説明

熱硬化性樹脂組成物

【課題】塩基性触媒や金属塩系触媒を用いなくともウレタン化反応の反応性が高い熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリイソシアネートと、ポリオールと、加熱によりブレンステッド酸を発生させる成分と、を含有する熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は靭性、強度等の機械物性に優れることから、産業分野や日常生活分野で広く普及している。例えば、特許文献1では、半導体チップと半導体搭載用有機基板とを接着する接着フィルムにポリウレタン樹脂を用いたものが開示されている。
【0003】
ポリウレタン樹脂の中でも、脂環式ポリイソシアネートを用いたポリウレタン樹脂の硬化物は、近紫外域において十分な透明性が得られ、耐着色性に優れることから、耐候性が要求されるコーティング用途や光学用途等で用いられている。一方、脂環式ポリイソシアネートは芳香族イソシアネートと比較して、電子的要因や立体構造的要因からポリオールとの反応性が低い。
【0004】
ポリウレタン樹脂硬化物の成型方法には、液状のポリイソシアネート含有樹脂と液状のポリオール含有樹脂との混合物を型に流し込んで熱硬化し、その後、冷却して型から取り出す注型法や、加熱された金型に上記混合物を加圧しながら流し込み、短時間で加圧加熱によって硬化させて金型から取り出すリアクション・インジェクション・モールド法等が知られているが、より短時間で上記混合物を硬化させることが求められている。このため、一般的には硬化反応の促進のため、塩基性触媒や金属塩系触媒が上記混合物に添加されている。
【特許文献1】特開2000−106372号公報
【非特許文献1】Journal of Applied Polymer Science,Vol.23,1385−1396(1979)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ウレタン化反応の触媒としての塩基性触媒や金属塩系触媒は、ポリウレタン樹脂硬化物の着色を生じるおそれがあることから、光学用途のポリウレタン樹脂の成型に用いるためには十分でないことが明らかとなった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、塩基性触媒や金属塩系触媒を用いなくともウレタン化反応の反応性が高い熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、ポリイソシアネートと、ポリオールと、加熱によりブレンステッド酸を発生させる成分と、を含有する。
【0008】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物では、ポリイソシアネートとポリオールとのウレタン化反応の反応促進剤となるブレンステッド酸が加熱により発生する。そして、このブレンステッド酸がポリイソシアネートのイソシアネート基に作用し、当該イソシアネート基とポリオールの水酸基とが反応し易い状態となる。これにより、ウレタン化反応の反応性を高めることができる。また、ウレタン化反応の促進のために硬化物の色味に悪影響を及ぼす触媒を加える必要がないことから、硬化物の着色を抑制することができる。
【0009】
ブレンステッド酸は、オキソニウムイオンであることが好ましい。また、ブレンステッド酸を発生させる成分は、エポキシ基を有する化合物と、4級ホスホニウム塩と、を含むことが好ましい。さらに、4級ホスホニウム塩は、テトラアルキルホスホニウム塩であることが好ましい。
【0010】
ポリイソシアネートは、ポリイソシアネート及び当該ポリイソシアネートのイソシアネート基の総数よりも少ない総数の水酸基を有するポリオールを反応させて得られるプレポリマを含むことが好ましい。ポリオールは、ポリオール及び当該ポリオールの水酸基の総数よりも少ない総数のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを反応させて得られるプレポリマを含むことが好ましい。このような熱硬化性樹脂組成物では、ポリイソシアネート及びポリオールのそれぞれの単体を用いる場合よりも相溶性を向上させることができる。したがって、注型法やリアクション・インジェクション・モールド法等の成型法に好適な熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【0011】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、ポリイソシアネート及び4級ホスホニウム塩を含有するA液と、ポリオール及びエポキシ基を有する化合物を含有するB液と、を備える2液タイプの熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい。このような熱硬化性樹脂組成物では、保管時の安定性、すなわちポットライフを向上させることができる。
【0012】
ポリイソシアネートは、2官能以上の脂環式ポリイソシアネートを含むことが好ましい。また、2官能以上の脂環式ポリイソシアネートは、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びノルボルネンジイソシアネート(2,5−(2,6)ビスイソシアネトメチル[2,2,1]ヘプタン)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、塩基性触媒や金属塩系触媒を用いなくともウレタン化反応の反応性が高く、光学用途の成型物に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物(以下、場合により「樹脂組成物」という)は、ポリイソシアネートと、ポリオールと、当該ポリイソシアネートと当該ポリオールとのウレタン化反応の反応促進剤となるブレンステッド酸を加熱により発生させる成分と、を含有する。
【0016】
ブレンステッド酸としては、特に、オキソニウムイオンが好ましい。ブレンステッド酸を発生させる成分は、具体的には、エポキシ基を有する化合物(以下、場合により「エポキシ基含有化合物」という)及び4級ホスホニウム塩の組合せが好ましい。
【0017】
ところで、非特許文献1に記載されているように、エポキシ基を有する化合物と4級ホスホニウム塩とが共存し、加熱により反応すると、その初期過程で、エポキシ基の求核性に富む酸素原子は、4級ホスホニウム塩のリン原子に隣接する炭素原子に結合している水素原子に付加して、エポキシ基の酸素原子は求電子性に富むこととなる(下記反応式(1)参照)。式(1)において、Xは4級ホスホニウムイオンの対イオンを表し、R、R’はアルキル基等の任意の置換基を表す。更に、このエポキシ基の酸素原子は、他のエポキシ基に攻撃されてオキソニウムイオンを生成すると考えられる(下記反応式(2)参照)。
【0018】
【化1】

【0019】
【化2】

【0020】
本発明で生じる作用機構は以下の様に推定される。ただし、作用機構はこれに限定されるものではない。すなわち、エポキシ基を有する化合物及び4級ホスホニウム塩が、ポリイソシアネート及びポリオールを含む熱硬化性樹脂組成物中に共存していると、生成したオキソニウムイオンの酸素原子が、ポリイソシアネートのイソシアネート基の酸素原子に付加する。その結果、イソシアネート基の中心の炭素原子は求電子性に富むこととなり、水酸基の求核性に富む酸素原子との反応が促進されると推定される(下記反応式(3)参照)。
【0021】
【化3】

【0022】
本発明に係る4級ホスホニウム塩は、テトラアルキルホスホニウム塩であることが好ましい。テトラアルキルホスホニウム塩としては、例えば、テトラ−n−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルホスホジチオネート、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェイト、テトラエチルホスホニウムボロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレイト、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレートがあり、熱硬化性樹脂組成物への溶解性の観点からテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルホスホジチオネート又はメチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェイトが好ましい。
【0023】
4級ホスホニウム塩の配合量は、樹脂組成物の全質量に対して0.01〜2質量%であることが好ましく、0.05〜0.1質量%であることがより好ましい。配合量が0.01質量%未満であると、硬化促進の効果が見られず、一方、2質量%より多いと硬化物の着色性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0024】
本発明に係るエポキシ基を有する化合物としては、例えば、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、水素化ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールAグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル,3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルがある。
【0025】
エポキシ基を有する化合物の配合量は、樹脂組成物の全質量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5.0質量%であることがより好ましい。配合量が0.1質量%未満であると、硬化促進の効果が見られず、一方、10質量%より多いと、樹脂組成物への溶解性、硬化物の着色性の問題等がある。
【0026】
本発明に係るポリイソシアネートは、2官能以上のポリイソシアネートを含むことが好ましく、特にその制限はないが、ポリオールとの反応性の低い脂環式ポリイソシアネートに対しては、ウレタン化反応の反応性を効果的に向上させることができる。2官能以上の脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、脂環式ジイソシアネートが好ましく、具体的には4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びノルボルネンジイソシアネート(2,5−(2,6)ビスイソシアネトメチル[2,2,1]ヘプタン)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、またはこれらの混合物等が好ましい。さらに上記の2官能以上の脂環式ポリイソシアネート以外にも、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート型やビウレット型、アダクト型のポリイソシアネートを含んでいても良く、ヘキサメチレンジイソシアネートを用いたイソシアヌレート型ポリイソシアネートが特に好ましい。
【0027】
本発明に係るポリオールは、特にその制限はないが、例えば、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、ポリエーテルポリオール、カーボネートポリオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリル樹脂ポリオールが挙げられる。軟質な硬化物を得る場合には、より水酸基当量の小さいポリオール、例えば、高分子量で2官能のポリエーテルジオール、カーボネートジオール、ポリエステルジオールが好ましい。一方、硬質な硬化物を得る場合には、より水酸基当量の大きいポリオール、例えば低分子量で2官能のカーボネートジオール、カプロラクトンジオール、3官能のカプロラクトントリオール、脂肪族トリオールのトリメチロールプロパン、プロパン−1,2,3−トリオール、それらにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加した誘導体、4官能の脂肪族テトラオールのジグリセリン、それにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加した誘導体等、及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0028】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物では、ポリイソシアネートとして、ポリイソシアネート及び当該ポリイソシアネートのイソシアネート基の総数よりも少ない総数の水酸基を有するポリオールを反応させて得られるイソシアネート基残存プレポリマを用いることが好ましく、ポリオールとして、ポリオール及び当該ポリオールの水酸基の総数よりも少ない総数のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを反応させて得られる水酸基残存プレポリマを用いることが好ましい。この場合、ポリイソシアネートとして上記のポリイソシアネートを用いることができると共に、ポリオールとして、上記のポリオールを用いることができる。プレポリマとすることで、ポリイソシアネートとポリオールとをそれぞれ単体で混合する場合より混合時の相溶性を向上できる。
【0029】
上記イソシアネート基残存プレポリマは、上記ポリオール成分中の水酸基当量Xと上記ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基当量Yとの比X/Yが3〜20となるように、上記ポリオール成分と上記ポリイソシアネート成分を反応させて得られるものであることが好ましい。イソシアネート基残存プレポリマを作製する際に、上記比X/Yが3より小さいと、当該プレポリマの分子量が大きくなり、粘度が高く扱い難くなる問題があり、比X/Yが20より大きいと、プレポリマ化の効果がほとんど得られなくなってしまう。
【0030】
また、上記水酸基残存プレポリマは、比X/Yが0.05〜0.3となるように上記ポリオール成分と上記ポリイソシアネート成分を反応させて得られるものであることが好ましい。水酸基残存プレポリマを作製する際に、上記比X/Yが0.3より大きい場合はプレポリマの分子量が大きくなり、粘度が高く扱い難くなる問題があり、比X/Yが0.05より小さいと、プレポリマ化の効果がほとんど得られなくなってしまう。
【0031】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、ポリイソシアネート及び4級ホスホニウム塩を含有するA液と、ポリオール及びエポキシ基を有する化合物を含有するB液と、を備える2液タイプの熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい。ここで、「2液タイプの熱硬化性樹脂組成物」とは、例えば、成分A及び成分Bといった、少なくとも2種の組成物からなり、これらを反応させて硬化物を得ることができるものである。2液タイプの熱硬化性樹脂組成物とすることで、より保存安定性を向上させることができる。
【0032】
プレポリマの合成は、触媒を添加することによって短縮できるが、着色を避けるため無触媒下で室温または加熱反応させる方が好ましい。
【0033】
ポリオールとポリイソシアネートとの配合比は、水酸基当量/イソシアネート基当量の比が0.7〜1.3となるよう混合することが好ましく、0.8〜1.1となるように混合することがより好ましい。この比が0.7〜1.3から外れると、硬化物の耐熱性、光学特性、機械特性が低下する傾向にある。
【0034】
また、上記の熱硬化性樹脂組成物には上記の成分以外に、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤、重合禁止剤等を添加することができる。また、成形性の観点から離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等を添加してもよい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0035】
酸化防止剤として、ヒンダード型フェノール系酸化防止剤を用いてもよく、耐光性及び耐熱着色性が高いことから、特に[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンを用いることが好ましい。
【0036】
酸化防止剤の配合量は、樹脂組成物の全質量に対して、それぞれ0.05〜5質量%であることが好ましく、0.05〜0.3質量%であることが好ましい。この含有割合が0.05質量%を下回ると酸化防止剤としての効果が見られず、一方、5質量%を超えると溶解性、硬化時での析出の問題等がある。
【0037】
離型剤として、成型金型からの成型物の離型性を上げるために、ポリシロキサン系、ポリエチレン系、フッ素系、脂肪酸エステル系、高級脂肪酸塩系の離型剤を添加することができ、特に脂肪酸エステル、高級脂肪酸塩系の離型剤が好ましい。
【0038】
離型剤の配合量は、樹脂組成物の全質量に対して0.01〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%であることが好ましい。配合量が0.01質量%を下回ると離型剤としての効果が得られず、一方、5質量%を超えると耐熱着色性や溶解性が問題となる。
【0039】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物を用いた硬化物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、調合し、均一化した熱硬化性樹脂組成物を注型、ポッティング、又はリアクション・インジェクション・モールド法によって加熱硬化することによって硬化物を得ることが好ましい。また、2液タイプの場合も2液を混合、均一化した後、同様に硬化物を得ることが好ましい。
【0040】
これら樹脂組成物の調合方法や攪拌方法は、回転攪拌や超音波分散等による方法があり、樹脂組成物が均一となることが必要である。また、樹脂混合物を注型、ポッティング、リアクション・インジェクション・モールドする事前に、調合、混合時に混入した気泡やイソシアネートと空気中の水分との反応で生成する二酸化炭素を除くために、樹脂混合物を真空脱泡することが望ましい。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
ポリオールとして重量平均分子量が300、水酸基価が540mgKOH/gのポリカプロラクトントリオール(B1:ダイセル化学工業製、商品名「プラクセル303」)50.5質量部に、エポキシ基を有する化合物としてトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート(C1:日産化学製、商品名「TEPIC−S」)2.4質量部を80℃にて加熱、攪拌して溶解させた。室温まで冷却後、ポリイソシアネートとして1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(A1:三井武田ケミカル株式会社製、商品名「タケネート600」)47.0質量部を加えて攪拌、超音分散処理して、均一透明な混合液を得た。更に、4級ホスホニウム塩としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルホスホジチオネート(D1:日本化学工業株式会社製、商品名「ヒシコーリンPX−4ET」)0.1質量部を加え、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0043】
(実施例2)
同様に、ポリオールとしてB1、51.2質量部にエポキシ基を有する化合物としてC1、1.0質量部を80℃にて加熱、攪拌して溶解させた。室温まで冷却後、ポリイソシアネートとしてA1、47.7質量部を加えて攪拌、超音分散処理して、均一透明な混合液を得た。更に、4級ホスホニウム塩としてD1、0.05質量部を加え、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0044】
(実施例3)
同様に、ポリオールとしてB1、49.0質量部にエポキシ基を有する化合物としてC1、2.4質量部を80℃にて加熱、攪拌して溶解させた。室温まで冷却後、ポリイソシアネートとしてノルボルネンジイソシアネート(2,5−(2,6)ビスイソシアネトメチル[2,2,1]ヘプタン)(A2:三井武田ケミカル株式会社製、商品名「コスモネートNBDI」)48.5質量部を加えて攪拌、超音分散処理して、均一透明な混合液を得た。更に、4級ホスホニウム塩としてD1、0.1質量部を加え、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0045】
(実施例4)
同様に、ポリオールとしてB1、17.8質量部、トリメチロールプロパン(B2:Perstorp社製、商品名「TMP」)17.8質量部、エポキシ基を有する化合物としてC1、2.4質量部を80℃にて加熱、攪拌して溶解させた。室温まで冷却後、ポリイソシアネートとしてA1、32.6質量部、4−4’メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート(A3:住友バイエルウレタン株式会社製、商品名「デスモジュールW」)29.3質量部を加えて攪拌、超音処理して、均一透明な混合液を得た。更に、4級ホスホニウム塩としてD1、0.1質量部を加え、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0046】
(実施例5)
同様に、ポリオールとしてB1、49.0質量部にエポキシ基を有する化合物としてビスフェノールAジグリシジルエーテル(C2:ジャパンエポキシレジン製、商品名「エピコート828」)2.4質量部を攪拌して溶解させた。その後、ポリイソシアネートとしてA2、48.5質量部を加えて攪拌、超音分散処理して、均一透明な混合液を得た。更に、4級ホスホニウム塩としてD1、0.1質量部を加え、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0047】
(実施例6)
同様に、ポリオールとしてB1、49.0質量部にエポキシ基を有する化合物としてC1、2.4質量部を80℃にて加熱、攪拌して溶解させた。室温まで冷却後、ポリイソシアネートとしてA2、48.5質量部を加えて攪拌、超音分散処理して、均一透明な混合液を得た。更に、4級ホスホニウム塩としてメチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェイト(D2:日本化学工業株式会社製、商品名「ヒシコーリンPX−4MP」)0.1質量部を加え、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0048】
(実施例7)
A1、41.9質量部に、B1、5.0質量部を80℃で4時間反応させて、イソシアネート基残存プレポリマ(A4)を46.9質量部得た。一方、B1、46.6質量部に、A1、4.7質量部を80℃で4時間反応させて、水酸基残存プレポリマ(B3)を51.3質量部得た。イソシアネート基残存プレポリマに4級ホスホニウム塩としてD1、0.1質量部を加えた(A液)。また、水酸基残存プレポリマにエポキシ基を有する化合物としてC1、2.5質量部を80℃にて加熱、攪拌して溶解させた(B液)。上記のA液と、B液とで、2液タイプの熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0049】
(比較例1)
実施例1と同様に、ポリオールとしてB1、51.8質量部、ポリイソシアネートとしてA1、48.2質量部を加えて攪拌、超音分散処理して、均一透明な熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0050】
(比較例2)
同様に、ポリオールとしてB1、51.8質量部、ポリイソシアネートとしてA2、49.7質量部を加えて攪拌、超音分散処理して、均一透明な熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0051】
(比較例3)
同様に、ポリオールとしてB1、50.5質量部にエポキシ基を有する化合物としてC1、2.4質量部を80℃にて加熱、攪拌して溶解させた。室温まで冷却後、ポリイソシアネートとしてA1、47.1質量部を加えて攪拌、超音分散処理して、均一透明な熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0052】
(比較例4)
同様に、ポリオールとしてB1、51.7質量部、ポリイソシアネートとしてA1、48.2質量部に4級ホスホニウム塩としてD1、0.1質量部を加え、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0053】
(比較例5)
同様に、ポリオールとしてB1、49.0質量部にエポキシ基を有する化合物としてC1、2.4質量部を80℃にて加熱、攪拌して溶解させた。室温まで冷却後、ポリイソシアネートとしてA2、49.0質量部を加えて攪拌、超音分散処理して、均一透明な混合液を得た。更に、一般にエポキシの開環反応の促進剤として知られるイミダゾール類である2−エチル−4−メチルイミダゾール(E:和光純薬工業製)0.1質量部を加え、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0054】
各実施例及び比較例について、各熱硬化性樹脂組成物の配合及び165℃でのゲル化時間を表1及び表2に示した。なお、表1及び表2中の配合量は質量部を示す。
【0055】
表1及び表2中、A1は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、A2は2,5−(2,6)ビスイソシアネトメチル[2,2,1]ヘプタン、A3は4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、A4はイソシアネート基残存プレポリマであり、B1はポリカプロラクトントリオール、B2はトリメチロールプロパン、B3は水酸基残存プレポリマ、C1はトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、C2はビスフェノールAジグリシジルエーテル、D1はテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルホスホジチオネート、D2はメチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェイト、Eはエポキシ基の開環促進作用が知られるイミダゾールである2−エチル−4−メチルイミダゾールを示す。
【0056】
(ゲル化時間測定)
ゲル化時間の測定方法は、実施例1〜7、比較例1〜5の樹脂組成物を、165℃の熱盤に滴下し、攪拌棒にて混ぜながら、ゲル化によってタックがなくなるまでの時間を測定した。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
エポキシ基含有化合物及び4級ホスホニウム塩を含まない比較例1,2では、ゲル化時間は長く、同様に、エポキシ基含有化合物、又は、4級ホスホニウム塩の一方のみを含む比較例3,4でもゲル化時間が長い結果となった。更に、比較例5に示すようにエポキシ基含有化合物にイミダゾールを共存させても、ゲル化時間は短縮されなかった。
【0060】
一方、実施例1〜7ではポリイソシアネート種、ポリオール種、エポキシ基含有化合物種、4級ホスホニウム種、それらの添加量によっては、ゲル化時間に若干の違いが見られるが、いずれも比較例1〜5より著しくゲル化時間が短く、ウレタン化反応が促進されていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと、
ポリオールと、
加熱によりブレンステッド酸を発生させる成分と、を含有する、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ブレンステッド酸は、オキソニウムイオンである、請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ブレンステッド酸を発生させる成分は、エポキシ基を有する化合物と、4級ホスホニウム塩と、を含む、請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記4級ホスホニウム塩は、テトラアルキルホスホニウム塩である、請求項3記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネートは、ポリイソシアネート及び当該ポリイソシアネートのイソシアネート基の総数よりも少ない総数の水酸基を有するポリオールを反応させて得られるプレポリマを含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリオールは、ポリオール及び当該ポリオールの水酸基の総数よりも少ない総数のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを反応させて得られるプレポリマを含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート及び前記4級ホスホニウム塩を含有するA液と、
前記ポリオール及び前記エポキシ基を有する化合物を含有するB液と、を備える2液タイプの熱硬化性樹脂組成物である、請求項3〜6のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリイソシアネートは、2官能以上の脂環式ポリイソシアネートを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記2官能以上の脂環式ポリイソシアネートは、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びノルボルネンジイソシアネート(2,5−(2,6)ビスイソシアネトメチル[2,2,1]ヘプタン)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項8記載の熱硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−114433(P2009−114433A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263073(P2008−263073)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】