説明

熱線を遮蔽する光触媒塗料

【課題】
本発明は建物ガラスの屋外側に塗装し熱線を遮蔽してガラスと屋内温度の上
昇を防ぐ塗膜を形成し、冷房機械を運転する時間を短縮して電力の消費量を低減させると共に、ガラスの熱割れと汚れを防ぐアルコール系光触媒塗料を提供する。
【解決手段】
本発明のアルコール系光触媒塗料はメタノールに五酸化アンチモンと酸化亜鉛を結合させた複酸化物を分散させた液にイソプロピルアルコールとエチルジグリコールを添加した後、エタノールにエチルシリケート、アモルファスシリカ、メチルトリアルコキシシランを分散させた液を配合し最後に酸化チタンを添加した、常温で硬化し熱線を遮蔽する透明で鉛筆硬度8Hの耐加水分解性の熱伝導率が高い塗膜を形成するアルコール系光触媒塗料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラスに塗装すると常温で硬化し可視光線は透過するが熱線(近赤外線)を遮蔽する透明で硬い耐加水分解性の熱伝導率が高い塗膜を形成するアルコール系光触媒塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内温度の上昇を防いで冷房機械の運転する時間を短縮して電力の消費量を減らす目的で、屋上や壁面を断熱し熱の伝導を防いでいる。しかし、屋内に入射する熱線(輻射熱)の約70%はガラスからであり、ガラスから入射する熱線量を減らして屋内温度の上昇を防止しなければ冷房機械用の電力の消費量を低減させることは出来ない。その対策にガラスの屋内側に貼る断熱フィルムや熱線遮蔽塗料が販売されているが、その多くは有機系の熱線吸収剤や紫外線吸収剤およびアクリル樹脂等を含むため熱伝導率が低く吸収した熱線の放熱を妨げる。熱線がガラスに蓄熱すると膨張し熱割れが発生するため、ガラスメーカーは熱割れの原因を排除しなければ割れを防ぐことが出来ないと発表し、熱割れ強度の計算式と係数を公表して予防対策を行うよう促している。特にガラスの屋内側に放熱を妨げる塗料を塗ると塗膜とガラスの蓄熱量が極端に多くなり熱膨張による割れを誘発するため塗ってはならないと警告しているが、多くの業者がガラスの屋内側に放熱を妨げる塗料を塗装しているのが実状である。ガラスが膨張した時にサッシが変形すると割れるため、地震が多発する「わが国」の建物ガラスに割れを誘発する塗料を塗るべきではない。建物内部の温度上昇を抑制し冷房用電力のロスと浪費を防ぎ消費量を低減させる安全な工法が求められている。
【0003】
これら従来の公知発明には、つぎの特許文献が挙げられる。
【特許文献1】特許第3908252号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はガラスの屋外側に塗装し熱線を遮蔽してガラスと屋内温度の上昇を防ぐ透明塗膜を形成し、冷房機械を運転する時間を短縮して電力の消費量を低減させると共に、ガラスの熱割れと汚れを防ぐ光触媒塗料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はガラスの屋外側に塗装すると常温で硬化し熱線を遮蔽する透明で鉛筆硬度8Hの耐加水分解性の熱伝導率が高い塗膜を形成するアルコール系光触媒塗料である。
【0006】
以下に示す組成範囲で好ましい熱線遮蔽型のアルコール系光触媒塗料が得られる。

成分名
配合率(重量%)

エチルシリケート
0.8〜2.0

アモルファスシリカ
0.2〜2.0

メチルトリアルコキシシラン
4.0 〜6.0

アンチモン複酸化物
18.0〜22.0

酸化チタン
0.2〜1.0

メタノール
12.0〜15.0

エタノール
24.0〜26.0

エチルジグリコール
2.5〜9.0

イソプロピルアルコール
残余


【発明の効果】
【0007】
本発明をガラスの屋外側に塗装すると照射された熱線をガラスに入射する前に遮蔽(反射、吸収)するため、入射する熱線量が半分以下になりガラスと屋内温度の上昇を抑制することが出来る。
【0008】
本発明の塗膜の成分の熱伝導率はガラス(1W/m・K)の24倍〜148倍であり塗膜が吸収した熱線をリアルタイムで大気中に放熱するため、塗膜とガラスの温度上昇と膨張が少なく熱割れを誘発しない。
【0009】
熱伝導率の比較

材質
熱伝導率(W/m・k)

アンチモン
24.3

酸化亜鉛
117.0

ケイ素
148.0

ガラス
1.0

アクリル樹脂
0.058


【0010】
本発明の塗膜に日光が照射すると熱線を遮蔽して屋内温度の上昇を抑制し冷房機械の運転時間を短縮して電力の消費量を低減させるため、発電に使用する化石燃料の消費量も少なくなり温室効果ガスの排出量を減少させる効果がある。

【0011】
本発明の塗装面に日光が照射すると光触媒反応により生成された活性酸素が接触した有機物を分解するため塗膜に汚物が付着し難い。
【0012】
本発明の塗装面に日光が照射すると塗膜が親水化するため、付着した水は濡れ広がり汚れと共に転落する。
【0013】
本発明が形成した塗膜は除電するため粉塵を吸着しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のアルコール系光触媒塗料はメタノールにアンチモン複酸化物を分散させた液にイソプロピルアルコールとエチルジグリコールを配合した後、エタノールにエチルシリケート、アモルファスシリカ、メチルトリアルコキシシランを分散させた液を配合し、最後に酸化チタンを添加して構成される。
【0015】
本発明中のエチルシリケートは空気中の水分と反応し加水分解して塗膜を硬化させる。
【0016】
アモルファスシリカは塗料の密度を増し酸化チタンの沈降防止に有用である。
【0017】
メチルトリアルコキシシランは塗膜の透明性を高め、塗膜の加水分解を防ぐに有用である。
【0018】
アンチモン複酸化物とは五酸化アンチモンと酸化亜鉛を結合させた複酸化物であり可視光は透過させるが熱線を吸収し透過を防ぐ。
【0019】
アンチモン複酸化物はアンチモンを酸化亜鉛にドーブさせた物質とは異なり安定性が高い。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例をもって本発明をさらに説明する。
【0021】
メタノール12.0(重量%)にアンチモン複酸化物18.0を分散させた液にイソプロピルアルコール36.5とエチルジグリコール2.5を配合した後、エタノール25.0にエチルシリケート0.8、アモルファスシリカ0.2、メチルトリアルコキシシラン4.5、を分散させた液を配合し、最後に酸化チタン0.5、を添加して光触媒塗料を調整した。
【0022】
前記調製によるアルコール系光触媒塗料をガラスに塗布して常温下で48時間硬化させた試料を作成し、塗膜の硬度をJIS K5404の規格に基づき硬度測定をした結果、鉛筆硬度8Hを呈した。
【0023】
前記試料を水中に30日間(720時間)浸漬した後に塗膜の硬度を測定した結果、塗膜の鉛筆硬度は8Hであり加水分解による硬度の低下がなく、耐加水分解性が実証された。
【0024】
前記試料を分光光度計で測定した結果、可視光の透過率は77.7%であるが、熱線の遮蔽率は55.5%(吸収49.5%、反射6.0%)であった。
【0025】
光触媒塗料中の酸化チタンの配合量を0.2%未満とした場合には十分な光触媒効果が得られず、汚物を分解する効果が低下する。酸化チタンを1.5%以上配合すると、塗膜の硬化が阻害され硬度が低下するため疵が付き剥がれ易くなる。
【0026】
エチルジグリコールを10%以上配合すると塗料の流動性は向上するが塗料が乾燥するまで30分以上の時間を要し塗膜に歪みが生じるため透明性が低下する。
【0027】
本発明はガラスクリーニング用のウレタン・スクイジーで塗装すると透明で硬い耐加水分解性の熱線遮蔽効果が高い塗膜を形成することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチルシリケートを0.8〜2.0重量%、アモルファスシリカを0.2〜2.0重量%、メチルトリアルコキシシランを4.0〜6.0重量%、アンチモン複酸化物を18.0〜22.0重量%、酸化チタンを0.2〜1.0重量%、メタノールを12.0〜15.0重量%、エタノールを24.0〜26.0重量%、エチルジグリコールを2.5〜9.0重量%、残余がイソプロピルアルコールである常温で硬化し熱線を遮蔽する透明で鉛筆硬度8Hの耐加水分解性の熱伝導率が高い塗膜を形成するアルコール系光触媒塗料。


【公開番号】特開2011−63703(P2011−63703A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215158(P2009−215158)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【特許番号】特許第4500915号(P4500915)
【特許公報発行日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(591106347)有限会社ケイ・ビー・エル営繕センター (3)
【Fターム(参考)】