑剤;塩素化パラフィン系可塑剤等が挙げられる。
【0019】
((3)脂肪族系ジイソシアネート又は芳香族系ジイソシアネート)
成分(3)としては、成分(1)との反応によりウレタンを形成し得る脂肪族系ジイソシアネート又は芳香族系ジイソシアネートを用いる。
脂肪族系ジイソシアネートとしては、直鎖状、分岐鎖状又は脂環式のいずれであってもよく、例えばイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等が好ましく挙げられる。
芳香族系ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が好ましく挙げられる。
成分(3)としては、黄変のし難さ及び耐候性等の観点から、脂肪族系ジイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートがより好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物中の成分(3)の配合量は、前記成分(1)及び(2)の合計量100質量部に対して0.1〜150質量部であり、均一な攪拌性の観点から、好ましくは0.5〜130質量部、より好ましくは1〜100質量部、より好ましくは1〜50質量部、より好ましくは1〜20質量部、さらに好ましくは1〜10質量部、特に好ましくは1〜5質量部である。
【0020】
(その他の成分)
−(4)触媒−
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、成分(4)として、成分(1)と成分(3)とのウレタン化反応用の触媒を用いることができる。ヒドロキシル基を有する化合物とジイソシアネート化合物との反応に用いられる公知のウレタン化触媒を使用できる。該触媒としては、具体的には、第三級アミン、有機金属触媒等が好ましく挙げられる。
第三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルオクタデシルアミン等のモノアミン;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、4,4’−オキシジエチレンジモルホリン等のジアミン;N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン等のトリアミン;N,N,N’,N’−テトラ(3−ジメチルアミノプロピル)メタンジアミン等のヘキサミン;N−メチルモルホリン、ピリジン等の環状モノアミン;トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)等の環状ポリアミン;N,N−テトラメチル−1,3−ジアミノ−2−プロパノール、トリエタノールアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の水酸基含有アミン等が挙げられる。
有機金属触媒としては、例えばジ(2−エチルヘキサン酸)錫、ジ[(Z)−9−オクタデセン酸]錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジメチル錫メルカプチド、ジブチル錫メルカプチド、ジオクチル錫メルカプチド、ジメチル錫カルボキシレート、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジオクチル錫チオカルボキシレート、ジメチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジマレエート、ジメチル錫ジラウレート等の錫化合物;プロピオン酸フェニル水銀等の水銀化合物;二オクタン酸鉛等の鉛化合物;酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩;炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸カルシウム等のアルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
成分(4)を使用する場合、前記成分(1)及び(2)の合計量100質量部に対して、ウレタン化反応効率の観点及び熱硬化性樹脂組成物の特性に悪影響を与えない観点から、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0021】
更に、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、その使用目的等により、必要に応じて、更に耐熱安定剤等の各種安定剤、ブロッキング防止剤、離型剤、老化防止剤、防曇剤、分散剤、顔料、難燃剤、接着付与剤等が含有されていてもよい。これらの含有量はいずれも、前記成分(1)及び(2)の合計量100質量部に対して、熱硬化性樹脂組成物の特性に悪影響を与えない観点から、好ましくは0.1〜10質量部である。
【0022】
なお、各成分の混合方法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、前記成分(1)及び必要に応じて成分(4)を含有する組成物と、成分(3)を含有する組成物との2液を調製し、該2液が成分(2)を含有していない場合には、好ましくは35℃以上に加熱しながら該2液を混練して本発明の熱硬化性樹脂組成物とすることができる。
こうして得られる本発明の熱硬化性樹脂組成物は、0〜30℃程度で放置しておいても硬化が進行し、ウレタン硬化物を得ることができるし、30〜80℃に加熱して硬化を促進させてウレタン硬化物を得てもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は0.01〜200Pa・s程度であり、加工性の観点からは、好ましくは0.1〜100Pa・sである。
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂組成物又はウレタン硬化物の損失正接(Tanδ)[−40〜80℃における最大値]は、0.55〜1.5程度であり、振動吸収特性に優れている。
本発明の熱硬化性樹脂組成物又はウレタン硬化物の透湿度は20g/m2・24h以下であり、例えばシール材やガスケットとしての機能が十分に発揮される。透湿度は、より好ましくは15g/m2・24h以下である。
更に、本発明の熱硬化性樹脂組成物及びウレタン硬化物は、優れた耐候性を有し、優れた耐湿熱性を併せ持つ。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得た硬化性樹脂組成物の20℃、40℃及び70℃での攪拌状態を下記評価基準に従って評価した。更に、各例で得た熱硬化性樹脂組成物の振動吸収特性、耐候性、耐湿熱性及び透湿性については、下記の方法に従って測定及び評価した。
【0025】
(攪拌状態)
各例で得た硬化性樹脂組成物を常温(20℃)で、又は40℃若しくは70℃に加温して、2000rpmの回転速度で1分間攪拌し、該組成物の攪拌状態を下記評価基準に従って評価した。
○:容易に攪拌でき、均一に混合されている。
△:若干攪拌し難く、熱硬化性樹脂組成物の一部が充分に混合されていない。
×:攪拌し難く、熱硬化性樹脂組成物の大部分が混合されていない。
【0026】
(振動吸収特性)
粘弾性測定装置[ティー・エー・インスツルメント社製、機種名「レオメトリックス」]を用い、各例で得た硬化性樹脂組成物の損失正接(tanδ)を、周波数1Hz、歪1%、−40℃→80℃(昇温速度3℃/分)の条件で測定し、振動吸収特性の指標とした。tanδが大きいほど、振動吸収特性に優れる。
【0027】
(耐候性)−サンシャインウェザー劣化試験−
スガ試験機株式会社製の試験装置「サンシャインスーパーウェザーメーター」を用いて、所定の試験時間後に各例で得た硬化性樹脂組成物の表面に生じたクラックを確認し、下記評価基準に従って評価した。
○:72時間後にもクラックなし
△:72時間後に若干の亀裂あり
×:72時間後に亀裂が多数あり
【0028】
(耐湿熱性)
JIS K6251に準拠し、各例で得た熱硬化性樹脂組成物から作成した厚さ1mmのダンベル状3号形の試験片を用いて、温度23±2℃の条件下での引っ張り破断強度(初期値)に対する、温度80℃及び湿度90%の条件下で1000時間放置した後の引っ張り破断強度の変動率を求め、下記評価基準に従って評価した。変動率が小さいほど、耐湿熱性に優れる。
○:±60%未満(変動率60%未満)
×:±60%以上(変動率60%以上)
【0029】
(透湿性)
各例で得た硬化性樹脂組成物から厚さ1mmのシートを作成し、JIS Z0208に準拠して、40℃及び相対湿度90%の条件にて透湿度を測定し、透湿性の指標とした。透湿度が小さいほど、透湿性が小さく好ましい。
【0030】
製造例1(SBRポリオールの製造)
アルゴン置換した内容積7Lの重合反応器に、脱水精製したシクロヘキサン1.5kg、22.9質量%の1,3ブタジエンモノマーのヘキサン溶液を2kg、20質量%のスチレンモノマーのシクロヘキサン溶液を0.765kg、1.6mol/Lの2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンのヘキサン溶液を209.4ml添加した後、0.5mol/Lのジリチウム重合開始剤を223.5ml添加して重合を開始させた。
重合反応器を50℃に昇温しながら、1.5時間重合を行った後、1mol/Lのエチレンオキシドのシクロヘキサン溶液を220.4ml添加し、さらに2時間撹拌した後、50mlのイソプロピルアルコールを添加した。重合体のヘキサン溶液をイソプロピルアルコール中に沈殿させ、十分に乾燥させて重合体ポリオールを得た。この重合体ポリオールBは両末端OH基スチレン−ブタジエン共重合体であり、スチレン含有量は25質量%であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GP)法を用いたポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は7,100、分子量分布は1.25であった。
【0031】
製造例2(水添SBRポリオールの製造)
製造例1で得た両末端OH基スチレン−ブタジエン共重合体120gを、十分に脱水精製したヘキサン1Lに溶解した後、予め別容器で調製したナフテン酸ニッケル、トリエチルアルミニウム、ブタジエンが1:3:3(モル比)の触媒液を共重合体溶液中のブタジエン部1,000molに対してニッケル1molになるように仕込んだ。密閉反応容器に水素を27,580hPa(400psi)に加圧添加して、110℃にて4時間水添反応を行った。その後、3規定濃度の塩酸で触媒残渣を抽出分離し、さらに遠心分離をして触媒残渣を沈降分離した。その後、得られた水添重合体ポリオールをイソプロピルアルコール中に沈殿させ、更に十分に乾燥を行い、水添スチレン/ブタジエン共重合体ポリオールを得た。
【0032】
実施例1〜4及び比較例1、2
表1に示す各成分を、表1に示す各配合量(単位:質量部)にて、表1に示す2液成分(A)と(B)に分けて準備し、それぞれプラネタリーミキサーにて充分に混練し、必要に応じて2液成分(A)を40℃又は70℃に加熱しながら2液成分を混練することにより、熱硬化性樹脂組成物を得た。得られた熱硬化性樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表中の注釈は、以下の通りに説明される。
*1:製造例1で得たスチレン/ブタジエン共重合体ポリオール、Mw=7,100
*2:製造例2で得た水添スチレン/ブタジエン共重合体ポリオール、Mw=7,500
*3:商品名「G−3000」、日本曹達株式会社製、Mn=2,600〜3,200
*4:商品名「OD−X−2560」、DIC株式会社製、Mn=2,000
*5:パラフィン系オイル、「ダイアナプロセスオイルPW380」、出光興産株式会社製
*6:「ニッカオクチックス鉛」(成分:二オクタン酸鉛、鉛含有量17%)、日本化学産業株式会社製
*7:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)[NCO%=50]
【0035】
表1より、本発明の熱硬化性樹脂組成物及びウレタン硬化物は、振動吸収特性、耐候性及び耐湿熱性に優れ、且つ透湿性が低いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の熱硬化性樹脂組成物及びウレタン硬化物は、制振材、ガスケット、粘着剤、封止材、ポッティング剤、塗料、シーリング材、防食材等や、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の改質剤又は反応性可塑剤等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)未水添又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール50〜100質量%及び(2)可塑剤50〜0質量%の合計100質量部と、(3)脂肪族系ジイソシアネート又は芳香族系ジイソシアネート0.1〜150質量部を含有してなる、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分(1)が、未水添又は水添スチレン−ブタジエン共重合体ポリオールである、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分(1)が水添スチレン−ブタジエン共重合体ポリオールである、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分(3)が脂肪族系ジイソシアネートである、請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記成分(2)が、成分(1)及び(2)の合計量に対して5〜50質量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、(4)触媒を、成分(1)及び(2)の合計量100質量部に対して0.01〜10質量部含有してなる、請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られるウレタン硬化物。

【公開番号】特開2012−224701(P2012−224701A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91973(P2011−91973)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】