熱線遮蔽材、遮熱ガラスおよび建材用ガラス
【課題】遮熱性能(日照反射率)が高く、ガラスに貼り合わせた場合の遮熱耐久性に優れ、粘着層の再剥離性および剥離強度も良好である熱線遮蔽材の提供。
【解決手段】少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層と粘着層とを有し、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向し、前記粘着層が自己粘着性と再剥離性を有する熱線遮蔽材。
【解決手段】少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層と粘着層とを有し、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向し、前記粘着層が自己粘着性と再剥離性を有する熱線遮蔽材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱性能および遮熱耐久性に優れ、粘着層の再剥離性および剥離強度も良好である熱線遮蔽材に関する。また、該熱線遮蔽剤を用いた遮熱ガラスおよび建材用ガラスにも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素削減のための省エネルギー施策の一つとして、自動車や建物の窓に対する熱線遮蔽性付与材料が開発されている。例えば、金属Ag薄膜は、その反射率の高さから、熱線反射材として一般に使用されている。可視光透過性を上げるために、Ag及びZnO多層膜を利用したLow−Eガラス(例えば旭硝子株式会社製)は、広く建物に採用されているが、費用が高いという問題や、DIYにより熱線遮蔽材を任意のガラスに貼り付けたいとの要望等があり、ガラスに貼り合わせることができる、安価な熱線遮蔽材が求められていた。
【0003】
赤外線遮蔽フィルタとして、Ag平板粒子を用いたフィルタが提案されている(特許文献1参照)。しかし、特許文献1に記載の赤外線遮蔽フィルタはプラズマディスプレイパネル(PDP)に用いることを意図したものであり、かかるAg平板粒子は、その配列制御がなされていないことから、主に赤外域の波長光赤外線吸収体として機能し、積極的に熱線を反射する材料として機能するものではなかった。したがって、かかるAg平板粒子からなる赤外線遮蔽フィルタを直射日光の遮熱に使用すると、この赤外線吸収フィルタ自体が暖まることになり、その熱で室温が上昇してしまうために、赤外線遮蔽材としての機能は不十分であった。また、特許文献1の実施例では、赤外線遮蔽性を有する分散物をポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、厚さ25μmのアクリル系透光性粘着材を介して、ガラス板を貼り合わせてPDP用の光学フィルタを製造した例が記載されている。
【0004】
これに対し、特許文献2には、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向している熱線遮蔽材が開示されている。特許文献1に記載の熱線遮蔽材は近赤外線を反射でき、赤外線遮蔽フィルムとして有利になるものであった。特許文献2に記載の熱線遮蔽材によれば低コストで安価かつ、効果の高い遮熱フィルムを提供できるが、特許文献2には、熱線遮蔽材をガラスと貼り合わせる具体的な方法や、そのときに用いられる接着剤の詳細に関する記載は、同文献の実施例を含め、開示も示唆もされていなかった。
【0005】
一方、特許文献3には、基材層上に、カルボン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーを有する第1接着層、ならびに、SEPS熱可塑性エラストマーおよび可塑剤を含む第2接着層とからなる粘着層を有する自己粘着性フィルムにより、ガラスなどの接着面に対して貼り付け・剥離を繰り返し行うことが可能であることが記載されている。しかしながら、特許文献2には、基材層としてプラスチックフィルムを好ましく用いることができ、その他各種の添加剤を基材層に含ませてもよいと記載されているが、赤外線を反射できるような熱線遮蔽材や、金属平板粒子を基材層に用いることについては何ら検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−178915号公報
【特許文献2】特開2011−118347号公報
【特許文献3】特許第4215527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況のもと、本発明者が特許文献2に記載されている金属平板粒子含有層をPETフィルム上に形成した薄膜フィルムである熱線遮蔽材を、特許文献1の実施例に記載されているような一般的なアクリル系透光性粘着材を用いて窓用のガラスに貼り合わせようとしたところ、エンドユーザーにとってDIYでこのような薄膜フィルムを貼り合わせると気泡の混入が生じやすいことがわかった。窓は外から見たその家の美的印象に強い影響を与えるため、気泡の混入が生じると、美観損傷の問題が生じる問題が起こることがわかった。従来「粘着材」あるいは「感圧接着剤」と呼ばれてきたアクリル系ポリマーは、再剥離性は乏しいものであり、貼り直しができないためにガラスへの施工に熟練を要し、現実的には大工施工が必要であった。しかしながら、大工施工を行うと特許文献2に記載の熱線遮蔽材の材量費よりもガラスへの施工工賃のほうが数段高くなってしまい、大工施工に任せておくとエンドユーザーにとっては製造コストが低く安価である特許文献2に記載の熱線遮蔽材のメリットがダイレクトに伝わらない問題があった。
【0008】
また、本発明者が実際に特許文献2に記載されている熱線遮蔽材を、特許文献1の実施例に記載されているような一般的なアクリル系透光性粘着材を用いてガラスに水貼りによって貼り合わせて、泡が多数混在した、貼り損ね状態の遮熱ガラスを製造した。その結果、このような状態で熱線遮蔽材を放置すると、早期に熱線遮蔽材がガラスから剥がれてしまい、遮熱性能を長持ちさせることも出来ないことがわかった。
【0009】
さらに、本発明者が特許文献2に記載されている熱線遮蔽材を上記と同様に一般的なアクリル系透光性粘着材を用いてガラスに水貼りによって細心の注意を払って貼り合わせて、泡がほとんど混入していない遮熱ガラスを製造した。しかしながら、過酷な条件で昼夜寒暖差のシミュレーション実験を行うと、長期にわたって熱線遮蔽材はガラスから剥がれることはないが、熱線遮蔽材の端部において寒暖差による熱膨張がガラスと熱線遮蔽材間で大きく違うために、粘着剤にせん断応力が繰り返しかかり、ナノディスク平面配列の乱れをもたらしてしまう。その結果、当該端部における熱線反射能が大幅に下がってしまう。
【0010】
本発明は、従来における前記諸問題を解決することを目的とする。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、遮熱性能(日照反射率)が高く、ガラスに貼り合わせた全面に渡る遮熱耐久性に優れ、粘着層の再剥離性および剥離強度も良好である熱線遮蔽材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、粘着層として自己粘着性と再剥離性を有する粘着材を用いたところ、再剥離性の高い粘着層を設けたことで泡が混入しても直ぐに貼り直しができる上、剥離強度も良好となり、さらにガラスに貼り合わせた場合の昼夜の温度変化を長期にわたって繰り返した場合の遮熱耐久性も向上することを見出すに至った。
【0012】
前記課題を解決するための手段としては、以下のとおりである。
[1] 少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層と粘着層とを有し、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向し、前記粘着層が自己粘着性と再剥離性を有することを特徴とする熱線遮蔽材。
[2] [1]に記載の熱線遮蔽材は、前記粘着層がカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が、前記金属粒子含有層の一方の表面に露出していることが好ましい。
[4] [3]に記載の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が表面に露出している方の前記金属粒子含有層の表面が、前記粘着層と反対側の最表面であることが好ましい。
[5] [3]または[4]に記載の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が表面に露出している方の前記金属粒子含有層の表面とは反対側の表面と、前記粘着層との間に、基材を有することが好ましい。
[6] [1]〜[5]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の平均粒子径が70nm〜500nmであり、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子のアスペクト比(平均粒子径/平均粒子厚み)が8〜40であることが好ましい。
[7] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、金属平板粒子が、少なくとも銀を含むことが好ましい。
[8] [1]〜[7]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、赤外光を反射することが好ましい。
[9] [1]〜[8]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材の前記粘着層上に、ガラスが貼り付けられたことを特徴とする遮熱ガラス。
[10] [9]に記載の遮熱ガラスを含むことを特徴とする建材用ガラス。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、遮熱性能(日照反射率)が高く、ガラスに貼り合わせた場合の遮熱耐久性に優れ、粘着層の再剥離性および剥離強度も良好である熱線遮蔽材を提供することができる。本発明の熱線遮蔽材によれば、遮熱性能(日照反射率)が高く、遮熱耐久性に優れ、再剥離性および剥離強度も良好な遮熱ガラスおよび建材用ガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の熱線遮蔽材の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の熱線遮蔽材の他の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の熱線遮蔽材の他の一例を示す概略図である。
【図4A】図4Aは、本発明の熱線遮蔽材に含まれる平板粒子の形状の一例を示した概略斜視図であって、円形状の平板粒子を示す。
【図4B】図4Bは、本発明の熱線遮蔽材に含まれる平板粒子の形状の一例を示した概略斜視図であって、六角形状の平板粒子を示す。
【図5A】図5Aは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、金属平板粒子を含む金属粒子含有層(基材の平面とも平行)と平板状金属粒子の主平面(円相当径Dを決める面)とのなす角度(θ)を説明する図を示す。
【図5B】図5Bは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、金属粒子含有層の熱線遮蔽材の深さ方向における金属平板粒子の存在領域を示す図である。
【図5C】図5Cは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態の一例を示した概略断面図である。
【図5D】図5Dは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態の他の一例を示した概略断面図である。
【図5E】図5Eは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態の他の一例を示した概略断面図である。
【図6】図6は、本発明の遮熱ガラスの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の熱線遮蔽材について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明における"再剥離性"の粘着材とは、室温で一連の剥離速度及び各種保持期間にわたり試験用支持体に対して何ら損傷を与えることなく試験用支持体からきれいに剥がれた場合に、再剥離型であるとみなされる。
本発明における"自己粘着性"の粘着材とは、被着面への貼り付けが、他の如何なる粘着材を使用しなくとも、また、更なる圧力や熱をかけることなしに、また、画びょう、ビス、ホッチキス、くぎ、針金などの機械的手段を使用しなくとも行うことができる性質を意味する。
本発明において粘着材は、前記自己粘着性のほか、柔軟性、例えば、被着面に対して、一端から貼り付けを始めて、他端へと向かって貼り付けを進めることにより貼り付けを完了させることが可能である柔軟性を少なくとも有するのが好ましい。
【0016】
[熱線遮蔽材]
本発明の熱線遮蔽材は、少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層と粘着層とを有し、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向し、前記粘着層が自己粘着性と再剥離性を有することを特徴とする。
本発明の熱線遮蔽材はこのような構成により、遮熱性能(日照反射率)が高く、ガラスに貼り合わせた場合の遮熱耐久性に優れ、粘着層の再剥離性および剥離強度も良好である。
本発明の熱線遮蔽材は単に自己粘着性と再剥離性を有する粘着層(以下エラストマー粘着層という)によるDIY性の付与だけでなく、特に銀ナノディスク遮熱に特有の顕著な特性の改良が検知された。それは、遮熱性能(日照反射率、IR反射性能)の長期安定性において、エラストマー粘着層のほうが通常の粘着材に比べて格段によい、という結果である。
これは、本発明の熱線遮蔽材の特徴である、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向している状態(以下、「ナノディスク平面配列」とも言う)がIR反射を出す、という点において、その上に通常の粘着材を積層してガラスへの貼合をすると昼夜の寒暖差による金属粒子含有層(またはガラス)の膨張によって、金属粒子含有層と粘着層とを積層したフィルムのエッジ部における粘着材とフィルム間のせん断応力が生じ、それゆえのナノディスク平面配列に乱れが起こる、という事情による。いかなる理論に拘泥するものでもないが、本発明の熱線遮蔽材の構成で用いる自己粘着性と再剥離性を有する粘着層(例えばエラストマー粘着層)の場合は通常の粘着材と違い、昼夜の寒暖差による金属粒子含有層(またはガラス)の膨張によって前記エッジ部にせん断応力が掛かってきてもガラスと粘着層(例えばエラストマー粘着層)の界面がスライドするだけでせん断応力は解消されてしまい、ナノディスク平面配列の乱れには至らない。このような遮熱性能(日照反射率)の耐久性については従来検討されておらず、昼夜の寒暖差とナノディスク平面配列の乱れの関係についても従来知られていなかった。
【0017】
本発明の熱線遮蔽材は、必要に応じて、紫外線吸収層、基材、金属酸化物粒子含有層などのその他の層を有する態様も好ましい。
以下、本発明の熱線遮蔽材の好ましい構成について説明する。
【0018】
本発明の熱線遮蔽材の層構成としては、図1に示すように、少なくとも1種の金属平板粒子3を含有する金属粒子含有層2と粘着層11を有する態様が挙げられる。また、図2に示すように、基材1と、該基材上に少なくとも1種の金属平板粒子3を含有する金属粒子含有層2と、粘着層11とを有する態様が挙げられる。金属平板粒子3は、図1および図2に記載のように金属粒子含有層2と粘着層11の間の界面に偏在していてもよく、金属粒子含有層2中に厚み方向に適度に分散していてもよい(不図示)。また、図3に示すように、基材1と、該基材上に金属粒子含有層2と、該金属粒子含有層上に粘着層11とを有し、金属粒子含有層2の粘着層11が配置されていない側の表面に金属平板粒子3が偏在していてもよい。
【0019】
<1.金属粒子含有層>
前記金属粒子含有層は、少なくとも1種の金属粒子を含有する層であり、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属粒子含有層の厚みをdとしたとき、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在していることが好ましく、前記金属粒子含有層の表面からd/3の範囲に存在することよりが好ましい。いかなる理論に拘泥するものでもなく、また、本発明の熱線遮蔽材は以下の製造方法に限定されるものではないが、前記金属粒子含有層を製造するときに特定のポリマー(好ましくはラテックス)を添加することなどにより、金属平板粒子を前記金属粒子含有層の一方の表面に偏析させることができる。
【0020】
−1−1.金属粒子−
前記金属粒子としては、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子が金属粒子含有層の一方の表面(本発明の熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、前記金属粒子含有層の一方の表面は、フラットな平面であることが好ましい。本発明の熱線遮蔽材の前記金属粒子含有層が仮支持体としての基材を有する場合は、基材の表面とともに略水平面であることが好ましい。ここで、前記熱線遮蔽材は、前記仮支持体を有していてもよく、有していなくてもよい。
前記金属粒子の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、500nm以下の平均粒子径を有するものであってもよい。
前記金属粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線(近赤外線)の反射率が高い点から、銀、金、アルミニウム、銅、ロジウム、ニッケル、白金などが好ましい。
【0021】
−1−2.金属平板粒子−
前記金属平板粒子としては、形状などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、略三角平板状、略六角平板状、及びこれらの角が取れた略円盤状の金属平板粒子の少なくともいずれかが好ましい。
前記金属平板粒子の材料としては、少なくとも銀を含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線(近赤外線)の遮蔽率が高い金、アルミニウム、銅、ロジウム、ニッケル、白金等の金属などを更に含んでいてもよい。
前記金属平板粒子の前記熱線遮蔽層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第一及び第二のいずれの実施形態においても、0.01g/m2〜1.00g/m2が好ましく、0.02g/m2〜0.20g/m2がより好ましい。
前記含有量が、0.01g/m2未満であると、熱線遮蔽が不十分になることがあり、1.00g/m2を超えると、可視透過率が落ちることがある。一方、前記含有量が、0.02g/m2〜0.20g/m2であると、十分な熱線遮蔽と可視透過率の点で有利である。
なお、前記金属平板粒子の前記熱線遮蔽層における含有量は、例えば、以下のようにして算出することができる。前記熱線遮蔽層の超箔切片TEM像及び表面SEM像の観察から、一定面積における金属平板粒子の個数、平均粒子径及び平均厚みを測定する。或いは、平均厚みに関しては、当該熱線遮蔽層に使用している金属平板粒子をバインダー添加無しで分散液状態にてガラス板に塗布し、その表面を原子間力顕微鏡にて測定することにより、更に正確な平均厚みを測定することができる。このようにして測定した金属平板粒子の個数、平均粒子径及び平均厚みと、金属平板粒子の比重とに基づいて算出した金属平板粒子の質量(g)を、前記一定面積(m2)で除することにより算出することができる。また、前記熱線遮蔽層の一定面積における金属平板粒子をメタノールに溶出させ、蛍光X線測定により測定した金属平板粒子の質量(g)を、前記一定面積(m2)で除することにより算出することもできる。
【0022】
前記金属平板粒子としては、2つの主平面からなる粒子(図4A及び図4B参照)であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状、円形状、三角形状などが挙げられる。これらの中でも、可視光透過率が高い点で、六角形状以上の多角形状〜円形状であることがより好ましく、六角形状または円形状であることが特に好ましい。
本明細書中、円形状とは、後述する金属平板粒子(平板状金属粒子と同義)の平均円相当径の50%以上の長さを有する辺の個数が1個の金属平板粒子当たり0個である形状のことを言う。前記円形状の金属平板粒子としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で金属平板粒子を主平面の上方から観察した際に、角が無く、丸い形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本明細書中、六角形状とは、後述する金属平板粒子の平均円相当径の20%以上の長さを有する辺の個数が1個の金属平板粒子当たり6個である形状のことを言う。なお、その他の多角形についても同様である。前記六角形状の金属平板粒子としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で金属平板粒子を主平面の上方から観察した際に、六角形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状の角が鋭角のものでも、鈍っているものでもよいが、可視光域の吸収を軽減し得る点で、角が鈍っているものであることが好ましい。角の鈍りの程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属平板粒子の材料としては、特に制限はなく、前記金属粒子と同じものを目的に応じて適宜選択することができる。前記金属平板粒子は、少なくとも銀を含むことが好ましい。
【0023】
前記金属粒子含有層に存在する金属粒子のうち、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子は、金属粒子の全個数に対して、60個数%以上であり、65個数%以上が好ましく、70個数%以上が更に好ましい。前記金属平板粒子の割合が、60個数%未満であると、可視光線透過率が低くなってしまうことがある。
【0024】
[1−2−1.面配向]
本発明の熱線遮蔽材において、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子は、その主平面が金属粒子含有層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して、平均0°〜±30°の範囲で面配向しており、平均0°〜±20°の範囲で面配向していることが好ましく、平均0°〜±5°の範囲で面配向していることが特に好ましい。
前記金属平板粒子の存在状態は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する図5D、図5Eのように並んでいることが好ましい。
【0025】
ここで、図5A〜図5Eは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図である。図5C、図5Dおよび図5Eは、金属粒子含有層2中における金属平板粒子3の存在状態を示す。図5Aは、基材1の平面と金属平板粒子3の主平面(円相当径Dを決める面)とのなす角度(±θ)を説明する図である。図5Bは、金属粒子含有層2の熱線遮蔽材の深さ方向における存在領域を示すものである。
図5Aにおいて、基材1の表面と、金属平板粒子3の主平面または主平面の延長線とのなす角度(±θ)は、前記の面配向における所定の範囲に対応する。即ち、面配向とは、熱線遮蔽材の断面を観察した際、図5Aに示す傾角(±θ)が小さい状態をいい、特に、図5Dは、基材1の表面と金属平板粒子3の主平面とが接している状態、即ち、θが0°である状態を示す。基材1の表面に対する金属平板粒子3の主平面の面配向の角度、即ち図5Aにおけるθが±30°を超えると、熱線遮蔽材の所定の波長(例えば、可視光域長波長側から近赤外光領域)の反射率が低下してしまう。
【0026】
前記金属粒子含有層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して金属平板粒子の主平面が面配向しているかどうかの評価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、適当な断面切片を作製し、この切片における金属粒子含有層(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材)及び金属平板粒子を観察して評価する方法であってもよい。具体的には、熱線遮蔽材を、ミクロトーム、集束イオンビーム(FIB)を用いて熱線遮蔽材の断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製し、これを、各種顕微鏡(例えば、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等)を用いて観察して得た画像から評価する方法などが挙げられる。
【0027】
前記熱線遮蔽材において、金属平板粒子を被覆するバインダーが水で膨潤する場合は、液体窒素で凍結した状態の試料を、ミクロトームに装着されたダイヤモンドカッター切断することで、前記断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製してもよい。また、熱線遮蔽材において金属平板粒子を被覆するバインダーが水で膨潤しない場合は、前記断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製してもよい。
【0028】
前記の通り作製した断面サンプルまたは断面切片サンプルの観察としては、サンプルにおいて金属粒子含有層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して金属平板粒子の主平面が面配向しているかどうかを確認し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FE−SEM、TEM、光学顕微鏡などを用いた観察が挙げられる。前記断面サンプルの場合は、FE−SEMにより、前記断面切片サンプルの場合は、TEMにより観察を行ってもよい。FE−SEMで評価する場合は、金属平板粒子の形状と傾角(図5Aの±θ)が明瞭に判断できる空間分解能を有することが好ましい。
【0029】
[1−2−2.平均粒子径(平均円相当径)及び平均粒子径(平均円相当径)の粒度分布]
前記金属平板粒子の平均粒子径(平均円相当径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70nm〜500nmが好ましく、100nm〜400nmがより好ましい。前記平均粒子径(平均円相当径)が、70nm未満であると、金属平板粒子の吸収の寄与が反射より大きくなるため十分な熱線反射能が得られなくなることがあり、500nmを超えると、ヘイズ(散乱)が大きくなり、基材の透明性が損なわれてしまうことがある。
ここで、前記平均粒子径(平均円相当径)とは、TEMで粒子を観察して得た像から任意に選んだ200個の平板粒子の主平面直径(最大長さ)の平均値を意味する。
前記金属粒子含有層中に平均粒子径(平均円相当径)が異なる2種以上の金属粒子を含有することができ、この場合、金属粒子の平均粒子径(平均円相当径)のピークが2つ以上、即ち2つの平均粒子径(平均円相当径)を有していてもよい。
【0030】
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子の粒度分布における変動係数としては、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。前記変動係数が、30%を超えると、熱線遮蔽材における熱線の反射波長域がブロードになってしまうことがある。
ここで、前記金属平板粒子の粒度分布における変動係数は、例えば前記の通り得た平均値の算出に用いた200個の金属平板粒子の粒子径の分布範囲をプロットし、粒度分布の標準偏差を求め、前記の通り得た主平面直径(最大長さ)の平均値(平均粒子径(平均円相当径))で割った値(%)である。
【0031】
[1−2−3.アスペクト比]
前記金属平板粒子のアスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、波長800nm〜1,800nmの赤外光領域での反射率が高くなる点から、8〜40が好ましく、10〜35がより好ましい。前記アスペクト比が8未満であると反射波長が800nmより小さくなり、40を超えると、反射波長が1,800nmより長くなり、十分な熱線反射能が得られないことがある。
前記アスペクト比は、金属平板粒子の平均粒子径(平均円相当径)を金属平板粒子の平均粒子厚みで除算した値を意味する。平均粒子厚みは、金属平板粒子の主平面間距離に相当し、例えば、図4A及び図4Bに示す通りであり、原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
前記AFMによる平均粒子厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス基板に金属平板粒子を含有する粒子分散液を滴下し、乾燥させて、粒子1個の厚みを測定する方法などが挙げられる。
なお、前記金属平板粒子の厚みは5〜20nmであることが好ましい。
【0032】
[1−2−4.金属平板粒子の存在範囲]
本発明の熱線遮蔽材では、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在することが好ましく、d/3の範囲に存在することがより好ましく、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が前記金属粒子含有層の一方の表面に露出していることが更に好ましい。金属平板粒子が金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在するとは、金属平板粒子の少なくとも一部が金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に含まれていることを意味する。すなわち、金属平板粒子の一部が、金属粒子含有層の表面よりも突出している図5Eに記載される金属平板粒子も、金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在する金属平板粒子として扱う。なお、図5Eは、各金属平板粒子の厚み方向のごく一部が金属粒子含有層に埋没してことを意味し、各金属平板粒子が金属粒子含有層の表面上に積まれているわけではない。
また、金属平板粒子が前記金属粒子含有層の一方の表面に露出しているとは、金属平板粒子の一方の表面の一部が、金属粒子含有層の表面よりも突出していることを意味する。
ここで、前記金属粒子含有層中の金属平板粒子存在分布は、例えば、熱線遮蔽材の断面試料をSEM観察した画像より測定することができる。
【0033】
本発明の熱線遮蔽材において、図5Bに示すように、金属粒子含有層2における金属平板粒子3を構成する金属のプラズモン共鳴波長をλとし、金属粒子含有層2における媒質の屈折率をnとするとき、前記金属粒子含有層2が、熱線遮蔽材の水平面からの深さ方向において、(λ/n)/4の範囲で存在することが好ましい。この範囲内であると、熱線遮蔽材の上側と下側のそれぞれの金属粒子含有層の界面での反射波の位相により反射波の振幅が強めあう効果が十分大きく、可視光透過率及び熱線最大反射率が良好となる。
前記金属粒子含有層における金属平板粒子を構成する金属のプラズモン共鳴波長λは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線反射性能を付与する点で、400nm〜2,500nmであることが好ましく、可視光透過率を付与する点から、700nm〜2,500nmであることがより好ましい。
【0034】
[1−2−5.金属粒子含有層の媒質]
前記金属粒子含有層における媒質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本発明の熱線遮蔽材は、前記金属含有層がポリマーを含むことが好ましく、透明ポリマーを含むことがより好ましい。前記ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンやセルロース等の天然高分子等の高分子などが挙げられる。その中でも、本発明では、前記ポリマーの主ポリマーがポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂であることが好ましく、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂であることが前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上を前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在させやすい観点からより好ましく、ポリエステル樹脂であることが本発明の熱線遮蔽材のこすり耐性をより改善する観点から特に好ましい。
また、本明細書中、前記金属含有層に含まれる前記ポリマーの主ポリマーとは、前記金属含有層に含まれるポリマーの50質量%以上を占めるポリマー成分のことを言う。
前記媒質の屈折率nは、1.4〜1.7であることが好ましい。
本発明の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の厚みをaとしたとき、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、厚み方向のa/10以上を前記ポリマーに覆われていることが好ましく、厚み方向のa/10〜10aを前記ポリマーに覆われていることがより好ましく、a/8〜4aを前記ポリマーに覆われていることが特に好ましい。このように前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子が前記金属粒子含有層に一定割合以上埋没していることにより、よりこすり耐性を高めることができる。すなわち、本発明の熱線遮蔽材は、図5Eの態様よりも、図5Dの態様の方が好ましい。
【0035】
[1−2−6.金属平板粒子の面積率]
前記熱線遮蔽材を上から見た時の基材の面積A(金属粒子含有層に対して垂直方向から見たときの前記金属粒子含有層の全投影面積A)に対する金属平板粒子の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕としては、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。前記面積率が、15%未満であると、熱線の最大反射率が低下してしまい、遮熱効果が十分に得られないことがある。
ここで、前記面積率は、例えば熱線遮蔽材基材を上からSEM観察で得られた画像や、AFM(原子間力顕微鏡)観察で得られた画像を画像処理することにより測定することができる。
【0036】
[1−2−7.金属平板粒子の平均粒子間距離]
前記金属粒子含有層における水平方向に隣接する金属平板粒子の平均粒子間距離としては、可視光線透過率及び熱線の最大反射率の点から、金属平板粒子の平均粒子径の0.1〜10が好ましい。
前記金属平板粒子の水平方向の平均粒子間距離が、前記金属平板粒子の平均粒子径の1/10未満となると、可視光線透過率が低下してしまう。また、10以上であると熱線反射率が低下してしまう。また、水平方向の平均粒子間距離は、可視光線透過率の点で、不均一(ランダム)であることが好ましい。ランダムでない場合、即ち、均一であると、回折散乱によりモアレ縞が見えることがある。
【0037】
ここで、前記金属平板粒子の水平方向の平均粒子間距離とは、隣り合う2つの粒子の粒子間距離の平均値を意味する。また、前記平均粒子間距離がランダムであるとは、「100個以上の金属平板粒子が含まれるSEM画像を二値化した際の輝度値の2次元自己相関を取ったときに、原点以外に有意な極大点を持たない」ことを意味する。
【0038】
[1−2−8.金属粒子含有層の層構成]
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子は、図5A〜図5Eに示すように、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の形態で配置される。
前記金属粒子含有層としては、図5A〜図5Eに示すように単層で構成されてもよく、複数の金属粒子含有層で構成されてもよい。複数の金属粒子含有層で構成される場合、遮熱性能を付与したい波長帯域に応じた遮蔽性能を付与することが可能となる。なお、前記金属粒子含有層が複数の金属粒子含有層で構成される場合、本発明の熱線遮蔽材は、少なくとも最表面の金属粒子含有層において、該最表面の金属粒子含有層の厚みをd’’としたとき、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、該最表面の金属粒子含有層の表面からd’’/2の範囲に存在することが必要である。
【0039】
[1−2−9.金属粒子含有層の厚み]
本発明の熱線遮蔽材は、前記金属粒子含有層の厚みが10〜160nmであることが好ましく、20〜160nmであることがより好ましく、20〜100nmであることが特に好ましい。前記金属粒子含有層の厚みdは、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の厚みをaとしたとき、a〜10aであることが好ましく、2a〜8aであることがより好ましい。
【0040】
ここで、前記金属粒子含有層の各層の厚みは、例えば、熱線遮蔽材の断面試料をSEM観察した画像より測定することができる。
また、熱線遮蔽材の前記金属粒子含有層の上に、例えば後述するオーバーコート層などの他の層を有する場合においても、他の層と前記金属粒子含有層の境界は同様の方法によって決定することができ、前記金属粒子含有層の厚みdを決定することができる。なお、前記金属粒子含有層に含まれるポリマーと同じ種類のポリマーを用いて、前記金属粒子含有層の上にコーティングをする場合は前記金属粒子含有層との境界を判別しにくいため、前記金属粒子含有層の上にカーボン蒸着を施した上でオーバーコート層をコーティングし、断面をSEM観察することにより両層間の界面を認識することができ、前記金属粒子含有層の厚みdを決定することができる。
【0041】
[1−2−10.金属平板粒子の合成方法]
前記金属平板粒子の合成方法としては、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を合成し得るものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法などが挙げられる。これらの中でも、形状とサイズ制御性の点で、化学還元法、光化学還元法などの液相法が特に好ましい。六角形〜三角形状の金属平板粒子を合成後、例えば、硝酸、亜硫酸ナトリウム等の銀を溶解する溶解種によるエッチング処理、加熱によるエージング処理などを行うことにより、六角形〜三角形状の金属平板粒子の角を鈍らせて、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を得てもよい。
【0042】
前記金属平板粒子の合成方法としては、前記の他、予めフィルム、ガラスなどの透明基材の表面に種晶を固定後、平板状に金属粒子(例えばAg)を結晶成長させてもよい。
【0043】
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子は、所望の特性を付与するために、更なる処理を施してもよい。前記更なる処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高屈折率シェル層の形成、分散剤、酸化防止剤等の各種添加剤を添加することなどが挙げられる。
【0044】
−1−2−10−1.高屈折率シェル層の形成−
前記金属平板粒子は、可視光域透明性を更に高めるために、可視光域透明性が高い高屈折率材料で被覆されてもよい。
前記高屈折率材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、TiOx、BaTiO3、ZnO、SnO2、ZrO2、NbOxなどが挙げられる。
【0045】
前記被覆する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Langmuir、2000年、16巻、p.2731−2735に報告されているようにテトラブトキシチタンを加水分解することにより銀の金属平板粒子の表面にTiOx層を形成する方法であってもよい。
【0046】
また、前記金属平板粒子に直接高屈折率金属酸化物層シェルを形成することが困難な場合は、前記の通り金属平板粒子を合成した後、適宜SiO2やポリマーのシェル層を形成し、更に、このシェル層上に前記金属酸化物層を形成してもよい。TiOxを高屈折率金属酸化物層の材料として用いる場合には、TiOxが光触媒活性を有することから、金属平板粒子を分散するマトリクスを劣化させてしまう懸念があるため、目的に応じて金属平板粒子にTiOx層を形成した後、適宜SiO2層を形成してもよい。
【0047】
−1−2−10−2.各種添加物の添加−
本発明の熱線遮蔽材において、前記金属平板粒子は、該金属平板粒子を構成する銀などの金属の酸化を防止するために、メルカプトテトラゾール、アスコルビン酸等の酸化防止剤を吸着していてもよい。また、酸化防止を目的として、Ni等の酸化犠牲層が金属平板粒子の表面に形成されていてもよい。また、酸素を遮断することを目的として、SiO2などの金属酸化物膜で被覆されていてもよい。
前記金属平板粒子は、分散性付与を目的として、例えば、4級アンモニウム塩、アミン類等のN元素、S元素、及びP元素の少なくともいずれかを含む低分子量分散剤、高分子量分散剤などの分散剤を添加してもよい。
【0048】
<2.粘着層>
本発明の熱線遮蔽材は、粘着層を有し、前記粘着層が自己粘着性と再剥離性を有することを特徴とする。
本発明の熱線遮蔽材に用いられる粘着層は、自己粘着性と再剥離性を有する。このような粘着層は、従来建築材料として使用する場合に採用されていた粘着材であった、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系などの各種感圧性接着剤とは異なる。
粘着層として有効に機能させる観点から、本発明の熱線遮蔽材は10〜100μm厚で粘着層を有することが好ましく、10〜50μm厚で粘着層を有することがより好ましく、15〜40μm厚で粘着層を有することが特に好ましい。粘着層は、残留溶剤をできるだけ少なくするために揮発性の高いアセトン、トルエン、メチルエチルケトンなどを溶媒として塗布することが好ましい。また、粘着層の中にはUVカット剤を混合しておくと熱線遮蔽材の構成物に対する光劣化を低減することができる。前記UVカット剤としてはチヌビン(BASF社製)などが好ましい。また、粘着層は塗布後1日〜1週間をおき、内部歪などの諸物性を落ち着かせることが好ましい。
前記粘着層は、紫外線吸収剤を含むことができる。
【0049】
前記粘着層の形成に利用可能な材料としては、自己粘着性と再剥離性を有する以外に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特許第421557号公報に記載のゲルポリマー塗布液を用いた自己粘着性フィルム、特開2004−29673号公報に記載のゲルポリマーシート、特許第3532565号公報に記載の従来の感圧性接着剤に対して自己粘着性と再剥離性を得られるように改良した塗布液を用いた粘着層などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの材料からなる粘着層は、塗布により形成することができる。
さらに、前記粘着層には帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などを添加してもよい。
【0050】
本発明の熱線遮蔽材は、前記粘着層がカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。前記カルボン酸変性熱可塑性エラストマーを含む粘着層については、特許第421557号公報に記載があり、前記金属粒子含有層に後述する第1接着層と第2接着層がこの順に積層・接着されてなる自己粘着性を有する粘着層が好ましい。前記第1接着層は、カルボン酸変性熱可塑性エラストマー及び架橋剤を含み、前記金属粒子含有層の片面に積層・接着されていることが好ましい。また、前記第2接着層は、熱可塑性エラストマー及び可塑剤を含み、前記第1接着層に積層・接着されていることが好ましい。
【0051】
前記第1接着層は、カルボン酸変性熱可塑性エラストマー及び架橋剤を含み、前記基材層の片面に積層・接着されている層であることが好ましい。このカルボン酸変性熱可塑性エラストマーとしては、カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーなど、種々のものを用いることができる。ここで、カルボン酸変性は、例えば、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸、アクリル酸、プロピロル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びオレイン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、並びに、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸によるものであってもよい。脂肪族不飽和ジカルボン酸変性であるのが好ましく、最も好ましくは、マレイン酸変性である。
【0052】
このようなカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーは、例えば、水素添加されたカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーであってもよく、例えば、水素添加されたカルボン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーであってもよい。この例としては、例えば、水素添加されたマレイン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマー(マレイン酸変性SEBSエラストマー)が挙げられる。また、前記第1接着層材料におけるカルボン酸変性熱可塑性エラストマーとして、水素添加されたマレイン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーを用いる場合、そのメルトインデックスが、例えば、200℃、5kgの条件下で、2.5〜25g/10分であるのが好ましく、より好ましくは3〜7g/10分である。
【0053】
また、前記水素添加されたカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを用いる場合、水素添加率が実質的に100%であるのが好ましいが、本発明の効果が得られる限りにおいてそれ未満であってもよい。また、カルボン酸変性SEBSを用いる場合、そのスチレン:エチレン+ブチレンの質量比は、例えば、10:90〜40:60であるのが好ましく、より好ましくは、20:80〜30:70である。更に、本発明においては、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーの酸価が、好ましくは2〜10である。酸価が3未満であると無色透明なフィルムとすることができ、一方、酸価が3〜10であると黄色がかったものとすることができる。
前記カルボン酸変性熱可塑性エラストマーとしては、例えば、旭化成製のタフテックM1911、M1913、M1943、及びクレイトンポリマー製のクレイトンFG−1901Xなどが挙げられる。
【0054】
また、前記第1接着層中に用いる架橋剤は、その種類が特に制限されず、例えば、前記カルボン酸変性熱可塑性エラストマーの種類などを考慮して適宜決定することができる。この架橋剤としては、例えば、日本ポリウレタン工業製のコロネートHL(ヘキサメチレンジイソシアネート−ビュレット型)を用いることができる。
また、前記第1接着層におけるカルボン酸変性熱可塑性エラストマー:架橋剤の質量比は、特に制限されないが、例えば、100:1〜2:1とするのが好ましく、より好ましくは100:1〜4:1であり、最も好ましくは50:1〜12:1である。これにより、前記第1接着層と前記金属粒子含有層の接着性及び前記第1接着層と前記第2接着層の接着性の双方を優秀なものとすることができる。
また、前記第1接着層は、他の添加剤、例えば、帯電防止剤などを含んでいてもよい。帯電防止剤としては、例えば、日本油脂製のエレガン264waxなどを用いることができ、その含量は、第1接着層の質量をベースとして、0.1〜3.6質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.6〜1.8質量%である。このような割合で帯電防止剤を用いることにより、いわゆる「ゆずはだ」を良好に防止することができる。
前記第1接着層の厚さは、任意であるが、例えば、1〜50μmであるのが好ましく、より好ましくは1〜15μmであり、最も好ましくは2〜3μmであり、これにより、例えば、コスト面及び加工適性面において所望の結果が得られる。
【0055】
前記第2接着層は、熱可塑性エラストマー及び可塑剤を含み、前記第1接着層に積層・接着されている層であることが好ましい。前記第2接着層中に用いる熱可塑性エラストマーとしては、種々のものを用いることができるが、可塑剤を併用することにより凝集力が下がり、自己粘着性が向上するように選択することが重要である。前記第2接着層中に用いる熱可塑性エラストマーは、スチレンモノマーユニットとゴムモノマーユニットからなるブロックセグメントで構成されているポリマーであるのが好ましい。そのような熱可塑性エラストマーとしては、例えば、SIS、SBS、SEBS、SEPS、SI、SB、SEPなどが挙げられ、SEBS、SEPSが好ましい。また、前記第2接着層材料の熱可塑性エラストマーとして、例えば、SEPSを用いる場合、その質量平均分子量は、例えば、15,000〜500,000であるのが好ましく、より好ましくは100,000〜500,000である。
前記第2接着層が、その質量をベースとして、好ましくは、3〜97質量%、より好ましくは10〜90質量%の熱可塑性エラストマーを含むのがよい。
【0056】
また、前記第2接着層中に用いる可塑剤は、その種類が特に制限されないが、熱可塑性エラストマーがポリスチレン相とゴム相を有する場合に、ゴム相に対する親和性が高いが、ポリスチレン相に対する親和性が低い、高分子量の化合物が適している。このような可塑剤としては、例えば、ナフテンオイル又は流動パラフィンを用いることができる。
前記ナフテンオイルは、例えば、その引火点が、例えば、100〜300℃であるのが好ましく、より好ましくは150〜280℃である。また、その流動点が、例えば、−30〜−5℃であるのが好ましく、より好ましくは−25〜−10℃である。また、その比重が、例えば、0.83〜0.87であるのが好ましく、より好ましくは0.837〜0.868である。更に、その炭素数は、例えば、3〜8であるのが好ましく、より好ましくは5〜6である。
一方、前記流動パラフィンは、例えば、その引火点が、例えば、100〜300℃であるのが好ましく、より好ましくは150〜280℃である。また、その流動点が、例えば、−30〜−5℃であるのが好ましく、より好ましくは−25〜−10℃である。また、その比重が、例えば、0.89〜0.91であるのが好ましく、より好ましくは0.8917〜0.9065である。更に、その炭素数は、例えば、20〜35であるのが好ましく、より好ましくは21〜33である。
前記ナフテンオイル、流動パラフィンのいずれかを単独で用いることができるが、これらを組み合せて用いることもできる。
【0057】
前記第2接着層が、その質量をベースとして、好ましくは、3〜97質量%、より好ましくは、10〜90質量%の可塑剤を含むのがよい。
また、前記第2接着層における熱可塑性エラストマー:可塑剤の質量比は、特に制限されないが、例えば、5:95〜95:5とするのが好ましく、より好ましくは10:90〜90:10である。これにより、前記第2接着層と前記第1接着層の接着性及び前記第2接着層と被着面の接着性の双方を優秀なものとすることができる。
前記第2接着層の厚さは、任意であるが、例えば、10〜100μmであるのが好ましく、より好ましくは25〜50μmである。
また、前記第2接着層の上に、必要に応じて、剥離層、即ち、本発明の熱線遮蔽材において、その保存時には粘着層の前記第2接着層面を被覆しており、被着面へ貼り付ける際に、剥離されて第2接着層面を露出させる層を設けることができる。前記剥離層としては、例えば、シリコーン処理PET、シリコーン処理紙基材、ポリオレフィンなどを用いることができ、シリコーン処理PETが好ましい。尚、シリコーン処理面が、前記第2接着層と接触するようにするのがよい。
【0058】
特開2004−29673号公報に記載の粘着層であるゲルポリマーシートは、オレフィンベースポリマーを含有する接着剤から形成することができる。前記接着剤に含まれるオレフィンベースポリマーは、通常、炭素数が3以上、好ましくは炭素数が3〜16のオレフィンに由来する繰り返し単位を分子内に有するホモポリマーまたはコポリマーである。オレフィンベースポリマーは、従来から保護フィルム用接着剤として使用されているものが利用できる。
炭素数が3以上のオレフィンに由来する単位は、枝分かれ構造を有する枝分かれオレフィン単位であるので、側鎖アルキル基の効果により非結晶性を示し、通常、常温(約25℃)以下のガラス転移温度(Tg)を有する。これにより、適度な粘着性を示す。オレフィンベースポリマーのTgは、好ましくは−70〜25℃、さらに好ましくは−60〜20℃の範囲である。
【0059】
枝分かれオレフィン単位を形成するオレフィンは、たとえば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセンなどのα−オレフィンや、ブタジエン、イソプレン等の炭素数が4以上のアルカジエンである。これらのオレフィンは、1種単独で用いてもよいし、また、2種以上組み合せて用いてもよい。また、オレフィンベースポリマーは、単独で使用してもよく、あるいは2種類以上のオレフィンベースポリマーを混合して使用してもよい。
【0060】
オレフィンベースポリマーは、オレフィンと1種以上のビニルモノマーとの共重合体を包含する。ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレンや、エチレン(炭素数が3未満のオレフィン)等が使用できる。オレフィンベースポリマーの好ましい例は、アタクチック・ポリプロピレン、アタクチック・ポリプロピレンと1種以上のビニルモノマーとの共重合体、炭素数4〜16のオレフィンを含むモノマーの重合体、スチレンとオレフィンとのブロック共重合体である。スチレンを含む共重合体は、たとえば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体などのスチレン系ブロック共重合体である。
【0061】
前記粘着層の弾性率は、剥離強度が前述の範囲になる様に決定するのが好ましい。たとえば、動的粘弾性測定法により25℃において、1rad/秒の周波数、シェアモードにて測定された弾性率G(貯蔵弾性率)は、通常20〜300kPa、好適には30〜200kPa、特に好適には50〜100kPaである。弾性率Gが小さすぎると再剥離性が低下するおそれがあり、反対に弾性率Gが大きすぎると、光学フィルタの被着面への密着性が低下し、被着体との間に空気界面ができるおそれがある。なお、接着層の弾性率を効果的に高めるには、オレフィンベースポリマーを三次元架橋するのが好ましい。架橋した状態で、いわゆるゲル状態になってもよい。
【0062】
また、前記粘着層の再剥離性を高めるには、たとえば、次の様な方法が好ましい。
(i)エチレン−オレフィン共重合体またはスチレン−オレフィン共重合体を用い、分子に占めるエチレン単位またはスチレン単位の割合を大きくする。
(ii)ポリエチレン等の結晶性ポリマーを、オレフィンベースポリマーと混合して用いる。
(iii)前述の様に、オレフィンベースポリマーを三次元架橋する。
これら(i)〜(iii)の方法を、2つ以上を組み合せて採用してもよい。
【0063】
前記粘着層は、本発明の効果を損なわない限り、粘着付与樹脂や可塑剤を含んでもよい。これらの使用は、本発明の熱線遮蔽材と被着体との密着性を高めるのに有利である。これらは、脂肪族化合物からなる樹脂やオイルがよい。また、本発明の効果を損なわない限り、上記以外のポリマー、たとえば、ポリスチレン、クロロプレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等を前記粘着層に含ませてもよい。
【0064】
<3.その他の層>
<<3−1.基材>>
本発明の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が偏在している方の前記金属粒子含有層の表面とは反対側の表面に、基材を有することが好ましい。
前記基材としては、光学的に透明な基材であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光線透過率が70%以上のもの、好ましくは80%以上のもの、近赤外線域の透過率が高いものなどが挙げられる。
前記基材としては、その形状、構造、大きさ、材料などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱線遮蔽材の大きさなどに応じて適宜選択することができる。
前記基材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエチレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテート等のセルロース系樹脂などからなるフィルム又はこれらの積層フィルムが挙げられる。これらの中で、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。
この基材フィルムの厚みとしては、特に制限はなく、日射遮蔽フィルムの使用目的に応じて適宜選択することができ、通常は10μm〜500μm程度であり、12μm〜300μmが好ましく、16μm〜125μmがより好ましい。
【0065】
<<3−2.ハードコート層>>
耐擦傷性を付加するために、機能性フィルムがハードコート性を有するハードコート層を含むことも好適である。ハードコート層には金属酸化物粒子を含むことができる。
前記ハードコート層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜その種類も形成方法も選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂などが挙げられる。前記ハードコート層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜50μmが好ましい。前記ハードコート層上に更に反射防止層及び/又は防眩層を形成すると、耐擦傷性に加え、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性フィルムが得られ好適である。また、前記ハードコート層に前記金属酸化物粒子を含有してもよい。
【0066】
<<3−3.オーバーコート層>>
本発明の熱線遮蔽材において、物質移動による金属平板粒子の酸化・硫化を防止し、耐擦傷性を付与するため、本発明の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子が露出している方の前記金属粒子含有層の表面に密接するオーバーコート層を有していてもよい。また、前記金属粒子含有層と後述の紫外線吸収層との間にオーバーコート層を有していてもよい。本発明の熱線遮蔽材は特に金属平板粒子が金属粒子含有層の表面に偏在するため場合は、金属平板粒子の剥落による製造工程のコンタミ防止、別層塗布時の金属平板粒子配列乱れの防止、などのため、オーバーコート層を有していてもよい。
前記オーバーコート層には紫外線吸収剤を含んでもよい。
前記オーバーコート層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、バインダー、マット剤、及び界面活性剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂などが挙げられる。
前記オーバーコート層の厚みとしては、0.01μm〜1,000μmが好ましく、0.02μm〜500μmがより好ましく、0.1〜10μmが特に好ましく、0.2〜5μmがより特に好ましい。
【0067】
<4.添加剤>
<<4−1.紫外線吸収剤>
本発明の熱線遮蔽材は、紫外線吸収剤が含まれている層を有していてもよい。
前記紫外線吸収剤を含有する層は、目的に応じて適宜選択することができ、粘着層であってもよく、また、前記粘着層と前記金属粒子含有層との間の層(例えば、オーバーコート層など)であってもよい。いずれの場合も、前記紫外線吸収剤は、前記金属粒子含有層に対して、太陽光が照射される側に配置される層に添加されることが好ましい。
【0068】
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,4ドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0070】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール(チヌビン326)、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−5−ジターシャリーブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0071】
前記トリアジン系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノ(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物、ビス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物、トリス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物などが挙げられる。
前記モノ(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物としては、例えば、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。前記ビス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロピルオキシフェニル)−6−(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス[2−ヒドロキシ−4−[3−(メトキシヘプタエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル]−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。前記トリス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス[2−ヒドロキシ−4−(3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−6−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス[2−ヒドロキシ−4−[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−6−[2,4−ビス[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0072】
前記サリチレート系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート、2−エチルヘキシルサリチレートなどが挙げられる。
【0073】
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。
【0074】
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視光透明性や日射透明性が高い方が好ましく、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。なお、バインダーが熱線を吸収すると、金属平板粒子による反射効果が弱まってしまうことから、熱線源と金属平板粒子との間に形成される紫外線吸収層としては、450nm〜1,500nmの領域に吸収を持たない材料を選択したり、該紫外線吸収層の厚みを薄くしたりすることが好ましい。
前記紫外線吸収層の厚みとしては、0.01μm〜1,000μmが好ましく、0.02μm〜500μmがより好ましい。前記厚みが、0.01μm未満であると、紫外線の吸収が足りなくなることがあり、1,000μmを超えると、可視光の透過率が下がることがある。
前記紫外線吸収層の含有量としては、用いる紫外線吸収層によって異なり、一概に規定することができないが、本発明の熱線遮蔽材において所望の紫外線透過率を与える含有量を適宜選択することが好ましい。
前記紫外線透過率としては、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。前記紫外線透過率が、5%を超えると、太陽光の紫外線により前記金属平板粒子層の色味が変化することがある。
【0075】
<<4−2.金属酸化物粒子>>
本発明の熱線遮蔽材は、長波赤外線を吸収するために、少なくとも1種の金属酸化物粒子を含有していても熱線遮蔽と製造コストのバランスの観点からは好ましい。この場合、例えばオーバーコート層に金属酸化物粒子を含むことが好ましい。オーバーコート層は、基材を介して、前記金属酸化物粒子含有層と積層されていてもよい。金属平板粒子含有層が太陽光などの熱線の入射方向側となるように本発明の熱線遮蔽材を配置したときに、金属平板粒子含有層2で熱線の一部(または全部でもよい)を反射した後、オーバーコート層で熱線の一部を吸収することとなり、金属酸化物含有層で吸収されずに熱線遮蔽材を透過した熱線に起因して熱線遮蔽材の内側で直接受ける熱量と、熱線遮蔽材の金属酸化物含有層2で吸収されて間接的に熱線遮蔽材の内側に伝わる熱量の合計としての熱量を低減することができる。
前記金属酸化物粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錫ドープ酸化インジウム(以下、「ITO」と略記する。)、錫ドープ酸化アンチモン(以下、「ATO」と略記する。)、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン、ガラスセラミックスなどが挙げられる。これらの中でも、熱線吸収能力に優れ、金属平板粒子と組み合わせることにより幅広い熱線吸収能を有する熱線遮蔽材が製造できる点で、ITO、ATO、酸化亜鉛がより好ましく、1,200nm以上の赤外線を90%以上遮蔽し、可視光透過率が90%以上である点で、ITOが特に好ましい。
前記金属酸化物粒子の一次粒子の体積平均粒径としては、可視光透過率を低下させないため、0.1μm以下が好ましい。
前記金属酸化物粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、針状、板状などが挙げられる。
【0076】
前記金属酸化物粒子の前記金属酸化物粒子含有層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1g/m2〜20g/m2が好ましく、0.5g/m2〜10g/m2がより好ましく、1.0g/m2〜4.0g/m2がより好ましい。
前記含有量が、0.1g/m2未満であると、肌に感じる日射量が上昇することがあり、20g/m2を超えると、可視光透過率が悪化することがある。一方、前記含有量が、1.0g/m2〜4.0g/m2であると、上記2点を回避できる点で有利である。
なお、前記金属酸化物粒子の前記金属酸化物粒子含有層における含有量は、例えば、前記熱線遮蔽層の超箔切片TEM像及び表面SEM像の観察から、一定面積における金属酸化物粒子の個数及び平均粒子径を測定し、該個数及び平均粒子径と、金属酸化物粒子の比重とに基づいて算出した質量(g)を、前記一定面積(m2)で除することにより算出することができる。また、前記金属酸化物粒子含有層の一定面積における金属酸化物微粒子をメタノールに溶出させ、蛍光X線測定により測定した金属酸化物微粒子の質量(g)を、前記一定面積(m2)で除することにより算出することもできる。
【0077】
<5.熱線遮蔽材の製造方法>
本発明の熱線遮蔽材の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塗布方法により、前記基材の表面に前記金属粒子含有層、前記紫外線吸収層、更に必要に応じてその他の層を形成する方法が挙げられる。
【0078】
−5−1.金属粒子含有層の形成方法−
本発明の金属粒子含有層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基材などの下層の表面上に、前記金属平板粒子を有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法、LB膜法、自己組織化法、スプレー塗布などの方法で面配向させる方法が挙げられる。本発明の熱線遮蔽材を製造するとき、後述の実施例で用いた金属粒子含有層の組成とし、ラテックスを添加する等によって、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在するようにする。前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、前記金属粒子含有層の表面からd/3の範囲に存在するようにすることが好ましい。前記ラテックスの添加量に特に制限は無いが、例えば金属平板粒子に対して、1〜10000質量%添加することが好ましい。
【0079】
なお、面配向を促進するために、金属平板粒子を塗布後、カレンダーローラーやラミローラーなどの圧着ローラーを通すことにより促進させてもよい。
【0080】
−5−2.粘着層の形成方法−
前記粘着層は、前記金属粒子含有層(または後述する基材)上に塗布により形成しても、前記金属粒子含有層(または後述する基材)と粘着層との貼り合わせによって形成してもよいが、塗布により形成することが好ましい。例えば、前記基材、前記金属粒子含有層、前記紫外線吸収層などの下層の表面上に塗布により積層することができる。このときの塗布方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。
【0081】
その中でも、特許4215527号公報に記載のゲルポリマーを塗布する方法が好ましい。この方法では、上述した前記金属粒子含有層(または後述する基材)に、前記第1接着層材料を製造するために、上述したカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを、溶剤、例えばトルエン中に導入し、これを、撹拌機を用いて溶解する。この溶液に対して、架橋剤を添加し、次いで、場合により、帯電防止剤を添加して、前記第1接着層材料を製造する。
前記第1接着層材料を、前記基材層のコロナ処理面上に塗布する。この際の塗工方法としては、液状のものが塗工できるものであれば特に制限はなく、例えば、ローラー塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法の他、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーターを用いた方法が例示される。次いで、これを乾燥するが、その条件は、膜厚や選択した溶剤の種類などにより変動し得るが、例えば、80〜150℃で20〜60秒間とすることができ、好ましくは100〜130℃で30〜50秒間とする。これにより、1〜50μmの厚さを有する第1接着層を基材層上に設けることができる。
【0082】
次いで、前記第1接着層上に、上述したような熱可塑性エラストマー及び架橋剤を、上述したような含量及び/又は質量比で含む第2接着層材料を、例えば上述した塗工方法のいずれかにより塗布する。これを、好ましくは80〜150℃で0.5〜2分間、より好ましくは100〜130℃で40秒〜1.5分間乾燥することにより、10〜100μmの厚さを有する第2接着層を第1接着層上に設けることができる。次いで、必要により、この第2接着層材料上に、上述した剥離層を設ける。これを40〜80℃で2〜6日間エージングさせることにより、粘着層を有する本発明の熱線遮蔽材を得ることができる。
【0083】
一方、特開2004−29673号公報に記載のオレフィンゲルポリマーフィルム(パナック(株)社製)を、前記金属粒子含有層(または後述する基材)と貼り合わせることも好ましい。
【0084】
−5−3.オーバーコート層・ハードコート層の形成方法−
オーバーコート層・ハードコート層は、塗布により形成することが好ましい。このときの塗布方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、前記紫外線吸収剤を含有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法などが挙げられる。
【0085】
<6.本発明の熱線遮蔽材の特性>
本発明の熱線遮蔽材の日射反射率としては、600nm〜2,000nmの範囲(好ましくは800nm〜1,800nm)で最大値を有することが、熱線反射率の効率を上げることができる点で好ましい。
本発明の熱線遮蔽材の可視光線透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。前記可視光線透過率が、60%未満であると、例えば、自動車用ガラスや建物用ガラスとして用いた時に、外部が見にくくなることがある。
本発明の熱線遮蔽材の紫外線透過率としては、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。前記紫外線透過率が、5%を超えると、太陽光の紫外線により前記金属平板粒子層の色味が変化することがある。
本発明の熱線遮蔽材のヘイズは、20%以下であることが好ましい。前記ヘイズが20%を超えると、例えば、自動車用ガラスや建物用ガラスとして用いた時に外部が見にくくなるなど、安全上好ましくないことがある。
【0086】
<7.熱線遮蔽材の使用態様>
本発明の熱線遮蔽材は、熱線(近赤外線)を選択的に反射および/または吸収するために使用される態様であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、乗り物用ガラスまたはフィルム、建材用ガラスまたはフィルム、農業用フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、省エネルギー効果の点で、乗り物用ガラスまたはフィルム、建材用ガラスまたはフィルムであることが好ましい。
なお、本発明において、熱線(近赤外線)とは、太陽光に約50%含まれる近赤外線(780nm〜2,500nm)を意味する。
【0087】
[遮熱ガラス]
本発明の遮熱ガラスは、本発明の熱線遮蔽材の前記粘着層上に、ガラスが貼り付けられたことを特徴とする。
前記ガラスの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記のようにして製造した本発明の熱線遮蔽材の粘着層を、自動車等の乗り物用ガラスや建材用ガラスに貼り合わせすることができる。
【0088】
特に自動車等の乗り物用ガラスとしての遮熱ガラスを製造する場合は合わせガラスとして製造することが好ましい。本発明の合わせガラスを製造する場合は、通常の合わせガラスの製造に用いるPVB中間膜、EVA中間膜等に本発明の熱線遮蔽材を挟み込んで用いることができる。また、前記銀平板粒子と、前記金属酸化物粒子とを含む前記熱線遮蔽層のみをPVB中間膜、EVA中間膜等に転写し、基材を剥離除去した状態で使用してもよい。
【0089】
[建材用ガラス]
本発明の熱線遮蔽材は建築材料としても好適に使用することが出来る。建築材料として使用する場合は、本発明の熱線遮蔽材を遮熱フィルムの形状とし、任意の方法で貼り付けて建材用ガラスとすることが好ましい。本発明の熱線遮蔽材をガラス貼り合わせて、本発明の遮蔽ガラスまたは建材用ガラスとする場合、図1〜図3のいずれの構成の熱線遮蔽材を貼り合わせてもよく、上述のガラスに貼り合わせた場合の遮熱耐久性に優れる効果を得ることができる。本発明の建材用ガラスを製造する場合は、前記遮熱フィルムの粘着層を窓ガラスやパーテイションに貼り付けることが好ましい。この際、家屋の内側へ貼る手法と外側へ貼る手法とがある。
本発明の熱線遮蔽材を家屋の内側へ貼るメリットとしては風雨耐性を気にする必要が無いことが挙げられ、その分粘着材に安価なものが使用できる。本発明の熱線遮蔽材を家屋の内側へ貼るとき、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が表面に露出している方の前記金属粒子含有層の表面が、前記粘着層と反対側の最表面であることが好ましい。さらに、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が表面に露出している方の前記金属粒子含有層の表面とは反対側の表面と、前記粘着層との間に、基材を有することが好ましい。具体的には、図6に記載のように、図3の構成の熱線遮蔽材10の粘着層11をガラス20と貼り合わせた態様を好ましい態様の一つとして挙げることができる。図6の構成のとき、建材用ガラス用途として窓ガラスに用い、熱線遮蔽材10の金属粒子含有層2が室内側の最表面となるように本発明の建材用ガラスを設置することで、さらに抗菌性を付与することもできる。ここで、本明細書中において、抗菌性とは、カビ、微生物等の増殖をおさえる効果のことを主として意味し、副次的に不快臭の発生を防止する効果も含まれてもよい。このような抗菌性の付与効果は、建材用ガラス用途での使用時に限定されるものでもなく、また、透明ガラス以外の不透明なガラスや色付きのガラスにも付与することができる。
本発明の熱線遮蔽材を家屋の外側へ貼るメリットとしては、特に反射型遮熱フィルムでは熱線を外側で反射してしまうのでガラスへの吸収光線を軽減でき、内側貼りよりも有効に熱線カットができるという点がある。
【0090】
本発明の熱線遮蔽材は、前記粘着層が自己粘着性と再剥離性を有するため、ガラスに容易に貼り合わせ、また、気泡混入時や張り替え時などに必要に応じて容易に貼り直しをすることができる。
ガラスに熱線遮蔽材を貼る施工方法には何種類か考えられ、自己粘着性と再剥離性を有する粘着層を有する本発明の熱線遮蔽材を用いる場合の主な手法には、水貼り、ドライ貼り、静電印加が挙げられる。
【0091】
本発明の熱線遮蔽材の場合、施工方法は水を使わずにドライな状態で単にガラス窓に貼り付けることが可能である。ただし、大きな窓に貼る場合、全体の位置決めが厄介であり、端から位置を決めて掛かると反対側の端部で位置ズレを生じ易い。
そういう点を加味すると、やはり貼り付け初期に全体の位置決め微修正が可能な水貼りが合理的である。ガラス板片側全面に水滴を噴霧し、粘着材側から遮熱フィルム状とした本発明の熱線遮蔽材をガラス板に沿わせ、遮熱フィルムがガラス板上をスライドできている間に、貼り付けたいエリアに位置決めをする。位置が決まったら端部の数箇所を強く押し当ててフィルムのスライドを止め、中央部から端部に向かって、スキージーまたはローラーを使って、挟まれている水を履き出していく。その後、1日程度放置すれば粘着力が増してフィルムは剥がれなくなる。本手法のメリットは、どのような現場でも施工可能であり、使用する工具も一般的なもので可能であるため、新築、中古を問わず適用範囲が広いことである。また、水貼りは、加熱ラミネートや静電印加に比べ、小さいサイズのガラスへの貼り付けが容易である点で好ましい。また水貼りは、ロール状のサイズで一般的に実施される加熱ラミネートや静電印加に比べ、多様なサイズのガラスに合わせて熱線遮蔽材(遮熱フィルム)を調製でき、端材の無駄が生じないように適用できる観点からも好ましい。
静電印加法では、アースを取った金属板の上にガラスを置いて、その上に粘着層を含む熱線遮蔽材(遮熱フィルム)を置き、数cm上部から金属線に数十ボルトの電圧を掛けてガラスへ熱線遮蔽材(遮熱フィルム)を静電印加貼付けすることが好ましい。静電印加は金属線の周辺数センチ幅でフィルムを貼り付ける力を出せるので、端部から次第に金属線を中央部、そして反対側の端部へと動かしていくことにより、全面を貼る事ができる。静電気は時間と共に弱くなるので、端部の若干幅のみに粘着層を設けておき、時間と共に剥ぎ取れないようにしておくほうがよい。その場合、貼付け始めのエリアは袋小路になるよう端部に隙間無く粘着層を設けるべきであり、反対側の端部は挟まれた空気が逃げられるように極一部に隙間を開けておき、全面が貼り付けられた後にその隙間を粘性の高い接着剤で封止して空気の戻りを防ぐという手順がよい。本手法はラミネーターとドッキングしてラミネーションロールのすぐ後にアースを取った金属板と静電印加の金属線ゾーンを設ければ連続工程としてスムーズに作業できる。本手法のメリットとしては遮熱フィルムのガラス側表面を適度に荒らす、あるいは挟まれるエリアに微細ビーズを散布しておくことにより、フィルムとガラスの間に空気層が出来、断熱効果を大幅に高めることができることが挙げられる。多少全体にヘイズ度が上がるので、そのヘイズ度に合わせて散乱性を上げた粘着層を用いるなどの調整をすることが外観を良くする手段として有効である。また本法の場合、遮熱フィルムを静電印加しやすい素材としておくことが大事である。使用するPETフィルムの素材重合時にマグネシウムを一定量使用することを初めとして遮熱フィルム全体としての誘電率を高くしておけばよい。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0093】
(製造例1)
−銀平板粒子の合成−
−−平板核粒子の合成工程−−
2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液50mLに0.5g/Lのポリスチレンスルホン酸水溶液を2.5mL添加し、35℃まで加熱した。この溶液に10mMの水素化ほう素ナトリウム水溶液を3mL添加し、0.5mMの硝酸銀水溶液50mLを20mL/minで攪拌しながら添加した。この溶液を30分間攪拌し、種溶液を作製した。
−−平板粒子の第1成長工程−−
次に、2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mLにイオン交換水87.1mLを添加し、35℃まで加熱した。この溶液に10mMのアスコルビン酸水溶液を2mL添加し、前記種溶液を42.4mL添加し、0.5mMの硝酸銀水溶液79.6mLを10mL/minで攪拌しながら添加した。
−−平板粒子の第2成長工程−−
次に、上記溶液を30分間攪拌した後、0.35Mのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液を71.1mL添加し、7質量%ゼラチン水溶液を200g添加した。この溶液に、0.25Mの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLと0.47Mの硝酸銀水溶液107mLを混合してできた白色沈殿物混合液を添加した。前記白色沈殿物混合液を添加した後すぐに0.83MのNaOH水溶液72mLを添加した。このときpHが10を超えないように添加速度を調節しながらNaOH水溶液を添加した。これを300分間攪拌し、銀平板粒子分散液aを得た。
【0094】
この銀平板粒子分散液a中には、平均円相当径210nmの銀の六角平板粒子(以下、Ag六角平板粒子と称する)が生成していることを確認した。また、原子間力顕微鏡(NanocuteII、セイコーインスツル社製)で、六角平板粒子の厚みを測定したところ、平均18nmであり、アスペクト比が11.7の平板粒子が生成していることが分かった。
次に、得られた銀平板粒子及び熱線遮蔽材について、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表1に示す。
【0095】
<<銀平板粒子の評価>>
−平板粒子の割合、平均粒子径(平均円相当径)、変動係数−
Ag平板粒子の形状均一性は、観察したSEM画像から任意に抽出した200個の粒子の形状を、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子をA、涙型などの不定形形状の粒子をBとして画像解析を行い、Aに該当する粒子個数の割合(個数%)を求めた。
また同様にAに該当する粒子100個の粒子径をデジタルノギスで測定し、その平均値を平均粒子径(平均円相当径)とし、粒径分布の標準偏差を平均粒子径(平均円相当径)で割った変動係数(%)を求めた。
【0096】
−平均粒子厚み−
得られた銀平板粒子を含む分散液を、ガラス基板上に滴下して乾燥し、銀平板粒子1個の厚みを、原子間力顕微鏡(AFM)(NanocuteII、セイコーインスツル社製)を用いて測定した。なお、AFMを用いた測定条件としては、自己検知型センサー、DFMモード、測定範囲は5μm、走査速度は180秒/1フレーム、データ点数は256×256とした。
【0097】
−アスペクト比−
得られた銀平板粒子の平均粒子径(平均円相当径)及び平均粒子厚みから、平均粒子径(平均円相当径)を平均粒子厚みで除算して、アスペクト比を算出した。
【0098】
−透過スペクトル−
得られた銀平板粒子分散液の透過スペクトルは、銀平板粒子分散液を水で40倍に希釈し、光路長1mmの石英セルに入れ、紫外可視近赤外分光機(日本分光株式会社製、V−670)を用いて評価した。
【0099】
【表1−1】
【表1−2】
【0100】
(製造例2)
製造例1において、0.83MのNaOH水溶液72mLを添加する代わりに、イオン交換水72mLを添加したこと以外は、製造例1と同様にして銀平板粒子分散液bを作製した。
【0101】
(製造例3)
製造例1において、イオン交換水87.1mLを添加しないこと、前記種晶溶液の添加量を127.6mLに変えたこと、及び0.83MのNaOH水溶液72mLを添加する代わりに、0.08MのNaOH水溶液72mLを添加したこと以外は、製造例1と同様にして銀平板粒子分散液cを作製した。
【0102】
(製造例4)
製造例3において、2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mLを添加しないこと、及び、前記種晶溶液の添加量を255.2mLに変えたこと以外は、製造例3と同様にして銀平板粒子分散液dを作製した。
【0103】
(製造例5)
製造例4において、0.08MのNaOH水溶液72mLを添加する代わりに、イオン交換水72mLを添加したこと以外は、製造例4と同様にして銀平板粒子分散液eを作製した。
【0104】
(製造例6)
製造例1において、前記種晶溶液の添加量を42.4mLから21.2mLに変え、イオン交換水21.2mLを添加したこと以外は、製造例1と同様にして銀平板粒子分散液fを作製した。
【0105】
[実施例1]
−金属粒子含有層の作製−
製造例5の銀平板粒子分散液e16mLに1NのNaOHを0.75mL添加し、イオン交換水24mL添加し、遠心分離器(コクサン社製H−200N、アンブルローターBN)で5,000rpm、5分間、遠心分離を行い、Ag六角平板粒子を沈殿させた。遠心分離後の上澄み液を捨て、水を5mL添加し、沈殿したAg六角平板粒子を再分散させた。この分散液に2質量%の下記構造式(1)で表される化合物の水メタノール溶液(水:メタノール=1:1(質量比))を1.6mL添加し塗布液を作製した。この塗布液をワイヤー塗布バーNo.14(R.D.S Webster N.Y.社製)を用いて50μ厚のPETフィルム(A4300、東洋紡績株式会社製)上に塗布し、乾燥させて、表面にAg六角平板粒子が固定されたフィルムを得た。以上により、金属粒子含有層(以下、AgND含有層とも言う)を作製した。
【0106】
−AgND含有層のAg六角平板粒子の配向状態の確認−
得られたPETフィルムに厚み20nmになるようにカーボン薄膜を蒸着した後、SEM観察(日立製作所製、FE−SEM、S−4300、2kV、2万倍)を行った。PETフィルム上にAg六角平板粒子が凝集なく固定されており、以下のようにして測定したAg六角平板粒子の基材表面に占める面積率は、45%であることが分かった。また、以下のようにして測定した前記銀平板粒子の前記銀平板粒子面配向層における含有量は、0.04g/m2であることが分かった。このとき、フィルムの銀平板粒子含有層の表面にAg六角平板粒子が露出して配置されていた。
【化1】
【0107】
−粘着層の作成−
タフテックM1911[旭化成製 マレイン酸変性SEBS メルトインデックス(200℃、5kg)3.5g/10分 スチレン:エチレン+ブチレン質量比30:70 酸価2]13部を、トルエン87部中に、プロペラ撹拌機を使用して溶解した(固形分13%)。この溶液100部に対し、コロネートHL[日本ポリウレタン工業製 ヘキサメチレンジイソシアネート-ビュレット型]1.04部を常温にて混合した。また、塗布時用の帯電防止剤として、エレガン264wax[日本油脂製 カチオン性帯電防止剤]を混合液に0.13部添加して、第1接着層材料を得た。
この第1接着層材料をメイヤバーにて、上記にて製造した、金属粒子含有層の表面にAg六角平板粒子が固定されたPETフィルムのAg六角平板粒子が固定されている側の面に塗工した。120℃で40秒間乾燥して、Ag六角平板粒子が固定されている面上に第1接着層2μmを設けた。
次いで、SEPS熱可塑性エラストマー(質量平均分子量250,000)17質量%及びナフテンオイル可塑剤(引火点220℃;流動点−25℃;比重0.8387;炭素数5〜6)83質量%をトルエンに溶解した後、第1接着層上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、第1接着層上に第2接着層35μmを設けた後、剥離層であるシリコーン処理PETと貼り合わせた。これを45℃にて4日エージングさせることにより、実施例1の熱線遮蔽材を得た。実施例1の熱線遮蔽材の構成は、剥離層(シリコーン処理PET)/粘着層(ゲル塗布した第2接着層/第1接着層の積層体)/金属粒子含有層/基材PETフィルムの順であった。
【0108】
−遮熱ガラス(建材用ガラス)の作製−
建材用ガラスの製造:
タテ1800mm×ヨコ900mm×厚み3mmの建材用ガラス窓に粘着材付きの実施例1の熱線遮蔽材を室内側から貼り付けた。まず、粘着材側から粘着材付きの実施例1の熱線遮蔽材をガラス窓に沿わせ、フィルムがガラス窓上をスライドできている間に、貼り付けたいエリアに位置決めをした。位置が決まった後、端部の数箇所を強く押し当ててフィルムのスライドを止め、中央部から端部に向かって、スキージーを使って貼り付け実施例1の遮熱ガラスを得た。
【0109】
[実施例2]
まず、非自己粘着性かつ非再剥離性の(すなわち、通常の)アクリル粘着材を両面に有する両面テープ(パナック(株)製、PD−S1(商品名))を、実施例1で製造した金属粒子含有層の表面にAg六角平板粒子が固定されたPETフィルムのAg六角平板粒子が固定されている側の面と直接貼合せた。
次に、上記の両面テープPD−S1の反対側に、再剥離接着層付きの基材である市販の再剥離接着フィルムの基材を貼り合わせた。この再剥離接着フィルムは、パナック(株)社製の(品名)ゲルポリマーシートであった。基材は厚さ50μmのPETフィルムで、再剥離接着層は、そのPETフィルムの表面(金属粒子含有層と接着しない側の面)のほぼ全面に密着していた。再剥離接着層は、α−オレフィンとスチレンとの共重合体を含有する、厚さ38μmのオレフィンゲル層であった。
さらに、上記にて得られた剥離接着フィルムの再剥離接着層に、実施例1で用いた剥離層であるシリコーン処理PETと貼り合わせて、実施例2の熱線遮蔽材を得た。
実施例2の熱線遮蔽材の構成は、剥離層(シリコーン処理PET)/再剥離接着層(粘着層)/基材(PETフィルム)/PD−S1/金属粒子含有層/基材PETフィルムの順であった。
その後、得られた実施例2の熱線遮蔽材を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の遮熱ガラスを製造した。
【0110】
[実施例3]
スターラーと、温度計と、凝縮器と、添加漏斗と、サーモウォッチとを具備した500mlの4口反応容器に、84.0グラムのIOA(イソオクチルアクリレート)と、75グラムのODA(オクタデシルアクリレート、酢酸エチル中固形分48%)と、121グラムの酢酸エチルと、0.92グラムのABP(4−アクリロイル−オキシベンゾフェノン、酢酸エチル中固形分26%)とを装填した。0.36グラムのVAZO(商品名)64(DuPont社より市販されている2,2‘‘−アゾビス(イソブチロニトリル))を20グラムの酢酸エチル中に含む溶液を添加漏斗に加えた。次いで、反応容器中の溶液と添加漏斗中の物質との両方をアルゴン(または窒素)でパージした。その後、反応容器中の溶液を55℃に加熱して開始剤を添加した。約20時間後、98〜99%の転化率が得られた。次いで、その混合物を実施例1で製造した金属粒子含有層の表面にAg六角平板粒子が固定されたPETフィルムのAg六角平板粒子が固定されている側の面へ塗布した。オーブン乾燥後のコーティング厚が0.5〜1.0ミル(すなわち、12.5〜25μm)の接着剤溶液が得られた。そのコーティングをUV光(30ワット/2.5cmの中圧水銀灯を具備したPPG UV処理機)の下を25メートル/分で3回通過させ、実施例3の熱線遮蔽材を得た。実施例3の熱線遮蔽材の構成は、粘着材塗布層/金属粒子含有層/基材PETフィルムの順であった。
その後、得られた実施例3の熱線遮蔽材を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の遮熱ガラスを製造した。
【0111】
[実施例4]
実施例1において、表面にAg六角平板粒子が固定されたPETフィルムのAg六角平板粒子が固定されている面ではなく、反対側表面であるPETフィルム面上に前記第1接着層材料を形成した以外は実施例1と同様にして、実施例4の熱線遮蔽材を得た。実施例4の熱線遮蔽材の構成は、剥離層(シリコーン処理PET)/粘着層(ゲル塗布した第2接着層/第1接着層の積層体)/基材PETフィルム/金属粒子含有層の順であった。
その後、得られた実施例4の熱線遮蔽材を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の遮熱ガラスを製造した。
【0112】
[比較例1]
非自己粘着性かつ非再剥離性の(すなわち、通常の)両面テープを実施例1で製造した金属粒子含有層の表面にAg六角平板粒子が固定されたPETフィルムのAg六角平板粒子が固定されている側の面と直接貼合して、比較例1の熱線遮蔽材を得た。用いた両面テープは、パナック製PD−S1(商品名)であった。
その後、得られた比較例1の熱線遮蔽材を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の遮熱ガラスを製造した。
【0113】
<<熱線遮蔽材・遮熱ガラスの評価>>
得られた各実施例および比較例の熱線遮蔽材および遮熱ガラスについて、以下のようにして諸特性を評価した。各評価の結果を下記表2に示す。
【0114】
−銀平板粒子の含有量の測定−
前記銀平板粒子の熱線遮蔽層における含有量は、熱線遮蔽層(塗布膜)の一定面積における銀平板粒子をメタノールに溶出させ、蛍光X線測定により銀平板粒子の質量を測定し、該質量を前記一定面積で除することにより算出した。
【0115】
−面積率−
得られた熱線遮蔽材について、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得たSEM画像を2値化し、熱線遮蔽材を上から見た時の基材の面積A(熱線遮蔽材に対して垂直方向から見たときの前記熱線遮蔽材の全投影面積A)に対する銀平板粒子の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕を求めた。
【0116】
−粒子傾き角−
エポキシ樹脂で熱線遮蔽材を包埋処理した後、液体窒素で凍結した状態で剃刀で割断し、熱線遮蔽材の垂直方向断面試料を作製した。この垂直方向断面試料を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、100個の金属平板粒子について、基板の水平面に対する傾角(図5Aにおいて±θに相当)を平均値として算出した。
○:傾角が±30°以下。
×:傾角が±30°を超える。
【0117】
−金属平板粒子の露出−
SEMにて熱線遮蔽材の金属粒子含有層のPETフィルムとは反対側の表面の状態を測定した。
○:金属粒子含有層の一方の表面に露出している金属平板粒子が60個数%以上。
×:金属粒子含有層の一方の表面に露出している金属平板粒子が60個数%未満。
金属平板粒子が金属粒子含有層の表面に露出しているとは、金属平板粒子の一方の表面の60面積%以上が金属粒子含有層の表面と同じ位置または突出していることを意味する。
【0118】
−可視光線透過率・初期近赤外反射率−
可視光線透過率は、各遮熱ガラスサンプルをJIS−R3106:1998「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射取得率の試験方法」に記載の方法で測定した値であり、380nmから780nmまで測定した各波長の透過率を、各波長の分光視感度により補正した値の平均値である。初期近赤外反射率は、各サンプルを780nmから2,000nmまで測定した各波長の反射率の平均値である。
【0119】
−遮熱性能耐光性−
耐光性は、各遮熱ガラスサンプルに一定の耐光性テストを課したときに、テスト後の近赤外透過率に対する初期近赤外透過率の割合を百分率で表した値をもって遮蔽性能の耐光性の値とした。良好とすべきラインは90%以上とした。一定の耐光性テストとは、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機製、キセノンランプ照射)にて180W/m、63℃、相対湿度30%、1,000時間、暴露するテストである。
【0120】
−電波透過性−
ガラスに貼り合わせ前の熱線遮蔽材(遮熱フィルムの状態)について東京都立産業技術センターにてKEC法を用いて測定した。シールド効果5dB以下が電波透過性ありと判断した。
【0121】
−ヘイズの測定−
ヘイズメーター(NDH−5000、日本電色工業株式会社製)を用いて、前記の通りに得た遮熱ガラスのヘイズ(%)を測定した。
【0122】
(剥離強度)
剥離強度は、熱線遮蔽材の粘着層を試験用ガラス支持体から特別な角度及び剥離速度で剥離する際に要する力である。この力を1センチメートル(cm)幅の被覆シート当たりのニュートンで表示する。手順は以下のとおりである。
各実施例および比較例で得られた粘着層付きの熱線遮蔽材の幅0.127dm(デシメートル)のストリップを、少なくとも1.27線dm(lineal dm)の試験用ガラス支持体の水平面にしっかりと接触させる。2kgの硬質ゴムローラーを各方向で3回通過させてストリップを適用する。試験用ガラス支持体と試験用ストリップとの間に空気泡が捕捉された場合には、その試料は廃棄する。被覆ストリップの自由端を二つ折りにし、剥離角度が約180°になるようにする。その自由端を引張試験機スケールに取り付ける。各実施例および比較例で得られた粘着層付きの熱線遮蔽材を、2.3メートル/分の一定速度でスケールから熱線遮蔽材取り去ることができる引張試験機のジョーに締結する。ロールダウン後の保持時間を30秒とする。テープをガラス面から剥離する際のスケールの読みをニュートンで記録する。
好ましい剥離強度の範囲は0.1〜3.0N/cmである。また、剥離強度が3.0N/cmを越える粘着材は再剥離が困難であり、非再剥離性の粘着材である。
【0123】
−遮熱耐久性−
作製した各熱線遮蔽材について、350nm〜2,100nmまで測定した各波長の透過率から、JIS5759記載の方法に基づき、日射反射率を求めた。これをフレッシュ時の遮蔽係数S0とした。その後、昼夜寒暖差のシミュレーション実験を行う。ガラスに貼り付けた状態で、30℃3時間、5℃3時間(温度パターン移行時間は30分)の寒暖サイクルを100サイクル行い、その後の遮蔽係数をS100とした。
得られた遮熱係数から、遮熱耐久性を(S0/S100)×100 〔%〕で計算した。
【0124】
(抗菌性)
各実施例および比較例で得られた粘着層付きの熱線遮蔽材を用いて、それぞれ4cm四方のサンプルを大腸菌液の入ったフラスコに接触させた後、27℃で3時間保存後の生殖菌数を測定した。減菌率(%)は、減菌率(%)=〔(X−Y)/X〕×100であらわされる。ここにXは初発菌数、Yは3時間後の菌の数をあらわす。
測定した結果に基づいて、以下の基準にしたがって抗菌性を評価した。
○:滅菌率が99%以下である。
×:滅菌率が99%未満である。
【0125】
【表2−1】
【0126】
【表2−2】
【0127】
【表2−3】
【0128】
上記表2より、本発明の熱線遮蔽材は、遮熱性能(日照反射率)が高く、ガラスに貼り合わせた場合の遮熱耐久性に優れ、粘着層の再剥離性および剥離強度も良好であることがわかった。実施例1は、ゲルを塗布液調合しAgND面に塗工したものであり、再剥離性が良好であり、せん断応力が掛からないために遮熱耐久性も良好であったと考えられた。実施例2は市販のゲルポリマーシートをAgND面に貼合したものであり、再剥離性が良好であり、せん断応力が掛からないために遮熱耐久性も良好であったと考えられた。実施例3は従来の粘着材において再剥離性を改良した処方であり、剥離強度はゲルポリマーには劣るが許容範囲であり、遮熱耐久性も91%でありゲルポリマーには劣るが許容範囲であった。実施例4は、実施例1においてAgNDを室内側にすることにより、実施例1よりもさらに抗菌性が優れるものであった。
一方、比較例1は従来型の粘着材を使用したものであり、再剥離性も悪く、遮熱性能も耐久性が無いことがわかった。金属平板粒子を表面偏在させるための機構は十分に解明されていないが、塗布乾燥時に液面上に金属粒子を浮かせることが必須であり、乾燥時に変化するであろう表面張力のバランスが取れていることが重要と考えている。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の熱線遮蔽材は、遮熱性能(日照反射率)が高く、ガラスに貼り合わせた場合の遮熱耐久性に優れ、粘着層の再剥離性および剥離強度も良好であるので、例えば自動車、バス等の乗り物用ガラス、建材用ガラスなど、熱線の透過を防止することの求められる種々の部材として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0130】
1 基材
2 金属粒子含有層
3 金属平板粒子
10 熱線遮蔽材
11 粘着層
20 ガラス
D 直径
L 厚み
F(λ) 粒子存在域厚み
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱性能および遮熱耐久性に優れ、粘着層の再剥離性および剥離強度も良好である熱線遮蔽材に関する。また、該熱線遮蔽剤を用いた遮熱ガラスおよび建材用ガラスにも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素削減のための省エネルギー施策の一つとして、自動車や建物の窓に対する熱線遮蔽性付与材料が開発されている。例えば、金属Ag薄膜は、その反射率の高さから、熱線反射材として一般に使用されている。可視光透過性を上げるために、Ag及びZnO多層膜を利用したLow−Eガラス(例えば旭硝子株式会社製)は、広く建物に採用されているが、費用が高いという問題や、DIYにより熱線遮蔽材を任意のガラスに貼り付けたいとの要望等があり、ガラスに貼り合わせることができる、安価な熱線遮蔽材が求められていた。
【0003】
赤外線遮蔽フィルタとして、Ag平板粒子を用いたフィルタが提案されている(特許文献1参照)。しかし、特許文献1に記載の赤外線遮蔽フィルタはプラズマディスプレイパネル(PDP)に用いることを意図したものであり、かかるAg平板粒子は、その配列制御がなされていないことから、主に赤外域の波長光赤外線吸収体として機能し、積極的に熱線を反射する材料として機能するものではなかった。したがって、かかるAg平板粒子からなる赤外線遮蔽フィルタを直射日光の遮熱に使用すると、この赤外線吸収フィルタ自体が暖まることになり、その熱で室温が上昇してしまうために、赤外線遮蔽材としての機能は不十分であった。また、特許文献1の実施例では、赤外線遮蔽性を有する分散物をポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、厚さ25μmのアクリル系透光性粘着材を介して、ガラス板を貼り合わせてPDP用の光学フィルタを製造した例が記載されている。
【0004】
これに対し、特許文献2には、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向している熱線遮蔽材が開示されている。特許文献1に記載の熱線遮蔽材は近赤外線を反射でき、赤外線遮蔽フィルムとして有利になるものであった。特許文献2に記載の熱線遮蔽材によれば低コストで安価かつ、効果の高い遮熱フィルムを提供できるが、特許文献2には、熱線遮蔽材をガラスと貼り合わせる具体的な方法や、そのときに用いられる接着剤の詳細に関する記載は、同文献の実施例を含め、開示も示唆もされていなかった。
【0005】
一方、特許文献3には、基材層上に、カルボン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーを有する第1接着層、ならびに、SEPS熱可塑性エラストマーおよび可塑剤を含む第2接着層とからなる粘着層を有する自己粘着性フィルムにより、ガラスなどの接着面に対して貼り付け・剥離を繰り返し行うことが可能であることが記載されている。しかしながら、特許文献2には、基材層としてプラスチックフィルムを好ましく用いることができ、その他各種の添加剤を基材層に含ませてもよいと記載されているが、赤外線を反射できるような熱線遮蔽材や、金属平板粒子を基材層に用いることについては何ら検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−178915号公報
【特許文献2】特開2011−118347号公報
【特許文献3】特許第4215527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況のもと、本発明者が特許文献2に記載されている金属平板粒子含有層をPETフィルム上に形成した薄膜フィルムである熱線遮蔽材を、特許文献1の実施例に記載されているような一般的なアクリル系透光性粘着材を用いて窓用のガラスに貼り合わせようとしたところ、エンドユーザーにとってDIYでこのような薄膜フィルムを貼り合わせると気泡の混入が生じやすいことがわかった。窓は外から見たその家の美的印象に強い影響を与えるため、気泡の混入が生じると、美観損傷の問題が生じる問題が起こることがわかった。従来「粘着材」あるいは「感圧接着剤」と呼ばれてきたアクリル系ポリマーは、再剥離性は乏しいものであり、貼り直しができないためにガラスへの施工に熟練を要し、現実的には大工施工が必要であった。しかしながら、大工施工を行うと特許文献2に記載の熱線遮蔽材の材量費よりもガラスへの施工工賃のほうが数段高くなってしまい、大工施工に任せておくとエンドユーザーにとっては製造コストが低く安価である特許文献2に記載の熱線遮蔽材のメリットがダイレクトに伝わらない問題があった。
【0008】
また、本発明者が実際に特許文献2に記載されている熱線遮蔽材を、特許文献1の実施例に記載されているような一般的なアクリル系透光性粘着材を用いてガラスに水貼りによって貼り合わせて、泡が多数混在した、貼り損ね状態の遮熱ガラスを製造した。その結果、このような状態で熱線遮蔽材を放置すると、早期に熱線遮蔽材がガラスから剥がれてしまい、遮熱性能を長持ちさせることも出来ないことがわかった。
【0009】
さらに、本発明者が特許文献2に記載されている熱線遮蔽材を上記と同様に一般的なアクリル系透光性粘着材を用いてガラスに水貼りによって細心の注意を払って貼り合わせて、泡がほとんど混入していない遮熱ガラスを製造した。しかしながら、過酷な条件で昼夜寒暖差のシミュレーション実験を行うと、長期にわたって熱線遮蔽材はガラスから剥がれることはないが、熱線遮蔽材の端部において寒暖差による熱膨張がガラスと熱線遮蔽材間で大きく違うために、粘着剤にせん断応力が繰り返しかかり、ナノディスク平面配列の乱れをもたらしてしまう。その結果、当該端部における熱線反射能が大幅に下がってしまう。
【0010】
本発明は、従来における前記諸問題を解決することを目的とする。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、遮熱性能(日照反射率)が高く、ガラスに貼り合わせた全面に渡る遮熱耐久性に優れ、粘着層の再剥離性および剥離強度も良好である熱線遮蔽材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、粘着層として自己粘着性と再剥離性を有する粘着材を用いたところ、再剥離性の高い粘着層を設けたことで泡が混入しても直ぐに貼り直しができる上、剥離強度も良好となり、さらにガラスに貼り合わせた場合の昼夜の温度変化を長期にわたって繰り返した場合の遮熱耐久性も向上することを見出すに至った。
【0012】
前記課題を解決するための手段としては、以下のとおりである。
[1] 少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層と粘着層とを有し、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向し、前記粘着層が自己粘着性と再剥離性を有することを特徴とする熱線遮蔽材。
[2] [1]に記載の熱線遮蔽材は、前記粘着層がカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が、前記金属粒子含有層の一方の表面に露出していることが好ましい。
[4] [3]に記載の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が表面に露出している方の前記金属粒子含有層の表面が、前記粘着層と反対側の最表面であることが好ましい。
[5] [3]または[4]に記載の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が表面に露出している方の前記金属粒子含有層の表面とは反対側の表面と、前記粘着層との間に、基材を有することが好ましい。
[6] [1]〜[5]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の平均粒子径が70nm〜500nmであり、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子のアスペクト比(平均粒子径/平均粒子厚み)が8〜40であることが好ましい。
[7] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、金属平板粒子が、少なくとも銀を含むことが好ましい。
[8] [1]〜[7]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材は、赤外光を反射することが好ましい。
[9] [1]〜[8]のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材の前記粘着層上に、ガラスが貼り付けられたことを特徴とする遮熱ガラス。
[10] [9]に記載の遮熱ガラスを含むことを特徴とする建材用ガラス。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、遮熱性能(日照反射率)が高く、ガラスに貼り合わせた場合の遮熱耐久性に優れ、粘着層の再剥離性および剥離強度も良好である熱線遮蔽材を提供することができる。本発明の熱線遮蔽材によれば、遮熱性能(日照反射率)が高く、遮熱耐久性に優れ、再剥離性および剥離強度も良好な遮熱ガラスおよび建材用ガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の熱線遮蔽材の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の熱線遮蔽材の他の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の熱線遮蔽材の他の一例を示す概略図である。
【図4A】図4Aは、本発明の熱線遮蔽材に含まれる平板粒子の形状の一例を示した概略斜視図であって、円形状の平板粒子を示す。
【図4B】図4Bは、本発明の熱線遮蔽材に含まれる平板粒子の形状の一例を示した概略斜視図であって、六角形状の平板粒子を示す。
【図5A】図5Aは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、金属平板粒子を含む金属粒子含有層(基材の平面とも平行)と平板状金属粒子の主平面(円相当径Dを決める面)とのなす角度(θ)を説明する図を示す。
【図5B】図5Bは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、金属粒子含有層の熱線遮蔽材の深さ方向における金属平板粒子の存在領域を示す図である。
【図5C】図5Cは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態の一例を示した概略断面図である。
【図5D】図5Dは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態の他の一例を示した概略断面図である。
【図5E】図5Eは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態の他の一例を示した概略断面図である。
【図6】図6は、本発明の遮熱ガラスの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の熱線遮蔽材について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明における"再剥離性"の粘着材とは、室温で一連の剥離速度及び各種保持期間にわたり試験用支持体に対して何ら損傷を与えることなく試験用支持体からきれいに剥がれた場合に、再剥離型であるとみなされる。
本発明における"自己粘着性"の粘着材とは、被着面への貼り付けが、他の如何なる粘着材を使用しなくとも、また、更なる圧力や熱をかけることなしに、また、画びょう、ビス、ホッチキス、くぎ、針金などの機械的手段を使用しなくとも行うことができる性質を意味する。
本発明において粘着材は、前記自己粘着性のほか、柔軟性、例えば、被着面に対して、一端から貼り付けを始めて、他端へと向かって貼り付けを進めることにより貼り付けを完了させることが可能である柔軟性を少なくとも有するのが好ましい。
【0016】
[熱線遮蔽材]
本発明の熱線遮蔽材は、少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層と粘着層とを有し、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向し、前記粘着層が自己粘着性と再剥離性を有することを特徴とする。
本発明の熱線遮蔽材はこのような構成により、遮熱性能(日照反射率)が高く、ガラスに貼り合わせた場合の遮熱耐久性に優れ、粘着層の再剥離性および剥離強度も良好である。
本発明の熱線遮蔽材は単に自己粘着性と再剥離性を有する粘着層(以下エラストマー粘着層という)によるDIY性の付与だけでなく、特に銀ナノディスク遮熱に特有の顕著な特性の改良が検知された。それは、遮熱性能(日照反射率、IR反射性能)の長期安定性において、エラストマー粘着層のほうが通常の粘着材に比べて格段によい、という結果である。
これは、本発明の熱線遮蔽材の特徴である、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向している状態(以下、「ナノディスク平面配列」とも言う)がIR反射を出す、という点において、その上に通常の粘着材を積層してガラスへの貼合をすると昼夜の寒暖差による金属粒子含有層(またはガラス)の膨張によって、金属粒子含有層と粘着層とを積層したフィルムのエッジ部における粘着材とフィルム間のせん断応力が生じ、それゆえのナノディスク平面配列に乱れが起こる、という事情による。いかなる理論に拘泥するものでもないが、本発明の熱線遮蔽材の構成で用いる自己粘着性と再剥離性を有する粘着層(例えばエラストマー粘着層)の場合は通常の粘着材と違い、昼夜の寒暖差による金属粒子含有層(またはガラス)の膨張によって前記エッジ部にせん断応力が掛かってきてもガラスと粘着層(例えばエラストマー粘着層)の界面がスライドするだけでせん断応力は解消されてしまい、ナノディスク平面配列の乱れには至らない。このような遮熱性能(日照反射率)の耐久性については従来検討されておらず、昼夜の寒暖差とナノディスク平面配列の乱れの関係についても従来知られていなかった。
【0017】
本発明の熱線遮蔽材は、必要に応じて、紫外線吸収層、基材、金属酸化物粒子含有層などのその他の層を有する態様も好ましい。
以下、本発明の熱線遮蔽材の好ましい構成について説明する。
【0018】
本発明の熱線遮蔽材の層構成としては、図1に示すように、少なくとも1種の金属平板粒子3を含有する金属粒子含有層2と粘着層11を有する態様が挙げられる。また、図2に示すように、基材1と、該基材上に少なくとも1種の金属平板粒子3を含有する金属粒子含有層2と、粘着層11とを有する態様が挙げられる。金属平板粒子3は、図1および図2に記載のように金属粒子含有層2と粘着層11の間の界面に偏在していてもよく、金属粒子含有層2中に厚み方向に適度に分散していてもよい(不図示)。また、図3に示すように、基材1と、該基材上に金属粒子含有層2と、該金属粒子含有層上に粘着層11とを有し、金属粒子含有層2の粘着層11が配置されていない側の表面に金属平板粒子3が偏在していてもよい。
【0019】
<1.金属粒子含有層>
前記金属粒子含有層は、少なくとも1種の金属粒子を含有する層であり、前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属粒子含有層の厚みをdとしたとき、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在していることが好ましく、前記金属粒子含有層の表面からd/3の範囲に存在することよりが好ましい。いかなる理論に拘泥するものでもなく、また、本発明の熱線遮蔽材は以下の製造方法に限定されるものではないが、前記金属粒子含有層を製造するときに特定のポリマー(好ましくはラテックス)を添加することなどにより、金属平板粒子を前記金属粒子含有層の一方の表面に偏析させることができる。
【0020】
−1−1.金属粒子−
前記金属粒子としては、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子が金属粒子含有層の一方の表面(本発明の熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、前記金属粒子含有層の一方の表面は、フラットな平面であることが好ましい。本発明の熱線遮蔽材の前記金属粒子含有層が仮支持体としての基材を有する場合は、基材の表面とともに略水平面であることが好ましい。ここで、前記熱線遮蔽材は、前記仮支持体を有していてもよく、有していなくてもよい。
前記金属粒子の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、500nm以下の平均粒子径を有するものであってもよい。
前記金属粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線(近赤外線)の反射率が高い点から、銀、金、アルミニウム、銅、ロジウム、ニッケル、白金などが好ましい。
【0021】
−1−2.金属平板粒子−
前記金属平板粒子としては、形状などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、略三角平板状、略六角平板状、及びこれらの角が取れた略円盤状の金属平板粒子の少なくともいずれかが好ましい。
前記金属平板粒子の材料としては、少なくとも銀を含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線(近赤外線)の遮蔽率が高い金、アルミニウム、銅、ロジウム、ニッケル、白金等の金属などを更に含んでいてもよい。
前記金属平板粒子の前記熱線遮蔽層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第一及び第二のいずれの実施形態においても、0.01g/m2〜1.00g/m2が好ましく、0.02g/m2〜0.20g/m2がより好ましい。
前記含有量が、0.01g/m2未満であると、熱線遮蔽が不十分になることがあり、1.00g/m2を超えると、可視透過率が落ちることがある。一方、前記含有量が、0.02g/m2〜0.20g/m2であると、十分な熱線遮蔽と可視透過率の点で有利である。
なお、前記金属平板粒子の前記熱線遮蔽層における含有量は、例えば、以下のようにして算出することができる。前記熱線遮蔽層の超箔切片TEM像及び表面SEM像の観察から、一定面積における金属平板粒子の個数、平均粒子径及び平均厚みを測定する。或いは、平均厚みに関しては、当該熱線遮蔽層に使用している金属平板粒子をバインダー添加無しで分散液状態にてガラス板に塗布し、その表面を原子間力顕微鏡にて測定することにより、更に正確な平均厚みを測定することができる。このようにして測定した金属平板粒子の個数、平均粒子径及び平均厚みと、金属平板粒子の比重とに基づいて算出した金属平板粒子の質量(g)を、前記一定面積(m2)で除することにより算出することができる。また、前記熱線遮蔽層の一定面積における金属平板粒子をメタノールに溶出させ、蛍光X線測定により測定した金属平板粒子の質量(g)を、前記一定面積(m2)で除することにより算出することもできる。
【0022】
前記金属平板粒子としては、2つの主平面からなる粒子(図4A及び図4B参照)であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状、円形状、三角形状などが挙げられる。これらの中でも、可視光透過率が高い点で、六角形状以上の多角形状〜円形状であることがより好ましく、六角形状または円形状であることが特に好ましい。
本明細書中、円形状とは、後述する金属平板粒子(平板状金属粒子と同義)の平均円相当径の50%以上の長さを有する辺の個数が1個の金属平板粒子当たり0個である形状のことを言う。前記円形状の金属平板粒子としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で金属平板粒子を主平面の上方から観察した際に、角が無く、丸い形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本明細書中、六角形状とは、後述する金属平板粒子の平均円相当径の20%以上の長さを有する辺の個数が1個の金属平板粒子当たり6個である形状のことを言う。なお、その他の多角形についても同様である。前記六角形状の金属平板粒子としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で金属平板粒子を主平面の上方から観察した際に、六角形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状の角が鋭角のものでも、鈍っているものでもよいが、可視光域の吸収を軽減し得る点で、角が鈍っているものであることが好ましい。角の鈍りの程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属平板粒子の材料としては、特に制限はなく、前記金属粒子と同じものを目的に応じて適宜選択することができる。前記金属平板粒子は、少なくとも銀を含むことが好ましい。
【0023】
前記金属粒子含有層に存在する金属粒子のうち、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子は、金属粒子の全個数に対して、60個数%以上であり、65個数%以上が好ましく、70個数%以上が更に好ましい。前記金属平板粒子の割合が、60個数%未満であると、可視光線透過率が低くなってしまうことがある。
【0024】
[1−2−1.面配向]
本発明の熱線遮蔽材において、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子は、その主平面が金属粒子含有層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して、平均0°〜±30°の範囲で面配向しており、平均0°〜±20°の範囲で面配向していることが好ましく、平均0°〜±5°の範囲で面配向していることが特に好ましい。
前記金属平板粒子の存在状態は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する図5D、図5Eのように並んでいることが好ましい。
【0025】
ここで、図5A〜図5Eは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図である。図5C、図5Dおよび図5Eは、金属粒子含有層2中における金属平板粒子3の存在状態を示す。図5Aは、基材1の平面と金属平板粒子3の主平面(円相当径Dを決める面)とのなす角度(±θ)を説明する図である。図5Bは、金属粒子含有層2の熱線遮蔽材の深さ方向における存在領域を示すものである。
図5Aにおいて、基材1の表面と、金属平板粒子3の主平面または主平面の延長線とのなす角度(±θ)は、前記の面配向における所定の範囲に対応する。即ち、面配向とは、熱線遮蔽材の断面を観察した際、図5Aに示す傾角(±θ)が小さい状態をいい、特に、図5Dは、基材1の表面と金属平板粒子3の主平面とが接している状態、即ち、θが0°である状態を示す。基材1の表面に対する金属平板粒子3の主平面の面配向の角度、即ち図5Aにおけるθが±30°を超えると、熱線遮蔽材の所定の波長(例えば、可視光域長波長側から近赤外光領域)の反射率が低下してしまう。
【0026】
前記金属粒子含有層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して金属平板粒子の主平面が面配向しているかどうかの評価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、適当な断面切片を作製し、この切片における金属粒子含有層(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材)及び金属平板粒子を観察して評価する方法であってもよい。具体的には、熱線遮蔽材を、ミクロトーム、集束イオンビーム(FIB)を用いて熱線遮蔽材の断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製し、これを、各種顕微鏡(例えば、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等)を用いて観察して得た画像から評価する方法などが挙げられる。
【0027】
前記熱線遮蔽材において、金属平板粒子を被覆するバインダーが水で膨潤する場合は、液体窒素で凍結した状態の試料を、ミクロトームに装着されたダイヤモンドカッター切断することで、前記断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製してもよい。また、熱線遮蔽材において金属平板粒子を被覆するバインダーが水で膨潤しない場合は、前記断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製してもよい。
【0028】
前記の通り作製した断面サンプルまたは断面切片サンプルの観察としては、サンプルにおいて金属粒子含有層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して金属平板粒子の主平面が面配向しているかどうかを確認し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FE−SEM、TEM、光学顕微鏡などを用いた観察が挙げられる。前記断面サンプルの場合は、FE−SEMにより、前記断面切片サンプルの場合は、TEMにより観察を行ってもよい。FE−SEMで評価する場合は、金属平板粒子の形状と傾角(図5Aの±θ)が明瞭に判断できる空間分解能を有することが好ましい。
【0029】
[1−2−2.平均粒子径(平均円相当径)及び平均粒子径(平均円相当径)の粒度分布]
前記金属平板粒子の平均粒子径(平均円相当径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70nm〜500nmが好ましく、100nm〜400nmがより好ましい。前記平均粒子径(平均円相当径)が、70nm未満であると、金属平板粒子の吸収の寄与が反射より大きくなるため十分な熱線反射能が得られなくなることがあり、500nmを超えると、ヘイズ(散乱)が大きくなり、基材の透明性が損なわれてしまうことがある。
ここで、前記平均粒子径(平均円相当径)とは、TEMで粒子を観察して得た像から任意に選んだ200個の平板粒子の主平面直径(最大長さ)の平均値を意味する。
前記金属粒子含有層中に平均粒子径(平均円相当径)が異なる2種以上の金属粒子を含有することができ、この場合、金属粒子の平均粒子径(平均円相当径)のピークが2つ以上、即ち2つの平均粒子径(平均円相当径)を有していてもよい。
【0030】
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子の粒度分布における変動係数としては、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。前記変動係数が、30%を超えると、熱線遮蔽材における熱線の反射波長域がブロードになってしまうことがある。
ここで、前記金属平板粒子の粒度分布における変動係数は、例えば前記の通り得た平均値の算出に用いた200個の金属平板粒子の粒子径の分布範囲をプロットし、粒度分布の標準偏差を求め、前記の通り得た主平面直径(最大長さ)の平均値(平均粒子径(平均円相当径))で割った値(%)である。
【0031】
[1−2−3.アスペクト比]
前記金属平板粒子のアスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、波長800nm〜1,800nmの赤外光領域での反射率が高くなる点から、8〜40が好ましく、10〜35がより好ましい。前記アスペクト比が8未満であると反射波長が800nmより小さくなり、40を超えると、反射波長が1,800nmより長くなり、十分な熱線反射能が得られないことがある。
前記アスペクト比は、金属平板粒子の平均粒子径(平均円相当径)を金属平板粒子の平均粒子厚みで除算した値を意味する。平均粒子厚みは、金属平板粒子の主平面間距離に相当し、例えば、図4A及び図4Bに示す通りであり、原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
前記AFMによる平均粒子厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス基板に金属平板粒子を含有する粒子分散液を滴下し、乾燥させて、粒子1個の厚みを測定する方法などが挙げられる。
なお、前記金属平板粒子の厚みは5〜20nmであることが好ましい。
【0032】
[1−2−4.金属平板粒子の存在範囲]
本発明の熱線遮蔽材では、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在することが好ましく、d/3の範囲に存在することがより好ましく、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が前記金属粒子含有層の一方の表面に露出していることが更に好ましい。金属平板粒子が金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在するとは、金属平板粒子の少なくとも一部が金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に含まれていることを意味する。すなわち、金属平板粒子の一部が、金属粒子含有層の表面よりも突出している図5Eに記載される金属平板粒子も、金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在する金属平板粒子として扱う。なお、図5Eは、各金属平板粒子の厚み方向のごく一部が金属粒子含有層に埋没してことを意味し、各金属平板粒子が金属粒子含有層の表面上に積まれているわけではない。
また、金属平板粒子が前記金属粒子含有層の一方の表面に露出しているとは、金属平板粒子の一方の表面の一部が、金属粒子含有層の表面よりも突出していることを意味する。
ここで、前記金属粒子含有層中の金属平板粒子存在分布は、例えば、熱線遮蔽材の断面試料をSEM観察した画像より測定することができる。
【0033】
本発明の熱線遮蔽材において、図5Bに示すように、金属粒子含有層2における金属平板粒子3を構成する金属のプラズモン共鳴波長をλとし、金属粒子含有層2における媒質の屈折率をnとするとき、前記金属粒子含有層2が、熱線遮蔽材の水平面からの深さ方向において、(λ/n)/4の範囲で存在することが好ましい。この範囲内であると、熱線遮蔽材の上側と下側のそれぞれの金属粒子含有層の界面での反射波の位相により反射波の振幅が強めあう効果が十分大きく、可視光透過率及び熱線最大反射率が良好となる。
前記金属粒子含有層における金属平板粒子を構成する金属のプラズモン共鳴波長λは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線反射性能を付与する点で、400nm〜2,500nmであることが好ましく、可視光透過率を付与する点から、700nm〜2,500nmであることがより好ましい。
【0034】
[1−2−5.金属粒子含有層の媒質]
前記金属粒子含有層における媒質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本発明の熱線遮蔽材は、前記金属含有層がポリマーを含むことが好ましく、透明ポリマーを含むことがより好ましい。前記ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンやセルロース等の天然高分子等の高分子などが挙げられる。その中でも、本発明では、前記ポリマーの主ポリマーがポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂であることが好ましく、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂であることが前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上を前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在させやすい観点からより好ましく、ポリエステル樹脂であることが本発明の熱線遮蔽材のこすり耐性をより改善する観点から特に好ましい。
また、本明細書中、前記金属含有層に含まれる前記ポリマーの主ポリマーとは、前記金属含有層に含まれるポリマーの50質量%以上を占めるポリマー成分のことを言う。
前記媒質の屈折率nは、1.4〜1.7であることが好ましい。
本発明の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の厚みをaとしたとき、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、厚み方向のa/10以上を前記ポリマーに覆われていることが好ましく、厚み方向のa/10〜10aを前記ポリマーに覆われていることがより好ましく、a/8〜4aを前記ポリマーに覆われていることが特に好ましい。このように前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子が前記金属粒子含有層に一定割合以上埋没していることにより、よりこすり耐性を高めることができる。すなわち、本発明の熱線遮蔽材は、図5Eの態様よりも、図5Dの態様の方が好ましい。
【0035】
[1−2−6.金属平板粒子の面積率]
前記熱線遮蔽材を上から見た時の基材の面積A(金属粒子含有層に対して垂直方向から見たときの前記金属粒子含有層の全投影面積A)に対する金属平板粒子の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕としては、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。前記面積率が、15%未満であると、熱線の最大反射率が低下してしまい、遮熱効果が十分に得られないことがある。
ここで、前記面積率は、例えば熱線遮蔽材基材を上からSEM観察で得られた画像や、AFM(原子間力顕微鏡)観察で得られた画像を画像処理することにより測定することができる。
【0036】
[1−2−7.金属平板粒子の平均粒子間距離]
前記金属粒子含有層における水平方向に隣接する金属平板粒子の平均粒子間距離としては、可視光線透過率及び熱線の最大反射率の点から、金属平板粒子の平均粒子径の0.1〜10が好ましい。
前記金属平板粒子の水平方向の平均粒子間距離が、前記金属平板粒子の平均粒子径の1/10未満となると、可視光線透過率が低下してしまう。また、10以上であると熱線反射率が低下してしまう。また、水平方向の平均粒子間距離は、可視光線透過率の点で、不均一(ランダム)であることが好ましい。ランダムでない場合、即ち、均一であると、回折散乱によりモアレ縞が見えることがある。
【0037】
ここで、前記金属平板粒子の水平方向の平均粒子間距離とは、隣り合う2つの粒子の粒子間距離の平均値を意味する。また、前記平均粒子間距離がランダムであるとは、「100個以上の金属平板粒子が含まれるSEM画像を二値化した際の輝度値の2次元自己相関を取ったときに、原点以外に有意な極大点を持たない」ことを意味する。
【0038】
[1−2−8.金属粒子含有層の層構成]
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子は、図5A〜図5Eに示すように、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の形態で配置される。
前記金属粒子含有層としては、図5A〜図5Eに示すように単層で構成されてもよく、複数の金属粒子含有層で構成されてもよい。複数の金属粒子含有層で構成される場合、遮熱性能を付与したい波長帯域に応じた遮蔽性能を付与することが可能となる。なお、前記金属粒子含有層が複数の金属粒子含有層で構成される場合、本発明の熱線遮蔽材は、少なくとも最表面の金属粒子含有層において、該最表面の金属粒子含有層の厚みをd’’としたとき、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、該最表面の金属粒子含有層の表面からd’’/2の範囲に存在することが必要である。
【0039】
[1−2−9.金属粒子含有層の厚み]
本発明の熱線遮蔽材は、前記金属粒子含有層の厚みが10〜160nmであることが好ましく、20〜160nmであることがより好ましく、20〜100nmであることが特に好ましい。前記金属粒子含有層の厚みdは、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の厚みをaとしたとき、a〜10aであることが好ましく、2a〜8aであることがより好ましい。
【0040】
ここで、前記金属粒子含有層の各層の厚みは、例えば、熱線遮蔽材の断面試料をSEM観察した画像より測定することができる。
また、熱線遮蔽材の前記金属粒子含有層の上に、例えば後述するオーバーコート層などの他の層を有する場合においても、他の層と前記金属粒子含有層の境界は同様の方法によって決定することができ、前記金属粒子含有層の厚みdを決定することができる。なお、前記金属粒子含有層に含まれるポリマーと同じ種類のポリマーを用いて、前記金属粒子含有層の上にコーティングをする場合は前記金属粒子含有層との境界を判別しにくいため、前記金属粒子含有層の上にカーボン蒸着を施した上でオーバーコート層をコーティングし、断面をSEM観察することにより両層間の界面を認識することができ、前記金属粒子含有層の厚みdを決定することができる。
【0041】
[1−2−10.金属平板粒子の合成方法]
前記金属平板粒子の合成方法としては、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を合成し得るものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法などが挙げられる。これらの中でも、形状とサイズ制御性の点で、化学還元法、光化学還元法などの液相法が特に好ましい。六角形〜三角形状の金属平板粒子を合成後、例えば、硝酸、亜硫酸ナトリウム等の銀を溶解する溶解種によるエッチング処理、加熱によるエージング処理などを行うことにより、六角形〜三角形状の金属平板粒子の角を鈍らせて、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を得てもよい。
【0042】
前記金属平板粒子の合成方法としては、前記の他、予めフィルム、ガラスなどの透明基材の表面に種晶を固定後、平板状に金属粒子(例えばAg)を結晶成長させてもよい。
【0043】
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子は、所望の特性を付与するために、更なる処理を施してもよい。前記更なる処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高屈折率シェル層の形成、分散剤、酸化防止剤等の各種添加剤を添加することなどが挙げられる。
【0044】
−1−2−10−1.高屈折率シェル層の形成−
前記金属平板粒子は、可視光域透明性を更に高めるために、可視光域透明性が高い高屈折率材料で被覆されてもよい。
前記高屈折率材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、TiOx、BaTiO3、ZnO、SnO2、ZrO2、NbOxなどが挙げられる。
【0045】
前記被覆する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Langmuir、2000年、16巻、p.2731−2735に報告されているようにテトラブトキシチタンを加水分解することにより銀の金属平板粒子の表面にTiOx層を形成する方法であってもよい。
【0046】
また、前記金属平板粒子に直接高屈折率金属酸化物層シェルを形成することが困難な場合は、前記の通り金属平板粒子を合成した後、適宜SiO2やポリマーのシェル層を形成し、更に、このシェル層上に前記金属酸化物層を形成してもよい。TiOxを高屈折率金属酸化物層の材料として用いる場合には、TiOxが光触媒活性を有することから、金属平板粒子を分散するマトリクスを劣化させてしまう懸念があるため、目的に応じて金属平板粒子にTiOx層を形成した後、適宜SiO2層を形成してもよい。
【0047】
−1−2−10−2.各種添加物の添加−
本発明の熱線遮蔽材において、前記金属平板粒子は、該金属平板粒子を構成する銀などの金属の酸化を防止するために、メルカプトテトラゾール、アスコルビン酸等の酸化防止剤を吸着していてもよい。また、酸化防止を目的として、Ni等の酸化犠牲層が金属平板粒子の表面に形成されていてもよい。また、酸素を遮断することを目的として、SiO2などの金属酸化物膜で被覆されていてもよい。
前記金属平板粒子は、分散性付与を目的として、例えば、4級アンモニウム塩、アミン類等のN元素、S元素、及びP元素の少なくともいずれかを含む低分子量分散剤、高分子量分散剤などの分散剤を添加してもよい。
【0048】
<2.粘着層>
本発明の熱線遮蔽材は、粘着層を有し、前記粘着層が自己粘着性と再剥離性を有することを特徴とする。
本発明の熱線遮蔽材に用いられる粘着層は、自己粘着性と再剥離性を有する。このような粘着層は、従来建築材料として使用する場合に採用されていた粘着材であった、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系などの各種感圧性接着剤とは異なる。
粘着層として有効に機能させる観点から、本発明の熱線遮蔽材は10〜100μm厚で粘着層を有することが好ましく、10〜50μm厚で粘着層を有することがより好ましく、15〜40μm厚で粘着層を有することが特に好ましい。粘着層は、残留溶剤をできるだけ少なくするために揮発性の高いアセトン、トルエン、メチルエチルケトンなどを溶媒として塗布することが好ましい。また、粘着層の中にはUVカット剤を混合しておくと熱線遮蔽材の構成物に対する光劣化を低減することができる。前記UVカット剤としてはチヌビン(BASF社製)などが好ましい。また、粘着層は塗布後1日〜1週間をおき、内部歪などの諸物性を落ち着かせることが好ましい。
前記粘着層は、紫外線吸収剤を含むことができる。
【0049】
前記粘着層の形成に利用可能な材料としては、自己粘着性と再剥離性を有する以外に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特許第421557号公報に記載のゲルポリマー塗布液を用いた自己粘着性フィルム、特開2004−29673号公報に記載のゲルポリマーシート、特許第3532565号公報に記載の従来の感圧性接着剤に対して自己粘着性と再剥離性を得られるように改良した塗布液を用いた粘着層などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの材料からなる粘着層は、塗布により形成することができる。
さらに、前記粘着層には帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などを添加してもよい。
【0050】
本発明の熱線遮蔽材は、前記粘着層がカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。前記カルボン酸変性熱可塑性エラストマーを含む粘着層については、特許第421557号公報に記載があり、前記金属粒子含有層に後述する第1接着層と第2接着層がこの順に積層・接着されてなる自己粘着性を有する粘着層が好ましい。前記第1接着層は、カルボン酸変性熱可塑性エラストマー及び架橋剤を含み、前記金属粒子含有層の片面に積層・接着されていることが好ましい。また、前記第2接着層は、熱可塑性エラストマー及び可塑剤を含み、前記第1接着層に積層・接着されていることが好ましい。
【0051】
前記第1接着層は、カルボン酸変性熱可塑性エラストマー及び架橋剤を含み、前記基材層の片面に積層・接着されている層であることが好ましい。このカルボン酸変性熱可塑性エラストマーとしては、カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーなど、種々のものを用いることができる。ここで、カルボン酸変性は、例えば、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸、アクリル酸、プロピロル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びオレイン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、並びに、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸によるものであってもよい。脂肪族不飽和ジカルボン酸変性であるのが好ましく、最も好ましくは、マレイン酸変性である。
【0052】
このようなカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーは、例えば、水素添加されたカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーであってもよく、例えば、水素添加されたカルボン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーであってもよい。この例としては、例えば、水素添加されたマレイン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマー(マレイン酸変性SEBSエラストマー)が挙げられる。また、前記第1接着層材料におけるカルボン酸変性熱可塑性エラストマーとして、水素添加されたマレイン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーを用いる場合、そのメルトインデックスが、例えば、200℃、5kgの条件下で、2.5〜25g/10分であるのが好ましく、より好ましくは3〜7g/10分である。
【0053】
また、前記水素添加されたカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを用いる場合、水素添加率が実質的に100%であるのが好ましいが、本発明の効果が得られる限りにおいてそれ未満であってもよい。また、カルボン酸変性SEBSを用いる場合、そのスチレン:エチレン+ブチレンの質量比は、例えば、10:90〜40:60であるのが好ましく、より好ましくは、20:80〜30:70である。更に、本発明においては、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーの酸価が、好ましくは2〜10である。酸価が3未満であると無色透明なフィルムとすることができ、一方、酸価が3〜10であると黄色がかったものとすることができる。
前記カルボン酸変性熱可塑性エラストマーとしては、例えば、旭化成製のタフテックM1911、M1913、M1943、及びクレイトンポリマー製のクレイトンFG−1901Xなどが挙げられる。
【0054】
また、前記第1接着層中に用いる架橋剤は、その種類が特に制限されず、例えば、前記カルボン酸変性熱可塑性エラストマーの種類などを考慮して適宜決定することができる。この架橋剤としては、例えば、日本ポリウレタン工業製のコロネートHL(ヘキサメチレンジイソシアネート−ビュレット型)を用いることができる。
また、前記第1接着層におけるカルボン酸変性熱可塑性エラストマー:架橋剤の質量比は、特に制限されないが、例えば、100:1〜2:1とするのが好ましく、より好ましくは100:1〜4:1であり、最も好ましくは50:1〜12:1である。これにより、前記第1接着層と前記金属粒子含有層の接着性及び前記第1接着層と前記第2接着層の接着性の双方を優秀なものとすることができる。
また、前記第1接着層は、他の添加剤、例えば、帯電防止剤などを含んでいてもよい。帯電防止剤としては、例えば、日本油脂製のエレガン264waxなどを用いることができ、その含量は、第1接着層の質量をベースとして、0.1〜3.6質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.6〜1.8質量%である。このような割合で帯電防止剤を用いることにより、いわゆる「ゆずはだ」を良好に防止することができる。
前記第1接着層の厚さは、任意であるが、例えば、1〜50μmであるのが好ましく、より好ましくは1〜15μmであり、最も好ましくは2〜3μmであり、これにより、例えば、コスト面及び加工適性面において所望の結果が得られる。
【0055】
前記第2接着層は、熱可塑性エラストマー及び可塑剤を含み、前記第1接着層に積層・接着されている層であることが好ましい。前記第2接着層中に用いる熱可塑性エラストマーとしては、種々のものを用いることができるが、可塑剤を併用することにより凝集力が下がり、自己粘着性が向上するように選択することが重要である。前記第2接着層中に用いる熱可塑性エラストマーは、スチレンモノマーユニットとゴムモノマーユニットからなるブロックセグメントで構成されているポリマーであるのが好ましい。そのような熱可塑性エラストマーとしては、例えば、SIS、SBS、SEBS、SEPS、SI、SB、SEPなどが挙げられ、SEBS、SEPSが好ましい。また、前記第2接着層材料の熱可塑性エラストマーとして、例えば、SEPSを用いる場合、その質量平均分子量は、例えば、15,000〜500,000であるのが好ましく、より好ましくは100,000〜500,000である。
前記第2接着層が、その質量をベースとして、好ましくは、3〜97質量%、より好ましくは10〜90質量%の熱可塑性エラストマーを含むのがよい。
【0056】
また、前記第2接着層中に用いる可塑剤は、その種類が特に制限されないが、熱可塑性エラストマーがポリスチレン相とゴム相を有する場合に、ゴム相に対する親和性が高いが、ポリスチレン相に対する親和性が低い、高分子量の化合物が適している。このような可塑剤としては、例えば、ナフテンオイル又は流動パラフィンを用いることができる。
前記ナフテンオイルは、例えば、その引火点が、例えば、100〜300℃であるのが好ましく、より好ましくは150〜280℃である。また、その流動点が、例えば、−30〜−5℃であるのが好ましく、より好ましくは−25〜−10℃である。また、その比重が、例えば、0.83〜0.87であるのが好ましく、より好ましくは0.837〜0.868である。更に、その炭素数は、例えば、3〜8であるのが好ましく、より好ましくは5〜6である。
一方、前記流動パラフィンは、例えば、その引火点が、例えば、100〜300℃であるのが好ましく、より好ましくは150〜280℃である。また、その流動点が、例えば、−30〜−5℃であるのが好ましく、より好ましくは−25〜−10℃である。また、その比重が、例えば、0.89〜0.91であるのが好ましく、より好ましくは0.8917〜0.9065である。更に、その炭素数は、例えば、20〜35であるのが好ましく、より好ましくは21〜33である。
前記ナフテンオイル、流動パラフィンのいずれかを単独で用いることができるが、これらを組み合せて用いることもできる。
【0057】
前記第2接着層が、その質量をベースとして、好ましくは、3〜97質量%、より好ましくは、10〜90質量%の可塑剤を含むのがよい。
また、前記第2接着層における熱可塑性エラストマー:可塑剤の質量比は、特に制限されないが、例えば、5:95〜95:5とするのが好ましく、より好ましくは10:90〜90:10である。これにより、前記第2接着層と前記第1接着層の接着性及び前記第2接着層と被着面の接着性の双方を優秀なものとすることができる。
前記第2接着層の厚さは、任意であるが、例えば、10〜100μmであるのが好ましく、より好ましくは25〜50μmである。
また、前記第2接着層の上に、必要に応じて、剥離層、即ち、本発明の熱線遮蔽材において、その保存時には粘着層の前記第2接着層面を被覆しており、被着面へ貼り付ける際に、剥離されて第2接着層面を露出させる層を設けることができる。前記剥離層としては、例えば、シリコーン処理PET、シリコーン処理紙基材、ポリオレフィンなどを用いることができ、シリコーン処理PETが好ましい。尚、シリコーン処理面が、前記第2接着層と接触するようにするのがよい。
【0058】
特開2004−29673号公報に記載の粘着層であるゲルポリマーシートは、オレフィンベースポリマーを含有する接着剤から形成することができる。前記接着剤に含まれるオレフィンベースポリマーは、通常、炭素数が3以上、好ましくは炭素数が3〜16のオレフィンに由来する繰り返し単位を分子内に有するホモポリマーまたはコポリマーである。オレフィンベースポリマーは、従来から保護フィルム用接着剤として使用されているものが利用できる。
炭素数が3以上のオレフィンに由来する単位は、枝分かれ構造を有する枝分かれオレフィン単位であるので、側鎖アルキル基の効果により非結晶性を示し、通常、常温(約25℃)以下のガラス転移温度(Tg)を有する。これにより、適度な粘着性を示す。オレフィンベースポリマーのTgは、好ましくは−70〜25℃、さらに好ましくは−60〜20℃の範囲である。
【0059】
枝分かれオレフィン単位を形成するオレフィンは、たとえば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセンなどのα−オレフィンや、ブタジエン、イソプレン等の炭素数が4以上のアルカジエンである。これらのオレフィンは、1種単独で用いてもよいし、また、2種以上組み合せて用いてもよい。また、オレフィンベースポリマーは、単独で使用してもよく、あるいは2種類以上のオレフィンベースポリマーを混合して使用してもよい。
【0060】
オレフィンベースポリマーは、オレフィンと1種以上のビニルモノマーとの共重合体を包含する。ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレンや、エチレン(炭素数が3未満のオレフィン)等が使用できる。オレフィンベースポリマーの好ましい例は、アタクチック・ポリプロピレン、アタクチック・ポリプロピレンと1種以上のビニルモノマーとの共重合体、炭素数4〜16のオレフィンを含むモノマーの重合体、スチレンとオレフィンとのブロック共重合体である。スチレンを含む共重合体は、たとえば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体などのスチレン系ブロック共重合体である。
【0061】
前記粘着層の弾性率は、剥離強度が前述の範囲になる様に決定するのが好ましい。たとえば、動的粘弾性測定法により25℃において、1rad/秒の周波数、シェアモードにて測定された弾性率G(貯蔵弾性率)は、通常20〜300kPa、好適には30〜200kPa、特に好適には50〜100kPaである。弾性率Gが小さすぎると再剥離性が低下するおそれがあり、反対に弾性率Gが大きすぎると、光学フィルタの被着面への密着性が低下し、被着体との間に空気界面ができるおそれがある。なお、接着層の弾性率を効果的に高めるには、オレフィンベースポリマーを三次元架橋するのが好ましい。架橋した状態で、いわゆるゲル状態になってもよい。
【0062】
また、前記粘着層の再剥離性を高めるには、たとえば、次の様な方法が好ましい。
(i)エチレン−オレフィン共重合体またはスチレン−オレフィン共重合体を用い、分子に占めるエチレン単位またはスチレン単位の割合を大きくする。
(ii)ポリエチレン等の結晶性ポリマーを、オレフィンベースポリマーと混合して用いる。
(iii)前述の様に、オレフィンベースポリマーを三次元架橋する。
これら(i)〜(iii)の方法を、2つ以上を組み合せて採用してもよい。
【0063】
前記粘着層は、本発明の効果を損なわない限り、粘着付与樹脂や可塑剤を含んでもよい。これらの使用は、本発明の熱線遮蔽材と被着体との密着性を高めるのに有利である。これらは、脂肪族化合物からなる樹脂やオイルがよい。また、本発明の効果を損なわない限り、上記以外のポリマー、たとえば、ポリスチレン、クロロプレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等を前記粘着層に含ませてもよい。
【0064】
<3.その他の層>
<<3−1.基材>>
本発明の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が偏在している方の前記金属粒子含有層の表面とは反対側の表面に、基材を有することが好ましい。
前記基材としては、光学的に透明な基材であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光線透過率が70%以上のもの、好ましくは80%以上のもの、近赤外線域の透過率が高いものなどが挙げられる。
前記基材としては、その形状、構造、大きさ、材料などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱線遮蔽材の大きさなどに応じて適宜選択することができる。
前記基材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエチレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテート等のセルロース系樹脂などからなるフィルム又はこれらの積層フィルムが挙げられる。これらの中で、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。
この基材フィルムの厚みとしては、特に制限はなく、日射遮蔽フィルムの使用目的に応じて適宜選択することができ、通常は10μm〜500μm程度であり、12μm〜300μmが好ましく、16μm〜125μmがより好ましい。
【0065】
<<3−2.ハードコート層>>
耐擦傷性を付加するために、機能性フィルムがハードコート性を有するハードコート層を含むことも好適である。ハードコート層には金属酸化物粒子を含むことができる。
前記ハードコート層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜その種類も形成方法も選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂などが挙げられる。前記ハードコート層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜50μmが好ましい。前記ハードコート層上に更に反射防止層及び/又は防眩層を形成すると、耐擦傷性に加え、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性フィルムが得られ好適である。また、前記ハードコート層に前記金属酸化物粒子を含有してもよい。
【0066】
<<3−3.オーバーコート層>>
本発明の熱線遮蔽材において、物質移動による金属平板粒子の酸化・硫化を防止し、耐擦傷性を付与するため、本発明の熱線遮蔽材は、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子が露出している方の前記金属粒子含有層の表面に密接するオーバーコート層を有していてもよい。また、前記金属粒子含有層と後述の紫外線吸収層との間にオーバーコート層を有していてもよい。本発明の熱線遮蔽材は特に金属平板粒子が金属粒子含有層の表面に偏在するため場合は、金属平板粒子の剥落による製造工程のコンタミ防止、別層塗布時の金属平板粒子配列乱れの防止、などのため、オーバーコート層を有していてもよい。
前記オーバーコート層には紫外線吸収剤を含んでもよい。
前記オーバーコート層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、バインダー、マット剤、及び界面活性剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂などが挙げられる。
前記オーバーコート層の厚みとしては、0.01μm〜1,000μmが好ましく、0.02μm〜500μmがより好ましく、0.1〜10μmが特に好ましく、0.2〜5μmがより特に好ましい。
【0067】
<4.添加剤>
<<4−1.紫外線吸収剤>
本発明の熱線遮蔽材は、紫外線吸収剤が含まれている層を有していてもよい。
前記紫外線吸収剤を含有する層は、目的に応じて適宜選択することができ、粘着層であってもよく、また、前記粘着層と前記金属粒子含有層との間の層(例えば、オーバーコート層など)であってもよい。いずれの場合も、前記紫外線吸収剤は、前記金属粒子含有層に対して、太陽光が照射される側に配置される層に添加されることが好ましい。
【0068】
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,4ドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0070】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール(チヌビン326)、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−5−ジターシャリーブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0071】
前記トリアジン系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノ(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物、ビス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物、トリス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物などが挙げられる。
前記モノ(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物としては、例えば、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。前記ビス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロピルオキシフェニル)−6−(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス[2−ヒドロキシ−4−[3−(メトキシヘプタエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル]−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。前記トリス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス[2−ヒドロキシ−4−(3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−6−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス[2−ヒドロキシ−4−[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−6−[2,4−ビス[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0072】
前記サリチレート系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート、2−エチルヘキシルサリチレートなどが挙げられる。
【0073】
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。
【0074】
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視光透明性や日射透明性が高い方が好ましく、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。なお、バインダーが熱線を吸収すると、金属平板粒子による反射効果が弱まってしまうことから、熱線源と金属平板粒子との間に形成される紫外線吸収層としては、450nm〜1,500nmの領域に吸収を持たない材料を選択したり、該紫外線吸収層の厚みを薄くしたりすることが好ましい。
前記紫外線吸収層の厚みとしては、0.01μm〜1,000μmが好ましく、0.02μm〜500μmがより好ましい。前記厚みが、0.01μm未満であると、紫外線の吸収が足りなくなることがあり、1,000μmを超えると、可視光の透過率が下がることがある。
前記紫外線吸収層の含有量としては、用いる紫外線吸収層によって異なり、一概に規定することができないが、本発明の熱線遮蔽材において所望の紫外線透過率を与える含有量を適宜選択することが好ましい。
前記紫外線透過率としては、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。前記紫外線透過率が、5%を超えると、太陽光の紫外線により前記金属平板粒子層の色味が変化することがある。
【0075】
<<4−2.金属酸化物粒子>>
本発明の熱線遮蔽材は、長波赤外線を吸収するために、少なくとも1種の金属酸化物粒子を含有していても熱線遮蔽と製造コストのバランスの観点からは好ましい。この場合、例えばオーバーコート層に金属酸化物粒子を含むことが好ましい。オーバーコート層は、基材を介して、前記金属酸化物粒子含有層と積層されていてもよい。金属平板粒子含有層が太陽光などの熱線の入射方向側となるように本発明の熱線遮蔽材を配置したときに、金属平板粒子含有層2で熱線の一部(または全部でもよい)を反射した後、オーバーコート層で熱線の一部を吸収することとなり、金属酸化物含有層で吸収されずに熱線遮蔽材を透過した熱線に起因して熱線遮蔽材の内側で直接受ける熱量と、熱線遮蔽材の金属酸化物含有層2で吸収されて間接的に熱線遮蔽材の内側に伝わる熱量の合計としての熱量を低減することができる。
前記金属酸化物粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錫ドープ酸化インジウム(以下、「ITO」と略記する。)、錫ドープ酸化アンチモン(以下、「ATO」と略記する。)、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン、ガラスセラミックスなどが挙げられる。これらの中でも、熱線吸収能力に優れ、金属平板粒子と組み合わせることにより幅広い熱線吸収能を有する熱線遮蔽材が製造できる点で、ITO、ATO、酸化亜鉛がより好ましく、1,200nm以上の赤外線を90%以上遮蔽し、可視光透過率が90%以上である点で、ITOが特に好ましい。
前記金属酸化物粒子の一次粒子の体積平均粒径としては、可視光透過率を低下させないため、0.1μm以下が好ましい。
前記金属酸化物粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、針状、板状などが挙げられる。
【0076】
前記金属酸化物粒子の前記金属酸化物粒子含有層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1g/m2〜20g/m2が好ましく、0.5g/m2〜10g/m2がより好ましく、1.0g/m2〜4.0g/m2がより好ましい。
前記含有量が、0.1g/m2未満であると、肌に感じる日射量が上昇することがあり、20g/m2を超えると、可視光透過率が悪化することがある。一方、前記含有量が、1.0g/m2〜4.0g/m2であると、上記2点を回避できる点で有利である。
なお、前記金属酸化物粒子の前記金属酸化物粒子含有層における含有量は、例えば、前記熱線遮蔽層の超箔切片TEM像及び表面SEM像の観察から、一定面積における金属酸化物粒子の個数及び平均粒子径を測定し、該個数及び平均粒子径と、金属酸化物粒子の比重とに基づいて算出した質量(g)を、前記一定面積(m2)で除することにより算出することができる。また、前記金属酸化物粒子含有層の一定面積における金属酸化物微粒子をメタノールに溶出させ、蛍光X線測定により測定した金属酸化物微粒子の質量(g)を、前記一定面積(m2)で除することにより算出することもできる。
【0077】
<5.熱線遮蔽材の製造方法>
本発明の熱線遮蔽材の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塗布方法により、前記基材の表面に前記金属粒子含有層、前記紫外線吸収層、更に必要に応じてその他の層を形成する方法が挙げられる。
【0078】
−5−1.金属粒子含有層の形成方法−
本発明の金属粒子含有層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基材などの下層の表面上に、前記金属平板粒子を有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法、LB膜法、自己組織化法、スプレー塗布などの方法で面配向させる方法が挙げられる。本発明の熱線遮蔽材を製造するとき、後述の実施例で用いた金属粒子含有層の組成とし、ラテックスを添加する等によって、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在するようにする。前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の80個数%以上が、前記金属粒子含有層の表面からd/3の範囲に存在するようにすることが好ましい。前記ラテックスの添加量に特に制限は無いが、例えば金属平板粒子に対して、1〜10000質量%添加することが好ましい。
【0079】
なお、面配向を促進するために、金属平板粒子を塗布後、カレンダーローラーやラミローラーなどの圧着ローラーを通すことにより促進させてもよい。
【0080】
−5−2.粘着層の形成方法−
前記粘着層は、前記金属粒子含有層(または後述する基材)上に塗布により形成しても、前記金属粒子含有層(または後述する基材)と粘着層との貼り合わせによって形成してもよいが、塗布により形成することが好ましい。例えば、前記基材、前記金属粒子含有層、前記紫外線吸収層などの下層の表面上に塗布により積層することができる。このときの塗布方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。
【0081】
その中でも、特許4215527号公報に記載のゲルポリマーを塗布する方法が好ましい。この方法では、上述した前記金属粒子含有層(または後述する基材)に、前記第1接着層材料を製造するために、上述したカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを、溶剤、例えばトルエン中に導入し、これを、撹拌機を用いて溶解する。この溶液に対して、架橋剤を添加し、次いで、場合により、帯電防止剤を添加して、前記第1接着層材料を製造する。
前記第1接着層材料を、前記基材層のコロナ処理面上に塗布する。この際の塗工方法としては、液状のものが塗工できるものであれば特に制限はなく、例えば、ローラー塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法の他、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーターを用いた方法が例示される。次いで、これを乾燥するが、その条件は、膜厚や選択した溶剤の種類などにより変動し得るが、例えば、80〜150℃で20〜60秒間とすることができ、好ましくは100〜130℃で30〜50秒間とする。これにより、1〜50μmの厚さを有する第1接着層を基材層上に設けることができる。
【0082】
次いで、前記第1接着層上に、上述したような熱可塑性エラストマー及び架橋剤を、上述したような含量及び/又は質量比で含む第2接着層材料を、例えば上述した塗工方法のいずれかにより塗布する。これを、好ましくは80〜150℃で0.5〜2分間、より好ましくは100〜130℃で40秒〜1.5分間乾燥することにより、10〜100μmの厚さを有する第2接着層を第1接着層上に設けることができる。次いで、必要により、この第2接着層材料上に、上述した剥離層を設ける。これを40〜80℃で2〜6日間エージングさせることにより、粘着層を有する本発明の熱線遮蔽材を得ることができる。
【0083】
一方、特開2004−29673号公報に記載のオレフィンゲルポリマーフィルム(パナック(株)社製)を、前記金属粒子含有層(または後述する基材)と貼り合わせることも好ましい。
【0084】
−5−3.オーバーコート層・ハードコート層の形成方法−
オーバーコート層・ハードコート層は、塗布により形成することが好ましい。このときの塗布方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、前記紫外線吸収剤を含有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法などが挙げられる。
【0085】
<6.本発明の熱線遮蔽材の特性>
本発明の熱線遮蔽材の日射反射率としては、600nm〜2,000nmの範囲(好ましくは800nm〜1,800nm)で最大値を有することが、熱線反射率の効率を上げることができる点で好ましい。
本発明の熱線遮蔽材の可視光線透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。前記可視光線透過率が、60%未満であると、例えば、自動車用ガラスや建物用ガラスとして用いた時に、外部が見にくくなることがある。
本発明の熱線遮蔽材の紫外線透過率としては、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。前記紫外線透過率が、5%を超えると、太陽光の紫外線により前記金属平板粒子層の色味が変化することがある。
本発明の熱線遮蔽材のヘイズは、20%以下であることが好ましい。前記ヘイズが20%を超えると、例えば、自動車用ガラスや建物用ガラスとして用いた時に外部が見にくくなるなど、安全上好ましくないことがある。
【0086】
<7.熱線遮蔽材の使用態様>
本発明の熱線遮蔽材は、熱線(近赤外線)を選択的に反射および/または吸収するために使用される態様であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、乗り物用ガラスまたはフィルム、建材用ガラスまたはフィルム、農業用フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、省エネルギー効果の点で、乗り物用ガラスまたはフィルム、建材用ガラスまたはフィルムであることが好ましい。
なお、本発明において、熱線(近赤外線)とは、太陽光に約50%含まれる近赤外線(780nm〜2,500nm)を意味する。
【0087】
[遮熱ガラス]
本発明の遮熱ガラスは、本発明の熱線遮蔽材の前記粘着層上に、ガラスが貼り付けられたことを特徴とする。
前記ガラスの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記のようにして製造した本発明の熱線遮蔽材の粘着層を、自動車等の乗り物用ガラスや建材用ガラスに貼り合わせすることができる。
【0088】
特に自動車等の乗り物用ガラスとしての遮熱ガラスを製造する場合は合わせガラスとして製造することが好ましい。本発明の合わせガラスを製造する場合は、通常の合わせガラスの製造に用いるPVB中間膜、EVA中間膜等に本発明の熱線遮蔽材を挟み込んで用いることができる。また、前記銀平板粒子と、前記金属酸化物粒子とを含む前記熱線遮蔽層のみをPVB中間膜、EVA中間膜等に転写し、基材を剥離除去した状態で使用してもよい。
【0089】
[建材用ガラス]
本発明の熱線遮蔽材は建築材料としても好適に使用することが出来る。建築材料として使用する場合は、本発明の熱線遮蔽材を遮熱フィルムの形状とし、任意の方法で貼り付けて建材用ガラスとすることが好ましい。本発明の熱線遮蔽材をガラス貼り合わせて、本発明の遮蔽ガラスまたは建材用ガラスとする場合、図1〜図3のいずれの構成の熱線遮蔽材を貼り合わせてもよく、上述のガラスに貼り合わせた場合の遮熱耐久性に優れる効果を得ることができる。本発明の建材用ガラスを製造する場合は、前記遮熱フィルムの粘着層を窓ガラスやパーテイションに貼り付けることが好ましい。この際、家屋の内側へ貼る手法と外側へ貼る手法とがある。
本発明の熱線遮蔽材を家屋の内側へ貼るメリットとしては風雨耐性を気にする必要が無いことが挙げられ、その分粘着材に安価なものが使用できる。本発明の熱線遮蔽材を家屋の内側へ貼るとき、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が表面に露出している方の前記金属粒子含有層の表面が、前記粘着層と反対側の最表面であることが好ましい。さらに、前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が表面に露出している方の前記金属粒子含有層の表面とは反対側の表面と、前記粘着層との間に、基材を有することが好ましい。具体的には、図6に記載のように、図3の構成の熱線遮蔽材10の粘着層11をガラス20と貼り合わせた態様を好ましい態様の一つとして挙げることができる。図6の構成のとき、建材用ガラス用途として窓ガラスに用い、熱線遮蔽材10の金属粒子含有層2が室内側の最表面となるように本発明の建材用ガラスを設置することで、さらに抗菌性を付与することもできる。ここで、本明細書中において、抗菌性とは、カビ、微生物等の増殖をおさえる効果のことを主として意味し、副次的に不快臭の発生を防止する効果も含まれてもよい。このような抗菌性の付与効果は、建材用ガラス用途での使用時に限定されるものでもなく、また、透明ガラス以外の不透明なガラスや色付きのガラスにも付与することができる。
本発明の熱線遮蔽材を家屋の外側へ貼るメリットとしては、特に反射型遮熱フィルムでは熱線を外側で反射してしまうのでガラスへの吸収光線を軽減でき、内側貼りよりも有効に熱線カットができるという点がある。
【0090】
本発明の熱線遮蔽材は、前記粘着層が自己粘着性と再剥離性を有するため、ガラスに容易に貼り合わせ、また、気泡混入時や張り替え時などに必要に応じて容易に貼り直しをすることができる。
ガラスに熱線遮蔽材を貼る施工方法には何種類か考えられ、自己粘着性と再剥離性を有する粘着層を有する本発明の熱線遮蔽材を用いる場合の主な手法には、水貼り、ドライ貼り、静電印加が挙げられる。
【0091】
本発明の熱線遮蔽材の場合、施工方法は水を使わずにドライな状態で単にガラス窓に貼り付けることが可能である。ただし、大きな窓に貼る場合、全体の位置決めが厄介であり、端から位置を決めて掛かると反対側の端部で位置ズレを生じ易い。
そういう点を加味すると、やはり貼り付け初期に全体の位置決め微修正が可能な水貼りが合理的である。ガラス板片側全面に水滴を噴霧し、粘着材側から遮熱フィルム状とした本発明の熱線遮蔽材をガラス板に沿わせ、遮熱フィルムがガラス板上をスライドできている間に、貼り付けたいエリアに位置決めをする。位置が決まったら端部の数箇所を強く押し当ててフィルムのスライドを止め、中央部から端部に向かって、スキージーまたはローラーを使って、挟まれている水を履き出していく。その後、1日程度放置すれば粘着力が増してフィルムは剥がれなくなる。本手法のメリットは、どのような現場でも施工可能であり、使用する工具も一般的なもので可能であるため、新築、中古を問わず適用範囲が広いことである。また、水貼りは、加熱ラミネートや静電印加に比べ、小さいサイズのガラスへの貼り付けが容易である点で好ましい。また水貼りは、ロール状のサイズで一般的に実施される加熱ラミネートや静電印加に比べ、多様なサイズのガラスに合わせて熱線遮蔽材(遮熱フィルム)を調製でき、端材の無駄が生じないように適用できる観点からも好ましい。
静電印加法では、アースを取った金属板の上にガラスを置いて、その上に粘着層を含む熱線遮蔽材(遮熱フィルム)を置き、数cm上部から金属線に数十ボルトの電圧を掛けてガラスへ熱線遮蔽材(遮熱フィルム)を静電印加貼付けすることが好ましい。静電印加は金属線の周辺数センチ幅でフィルムを貼り付ける力を出せるので、端部から次第に金属線を中央部、そして反対側の端部へと動かしていくことにより、全面を貼る事ができる。静電気は時間と共に弱くなるので、端部の若干幅のみに粘着層を設けておき、時間と共に剥ぎ取れないようにしておくほうがよい。その場合、貼付け始めのエリアは袋小路になるよう端部に隙間無く粘着層を設けるべきであり、反対側の端部は挟まれた空気が逃げられるように極一部に隙間を開けておき、全面が貼り付けられた後にその隙間を粘性の高い接着剤で封止して空気の戻りを防ぐという手順がよい。本手法はラミネーターとドッキングしてラミネーションロールのすぐ後にアースを取った金属板と静電印加の金属線ゾーンを設ければ連続工程としてスムーズに作業できる。本手法のメリットとしては遮熱フィルムのガラス側表面を適度に荒らす、あるいは挟まれるエリアに微細ビーズを散布しておくことにより、フィルムとガラスの間に空気層が出来、断熱効果を大幅に高めることができることが挙げられる。多少全体にヘイズ度が上がるので、そのヘイズ度に合わせて散乱性を上げた粘着層を用いるなどの調整をすることが外観を良くする手段として有効である。また本法の場合、遮熱フィルムを静電印加しやすい素材としておくことが大事である。使用するPETフィルムの素材重合時にマグネシウムを一定量使用することを初めとして遮熱フィルム全体としての誘電率を高くしておけばよい。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0093】
(製造例1)
−銀平板粒子の合成−
−−平板核粒子の合成工程−−
2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液50mLに0.5g/Lのポリスチレンスルホン酸水溶液を2.5mL添加し、35℃まで加熱した。この溶液に10mMの水素化ほう素ナトリウム水溶液を3mL添加し、0.5mMの硝酸銀水溶液50mLを20mL/minで攪拌しながら添加した。この溶液を30分間攪拌し、種溶液を作製した。
−−平板粒子の第1成長工程−−
次に、2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mLにイオン交換水87.1mLを添加し、35℃まで加熱した。この溶液に10mMのアスコルビン酸水溶液を2mL添加し、前記種溶液を42.4mL添加し、0.5mMの硝酸銀水溶液79.6mLを10mL/minで攪拌しながら添加した。
−−平板粒子の第2成長工程−−
次に、上記溶液を30分間攪拌した後、0.35Mのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液を71.1mL添加し、7質量%ゼラチン水溶液を200g添加した。この溶液に、0.25Mの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLと0.47Mの硝酸銀水溶液107mLを混合してできた白色沈殿物混合液を添加した。前記白色沈殿物混合液を添加した後すぐに0.83MのNaOH水溶液72mLを添加した。このときpHが10を超えないように添加速度を調節しながらNaOH水溶液を添加した。これを300分間攪拌し、銀平板粒子分散液aを得た。
【0094】
この銀平板粒子分散液a中には、平均円相当径210nmの銀の六角平板粒子(以下、Ag六角平板粒子と称する)が生成していることを確認した。また、原子間力顕微鏡(NanocuteII、セイコーインスツル社製)で、六角平板粒子の厚みを測定したところ、平均18nmであり、アスペクト比が11.7の平板粒子が生成していることが分かった。
次に、得られた銀平板粒子及び熱線遮蔽材について、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表1に示す。
【0095】
<<銀平板粒子の評価>>
−平板粒子の割合、平均粒子径(平均円相当径)、変動係数−
Ag平板粒子の形状均一性は、観察したSEM画像から任意に抽出した200個の粒子の形状を、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子をA、涙型などの不定形形状の粒子をBとして画像解析を行い、Aに該当する粒子個数の割合(個数%)を求めた。
また同様にAに該当する粒子100個の粒子径をデジタルノギスで測定し、その平均値を平均粒子径(平均円相当径)とし、粒径分布の標準偏差を平均粒子径(平均円相当径)で割った変動係数(%)を求めた。
【0096】
−平均粒子厚み−
得られた銀平板粒子を含む分散液を、ガラス基板上に滴下して乾燥し、銀平板粒子1個の厚みを、原子間力顕微鏡(AFM)(NanocuteII、セイコーインスツル社製)を用いて測定した。なお、AFMを用いた測定条件としては、自己検知型センサー、DFMモード、測定範囲は5μm、走査速度は180秒/1フレーム、データ点数は256×256とした。
【0097】
−アスペクト比−
得られた銀平板粒子の平均粒子径(平均円相当径)及び平均粒子厚みから、平均粒子径(平均円相当径)を平均粒子厚みで除算して、アスペクト比を算出した。
【0098】
−透過スペクトル−
得られた銀平板粒子分散液の透過スペクトルは、銀平板粒子分散液を水で40倍に希釈し、光路長1mmの石英セルに入れ、紫外可視近赤外分光機(日本分光株式会社製、V−670)を用いて評価した。
【0099】
【表1−1】
【表1−2】
【0100】
(製造例2)
製造例1において、0.83MのNaOH水溶液72mLを添加する代わりに、イオン交換水72mLを添加したこと以外は、製造例1と同様にして銀平板粒子分散液bを作製した。
【0101】
(製造例3)
製造例1において、イオン交換水87.1mLを添加しないこと、前記種晶溶液の添加量を127.6mLに変えたこと、及び0.83MのNaOH水溶液72mLを添加する代わりに、0.08MのNaOH水溶液72mLを添加したこと以外は、製造例1と同様にして銀平板粒子分散液cを作製した。
【0102】
(製造例4)
製造例3において、2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mLを添加しないこと、及び、前記種晶溶液の添加量を255.2mLに変えたこと以外は、製造例3と同様にして銀平板粒子分散液dを作製した。
【0103】
(製造例5)
製造例4において、0.08MのNaOH水溶液72mLを添加する代わりに、イオン交換水72mLを添加したこと以外は、製造例4と同様にして銀平板粒子分散液eを作製した。
【0104】
(製造例6)
製造例1において、前記種晶溶液の添加量を42.4mLから21.2mLに変え、イオン交換水21.2mLを添加したこと以外は、製造例1と同様にして銀平板粒子分散液fを作製した。
【0105】
[実施例1]
−金属粒子含有層の作製−
製造例5の銀平板粒子分散液e16mLに1NのNaOHを0.75mL添加し、イオン交換水24mL添加し、遠心分離器(コクサン社製H−200N、アンブルローターBN)で5,000rpm、5分間、遠心分離を行い、Ag六角平板粒子を沈殿させた。遠心分離後の上澄み液を捨て、水を5mL添加し、沈殿したAg六角平板粒子を再分散させた。この分散液に2質量%の下記構造式(1)で表される化合物の水メタノール溶液(水:メタノール=1:1(質量比))を1.6mL添加し塗布液を作製した。この塗布液をワイヤー塗布バーNo.14(R.D.S Webster N.Y.社製)を用いて50μ厚のPETフィルム(A4300、東洋紡績株式会社製)上に塗布し、乾燥させて、表面にAg六角平板粒子が固定されたフィルムを得た。以上により、金属粒子含有層(以下、AgND含有層とも言う)を作製した。
【0106】
−AgND含有層のAg六角平板粒子の配向状態の確認−
得られたPETフィルムに厚み20nmになるようにカーボン薄膜を蒸着した後、SEM観察(日立製作所製、FE−SEM、S−4300、2kV、2万倍)を行った。PETフィルム上にAg六角平板粒子が凝集なく固定されており、以下のようにして測定したAg六角平板粒子の基材表面に占める面積率は、45%であることが分かった。また、以下のようにして測定した前記銀平板粒子の前記銀平板粒子面配向層における含有量は、0.04g/m2であることが分かった。このとき、フィルムの銀平板粒子含有層の表面にAg六角平板粒子が露出して配置されていた。
【化1】
【0107】
−粘着層の作成−
タフテックM1911[旭化成製 マレイン酸変性SEBS メルトインデックス(200℃、5kg)3.5g/10分 スチレン:エチレン+ブチレン質量比30:70 酸価2]13部を、トルエン87部中に、プロペラ撹拌機を使用して溶解した(固形分13%)。この溶液100部に対し、コロネートHL[日本ポリウレタン工業製 ヘキサメチレンジイソシアネート-ビュレット型]1.04部を常温にて混合した。また、塗布時用の帯電防止剤として、エレガン264wax[日本油脂製 カチオン性帯電防止剤]を混合液に0.13部添加して、第1接着層材料を得た。
この第1接着層材料をメイヤバーにて、上記にて製造した、金属粒子含有層の表面にAg六角平板粒子が固定されたPETフィルムのAg六角平板粒子が固定されている側の面に塗工した。120℃で40秒間乾燥して、Ag六角平板粒子が固定されている面上に第1接着層2μmを設けた。
次いで、SEPS熱可塑性エラストマー(質量平均分子量250,000)17質量%及びナフテンオイル可塑剤(引火点220℃;流動点−25℃;比重0.8387;炭素数5〜6)83質量%をトルエンに溶解した後、第1接着層上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、第1接着層上に第2接着層35μmを設けた後、剥離層であるシリコーン処理PETと貼り合わせた。これを45℃にて4日エージングさせることにより、実施例1の熱線遮蔽材を得た。実施例1の熱線遮蔽材の構成は、剥離層(シリコーン処理PET)/粘着層(ゲル塗布した第2接着層/第1接着層の積層体)/金属粒子含有層/基材PETフィルムの順であった。
【0108】
−遮熱ガラス(建材用ガラス)の作製−
建材用ガラスの製造:
タテ1800mm×ヨコ900mm×厚み3mmの建材用ガラス窓に粘着材付きの実施例1の熱線遮蔽材を室内側から貼り付けた。まず、粘着材側から粘着材付きの実施例1の熱線遮蔽材をガラス窓に沿わせ、フィルムがガラス窓上をスライドできている間に、貼り付けたいエリアに位置決めをした。位置が決まった後、端部の数箇所を強く押し当ててフィルムのスライドを止め、中央部から端部に向かって、スキージーを使って貼り付け実施例1の遮熱ガラスを得た。
【0109】
[実施例2]
まず、非自己粘着性かつ非再剥離性の(すなわち、通常の)アクリル粘着材を両面に有する両面テープ(パナック(株)製、PD−S1(商品名))を、実施例1で製造した金属粒子含有層の表面にAg六角平板粒子が固定されたPETフィルムのAg六角平板粒子が固定されている側の面と直接貼合せた。
次に、上記の両面テープPD−S1の反対側に、再剥離接着層付きの基材である市販の再剥離接着フィルムの基材を貼り合わせた。この再剥離接着フィルムは、パナック(株)社製の(品名)ゲルポリマーシートであった。基材は厚さ50μmのPETフィルムで、再剥離接着層は、そのPETフィルムの表面(金属粒子含有層と接着しない側の面)のほぼ全面に密着していた。再剥離接着層は、α−オレフィンとスチレンとの共重合体を含有する、厚さ38μmのオレフィンゲル層であった。
さらに、上記にて得られた剥離接着フィルムの再剥離接着層に、実施例1で用いた剥離層であるシリコーン処理PETと貼り合わせて、実施例2の熱線遮蔽材を得た。
実施例2の熱線遮蔽材の構成は、剥離層(シリコーン処理PET)/再剥離接着層(粘着層)/基材(PETフィルム)/PD−S1/金属粒子含有層/基材PETフィルムの順であった。
その後、得られた実施例2の熱線遮蔽材を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の遮熱ガラスを製造した。
【0110】
[実施例3]
スターラーと、温度計と、凝縮器と、添加漏斗と、サーモウォッチとを具備した500mlの4口反応容器に、84.0グラムのIOA(イソオクチルアクリレート)と、75グラムのODA(オクタデシルアクリレート、酢酸エチル中固形分48%)と、121グラムの酢酸エチルと、0.92グラムのABP(4−アクリロイル−オキシベンゾフェノン、酢酸エチル中固形分26%)とを装填した。0.36グラムのVAZO(商品名)64(DuPont社より市販されている2,2‘‘−アゾビス(イソブチロニトリル))を20グラムの酢酸エチル中に含む溶液を添加漏斗に加えた。次いで、反応容器中の溶液と添加漏斗中の物質との両方をアルゴン(または窒素)でパージした。その後、反応容器中の溶液を55℃に加熱して開始剤を添加した。約20時間後、98〜99%の転化率が得られた。次いで、その混合物を実施例1で製造した金属粒子含有層の表面にAg六角平板粒子が固定されたPETフィルムのAg六角平板粒子が固定されている側の面へ塗布した。オーブン乾燥後のコーティング厚が0.5〜1.0ミル(すなわち、12.5〜25μm)の接着剤溶液が得られた。そのコーティングをUV光(30ワット/2.5cmの中圧水銀灯を具備したPPG UV処理機)の下を25メートル/分で3回通過させ、実施例3の熱線遮蔽材を得た。実施例3の熱線遮蔽材の構成は、粘着材塗布層/金属粒子含有層/基材PETフィルムの順であった。
その後、得られた実施例3の熱線遮蔽材を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の遮熱ガラスを製造した。
【0111】
[実施例4]
実施例1において、表面にAg六角平板粒子が固定されたPETフィルムのAg六角平板粒子が固定されている面ではなく、反対側表面であるPETフィルム面上に前記第1接着層材料を形成した以外は実施例1と同様にして、実施例4の熱線遮蔽材を得た。実施例4の熱線遮蔽材の構成は、剥離層(シリコーン処理PET)/粘着層(ゲル塗布した第2接着層/第1接着層の積層体)/基材PETフィルム/金属粒子含有層の順であった。
その後、得られた実施例4の熱線遮蔽材を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の遮熱ガラスを製造した。
【0112】
[比較例1]
非自己粘着性かつ非再剥離性の(すなわち、通常の)両面テープを実施例1で製造した金属粒子含有層の表面にAg六角平板粒子が固定されたPETフィルムのAg六角平板粒子が固定されている側の面と直接貼合して、比較例1の熱線遮蔽材を得た。用いた両面テープは、パナック製PD−S1(商品名)であった。
その後、得られた比較例1の熱線遮蔽材を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の遮熱ガラスを製造した。
【0113】
<<熱線遮蔽材・遮熱ガラスの評価>>
得られた各実施例および比較例の熱線遮蔽材および遮熱ガラスについて、以下のようにして諸特性を評価した。各評価の結果を下記表2に示す。
【0114】
−銀平板粒子の含有量の測定−
前記銀平板粒子の熱線遮蔽層における含有量は、熱線遮蔽層(塗布膜)の一定面積における銀平板粒子をメタノールに溶出させ、蛍光X線測定により銀平板粒子の質量を測定し、該質量を前記一定面積で除することにより算出した。
【0115】
−面積率−
得られた熱線遮蔽材について、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得たSEM画像を2値化し、熱線遮蔽材を上から見た時の基材の面積A(熱線遮蔽材に対して垂直方向から見たときの前記熱線遮蔽材の全投影面積A)に対する銀平板粒子の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕を求めた。
【0116】
−粒子傾き角−
エポキシ樹脂で熱線遮蔽材を包埋処理した後、液体窒素で凍結した状態で剃刀で割断し、熱線遮蔽材の垂直方向断面試料を作製した。この垂直方向断面試料を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、100個の金属平板粒子について、基板の水平面に対する傾角(図5Aにおいて±θに相当)を平均値として算出した。
○:傾角が±30°以下。
×:傾角が±30°を超える。
【0117】
−金属平板粒子の露出−
SEMにて熱線遮蔽材の金属粒子含有層のPETフィルムとは反対側の表面の状態を測定した。
○:金属粒子含有層の一方の表面に露出している金属平板粒子が60個数%以上。
×:金属粒子含有層の一方の表面に露出している金属平板粒子が60個数%未満。
金属平板粒子が金属粒子含有層の表面に露出しているとは、金属平板粒子の一方の表面の60面積%以上が金属粒子含有層の表面と同じ位置または突出していることを意味する。
【0118】
−可視光線透過率・初期近赤外反射率−
可視光線透過率は、各遮熱ガラスサンプルをJIS−R3106:1998「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射取得率の試験方法」に記載の方法で測定した値であり、380nmから780nmまで測定した各波長の透過率を、各波長の分光視感度により補正した値の平均値である。初期近赤外反射率は、各サンプルを780nmから2,000nmまで測定した各波長の反射率の平均値である。
【0119】
−遮熱性能耐光性−
耐光性は、各遮熱ガラスサンプルに一定の耐光性テストを課したときに、テスト後の近赤外透過率に対する初期近赤外透過率の割合を百分率で表した値をもって遮蔽性能の耐光性の値とした。良好とすべきラインは90%以上とした。一定の耐光性テストとは、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機製、キセノンランプ照射)にて180W/m、63℃、相対湿度30%、1,000時間、暴露するテストである。
【0120】
−電波透過性−
ガラスに貼り合わせ前の熱線遮蔽材(遮熱フィルムの状態)について東京都立産業技術センターにてKEC法を用いて測定した。シールド効果5dB以下が電波透過性ありと判断した。
【0121】
−ヘイズの測定−
ヘイズメーター(NDH−5000、日本電色工業株式会社製)を用いて、前記の通りに得た遮熱ガラスのヘイズ(%)を測定した。
【0122】
(剥離強度)
剥離強度は、熱線遮蔽材の粘着層を試験用ガラス支持体から特別な角度及び剥離速度で剥離する際に要する力である。この力を1センチメートル(cm)幅の被覆シート当たりのニュートンで表示する。手順は以下のとおりである。
各実施例および比較例で得られた粘着層付きの熱線遮蔽材の幅0.127dm(デシメートル)のストリップを、少なくとも1.27線dm(lineal dm)の試験用ガラス支持体の水平面にしっかりと接触させる。2kgの硬質ゴムローラーを各方向で3回通過させてストリップを適用する。試験用ガラス支持体と試験用ストリップとの間に空気泡が捕捉された場合には、その試料は廃棄する。被覆ストリップの自由端を二つ折りにし、剥離角度が約180°になるようにする。その自由端を引張試験機スケールに取り付ける。各実施例および比較例で得られた粘着層付きの熱線遮蔽材を、2.3メートル/分の一定速度でスケールから熱線遮蔽材取り去ることができる引張試験機のジョーに締結する。ロールダウン後の保持時間を30秒とする。テープをガラス面から剥離する際のスケールの読みをニュートンで記録する。
好ましい剥離強度の範囲は0.1〜3.0N/cmである。また、剥離強度が3.0N/cmを越える粘着材は再剥離が困難であり、非再剥離性の粘着材である。
【0123】
−遮熱耐久性−
作製した各熱線遮蔽材について、350nm〜2,100nmまで測定した各波長の透過率から、JIS5759記載の方法に基づき、日射反射率を求めた。これをフレッシュ時の遮蔽係数S0とした。その後、昼夜寒暖差のシミュレーション実験を行う。ガラスに貼り付けた状態で、30℃3時間、5℃3時間(温度パターン移行時間は30分)の寒暖サイクルを100サイクル行い、その後の遮蔽係数をS100とした。
得られた遮熱係数から、遮熱耐久性を(S0/S100)×100 〔%〕で計算した。
【0124】
(抗菌性)
各実施例および比較例で得られた粘着層付きの熱線遮蔽材を用いて、それぞれ4cm四方のサンプルを大腸菌液の入ったフラスコに接触させた後、27℃で3時間保存後の生殖菌数を測定した。減菌率(%)は、減菌率(%)=〔(X−Y)/X〕×100であらわされる。ここにXは初発菌数、Yは3時間後の菌の数をあらわす。
測定した結果に基づいて、以下の基準にしたがって抗菌性を評価した。
○:滅菌率が99%以下である。
×:滅菌率が99%未満である。
【0125】
【表2−1】
【0126】
【表2−2】
【0127】
【表2−3】
【0128】
上記表2より、本発明の熱線遮蔽材は、遮熱性能(日照反射率)が高く、ガラスに貼り合わせた場合の遮熱耐久性に優れ、粘着層の再剥離性および剥離強度も良好であることがわかった。実施例1は、ゲルを塗布液調合しAgND面に塗工したものであり、再剥離性が良好であり、せん断応力が掛からないために遮熱耐久性も良好であったと考えられた。実施例2は市販のゲルポリマーシートをAgND面に貼合したものであり、再剥離性が良好であり、せん断応力が掛からないために遮熱耐久性も良好であったと考えられた。実施例3は従来の粘着材において再剥離性を改良した処方であり、剥離強度はゲルポリマーには劣るが許容範囲であり、遮熱耐久性も91%でありゲルポリマーには劣るが許容範囲であった。実施例4は、実施例1においてAgNDを室内側にすることにより、実施例1よりもさらに抗菌性が優れるものであった。
一方、比較例1は従来型の粘着材を使用したものであり、再剥離性も悪く、遮熱性能も耐久性が無いことがわかった。金属平板粒子を表面偏在させるための機構は十分に解明されていないが、塗布乾燥時に液面上に金属粒子を浮かせることが必須であり、乾燥時に変化するであろう表面張力のバランスが取れていることが重要と考えている。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の熱線遮蔽材は、遮熱性能(日照反射率)が高く、ガラスに貼り合わせた場合の遮熱耐久性に優れ、粘着層の再剥離性および剥離強度も良好であるので、例えば自動車、バス等の乗り物用ガラス、建材用ガラスなど、熱線の透過を防止することの求められる種々の部材として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0130】
1 基材
2 金属粒子含有層
3 金属平板粒子
10 熱線遮蔽材
11 粘着層
20 ガラス
D 直径
L 厚み
F(λ) 粒子存在域厚み
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層と粘着層とを有し、
前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向し、
前記粘着層が自己粘着性と再剥離性を有することを特徴とする熱線遮蔽材。
【請求項2】
前記粘着層がカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽材。
【請求項3】
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が、前記金属粒子含有層の一方の表面に露出していることを特徴とする請求項1または2に記載の熱線遮蔽材。
【請求項4】
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が表面に露出している方の前記金属粒子含有層の表面が、前記粘着層と反対側の最表面であることを特徴とする請求項3に記載の熱線遮蔽材。
【請求項5】
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が表面に露出している方の前記金属粒子含有層の表面とは反対側の表面と、前記粘着層との間に、基材を有することを特徴とする請求項3または4に記載の熱線遮蔽材。
【請求項6】
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の平均粒子径が70nm〜500nmであり、
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子のアスペクト比(平均粒子径/平均粒子厚み)が8〜40であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項7】
金属平板粒子が、少なくとも銀を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項8】
赤外光を反射することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材の前記粘着層上に、ガラスが貼り付けられたことを特徴とする遮熱ガラス。
【請求項10】
請求項9に記載の遮熱ガラスを含むことを特徴とする建材用ガラス。
【請求項1】
少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層と粘着層とを有し、
前記金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向し、
前記粘着層が自己粘着性と再剥離性を有することを特徴とする熱線遮蔽材。
【請求項2】
前記粘着層がカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽材。
【請求項3】
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が、前記金属粒子含有層の一方の表面に露出していることを特徴とする請求項1または2に記載の熱線遮蔽材。
【請求項4】
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が表面に露出している方の前記金属粒子含有層の表面が、前記粘着層と反対側の最表面であることを特徴とする請求項3に記載の熱線遮蔽材。
【請求項5】
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の60個数%以上が表面に露出している方の前記金属粒子含有層の表面とは反対側の表面と、前記粘着層との間に、基材を有することを特徴とする請求項3または4に記載の熱線遮蔽材。
【請求項6】
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の平均粒子径が70nm〜500nmであり、
前記六角形状乃至円形状の平板状金属粒子のアスペクト比(平均粒子径/平均粒子厚み)が8〜40であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項7】
金属平板粒子が、少なくとも銀を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項8】
赤外光を反射することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱線遮蔽材の前記粘着層上に、ガラスが貼り付けられたことを特徴とする遮熱ガラス。
【請求項10】
請求項9に記載の遮熱ガラスを含むことを特徴とする建材用ガラス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【公開番号】特開2013−80221(P2013−80221A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−206995(P2012−206995)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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