説明

熱硬化性樹脂組成物

【課題】 優れた硬化性と貯蔵安定性を有し、硬化工程においては脱ガス量が少なく、かつ、硬化後に得られた硬化膜の耐熱性、可視光線透過率、および耐溶剤性などの諸物性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 下記の(A)、(B)成分からなる熱硬化性樹脂組成物。
(A)ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する化合物(a1)と二置換ビニルエーテル化合物(a2)とを反応させることにより得られるヘミアセタールエステル化合物
(B)多価オキシラン化合物または多価オキセタン化合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物に関し、特にLED、フォトトランジスタ、フォトダイオード等の光半導体素子、および液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス装置、固体撮像素子等に用いられるカラーフィルター等の用途に有用である熱硬化性樹脂組成物に関する。さらに、該樹脂組成物を用いて形成される光半導体装置とカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する化合物にアルキルビニルエーテルやα−不飽和環状エーテルを反応させて得られるヘミアセタールエステル化合物と、反応性官能基、例えば、エポキシ基、シラノール基、ヒドロキシル基、アルコキシシラン基などを有する化合物との組合せから成る熱硬化性組成物がフォトエレクトロニクス分野で盛んに用いられている(特許文献1、特許文献2)。これらの熱硬化性樹脂組成物は、貯蔵安定性、および塗工作業時の安定性に優れ、また得られる硬化膜が化学物性、物理物性、耐光性などに優れることから種々分野に広く利用されている。
例えば、特許文献3においては上記システムを利用した貯蔵安定性に優れ、硬化して優れた物性を示す光半導体封止用エポキシ樹脂組成物が開示されている。また、特許文献4においては貯蔵時、および塗工作業時の安定性に優れ、架橋密度が高く、硬化物が優れた物性を示すカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物が開示されている。さらに、特許文献5においてはインクジェットヘッドから吐出した際の直進性、および安定性に優れる熱硬化性のカラーフィルター用インクジェットインク組成物が開示されている。
【0003】
これらの光半導体封止用エポキシ樹脂組成物やカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物は、一般的に、劣化による製品寿命の低下を防止したり、製品の製造工程での各種処理による損傷を防止したりする目的で使用されている。また、熱硬化性のカラーフィルター用インクジェットインク組成物は、一般的に、製造工程の簡略化による歩留まりの向上、および製造コストの削減を目的として使用されている。
昨近、光半導体装置やおよび液晶表示関連装置の要求される性能がますます高度になるに伴って、それら装置に使用される材料にもより高度な性能が強く求められるようになってきている。なかでも、光半導体装置に対しては、透明性が高く、かつ硬化工程での脱ガス量が少ない光半導体用封止剤が熱望されている。特に、砲弾型のLED素子ランプでは、LEDチップに使用する封止剤が厚膜となるため、より高い可視光透過率が望まれている。また、厚膜化された場合、硬化工程での脱ガス量が多いと硬化膜中に気泡が残存してしまうことがある。従って、硬化工程での脱ガス量が少ないことが非常に重要視されつつある。
また、液晶表示関連装置では、高画質化・高精彩化がよりいっそう熱望されており、この要求に伴い、各種部材がより過酷な製造工程に曝される機会が増えてきている。特に、透明電極の形成工程は、透明電極の低抵抗化、および薄膜化を目指し、より高温でスパッタリングをおこなうケースが増えてきている。これに伴い、カラーフィルター用部材であるRGBレジスト層、樹脂ブラックマトリックス、およびカラーフィルター保護膜などにもより優れた耐熱性が要望されてきている。例えば、RGBレジスト層や樹脂ブラックマトリックスの耐熱性が不足していると、これらの層からの脱ガスの影響で、RGBレジスト層や樹脂ブラックマトリックス上に積層されるカラーフィルター保護膜などとの密着性が低下することがある。また、カラーフィルター保護膜の耐熱性が不足していると、この保護膜から発生する脱ガスの影響で、透明電極をスパッタ形成する際に真空中のアルゴンガス/酸素ガス比率が異常となる。その結果、カラーフィルター保護膜上に形成された透明電極の表面抵抗率が規格許容外となることがある。
しかしながら、特許文献3〜5に開示された技術では、上述した近年の多様化する要求を満足するには、不十分な場合があった。
【0004】
【特許文献1】特開平4−218561号公報
【特許文献2】特開平4−227763号公報
【特許文献3】特開2003−277483号公報
【特許文献4】特開2001−350010号公報
【特許文献5】特開2003−66223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、優れた硬化性と貯蔵安定性を有し、硬化工程においては脱ガス量が少なく、かつ、硬化後に得られた硬化膜の耐熱性、可視光線透過率、および耐溶剤性などの諸物性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、前記熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物を光半導体封止用封止材として適用したLEDチップ、フォトトランジスタ、およびフォトダイオード等の光半導体装置を提供することにある。
さらに、本発明の第3の目的は、前記熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物を保護膜、および着色画像形成用バインダーとして適用した液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス装置、固体撮像素子等に適用可能なカラーフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の置換構造を有するヘミアセタールエステル化合物(A)と、多価オキシラン化合物または多価オキセタン化合物(B)とからなる熱硬化性樹脂組成物が、硬化工程における脱ガス量が少なく優れた耐熱性を有することの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔3〕である。
〔1〕下記の(A)、(B)成分;
(A)ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する化合物(a1)と下記の式(1)で表される二置換ビニルエーテル化合物(a2)とを反応させることにより得られる下記の式(2)で表されるヘミアセタールエステル基を有するヘミアセタールエステル化合物
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表すか、R、Rが隣接する炭素原子と一緒になってシクロアルキルを形成する。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R、R、Rは、それぞれ式(1)におけるR、R、Rと同じである。)
(B)多価オキシラン化合物または多価オキセタン化合物
からなり、(A)成分のヘミアセタールエステル基のモル当量Nと(B)成分のオキシラン基とオキセタン基のモル当量の合計Nとの比率N/Nが0.2〜2.0である熱硬化性樹脂組成物。
【0012】
〔2〕前記の比率N/Nが0.6〜1.2である前記の〔1〕に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の層を有する光半導体装置。
〔3〕前記の比率N/Nが0.4〜1.0である前記の〔1〕に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の層を有するカラーフィルター。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、一般式(2)で表されるヘミアセタールエステル基を有するヘミアセタールエステル化合物(A)を含有させることで、貯蔵安定性に優れ、かつ、樹脂硬化物が耐薬品性や可視光線透過率といった基本性能を備えた上で、加熱工程での脱ガス量が少ないといった優れた耐熱性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明において、光半導体封止用封止剤とは、LEDチップ、フォトトランジスタ、およびフォトダイオード等の光半導体の素子に用いる封止剤に用いるものを意味する。また、本発明で用いるRGBレジスト層、および樹脂ブラックマトリックとは、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス装置、および固体撮像素子等のカラーフィルターに用いるカラーレジスト層に用いるものを意味する。さらに、本発明で用いるカラーフィルター保護膜とは、カラーフィルターを有する液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス装置、および固体撮像素子等の保護膜に用いるものを意味する。
また、本発明において配合割合を特定するために、固形分とは、溶剤を除く全ての配合成分の総和をいうものであり、液状のエポキシ基含有化合物等の成分も固形分に含まれる。
【0015】
1.熱硬化性樹脂組成物
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、次に示すヘミアセタールエステル化合物(A)と、多価オキシラン化合物または多価オキセタン化合物(B)からなる。
<ヘミアセタールエステル化合物(A)>
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いられるヘミアセタールエステル化合物(A)は、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する化合物(a1)と一般式(1)で表される二置換ビニルエーテル化合物(a2)とを反応させることにより得られ、一般式(2)で表されるヘミアセタールエステル基を有する。
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表すか、R、Rが隣接する炭素原子と一緒になってシクロアルキルを形成する。)
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、R、R、Rは、それぞれ式(1)におけるR、R、Rと同じである。)
本発明に用いるヘミアセタールエステル化合物(A)は、単独であるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
一般式(1)で表される基を有するヘミアセタールエステル化合物(A)は、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する化合物(a1)と一般式(1)で表される基を有する二置換ビニルエーテル化合物(a2)とを反応させることにより得られる。ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する化合物(a1)のヒドロキシル基を有する化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,3−ブタンジオールなどのアルキレングリコール;ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコール類;これらのアルキレングリコール類または多価アルコール類とγ−ブチロラクトンやε−カプロラクトンなどのラクトン化合物との開環付加体;該多価アルコール類とジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物とのアルコール過剰下での付加体;及び該多価アルコール類とエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物とのアルコール過剰下での付加体;さらには1分子中にヒドロキシル基を2個以上有する重量平均分子量(Mw)3,000以下のポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリビニルアルコールなどを挙げることができる。
【0020】
次に、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する脂肪族または芳香族の化合物(a1)のカルボキシル基を有する脂肪族または芳香族の化合物の具体例としては、イタコン酸、マレイン酸、コハク酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸、およびこれらの水素化物;前記記載の多価アルコール類と無水フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、1,3,4−シクロヘキサントリカルボン酸−3,4−無水物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などの酸無水物のハーフエステル体などを挙げることができる。
【0021】
また、二置換ビニルエーテル化合物(a2)の具体例としては、1−メトキシ−2−メチルプロペン、1−メトキシ−2−メチル−1−ブテン、1−メトキシ−2−エチル−1−ブテン、1−エトキシ−2−メチルプロペン、1−エトキシ−2−メチル−1−ブテン、1−エトキシ−2−エチル−1−ブテン、1−プロポキシ−2−メチルプロペン、1−プロポキシ−2−メチル−1−ブテン、1−プロポキシ−2−エチル−1−ブテン、1−ブトキシ−2−メチルプロペン、1−ブトキシ−2−メチル−1−ブテン、1−ブトキシ−2−エチル−1−ブテンなどの脂肪族の化合物;1−メトキシ−2,2−ジフェニルエテン、1−エトキシ−2,2−ジフェニルエテン、1−プロポキシ−2,2−ジフェニルエテン、1−ブトキシ−2,2−ジフェニルエテンなどの芳香族の化合物;(メトキシメチレン)シクロペンタン、(エトキシメチレン)シクロペンタン、(プロポキシメチレン)シクロペンタン、(ブトキシメチレン)シクロペンタン、(メトキシメチレン)シクロヘキサン、(エトキシメチレン)シクロヘキサン、(プロポキシメチレン)シクロヘキサン、(ブトキシメチレン)シクロヘキサンなどの環式構造を有する化合物などを挙げることができる。
【0022】
また、二置換ビニルエーテル化合物(a2)の合成方法の具体例としては、エーテル基含有アルデヒドまたはケトンをホスホランと反応させる反応(ウィッティヒ反応)などを挙げることができる。
本発明に用いる二置換ビニルエーテル化合物(a2)は、前記の式(1)において、RとRの炭素数の合計としては、炭素数2〜10、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜3である。また、Rの炭素数としては、炭素数1〜10、好ましくは2〜6、より好ましくは3〜4である。
具体的には、1−プロポキシ−2−メチルブテン、1−プロポキシ−2−メチルプロペン、1−ブトキシ−2−メチルブテンが合成のし易さ、ヒドロキシル基またはカルボキシル基との反応性、および熱硬化性組成物の耐熱性などの面から好ましく挙げられる。
【0023】
また、一般式(2)で表される基を有するヘミアセタールエステル化合物(A)としては、カルボキシル基を有する化合物(a1)と二置換ビニルエーテル化合物(a2)とを反応させることにより得られる前記の式(2)で表される基を有するヘミアセタールエステル化合物(A)が熱硬化性樹脂組成物の硬化性、および溶剤揮発時の流動性の面などから好ましい。さらに詳しく説明すると、カルボキシル基を有する化合物(a1)としては、シクロヘキサントリカルボン酸、およびトリメリット酸が熱硬化性樹脂組成物の硬化性の向上、および熱硬化性樹脂硬化物の可視光透過率向上の面などから好ましく、二置換ビニルエーテル化合物(a2)としては、1−プロポキシ−2−メチルブテン、1−プロポキシ−2−メチルプロペン、1−ブトキシ−2−メチルブテンが硬化工程での脱ガス量が少なく耐熱性の向上の面などから好ましい。
ヘミアセタールエステル化合物(A)の配合割合は、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは35〜75重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。ヘミアセタールエステル化合物(A)の配合割合が低すぎる場合には熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物の硬度が低下する恐れがあり、高すぎるとカルボン酸過剰による透明性低下や密着性の性能低下が発生することがある。
【0024】
<多価オキシラン化合物または多価オキセタン化合物(B)>
本発明の熱硬化型熱硬化性樹脂組成物に用いる多価オキシラン化合物または多価オキセタン化合物(B)として、エポキシ樹脂またはオキセタン樹脂(b01)、あるいはエポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(b02)が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記エポキシ樹脂またはオキセタン樹脂(b01)のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン環含有エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、DPP(ジ−n−ペンチルフタレート)型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートやビニルシクロヘキセンジエポキサイド等の脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロ無水フタル酸のジグリシジルエステル等の多塩基酸のポリグリシジルエステル、ブチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等のエポキシ基を1個有するグリシジルエーテル等が挙げられる。また上記エポキシ樹脂の核水添物も使用できる。
【0026】
上記エポキシ樹脂またはオキセタン樹脂(b01)のオキセタン樹脂としては、3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタン類から誘導されるオキセタン化合物が挙げられる。例えば、3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタン類とヒドロキシル化合物とのエーテル化物、3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタン類とカルボキシル化合物のエステル化物などが挙げられる。
なお、エポキシ樹脂またはオキセタン樹脂(b01)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フルオレン環含有エポキシ樹脂、および3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタン類とヒドロキシ化合物のエステル化物が密着性、および光線透過率などの面から好ましい。
【0027】
エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(b02)は、下記の式(3)〜(6)で表される構成単位を有する。
【0028】
【化5】

【0029】
ここで、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基を示し、p=1〜8の整数を示す。
【0030】
【化6】

【0031】
ここで、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、Rは−OCH−基または−CH−基、Rは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基を示し、q=0〜7の整数を示す。
【0032】
【化7】

【0033】
ここで、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示し、r=1〜8の整数を示す。
【0034】
【化8】

【0035】
ここで、R10、R11、およびR12は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、jは1〜5の整数を示す。
エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(b02)は、その構成単位として、さらに下記の式7〜9で表される構造を有していてもよい。
【0036】
【化9】

【0037】
ここで、R13は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、R14は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、アリール基、アリールオキシ基、または芳香族ポリアルキレングリコール残基を示す。
【0038】
【化10】

【0039】
ここで、R16は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、R17は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または芳香族炭化水素基を示す。
【0040】
【化11】

【0041】
ここで、R17は、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、または芳香族炭化水素基を示す。
前記の式3〜6で表される構成単位は、それぞれ下記式10〜13で表される単量体から誘導される。
【0042】
【化12】

【0043】
ここで、R、Rおよびpはそれぞれ、式(3)におけるものと同じである。)
【0044】
【化13】

【0045】
ここで、R〜Rおよびqはそれぞれ、式(4)におけるものと同じである。)
【0046】
【化14】

【0047】
ここで、Rおよびrはそれぞれ、式(5)におけるものと同じである。
【0048】
【化15】

【0049】
ここで、R10〜R12およびjはそれぞれ、式(6)におけるものと同じである。
前記の式(10)〜(13)で表される単量体は、重合体(b02)中にエポキシ基またはオキセタニル基を導入するために用いられる。
前記の式(3)および式(10)において、RおよびRは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは水素原子またはメチル基である。炭素数が5を超えると重合性の点で不都合となる。また、pは1〜5の整数であり、p=1がより好ましい。pが5を超えると、硬化後に硬化物のTgをはじめ十分な機械物性を得ることができない。式(10)で表される単量体としては、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグルシジル(メタ)アクリレートを例示することができ、その中ではグリシジルメタクリレート(GMA)が他種単量体との共重合性、および入手性の面等から好ましい。
(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートのいずれであっても良いことを意味する。
【0050】
前記の式(4)および式(11)において、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基である。炭素数が5を超えると重合性の点で不都合となる。また、Rは−CHO−基または−CH−基、Rは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、好ましくは−CH−基である。また、qは1〜7の整数であり、好ましくはq=1である。qが7を超えると、硬化後に硬化物のTgをはじめ十分な機械物性を得ることができない。式(11)で表される単量体としては、具体的には、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル,α−メチル−o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−p−ビニルベンジルグリシジルエーテルを例示することができ、その中ではo−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルが入手性の面等から好ましい。
前記の式(5)および式(12)において、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基である。炭素数が5を超えると重合性の点で不都合となる。また、rは1〜8の整数であり、好ましくはr=1である。rが8を超えると、硬化後に硬化物のTgをはじめ十分な機械物性を得ることができない。式(12)で表される単量体としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートが、硬度等、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の物性面から好ましい。
【0051】
前記の式(5)および式(13)において、(R10およびR11は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基である。炭素数が5を超えると重合性や反応性の点で不都合となる。また、R12は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは水素原子である。炭素数が5を超えると重合性の点で不都合となる。また、jは1〜5の整数であり、好ましくはj=1である。jが5を超えると、硬化後に硬化物のTgをはじめ十分な機械物性を得ることができない。式(13)において好ましいのは、入手性の面から、メタクリル酸3−メチル−3−オキセタン−イルメチルエステルである。
また式(7)〜(9)で表される構成単位は、下記式(14)〜(16)で表される単量体から誘導される。
【0052】
【化16】

【0053】
ここで、R13およびR14はそれぞれ、式(7)におけるものと同じである。
【0054】
【化17】

【0055】
ここで、R15およびR16はそれぞれ、式(8)におけるものと同じである。
【0056】
【化18】

【0057】
ここで、R17は、式(7)におけるものと同じである。
前記の式(7)および式(14)において、R13は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは水素原子またはメチル基である。また、R14は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、またはポリアルキレングリコール残基、もしくは主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基であり、前記の主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基は、付加的な構造、例えば環内二重結合、炭化水素基の側鎖、スピロ環の側鎖、環内架橋炭化水素基等を含んでいてもよい。R14として、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シクロヘキシル基、またはジシクロペンタニル基である。R13の炭素数が5を超えたりR14の炭素数が12を超えたりすると、反応性が低下してしまい不都合となる。
前記の式(14)で表される単量体としては、具体的には、シクロヘキシルメタクリレート、およびジシクロペンタニルメタクリレートが硬度、耐水性、および耐熱性等、熱硬化性樹脂硬化物の物性の面から好ましい。
【0058】
ここで、R15とR16はそれぞれ、式(8)におけるものと同じである。
前記式(8)および(15)において、R15は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは水素またはメチル基であり、R16は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、シロキシアルキル基、またはアリール基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基である。
前記の式(15)で表される単量体としては、具体的には、スチレンが他種単量体との共重合性、および入手性の面等から好ましい。
【0059】
ここで、R30は、式(9)におけるものと同じである。
前記式(9)および(16)において、R17は、水素原子または炭素数1〜12のシクロアルキル基、アリール基、またはアルカリール基、好ましくはシクロヘキシル基、およびフェニル基である。炭素数が12を超えると重合性の点で不都合となる。
前記の式(16)で表される単量体としては、具体的には、N−シクロヘキシルマレイミド、およびN−フェニルマレイミドが硬度、および耐熱性等、熱硬化性樹脂硬化物の物性面から好ましい。
前記の式(14)〜(16)で表される単量体を用いることにより、本発明の熱硬化性樹脂硬化物に充分な硬度、耐水性、耐熱性、および耐薬品性を付与することができる。
【0060】
エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(b02)は、単独共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。
エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(b02)中の、前記の各構成単位の割合は、式(3)〜(6)で示される構成単位を10〜90重量%、、好ましくは25〜70重量%とし、式(7)〜(9)で示される構成単位のいずれか、あるいは2種類以上を10〜90重量%、好ましくは25〜70重量%である。式(3)〜(6)の構成単位の割合が上記範囲内にあれば、硬化の反応点が十分となり高い架橋密度を得ることができ、同時に残りの、式(7)〜(9)の構成成分の割合が嵩高の骨格の割合が十分になり硬化収縮などを抑制できる。
また、エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(b02)は、式(3)〜(6)あるいは式(7)〜(9)以外の構成単位を共重合成分として使用してもよいが、上記の式(3)〜(9)の構成単位による重合体物性を著しく変えないために、その量は10%以下とするのが好ましい。
【0061】
エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(b02)の重量平均分子量(Mw)は、3,000〜300,000であり、好ましくは5,000〜30,000である。重量平均分子量(Mw)が上記範囲内にあれば、溶剤揮発後の塗布層のタック(ベタツキ)の発生を防止でき、また、均一な膜厚を容易に得ることができる。重量平均分子量(Mw)が3,000未満であると硬化して得られる熱硬化性樹脂硬化物に硬度の低下と溶剤揮発後の塗布層のタック(ベタツキ)が発生し、300,000を上回ると塗布・硬化後の熱硬化性樹脂硬化物の外観が低下する恐れがある。なお、エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(b02)の重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0062】
また、本発明の熱硬化性組成物におけるエポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(b02)のエポキシ当量またはオキセタニル当量は、140〜1,000g/molであり、好ましくは200〜550g/molである。エポキシ当量またはオキセタニル当量が140g/mol未満であると塗布、硬化後の熱硬化性樹脂硬化物が強靭性を失う傾向があり、1,000g/molを上回ると熱硬化性樹脂硬化物の硬度の低下が発生する可能性がある。さらに、高い密着性が要求される用途の場合には、熱硬化性樹脂硬化物に強靭性が求められるため、250〜550g/molであることが好ましい。エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(b02)のエポキシ当量またはオキセタン当量が250g/mol以下であると、強靭性が低くなり、密着性試験において縁欠けが生じる可能性が高い。この際のエポキシ当量またはオキセタン当量とは樹脂についてのエポキシ基またはオキセタニル基の当量を指し、JIS K 7236 :2001「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」に準じて測定される。
本発明の熱硬化性組成物において、エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(b02)は、分子量やコ単量体種の異なる重合体を2種類以上混合して使用しても良い。
多価オキシラン化合物または多価オキセタン化合物(B)の配合割合は、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは25〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%である。多価オキシラン化合物または多価オキセタン化合物(B)の配合割合が低すぎる場合には熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物の密着性等の性能が低下し、高すぎると樹脂硬化物の硬度が低下する恐れがある。
【0063】
<上記(A)、(B)成分の配合割合>
本発明において、ヘミアセタールエステル基は加熱によってヒドロキシル基またはカルボキシル基を再生し、再生したヒドロキシル基またはカルボキシル基がオキシラン基またはオキセタン基と反応し硬化物を生成するので、ヘミアセタールエステル基のモル当量Nは、再生するヒドロキシル基とカルボキシル基のモル当量の合計に等しく、N/Nは酸−エポキシ反応における酸−エポキシ当量比と同様、硬化剤/主剤の配合を決定するするモル当量比である。
一般にビニルエーテル等によってブロック化された硬化剤を用いた熱硬化性樹脂組成物においては、加熱硬化時には、脱保護化によってブロック剤が脱離するとともに、その一部が硬化剤−主剤間の結合反応に関与して再結合しアセタール類似構造を生成するとされている。
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、ブロック剤である二置換ビニルエーテル化合物(a2)が置換基のビニル基上の電子密度を高める効果によりカチオン重合性が高くなっており、これを多価オキシラン化合物または多価オキセタン化合物(B)と組合せて用いる条件下で特に、脱離したブロック剤の上記の再結合反応やブロック剤同士のカチオン重合反応が起こりやすくなる。そのため、加熱硬化時にブロック剤の揮散による脱ガス量も少なく、かつ硬化後の硬化膜も耐熱性に優れる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、ヘミアセタールエステル化合物(A)と、多価オキシラン化合物または多価オキセタン化合物(B)の配合量は、上記の反応がうまく進行するよう、(A)成分の前記の式(2)で表されるヘミアセタールエステル基のモル当量Nと(B)成分のオキシラン基とオキセタン基のモル当量の合計Nとの比率N/Nが0.2〜2.0、好ましくは0.4〜1.2、より好ましくは0.6〜1.0になるように調整される。
前記の比率N/Nが0.2未満であると熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物の硬度が低下する恐れがあり、2.0を上回るとカルボン酸過剰による透明性低下や密着性の性能低下が発生することがある。
【0064】
<その他の成分>
<有機溶剤>
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、粘度等を調整する目的で有機溶剤を添加して使用しても良い。この際に使用する有機溶剤としては、芳香族炭化水素、エーテル類、エステルおよびエーテルエステル類、ケトン類、リン酸エステル類、ニトリル類、非プロトン性極性溶媒、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類等が挙げられる。
これらの有機溶剤は1種単独または2種以上を適宜組み合わせて使用できる。
また、これら有機溶剤の添加量については特に制限はされず、所定膜厚、表明の平滑性、および成膜方法等に応じ、任意の量添加し、塗布適性を付与することができる。通常は、本発明の熱硬化性樹脂組成物100重量部に対して、5〜2000重量部を添加して使用される。
【0065】
<その他の添加剤>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤、表面調整剤、密着性向上助剤、着色剤、粘度調整剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、炭酸ガス発生防止剤、可撓性付与剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、表面処理剤、難燃剤、帯電防止剤、イオントラップ剤、摺動性改良剤、各種ゴム、無機充填材、有機ポリマービーズ、揺変性付与剤、表面張力低下剤、消泡剤、光拡散剤、抗酸化剤、蛍光剤、その他の成分を添加して使用することができる。
【0066】
<熱硬化性樹脂組成物の製造方法>
以下に本発明の熱硬化性樹脂組成物の配合、攪拌、分散の手法に関して説明する。
本発明の樹脂組成物において、上記(A)、および(B)の成分をはじめとする各成分を一括配合しても良いし、各成分を溶剤に溶解した後に逐次配合しても良い。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。例えば、全成分を同時に溶剤に溶解して樹脂組成物を調製してもよいし、必要に応じては各成分を適宜2つ以上の溶液としておいて、使用時(塗布時)にこれらの溶液を混合して樹脂組成物として調製してもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記(A)、および(B)の成分をはじめとする各成分混合後の攪拌に関しては、羽根形撹拌機、デソルバー、ニーダー、ボールミル混和機、ロール分散機等を用いて撹拌をおこなってもよいし、各成分をガロン瓶等の容器に配合してから容器ごとミックスローターで回転させて攪拌してもよい。混合および攪拌の温度は、配合成分にもよるが、通常、結露や溶剤の揮散を避けるために、10〜60℃が好ましい。
【0067】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に粘度調整剤やフィラーを添加する場合には、モーターミル、シェイカー等の高シェア分散機を用いた分散を行っても良い。この際には、本発明における上記(A)、および(B)の成分をはじめとする各成分をバインダーとしたマスターバッチを予め作製しておき、使用時に配合するなどといった手法も取ることができる。ただし、本発明に用いるヘミアセタールエステル化合物(A)は熱により脱ブロック反応が進行するため、分散等の操作により本発明の熱硬化性樹脂組成物を調製する際には、60℃以上に加熱しないよう配慮が必要となる。
【0068】
2.光半導体装置
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化させて層を形成し、光半導体装置に用いることができる。
すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物をオーバーコート、およびディップコートなどにより塗布し硬化させたり、容器内に前記組成物を入れ、その中にLED素子をディップしそのまま硬化させたりする方法などにより、光半導体装置を作製することができる。
光半導体装置の用途においては、透明性がより厳しく求められるので、この用途に用いる場合には、本発明の熱硬化性樹脂組成物中のヘミアセタールエステル化合物(A)と、多価オキシラン化合物または多価オキセタン化合物(B)の配合量は、前記のブロック剤の再結合反応がより進行しやすいように、前記の比率N/Nが、好ましくは0.6〜1.2、より好ましくは0.8〜1.0になるように調整される。このように調製された本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物の層を有する光半導体装置は、高い可視光透過率、および耐熱性の基本性能を備え、厚膜化時にも硬化膜中での気泡の残存が見られない。
【0069】
3.カラーフィルター
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化させて層を形成し、カラーフィルターに用いることができる。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化させ、RGBレジスト層、樹脂ブラックマトリックス、あるいはカラーフィルター保護膜等のカラーフィルター要素となすことができる。
カラーフィルターの用途においては、密着性がより厳しく求められるので、この用途に用いる場合には、本発明の熱硬化性樹脂組成物中のヘミアセタールエステル化合物(A)と、多価オキシラン化合物または多価オキセタン化合物(B)の配合量は、前記のブロック剤のカチオン重合反応がより進行しやすいように、前記の比率N/Nが、好ましくは0.4〜1.0、より好ましくは0.6.〜0.8になるように調整される。このように調製された本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物の層を有するカラーフィルターは、耐溶剤性などの基本性能を備え、カラーフィルター要素の密着性が十分であり、透明電極形成後の表面抵抗率にばらつきがなく、光学的性能と電気的性能の双方に優れる。
【実施例】
【0070】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
以下に本実施例および比較例で用いた測定方法、評価方法を示す。
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製ゲルパミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、カラムとして昭和電工(株)製SHODEX K−801を用い、THFを溶離液とし、RI検出器により測定してポリスチレン換算により求めた。
<粘度>
粘度は、循環式恒温水浴を装備したB型粘度計(東機産業(株)製)を用いて温度20℃で測定した。
<エポキシ当量>
エポキシ当量は、JIS K 7236:2001「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」によって規定される方法によって測定した。
【0071】
<400nm光線透過率>
各樹脂組成物の有機溶剤希釈物を孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過した後、スピンコーターを用いてガラス基板(日本電気硝子(株)製;商品名;OA−10、無アルカリガラス)に回転塗布した。塗布後、ガラス基板を80℃のクリーンオーブン中にて5分間乾燥処理後、230℃のクリーンオーブン中にて30分間処理し、塗膜を硬化させた(膜厚:2.0μm)。ガラス基板をリファレンスとして、硬化させた塗膜の400nm光線透過率を測定した。400nm光線透過率が95%以上の時に良好と判定した。
<耐熱性試験>
上記透過率の評価の際に得られた塗膜をカッターにてガラス基板より削り取り、水分除去のため120℃で1 時間乾燥処理をおこなった。その後、空気中で以下のプログラムで熱重量分析をおこなった。熱重量分析のプログラムは次の通りである。
1.23℃から250℃まで10℃/min.で昇温
2.250℃で60分保持
250℃で60分間保持した塗膜の重量減少率が3.0%以下の時に良好と判定した。
<鉛筆硬度>
上記透過率の評価の際に得られた塗膜をJIS K 5600−5−4:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」のうち、手掻き法で鉛筆硬度の評価をおこなった。3H以上の鉛筆硬度を示す時に良好と判定した。
<密着性>
上記透過率の評価の際に得られた塗膜を温水に浸漬(80℃×1時間)した後、JIS K5600−5−6「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」にて、ガラス基板との密着性の評価をおこなった。温水で処理した塗膜に剥離が見られない場合を良好と判定した。
【0072】
(合成例−1:1−プロポキシ−2−メチルプロペン(a−1)の合成)
<ホスホニウム塩の作成>
窒素下、トリフェニルホスフィン262重量部と2-クロロプロパン79重量部を無水アセトニトリル2Lに溶解し、16時間攪拌下還流させた後、溶剤を減圧で留去して油状物を得た。この中にベンゼンを加え、生じる結晶を吸引濾過して集め、最後エーテルで洗浄し乾燥させホスホニウム塩239重量部を得た。
<ウィッティヒ反応>
窒素下、無水ジメチルスルホキシド(DMSO)600mLを油浴中で加熱し75℃にし、この中にNaH19gを激しい攪拌下に少量ずつ加えた。この溶液に氷冷下で内温を25℃に保ちながらホスホニウム塩170重量部の無水DMSO(900mL)溶液を滴下した。滴下終了後、20分攪拌を続けた後、蟻酸プロピル267重量部の無水DMSO(300mL)溶液を内温25℃に保ちつつ滴下した。滴下終了後、さらに室温で3時間攪拌した。この反応物を抽出、カラムクロマトで精製し、最後に蒸留することで、目的とする1−プロポキシ−2−メチルプロペン51重量部を得た。
(合成例−2〜6)
合成例−1と同様の方法でa−2〜6の化合物を得た。各原料の仕込量を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表中の略号は以下の通りである。
a−1:1−プロポキシ−2−メチルプロペン
a−2:1−ブトキシ−2−メチルプロペン
a−3:1−エトキシ−2−メチルプロペン
a−4:1−メトキシ−2−メチルプロペン
a−5:1−プロポキシ−2−メチルブテン
a−6:1−プロポキシ−2,2−ジフェニルエテン
【0075】
(合成例−7:多価カルボン酸誘導体(b−1)の合成)
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)37重量部、三菱瓦斯化学(株)製トリメリット酸(以下、TMA)19重量部、1−プロポキシ−2−メチルプロペン(a−1)44重量部を仕込み、攪拌しながら加熱し80℃に昇温した。次いで、温度を保ちながら攪拌し続け、混合物の酸価が2.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、溶液の酸価0.84mgKOH/gの一般式(2)で表されるヘミアセタールエステル基を有するヘミアセタールエステル化合物(A)の合成(b−1)の溶液を得た。
なお、酸価及び全酸当量は、JIS K 0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」の加水分解酸価測定によって測定した。
(合成例−8〜15)
合成例−7と同様の方法でb−2〜8の化合物を得た。各原料の仕込み量を表3に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
表中の略号は以下の通りである。
NPVE:n−プロピルビニルエーテル
TMA:トリメリット酸
CHTA:シクロヘキサントリカルボン酸
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MMBA:3−メチル−3−メトキシブチルアセテート
BCA:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
<重合例−1:エポキシ基またはオキセタニル基を有する重合体(c−1)の合成>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた容量500mLの4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)を160重量部仕込み、攪拌しながら加熱して80℃に昇温した。次いで、80℃の温度でグリシジルメタクリレート(以下、GMA)100重量部、スチレン(以下、St)100重量部、日本油脂(株)製の過酸化物系重合開始剤「パーヘキシルO(以下、PHO)(;商品名、純度93%)」16重量部、およびPGMEA24重量部を予め均一混合したもの(滴下成分)を、2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、80℃の温度を7時間維持した後、反応を終了した。重量平均分子量(Mw)14,000、固形分53%、粘度2.0Pa・s(20℃)および溶液のエポキシ当量588g/molのエポキシ基含有重合体溶液(エポキシ基含有重合体のエポキシ当量312g/mol)を得た。
(重合例−2〜8)
重合例−1と同様の方法でc−2〜8の重合体を得た。各原料の仕込み量を表4に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
GMA:グリシジルメタクリレート(日本油脂(株)製)
OXE−30:メタクリル酸3−メチル−3−オキセタン−イルメチルエステル(大阪有機化学工業(株)製)
M−100:3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製)
MGMA:メチルグリシジルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製)
St:スチレン
DCPMA:ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成工業(株)製)
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート(日本油脂(株)製)
CHMI:シクロヘキシルマレイミド(日本油脂(株)製)
PHI:パ−ヘキシルI(日本油脂(株)製)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MMBA:3−メチル−3−メトキシブチルアセテート
BCA:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
(実施例1〜12)
表4に示す配合割合で、各成分を混合後、十分に攪拌し樹脂組成物の有機溶剤希釈物を得た。併せて性能の評価結果を表4に示す。
(比較例1〜3)
表5に示す配合割合で、各成分を混合後、十分に攪拌し樹脂組成物の有機溶剤希釈物を得た。併せて性能の評価結果を表5に示す。
【0080】
なお、表4、5中の略号は以下の通りである。
Ep828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製商品名「エピコート828」、エポキシ当量190(g/mol)、分子量約380
EX1040:フルオレン系特殊エポキシ樹脂、大阪ガス(株)製商品名「オンコートEX1040」、エポキシ当量210(g/mol)、分子量約500
Ep157:ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製商品名「エピコート157」、エポキシ当量210(g/mol)、分子量約2,100
YX8000:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製商品名「YX8000」、エポキシ当量205(g/mol)、分子量約350
OXT121:1,4−ビス(((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン、東亜合成(株)製、商品名「アロンオキセタンOXT−121」。
OXT221:ビス((3−エチル−3−オキセタニル)メチル)エーテル、東亜合成(株)製、商品名「アロンオキセタンOXT−221」。
KBM403:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製商品名「KBM−403」
KBE403:γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製商品名「KBE−403」
【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
表4の結果より、実施例1〜12は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いることにより、基本性能を満たした上で耐熱性の性能が極めて優れており、本発明の目的の効果を申し分なく得られていることがわかった。
また、これらの熱硬化性樹脂組成物は、光半導体装置、およびカラーフィルター用途への適用に最適であることがわかった。
これに対し、比較例1〜3は、一般式(2)で表されるヘミアセタールエステルを有するヘミアセタールエステル化合物(A)を使用していないため優れた耐熱性を有する熱硬化性樹脂組成物を得ることができなかった。
<光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物としての評価>
表4に示した実施例7、9の熱硬化性樹脂組成物を光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物(封止材)として用い、0.5×0.5mmのGaAs素子を直径5mmのパイロットランプ型にポッティング後、150℃、3時間で硬化して、光半導体装置各50個を作成した。光半導体全数の封止材中に気泡残存は全く見られなかった。
<カラーフィルター用熱硬化性樹脂組成物としての評価>
実施例3、4の熱硬化性樹脂組成物に着色材、および分散剤を混合した熱硬化性樹脂組成物をカラーフィルター用インクジェットインク組成物として、実施例1、11の熱硬化性樹脂組成物をカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物として使用した結果、十分なRGBレジスト層/カラーフィルター保護膜間、および樹脂ブラックマトリックス/カラーフィルター保護膜間の密着性を有し、かつカラーフィルター保護膜上に形成された透明電極の表面抵抗率も設計通りであるカラーフィルターを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)、(B)成分;
(A)ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有する化合物(a1)と下記の式(1)で表される二置換ビニルエーテル化合物(a2)とを反応させることにより得られる下記の式(2)で表されるヘミアセタールエステル基を有するヘミアセタールエステル化合物
【化1】

(式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表すか、R、Rが隣接する炭素原子と一緒になってシクロアルキルを形成する。)
【化2】

(式中、R、R、Rは、それぞれ式(1)におけるR、R、Rと同じである。)
(B)多価オキシラン化合物または多価オキセタン化合物
からなり、(A)成分のヘミアセタールエステル基のモル当量Nと(B)成分のオキシラン基とオキセタン基のモル当量の合計Nとの比率N/Nが0.2〜2.0である熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記の比率N/Nが0.6〜1.2である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の層を有する光半導体装置。
【請求項3】
前記の比率N/Nが0.4〜1.0である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の層を有するカラーフィルター。

【公開番号】特開2008−101136(P2008−101136A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285307(P2006−285307)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】