説明

熱硬化性樹脂組成物

【課題】熱硬化性に優れ、ブロッキングの発生を抑制でき、難燃性、低反り性、屈曲性、耐熱性等を同時に満足するカルボキシル基含有樹脂を用いた熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)分子中に1つ以上のカルボキシル基を含有する樹脂、(B)オキシラン環を含有する化合物、及び(C)リン原子を含有する有機フィラーを含む熱硬化性樹脂組成物であって、前記分子中に1つ以上のカルボキシル基を含有する樹脂(A)が、ポリカーボネートポリオール化合物(a)とジイソシアネート化合物(b)を反応させて得られる末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)と、テトラカルボン酸二無水物(d)とを反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性に優れ、良好な屈曲性、低反り性、半田耐熱性、耐マイグレーション性、耐めっき性、難燃性などを有する熱硬化性層を製造でき、プリント回路基板のレジスト層として好適に使用できる熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、OA機器や家電製品等の電子機器は、その高密度化、高機能化や環境面等から、材料面においてもその要求特性が厳しくなってきている。例えば、フレキシブルプリント配線板(FPC)については、屈曲性、低反り性、半田耐熱性、耐マイグレーション性、耐めっき性等の特性が要求されている。
【0003】
従来、フレキシブルプリント配線板の表面保護や実装時の半田付着防止などには、カバーレイフィルムと呼ばれるポリイミドフィルムをパターンに合わせた金型をつくり打ち抜いた後、接着剤を用いて張り付けたものや、熱硬化型または紫外線硬化型の液状あるいはフィルム状ソルダーレジスト剤が使用されている。特に後者は作業性の点で有用である。
【0004】
また、近年の電子機器の軽量小型化に伴いフレキシブルプリント配線板も軽薄化が進み、ソルダーレジスト剤の屈曲性や硬化収縮の影響がより顕著に現れるようになってきている。そのため、硬化タイプのソルダーレジスト剤では、屈曲性や硬化収縮による反りの点で、要求性能を満足できなくなっているのが現状である。
【0005】
さらに、部品の誤作動による異常加熱で、万一高分子材料(樹脂材料)に着火し、火災の原因となる恐れがあるため、高分子材料自体に自己消火性(不燃性・難燃性)が要求されている。例えば、フレキシブルプリント配線基板に使用されるソルダーレジスト剤としては、近年環境負荷低減の動きが見受けられ、ノンハロゲン(ハロゲンフリー)での低有害化、低発煙化、難燃化が要望されている。
【0006】
難燃化を実現する技術としては、リン酸エステル等のリン系難燃剤を添加する方法が挙げられるが、高度の難燃性を発現するためには、難燃剤を多量に添加する必要があり、接着性や機械的特性、耐熱性などの特性が低下する恐れがあり、また、難燃剤自体がブリードアウトして接着性が経時的に低下するなどの問題が生じることもある。
【0007】
このように、硬化タイプのソルダーレジスト剤は、用途に応じて様々な物性を満たすことが求められる。特に電子部品などに用いられるときは、半田耐熱性や低反り性、屈曲性等に加え、難燃性が重要な物性として求められており、難燃性が低いと用途が限られることになる。
【0008】
こういった電子材料周辺部材への高い要求に応えるため、様々な検討が行われているが、全ての特性を十分に満足させるものは得られていない。例えば、高い酸価を有する熱硬化性ポリウレタンとリン原子を含有する有機フィラーを含有する熱硬化性樹脂組成物を、回路基材のソルダーレジスト剤等として使用することが提案されている(特許文献1参照)。
【0009】
ここで使用されている熱硬化性ポリウレタンにおいては、原料であるカルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物は重合性が低いため、分子量分布が広がりやすく、樹脂主鎖中に局所的に架橋点が偏った構造となってしまったり、未反応物として多くが残存する。そのため、十分な熱硬化性や屈曲性を得られなかったり、未反応物のブリードアウトによるブロッキングが発生したりする問題があった。
【0010】
非窒素系溶媒に可溶であり、樹脂を可撓化及び低弾性率化することにより低反り性及び柔軟性を有し、かつUL規格による難燃性の基準を満足するポリイミド系樹脂組成物としては、例えば、ポリカーボネート変性ポリイミド系樹脂に水和金属化合物を加えた組成物が提案されている(特許文献2〜4参照)。
【0011】
これらの組成物は、比較的厚いポリイミドフィルム基材を使用するテープキャリアーパッケージ(TAB、COF)用途向けであり、1ミル(25μm)以下の薄いポリイミドフィルム基材を使用するフレキシブルプリント配線板用途向けでは、十分な難燃性が得られなかった。また、薄いポリイミドフィルム基材を使用した場合、低反り性や屈曲性も十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−270137号公報
【特許文献2】特開2008−133418号公報
【特許文献3】特開2009−96915号公報
【特許文献4】特開2009−185200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、熱硬化性に優れ、ブロッキングの発生を抑制でき、難燃性、低反り性、屈曲性、耐熱性等を同時に満足するカルボキシル基含有樹脂を用いた熱硬化性樹脂組成物、及びこの組成物を用いたレジストインキや接着剤、さらにはこれらを用いた自動車部品や、電化製品等に使用されるプリント回路基板等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、樹脂主鎖中に柔軟な骨格と、酸二無水物に基づくカルボキシル基を多数有する未反応物の少ない樹脂を用いたカルボキシル基含有樹脂、オキシラン環含有化合物、及びリン原子含有有機フィラーを含有することにより、上記特性を同時に高度に満足する熱硬化性樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(9)の構成を有するものである。
(1)(A)分子中に1つ以上のカルボキシル基を含有する樹脂、
(B)オキシラン環を含有する化合物、及び
(C)リン原子を含有する有機フィラー
を含む熱硬化性樹脂組成物であって、前記分子中に1つ以上のカルボキシル基を含有する樹脂(A)が、ポリカーボネートポリオール化合物(a)とジイソシアネート化合物(b)を反応させて得られる末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)と、テトラカルボン酸二無水物(d)とを反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
(2)分子中に1つ以上のカルボキシル基を含有する樹脂(A)の酸価が250〜2000当量/10gであることを特徴とする(1)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(3)分子中に1つ以上のカルボキシル基を含有する樹脂(A)の数平均分子量が1000〜100000であることを特徴とする(1)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(4)オキシラン環を含有する化合物(B)がエポキシ化合物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(5)リン原子を含有する有機フィラー(C)がホスフィン酸塩からなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(6)カルボキシル基を含有する樹脂(A)と、オキシラン環を含有する化合物(B)と、リン原子を含有する有機フィラー(C)の質量比率が、(A)/(B)/(C)=30〜95/1〜50/2〜55であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(7)カルボキシル基を含有する樹脂(A)と、オキシラン環を含有する化合物(B)と、リン原子を含有する有機フィラー(C)を合わせた質量が、熱硬化性樹脂組成物中の20質量%以上であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(8)(D)硬化促進剤をさらに含有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物をレジスト層として使用することを特徴とするプリント回路基板。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、樹脂主鎖中に柔軟な骨格と、酸二無水物に基づくカルボキシル基を多数有する未反応物の少ない樹脂を用いたカルボキシル基含有樹脂、オキシラン環含有化合物、及びリン原子含有有機フィラーを含有しているので、熱硬化性に優れ、ブロッキングの発生を抑制でき、難燃性、低反り性、屈曲性、耐熱性等の特性を同時に高度に満足することができる。更に、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記特性を高度に満足するので、レジストインキや接着剤、これらを用いた自動車部品や、電化製品等に使用されるプリント回路基板等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)分子中に1つ以上のカルボキシル基を含有する樹脂、(B)オキシラン環を含有する化合物、及び(C)リン原子を含有する有機フィラーを含むものである。
【0018】
<分子中に1つ以上のカルボキシル基を含有する樹脂(A)>
本発明に使用されるカルボキシル基含有樹脂(A)は、ポリカーボネートポリオール化合物(a)とジイソシアネート化合物(b)を反応させて末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)を生成し、さらにテトラカルボン酸二無水物(d)を反応させてエステル化による鎖延長反応をすることにより得られるカルボキシル基含有樹脂である。カルボキシル基含有樹脂(A)は、上記の反応で得られるような構造を有する限り、上記の反応順序に限定されない。例えば、ポリカーボネートポリオール化合物(a)とジイソシアネート化合物(b)を反応させて末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(e)を生成した後、テトラカルボン酸二無水物(d)の両末端がエステル結合を介してポリ
カーボネートジオール化合物(a)と結合した末端ヒドロキシ含有化合物と前記(e)成分とを反応させて得られるカルボキシル含有樹脂もカルボキシル基含有樹脂(A)の範ちゅうに含まれる。
【0019】
カルボキシル基含有樹脂(A)において、末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)をテトラカルボン酸二無水物(d)で鎖延長することにより、分子量分布の狭い高分子量の樹脂が得られ、また主鎖中に多数のカルボキシル基を有し、オキシラン化合物のような熱硬化剤と組み合わせることで高度な架橋構造を形成することができる。これにより、プリント回路基板をはじめとする電子材料周辺に用いられる接着剤、保護剤として重要な特性、例えば屈曲性、半田耐熱性、耐マイグレーション性、耐めっき性等を著しく改善できる。
【0020】
カルボキシル基含有樹脂(A)において、末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)は、ポリカーボネートポリオール化合物(a)中のヒドロキシル基とジイソシアネート化合物(b)中のイソシアネート基を反応させて得られるものであることが好ましい。前記ヒドロキシル基と前記イソシアネート基が反応することにより、ウレタン結合を生成し、ウレタン結合由来の高い密着性を付与することができる。
【0021】
ポリカーボネートポリオール化合物(a)としては、特にポリカーボネートジオールが好ましく、高い電気絶縁性と耐加水分解性、耐熱性を発揮することができる。
【0022】
また、カルボキシル基含有樹脂(A)は、高Tgの原料を使う必要がないため、優れた屈曲性を示す。一般的に屈曲性の高い樹脂は耐熱性に乏しい傾向があるが、本発明の樹脂は柔軟成分として耐熱性に強いポリカーボネートジオールを使用することで耐熱性を向上している。さらに、酸二無水物での鎖延長によって主鎖中に架橋点を導入していることから、架橋によってその耐熱性をさらに向上することができる。
【0023】
ポリカーボネートジオールは、例えば、(i)グリコールまたはビスフェノールと炭酸エステルとの反応、(ii)グリコールまたはビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンを作用させる反応などで得られる。
【0024】
上記(i)の製法で用いられる炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0025】
上記(i)および(ii)の製法で用いられるグリコールまたはビスフェノールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールプロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類、前記ビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたビスフェノール類等も用いることができる。これらの化合物は1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0026】
ポリカーボネートポリオール化合物(a)の数平均分子量は、100〜30000であり、好ましくは200〜20000であり、より好ましくは200〜10000である。分子量が100未満であると、十分な屈曲性が得られず低反り性や屈曲性が悪くなる可能性がある。一方、30000を超えると、樹脂中へ熱硬化するのに十分なカルボキシル基を導入することができなくなるため硬化性不良となり、半田耐熱性や耐めっき性等が悪くなる可能性がある。
【0027】
末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)に使用されるジイソシアネート化合物(b)としては、特に限定されないが、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トルエンジイソシアネート(2,6−TDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類、クルード−MDIなどが挙げられる。
【0028】
ジイソシアネート化合物(b)としては、樹脂組成物の耐熱性を特に向上する場合には芳香族ジイソシアネートを用いることが好ましく、樹脂組成物の柔軟性を特に向上する場合には脂肪族ジイソシアネートや脂環族ジイソシアネートを用いることが好ましい。ジイソシアネート化合物(b)は、目的や用途に応じて適宜選択して用いることができ、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)は、ポリカーボネートポリオール化合物(a)中のヒドロキシル基とジイソシアネート化合物(b)中のイソシアネート基を反応させて製造することができる。前記ヒドロキシル基と前記イソシアネート基が反応することにより、ウレタン結合を生成する。なお、原料の仕込みモル比は、目的とするカルボキシル基含有樹脂の分子量および酸価に応じて調節するが、前記ジイソシアネート化合物(b)よりもポリカーボネートポリオール化合物(a)を過剰に(イソシアネート基よりもヒドロキシル基が過剰になるように)用いる必要がある。
【0030】
末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)は、従来公知の方法によって得ることができるが、例えば、撹拌器及び温度計を装備した反応缶中で溶剤の存在下60〜120℃の反応温度で、触媒の存在下、或いは無触媒で、2〜10時間の反応時間で製造することができる。
【0031】
末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)を製造する際に使用する溶剤としては、イソシアネートと反応性が低いものであれば使用でき、アミン等の塩基性化合物を含まない溶媒が好ましい。このような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソホロン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム及び塩化メチレン等を挙げることができる。特に、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等が好ましい。
【0032】
末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)を製造する際には、上述したように触媒を用いても良い。触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、エチレンジアミンテトラアセテート、トリエチルアミン等を挙げられる。好ましくは、ジブチル錫ジラウレートなどのウレタン化触媒を使用する。
【0033】
末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)の数平均分子量は、100〜50000であり、好ましくは200〜40000であり、より好ましくは200〜30000である。分子量が100未満であると、十分な屈曲性が得られず低反り性や屈曲性が悪くなる可能性がある。一方、50000を超えると、樹脂中へ熱硬化するのに十分なカルボキシル基を導入することができなくなるため硬化性不良となり、半田耐熱性や耐めっき性等が悪くなる可能性がある。
【0034】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)とテトラカルボン酸二無水物(d)とを反応させることにより得られる。テトラカルボン酸二無水物(d)としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカホドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物)スルホン、ビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。テトラカルボン酸二無水物(d)は、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。特に好ましいものは、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)である。
【0035】
末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)をテトラカルボン酸二無水物(d)で鎖延長することにより、カルボキシル基含有樹脂(A)を製造することができる。末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)中のヒドロキシル基とテトラカルボン酸二無水物(d)を反応させることにより、テトラカルボン酸二無水物(d)の開環反応が進行し、一方でエステル結合を形成し、もう一方で2個のカルボキシル基(残存カルボキシル基)をカルボキシル基含有樹脂の主鎖中に形成することができる。このカルボキシル基が存在することにより、オキシラン環を含有する化合物(B)を適量配合して使用することで優れた熱硬化性を発現することができる。
【0036】
ポリカーボネートポリオール化合物(a)とジイソシアネート化合物(b)を反応させて得られた末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)と、テトラカルボン酸二無水物(d)の仕込みモル比は、目的とするカルボキシル基含有樹脂の分子量および酸価に応じて調節する。
【0037】
ポリカーボネートポリオール化合物(a)とジイソシアネート化合物(b)を反応させて得られた末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)と、テトラカルボン酸二無水物(d)を鎖延長反応するためには、ジイソシアネート化合物(b)とテトラカルボン酸二無水物(d)の合わせた配合量は、カルボキシル基含有樹脂の分子量を制御する上で重要である。ジイソシアネート化合物(b)+テトラカルボン酸二無水物(d)/ポリカーボネートポリオール化合物(a)のモル比(=(b+d)/a)=60/100〜99/100または140/100〜101/100の範囲で重合することができる。(b+d)/aは75/100〜99/100または125/100〜101/100であることが好ましく、85/100〜99/100または115/100〜101/100であることがより好ましく、90/100〜99/100または110/100〜101/100であることがさらに好ましい。(b+d)/aが60/100よりも小さい、あるいは140/100よりも大きいと、カルボキシル基含有樹脂の分子量が高くならず、耐熱性が低下したり、十分な屈曲性が得られない場合がある。逆に、(b+d)/aが99/100を越える、あるいは101/100未満であると、カルボキシル基含有樹脂の分子量が高くなりすぎ、溶媒に溶解しにくくなったり、ワニスの粘度が高くなりハンドリングが困難になる場合がある。
【0038】
カルボキシル基含有樹脂(A)の数平均分子量は、1000〜100000であり、好ましくは2000〜100000であり、より好ましくは3000〜100000である。分子量が1000未満であると、耐熱性が低下したり、十分な屈曲性が得られない場合がある。一方、100000を超えると、溶媒に溶解しにくくなったり、ワニスの粘度が高くなりハンドリングが困難になる場合がある。
【0039】
前記鎖延長反応は、具体的には、撹拌器及び温度計を装備した反応缶において、溶剤で末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)と触媒を溶解し、ここにテトラカルボン酸二無水物(d)を添加して、重合することにより行われる。重合温度を60〜120℃、重合時間を2〜10時間に設定することにより、所定の分子量のカルボキシル基含有樹脂を得ることができる。
【0040】
カルボキシル基含有樹脂(A)を製造する際に使用する溶剤としては、先に挙げた末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)を製造する際に使用する溶剤と同種の溶剤を使用することができる。
【0041】
カルボキシル基含有樹脂(A)を製造する際に用いる反応触媒としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン類;テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩;2―エチル4−イミダゾール等のイミダゾール類、アミド類;4−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩;スルホニウム塩;スルホン酸類;オクチル酸亜鉛等の有機金属塩等が挙げられるが、より好ましくは、アミン類、ピリジン類、ホスフィン類である。
【0042】
カルボキシル基含有樹脂(A)の酸価は、250〜2000当量/10gであることが好ましく、より好ましくは350〜1500当量/10gであり、さらに好ましくは400〜1200当量/10gである。酸価が250当量/10g未満であると、十分な架橋構造が得られず、半田耐熱性、耐めっき性が不良となる場合があり、2000当量/10gを超えると、硬化収縮が大きくなり低反り性が悪化する場合がある。なお、酸価は、カルボキシル基に由来するものである(カルボキシル基当量に相当)。
【0043】
<オキシラン環を含有する化合物(B)>
本発明に使用されるオキシラン環を有する化合物(B)としては、オキシラン環が分子内に含有されていれば特に限定されず、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ基含有化合物や、ノボラック型オキセタン樹脂などのオキセタン基含有化合物などが挙げられる。
【0044】
エポキシ基含有化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ビキシレノール型エポキシ樹脂、グリシジル基を有する化合物などが挙げられる。
【0045】
オキセタン基含有化合物としては、分子内にオキセタン環を有し、硬化可能なものであれば特に限定されず、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス−{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシル)プロポキシ]メチル}オキセタン、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)オキセタン、ジ[1−ヒドロキシメチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)オキセタン、およびオキセタニル−シルセスキオキサンなどが挙げられる。
【0046】
これらのオキシラン環を含有する化合物(B)は、単独又は2種類以上組み合わせて用いても構わない。特に、反応性が早く、熱硬化性が良好なエポキシ基含有化合物を用いることが好ましい。
【0047】
オキシラン環を含有する化合物(B)には、希釈剤としてさらに、1分子中にエポキシ基を1個だけ有するエポキシ化合物を含んでいても構わない。
【0048】
オキシラン環を含有する化合物(B)の添加方法としては、オキシラン環を含有する化合物(B)をカルボキシル基含有樹脂(A)に含まれる溶媒と同一の溶媒に予め溶解してから添加してもよく、また直接、カルボキシル基含有樹脂(A)に添加してもよい。
【0049】
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、必要に応じて、架橋助剤を併用することができる。このような架橋助剤としては、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基、ベンジルオキシメチル基、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジメチロールアミノメチル基、ジエチロールアミノメチル基、モルホリノメチル基、アセトキシメチル基、ベンゾイロキシメチル基、アセチル基、ビニル基、イソプロペニル基などを有する化合物を挙げることができる。
【0050】
また、本発明においては、熱硬化に関わるオキシラン環とカルボキシル基の比率を調整することにより、特性を所望の範囲に設定することができる。具体的には、オキシラン環とカルボキシル基の比率は、オキシラン環/カルボキシル基(モル比)=5/1〜1/5が好ましく、より好ましくは、3/1〜1/3である。前記範囲を超えると、架橋性が悪くなる傾向にあり、好ましくない。
【0051】
オキシラン環を含有する化合物(B)の使用量は、熱硬化性樹脂組成物の用途等を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、カルボキシル基含有樹脂(A)100重量部に対して、2重量部〜100重量部の範囲が好ましく、3重量部〜80重量部の範囲がさらに好ましい。オキシラン環を含有する化合物(B)の使用量が2重量部よりも少ないと、架橋性は悪くなり、また、100重量部よりも多い場合も架橋性が低下するため、半田耐熱性や耐薬品性、耐めっき性等が悪くなる場合がある。
【0052】
<リン原子を含有する有機フィラー(C)>
リン原子を含有する有機フィラー(C)は、難燃性を向上させるためのものであり、リン含有率が大きく、難燃化効率が大きく、また加水分解を起こしにくく、疎水性であり、電気特性を低下させない性質を有する。従って、これを用いることにより、難燃性および電気絶縁性に優れた熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。本発明において、有機フィラーとは、微粉末状の有機化合物であり、有機溶剤や水等に難溶または不溶なものである。
【0053】
リン原子を含有する有機フィラー(C)は、好ましくは、下記式(I)で表されるホスフィン酸塩からなることが望ましい。

(式(I)中、RおよびRは、それぞれ独立に直鎖状のまたは枝分かれした炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基であり、Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kまたはプロトン化した窒素塩基であり、mは1〜4の整数である。)
【0054】
上記リン原子を含有する有機フィラー(C)としては、例えば、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン等およびそれらの任意の混合物よりなる群から選択されるものが挙げられる。これらのうちでは、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウムが好ましい。
【0055】
また、リン原子を含有する有機フィラー(C)は、例えば有機リン系化合物を挙げることができる。具体的には、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。これらのうちでは、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシドが好ましい。
【0056】
さらに、リン原子を含有する有機フィラー(C)としては、例えばトリアジン骨格を有する化合物も使用することができる。具体的には、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム等が挙げられる。
【0057】
トリアジン骨格を有する化合物は、他のリン原子を含有する有機フィラー(C)と共に難燃助剤として用いられる。両者の併用により、優れた難燃性を達成することができるだけでなく、リン原子を含有する有機フィラー(C)の使用量全体を減らすことができ、結果として低反り性や屈曲性に大きく寄与する。トリアジン骨格を有する化合物の使用量は、リン原子を含有する有機フィラー(C)の全体量100重量部に対して好ましくは0〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部である。
【0058】
リン原子を含有する有機フィラー(C)は、本発明に使用する有機溶剤に対して難溶または不溶であればよく、特に限定されるものではない。
【0059】
リン原子を含有する有機フィラー(C)の平均粒子径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。平均粒子径が前記範囲よりも大きいと、使用量に対して表面積が低下し、分散不良により、十分な難燃性が発現しない。また、屈曲性、密着性および長期信頼性など、従来よりレジストとして求められる性能を著しく落とす原因ともなりうる。従って、可能な限り平均粒子径は小さい方が良いといえるが、このような粒子径を与える方法としては、予めビーズミル等により粉砕しても良いし、樹脂との配合時に3本ロール等により粉砕を行っても良い。
【0060】
リン原子を含有する有機フィラー(C)の使用量は、カルボキシル基含有樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは5〜125重量部、より好ましくは10〜100重量部である。リン原子を含有する有機フィラー(C)の使用量が少なすぎると、難燃効果が不十分であり、一方、使用量が多すぎると、基材との密着性、低反り性、屈曲性等が低下する傾向にある。
【0061】
本発明の熱硬化性樹脂組成物中のリン含有率は0.3〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8.5質量%であり、更に好ましくは1〜8質量%である。従って、リン含有量がこの範囲になるように(B)成分の添加量を調節する。リン含有率が上記範囲未満では、良好な難燃性が得られず、また、上記範囲を越えると、塗膜の機械特性、耐熱性、密着性や絶縁特性が低下する可能性がある。
【0062】
<硬化促進剤(D)>
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、密着性、耐薬品性、耐熱性等の特性をより一層向上するために、硬化促進剤(D)が添加されることができる。硬化促進剤としては、上記のカルボキシル基含有樹脂(A)とオキシラン環を含有する化合物(B)の間の硬化反応を促進できるものであればよく、特に制限はない。
【0063】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール誘導体、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類、これらの有機酸塩および/またはエポキシアダクト、三フッ化ホウ素のアミン錯体、エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン,2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン)等の三級アミン類、これらの有機酸塩及び/又はテトラフェニルボロエート、ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類、トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボロエート等の四級ホスホニウム塩類、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩類、前記ポリカルボン酸無水物、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート、イルガキュアー261(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、オプトマ−SP−170(ADEKA(株)製)等の光カチオン重合触媒、スチレン−無水マレイン酸樹脂、フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物等が挙げられる。これらを単独で又は2種類以上組み合わせて用いても構わない。これらのうちでは、潜在硬化性を有する硬化促進剤が好ましく、例えばDBU、DBNの有機酸塩及び/又はテトラフェニルボロエートや、光カチオン重合触媒等が挙げられる。
【0064】
硬化促進剤(D)の使用量は、オキシラン環を含有する化合物(B)100質量部に対して、0〜30質量部が好ましい。30質量部を超えると、カルボキシル基含有樹脂の保存安定性や塗膜の耐熱性が低下する可能性がある。
【0065】
<熱硬化性樹脂組成物>
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いてレジストインキを製造する場合、塗工や印刷時の作業性及び被膜形成前後の膜特性を向上させるため、無機あるいはリン原子を含有しない有機フィラーを添加することが好ましい。例えば、カルボキシル基含有樹脂(A)の溶液中に分散してレジストインキを形成し、そのレジストインキにチキソトロピー性を付与できるものであればよく、特に制限はない。無機フィラーとしては、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、酸化タンタル(Ta)、ジルコニア(ZrO)、窒化硅素(Si)、チタン酸バリウム(BaO・TiO)、炭酸バリウム(BaCO)、チタン酸鉛(PbO・TiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、酸化ガリウム(Ga)、スピネル(MgO・Al)、ムライト(3Al・2SiO)、コーディエライト(2MgO・2Al・5SiO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、チタン酸アルミニウム(TiO−Al)、イットリア含有ジルコニア(Y−ZrO)、硅酸バリウム(BaO・8SiO)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO)、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO)、硫酸バリウム(BaSO)、有機ベントナイト、カーボン(C)などを使用することができ、これらは単独でも二種以上を組み合わせて用いても構わない。得られるレジストインキの色調、透明性、機械特性、チキソトロピー性付与の点から、シリカ微粒子(例えば日本アエロジル(株)製の商品名アエロジェル)が好ましい。
【0066】
無機フィラーとしては、平均粒子径50μm以下、最大粒子径100μm以下のものが好ましく、平均粒子径20μm以下が更に好ましく、平均粒子径10μm以下が最も好ましい。ここでいう平均粒子径(メジアン径)は、レ−ザ回析・散乱式粒度分布測定装置を用いて、体積基準で求められる。平均粒子径が50μmを超えると、十分なチキソトロピー性を有するレジストインキが得られにくくなり、塗膜の屈曲性が低下する。最大粒子径が100μmを超えると、塗膜の外観、密着性が不十分となる傾向にある。
【0067】
有機フィラーとしては、カルボキシル基含有樹脂(A)の溶液中に分散してレジストインキを形成し、そのレジストインキにチキソトロピー性を付与できるものであればよく、例えば、ポリイミド樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子等が挙げられる。
【0068】
無機あるいは有機フィラーの使用量は、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分全体を100質量%とした場合、好ましくは1〜25質量%である。更に好ましくは2〜15質量%、特に好ましくは3〜12質量%である。無機あるいは有機フィラーの使用量が1質量部未満では、印刷性が低下する傾向にあり、25質量%を超えると、塗膜の屈曲性などの機械特性、透明性が低下する傾向にある。
【0069】
本発明の熱硬化性樹脂組成物における、カルボキシル基を含有する樹脂(A)と、オキシラン環を含有する化合物(B)と、リン原子を含有する有機フィラー(C)の質量比率((A)/(B)/(C))は、好ましくは30〜95/1〜50/2〜55、より好ましくは35〜90/2〜45/5〜50、さらに好ましくは45〜85/3〜25/10〜35である。オキシラン環を含有する化合物(B)が前記範囲を超えると架橋性が悪くなる傾向にある。リン原子を含有する有機フィラー(C)が前記範囲より少ない場合は難燃効果が不十分であり、一方多い場合は基材との密着性、低反り性、屈曲性等が低下する傾向にある。
【0070】
カルボキシル基を含有する樹脂(A)と、オキシラン環を含有する化合物(B)と、リン原子を含有する有機フィラー(C)を合わせた質量は、熱硬化性樹脂組成物中の20質量%以上であることが好ましい。前記範囲以下であると、架橋性が低下するため耐熱性等が悪くなったり、難燃効果が不十分であったりする場合がある。
【0071】
<レジストインキ等>
レジストインキは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いることにより調製されることができる。具体的には、レジストインキは、前述の(A)、(B)、(C)、(D)の成分、及び溶剤、さらに必要に応じその他の配合成分を好適な割合で配合し、ロールミル、ミキサー等で均一に混合することにより得られる。混合方法は、十分な分散が得られれば特に制限はないが、3本ロールによる複数回の混練が好ましい。
【0072】
レジストインキを調製する際に使用する溶剤としては、先に挙げた末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)やカルボキシル基含有樹脂(A)を製造する際に使用する溶剤と同種の溶剤を使用することができる。
【0073】
レジストインキのB型粘度計での粘度は、25℃で50dPa・s〜1000dPa・sの範囲が好ましく、100dPa・s〜800dPa・sの範囲が更に好ましい。粘度が50dPa・s未満であると、印刷後のレジストインキの流れ出しが大きくなるとともに膜厚が薄膜化する傾向がある。粘度が1000Pa・sを超えると、印刷の際、レジストインキの基材への転写性が低下しカスレが発生するとともに、印刷膜中のボイド及びピンホールが増加する傾向がある。
【0074】
レジストインキには、必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の重合禁止剤、オルベン、ベントン、モンモリロナイト等の公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤、レベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機シラン化合物などのカップリング剤/密着性付与剤、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、キシレニルジフェニルフォスフェート、クレジルビス(2,6−キシレニル)フォスフェート、2−エチルヘキシルフォスフェート、ジメチルメチルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェノールAビス(ジクレジル)フォスフェート、ジエチル−N,N―ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、リン酸アミド、有機ホスフィンオキサイド、赤燐等のリン系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム、トリアジン、メラミンシアヌレート、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、シアヌル酸トリアジニル塩、メレム、メラム、トリス(β−シアノエチル)イソシアヌレート、アセトグアナミン、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラム等の窒素系難燃剤、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、芳香族スルフォンイミド金属塩、ポリスチレンスルフォン酸アルカリ金属塩等の金属塩系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ等の水和金属系難燃剤、シリカ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、スズ酸亜鉛等無機系難燃剤、シリコーンパウダー等の等の難燃剤/難燃助剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤のような公知慣用の添加剤類を用いることができる。
【0075】
レジストインキを例えばソルダーレジストとして使用する場合は、フレキシブルプリント配線板に、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法等の方法により5〜80μmの膜厚でレジストインキを塗布し、塗膜を60〜100℃で予備乾燥させた後、100〜200℃で本乾燥させて硬化させる。乾燥は空気中でも不活性雰囲気中でもよい。
【0076】
レジストインキは、皮膜形成材料として、ソルダーレジスト以外に半導体素子や各種電子部品用オーバーコート、層間絶縁膜に有用である他、塗料、コーティング剤、接着剤等としても好適に使用できる。特に本発明の熱硬化性樹脂組成物は、プリント回路基板のレジスト層として好適に使用できる。
【実施例】
【0077】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例における特性値の評価は、以下の方法によって行った。
【0078】
<樹脂組成>
カルボキシル基含有樹脂を重クロロホルムに溶解し、VARIAN社製のNMR装置400―MRを用いて、H−NMR分析を行い、その積分比よりモル比を求めた。
【0079】
<数平均分子量>
カルボキシル基含有樹脂などの試料を、樹脂濃度が0.5重量%程度となるようにテトラヒドロフランで溶解および/または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過したものを測定用試料として、テトラヒドロフランを移動相とし、示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により数平均分子量を測定した。流速は1mL/分、カラム温度は30℃とした。カラムには昭和電工製KF−802、804L、806Lを用いた。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用した。
【0080】
<酸価>
カルボキシル基含有樹脂0.2gを20mlのN−メチルピロリドンに溶解し、0.1Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、カルボキシル基含有樹脂10gあたりの当量(当量/10g)を求めた。
【0081】
<リン原子濃度(リン含有率)>
試料中のリン濃度にあわせて試料を三角フラスコに量りとり、硫酸3ml、過塩素酸0.5mlおよび硝酸3.5mlを加え、電熱器で半日かけて徐々に加熱分解した。溶液が透明になった後、さらに加熱して硫酸白煙を生じさせ、室温まで放冷し、この分解液を50mlメスフラスコに移し、2%モリブデン酸アンモニウム溶液5mlおよび0.2%硫酸ヒドラジン溶液2mlを加え、純水にてメスアップし、内容物をよく混合した。沸騰水浴中に10分間、前記メスフラスコをつけて加熱発色した後、室温まで水冷し、超音波にて脱気し、溶液を吸収セル10mmに採り、分光光度計(波長830nm)にて空試験液を対照にして吸光度を測定した。先に作成しておいた検量線からリン含有量(重量%)を求め、試料中のリン原子濃度(リン含有率)を算出した。
【0082】
<難燃性>
厚さ25μmのポリイミドフィルム(カネカ(株)製アピカルNPI)に、レジストインキを塗布した後、80℃×5分間乾燥して乾燥塗膜(厚み15μm)を調製した。次いで、120℃で1時間の熱処理を行なった。得られた積層フィルムについて、UL94規格に従い、難燃性を評価した。難燃性は,UL94規格において、VTM−1以上が好ましく、VTM−0が最も好ましい。
【0083】
<低反り性>
厚さ25μmのポリイミドフィルム(カネカ(株)製アピカルNPI)に、レジストインキを塗布した後、80℃×5分間乾燥して乾燥塗膜(厚み15μm)を調製した。次いで、120℃で1時間の熱処理を行なった。得られた積層フィルムを10cm×10cmに切り出した。次いで、この積層フィルムを25℃、相対湿度65%で、24時間調湿して測定試料とし、下に凸の状態で水平なガラス板に載せ、四隅の高さの平均を以下の基準で評価した。
◎:高さ1mm未満
○:高さ2mm未満
△:高さ10mm未満
×:高さ10mm以上
【0084】
<半田耐熱性>
電解銅箔にレジストインキを塗布した後、80℃×5分間乾燥して乾燥塗膜(厚み15μm)を調製した。次いで、120℃で1時間の熱処理を行い、レジスト膜積層体を得た(以下、同様に作製したものをレジスト膜積層体と称する)。このレジスト膜に、ロジン系フラックスEC−19S−10(タムラ科研(株)製)を塗布した後、JIS−C6481に準じて280℃の半田浴に30秒間浸漬し、剥がれや膨れ等の外観異常の有無を以下の基準で評価した。
○:外観異常なし
△:わずかに外観異常あり
×:全面外観異常あり
【0085】
<屈曲性>
上記のレジスト膜積層体に対して、JIS−K5400に準拠して評価を行った。心棒の直径は2mmとし、クラック発生の有無を以下の基準で評価した。
○:クラックの発生なし
×:クラックの発生あり
【0086】
<耐ブロッキング性>
上記のレジスト膜積層体を、5cm×5cmの大きさにカットした試験片を2つ用意し、レジスト塗布面同士を重ね合わせたものを一組とした。これを150℃×100時間熱処理した後、試験片を引き離し、ブロッキングの有無について以下の基準で評価した。
○:ブロッキングの発生なし
×:ブロッキングの発生あり
【0087】
<合成例1−1>
撹拌器及び温度計を装備した四つ口フラスコにおいて、ポリカーボネートポリオール化合物(a)としてポリカーボネートジオール(クラレポリオール C−2050:(株)クラレ製、Mn=2000)1400重量部を、溶剤であるγ−ブチロラクトン1521重量部に溶解し、65℃にて撹拌・溶解した。そこへ、ジイソシアネート化合物(b)として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)52.6重量部を添加・撹拌し、ここに触媒であるジブチルスズジラウレート0.1重量部を添加し、100℃×2時間反応させた。次いで、テトラカルボン酸二無水物(d)として無水ピロメリット酸(PMDA)68.7重量部を添加・撹拌し、ここに触媒である4−ジメチルアミノピリジン3.9重量部を添加し、100℃×8時間反応させた。その後、γ−ブチロラクトン331重量部を加えて希釈し、室温まで冷却することで固形分濃度45重量%のカルボキシル基含有樹脂(1−1)を得た。この樹脂の組成と物性を表1に示す。
【0088】
<合成例1−2〜1−5>
原料の組成を表1に記載のようにそれぞれ変更したこと以外は合成例1−1と同様にして、カルボキシル基含有樹脂(1−2〜1−5)を得た。これらの樹脂の組成と物性を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1中の記号の意味は以下の通りである。
C−2050 :(株)クラレ製、ポリカーボネートジオール(3−メチル−
1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール)、
数平均分子量約2,000
UH−CARB100:宇部興産(株)製、ポリカーボネートジオール(1,6−
ヘキサンジオール)、数平均分子量約1,000
G3452 :旭化成ケミカルズ(株)製、ポリカーボネートジオール(2−
メチル−1,3−プロパンジオール/1,4−ブタンジオー
ル)、数平均分子量約2,000
T5650E :旭化成ケミカルズ(株)製、ポリカーボネートジオール(1,
5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール)、数平均
分子量約500
MDI :4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
HDI :1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
IPDI :イソホロンジイソシアネート
BTDA :3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水

PMDA :ピロメリット酸二無水物
OPDA :4,4’−オキシジフタル酸二無水物
【0091】
<合成例2−1>
撹拌器及び温度計を装備した四つ口フラスコにおいて、ポリカーボネートポリオール化合物としてポリカーボネートジオール(クラレポリオール C−2050:(株)クラレ製、Mn=2000)553重量部、カルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物として2,2−ジメチロールブタン酸(DMBA)62.2重量部を、溶剤であるγ−ブチロラクトン787重量部に溶解し、90℃にて撹拌・溶解した。反応液の温度を70℃まで下げ、そこへ、ジイソシアネート化合物として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)172重量部を添加・撹拌し、ここに触媒であるジブチルスズジラウレート0.2重量部を添加し、100℃×4時間反応を行い、ほぼイソシアネートが消失したことを確認した。その後、γ−ブチロラクトン175重量部を加えて希釈し、室温まで冷却することで固形分濃度45重量%のカルボキシル基含有樹脂(2−1)を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂は、数平均分子量が8,800であり、固形分の酸価が560eq/tであった。
【0092】
<合成例2−2>
撹拌器及び温度計を装備した四つ口フラスコにおいて、ポリカーボネートポリオール化合物としてポリカーボネートジオール(PLACCEL CD−220:ダイセル化学(株)製、Mn=2000)1000重量部を、溶剤であるγ−ブチロラクトン833.5重量部に溶解し、65℃にて撹拌・溶解した。そこへ、ジイソシアネート化合物として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)250.3重量部を添加・撹拌し、140℃×5時間反応させた。次いで、カルボン酸無水物としてトリメリット酸無水物288.2重量部、ジイソシアネート化合物として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)125.1重量部、及び溶剤であるγ−ブチロラクトン1361重量部を添加・撹拌し、160℃×6時間反応させた。その後、室温まで冷却することで固形分濃度54重量%の樹脂(2−2)を得た。得られた樹脂は、数平均分子量が18,000であり、固形分の酸価が400eq/tであった。
【0093】
<実施例1>
合成例1−1で得られたカルボキシル基含有樹脂(1−1)の樹脂分100重量部に対して、エピクロンHP−7200(DIC(株)製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の商品名)21重量部を加え、γ−ブチロラクトンで希釈した。さらに難燃剤としてエクソリットOP−935(クラリアントジャパン(株)製、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウムの商品名)を52重量部、硬化促進剤としてUCAT−5002(サンアプロ(株)製)を1.2重量部、消泡剤としてBYK−054(ビックケミー(株)製)を3.0重量部、レベリング剤としてBYK−358(ビックケミー(株)製)を3.1重量部、フィラーとしてアエロジェル300(日本アエロジル(株)製、親水性シリカ微粒子)を4.6質量部加え、まず粗混練りし、次いで高速3本ロールを用いて3回混練りを繰り返すことで、均一にフィラーが分散しチキソトロピー性を有する、熱硬化性樹脂組成物からなるレジストインキを得た。γ−ブチロラクトンで粘度を調整したところ、溶液粘度が250ポイズ、揺変度は2.7であった。厚さ18μmの電解銅箔の光沢面、または厚さ25μmのポリイミドフィルム(カネカ製、アピカルNPI)、または2層CCL(東洋紡製、商品名:バイロフレックス)上に線間50μmの櫛型パターンを作成した回路に、得られた熱硬化性樹脂組成物からなるレジストインキを乾燥後の厚さ15μmになるよう塗布した。80℃で10分熱風乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で60分加熱して積層フィルムを得た。レジストインキの配合及び塗膜物性を表2に示す。
【0094】
<実施例2〜10、比較例1〜5>
配合組成を表2に記載のようにそれぞれ変更した以外は同様にして実施例2〜10、比較例1〜5のレジストインキを得て評価した。レジストインキの配合及び塗膜物性を表2に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
表2中の記号の意味は以下の通りである。
HP−7200 :DIC(株)製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂
EXA−4816 :DIC(株)製、脂肪族変性エポキシ樹脂
jER−152 :ジャパンエポキシレジン(株)製、フェノールノボラック型
エポキシ樹脂
OP−935 :クラリアントジャパン(株)製、トリスジエチルホスフィン
酸アルミニウム
OP−930 :クラリアントジャパン(株)製、トリスジエチルホスフィン
酸アルミニウム
HCA−HQ :(株)三光製、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)
−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=
10−オキシド
BCA :(株)三光製、10H−9−オキサ−10−フォスファ−
10−フェナンスリルメチルベンゼン
PHOSMEL−200:日産化学工業(株)製、ポリリン酸メラミン・メラム・
メレム
UCAT−5002 :サンアプロ(株)製、硬化促進剤、DBU系テトラフェニル
ボレート塩
BYK−054 :ビックケミー(株)製、消泡剤
BYK−354 :ビックケミー(株)製、レベリング剤
アエロジェル300 :日本アエロジル(株)製、親水性シリカ微粒子
【0097】
表2から明らかなように、実施例1〜10においては、ソルダーレジストとしてのすべての評価項目において、良好な評価結果を得ることができた。また、実施例8、9においては、ソルダーレジストとしてのすべての評価項目が良好であるのに加え、低反り性が特に良好であった。難燃助剤を併用することで、少ない有機フィラー量で効率良く難燃性を発現することができ、結果として低反り性が極めて良好になった。
【0098】
一方、比較例1は、半田耐熱性、耐ブロッキング性が劣ることが確認された。この系ではエポキシ樹脂を含まないため硬化性を有さず、半田耐熱性や耐ブロッキング性が不十分であった。比較例2は、難燃性が劣ることが確認された。この系では難燃剤を含まないため、他のソルダーレジストとしての特性は良好であるが難燃性を有さなかった。
【0099】
比較例3は、難燃性、半田耐熱性、耐ブロッキング性が劣ることが確認された。この系では、リン原子を含有する有機フィラーの代わりに、リン原子含有有機化合物(BCA)を難燃剤として用いた。難燃剤を多量に配合しているにも関わらずリン含有率が少なく、難燃性は不十分であった。また、BCAは非架橋性であるため硬化が不十分であり、半田耐熱性はNGとなり、BCAのブリードアウトによるブロッキングも発生した。
【0100】
比較例4は、半田耐熱性、屈曲性、耐ブロッキング性が劣ることが確認された。ここで使用している樹脂は、2,2−ジメチロールブタン酸を多く共重合することでカルボキシル基を樹脂に導入しているが、2,2−ジメチロールブタン酸は重合性が悪く樹脂主鎖中に局在化してしまい、分子量も低い。さらに未反応物としても残るため、硬化性が悪く、半田耐熱性試験でも塗膜の剥離が顕著であり、屈曲性試験では塗膜がすぐに割れてしまった。また、未反応物のブリードアウトによりブロッキングも発生した。
【0101】
比較例5は、低反り性、屈曲性が劣ることが確認された。ここで使用している樹脂は、骨格中にアミド・イミド結合を含んでいるため実施例に比べ剛直な骨格を有しており、弾性率が高い。難燃性付与のために多量の難燃性フィラーを添加しているが、塗膜が脆くなってしまい、屈曲性試験では塗膜が割れてしまう。また、反りも発生し、低反り性についても不十分なものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化性に優れ、良好な屈曲性、低反り性、半田耐熱性、耐マイグレーション性、耐めっき性、難燃性などを有する熱硬化性層を製造でき、プリント回路基板のレジスト層として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子中に1つ以上のカルボキシル基を含有する樹脂、
(B)オキシラン環を含有する化合物、及び
(C)リン原子を含有する有機フィラー
を含む熱硬化性樹脂組成物であって、前記分子中に1つ以上のカルボキシル基を含有する樹脂(A)が、ポリカーボネートポリオール化合物(a)とジイソシアネート化合物(b)を反応させて得られる末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマー(c)と、テトラカルボン酸二無水物(d)とを反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
分子中に1つ以上のカルボキシル基を含有する樹脂(A)の酸価が250〜2000当量/10gであることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
分子中に1つ以上のカルボキシル基を含有する樹脂(A)の数平均分子量が1000〜100000であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
オキシラン環を含有する化合物(B)がエポキシ化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
リン原子を含有する有機フィラー(C)がホスフィン酸塩からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
カルボキシル基を含有する樹脂(A)と、オキシラン環を含有する化合物(B)と、リン原子を含有する有機フィラー(C)の質量比率が、(A)/(B)/(C)=30〜95/1〜50/2〜55であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
カルボキシル基を含有する樹脂(A)と、オキシラン環を含有する化合物(B)と、リン原子を含有する有機フィラー(C)を合わせた質量が、熱硬化性樹脂組成物中の20質量%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
(D)硬化促進剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物をレジスト層として使用することを特徴とするプリント回路基板。

【公開番号】特開2012−193279(P2012−193279A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58334(P2011−58334)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】