説明

熱硬化性樹脂製造用の組成物及びその硬化物、該硬化物を含むプリプレグ及びプリプレグ積層体、並びに該プリプレグまたはプリプレグ積層体を採用した金属箔積層板及びプリント配線板

【課題】熱硬化性樹脂製造用の組成物及びその硬化物、該硬化物を含むプリプレグ及びプリプレグ積層体、並びに該プリプレグまたはプリプレグ積層体を採用した金属箔積層板及びプリント配線板を提供する。
【解決手段】アミノ末端基を有する芳香族ポリエステルアミド共重合体及びピロメリット酸二無水物を含む熱硬化性樹脂製造用の組成物であり、芳香族ポリエステルアミド共重合体は、アミノ末端基を有するものであって、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位A10〜30モル%と、フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミンから由来する反復単位B、及び芳香族ジアミンから由来する反復単位B’のうち少なくとも1つの反復単位15〜25モル%と、芳香族ジオールから由来する反復単位C15〜30モル%と、芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位D30〜60モル%からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂製造用の組成物及びその硬化物、前記硬化物を含むプリプレグ及びプリプレグ積層体、並びに前記プリプレグまたはプリプレグ積層体を採用した金属箔積層板及びプリント配線板に係り、さらに詳細には、アミノ末端基を有する芳香族ポリエステルアミド共重合体及びピロメリット酸二無水物を含む熱硬化性樹脂製造用の組成物及びその硬化物、前記硬化物を含むプリプレグ及びプリプレグ積層体、並びに前記プリプレグまたはプリプレグ積層体を採用した金属箔積層板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子機器の小型化、多機能化によって、プリント配線板の高密度化、小型化が進んでおり、銅箔積層板(copper clad laminate)は、スタンピング加工性、ドリル加工性にすぐれ、価格が高価ではなく、電子機器のプリント配線板用基板として広く利用されている。
【0003】
このようなプリント配線板用銅箔積層板に適用されるプリプレグは、半導体の性能及び半導体パッケージング製造工程条件に適するように主要特性を満足せねばならない。
(1)金属熱膨張率に対応可能な低熱膨脹率
(2)1GHz以上の高周波領域での低誘電定数及び誘電安定性
(3)270℃ほどのリフロー工程に対する耐熱性
【0004】
前記プリプレグは、エポキシ樹脂またはビスマレイミドトリアジン樹脂をガラス織布に含浸させた後、乾燥及び半硬化させて製造する。次に、前記プリプレグまたはプリプレグ積層体に銅箔を積層し、前記樹脂を完全硬化させて銅箔積層板を製造する。かような銅箔積層板は、薄膜化されて、270℃のリフロー工程などの高温工程を経ることになるが、このような高温工程を経つつ、薄膜状の銅箔積層板が熱変形によって収率が低下するというような問題点がある。また、エポキシ樹脂またはビスマレイミドトリアジン樹脂は、それ自体の高吸湿性によって、低吸湿性への改善が要求されており、特に、1GHz以上の高周波領域での誘電特性に劣り、高周波、高速処理を要求する半導体パッケージング用のプリント配線板に適用し難いという問題点がある。従って、かかる問題点を引き起こさない低誘電性のプリプレグが要求されている。
【0005】
また、最近、エポキシ樹脂またはビスマレイミドトリアジン樹脂の代替方策として、芳香族ポリエステルをプリプレグ製造に利用した例もある。かようなプリプレグは、芳香族ポリエステルを有機織布または無機織布に含浸させて製造する。特に、芳香族ポリエステル樹脂と芳香族ポリエステル織布とを使用し、芳香族ポリエステル・プリプレグを製造した場合もある。具体的には、芳香族ポリエステル樹脂を塩素のようなハロゲン元素を含有する溶剤に溶解させて溶液組成物を製造し、この溶液組成物を芳香族ポリエステル織布に含浸させた後で乾燥させ、芳香族ポリエステル・プリプレグを製造する。しかし、この方法は、ハロゲン元素を含有する溶剤を完全に除去し難く、ハロゲン元素が銅箔を腐食させることがあり、非ハロゲン溶剤の使用への改善が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一具現例は、アミノ末端基を有する芳香族ポリエステルアミド共重合体及びピロメリット酸二無水物を含む熱硬化性樹脂製造用の組成物を提供する。
本発明の他の具現例は、前記熱硬化性樹脂製造用組成物の硬化物を含む熱硬化性樹脂フィルムを提供する。
【0007】
本発明のさらに他の具現例は、前記熱硬化性樹脂製造用組成物の硬化物を含むプリプレグとプリプレグ積層体とを提供する。
【0008】
本発明のさらに他の具現例は、前記プリプレグまたはプリプレグ積層体を採用した金属箔積層板及びプリント配線板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、アミノ末端基を有するものであって、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位A
10〜30モル%;フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミンから由来する反復単位Bと、芳香族ジアミンから由来する反復単位B’とのうち少なくとも一つの反復単位15〜25モル%;芳香族ジオールから由来する反復単位C15〜30モル%;芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位D30〜60モル%を;含む芳香族ポリエステルアミド共重合体100重量部:ピロメリット酸二無水物10〜900重量部:を含む熱硬化性樹脂製造用の組成物を提供する。
【0010】
前記反復単位Aは、パラヒドロキシベンゾ酸及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸のうち少なくとも1種の化合物から由来したものであって、前記反復単位Bは、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール及び2−アミノ−6−ナフトールからなる群から選択された少なくとも1種の化合物から由来したものであって、前記反復単位B’は、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン及び2,6−ナフタレンジアミンからなる群から選択された少なくとも1種の化合物から由来したものであって、前記反復単位Cは、レゾルシノール、ビフェノール及びヒドロキノンからなる群から選択された少なくとも1種の化合物から由来したものであって、前記反復単位Dは、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸のうち少なくとも1種の化合物から由来したものでありうる。
【0011】
前記反復単位B、反復単位B’、反復単位C及び反復単位Dの含有量は、下記条件を満足しうる:
1.0≦[n(B)+n(B’)+n(C)]/n(D)<1.5
ここで、n(B)、n(B’)、n(C)及びn(D)は、それぞれ前記芳香族ポリエステルアミド共重合体に含まれた反復単位B、反復単位B’、反復単位C及び反復単位Dのモル数である。
【0012】
本発明の他の側面は、前記熱硬化性樹脂製造用組成物の硬化物を含む熱硬化性樹脂フィルムを提供する。
【0013】
本発明のさらに他の側面は、基材と、前記基材に含まれた前記熱硬化性樹脂製造用組成物の硬化物と、を含むプリプレグを提供する。
【0014】
前記基材の単位面積当たり含まれた前記熱硬化性樹脂製造用の組成物及びその硬化物の合計含有量は、0.1〜1,000g/m範囲でありうる。
【0015】
前記基材は、芳香族ポリエステル・ファイバ、芳香族ポリエステルアミド・ファイバ、ガラスファイバ、カーボンファイバ及び紙からなる群から選択された少なくとも一つを含むことができる。
【0016】
前記プリプレグは、前記熱硬化性樹脂製造用の組成物及びその硬化物の合計含有量100重量部に対して、有機フィラ及び無機フィラのうち少なくとも1つのフィラ0.0001〜100重量部をさらに含むことができる。
【0017】
前記プリプレグに含まれた前記硬化物を完全硬化させた後で測定した、前記プリプレグの一方向の熱膨張率は、20ppm/K以下でありうる。
【0018】
前記プリプレグに含まれた前記硬化物を完全硬化させた後で測定した、前記プリプレグの誘電定数(@1GHz)は、4.0以下であり、誘電損失(@1GHz)は、0.01以下でありうる。
【0019】
前記プリプレグに含まれた前記硬化物を完全硬化させた後で測定した、前記プリプレグの屈曲弾性率は、10〜30GPaでありうる。
【0020】
本発明のさらに他の側面は、前記プリプレグを少なくとも一つ含むプリプレグ積層体を提供する。
【0021】
本発明のさらに他の側面は、前記プリプレグと、前記プリプレグの少なくとも一面に配された少なくとも1枚の金属薄膜と、を含む金属箔積層板を提供する。
【0022】
前記プリプレグは、少なくとも2枚のプリプレグ積層体でありうる。
【0023】
本発明のさらに他の側面は、前記金属箔積層板の金属薄膜をエッチングして得られるプリント配線板を提供する。
【0024】
本発明のさらに他の側面は、前記熱硬化性樹脂フィルムの少なくとも一面に金属回路パターンを印刷して形成されたプリント配線板を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一具現例によれば、アミノ末端基を有する芳香族ポリエステルアミド共重合体及びピロメリット酸二無水物を含むことによって、非ハロゲン溶剤に溶解されうる熱硬化性樹脂製造用の組成物が提供されうる。
【0026】
本発明の他の具現例によれば、前記熱硬化性樹脂製造用組成物の硬化物を含むことによって、低熱膨脹率、低誘電定数、低誘電損失、低吸湿性及び高屈曲弾性率を有する熱硬化性樹脂フィルム、プリプレグ及びプリプレグ積層体が提供されうる。
【0027】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記プリプレグまたはプリプレグ積層体を採用した金属箔積層板及びプリント配線板が提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一具現例による熱硬化性樹脂製造用の組成物及びその硬化物、及び前記硬化物を含むプリプレグについて詳細に説明する。
【0029】
本発明の一具現例による熱硬化性樹脂製造用の組成物は、アミノ末端基を有する芳香族ポリエステルアミド共重合体100重量部及びピロメリット酸二無水物10〜900重量部を含む。
【0030】
前記芳香族ポリエステルアミド共重合体及び前記ピロメリット酸二無水物の含有量比率が前記範囲内であるならば、前記熱硬化性樹脂製造用組成物の硬化物(すなわち、架橋樹脂)が低熱膨脹特性及び低誘電特性を有し、架橋度が高く、高架橋密度によって低吸湿性を有し、併せて高透明性及び高屈曲弾性率(high flexural modulus)を有することになる。
【0031】
前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位A
10〜30モル%;フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミンから由来する反復単位Bと、芳香族ジアミンから由来する反復単位B’とのうち少なくとも1つの反復単位15〜25モル%;芳香族ジオールから由来する反復単位C15〜30モル%;芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位D30〜60モル%;を含むことができる。
【0032】
前記反復単位Aの含有量が前記範囲内であるならば、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体の機械的強度が高くて熱的特性にすぐれ、前記反復単位B及び反復単位B’の合計含有量が前記範囲内であるならば、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、溶剤に対する高溶解度及び適正レベルの溶融温度を有し、前記反復単位Cの含有量が前記範囲内であるならば、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、溶剤に対する高い溶解度、適正レベルの溶融温度及び高透明性を有し、前記反復単位Dの含有量が前記範囲内であるならば、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、溶剤に対する高い溶解度、低熱膨脹特性及び低誘電特性を有することになる。
【0033】
また、前記反復単位Aは、パラヒドロキシベンゾ酸及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸のうち少なくとも1種の化合物から由来したものであって、前記反復単位Bは、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール及び2−アミノ−6−ナフトールからなる群から選択された少なくとも1種の化合物から由来したものであって、前記反復単位B’は、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン及び2,6−ナフタレンジアミンからなる群から選択された少なくとも1種の化合物から由来したものであって、前記反復単位Cは、レゾルシノール、ビフェノール及びヒドロキノンからなる群から選択された少なくとも1種の化合物から由来したものであって、前記反復単位Dは、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸のうち少なくとも1種の化合物から由来したものでありうる。
【0034】
また、前記反復単位B、反復単位B’、反復単位C及び反復単位Dの含有量は、下記条件を満足しうる:
1.0≦[n(B)+n(B’)+n(C)]/n(D)<1.5
ここで、n(B)、n(B’)、n(C)及びn(D)は、それぞれ前記芳香族ポリエステルアミド共重合体に含まれた反復単位B、反復単位B’、反復単位C及び反復単位Dのモル数である。
【0035】
前記含有量比{[n(B)+n(B’)+n(C)]/n(D)}が前記範囲内であるならば、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、多数のアミノ末端基及び/またはヒドロキシ末端基を含み、その後エポキシ樹脂と硬化反応を起こし、架橋密度の高い熱硬化性樹脂を形成する。
【0036】
例えば、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体に含まれるそれぞれの反復単位は、下記の化学式のうちいずれか一つに表示されうる。
【0037】
(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位A:

【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


【化5】

【0038】
(2)フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミンから由来する反復単位B:

【化6】


【化7】


【化8】

【0039】
(3)芳香族ジアミンから由来する反復単位B’:

【化9】


【化10】


【化11】

【0040】
(4)芳香族ジオールから由来する反復単位C:

【化12】


【化13】


【化14】


【化15】

【0041】
(5)芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位D:

【化16】


【化17】


【化18】


【化19】


【化20】


【化21】


【化22】


【化23】

【0042】
前記化学式で、R及びRは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン原子、カルボン酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C30アリール基、置換または非置換のC−C30アリールアルキル基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基、または置換または非置換のC−C30ヘテロアリールアルキル基でありうる。本明細書で、用語「置換」とは、水素が、ハロゲン基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはそれらのうち2以上で置換されたことを意味する。
【0043】
かかる芳香族ポリエステルアミド共重合体は、(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸またはそのエステル形成用誘導体、(2)フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミンまたはそのアミド形成用誘導体、及び芳香族ジアミンまたはそのアミド形成用誘導体からなる群から選択された少なくとも1種、(3)芳香族ジオールまたはそのエステル形成用誘導体、(4)芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成用誘導体を重合することによって得られる。
【0044】
前記芳香族ヒドロキシカルボン酸または芳香族ジカルボン酸のエステル形成用誘導体は、それが酸塩化物または酸無水物のような反応性の高い誘導体であるか、またはアルコール類やエチレングリコールなどと、エステル結合を形成するものでありうる。
【0045】
また、前記芳香族アミンまたは芳香族ジアミンのアミド形成用誘導体は、そのアミノ基が、カルボン酸類とアミド結合を形成するものでありうる。
【0046】
また、前記芳香族ジオールのエステル形成用誘導体は、そのヒドロキシル基が、カルボン酸類とエステル結合を形成するものでありうる。
【0047】
前記の通りに製造された芳香族ポリエステルアミド共重合体は、溶剤に溶解され、例えば、400℃以下で光学的異方性を示す溶融体を形成することができる熱屈性(thermotropic)液晶ポリエステルアミド共重合体でありうる。例えば、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、溶融温度が250〜400℃であり、数平均分子量が1,000〜20,000でありうる。
【0048】
前記のような芳香族ポリエステルアミド共重合体は、下記方法によって製造されうる。すなわち、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、前記反復単位Aに対応する芳香族ヒドロキシカルボン酸、前記反復単位B及び/または反復単位B’にそれぞれ対応する芳香族アミン及び/または芳香族ジアミン、及び前記反復単位Cに対応する芳香族ジオールのヒドロキシル基やアミノ基を、脂肪酸無水物によってアシル化させてアシル化物を得て、このように得られたアシル化物と芳香族ジカルボン酸とを、エステル交換することによって溶融重合する方法によって製造されうる。このとき、前記脂肪酸無水物の使用量を適切に調節することによって、アミノ末端基を有し、所定の重合度を有する芳香族ポリエステルアミド共重合体を製造されうる。例えば、前記脂肪酸無水物の使用量を増やせば、生成される芳香族ポリエステルアミド共重合体で、アミノ末端基の個数は減少し、カルボキシ末端基の個数及び重合度が増大し、前記使用量を減らせば、アミノ末端基の個数が増加し、カルボキシ末端基の個数及び重合度は低減する。
【0049】
前記アシル化反応において、脂肪酸無水物の添加量は、ヒドロキシル基及びアミノ基の合計当量の0.9〜1.2倍当量、例えば、0.95〜1.05倍当量でありうる。前記脂肪酸無水物の添加量が前記範囲内であるならば、生成される芳香族ポリエステルアミド共重合体がアミノ末端基を有し、生成される芳香族ポリエステルアミド共重合体の着色が減り、生成された芳香族ポリエステルアミド共重合体で、原料モノマーなどの昇華が起こらず、フェノールガスの発生量も少なくなる。かようなアシル化反応は、130〜170℃で30分〜8時間、例えば、140〜160℃で2〜4時間進められる。
【0050】
前記アシル化反応に使われる脂肪酸無水物は、アセト酸無水物(acetic anhydride)、無水プロピオン酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水酪酸などがあり、それらに特別に限定されるものではない。また、それらのうち二種以上を混合して使用することができる。
【0051】
前記エステル交換及びアミド交換反応は、130〜400℃で0.1〜2℃/分の昇温速度、例えば、140〜350℃で0.3〜1℃/分の昇温速度で実行されうる。
【0052】
このようにアシル化させて得た脂肪酸エステルと、芳香族ジカルボン酸とをエステル交換反応及びアミド交換反応させるとき、平衡を移動させて反応速度を上昇させるために、副生産物となる脂肪酸と未反応無水物とを、蒸発または蒸留によって反応系外に排出させることができる。
【0053】
また、前記アシル化反応、エステル交換反応及びアミド交換反応は、触媒の存在下で進められる。前記触媒は、従来からポリエステル樹脂製造用触媒として公知されてきたものであり、酢酸マグネシウム、酢酸第1スズ、チタン酸テトラブチル、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどがある。前記触媒は、通常単量体の投入時に単量体と同時に投入され、前記触媒の存在下で、アシル化反応及びエステル交換反応が起こる。
【0054】
前記エステル交換反応及びアミド交換反応による重縮合は、溶融重合によって実行され、生成される芳香族ポリエステルアミド共重合体が、その後エポキシ樹脂と架橋反応(すなわち、硬化)し、重合度が高く、機械的強度にすぐれる硬化物を形成することになるので、固相重合は不要である。
【0055】
前記溶融重合に使われる重合器は、特別に限定されるものではなく、高粘度反応に一般的に使われる撹拌設備を装着した反応器でありうる。このとき、アシル化工程の反応器及び溶融重合工程の重合器として、同じ反応器が使われもし、各工程に、互いに異なる反応器が使われもする。
【0056】
前記のような構成を有する本発明の一具現例による芳香族ポリエステルアミド共重合体は、アミノ末端基を有し、ピロメリット酸二無水物と高度の架橋反応を起こしうる。
【0057】
また、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体は、3ppm/K以下の熱膨張率を有する。
【0058】
本発明の一具現例による熱硬化性樹脂製造用の組成物は、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体及びピロメリット酸二無水物を所定割合で混合することによって製造されうる。
【0059】
一方、一般的な溶媒キャスティング法を使用し、前記熱硬化性樹脂製造用の組成物から熱硬化性樹脂フィルムを製造することができる。
【0060】
また、かかる熱硬化性樹脂製造用の組成物は、溶剤に溶解されうる。従って、前記熱硬化性樹脂製造用の組成物を、基材に含浸または塗布した後で乾燥及び熱硬化(主に半硬化)させることによって、プリプレグを製造することができる。この場合、前記熱硬化により、前記プリプレグに含まれていた前述の熱硬化性樹脂製造用組成物の構成成分同士で、部分的に架橋反応して架橋樹脂を形成する。すなわち、前記熱硬化性樹脂製造用組成物の一構成成分である芳香族ポリエステルアミド共重合体のアミノ末端基と、他構成成分のピロメリット酸二無水物とが部分的に架橋反応して、架橋樹脂(すなわち、硬化物)を形成する。前記硬化物は、前記芳香族ポリエステルアミド共重合体の物性をそのまま有して、低熱膨脹率、低誘電率及び低誘電損失を有するだけではなく、低吸湿率及び高屈曲弾性率を有する。
【0061】
本明細書で、用語「半硬化」とは、樹脂製造用組成物の硬化反応がある程度進んで熱を加える場合、生成された樹脂が熱によって溶融されないが、ソフトになり、特定溶剤に接触する場合、生成された樹脂が溶剤に溶解されないが、膨潤される状態を意味する。組成物が半硬化されて得られた樹脂を、一般的にB−stage樹脂という。「完全硬化」とは、組成物の硬化反応が完全に進められ、生成された樹脂が熱によってソフトにならず、溶剤によって膨潤されもしない状態を意味する。組成物が完全硬化されて得られた樹脂を、一般的にC−stage樹脂という。
【0062】
また、前記熱硬化性樹脂製造用の組成物は、プリプレグ以外の他の多様な用途に使われうる。
【0063】
前記プリプレグは、例えば、前記熱硬化性樹脂製造用の組成物を溶剤に溶解させた組成物溶液を、有機織布(fabrics)または無機織布の基材、及び/または有機不織布(non-fabrics)または無機不織布の基材に含浸させたり、または前記組成物溶液を前記織布及び/または不織布の基材に塗布した後、これを乾燥及び半硬化させることによって製造されうる。このとき、使用可能な成形法としては、溶液含浸法またはワニス含浸法などがある。
【0064】
前記熱硬化性樹脂製造用の組成物を溶解させる溶剤は、前記熱硬化性樹脂製造用の組成物100重量部に対して、100〜100,000重量部の含有量割合で使われ、前記溶剤の含有量比率が前記範囲内であるならば、前記熱硬化性樹脂製造用の組成物が十分に溶解されつつも、生産性が良好である。
【0065】
前記熱硬化性樹脂製造用の組成物を溶解する溶剤としては、非ハロゲン溶剤が使われうる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、前記溶剤として、極性非プロトン系化合物、ハロゲン化フェノール、o−ジクロロベンゼン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタンなどが、単独でまたは二種以上が共に使われうる。
【0066】
このように、前記熱硬化性樹脂製造用の組成物は、非ハロゲン溶剤にも好ましく溶解され、ハロゲン元素を含有する溶剤を使用しなくともよいので、前記組成物の硬化物を含む金属箔積層板またはプリント配線板の製造時、ハロゲン元素を含有する溶剤を使用する場合に発生する問題点である、金属薄膜がハロゲン元素によって腐食されるという現象を未然に防止することができる。
【0067】
前記基材としては、芳香族ポリエステル・ファイバ、芳香族ポリエステルアミド・ファイバ、ガラスファイバ、カーボンファイバ及び紙またはそれらのうち2以上の混合物を含む織布及び/または不織布が使われうる。
【0068】
前記プリプレグ製造工程で含浸法を使用する場合、前記組成物溶液を前記基材に含浸する時間は、例えば、0.001分〜1時間でありうる。前記含浸時間が前記範囲内であるならば、前記組成物溶液が均一に含浸され、生産性が高い。
【0069】
また、前記組成物溶液を前記基材に含浸させる温度は、20〜190℃でありうる。
【0070】
また、前記熱硬化性樹脂製造用の組成物が基材の単位面積当たり含浸される量は、0.1〜1,000g/m範囲でありうる。前記熱硬化性樹脂製造用組成物の含浸量が前記範囲内であるならば、生産性が高くて加工が容易である。従って、半硬化後、プリプレグには、基材の単位面積を基準に、約0.1〜1,000g/mの熱硬化性樹脂製造用の組成物及びその硬化物が含まれうる。
【0071】
前記組成物溶液には、誘電定数及び熱膨張率を調節するために、シリカ、水酸化アルミニウムまたは炭酸カルシウムのような無機フィラ、及び/または硬化エポキシまたは架橋アクリルのような有機フィラが添加されうる。例えば、高誘電定数の無機フィラが添加されうる。かような無機フィラとしては、チタン酸バリウムまたはチタン酸ストロンチウムのようなチタン酸塩、またはチタン酸バリウムのチタンまたはバリウムの一部を、他の金属で代替したものなどが使われうる。前記組成物溶液において、かかる無機フィラ及び/または有機フィラの含有量は、前記熱硬化性樹脂製造用の組成物100重量部に対して、0.0001〜100重量部でありうる。前記無機フィラ及び/または有機フィラの含有量が前記範囲内であるならば、プリプレグの誘電定数が高まり、熱膨張率が低くなるだけではなく、半硬化後、熱硬化性樹脂製造用の組成物及びその硬化物が有するバインダとしての効果が十分に維持される。従って、半硬化後にプリプレグには、熱硬化性樹脂製造用の組成物及びその硬化物の合計含有量100重量部に対して、0.0001〜100重量部の無機フィラ及び/または有機フィラが含まれうる。
【0072】
本発明の一具現例によるプリプレグは、低熱膨脹率、低誘電特性、低吸湿性及び高屈曲弾性率を有する前記熱硬化性樹脂製造用組成物の硬化物;機械的強度にすぐれる有機織布または無機織布、及び/または有機不織布または無機不織布;を含むために、寸法安定性にすぐれて熱変形が少なく、丈夫であるだけではなくして柔軟であるために、ビアホールドリル加工及び積層加工に有利である。従って、前記プリプレグは、柔軟な基板素材として、多様な分野に適用することができる。
【0073】
前記プリプレグを製造する含浸法において、前記組成物溶液を前記基材に含浸させたり、または前記組成物溶液を前記基材に塗布した後で、前記溶剤を除去する方法は、特別に限定されるものではないが、溶剤蒸発によりうる。例えば、加熱、減圧または通風のような蒸発方法が可能である。また、前記組成物溶液が含浸されたプリプレグを20〜190℃で1分〜2時間乾燥させ、前記溶剤を除去することができる。
【0074】
その後、前記乾燥されたプリプレグを120〜320℃で1〜8時間熱処理し、前記プリプレグに含まれていた熱硬化性樹脂製造用の組成物を半硬化させることができる。
【0075】
このように得られた本発明の一具現例によるプリプレグは、約5〜200μm、例えば、約30〜150μm厚を有する。
【0076】
また、前記プリプレグに含まれた硬化物(すなわち、半硬化樹脂)を完全硬化させた後で測定するとき、前記プリプレグの一方向の熱膨張率は、20ppm/K以下でありうる。前記プリプレグの熱膨張率が前記範囲内であるならば、前記プリプレグを採用した金属箔積層板で剥離現象が発生しない。
【0077】
また、前記プリプレグに含まれた硬化物を完全硬化させた後で測定するとき、前記プリプレグの誘電定数(@1GHz)は、4.0以下であり、誘電損失(dielectric loss)(@1GHz)は、0.01以下でありうる。本明細書で、「誘電損失」とは、誘電体に交流電場を印加した場合、前記誘電体の中で熱としてなくなるエネルギー損失を意味する。前記誘電定数及び誘電損失がそれぞれ前記範囲内であるならば、高周波領域で、前記硬化物を含むプリプレグは、絶縁基材として使われるのに適している。
【0078】
また、前記プリプレグに含まれた硬化物を完全硬化させた後で測定するとき、前記プリプレグの屈曲弾性率は、10〜30GPaでありうる。前記プリプレグの屈曲弾性率が前記範囲内であるならば、反り(warpage)が発生しない。
【0079】
前述のプリプレグの熱膨張率、誘電特性及び屈曲弾性率は、通常下記方法によって測定することができる。すなわち、前記プリプレグ(すなわち、基材に含浸された熱硬化性樹脂製造用の組成物を半硬化させた状態)の両面に、金属薄膜をそれぞれ積層させた後で加熱及び加圧して金属箔積層板を製造した後、前記金属箔積層板から金属薄膜をいずれも除去した後、プリプレグ部分を分析して、プリプレグの熱膨張率、誘電定数、誘電損失及び屈曲弾性率を測定することができる。前記加熱時及び加圧時、半硬化樹脂が完全に硬化される。
【0080】
一方、前記プリプレグを所定個数積層し、これを加熱及び加圧することによって、プリプレグ積層体を製造することができる。前記加熱時及び加圧時、半硬化樹脂が完全に硬化され、ほとんど架橋樹脂に転換される。
【0081】
また、前記プリプレグまたはプリプレグ積層体の一面または両面に、銅箔、銀箔またはアルミ箔のような金属薄膜を配し、加熱及び加圧することによって、金属箔積層板を製造することができる。前記加熱時及び加圧時、半硬化樹脂がある場合、完全に硬化されて、ほとんど架橋樹脂に転換される。
【0082】
前記金属箔積層板において、プリプレグまたはプリプレグ積層体厚及び金属薄膜厚は、それぞれ0.1〜300μmでありうる。前記プリプレグまたはプリプレグ積層体の厚みが前記範囲内であるならば、巻き取り方式の加工時、クラックがあまり発生せず、限定された厚みの多層積層に有利である。前記金属薄膜の厚みが前記範囲内であるならば、金属薄膜積層時にクラックがあまり発生せず、多層積層に有利である。
【0083】
前記金属箔積層板製造時に適用される加熱及び加圧の条件は、例えば、150〜250℃及び10〜30MPaであるが、プリプレグの特性や熱硬化性樹脂製造用組成物の反応性、プレス機の能力、目的とする金属箔積層板の厚みなどを考慮して適当に決定されうるので、特別に限定されるものではない。
【0084】
また、本発明の一具現例による金属箔積層板は、プリプレグ積層体と金属薄膜との接合強度を高めるために、それらの間に介在された接着剤層をさらに含むことができる。前記接着剤層の製造時、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が使われうる。また、前記接着剤層の厚みは、0.1〜100μmでありうる。前記接着剤層の厚みが前記範囲内であるならば、厚みが適当でありつつも接着強度が強い。
【0085】
また、前記金属箔積層板の金属薄膜をエッチングし、回路を形成することによって、プリント配線板を製造されうる。また、前記熱硬化性樹脂フィルムの少なくとも一面に、金属回路パターンを印刷することにより、プリント配線板を製造することもできる。また、必要によっては、前記プリント配線板にスルーホールなどを形成することもできる。
【0086】
本発明の一具現例による多層プリント配線板は、例えば、目的とする絶縁層の厚みに合わせ、内層基材や金属薄膜などの構成材間に、前記プリプレグを所定個数配し、加熱下及び加圧下で成形して製造することができる。このときの加熱及び加圧の条件は、前記金属箔積層板製造時の条件と同一でありえる。また、前記内層基材としては、電気絶縁材料として使われるプリプレグ積層体、金属箔積層板またはプリント配線板などが使われ、それら二種類以上が併用されもする。
【0087】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明がそれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0088】
(銅箔積層板の製造)
実施例1
1段階:芳香族ポリエステルアミド共重合体の製造
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を具備した反応器に、パラヒドロキシベンゾ酸179.6g(1.3モル)、4−アミノフェノール245.5g(2.3モル)、ヒドロキノン198.2g(1.8モル)、レゾルシノール44.0g(0.4モル)、イソフタル酸731.0g(4.4モル)及びアセト酸無水物1,123g(11モル)を投入した。前記反応器内部を、窒素ガスで十分に置換させた後、窒素ガス気流下で30分にわたって150℃まで昇温させ、この温度を維持しつつ3時間還流させた。
【0089】
その後、流出する酢酸及び未反応アセト酸無水物を蒸留除去しつつ、180分間320℃まで昇温させ、トルクが上昇する時点を反応終了と見なして内容物を排出させた。得られた固形分を室温まで冷却させ、微粉砕機で粉砕し、別途の固相重合反応なしに芳香族ポリエステルアミド共重合体粉末を得た。
【0090】
2段階:熱硬化性樹脂製造用の組成物溶液の製造
前記1段階で製造した芳香族ポリエステルアミド共重合体粉末500g及びピロメリット酸二無水物50gを、N−メチルピロリジノン(NMP)450gに添加し、25℃で4時間撹拌して、熱硬化性樹脂製造用の組成物溶液を得た。
【0091】
3段階:プリプレグの製造
前記2段階で製造した組成物溶液に、ガラス織布(IPC 1078)を常温で含浸させ、ダブルローラ間に通過させて余分の組成物溶液を除去し、厚みを一定にさせた。その後、内容物を高温熱風乾燥器に入れ、180℃で溶剤を除去してプリプレグを得た。
【0092】
4段階:銅箔積層板の製造
3段階で製造したプリプレグの両面に、厚み18μmの電解銅箔を1枚ずつそれぞれ位置させた後、前記積層体を熱板プレスを利用し、200℃及び30MPaの条件下で3時間加熱及び加圧し、金属箔積層板を製造した。
【0093】
実施例2
前記実施例1の1段階で製造したような芳香族ポリエステルアミド共重合体粉末55g及びピロメリット酸二無水物495gを使用したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で、熱硬化性樹脂製造用の組成物を製造した。また、前記実施例1と同じ方法で、プリプレグ及び銅箔積層板を製造した。
【0094】
比較例1
前記実施例1の1段階で製造したような芳香族ポリエステルアミド共重合体粉末550gだけを使用して、熱硬化性樹脂製造用の組成物溶液を製造した(ピロメリット酸二無水物は使用せず)。また、前記実施例1と同じ方法で、プリプレグ及び銅箔積層板を製造した。
【0095】
比較例2
前記実施例1の1段階で製造したような芳香族ポリエステルアミド共重合体粉末524g及びピロメリット酸二無水物26gを使用したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で、熱硬化性樹脂製造用の組成物を製造した。また、前記実施例1と同じ方法で、プリプレグ及び銅箔積層板を製造した。
【0096】
比較例3
前記実施例1の1段階で製造したような芳香族ポリエステルアミド共重合体粉末54.5g及びピロメリット酸二無水物495.5gを使用したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で、熱硬化性樹脂製造用の組成物を製造した。また、前記実施例1と同じ方法で、プリプレグ及び銅箔積層板を製造した。
【0097】
評価例
前記実施例1,2及び比較例1〜3でそれぞれ製造した銅箔積層板から、2枚の銅箔をいずれも除去した後、プリプレグ部分を分析し、それに含まれた樹脂の架橋度、前記プリプレグの熱膨張率、誘電特性、誘電損失及び屈曲弾性率をそれぞれ測定し、下記表1に示した。
【0098】
【表1】

【0099】
前記表1で、架橋度は、示差走査熱量計(DSC)(TA Instrument、DSC 2910)を使用し、常温から300℃まで20℃/minで昇温させて得た発熱ピークを分析して測定し、熱膨張率は、TMA(TMA Q400)を使用し、50〜200℃の温度範囲で測定し、誘電定数及び誘電損失は、インピーダンス分析機を使用し、常温条件で測定し、屈曲弾性率は、IPC−TM650によって測定した。
【0100】
前記表1を参照すれば、実施例1,2及び比較例2,3で製造した銅箔積層板は、架橋樹脂を含むが、比較例1で製造した銅箔積層板は、架橋樹脂を全く含まないという事実が分かる。従って、実施例1,2及び比較例2,3で製造した銅箔積層板は、比較例1で製造した銅箔積層板に比べ、優秀な耐熱性、耐化学性及び機械的強度を有する。一方、実施例1,2で製造した銅箔積層板は、銅箔を除外した部分(すなわち、プリプレグ部分)が、低熱膨脹率、低誘電定数、低誘電損失及び高屈曲弾性率を有するのに対して、比較例1,2で製造した銅箔積層板は、銅箔を除外した部分が屈曲弾性率が低いという短所がある。また、比較例3で製造した銅箔積層板は、銅箔を除外した部分が、実施例1,2及び比較例1,2に比べて熱膨張率及び誘電特性が劣悪である。
【0101】
本発明は、実施例を参考にして説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者であるならば、それらから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決まるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ末端基を有するものであって、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位A 10〜30モル%と、フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミンから由来する反復単位B、及び芳香族ジアミンから由来する反復単位B’のうち少なくとも1つの反復単位15〜25モル%と、芳香族ジオールから由来する反復単位C15〜30モル%と、芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位D30〜60モル%と、を含む芳香族ポリエステルアミド共重合体100重量部と、
ピロメリット酸二無水物10〜900重量部と、を含む熱硬化性樹脂製造用の組成物。
【請求項2】
前記反復単位Aは、パラヒドロキシベンゾ酸及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸のうち少なくとも1種の化合物から由来し、前記反復単位Bは、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール及び2−アミノ−6−ナフトールからなる群から選択された少なくとも1種の化合物から由来し、前記反復単位B’は、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン及び2,6−ナフタレンジアミンからなる群から選択された少なくとも1種の化合物から由来し、前記反復単位Cは、レゾルシノール、ビフェノール及びヒドロキノンからなる群から選択された少なくとも1種の化合物から由来し、前記反復単位Dは、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸のうち少なくとも1種の化合物から由来することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂製造用の組成物。
【請求項3】
前記反復単位B、反復単位B’、反復単位C及び反復単位Dの含有量は、下記条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂製造用の組成物:
1.0≦[n(B)+n(B’)+n(C)]/n(D)<1.5
ここで、n(B)、n(B’)、n(C)及びn(D)は、それぞれ前記芳香族ポリエステルアミド共重合体に含まれた反復単位B、反復単位B’、反復単位C及び反復単位Dのモル数である。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうち、いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂製造用組成物の硬化物を含む熱硬化性樹脂フィルム。
【請求項5】
基材と、
前記基材に含まれた請求項1ないし請求項3のうち、いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂製造用組成物の硬化物と、を含むプリプレグ。
【請求項6】
前記基材の単位面積当たり含まれた前記熱硬化性樹脂製造用の組成物及びその硬化物の合計含有量は、0.1〜1,000g/m範囲であることを特徴とする請求項5に記載のプリプレグ。
【請求項7】
前記基材は、芳香族ポリエステル・ファイバ、芳香族ポリエステルアミド・ファイバ、ガラスファイバ、カーボンファイバ及び紙からなる群から選択された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項5に記載のプリプレグ。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂製造用の組成物及びその硬化物の合計含有量100重量部に対して、有機フィラ及び無機フィラのうち少なくとも1つのフィラ0.0001〜100重量部をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のプリプレグ。
【請求項9】
前記プリプレグに含まれた前記硬化物を完全硬化させた後で測定した一方向の熱膨張率が、20ppm/K以下であることを特徴とする請求項5に記載のプリプレグ。
【請求項10】
前記プリプレグに含まれた前記硬化物を完全硬化させた後で測定した誘電定数(@1GHz)が、4.0以下であり、誘電損失(@1GHz)が、0.01以下であることを特徴とする請求項5に記載のプリプレグ。
【請求項11】
前記プリプレグに含まれた前記硬化物を完全硬化させた後で測定した屈曲弾性率が、10〜30GPaであることを特徴とする請求項5に記載のプリプレグ。
【請求項12】
請求項5ないし請求項11のうち、いずれか1項に記載のプリプレグを少なくとも一つ含むことを特徴とする請求項5に記載のプリプレグ積層体。
【請求項13】
請求項5ないし請求項11のうち、いずれか1項に記載のプリプレグと、
前記プリプレグの少なくとも一面に配された少なくとも1枚の金属薄膜と、を含む金属箔積層板。
【請求項14】
前記プリプレグは、少なくとも2枚のプリプレグ積層体であることを特徴とする請求項13に記載の金属箔積層板。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の金属箔積層板の金属薄膜をエッチングして得られるプリント配線板。
【請求項16】
請求項4に記載の熱硬化性樹脂フィルムの少なくとも一面に金属回路パターンを印刷して形成されたプリント配線板。

【公開番号】特開2012−12605(P2012−12605A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149284(P2011−149284)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(508130188)サムスン ファイン ケミカルズ カンパニー リミテッド (28)
【Fターム(参考)】