説明

熱硬化性組成物、接着フィルム、及び多層プリント配線板

【課題】絶縁性、デスミア性、及び耐メッキ密着性に優れる熱硬化性組成物、前記熱硬化性組成物を用いた接着フィルム、及び前記熱硬化性組成物を用いた多層プリント配線板の提供。
【解決手段】一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかとトリアゾール環とを有する化合物と、を含有する熱硬化性組成物である。更にフェノール系硬化剤を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板の層間絶縁材料として有用な熱硬化性組成物、前記熱硬化性組成物を用いた接着フィルム、及び前記熱硬化性組成物を用いた多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の電子機器は、薄型化、高速伝送化、高密度集積化が進んでおり、これらの電子機器に用いられるプリント配線板としては、ビルドアップ方式の多層プリント配線板が多く採用されている。
【0003】
多層プリント配線板は、通常、樹脂組成物で構成される絶縁材料と導体回路層とを積層して製造される。導体回路層間の接続方法としては、従来のドリル加工に代わって、レーザー法、フォト法などによるビアホールの形成が挙げられる。これらの方法は、小径のビアホールを自由に配置することで高密度集積化を達成するものである。
【0004】
従来、多層プリント配線板に用いられる層間の絶縁材料は、そのほとんどが熱硬化性樹脂をガラス布に含浸したプリプレグであった。ところが、近年の多層プリント配線板の薄型化、高密度集積化の要求に伴い、絶縁層を極めて薄くするためガラス布などの基材を用いない層間の絶縁材料が必要となっている。
【0005】
そこで、多層プリント配線板に用いられる層間の絶縁材料に適用可能な材料として、2種類のエポキシ樹脂と、フェノール系硬化剤と、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂からなる群から選択される一種以上の樹脂と、無機充填材とを特定の割合で含有する多層プリント配線板の層間絶縁用樹脂組成物、及び前記層間絶縁用樹脂組成物からなる樹脂組成物層が支持フィルム上に形成されている多層プリント配線板用の接着フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、エポキシ樹脂と、特定の水酸基含有率を有するフェノール樹脂と、ポリビニルアセタール樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物、及び前記エポキシ樹脂組成物からなる樹脂組成物層が支持フィルム上に形成されている接着フィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、これらの提案の技術では、絶縁性が十分ではないという問題がある。
【0006】
また、多層プリント配線板の製造では、レーザー照射によってビアホールが形成された後に、ビアホールに金属メッキ処理が行われるが、この金属メッキ処理を行う前には、レーザー照射により形成された下層導体回路上や絶縁層に残存する樹脂残渣(スミア)を除去する処理、即ち、デスミア処理が行われる。デスミア処理は、例えば、化学処理、即ち、過マンガン酸カリウムや重クロム酸カリウムといった化学酸化剤の溶液に、ビアホールが形成された多層基板を浸漬し、ビアホール内のスミアを溶解除去することなどで行われる。デスミア処理が不十分で、デスミア性が十分に確保されていないと、ビアホールに金属メッキ処理を行っても、スミアが原因で上層導体回路と下層導体回路との導通性が十分に確保されなくなるおそれがある。
しかし、上記提案の技術では、デスミア性が十分ではないという問題がある。
【0007】
更に、上記のように、多層プリント配線板の製造では、金属メッキ処理が行われるため、前記絶縁層は、メッキ処理に対して密着性がよいこと、即ち、耐メッキ密着性が要求されるが、上記提案の技術では、耐メッキ密着性が十分ではないという問題がある。
【0008】
したがって、絶縁性、デスミア性、及び耐メッキ密着性に優れる熱硬化性組成物、前記熱硬化性組成物を用いた接着フィルム、及び前記熱硬化性組成物を用いた多層プリント配線板の提供が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−154727号公報
【特許文献2】特開2007−254710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、絶縁性、デスミア性、及び耐メッキ密着性に優れる熱硬化性組成物、前記熱硬化性組成物を用いた接着フィルム、及び前記熱硬化性組成物を用いた多層プリント配線板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかとトリアゾール環とを有する化合物と、を含有することを特徴とする熱硬化性組成物である。
<2> 更にフェノール系硬化剤を含有する前記<1>に記載の熱硬化性組成物である。
<3> 更に無機フィラーを含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の熱硬化性組成物である。
<4> ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかとトリアゾール環とを有する化合物が、下記一般式(I)で表される化合物である前記<1>から<3>のいずれかに記載の熱硬化性組成物である。
【化1】

ただし、前記一般式(I)中、Xは、トリアゾール環を表す。Yは、ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかを有する有機基を表す。nは、1〜3の整数を表す。なお、nが2〜3の時には、Yは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
<5> 一般式(I)におけるYが、下記一般式(II)で表される基である前記<4>に記載の熱硬化性組成物である。
【化2】

ただし、前記一般式(II)中、Yは、炭素数2〜25のm+1価の有機基を表す。Zは、カルボキシル基、アクリロイルオキシ基、及びメタクリロイルオキシ基のいずれかを表す。mは、1〜2の整数を表す。なお、mが2の時には、Zは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
<6> 更にフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂から選択される少なくともいずれかを含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の熱硬化性組成物である。
<7> 支持体と、該支持体上に前記<1>から<6>のいずれかに記載の熱硬化性組成物から形成される熱硬化性組成物層とを有することを特徴とする接着フィルムである。
<8> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の熱硬化性組成物の硬化物により形成される絶縁層を有することを特徴とする多層プリント配線板である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、絶縁性、デスミア性、及び耐メッキ密着性に優れる熱硬化性組成物、前記熱硬化性組成物を用いた接着フィルム、及び前記熱硬化性組成物を用いた多層プリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(熱硬化性組成物)
本発明の熱硬化性組成物は、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかとトリアゾール環とを有する化合物とを少なくとも含有し、好ましくはフェノール系硬化剤、無機フィラー、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0014】
<一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂>
前記一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、直鎖状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、一分子中に2個以上のエポキシ基を有し、20℃で液状であるエポキシ樹脂と、一分子中に3個以上のエポキシ基を有し、20℃で固体状である芳香族系エポキシ樹脂とを併用することが、熱硬化性組成物を接着フィルムの形態で使用する場合に、十分な可撓性を示す(取扱い性に優れた)接着フィルムを形成できると同時に、熱硬化性組成物の硬化物の破断強度が向上し、多層プリント配線板の耐久性が向上する点で好ましい。
【0016】
−一分子中に2個以上のエポキシ基を有し、20℃で液状であるエポキシ樹脂−
前記一分子中に2個以上のエポキシ基を有し、20℃で液状であるエポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、硬化物の物性などの点から芳香族系エポキシ樹脂が好ましい。
なお、本発明において芳香族系エポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環骨格を有するエポキシ樹脂を意味する。
したがって、前記一分子中に2個以上のエポキシ基を有し、20℃で液状であるエポキシ樹脂としては、一分子中に2個以上のエポキシ基を有し、20℃で液状である芳香族系エポキシ樹脂が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
なお、前記一分子中に2個以上のエポキシ基を有し、20℃で液状であるエポキシ樹脂は、20℃未満で液状であってもよい。前記一分子中に2個以上のエポキシ基を有し、20℃で液状であるエポキシ樹脂に変えて、20℃で固体のエポキシ樹脂を用いた場合、接着フィルムを取り扱う常温(20℃〜30℃程度)で接着フィルムの十分な可撓性が得られにくく、接着フィルムの取り扱い性が低下することがある。また、回路基板へのラミネートの際に、ビアホールやスルーホール内を充填するだけの熱硬化性組成物の十分な流動性が得られないことがある。
【0018】
前記一分子中に2個以上のエポキシ基を有し、20℃で液状であるエポキシ樹脂としては、具体的には、HP4032(DIC社製)、HP4032D(DIC社製)、jER807(エピコート807)(三菱化学社製)、jER828EL(エピコート828EL)(三菱化学社製)、jER152(エピコート152)(三菱化学社製)、YDF−170(新日鐵化学社製)などが挙げられる。
【0019】
−一分子中に3個以上のエポキシ基を有し、20℃で固体状である芳香族系エポキシ樹脂−
前記一分子中に3個以上のエポキシ基を有し、20℃で固体状である芳香族系エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂)などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記一分子中に3個以上のエポキシ基を有し、20℃で固体状である芳香族系エポキシ樹脂は、20℃を超える温度で固体状であってもよい。
【0020】
前記一分子中に3個以上のエポキシ基を有し、20℃で固体状である芳香族系エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、230g/eq以下が好ましく、150g/eq〜230g/eqがより好ましい。なお、エポキシ当量(g/eq)は、エポキシ基1個当たりの分子量のことである。
【0021】
前記一分子中に3個以上のエポキシ基を有し、20℃で固体状である芳香族系エポキシ樹脂としては、具体的には、HP4700(EXA4700)(DIC社製、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、エポキシ当量163g/eq、20℃で固形状)、N−690(DIC社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量208g/eq、20℃で固形状)、N−695(DIC社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量208g/eq、20℃で固形状)、EPPN−502H(日本化薬社製、トリスフェノールエポキシ樹脂、エポキシ当量168g/eq、20℃で固形状)、NC7000L(日本化薬社製、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量228g/eq、20℃で固形状)、NC3000H(日本化薬社製、ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量290g/eq、20℃で固形状)、ESN185(新日鐵化学社製、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量275g/eq、20℃で固形状)、ESN475(新日鐵化学社製、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量350g/eq、20℃で固形状)などが挙げられる。
【0022】
前記一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂として、前記一分子中に2個以上のエポキシ基を有し、20℃で液状であるエポキシ樹脂(第一のエポキシ樹脂)と、前記一分子中に3個以上のエポキシ基を有し、20℃で固体状である芳香族系エポキシ樹脂(第二のエポキシ樹脂)とを併用する場合、前記第一のエポキシ樹脂(A1)と前記第二のエポキシ樹脂(A2)の配合割合(A1:A2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、質量比で、1:0.3〜1:2が好ましく、1:0.5〜1:1がより好ましい。前記質量比における前記第一のエポキシ樹脂(A1)の割合が多すぎる、即ちA1:A2=1:0.3よりも前記第一のエポキシ樹脂(A1)が多いと、前記熱硬化性組成物の粘着性が高くなり、接着フィルムの形態で使用する場合に、真空ラミネート時の脱気性が低下しボイドが発生しやすくなることがある。また真空ラミネート時に保護フィルムや支持フィルムの剥離性の低下や、硬化後の耐熱性が低下することがある。また、前記熱硬化性組成物の硬化物において十分な破断強度が得られにくいことがある。一方、前記質量比における前記第二のエポキシ樹脂(A2)の割合が多すぎる、即ちA1:A2=1:2よりも前記第二のエポキシ樹脂(A2)が多いと、接着フィルムの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られず、取り扱い性が低下すること、ラミネートの際の十分な流動性が得られにくいことがある。
【0023】
前記熱硬化性組成物における、前記一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱硬化性組成物の不揮発分に対して、10質量%〜50質量%が好ましく、20質量%〜40質量%がより好ましく、20質量%〜35質量%が特に好ましい。前記含有量が、10質量%未満であると、前記熱硬化性組成物の硬化性が低下することがある。
【0024】
<ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかとトリアゾール環とを有する化合物>
前記ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかとトリアゾール環とを有する化合物としては、ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかと、トリアゾール環と、を少なくとも有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0025】
前記ラジカル重合可能な二重結合を有する基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルフェニル基、アリル基などが挙げられる。
【0026】
前記エポキシ基と反応可能な基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。
【0027】
前記トリアゾール環としては、1,2,3−トリアゾール環、及び1,2,4−トリアゾール環のいずれであってもよい。
1,2,3−トリアゾール、及び1,2,4−トリアゾールは、下記構造式で表される化合物である。
【化3】

【0028】
前記ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかとトリアゾール環とを有する化合物は、言い換えれば、ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかを有する有機基がトリアゾール環に結合した化合物である。前記有機基の前記トリアゾール環への結合位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記トリアゾール環の窒素原子と結合していてもよく、炭素原子と結合していてもよい。
【0029】
前記ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかとトリアゾール環とを有する化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【化4】

ただし、前記一般式(I)中、Xは、トリアゾール環を表す。Yは、ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかを有する有機基を表す。nは、1〜3の整数を表す。なお、nが2〜3の時には、Yは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
なお、前記一般式(I)において、前記Yは、前記Xであるトリアゾール環の窒素原子と結合していてもよく、炭素原子と結合していてもよい。
【0031】
前記一般式(I)におけるnとしては、1〜2が好ましい。
【0032】
前記一般式(I)におけるYとしては、下記一般式(II)で表される基であることが好ましい。
【化5】

ただし、前記一般式(II)中、Yは、炭素数2〜25のm+1価の有機基を表す。Zは、カルボキシル基、アクリロイルオキシ基、及びメタクリロイルオキシ基のいずれかを表す。mは、1〜2の整数を表す。なお、mが2の時には、Zは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
前記Zとしては、カルボキシル基であることが絶縁性、耐メッキ密着性の点で好ましい。なお、mが2の時には、前記Zの少なくとも1つがカルボキシル基であることが好ましい。
【0034】
前記炭素数2〜25のm+1価の有機基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレア結合、アミド結合、エステル結合、及びチオウレア結合の少なくともいずれかを有する炭素数2〜25のm+1価の有機基が挙げられる。また、前記有機基の炭素数は、2〜20が好ましく、2〜15がより好ましい。
【0035】
前記ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかとトリアゾール環とを有する化合物の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、90〜1,000が好ましく、100〜800がより好ましい。
【0036】
前記ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかとトリアゾール環とを有する化合物の具体例としては、例えば、下記式で表される化合物などが挙げられる。
【化6】

【化7】

【0037】
前記ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかとトリアゾール環とを有する化合物の前記熱硬化性組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱硬化性組成物の不揮発分に対して、1.0質量%〜20質量%が好ましく、1.5質量%〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、1.0質量%未満であると、充分な絶縁性が発揮できないことがあり、20質量%を超えると、耐熱性が低下することがある。前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、硬化膜特性と絶縁性の両立の点で有利である。
【0038】
<フェノール系硬化剤>
前記フェノール系硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック(Xylok)型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類等のフェノール系硬化剤、ナフタレン系硬化剤、フルオレン系硬化剤などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フェノール系硬化剤としては、市販品を用いることができる。前記フェノール系硬化剤の市販品としては、例えば、フェノライトLA−7052(DIC社製、不揮発分60質量%)などが挙げられる。
【0039】
前記フェノール系硬化剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱硬化性組成物の不揮発分に対して、2質量%〜60質量%が好ましく、5質量%〜50質量%がより好ましい。前記含有量が、2質量%未満であると、硬化膜の物性が劣化し耐熱性に劣ることがあり、60質量%を超えると、強靭性が劣化することがある。前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、良好な硬化膜物性が得られる点で有利である。
【0040】
また、前記フェノール系硬化剤は、前記熱硬化性組成物中に存在するエポキシ基の合計数と前記フェノール系硬化剤のフェノール性水酸基の合計数の割合が、1:0.5〜1:1.5となるように含有されることが好ましい。前記フェノール系硬化剤の含有割合がこの範囲を外れると、前記熱硬化性組成物の硬化物の耐熱性が不十分となることがある。
【0041】
<無機フィラー>
前記無機フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、シリカが好ましい。
【0042】
前記無機フィラーの平均粒径(d50)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以下が好ましく、0.04μm〜2.0μmがより好ましい。前記平均粒径(d50)が、5μmを超えると、導体層に回路パターンを微細に形成する際に安定的に行うのが困難になることがある。また、無機フィラーは耐湿性を向上させるため、シランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理してあるものが好ましい。
なお、前記平均粒径(d50)は、積算(累積)重量百分率で表したときの積算値50%の粒度で定義されるもので、d50(D50)などと定義されるものであり、例えば、ダイナミック光散乱光度計(商品名DLS7000、大塚電子社製)を用いて、測定原理を動的光散乱法とし、サイズ分布解析手法をキュムラント法及び/又はヒストグラム法として、測定することができる。
【0043】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、熱可塑性エラストマー、硬化促進剤、その他の樹脂、添加剤などが挙げられる。
【0044】
−フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂−
前記熱硬化性組成物は、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂から選択される少なくともいずれかを含有することが好ましい。
前記フェノキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記フェノキシ樹脂の具体例としては、例えば、FX280(新日鐵化学社製)、FX293(新日鐵化学社製)、YX8100(三菱化学社製)、YL6954(三菱化学社製)、YL6974(三菱化学社製)などが挙げられる。
前記ポリビニルアセタール樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、エスレックKSシリーズ(積水化学工業社製)などが挙げられる。
前記ポリアミド樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ポリアミド樹脂の具体例としては、例えば、KS5000シリーズ(日立化成工業社製)、BPシリーズ(日本化薬社製)などが挙げられる。
前記ポリアミドイミド樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、例えば、KS9000シリーズ(日立化成工業社製)などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
【0045】
前記フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100℃以上が好ましく、100℃〜300℃がより好ましい。
【0046】
前記ガラス転移温度は、JIS(日本工業規格)K 7197に記載の方法に従って決定される。なお、ガラス転移温度が分解温度よりも高いために実際にはガラス転移温度が観測されない場合も本発明における「ガラス転移温度が100℃以上」の定義内に含まれる。なお、分解温度とは、JIS K 7120に記載の方法に従って測定したときの質量減少率が5%となる温度で定義される。
【0047】
前記フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂は、前記熱硬化性組成物のラミネート時における熱流動性と、酸化剤による硬化物の粗化性に重要な影響を及ぼす。また前記フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度が100℃未満であると、硬化物の機械強度が十分でなく、粗化後の硬化物表面に無機フィラーが析出しやすく、十分なメッキピール強度を得る事が困難となる。
【0048】
前記フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱硬化性組成物の不揮発分に対して、2質量%〜20質量%が好ましい。前記含有量が、2質量%未満であると、前記熱硬化性組成物のラミネート時の熱流動性が大きくなりすぎて絶縁層の厚みが不均一となること、及び硬化物の十分な粗化性が得られないことがある。一方、前記含有量が、20質量%を超えると、熱流動性が低すぎて回路基板に存在するビアホールやスルーホールに十分に前記熱硬化性組成物が充填されないことがある。
【0049】
−熱可塑性エラストマー−
前記熱可塑性エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分から成り立っており、一般に前者が耐熱性、強度に、後者が柔軟性、強靭性に寄与している。
前記スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、及びゴム変性したエポキシ樹脂としては、例えば、特開2009−014745号公報の段落〔0087〕〜〔0095〕に記載のものなどが挙げられる。
前記熱硬化性組成物に、前記熱可塑性エラストマーを添加することで、前記熱硬化性組成物に耐熱性、柔軟性及び強靭性を付与することができる。
【0050】
前記熱可塑性エラストマーの前記熱硬化性組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱硬化性組成物の不揮発分に対して、1質量%〜50質量%が好ましく、2質量%〜20質量%がより好ましく、3質量%〜10質量%が特に好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、硬化膜の靭性が劣ることあり、50質量%を超えると、硬化膜の耐熱性が劣ることがある。一方、前記含有量が、前記特に好ましい範囲内であると、硬化膜の靭性と耐熱性が向上する点で有利である。
【0051】
−硬化促進剤−
前記硬化促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機ホスフィン系化合物、イミダゾール系化合物、アミンアダクト化合物、3級アミン化合物などが挙げられる。
前記有機ホスフィン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。前記有機ホスフィン系化合物は市販品を使用することができる。前記有機ホスフィン系化合物の市販品としては、例えば、TPP、TPP−K、TPP−S、TPTP−S(いずれも、北興化学工業社製)などが挙げられる。
前記イミダゾール系化合物としては、例えば、2−エチル4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。前記イミダゾール系化合物は市販品を使用することができる。前記イミダゾール系化合物の市販品としては、例えば、キュアゾール2MZ、2E4MZ、C11Z、C11Z−CN、C11Z−CNS、C11Z−A、2MZ−OK、2MA−OK、2PHZ(いずれも、四国化成工業社製)などが挙げられる。
前記アミンアダクト化合物としては、市販品を使用することができる。前記アミンアダクト化合物の市販品としては、例えば、ノバキュア(旭化成工業社製)、フジキュア(富士化成工業社製)などが挙げられる。
前記3級アミン化合物としては、例えば、DBU(1,4−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデ−7−エン)などが挙げられる。
前記硬化促進剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱硬化性組成物の不揮発分に対して、0.2質量%〜20質量%が好ましい。
【0052】
−その他の樹脂−
前記その他の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブロックイソシアネート樹脂、キシレン樹脂、ラジカル発生剤と重合性樹脂などが挙げられる。
【0053】
−添加剤−
前記添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機フィラー、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、着色剤などが挙げられる。
前記有機フィラーとしては、例えば、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダーなどが挙げられる。
前記増粘剤としては、例えば、オルベン、ベントンなどが挙げられる。
前記消泡剤、及びレベリング剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及びレベリング剤が挙げられる。
前記密着性付与剤としては、例えば、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などが挙げられる。
前記着色剤としては、例えば、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0054】
前記熱硬化性組成物は、回路基板上、又は導体回路層上に塗布して多層プリント配線板の絶縁層を形成することができるが、後述する接着フィルムの形態として多層プリント配線板の絶縁層形成に用いられることが好ましい。
【0055】
(接着フィルム)
本発明の接着フィルムは、支持体と、該支持体上に本発明の前記熱硬化性組成物から形成される熱硬化性組成物層とを有し、更に必要に応じて、その他の層を有する。
【0056】
<支持体>
前記支持体の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、離型紙、金属箔などが挙げられる。
前記ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
前記ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。
前記金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
【0057】
前記支持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状が挙げられる。
前記フィルム状の支持体の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4μm〜300μmが好ましく、5μm〜175μmがより好ましい。
【0058】
前記支持体は、マット処理、コロナ処理、離型処理などが施してあってもよい。
【0059】
<熱硬化性組成物層>
前記熱硬化性組成物層は、前記支持体上に本発明の前記熱硬化性組成物から形成される層である。
【0060】
前記熱硬化性組成物層は、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板にラミネート(貼付)されると同時に、回路基板に存在するビアホール又はスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すものであることが好ましい。多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1mm〜0.5mm、深さは通常0.1mm〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお、回路基板の両面に前記熱硬化性組成物層をラミネートする場合はスルーホールの1/2が充填されればよい。このような物性は、前記熱硬化性組成物の動的粘弾性の測定による温度−溶融粘度曲線によって特徴づけることができる。
【0061】
前記熱硬化性組成物層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、多層プリント配線板の導体回路層の平均厚み以上が好ましい。導体回路層の平均厚みは、通常5μm〜70μmの範囲であるので、前記熱硬化性組成物層の平均厚みとしては、10μm〜100μmが好ましい。
【0062】
前記熱硬化性組成物層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記支持体の上に、本発明の前記熱硬化性組成物を、有機溶剤に溶解又は分散させた塗布液を調製し、該塗布液を直接塗布し、乾燥させることにより形成する方法などが挙げられる。
【0063】
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキサイド、スルホランなどが挙げられる。
前記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノールなどが挙げられる。
前記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−n−アミル、硫酸メチル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジメチル、安息香酸エチル、メトキシプロピルアセテートなどが挙げられる。
前記芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼンなどが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、塩化メチレン、モノクロロベンゼンなどが挙げられる。
前記エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記塗布液の不揮発分濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜90質量%が好ましく、15質量%〜50質量%がより好ましい。
【0065】
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコーター、スリットスピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーターなどを用いて、前記支持体に直接塗布する方法が挙げられる。
前記乾燥の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、各成分、溶媒の種類、使用割合などによっても異なるが、通常、60℃〜110℃の温度で30秒間〜15分間程度である。
【0066】
前記支持体上に形成される前記熱硬化性組成物層は、層の面積が前記支持体の面積より小さくなるように形成されるのが好ましい。
【0067】
<その他の層>
前記その他の層としては、例えば、保護層などが挙げられる。
【0068】
−保護層−
前記熱硬化性組成物層を前記保護層で保護することにより、ゴミの付着防止、汚れの付着防止、及び傷の防止ができる。
前記保護層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記支持体の説明において記載したものと同じ材質のもの、シリコーン紙、ポリエチレン、ポリプロピレンがラミネートされた紙、ポリテトラフルオルエチレンシートなどが挙げられる。
前記保護層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜70μmが好ましい。
【0069】
前記接着フィルムは、ロール状に巻き取って、保存、貯蔵することができる。
【0070】
前記接着フィルムは、多層プリント配線板に用いる接着フィルムとして好適に使用できる。
【0071】
(多層プリント配線板)
本発明の多層プリント配線板は、本発明の前記熱硬化性組成物の硬化物により形成される絶縁層を少なくとも有し、更に必要に応じて、回路基板、導体回路層などのその他の部材を有する。
【0072】
<絶縁層>
前記絶縁層は、本発明の前記熱硬化性組成物の硬化物により形成される。
【0073】
前記絶縁層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記導体回路層の平均厚み以上が好ましい。前記導体回路層の平均厚みは、通常5μm〜70μmの範囲であるので、前記絶縁層の平均厚みは、10μm〜100μmが好ましい。
【0074】
前記絶縁層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記熱硬化性組成物を、前記回路基板上、又は前記導体回路層上に塗布し、加熱して硬化物とすることにより形成する方法(塗布する方法)、本発明の前記接着フィルムを、前記接着フィルムの前記熱硬化性組成物層が前記回路基板、又は前記導体回路層に接するように、前記回路基板、又は前記導体回路層に貼付(ラミネート)し、加熱して硬化物とすることにより形成する方法(ラミネートする方法)などが挙げられる。
【0075】
前記塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコーター、スリットスピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーターなどが挙げられる。
【0076】
前記ラミネートする方法におけるラミネート条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、圧着温度(ラミネート温度)としては、70℃〜140℃が好ましい。圧着圧力としては、1kgf/cm〜11kgf/cm(9.8×10N/m〜107.9×10N/m)が好ましい。また、空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
ラミネートは、市販の真空ラミネーターを使用することができる。前記真空ラミネーターの市販品としては、例えば、バキュームアプリケーター(ニチゴー・モートン社製)、真空加圧式ラミネーター(名機製作所製)、ロール式ドライコータ(日立インダストリイズ社製)、真空ラミネーター(日立エーアイーシー社製)などが挙げられる。
前記ラミネートの方法としては、バッチ式であってもよいし、ロールなどを用いた連続式であってもよい。またラミネートを行う前に、前記接着フィルム、前記回路基板、前記導体回路層を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0077】
前記塗布する方法、及び前記ラミネートする方法において硬化物を形成するための加熱の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記加熱の条件において、加熱温度としては、150℃〜220℃が好ましく、160℃〜200℃がより好ましい。加熱時間としては、20分間〜180分間が好ましく、30分間〜120分間がより好ましい。
【0078】
前記絶縁層が、前記回路基板上、又は前記導体回路層上に形成された後には、必要に応じて、前記絶縁層に穴開けを行い、ビアホール、スルーホールを形成する。前記穴開けを行う方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドリル、レーザー、プラズマなどを用いた方法が挙げられる。また、必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができる。これらの中でも、レーザーを用いた穴開け方法が好ましい。前記レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザーが好ましい。
【0079】
前記絶縁層は、その表面を酸化剤より粗化処理されてもよい。前記酸化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸などが挙げられる。これらの中でも、ビルトアップ工法による多層プリント配線板の製造における絶縁層の粗化に汎用されている酸化剤である、アルカリ性過マンガン酸溶液(例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムの水酸化ナトリウム水溶液)が好ましい。
【0080】
<回路基板>
前記回路基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板などが挙げられる。
前記回路基板は、前記絶縁層、及び前記導体回路層が、その片面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。
【0081】
<導体回路層>
前記導体回路層としては、導体により形成された回路を有する層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、ニッケル、金、チタン、白金、タングステン、アルミニウム、コバルト、クロム、銀、鉛、亜鉛、ニッケル鉄合金などが挙げられる。
前記導体回路層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サブトラクティブ法、セミアディティブ法などが挙げられ、具体的には、前記絶縁層上に、無電解メッキと電解メッキを組合せた方法、導体回路層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解めっきのみで形成する方法、スパッタリング法などが挙げられる。
前記導体回路層は、形成された後に、150℃〜200℃で20分間〜90分間アニール(anneal)処理されることにより、前記導体回路層のピール強度を向上、安定化させることができる。
【0082】
前記多層プリント配線板の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記回路基板の片面、又は両面に、前記絶縁層、及び前記導体回路層が交互に積層されている構造が挙げられる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例において、特に明記のない限り、「部」、「%」は、それぞれ「質量部」、「質量%」を意味する。
【0084】
(合成例1)
<化合物T−1の合成>
還流管、及び温度計を備えた2,000mLの3口フラスコに、N−メチルピロリドン250g、及び3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール49.5g(デグサ社製)を加えた。攪拌下、N−メチルピロリドン80g、及びテトラヒドロフタル酸無水物152.2g(リカジッドTH、新日本理化社製)を2時間かけて滴下した。その後、40℃で1時間攪拌後、100℃で12時間反応させた。室温に冷却後、反応液を強攪拌下のイオン交換水1.2L中に投入し、目的物を晶析させた。イソプロパノール/ヘキサン(2/8(質量比))で洗浄し濾取、乾燥することで下記構造の化合物T−1を121.1g得た。
【化8】

【0085】
(合成例2)
<化合物T−2の合成>
還流管、及び温度計を備えた2,000mLの3口フラスコに、N−メチルピロリドン250g、及び3−アミノ−1,2,4−トリアゾール42.0g(純正化学社製)を加えた。攪拌下、N−メチルピロリドン80g、及び5−メタクリロイルオキシエチル−トリメリット酸−1,2−無水物152.2g(和光純薬社製)を2時間かけて滴下した。その後、40℃で1時間攪拌後、100℃で5時間反応させた。室温に冷却後、反応液を強攪拌下のイオン交換水1.2L中に投入し、目的物を晶析させた。イソプロパノール/メタノール(22/78(質量比))で洗浄し濾取、乾燥することで下記構造の化合物T−2を112.3g得た。
【化9】

【0086】
(合成例3)
<化合物T−3の合成>
還流管、及び温度計を備えた2,000mLの3口フラスコに、テトラヒドロフラン120g、N−メチルピロリドン70g、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール49.5g(デグサ社製)、及び2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール1.8g(PN−01、大内新興化学工業社製)を加えた。攪拌下、テトラヒドロフラン80g、及び2−イソシアナトエチルアクリレート141.1g(カレンズAOI、昭和電工社製)を2時間かけて滴下した。その後、40℃で20時間反応させた。室温に冷却後、反応液を強攪拌下のイオン交換水2L中に投入し、目的物を晶析させた。メタノールで洗浄し濾取、乾燥することで下記構造の化合物T−3を165.1g得た。
【化10】

【0087】
(合成例4)
<化合物T−4の合成>
還流管、及び温度計を備えた1,000mLの3口フラスコに、t−ブチルメチルケトン250g、1,2,4−トリアゾール34.5g(純正化学工業社製)、ジシクロペンタニルジメタノールジアクリレート145.7g(A−DCP、新中村化学工業社製)、及び2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール1.9g(PN−01、大内新興化学工業社製)を加えた。40℃で1時間攪拌後、80℃で52時間反応させた。室温に冷却後、有機溶媒を減圧濃縮により除去することで下記構造の化合物T−4を178g得た。
【化11】

【0088】
(実施例1)
<多層プリント配線板1の作製>
−熱硬化性組成物1の調製−
液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(YDF−170、エポキシ当量172g/eq、新日鐵化学社製)20質量部、及びナフタレン型4官能エポキシ樹脂(EXA−4700、エポキシ当量163g/eq、DIC社製)12質量部を、シクロヘキサノン20質量部に撹拌しながら添加し、加熱溶解させた。そこへ、合成例1で合成した化合物(T−1)3.5質量部、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂MEKワニス(フェノライトLA−7052、DIC社製、不揮発分60質量%、不揮発分のフェノール性水酸基当量120)25質量部、フェノキシ樹脂ワニス(FX293、新日鐵化学社製、不揮発分40質量%)20質量部、及び球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理)60質量部を添加し熱硬化性組成物1を作製した。
【0089】
−接着フィルム1の作製−
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm、以下PETフィルムと略す)上に、前記熱硬化性組成物1を乾燥後の平均厚みが50μmとなるようにダイコーターを用いて塗布し、80℃で15分間乾燥し(残留溶媒量約1質量%)、熱硬化性組成物層を形成した。次いで、形成した前記熱硬化性組成物層上に、保護層として厚み15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取り、接着フィルム1を作製した。
【0090】
−多層プリント配線板1の作製−
厚み0.3mmのFR4両面銅張積層板(銅箔の厚み18μm)を用い回路基板を作製した(直径0.2mmのスルーホールあり)。作製した接着フィルム1のポリプロピレンフィルムを剥離した後、熱硬化性組成物層が前記回路基板の回路面に接するようにして、真空ラミネーターにより、温度110℃、圧力7kgf/cm、気圧5mmHg(1.33hPa)以下の条件で、接着フィルム1を回路基板の両面にラミネートした。次いで接着フィルム1のPETフィルムを剥離し、180℃で30分間加熱硬化させ、絶縁層を形成した。その後、レーザーにより穴開けを行い、ビアホールを形成させ、次いで過マンガン酸塩のアルカリ性酸化剤で絶縁層表面を粗化処理し、無電解メッキ及び電解メッキを行いサブトラクティブ法に従って導体回路層を形成し、多層プリント配線板を得た。その後、さらに180℃で30分間アニール処理を行った。得られた導体回路層の導体メッキの厚みは約30μmであり、スルーホールは完全に樹脂充填されていた。
【0091】
<評価>
下記評価を行った。結果を表1に示す。
−絶縁性−
−−評価用プリント配線板の作製−−
厚み0.3mmのFR4両面銅張積層板(銅箔の厚み18μm)の片面にエッチングを施して、ライン幅/スペース幅が50μm/50μmであり、互いのラインが接触しておらず、互いに対向した同一面上の櫛形電極が形成された回路基板を作製した。接着フィルム1のポリプロピレンフィルムを剥離した後、熱硬化性組成物層が前記回路基板の櫛型電極に接するようにして、真空ラミネーターにより、温度110℃、圧力7kgf/cm、気圧5mmHg(1.33hPa)以下の条件で、接着フィルム1を回路基板にラミネートした。次いで接着フィルム1のPETフィルムを剥離し、180℃で30分間加熱硬化させ、絶縁層を形成し、評価用プリント配線板を作製した。
−−絶縁性評価−−
評価用プリント配線板に形成された櫛形電極間に電圧が印加されるように、ポリテトラフルオロエチレン製のシールド線をSn/Pbはんだによりそれらの櫛形電極に接続した後、評価用プリント配線板に5Vの電圧を印可した状態で、該評価用プリント配線板を130℃、85%RHの超加速高温高湿寿命試験(HAST)槽内に200時間静置した。その後の評価用プリント配線板の絶縁層のマイグレーションの発生程度を100倍の金属顕微鏡により観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
[評価基準]
◎ :マイグレーションの発生が確認できず、絶縁性に優れる
○ :マイグレーションの発生が銅上僅かに確認されるが、絶縁性は良好である
○△:マイグレーションが絶縁層中に僅かに確認されるが、絶縁性はやや良好である
△ :マイグレーションの発生が確認され、絶縁性にやや劣る
× :電極間が短絡し、絶縁性に劣る
【0092】
−デスミア性−
接着フィルムの保護層を剥離し、前記接着フィルムを、名機製作所製真空ラミネーター(MVLP−500)により、気圧5mmHg以下、温度100℃、圧力7kgf/cmの条件で、FR4両面銅張積層板に両面に同時にラミネートした。さらに連続的に温度100℃、圧力5kgf/cmの条件でSUS鏡板による熱プレスを行った。そして、PETフィルムを剥離し、180℃で30分間熱硬化処理を行った。次に、デスミア処理を想定して、酸化剤溶液であるアトテックジャパン社製の粗化液(スウェリング・ディップ・セキュリガンスP(膨潤処理液)、コンセントレート・コンパクトCP(酸化処理液)、リダクションソリューション・セキュリガントP(中和処理液))を用いて、積層板に、膨潤処理を60℃×5分間、酸化処理を80℃×20分間、中和処理を40℃×5分間、この順で行った。
得られた硬化膜の浮き膨れ、剥れを目視により観察し、デスミア性を評価した。評価基準は以下の通りである。
[評価基準]
○ :疎化面にムラが無く、浮き、剥れ及び膨れが発生せず、デスミア耐性に優れる。
△ :やや疎化面にムラがあるものの、浮き、剥れ及び膨れは発生せず、デスミア耐性が良好である。
× :浮き、剥れ及び膨れが発生し、デスミア耐性に劣る。
【0093】
−耐メッキ密着性−
−−評価用プリント配線板の作製−−
厚み0.3mmのFR4両面銅張積層板(銅箔の厚み18μm)を用い回路基板を作製した(直径0.2mmのスルーホールあり)。接着フィルム1のポリプロピレンフィルムを剥離した後、熱硬化性組成物層が前記回路基板の回路面に接するようにして、真空ラミネーターにより、温度110℃、圧力7kgf/cm、気圧5mmHg(1.33hPa)以下の条件で、接着フィルム1を回路基板の両面にラミネートした。次いで接着フィルム1のPETフィルムを剥離し、180℃で30分間加熱硬化させ、絶縁層を形成し、評価用プリント配線板を作製した。
−−耐メッキ密着性評価−−
形成された絶縁層を脱脂し表面の粗化を行った後、硫酸パラジウムを添加して触媒付加を行った。次に、評価用プリント配線板を、70℃の硫酸ニッケル/希硫酸溶液中に40分間浸漬してメッキ処理を行った後、目視により絶縁層のめくれ、剥がれを観察し、下記基準に基づいて、耐メッキ密着性の評価を行った。
[評価基準]
◎ :絶縁層にめくれ、剥がれがなく、耐メッキ密着性に極めて優れる
○ :絶縁層の一部に変色があるが、実用上問題とならず、耐メッキ密着性に優れる
○△:絶縁層に変色があるが、実用上問題とならず、耐メッキ密着性が良好である
△ :絶縁層にめくれがあり、耐メッキ密着性に劣る
× :絶縁層に浮き(剥がれ)が観られ、耐メッキ密着性に極めて劣る
【0094】
(実施例2)
実施例1において、化合物T−1を化合物T−2に代えた以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性組成物、接着フィルム、及び多層プリント配線板を作製した。
実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例3)
実施例1において、化合物T−1を化合物T−3に代えた以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性組成物、接着フィルム、及び多層プリント配線板を作製した。
実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(実施例4)
実施例1において、化合物T−1を化合物T−4に代えた以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性組成物、接着フィルム、及び多層プリント配線板を作製した。
実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
(実施例5)
実施例1において、T−1の含有量(得られる熱硬化性組成物の不揮発分に対する含有量)が3.0質量%から0.5質量%になるように配合量を代えた以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性組成物、接着フィルム、及び多層プリント配線板を作製した。
実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
(実施例6)
実施例1において、T−1の含有量(得られる熱硬化性組成物の不揮発分に対する含有量)が3.0質量%から1.7質量%になるように配合量を代えた以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性組成物、接着フィルム、及び多層プリント配線板を作製した。
実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例7)
実施例1において、T−1の含有量(得られる熱硬化性組成物の不揮発分に対する含有量)が3.0質量%から15.0質量%になるように配合量を代えた以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性組成物、接着フィルム、及び多層プリント配線板を作製した。
実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
(実施例8)
実施例1において、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(YDF−170)及びナフタレン型4官能エポキシ樹脂(EXA−4700)を3官能エポキシ樹脂(VG−3101、プリンテック社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性組成物、接着フィルム、及び多層プリント配線板を作製した。
実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
(実施例9)
実施例1において、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(EXA−4700)をクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N−697、DIC社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性組成物、接着フィルム、及び多層プリント配線板を作製した。
実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(比較例1)
実施例1において、熱硬化性組成物に液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、及び化合物T−1を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性組成物、接着フィルム、及び多層プリント配線板を作製した。
実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
(比較例2)
実施例1において、化合物T−1を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性組成物、接着フィルム、及び多層プリント配線板を作製した。
実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
(比較例3)
実施例1において、化合物T−1を下記化合物T−Z(1,2,4−トリアゾール)に代えた以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性組成物、接着フィルム、及び多層プリント配線板を作製した。
実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【化12】

【0105】
【表1】

表1中、トリアゾール化合物の含有量は、熱硬化性組成物の不揮発分に対する含有量(質量%)を示す。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の熱硬化性組成物及び接着フィルムは、絶縁性、デスミア性、及び耐メッキ密着性に優れることから、多層プリント配線板に好適に用いることができる。
本発明の多層プリント配線板は、絶縁性、デスミア性、及び耐メッキ密着性に優れることからビルドアップ方式の多層プリント配線板に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかとトリアゾール環とを有する化合物と、を含有することを特徴とする熱硬化性組成物。
【請求項2】
更にフェノール系硬化剤を含有する請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【請求項3】
更に無機フィラーを含有する請求項1から2のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
【請求項4】
ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかとトリアゾール環とを有する化合物が、下記一般式(I)で表される化合物である請求項1から3のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
【化1】

ただし、前記一般式(I)中、Xは、トリアゾール環を表す。Yは、ラジカル重合可能な二重結合を有する基及びエポキシ基と反応可能な基の少なくともいずれかを有する有機基を表す。nは、1〜3の整数を表す。なお、nが2〜3の時には、Yは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【請求項5】
一般式(I)におけるYが、下記一般式(II)で表される基である請求項4に記載の熱硬化性組成物。
【化2】

ただし、前記一般式(II)中、Yは、炭素数2〜25のm+1価の有機基を表す。Zは、カルボキシル基、アクリロイルオキシ基、及びメタクリロイルオキシ基のいずれかを表す。mは、1〜2の整数を表す。なお、mが2の時には、Zは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【請求項6】
更にフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂から選択される少なくともいずれかを含有する請求項1から5のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
【請求項7】
支持体と、該支持体上に請求項1から6のいずれかに記載の熱硬化性組成物から形成される熱硬化性組成物層とを有することを特徴とする接着フィルム。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の熱硬化性組成物の硬化物により形成される絶縁層を有することを特徴とする多層プリント配線板。


【公開番号】特開2012−193340(P2012−193340A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3863(P2012−3863)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】