説明

熱膨張した微小球、その製造方法、熱膨張性微小球および用途

熱膨張した微小球の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球を含む気体流体を、出口に分散ノズルを備え且つ熱風流の内側に設置された気体導入管に流し、前記分散ノズルから噴射させる工程と、前記気体流体を前記分散ノズルの下部に設置された衝突板に衝突させ、熱膨張性微小球を前記熱風気流中に分散させる工程と、分散した熱膨張性微小球を前記熱風気流中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる工程とを含む製造方法である。この製造方法では、熱膨張前後での粒度分布の変動係数の変化が小さく、原料やわずかに膨張した微小球の量が少なく、凝集微小球の生成が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張した微小球、その製造方法、熱膨張性微小球および用途に関する。さらに詳しくは、本発明は、熱膨張前後において粒度分布の変動係数の変化が少なく、凝集微小球や真比重の大きな微小球(所望の熱膨張ができなかった微小球)の含有率が極めて低い熱膨張した微小球およびその製造方法と、凝集微小球や真比重の大きな微小球の含有率が極めて低く、外力で破損しにくく、軽量化を目的とした中空体組成物の成形時に硬化収縮を防止でき、経時的な熱ヘタリの問題を解消できる熱膨張性微小球と、これらの微小球の用途に関する。
【0002】
本発明において、特定の含弗素化合物を内包する熱膨張性微小球および熱膨張した微小球は、タイヤとリムとの組立体の空洞部分に充填されて、タイヤ受傷時に優れた受傷部封止材、タイヤ内圧付与材として使用される。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性樹脂を外殻とし、その内部に発泡剤が封入された構造を有する熱膨張性微小球は、一般に熱膨張性マイクロカプセルと呼ばれている。熱可塑性樹脂としては、通常、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、アクリル系共重合体等が用いられている。また、発泡剤としてはイソブタンやイソペンタン等の炭化水素が主に使用されている(特許文献1参照)。
【0004】
このような熱膨張性マイクロカプセルを加熱膨張させることによって、軽量な中空微粒子(熱膨張した微小球)が得られる。熱膨張性マイクロカプセルを膨張させる方法として、熱膨張性マイクロカプセルの分散液を加熱空気中に噴霧して膨張と乾燥を同時に行う方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、使用した分散機の先端に凝集体が生成する可能性が高く問題がある。
また、発泡剤を含浸させて得られる熱膨張マイクロカプセルを電気式熱風発生機による熱風で膨張させて、中空微粒子を得る方法が提案されている(特許文献3参照)。その比較例3に記載されているように、発泡剤を内包した熱膨張マイクロカプセルに対してこの方法を適用した場合、各熱膨張性微小球の装置内における滞留時間を制御できないため、得られる中空微粒子の発泡倍率が低く、収縮しており、好ましい物性は全く得られてない。
【0005】
さらに、乾燥された熱膨張性微小球をベルトコンベア上において膨張温度より高い温度に加熱することにより膨張した中空微粒子を作製し、気流によりベルト上から移送される方法が提案されている(特許文献4参照)。この方法では、気流移送時に膨張した中空微粒子とともに未膨張の熱膨張性微小球も混入することにより得られた中空微粒子の粒度分布における変動係数の悪化及び真比重のばらつきによる不均一な製品の発生の可能性があり問題がある。
【0006】
熱膨張性マイクロカプセルを膨張させる場合、一般的には、原料である熱膨張性マイクロカプセルの残存量を低くし、できるだけ凝集微小球の生成を抑制することが望まれる。このような要望を満たすためには、どの熱膨張性マイクロカプセルに対しても同じ熱履歴を与えて膨張させることが重要であると考えられている。
例えば、熱膨張性マイクロカプセルを水性スラリー中で膨張させ、この膨張した粒子を含むスラリー液を砥石の間隙を通過させて凝集微小球を分散させる方法が提案されている(特許文献5参照)。この方法は、全ての熱膨張性マイクロカプセルに等しく同じ熱履歴を与えることができる方法ではあるが、水性スラリーとして用いる場合はともかく、これをプラスチック、塗料、ゴム、シーラント等に配合するため乾燥を必要とする場合には、乾燥工程での融着がやはり問題となる。
【0007】
また、熱膨張性微小球をスラリー状に分散した後に加熱膨張することにより中空微粒子を作成する方法が開示されている(特許文献6参照)。この方法も、全ての熱膨張性微小球に等しく同じ熱履歴を与えることができる方法ではある。しかし、乾燥された中空微小球を得るためには、膨張された熱膨張性微小球の含まれるスラリーを脱液した後、乾燥する必要があり生産効率が悪く、特に外殻重合体の軟化温度の低い熱膨張性微小球より得られた中空微粒子は乾燥工程での凝集体発生の可能性があり問題である。
【0008】
さらに、粒度分布のシャープな熱膨張性微小球およびその製造方法が提案されている(特許文献7参照)。そして、この製造方法で得られた熱膨張性微小球を膨張させると、具体的な発泡方法は明らかではないが、発泡がシャープであり、かつ均一な形状と大きさの熱膨張した微小球が得られると記載されている。しかし、熱膨張性微小球がいくら均一な粒度分布を有していても、従来公知の発泡方法で膨張させるのであるならば、粒度分布が均一で凝集微小球のない膨張した微小球は得られないことは、当業者にとって周知である。
【0009】
以上で明らかなように、膨張方法が乾式または湿式のいずれにおいても、原料の残存量を低くし、凝集微小球の生成をできるだけ抑制することが要望されているものの、現状では達成されていない。
【0010】
また、中空微粒子は、上述のように軽量化を目的にして、中空体成形品に配合される。中空体成形品は、通常、基材成分、フィラーおよび中空微粒子を混練して中空体組成物を作製し、この中空体組成物を所望の形状に成形して製造される。上記混練時には、大きな外力が中空微粒子にかかることが多く、中空微粒子が一部破損することによって、当初予定した軽量化ができないという問題がある。また、上記中空体組成物を成形する場合、加熱加圧によって中空微粒子の外殻を構成する熱可塑性樹脂が軟化し、中空微粒子に外圧がかかる。この外圧に対して、中空微粒子に内包された発泡剤の蒸気に基づく内圧が抗しきれなくなるため、成形時に中空微粒子が若干収縮する現象がみられる。その結果、中空体成形品全体も収縮し、寸法安定性が低く、当初期待した軽量化が図れないという硬化収縮の問題が発生する。
【0011】
このような問題を解決するために、熱膨張性微小球と中空微粒子とを併用した中空体組成物が提案されている(特許文献8参照)。これにより、硬化収縮は解決されるが、2種類の粒子(熱膨張性微小球および中空微粒子)を準備する必要があり、煩雑であるという若干の問題がある。さらに、中空体成形品は常温で使用される場合はさほどではないが、高温下で使用される場合は、徐々に中空体成形品の体積が減少するという、経時的な熱ヘタリの問題がある。これは、中空微粒子に内包された発泡剤が経時的に漏洩するためと考えられる。
【0012】
この問題を解決するために、外殻を構成する熱可塑性樹脂として、アクリロニトリル系共重合体等のガス透過性の低い熱可塑性樹脂が使用されるが、これだけでは十分には問題が解決されていないのが実状である。
【0013】
熱膨張性マイクロカプセルを加熱膨張させて得られる軽量な中空微粒子は、従来から、上述した樹脂やセラミック製品等の軽量化材や、感熱紙や塗料等の断熱材、不織布等の嵩高材、自動車の外装等の衝撃吸収材、壁紙に凹凸感を付与する表面改質材等に使用されている。近年、本発明者らは、特定の含弗素化合物を発泡剤として含有した新規な熱膨張性マイクロカプセルを開発し、これを熱膨張させた中空微粒子を新たな用途である圧力容器の体積保持材として利用することを見出した(特許文献9参照)。
【0014】
【特許文献1】米国特許第3615972号
【特許文献2】日本国特公昭59−53290号
【特許文献3】日本国特開平8−217905号
【特許文献4】日本国特公平8−29245号
【特許文献5】日本国特開昭62−201231号
【特許文献6】日本国特許第2927933号
【特許文献7】WO99/37706号
【特許文献8】日本国特許第3067932号
【特許文献9】WO2004/074396号
【発明の開示】
【0015】
本発明の目的は、熱膨張前後において粒度分布の変動係数の変化が少なく、凝集微小球や真比重の大きな微小球の含有率の極めて低い、熱膨張した微小球と、その製造方法とを提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、凝集微小球や真比重の大きな微小球の含有率の極めて低く、外力で破損しにくく、軽量化を目的とした中空体組成物に配合した場合、成形時の硬化収縮を防止でき、得られた中空体成形品における経時的な熱ヘタリの問題を解消できる、熱膨張した微小球および熱膨張性微小球を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、十分な軽量化が図れ、成形時の硬化収縮を防止でき、経時的な熱ヘタリの問題が発生することがなく、寸法安定性が高い中空体成形品を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、タイヤとリムの組立体内部に充填されてタイヤ受傷部封止材、タイヤ内圧付与材として使用される場合に優れた物性を発揮できる熱膨張性微小球および熱膨張した微小球、その熱膨張した微小球の製造方法、その熱膨張した微小球の原料である熱膨張性微小球を提供することである。
【0019】
上記問題点を解決するために、本発明者らが種々検討した結果、以下の(1)〜(4)に示した知見を得た。
(1)乾式で分散状態の良好な特定方法で熱膨張性微小球を熱膨張させて熱膨張した微小球を製造する場合に、熱膨張前後での粒度分布の変動係数の変化を小さくし、原料やわずかに膨張した微小球の量を低くし、凝集微小球の生成を抑制できる。
(2)上記(1)の製造方法において、膨張条件を制御することによって、ほぼ完全に熱膨張した微小球を製造でき、所望の再膨張できる余力を有する熱膨張した微小球(すなわち、再膨張開始温度を有する熱膨張した微小球)も製造できる。
(3)上記(2)で得られた再膨張できる余力を有する熱膨張した微小球は、これまでにない物性を有した新規な熱膨張性微小球でもある。
(4)上記(2)の所望の再膨張できる余力を有する熱膨張した微小球および/または上記(3)の熱膨張性微小球を配合した中空体組成物では、微小球の外殻厚みが比較的厚く、外力で破損しにくい特性を有する。また、これらの微小球が適度な熱膨張性等の特性を有するために、成形時の硬化収縮を防止でき、高温下であっても経時的な熱ヘタリが発生せず、その寸法安定性が高い。
【0020】
また、特定の含弗素化合物を発泡剤として含む熱膨張性微小球及び熱膨張した微小球は、以下に示す(5)〜(8)に示した知見を得た。
【0021】
(5)難燃性という点からは含弗素化合物が好まれる。また、タイヤとリムとの組立体に充填することにより、タイヤ受傷時にも走行可能なタイヤに応用することを検討した場合、上記特定方法で熱膨張性微小球を熱膨張させて得られる熱膨張した微小球では、タイヤ受傷後のタイヤ内圧低下時も走行可能である。
(6)タイヤ受傷時にタイヤ内圧低下した際にも走行可能なタイヤとリムとの組立体において、熱膨張性微小球を上記特定方法でほぼ完全に膨張させて得られる熱膨張した微小球と同様に、熱膨張性微小球の膨張の程度を加減して得られる、再膨張できる余力を有する熱膨張した微小球も用いることができる。特に、この再膨張できる余力を有する熱膨張した微小球では、所望の高温になって初めて再膨張する物性を有することが望ましい。最近は特に、高温環境下においても通常走行が可能であることが求められている。また、タイヤが受傷し、タイヤ内圧が低下した場合に、速やかに再膨張し走行可能なタイヤ内圧を付与する物性を有することも望ましい。
【0022】
(7)再膨張できる余力を有する熱膨張した微小球を構成する熱可塑性樹脂が、ニトリル系単量体とカルボキシル基含有単量体とを必須成分として含む単量体混合物を重合して得られる場合に、所望の高温で再膨張し始めることができる。
(8)再膨張できる余力を有する熱膨張した微小球が、その外殻の外表面に特定の熱融着防止剤が付着している場合に、タイヤ受傷時に、速やかにタイヤ受傷部を封止し、高いタイヤ内圧付与機能を示す。
【0023】
これらの(1)〜(8)の知見から、以下に詳説する本発明に到達した。
すなわち、本発明にかかる第1の熱膨張した微小球の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球を含む気体流体を、出口に分散ノズルを備え且つ熱風流の内側に設置された気体導入管に流し、前記分散ノズルから噴射させる工程と、前記気体流体を前記分散ノズルの下部に設置された衝突板に衝突させ、熱膨張性微小球を前記熱風気流中に分散させる工程と、分散した熱膨張性微小球を前記熱風気流中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる工程とを含む。
【0024】
本発明にかかる第2の熱膨張した微小球の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球を含む気体流体を、熱風流の外部に設置された少なくとも1つの分散ノズルから噴射させ、熱膨張性微小球を前記熱風流中に分散させる工程と、分散した熱膨張性微小球を前記熱風流中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる工程とを含む。
【0025】
本発明にかかる熱膨張した微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球を、膨張開始温度以上に加熱して膨張させる製造方法で得られる熱膨張した微小球であって、凝集微小球の含有率が5重量%以下であり且つ25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球の含有率が5重量%以下である。
【0026】
本発明にかかる熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、平均粒子径が1〜1000μmの範囲にあり、最大膨張温度における膨張倍率が100%超であり、凝集微小球の含有率が5重量%以下であり、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球の含有率が5重量%以下である。
【0027】
本発明にかかる中空体組成物は、基材成分と、前述の熱膨張した微小球および/または熱膨張性微小球とを含む。
本発明にかかる中空体成形品は、この中空体組成物を成形してなる。
【0028】
本発明にかかる別の熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球であって、前記発泡剤が、エーテル構造を有し、塩素原子および臭素原子を含まない、炭素数2〜10の含弗素化合物を含み、前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体とカルボキシル基含有単量体とを必須成分として含む単量体混合物を重合して得られ、前記ニトリル系単量体の重量割合が前記単量体混合物に対して20〜80重量%であり、前記カルボキシル基含有単量体の重量割合が80〜20重量%である。
【0029】
本発明にかかるさらに別の熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤と、前記外殻の外表面に付着した熱融着防止剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球であって、前記発泡剤が、エーテル構造を有し、塩素原子および臭素原子を含まない、炭素数2〜10の含弗素化合物を含み、前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体とカルボキシル基含有単量体とを必須成分として含む単量体混合物を重合して得られ、前記ニトリル系単量体の重量割合が前記単量体混合物に対して20〜80重量%であり、前記カルボキシル基含有単量体の重量割合が80〜20重量%であり、前記熱融着防止剤が融点90℃以上の有機化合物および層状構造を有する無機化合物から選ばれた少なくとも1種である。
【0030】
本発明にかかるさらに別の熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤と、前記外殻の外表面に付着した熱融着防止剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球であって、前記発泡剤が、エーテル構造を有し、塩素原子および臭素原子を含まない、炭素数2〜10の含弗素化合物を含み、前記熱融着防止剤が融点90℃以上の有機化合物および層状構造を有する無機化合物から選ばれた少なくとも1種である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の製造方法で用いる製造装置の発泡工程部の概略図である。
【図2】本発明の別の製造方法で用いる製造装置の発泡工程部の概略図である。
【符号の説明】
【0032】
1、11 熱風ノズル
2 冷媒流
3 過熱防止筒
4、12 分散ノズル
5 衝突板
6、14 熱膨張性微小球を含む気体流体
7 気体流
8、13 熱風流
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
A.熱膨張した微小球の製造方法
a.出発原料として用いられる熱膨張性微小球
本発明にかかる熱膨張した微小球の第1および第2の製造方法において、出発原料として用いられる熱膨張性微小球(以下「原料微小球」と記載することがある)は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmであるものであれば、特に限定はない。
【0034】
発泡剤は、熱可塑性樹脂からなる外殻に内包され、熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質であれば特に限定はない。たとえば、炭素数1〜12の炭化水素及びそれらのハロゲン化物;含弗素化合物;テトラアルキルシラン;アゾジカルボンアミド等の加熱により熱分解してガスを生成する化合物等を挙げることができる。これらの発泡剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0035】
炭素数1〜12の炭化水素としては、たとえば、プロパン、シクロプロパン、プロピレン、ブタン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、シクロペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロオクタン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、石油エーテル等の炭化水素が挙げられる。これらの炭化水素は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。
炭素数1〜12の炭化水素のハロゲン化物としては、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。これらのハロゲン化物は、上述した炭化水素のハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等)であることが好ましい。
【0036】
含弗素化合物としては、特に限定されず、たとえば、エーテル構造を有し、塩素原子および臭素原子を含まず、炭素数2〜10の化合物が好ましい。具体的には、C327OCF2H、C3HF6OCH3、C2HF4OC223、C223OC223、C4HF8OCH3、C325OC232、C3HF6OC223、C334OCHF2、C3HF6OC325、C436OCHF2、C334OC2HF4、C3HF6OC334、C37OCH3、C49OCH3、C49OC25、C715OC25等のハイドロフルオロエーテルが挙げられる。ハイドロフルオロエーテルの(フルオロ)アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0037】
テトラアルキルシランとしては、例えば、同一又は異なって、炭素数1〜5のアルキル基を有する化合物が挙げられる。具体的には、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル−n−プロピルシラン等のテトラアルキルシランが挙げられる。
加熱により熱分解してガスを生成する化合物としては、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等が挙げられる。
【0038】
発泡剤として含弗素化合物を使用する場合は、その全量が含弗素化合物で構成されていてもよいが、含弗素化合物とともに、後述する熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する、含弗素化合物以外の化合物を併用してもよい。このような化合物については、特に限定されるものではなく、例えば、上述した発泡剤として例示したものの中から選択して用いることができる。含弗素化合物以外の化合物は、原料微小球の熱膨張温度域に応じて、適宜選択することができる。発泡剤として含弗素化合物を使用する場合は、含弗素化合物の重量割合が、発泡剤全体の50重量%超であることが好ましく、80重量%超であることがさらに好ましく、95重量%超であることが特に好ましい。発泡剤における含弗素化合物の重量割合が高いほど、含弗素化合物の物性が原料微小球に反映され、原料微小球に対して難燃性や不燃性等の物性を付与することができる。
【0039】
原料微小球は、たとえば、ラジカル重合性単量体を含む単量体混合物を重合して得られる熱可塑性樹脂から構成され、単量体混合物に重合開始剤を適宜配合することにより、原料微小球の外殻を形成することができる。
ラジカル重合性単量体としては、特に限定はないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有単量体;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド等のマレイミド系単量体等を挙げることができる。これらのラジカル重合性単量体は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0040】
特に、発泡剤が含弗素化合物を含む場合、単量体混合物が、ニトリル系単量体を必須成分として含む単量体混合物であると、耐熱性を付与できるため、好ましい。ニトリル系単量体の重量割合は、単量体混合物に対して、耐熱性を考慮すると、好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上である。
【0041】
また、単量体混合物が、ニトリル系単量体とともにカルボキシル基含有単量体を必須成分として含む単量体混合物であると、耐熱性を付与できるとともに、後述するように、原料微小球を膨張させることによって得られる熱膨張した微小球について、再膨張できる余力を有するように製造することができ、かつ90℃以上(好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上)の温度で、再膨張を開始させるように設定することができるため、さらに好ましい。ニトリル系単量体の重量割合は、内包された発泡剤の内包保持率及び発泡性、さらには熱膨張した微小球の再膨張開始温度を調節すること、後述の通常内圧高速走行性能評価等を考慮すると、単量体混合物に対して、好ましくは20〜80重量%であり、さらに好ましくは20〜60重量%であり、特に好ましくは20〜50重量%であり、最も好ましくは20〜40重量%である。また、カルボキシル基含有単量体の重量割合は、熱膨張した微小球の再膨張開始温度を調節すること、後述の通常内圧高速走行性能評価、さらには内包された発泡剤の内包保持率及び発泡性等を考慮すると、単量体混合物に対して、好ましくは20〜80重量%であり、さらに好ましくは40〜80重量%であり、特に好ましくは50〜80重量%であり、最も好ましくは60〜80重量%である。
【0042】
単量体混合物は、上記ラジカル重合性単量体以外に、重合性二重結合を2個以上有する重合性単量体(架橋剤)を含んでいてもよい。架橋剤を用いて重合させることにより、本製造方法で得られた熱膨張した微小球に含まれる凝集微小球の含有率が小さくなり、熱膨張後の内包された発泡剤の保持率(内包保持率)の低下が抑制され、効果的に熱膨張させることができる。
なお、本発明において、熱膨張後の発泡剤の内包保持率(%)は、膨張する前の原料微小球に内包された発泡剤の内包率をG1とし、熱膨張させて得られる熱膨張した微小球に内包された発泡剤の内包率をG2とすると、G2/G1×100で定義される。
【0043】
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0044】
架橋剤の重量割合については、特に限定はないが、架橋の程度、外殻に内包された発泡剤の内包保持率、耐熱性及び熱膨張性を考慮すると、単量体混合物に対して、好ましくは0.01〜5重量%であり、さらに好ましくは0.05〜3重量%である。
【0045】
重合開始剤については、特に限定はなく、公知の重合開始剤を用いることができる。たとえば、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物;2,2′−アゾビス ( 4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス (2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物等を挙げることができる。重合開始剤は、ラジカル重合性単量体に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。
【0046】
原料微小球は、従来公知の熱膨張性マイクロカプセルの製造方法で使用される種々の手法を用いて製造することができる。
すなわち、ラジカル重合性単量体、任意に架橋剤および重合開始剤含む単量体混合物を発泡剤と混合し、得られた混合物を適当な分散安定剤等を含む水系懸濁液中で懸濁重合させる方法等である。
【0047】
水系における分散安定剤としては、コロイダルシリカ、コロイダル炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、蓚酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、アルミナゾル等が挙げられる。分散安定剤は、単量体混合物に対して0.1〜20重量%の割合で使用されるのが好ましい。その他に、分散安定補助剤としてジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール等の高分子タイプの分散安定補助剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等の陽イオン界面活性剤、アルキル硫酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン等の両イオン性界面活性剤等の各種乳化剤を用いてもよい。分散安定補助剤は、単量体混合物に対して0.05〜2重量%の割合で使用されるのが好ましい。
【0048】
分散安定剤を含有する水系懸濁液は、分散安定剤及び分散安定補助剤等を水(たとえば、イオン交換水)に配合して調製する。重合時の水系懸濁液のpHは、使用する分散安定剤、分散安定補助剤の種類によって適宜決められる。また、水系懸濁液中に水溶性還元剤を添加してもよく、重合中の凝集微小球の生成が抑制される。水溶性還元剤としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等の亜硝酸アルカリ金属塩や、塩化第一スズ、塩化第二スズ、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、水溶性アスコルビン酸類等が挙げられる。これらの中でも、水中での安定性の面から亜硝酸アルカリ金属塩が好ましい。その添加量は、単量体混合物に対して好ましくは0.0001〜1重量%、さらに好ましくは0.0003〜0.1重量%である。
【0049】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは45〜90℃、特に好ましくは50〜85℃の範囲で制御される。重合初期圧力についてはゲージ圧で0〜5.0MPa、さらに好ましくは0.1〜3.0MPa、特に好ましくは0.2〜2.0MPaの範囲である。
【0050】
なお、得られた原料微小球において、発泡剤は、発泡性能が良好で、タイヤとリムとの組立体に充填し、タイヤ内圧付与材として用いる場合の十分な性能を発揮させることができるとともに、熱膨張性微小球の外殻である熱可塑性樹脂の厚みが、内包された発泡剤の内包保持率を確保することができる観点から、原料微小球全体の2〜85重量%、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは7〜50重量%となるように調整される。特に、発泡剤が含弗素化合物を含む場合、好ましくは10〜60重量%であり、さらに好ましくは15〜50重量%である。
【0051】
原料微小球の平均粒子径については、用途に応じて自由に設計することができるために特に限定されない。特に、発泡剤が含弗素化合物を含むには、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは2〜80μm、特に好ましくは5〜60μmである。
また、原料微小球の粒度分布の変動係数CVは、特に限定されないが、好ましくは30%以下、さらに好ましくは27%以下、特に好ましくは25%以下である。変動係数CVは、以下に示す計算式(1)および(2)で算出される。
【0052】
【数1】

(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、xi はi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
【0053】
原料微小球は、その外殻の外表面に微粒子充填剤を付着させて用いることが、使用時における分散性の向上及び流動性改善の観点から、好ましい。
微粒子充填剤は、有機系及び無機系充填剤のいずれでもよく、その種類及び量は、使用目的に応じて適宜選定される。
【0054】
有機系充填剤としては、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム等の金属セッケン類;ポリエチレンワックス、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、硬化ひまし油等の合成ワックス類;ポリアクリルアミド、ポリイミド、ナイロン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂粉体等が挙げられる。
【0055】
無機系充填剤としては、層状構造を有するもの、例えば、タルク、マイカ、ベントナイト、セリサイト、カーボンブラック、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、弗化黒鉛、弗化カルシウム、窒化ホウ素等;その他、シリカ、アルミナ、雲母、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、セラミックビーズ、ガラスビーズ、水晶ビーズ等が挙げられる。
これらの微粒子充填剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0056】
外殻の外表面に付着する微粒子充填剤は、上記のうち、融点90℃以上(100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは200℃以上の融点を有する)の有機化合物又は層状構造を有する無機化合物(好ましくはカーボンブラック、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、弗化黒鉛および窒化ホウ素から選ばれた少なくとも1種)、つまり、熱融着防止剤であることが好ましい。ここで、熱融着防止剤は、原料微小球および/または熱膨張した微小球の外殻樹脂の熱融着を防止し、さらに、加熱膨張時にも隣接する原料微小球および/または熱膨張した微小球との熱融着を防止し、発泡性能を損なわない働きをするものとする。これにより、例えば、後述するように、原料微小球を膨張させて得られ、再膨張できる余力を有する熱膨張した微小球を、タイヤとリムとの組立体内部に充填した場合、タイヤが受傷してタイヤ内圧が低下したとしても、速やかにタイヤ受傷部を封止し、高いタイヤ内圧付与機能を発揮させることができ、その結果、受傷したタイヤでも、必要な距離を走行させることができる。この効果は、特に、発泡剤が含弗素化合物を含む場合に顕著である。
【0057】
また、ニトリル系単量体とカルボキシル基含有単量体とを必須成分として含む単量体混合物を重合して得られる外殻を構成する熱可塑性樹脂を用いた原料微小球の場合には、耐熱性、難燃(不燃)性において良好な性能を発揮させることができるとともに、後述するように、原料微小球を膨張させて得られ、再膨張できる余力を有する熱膨張した微小球に対して、90℃以上(好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上)の温度で再膨張開始させることができ、上記効果が顕著となる。
【0058】
微粒子充填剤の平均粒子径は、付着前の原料微小球の平均粒子径の1/10以下であることが好ましい。ここで、平均粒子径とは、一次粒子における平均粒子径を意味する。
【0059】
原料微小球への微粒子充填剤の付着量は、特に限定はないが、微粒子充填剤による機能を十分に発揮でき、熱膨張性微小球の真比重の大きさ等を考慮すると、付着前の原料微小球に対して好ましくは0.1〜95重量%、さらに好ましくは0.5〜60重量%、特に好ましくは5〜50重量%、最も好ましくは8〜30重量%である。
【0060】
原料微小球の外表面への微粒子充填剤の付着は、原料微小球と微粒子充填剤とを混合することによって行うことができる。混合については、特に限定はなく、容器と攪拌バネといった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える粉体混合機を用いてもよい。粉体混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌または攪拌を行える粉体混合機を挙げることができる。また、近年、攪拌装置を組み合わせたことにより効率のよい多機能な粉体混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)及びハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)等を用いてもよい。
【0061】
なお、原料微小球は、例えば、そのままタイヤとリムとの組立体内部に充填し、原料微小球の膨張開始温度以上の温度で加熱することにより膨張させて、体積保持材として使用することができる。また、そのまま、自動車等の塗料の軽量化充填剤、壁紙や衣服装飾用の発泡インク用発泡粒子、樹脂組成物軽量化のための発泡材等の用途に使用してもよい。
【0062】
b.熱膨張した微小球の製造方法
本発明にかかる熱膨張した微小球の第1の製造方法は、上記で説明した原料微小球を含む気体流体を、出口に分散ノズルを備え且つ熱風流の内側に設置された気体導入管に流し、前記分散ノズルから噴射させる工程(噴射工程)と、前記気体流体を前記分散ノズルの下部に設置された衝突板に衝突させ、熱膨張性微小球を前記熱風気流中に分散させる工程(分散工程)と、分散した熱膨張性微小球を前記熱風気流中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる工程(膨張工程)とを含む製造方法である。
【0063】
この製造方法は、例えば、図1に示した発泡工程部を備えた製造装置を用いて行うことができる。
この発泡工程部は、出口に分散ノズル4を備え且つ中央部に配置された気体導入管(番号表記せず)と、分散ノズル4の下部に設置された衝突板5と、気体導入管の外周囲に間隔を空けて配置された過熱防止筒3と、過熱防止筒3の外周囲に間隔を空けて配置された熱風ノズル1とを備える。発泡工程部においては、気体導入管内の矢印方向に熱膨張性微小球を含む気体流体6が流されており、気体導入管と過熱防止筒3との間に形成された空間には、熱膨張性微小球の分散性を向上および気体導入管と衝突板の過熱防止のための気体流7が矢印方向に流されており、さらに、過熱防止筒3と熱風ノズル1との間に形成された空間には、熱膨張のための熱風流8が矢印方向に流されている。ここで、熱風流8と気体流体6と気体流7とは、通常、同一方向の流れであるが、必ずしも同一方向でなくてもよい。過熱防止筒3の内部には、冷却のために、冷媒流2が矢印方向に流されている。
気体導入管および/または衝突板5が過熱防止機能を備えていると、凝集微小球や熱融着体の生成抑制のため好ましい。
衝突板の形状は特に限定されないが、紡錘形、円錐形、角錐形、球形、半球形、およびこれらを組み合わせた形状等を挙げることができる。
【0064】
第1の製造方法における噴射工程では、熱膨張性微小球を含む気体流体6を、出口に分散ノズル4を備え且つ熱風流8の内側に設置された気体導入管に流し、気体流体6を前記分散ノズル4から噴射させる。気体流体6については、熱膨張性微小球を含む気体の流体であれば、特に限定はないが、熱膨張性微小球を含み、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性気体の流体であると好ましい。
また、気体流体6に含まれる水分量は、熱膨張性微小球の分散不良等を考慮すると、好ましくは30g/m3以下、さらに好ましくは9.3g/m3以下である。
気体流体6の流速については、特に限定はないが、次の分散工程において、どの熱膨張性微小球に対しても、できるだけ同じ熱履歴を受けさせて熱風気流8中で膨張できるように調整されることが好ましい。
【0065】
第1の製造方法における分散工程では、気体流体6を分散ノズル4の下部に設置された衝突板5に衝突させ、熱膨張性微小球が熱風気流8中に万遍なく分散するように操作される。ここで、分散ノズル4から出た気体流体6は、気体流7とともに衝突板5に向かって誘導され、これと衝突する。
気体流7としては、気体流体6と同様の気体を用いることができる。
【0066】
第1の製造方法における膨張工程では、分散した熱膨張性微小球を熱風気流8中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる。その後、熱膨張した微小球を冷却部分に通過させる等して、熱膨張性微小球の外殻である熱可塑性樹脂の軟化点以下の温度まで冷却し、熱膨張した微小球が回収される。
回収は、サイクロンやバグフィルター等の一般的な固気分離装置を用いることが好ましい。
【0067】
本発明にかかる熱膨張した微小球の第2の製造方法は、上記で説明した出発原料である熱膨張性微小球を含む気体流体を、出口に分散ノズルを備え且つ熱風流の外部に設置された少なくとも1つの気体導入管に流し、前記分散ノズルから噴射させ、熱膨張性微小球を前記熱風流中に分散させる工程(分散工程)と、分散した熱膨張性微小球を前記熱風流中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる工程(膨張工程)とを含む製造方法である。
【0068】
この製造方法は、例えば、図2に示した発泡工程部を備えた製造装置を用いて行うことができる。
発泡工程部は、中央に配置された熱風ノズル11と、熱風ノズル11の周辺下部に配置された少なくとも1つの分散ノズル12とを備える。発泡工程部においては、熱風ノズル11内の矢印方向に熱膨張のための熱風流13が流されており、分散ノズル12からは熱膨張性微小球を含む気体流体14が矢印方向に流されている。気体流体14は、通常、熱風流13に対して対向しないように角度をなして流される。気体流体14は、熱風流13に対してほぼ直角に流されてもよい。
【0069】
第2の製造方法における分散工程では、定量供給機等を使用して、熱膨張性微小球を含む気体流体14を熱風流13の外部に設置された少なくとも1つの分散ノズル12から噴射させ、熱膨張性微小球を前記熱風流中に分散させる。気体流体14は、上述した気体流体6と同様のものが挙げられる。また、気体流体14の水分量及び流速は、上述した気体流体6と同様とすることができる。
【0070】
第2の製造方法における膨張工程では、分散した熱膨張性微小球を熱風気流13中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる。その後は第1の製造方法と同様にして熱膨張した微小球が回収される。
【0071】
第1および第2の製造方法において、膨張工程後に得られた熱膨張した微小球を、液状有機化合物で湿潤させる工程(湿潤工程)をさらに含むと、熱膨張した微小球の発塵が防止され、この熱膨張した微小球を各種用途に用いるために混合する際に分散性が向上するため、好ましい。この液状有機化合物については、特に限定はない。例えば、得られた熱膨張した微小球の性質、使用目的に応じて適宜選定することができ、基本的には以下に示す(1)および(2)の性質を有していることが好ましい。
(1)液状有機化合物が、熱膨張した微小球に内包された発泡剤の気化温度よりも高い沸点を有すること
(2)液状有機化合物が、熱膨張した微小球の外殻である熱可塑性樹脂を溶解または膨潤しないこと
【0072】
上記に示す(1)の要件を満たすためおよび保存中の揮発を避けるためには、液状有機化合物の沸点は、好ましくは80〜270℃、さらに好ましくは90〜260℃、特に好ましくは100〜250℃である。
上記に示す(2)の要件は、本製造方法における原料として、前述の架橋剤を併用して製造された原料微小球を使用することにより、その耐溶剤性を向上させることができる。このため、液状有機化合物について、選択の自由度が著しく向上する。
【0073】
液状有機化合物の種類については特に限定はない。液状有機化合物としては、たとえば、湿潤させて得られる組成物を、プラスチック、エラストマー、シーラント、塗料等に用いる場合は、ジブチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジオクチルアジベート、トリクレジルホスフェート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、オクチルアルコール等の可塑剤;湿潤させて得られる組成物を軽量発泡成形体や接着剤用に用いる場合は、ジシクロペンタジエンやスチレン等の単量体等を挙げることができる。また、上記以外の液状有機化合物としては、たとえば、非イオン界面活性剤、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、グリセリン、シリコーンオイル、流動パラフィン、油脂類等を挙げることができる。これらの液状有機化合物は2種以上を混合して用いてもよい。また、液状有機化合物の代わりに水を用いてもよい。
【0074】
熱膨張した微小球と液状有機化合物(または水)の配合比については、特に限定はなく、熱膨張した微小球の表面性や真比重による発塵具合等を考慮して決定するのが好ましい。具体的にはその熱膨張した微小球の発塵が目立たなくなる配合比が望ましい。液状有機化合物の量が多いと、余分の液状有機化合物によって、液状有機化合物および熱膨張した微小球が部分的に不均一になる。このような観点から、たとえば、真比重0.03g/ccの熱膨張した微小球10重量部に対して液状有機化合物90重量部程度以下であることが好ましい。一方、液状有機化合物が少なくなると熱膨張した微小球の発塵が目立ち好ましくない。
【0075】
湿化工程を実施するためには、熱膨張した微小球を、液状有機化合物とともに揺動または攪拌する。動揺/攪拌は、一般的な粉体混合機、例えば、熱膨張性微小球と微粒子充填材との混合に用いることができる装置のほか、副軸ローター型混合機等を用いて行うことができる。
【0076】
湿化工程について、以下に詳しく説明するが、これに限定されない。湿化工程で用いる装置(以下、湿化装置)に所定量の熱膨張した微小球を投入し、液状有機化合物(または水)を添加する。この際、熱膨張した微小球の揺動または攪拌面0.07m2以上に対して、1つの吐出口より液状有機化合物を、(たとえば、2L/分以下で)吐出し、液状有機化合物を添加後この装置で熱膨張した微小球を均一に湿化できるまで揺動または攪拌する。吐出口は揺動または攪拌面上または内に設ける。1つの吐出口あたりの揺動または攪拌面は、吐出口より出た液状物同士の干渉のために熱膨張した微小球の揺動または攪拌による微小球の運動が低下せず、液状有機化合物が微小球に十分に接触して、全体の均一湿化ができるように設定する。また、この時の液状有機化合物の吐出量は、揺動または攪拌している微小球に十分に接触して、全体の均一湿化ができるように設定する。
【0077】
吐出口は可動式として揺動または攪拌面上または内を動くようにすれば非常に効率がよく、可動式の移動速度にもよるが、たとえば、20cm/秒の移動速度では固定式の吐出口の約5倍の吐出量での湿化が可能であり、液状物質を添加後に均一に湿化できるまで揺動または攪拌に要する時間の短縮が可能である。
【0078】
この吐出口は単に配管やホースのエンド部でもよい。またシャワー状の口やスプレー口を用いてもよい。粘度の高い液状有機化合物を吐出するためにある程度加圧して、棒状の液を吐出することにより微小球があまり廻りに飛散しない。圧力を極めて高くして噴霧するような状態にすると、揺動または攪拌している微小球を廻りに飛散させることとなり、湿化装置の密閉化や集塵装置が必要となってくる。
【0079】
熱膨張した微小球に液状有機化合物を添加した後、均一に湿化できるまで揺動または攪拌する。終点の判定は、湿化装置内の複数の部分より試料を採取し、その各試料0.5〜0.8gについて液体置換法にて真比重を測定し、その値のばらつき、たとえば標準偏差等で判定を行えばよい。
第1および第2の製造方法において、熱膨張性微小球に含まれる水分量は、加熱膨張の均一性を考慮すると、5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。
【0080】
第1および第2の製造方法において、膨張条件を制御することによって、得られる熱膨張した微小球が再膨張開始温度を有するようにも、有しないようにもすることができる。なお、本発明においては、微小球が再膨張開始温度を有するとは、一旦製造された熱膨張した微小球がなお熱膨張する性質を有しており、熱膨張した微小球を加熱すると、再び加熱膨張する現象が見られることを意味する。そして、その加熱膨張し始める温度を再膨張開始温度と称する。また、熱膨張した微小球が再膨張開始温度を有することは、最大(再)膨張温度における膨張倍率が100%超であることと同義である。一方、微小球が再膨張開始温度を有しないとは、微小球がほぼ完全に熱膨張したことを意味する。
【0081】
膨張条件の制御については、特に限定はない。たとえば、まず、原料供給量、熱風流量や原料分散気体量等のパラメーターを一定に固定し、熱風流の温度(以下、「熱風温度」ということがある。)を変化させる。次に、熱風温度を段階的に変化させ、かつ、他のパラメーターを一定に固定しながら各温度で原料微小球を膨張させ、得られた微小球の真比重を測定し、熱風温度(x軸)と真比重(y軸)の関係をプロットしたグラフを作成する。このグラフにおいて、最低真比重(グラフにおける極小値)に対応する温度領域を熱風温度に設定することによって、得られる熱膨張した微小球が再膨張開始温度を有しないように製造することができる。
また、所望の真比重を有する膨張した微小球を製造する場合は、そのグラフにおいて所望の真比重に対応する熱風温度に設定する。これにより、膨張条件の制御が行われ、所望の再膨張できる余力を有する熱膨張した微小球を製造することができる。
さらに、原料供給量および/または原料分散気体量を変化させる場合、熱風気流により供給される熱量や原料である熱膨張性微小球の全熱容量等を考慮して、熱風温度等を変化させて、膨張条件を制御する。例えば、原料供給量および原料分散気体量を増加させる場合は、熱風温度を上げる。原料供給量および原料分散気体量を減少させる場合は、熱風温度を低くする。
【0082】
第1および第2の製造方法においては、エネルギー効率が高く、温度制御が容易で、原料であるどの熱膨張性微小球に対してもほぼ同一の熱履歴を連続的に与えることができ、気流中での分散性が高い。このため、膨張前後における粒度分布の変動係数の変化が小さく、得られた熱膨張した微小球の品質(特に、粒子径分布および真比重の分布)の均一性が高い。すなわち、得られた熱膨張した微小球に含まれる凝集微小球の生成をできるだけ抑制することができ、しかも、原料やわずかに膨張した微小球の含有率を極めて小さくすることができる。
【0083】
得られた熱膨張した微小球は、例えば、タイヤとリムとの組立体内部に充填することにより、タイヤが受傷して、タイヤ内圧が低下した際に、タイヤ受傷部封止材および/またはタイヤ内圧付与材として使用することができる。
ここで、タイヤ受傷部封止材とは、タイヤが受傷し、受傷部から内部充填気体が漏洩し始めると、原料微小球または熱膨張した微小球が充填気体の流れに乗って即座に受傷部に密集し、受傷部を瞬時に封止し得るものを意味する。また、タイヤ内圧付与材とは、タイヤが受傷して、タイヤ受傷部封止材で受傷部を封止した後に、内圧低下によりタイヤが撓むことによって気体体積の減少したタイヤ内で、原料微小球または熱膨張した微小球同士が擦れあい、その摩擦によって温度が上昇した際に、原料微小球または熱膨張した微小球の膨張開始温度に達すると、原料微小球または熱膨張した微小球が膨張して、タイヤ内圧を上昇させ得るものを意味する。
【0084】
通常、車等の走行時に、その回転運動によりタイヤ内に充填された熱膨張した微小球同士またはタイヤ内壁ゴムと熱膨張した微小球との接触等により熱膨張した微小球の温度が上昇することがある。タイヤが受傷していない状態で走行中に熱膨張した微小球が膨張開始温度に達すると、熱膨張した微小球が膨張し始め、タイヤが受傷したときにタイヤ内圧付与機能が発揮されなくなるおそれがある。さらに、高速走行時には、タイヤが受傷したときのタイヤ内圧付与機能が発揮されなくなる危険性が、通常走行時よりも高くなる。
しかし、本発明の製造方法で得られる熱膨張した微小球を、タイヤ内に充填して使用する場合には、後述するように、通常内圧高速走行性能評価及び通常内圧高速走行性能評価において、良好な評価結果を得ることができる。
【0085】
B.熱膨張した微小球
本発明にかかる熱膨張した微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球を、膨張開始温度以上に加熱して膨張させる製造方法で得られる熱膨張した微小球である。ここで、原料となる熱膨張性微小球については、特に限定はないが、上記「A.熱膨張した微小球の製造方法」で説明した熱膨張性微小球が好ましい。また、熱膨張性微小球を膨張開始温度以上に加熱して膨張させる製造方法についても、特に限定はないが、上記「A.熱膨張した微小球の製造方法」で説明した製造方法であることが好ましい。
【0086】
熱膨張した微小球の平均粒子径は、特に限定はされず、用途に応じて自由に設計することができる。例えば、外殻による発泡剤の内包保持率、熱膨張した微小球の耐久性等を考慮すると、好ましくは1〜1000μm、さらに好ましくは5〜800μm、特に好ましくは10〜500μmである。
【0087】
熱膨張した微小球中に含まれる凝集微小球の含有率は、真比重の均一性等を考慮すると、5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下である。なお、凝集微小球の存在確認は、電子顕微鏡による目視観察で行い、その定量は、以下の実施例で詳しく説明するように、スクリーニングした後のスクリーニング残留量を測定して行うことができる。
【0088】
25℃において、熱膨張した微小球中に含まれる真比重0.79g/cc以上の微小球の含有率は、真比重の均一性等を考慮すると、5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。0.79g/cc以上の微小球の含有率は、イソプロピルアルコール(25℃における比重:0.79)を用いた比重差分離後の沈降成分の定量により測定される。
【0089】
また、熱膨張した微小球について、熱膨張前後における粒度分布の変動係数CVの変化は、原料として用いられる熱膨張性微小球の変動係数CVを膨張後に大きく変化させず、粒子径の均一性を保つことを考慮すると、±10%以内であることが好ましく、より好ましくは±5%以内、さらに好ましくは±3%以内、特に好ましくは±1%以内である。変動係数CVの変化は、(得られた熱膨張した微小球の粒度分布の変動係数)−(原料である熱膨張性微小球の粒度分布の変動係数)で定義される。なお、熱膨張した微小球の粒度分布の変動係数CVは、30%以下が好ましく、さらに好ましくは27%以下、特に好ましくは25%以下である。
【0090】
本発明の熱膨張した微小球は、凝集微小球の含有率および真比重の大きな微小球の含有率が極めて小さい。また、熱膨張によって製造される前後での粒度分布の変動係数の変化が小さい。
【0091】
本発明の熱膨張した微小球は、再膨張開始温度を有していなくてもよいし、有していてもよい。
特に、熱膨張した微小球が再膨張開始温度を有する場合は、外殻を構成する熱可塑性樹脂の厚みが比較的厚くて外力で破損しにくい。よって、例えば、熱膨張した微小球を含む中空体組成物を得る場合、基材への混合時における微小球のつぶれを抑制できる。また、熱膨張した微小球を含む中空体成形品において、経時的な熱ヘタリ及び硬化収縮等を防止することができる。なお、熱膨張した微小球が再膨張開始温度を有する場合は、後述する熱膨張性微小球Aが示す物性を有していることが好ましい。
【0092】
本発明の熱膨張した微小球において、膨張前の熱膨張性微小球からの体積膨張倍率については、特に限定はないが、好ましくは8倍以上、さらに好ましくは15倍以上、最も好ましくは30倍以上である。また、熱膨張した微小球の真比重についても、特に限定はないが、好ましくは0.30g/cc以下、さらに好ましくは0.25g/cc以下、最も好ましくは0.20g/cc以下である。なお、本明細書おいて、熱膨張した微小球の「真比重」とは、その「平均真比重」を意味する。
【0093】
また、本発明の熱膨張した微小球において、発泡剤の内包保持率については、特に限定されないが、発泡剤が外殻から漏れ出る量、性能の均一性、経時安定性等を考慮すると、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上となるようにする。
発泡剤として含弗素化合物を使用する場合は、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上となるようにする。
【0094】
本発明の熱膨張した微小球が外殻を溶解させない液状有機化合物で湿潤させた状態にあると、熱膨張した微小球の発塵が防止され、この熱膨張した微小球を各種用途に用いるために混合する際に分散性が向上するため、好ましい。液状有機化合物の種類および配合量等については、「A.熱膨張した微小球の製造方法」に記載されたものと同様とすることができる。
【0095】
特に、熱膨張した微小球に内包された発泡剤は、「A.熱膨張した微小球の製造方法」において詳述したように、エーテル構造を有し、塩素原子および臭素原子を含まない、炭素数2〜10の含弗素化合物を含むものが好ましい。これにより、得られた熱膨張した微小球を、タイヤとリムとの組立体内部に充填した場合に、タイヤが受傷してタイヤ内圧が低下しても、非常に良好なタイヤ受傷部封止機能、タイヤ内圧付与機能を発揮させることができる。また、通常内圧走行性能評価及び通常内圧高速走行性能評価の双方において、良好な評価結果を得ることができる。しかも、熱膨張した微小球に再膨張開始温度を設定する場合に、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上とすることができ、タイヤ受傷部封止材および/またはタイヤ内圧付与材として使用する場合に、タイヤ使用環境に制限されることなく用いることができる。
【0096】
本発明の熱膨張した微小球は、特に限定はないが、たとえば、パテ、塗料、シーリング材、モルタル、紙粘土、陶器等の軽量化充填剤等としても用いることができる。
【0097】
C.熱膨張性微小球A
本発明の熱膨張性微小球(以下、「熱膨張性微小球A」と記載することがある。)は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、以下(I)〜(IV)に示す構成要件を有した新規な熱膨張性を有する微小球である。
(I)平均粒子径が1〜1000μmの範囲、
(II)最大膨張温度における膨張倍率が100%超、
(III)凝集微小球の含有率が5重量%以下、
(IV)25℃における真比重0.79g/cc以上である微小球の含有率が5重量%以下。
【0098】
熱膨張性微小球Aは、「A.熱膨張した微小球の製造方法」の項において、原料微小球を再膨張できる余力を有するように(つまり、再膨張開始温度を有するように)、加熱膨張させることによって、製造することができる。また、熱膨張性微小球Aでは、熱膨張性微小球Aの最大膨張温度における膨張倍率は、原料微小球の最大膨張温度における膨張倍率と、ほぼ完全に熱膨張させて得られる微小球の最大膨張温度における膨張倍率との間に位置する。平均粒子径及び真比重等においても、同様のことが言える。
【0099】
熱膨張性微小球Aの平均粒子径は、外殻による発泡剤の内包保持率、再膨張性の程度、熱膨張した微小球の耐久性等を考慮すると、1〜1000μmであり、好ましくは5〜800μm、さらに好ましくは10〜500μm、特に好ましくは15〜350μmである。
【0100】
熱膨張性微小球Aの最大膨張温度における膨張倍率は、実質的に熱膨張性を喪失せず、熱膨張性微小球となることを考慮すると、100%超であり、好ましくは105%以上であり、さらに好ましくは120%以上であり、特に好ましくは130%以上であり、最も好ましくは150%以上である。なお、熱膨張性微小球Aの最大膨張温度における膨張倍率が100%超であることは、上述したように、熱膨張性微小球Aが膨張開始温度を有することとほぼ同義である。
【0101】
熱膨張性微小球A中に含まれる凝集微小球の含有率は、真比重の均一性等を考慮すると、5重量%以下であり、好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下である。なお、凝集微小球の存在確認は、前述の方法で行われる。
【0102】
熱膨張性微小球Aにおいて、25℃における真比重0.79g/cc以上である微小球の含有率は、真比重の均一性等を考慮すると、5重量%以下であり、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。なお、0.79g/cc以上の微小球の含有率は、イソプロピルアルコール(25℃における比重:0.79)を用いた比重差分離後の沈降成分の定量により測定される。
【0103】
熱膨張性微小球Aは、「A.熱膨張した微小球の製造方法」で説明したように、外表面に微粒子充填剤が付着していることが好ましい。これにより、使用時における分散性の向上や、流動性改善が図られる。微粒子充填材は、上述したものと同様のものを用いることができる。また、微粒子充填剤の平均粒子径については、特に限定はないが、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
また、熱膨張性微小球Aは、上述したのと同様に、液状有機化合物(または水)で湿潤させた状態にあることが好ましい。
【0104】
本発明の熱膨張性微小球Aは、上述したように、凝集微小球の含有率および真比重の大きな微小球の含有率が極めて小さい。しかも、熱膨張性微小球Aは、外殻を構成する熱可塑性樹脂の厚みが比較的厚くて外力で破損しにくい。よって、熱膨張した微小球を含む中空体組成物を得る場合、基材への混合時における微小球のつぶれを抑制することができる。また、熱膨張した微小球を含む中空体成形品において、経時的な熱ヘタリ及び硬化収縮等を防止することができる。
【0105】
本発明の熱膨張微小球Aは、上述した熱膨張した微小球のうち、実質的に、再膨張開始温度を有するものと同様のものが挙げられ、同様の用途に用いることができる。
【0106】
D.中空体組成物および中空体成形品
本発明にかかる中空体組成物は、基材成分と、前記熱膨張した微小球および/または熱膨張性微小球A(以下では、「熱膨張した微小球および/または熱膨張性微小球A」を、単に「微小球a」ということがある。)とを含む。微小球aでは、外殻を構成する熱可塑性樹脂の厚みが比較的厚いため、各成分を配合混練して中空体組成物を作製する際に、外力による破損が発生しにくい。また、微小球aは適度な熱膨張を有するために、中空体組成物の成形時に硬化収縮を防止でき、得られた中空体成形品では経時的な熱ヘタリの問題が生じない。
【0107】
本発明の中空体組成物に含まれる前記熱膨張した微小球および/または熱膨張性微小球Aとしては、それぞれ上記で説明したものであれば、特に限定はないが、熱膨張した微小球としては、再膨張できる余力を有する(つまり、再膨張開始温度を有する)微小球が好ましい。さらに凝集微小球の含有率が低いものが好ましい。凝集微粒子の含有率は、基材中への微小球の均一分散性、得られる中空体成形品の表面性及び強度の均一性等を考慮すると、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2重量%以下である。なお、粒度分布の変動係数CVが30%以下、さらに好ましくは27%以下、特に好ましくは25%以下であればさらによい。
【0108】
中空体組成物に含まれる基材成分については、特に限定はないが、たとえば、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリエステル、シリコン樹脂等の有機材料;セラミック(粘土)、セメント等の無機材料等を挙げることができる。また、基材成分として、上記「A.熱膨張した微小球の製造方法」の湿潤工程において説明した液状有機化合物を配合してもよい。これらの基材成分は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0109】
中空体組成物全体に対する微小球aの配合割合は、特に限定はないが、添加効果、軽量化、成形時の硬化収縮の防止、得られた中空体成形品での経時的な熱ヘタリ、中空体組成物の製造の際の均一混合等を考慮すると、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.3〜25重量%、特に好ましくは0.5.5〜20重量%である。
【0110】
中空体組成物は、基材成分や微小球a以外に、パーライト、フライアッシュ、シラスバルーン、ガラスバルーン、フェノールバルーン、カーボンバルーン、アルミナバブル、発泡スチレンビーズ等の従来軽量化に使用されてきた充填剤;ガラス繊維やアラミド繊維等の補強剤;シリカ、タルク、炭酸カルシウム等の充填剤;酸化チタン、酸化マグネシウム等の顔料等の添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0111】
特に、添加剤として充填剤を含有する場合は、中空体組成物を作製する際に外力で熱膨張した微小球や熱膨張性微小球Aが著しく破損するという問題があるが、これらの微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂の厚みが比較的厚いため、破損の発生は大幅に抑制される。
【0112】
中空体組成物の製造方法については、各構成成分を混合するのであれば、特に限定はない。製造装置としては、たとえば、スタティックミキサーやディスパー等を挙げることができる。
【0113】
中空体組成物は、パテ、塗料、シーリング材、モルタル、紙粘土、陶器等の軽量化を意図した用途に利用することができる。
【0114】
このようにして製造された中空体組成物を成形することによって、十分な軽量化が図れ、成形時の硬化収縮を防止でき、経時的な熱ヘタリの問題が発生することがなく、寸法安定性が高い中空体成形品が得られる。中空体成形品が、特に無機成形品の場合は、成形後に全体を焼成して、無機成形品内に独立気泡を形成してもよい。
【0115】
実施例
以下の実施例および比較例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0116】
測定方法および定義
〔平均粒子径と粒度分布の測定〕
レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製 HEROS&RODOS)を使用した。乾式分散ユニットの分散圧は5.0bar、真空度は5.0mbarで乾式測定法により測定し、D50値を平均粒子径とした。
【0117】
〔真比重の測定〕
真比重は温度25℃においてイソプロピルアルコールを用いた液置換法(アルキメデス法)により測定した。
【0118】
〔凝集微小球の含有率の測定〕
凝集微小球の存在は、電子顕微鏡による目視観察で確認した。
熱膨張した微小球(熱膨張性微小球A)の平均粒子径をRとした場合、熱膨張した微小球(熱膨張性微小球A)に含まれる凝集微小球の含有率は、目開きがRの2.0倍である、2.0Rのスクリーンを用いてスクリーニングした後のスクリーニング残留量から算出した。ここで、2.0Rとは、1.95≦a<2.05を満足するaにRをかけた値である。また、目開きが2.0Rのスクリーンがない場合は、目開きが1.8R〜2.0Rの範囲(但し、2.0Rを除く)にあるスクリーンを用いたスクリーニング残留量と、目開きが2.0R〜2.2Rの範囲(但し、2.0Rを除く)にあるスクリーンを用いたスクリーニング残留量とから、目開きが2.0Rのスクリーンを使用したときに相当するスクリーニング残留量を比例配分法で算出した。目開きが1.8R〜2.0Rの範囲(但し、2.0Rを除く)にあるスクリーンおよび目開きが2.0R〜2.2Rの範囲(但し、2.0Rを除く)にあるスクリーンを選択する場合、いずれにおいても、目開きが2.0Rにできるだけ近いスクリーンを選択した。スクリーニングに使用する試料の容量については、1L以上とした。
【0119】
〔熱膨張性微小球の含水率の測定〕
測定装置として、カールフィッシャー水分計(MKA−510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。
【0120】
〔熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率の測定〕
熱膨張性微小球1.0gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量(W1)を測定した。アセトン30ml加え均一に分散させ、30分間室温で放置した後に、120℃で2時間加熱し乾燥後の重量(W2)を測定した。発泡剤の内包率は、下記の式により計算される。
内包率(重量%)=(W1−W2)(g)/1.0(g)×100−(含水率)(重量%)
(式中、含水率は、上記方法で測定される。)
【0121】
〔内包保持率〕
発泡剤の内包保持率は、膨張前の発泡剤の内包率(G1)に対する膨張後の発泡剤の内包率(G2)の割合であり、下記の式により計算される。
内包保持率(%)=G2/G1×100
【0122】
〔(再)膨張開始温度、最大(再)膨張温度およびその温度における膨張倍率の測定〕
DMA(DMA Q800型、TA instruments社製)を使用した。熱膨張性微小球(または熱膨張した微小球)0.5mgを直径6.0mm、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、その上に直径5.6mm、厚み0.1mmのアルミ蓋をのせ試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さ(H1)を測定した。加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定した。正方向への変位開始温度を(再)膨張開始温度とし、最大変位量(H2)を示したときの温度を最大(再)膨張温度とした。なお、最大(再)膨張温度における(再)膨張倍率(E)は以下に示す計算式により算出される。
E(%)=H2/H1×100
【0123】
〔体積膨張倍率〕
体積膨張倍率(A)は、熱膨張する前の熱膨張性微小球の平均粒子径(R1)および熱膨張した微小球の平均粒子径(R2)を測定し、以下に示す計算式で算出される。
A=(R2/R13(倍)
(式中、R1は熱膨張する前の熱膨張性微小球の平均粒子径、R2は熱膨張した微小球の平均粒子径である。)
【0124】
〔タイヤ内充填時の通常内圧走行性能評価〕
タイヤ(タイヤサイズ:175/70R13、タイヤ内容積21L)とリム(リムサイズ:5J−13)との組立体の内部に、その内部空間の80容量%に相当する熱膨張性微小球(または熱膨張した微小球)を充填し、窒素によりタイヤ内圧をゲージ圧200kPaになるよう調整した。そのタイヤを乗用車に装着し、60km/hの速度で30分間走行後の熱膨張性微小球(または熱膨張した微小球)の膨張あるいは収縮の有無を確認することにより評価した。膨張の有無の確認は、微小球の粒度分布を測定して行った。走行前後における平均粒子径の変動が+3%以内の場合は○、+3%を超える場合は×とした。収縮の有無の確認は、走行前後における平均粒子径の変動が−3%以内の場合は○、−3%を超える場合は×と評価した。
【0125】
〔タイヤ内充填時の通常内圧高速走行性能評価〕
上記通常内圧走行性能評価において、乗用車の速度を60km/hから高速150km/hに変更する以外は、通常内圧走行性能評価と同様に評価した。
【0126】
〔タイヤ内充填時のタイヤ受傷時走行性能評価〕
上記通常内圧走行性能評価において、乗用車の速度を60km/hから100km/hに変更する以外は、通常内圧走行性能評価と同様にして30分間走行させた。その後、そのタイヤに直径3mm及び長さ50mmの釘を接地面からタイヤ内部に向けて踏ませ、タイヤ内圧が大気圧になるのを確認した後に90km/hの速度で走行させた。走行可能距離が80km未満の場合は×、80〜150kmの場合は○、150km以上の場合は◎と評価した。
【0127】
〔塗料比重の測定〕
比重カップ(100cc、大平理化工業株式会社製)を用いて測定した。
【0128】
〔塗膜比重の測定〕
塗膜比重は温度25℃においてイオン交換水を用いた液置換法(アルキメデス法)により測定した。
【0129】
〔実施例A1〕
熱膨張性微小球としてマツモトマイクロフェア−F−50(松本油脂製薬株式会社製、外殻熱可塑性樹脂:ニトリル系共重合体、発泡剤:イソブタン、平均粒子径:20μm、変動係数:35%)を用いて、図1に示す発泡工程部を備えた製造装置で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
膨張条件については、原料供給量0.1kg/h、原料分散気体量0.03m/min、熱風流量0.5m/min、熱風温度130℃に設定した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は83μm、変動係数は36%、真比重は0.031g/cc、体積膨張倍率は71.5倍であった。また、得られた膨張した微小球では、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球は、確認されなかった。なお、目開き150μmおよび目開き175μmのスクリーンをそれぞれ使用したスクリーニングによるスクリーニング残留物は無かった。それぞれの値から比例配分法によって計算すると、凝集微小球の含有率は0重量%であった。
【0130】
〔比較例A1〕
実施例A1で用いたマツモトマイクロフェア−F−50をスチールベルトに約2mmの厚さに塗布した。このスチールベルトを1m/分の速度で、加熱ゾーン(温度:130℃、長さ:3m)とこの加熱ゾーンに続く冷却ゾーン(温度:10℃、長さ:2m)中を移動させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は86μm、変動係数は49%、真比重は0.038g/cc、体積膨張倍率は79.5倍であった。また、得られた膨張した微小球では、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球の含有率は11重量%であった。目開き150μmのスクリーンを使用したスクリーニングによる残留物の含有率は0.8重量%であった。また、目開き165μmおよび目開き175μmのスクリーンをそれぞれ使用したときのスクリーニング残留量は0.5重量%および0.4重量%であった。それぞれの値から比例配分法によって計算すると、凝集微小球の含有率は0.4重量%であった。
【0131】
〔実施例A2〕
実施例A1で、熱膨張性微小球マツモトマイクロフェア−F−50に代えてマツモトマイクロフェア−F−100(松本油脂製薬株式会社製、外殻熱可塑性樹脂:ニトリル系共重合体、発泡剤:イソペンタン、平均粒子径:25μm、変動係数:37%)を用い、熱風温度180℃に設定した以外は、実施例A1と同様の製造方法で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は97μm、変動係数は36%、真比重は0.028g/cc、体積膨張倍率は58.4倍であった。また、得られた膨張した微小球では、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球は確認されなかった。目開き200μmのスクリーンを使用したスクリーニングによる残留物は確認されなかった。また、目開き175μmおよび目開き210μmのスクリーンをそれぞれ使用したスクリーニングによるスクリーニング残留物は無かった。それぞれの値から比例配分法によって計算すると、凝集微小球の含有率は0重量%であった。
【0132】
〔比較例A2〕
比較例A1で、マツモトマイクロフェア−F−50に代えて実施例A2で示したマツモトマイクロフェア−F−100を用い、加熱ゾーンの温度を180℃に設定した以外は、比較例A1と同様の製造方法で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は100μm、変動係数は45%、真比重は0.030g/cc、体積膨張倍率は64.0倍であった。また、得られた膨張した微小球では、凝集微小球の含有率は0.3重量%であり、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球の含有率は15重量%であった。なお、凝集微小球の定量には、目開き200μmのスクリーンを使用した。
【0133】
〔実施例A3〕
実施例A1で、マツモトマイクロフェア−F−50に代えて熱膨張性微小球試作品1(外殻熱可塑性樹脂:ニトリル系共重合体、発泡剤:イソヘキサン、平均粒子径:35μm、変動係数:20%)を用い、熱風温度240℃に設定した以外は、実施例A1と同様の製造方法で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は130μm、変動係数は20%、真比重は0.021g/cc、体積膨張倍率は51.1倍であった。また、得られた膨張した微小球では、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球は確認されなかった。目開き200μmのスクリーンを使用したスクリーニングによる残留物は確認されなかった。目開き235μmおよび目開き275μmのスクリーンをそれぞれ使用したスクリーニングによるスクリーニング残留物は無かった。それぞれの値から比例配分法によって計算すると、凝集微小球の含有率は0重量%であった。
【0134】
〔比較例A3〕
比較例A1で、マツモトマイクロフェア−F−50に代えて実施例A3で示した熱膨張性微小球試作品1を用い、加熱ゾーンの温度を240℃に設定した以外は、比較例A1と同様の製造方法で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は100μm、変動係数は31%、真比重は0.030g/cc、体積膨張倍率は66.6倍であった。また、得られた膨張した微小球では、凝集微小球の含有率は5.6重量%であり、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球の含有率は12重量%であった。なお、凝集微小球の定量には、目開き200μmのスクリーンを使用した。
【0135】
〔実施例A4〕
実施例A3で示した熱膨張性微小球試作品1と超微粉タルク(日本タルク株式会社製、品名:SG−1000、平均粒子径:2.0μm)とを重量比6:4の割合で、スーパーミキサー(株式会社カワタ製)を用いて均一に混合し、超微粉タルクが外表面に付着した熱膨張性微小球を得た。
実施例A1で、マツモトマイクロフェア−F−50に代えて超微粉タルクが外表面に付着した熱膨張性微小球を用い、熱風温度240℃に設定した以外は、実施例A1と同様の製造方法で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は124μm、変動係数は21%、真比重は0.026g/cc、体積膨張倍率は44.4倍であった。また、得られた膨張した微小球では、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球は確認されなかった。目開き200μmのスクリーンを使用したスクリーニングによる残留物は確認されなかった。目開き225μmおよび目開き250μmのスクリーンをそれぞれ使用したスクリーニングによるスクリーニング残留物は無かった。それぞれの値から比例配分法によって計算すると凝集微小球の含有率は0重量%であった。
【0136】
〔実施例B1〕
熱膨張性微小球としてマツモトマイクロフェア−F−50(松本油脂製薬株式会社製、外殻熱可塑性樹脂:ニトリル系共重合体、発泡剤:イソブタン、平均粒子径:20μm、変動係数:35%)を用いて、図2に示した発泡工程部を備えた製造装置で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
膨張条件については、原料供給量0.1kg/h、原料分散気体量0.05m/min、熱風流量1.0m/min、熱風温度140℃に設定した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は98μm、変動係数は36%、真比重は0.022g/cc、体積膨張倍率は117.6倍であった。また、得られた膨張した微小球では、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球は、確認されなかった。目開き150μmのスクリーンを使用したスクリーニングによる残留物は、確認されなかった。また、目開き180μmおよび目開き200μmのスクリーンを使用したスクリーニングによるスクリーニング残留物は無かった。それぞれの値から比例配分法によって計算すると、凝集微小球の含有率は0重量%であった。
【0137】
〔比較例B1〕
実施例B1で用いたマツモトマイクロフェア−F−50をスチールベルトに約2mmの厚さに塗布した。このスチールベルトを1m/分の速度で、加熱ゾーン(温度:140℃、長さ:3m)とこの加熱ゾーンに続く冷却ゾーン(温度:10℃、長さ:2m)中を移動させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は102μm、変動係数は48%、真比重は0.020g/cc、体積膨張倍率は132.7倍であった。また、得られた膨張した微小球では、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球の含有率は12重量%であった。目開き150μmのスクリーンを使用したスクリーニングによる残留物の含有率は1.8重量%であった。また、目開き200μmおよび目開き215μmのスクリーンをそれぞれ使用したときのスクリーニング残留量は0.8重量%および0.5重量%であった。それぞれの値から比例配分法によって計算すると、凝集微小球の含有率は0.7重量%であった。
【0138】
〔実施例B2〕
実施例B1で、熱膨張性微小球マツモトマイクロフェア−F−50に代えてマツモトマイクロフェア−F−100(松本油脂製薬株式会社製、外殻熱可塑性樹脂:ニトリル系共重合体、発泡剤:イソペンタン、平均粒子径:25μm、変動係数:37%)を用い、熱風温度170℃に設定した以外は、実施例B1と同様の製造方法で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は93μm、変動係数は38%、真比重は0.033g/cc、体積膨張倍率は51.5倍であった。また、得られた膨張した微小球では、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球は、確認されなかった。目開き175μmおよび目開き200μmのスクリーンをそれぞれ使用したスクリーニングによるスクリーニング残留物は無かった。それぞれの値から比例配分法によって計算すると、凝集微小球の含有率は0重量%であった。
【0139】
〔比較例B2〕
比較例B1で、マツモトマイクロフェア−F−50に代えて実施例B2で示したマツモトマイクロフェア−F−100を用い、加熱ゾーンの温度を170℃に設定した以外は、比較例B1と同様の製造方法で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は85μm、変動係数は48%、真比重は0.040g/cc、体積膨張倍率は39.3倍であった。また、得られた膨張した微小球では、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球の含有率は14重量%であった。目開き200μmのスクリーンを使用したスクリーニングによる残留物の含有率は0.8重量%であった。また、目開き165μmおよび目開き175μmのスクリーンをそれぞれ使用したときのスクリーニング残留量は2.5重量%および1.8重量%であった。それぞれの値から比例配分法によって計算すると、凝集微小球の含有率は2.2重量%であった。
【0140】
〔実施例B3〕
実施例B1で、マツモトマイクロフェア−F−50に代えて熱膨張性微小球試作品1(外殻熱可塑性樹脂:ニトリル系共重合体、発泡剤:イソヘキサン、平均粒子径:35μm、変動係数:20%)を用い、熱風温度230℃に設定した以外は、実施例B1と同様の製造方法で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は120μm、変動係数は21%、真比重は0.027g/cc、体積膨張倍率は40.3倍であった。また、得られた膨張した微小球では、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球は、確認されなかった。目開き200μmのスクリーンを使用したスクリーニングによる残留物は、確認されなかった。また、目開き225μmおよび目開き250μmのスクリーンをそれぞれ使用したスクリーニングによるスクリーニング残留物は無かった。それぞれの値から比例配分法によって計算すると凝集微小球の含有率は0重量%であった。
【0141】
〔比較例B3〕
比較例B1で、マツモトマイクロフェア−F−50に代えて実施例B3で示した熱膨張性微小球試作品1を用い、加熱ゾーンの温度を230℃に設定した以外は、比較例B1と同様の製造方法で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は117μm、変動係数は31%、真比重は0.031g/cc、体積膨張倍率は37.3倍であった。また、得られた膨張した微小球では、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球の含有率は15重量%であった。目開き200μmのスクリーンを使用したスクリーニングによる残留物の含有率は6.6重量%であった。また、目開き215μmおよび目開き250μmのスクリーンをそれぞれ使用したときのスクリーニング残留量は5.6重量%および3.2重量%であった。それぞれの値から比例配分法によって計算すると、凝集微小球の含有率は4.3重量%であった。
【0142】
〔実施例B4〕
実施例B3で示した熱膨張性微小球試作品1と超微粉タルク(日本タルク株式会社製、品名:SG−1000、平均粒子径:2.0μm)とを重量比6:4の割合で、スーパーミキサー(株式会社カワタ製)を用いて均一に混合し、超微粉タルクが外表面に付着した熱膨張性微小球を得た。
実施例B1で、マツモトマイクロフェア−F−50に代えて超微粉タルクが外表面に付着した熱膨張性微小球を用い、熱風温度230℃に設定した以外は、実施例A1と同様の製造方法で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の平均粒子径は119μm、変動係数は21%、真比重は0.029g/cc、体積膨張倍率は39.3倍であった。また、得られた膨張した微小球では、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球は確認されなかった。目開き200μmのスクリーンを使用したスクリーニングによる残留物は確認されなかった。また、目開き225μmおよび目開き250μmのスクリーンをそれぞれ使用したスクリーニングによるスクリーニング残留物は無かった。それぞれの値から比例配分法によって計算すると凝集微小球の含有率は0重量%であった。
【0143】
〔実施例C1〕
イオン交換水500gに、塩化ナトリウム150g、アジピン酸−ジエタノールアミン縮合物3.0g、コロイダルシリカ20g(有効成分量:20%)および亜硝酸ナトリウム0.15gを加えた後、均一に混合してこれを水相とした。
アクリロニトリル180g、メタクリロニトリル45g、メタクリル酸75g、トリメチロールプロパントリメタクリレート1.2g、アゾビスイソブチロニトリル2.0gおよびC37OCH3150gを混合、撹拌、溶解し、これを油相とした。
【0144】
水相と油相を混合し、ホモミキサーで3,000rpmにて2分間予備混合し、10,000rpmにて2分間撹拌して縣濁液とした。これを反応器に移して窒素置換をしてから撹拌しつつ、61℃で20時間重合した。重合後、重合生成物を濾過、乾燥した。得られた熱膨張性微小球は、平均粒子径25μm、変動係数CV24%、膨張開始温度143℃、最大膨張温度205℃であった。
熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率を測定したところ、31.8重量%であった。
熱膨張性微小球に着火源を近づけたが燃焼することはなかった。
【0145】
得られた熱膨張性微小球を、図1に示すの発泡工程部を備えた製造装置で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
膨張条件については、原料供給量1.0kg/h、原料分散気体量0.05m/min、熱風流量0.5m/minに固定し、熱風温度を表1に示すように、それぞれ、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃に設定した。
得られた膨張した微小球(熱膨張性微小球)の物性をそれぞれ評価し、結果を表1に示した。
【0146】
【表1】

表1の結果から明らかなように、本実施例で得られた熱膨張性微小球を、タイヤとリムの組立体に充填して用いた場合、通常内圧(高速)走行性能及びタイヤ受傷時の走行性能ともに良好な性能を示すことがわかる。
【0147】
〔比較例C1〕
実施例C1で得られた熱膨張性微小球を、高温恒温器(三洋電機社製)を使用して、表2に示すように、それぞれ、140℃、160℃、180℃、200℃、220℃の設定温度で1分間加熱することにより、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球(熱膨張性微小球)の物性をそれぞれ評価し、結果を表2に示した。
【0148】
【表2】

表2の結果から明らかなように、本比較例で得られた熱膨張性微小球は、タイヤとリムの組立体に充填して用いた場合、とくに通常内圧走行性能においては良好な結果を示しているが、通常内圧高速走行性能においては悪く、真比重0.79g/cc以上の微小球の含有率が高いことに起因すると思われる。
また、実施例C1および比較例C1における凝集微小球の含有率を比較すると明白であるが、原料である熱膨張性微小球が均一な粒度分布であっても、オーブン加熱のような従来公知の発泡方法で膨張させるのであるならば、粒度分布が均一で凝集微小球のない膨張した微小球は得られない。
【0149】
〔実施例C2〕
実施例C1において、C37OCH3150g(比重1.41)をノルマルペンタン65g(比重0.63)に変更した以外は実施例C1と同様に重合を行った。
得られた熱膨張性微小球の平均粒子径30μm、変動係数CVは33%、膨張開始温度155℃、最大膨張温度189℃であった。熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率を測定したところ、16.6重量%であった。
熱膨張性微小球に着火源を近づけたところ勢い良く燃焼したので、タイヤとリムの組立体に充填して行う走行性能評価をあきらめた。
【0150】
得られた熱膨張性微小球を、図1に示す発泡工程部を備えた製造装置で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。膨張条件については、原料供給量1.0kg/h、原料分散気体量0.05m/min、熱風流量0.5m/minに固定し、熱風温度を表3に示すように、それぞれ、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃に設定した。得られた膨張した微小球(熱膨張性微小球)の物性をそれぞれ評価し、結果を表3に示した。
【0151】
【表3】

【0152】
〔比較例C2〕
実施例C1において、メタクリル酸75gを酢酸ビニル75gに変更した以外は実施例C1と同様に重合を行った。
得られた熱膨張性微小球の平均粒子径27μm、変動係数CVは25%、膨張開始温度95℃、最大膨張温度157℃であった。熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率を測定したところ、30.9重量%であった。熱膨張性微小球に着火源を近づけたが燃焼することはなかった。
【0153】
上記で得られた熱膨張性微小球を、高温恒温器(三洋電機社製)を使用して、表4に示すように、それぞれ、110℃、130℃、150℃、170℃、190℃の設定温度で1分間加熱することにより、膨張した微小球を製造した。得られた膨張した微小球(熱膨張性微小球)の物性をそれぞれ評価し、結果を表4に示した。
【0154】
【表4】

表4の結果から明らかなように、本比較例で得られた熱膨張性微小球は、タイヤとリムの組立体に充填して用いた場合、タイヤ受傷時走行性能を示すものもあるが、通常内圧走行性能、通常内圧高速走行性能が悪いことがわかる。これは走行中にタイヤ内の熱膨張性微小球が(再)膨張開始温度に達することに起因すると思われる。
【0155】
〔実施例C3〕
実施例C1において、アクリロニトリル235g、メタクリロニトリル60g、メタクリル酸メチル5.0g、エチレングリコールジメタクリレート1.2g、アゾビスイソブチロニトリル2.0gおよびC3HF6OCH3150gを油相とした以外は実施例C1と同様に重合を行った。
得られた熱膨張性微小球は、平均粒子径42μm、変動係数CV26%、膨張開始温度140℃、最大膨張温度198℃であった。熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率を測定したところ、32.9重量%であった。熱膨張性微小球に着火源を近づけたが燃焼することはなかった。
【0156】
得られた熱膨張性微小球を、図1に示す発泡工程部を備えた製造装置で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。膨張条件については、原料供給量1.0kg/h、原料分散気体量0.05m/min、熱風流量0.5m/minに固定し、熱風温度を表5に示すように、それぞれ、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃に設定した。得られた膨張した微小球(熱膨張性微小球)の物性をそれぞれ評価し、結果を表5に示した。
【0157】
【表5】

表5の結果から明らかなように、本実施例で得られた熱膨張性微小球は、タイヤとリムの組立体に充填して用いた場合、特に通常内圧走行性能、タイヤ受傷時走行性能において良好な性能を示す。
〔比較例C3〕
実施例C3において、メタクリル酸メチル5.0gをメタクリル酸5.0gとした以外は実施例C1と同様に重合を行った。
得られた熱膨張性微小球は、平均粒子径40μm、変動係数CV26%、膨張開始温度143℃、最大膨張温度199℃であった。熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率を測定したところ、31.8重量%であった。熱膨張性微小球に着火源を近づけたが燃焼することはなかった。
【0158】
高温恒温器(三洋電機社製)を使用して、表6に示すように、それぞれ、120℃、140℃、160℃、180℃、200℃の設定温度で1分間加熱することにより、膨張した微小球を製造した。得られた膨張した微小球(熱膨張性微小球)の物性をそれぞれ評価し、結果を表6に示した。
【0159】
【表6】

表6の結果から明らかなように、本比較例で得られた熱膨張性微小球は、タイヤとリムの組立体に充填して用いた場合、通常内圧走行性能、タイヤ受傷時走行性能において良好な性能を示すが、通常内圧高速走行性能は悪いことがわかる。
【0160】
〔実施例C4〕
実施例C1で得られた熱膨張性微小球500gとステアリン酸マグネシウム(平均粒子径:2μm、融点:132℃)100gとをスーパーミキサー(株式会社カワタ製)を用いて30分間混合し、その外殻表面にステアリン酸マグネシウムの付着した熱膨張性微小球を製造した。
このようにして得られた熱膨張性微小球について、平均粒子径が24.9μmであり、変動係数CVが25%であった。熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率を測定したところ、30.4重量%であった。
【0161】
この熱膨張性微小球を、図1に示す発泡工程部を備えた製造装置で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。膨張条件については、原料供給量1.0kg/h、原料分散気体量0.05m/min、熱風流量0.5m/minに固定し、熱風温度を表7に示すように、それぞれ、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃に設定した。得られた膨張した微小球(熱膨張性微小球)の物性をそれぞれ評価し、結果を表7に示した。
【0162】
【表7】

表7の結果から明らかなように本実施例で得られた熱膨張性微小球は、タイヤとリムの組立体に充填して用いた場合、通常内圧(高速)走行性能及びタイヤ受傷時の走行性能ともに良好な性能を示すことがわかる。実施例C1に対して熱融着防止剤の効果により特にタイヤ受傷時の走行性能が向上していることが確認される。
【0163】
〔実施例C5〕
実施例C1で得られた熱膨張性微小球500gとカーボンブラック(アセチレンブラック、平均粒子径:42nm)100gとをスーパーミキサー(株式会社カワタ製)を用いて30分間混合し、外殻表面にカーボンブラックの付着した熱膨張性微小球を製造した。
このようにして得られた熱膨張性微小球について、平均粒子径が24.7μmであり、変動係数CVが26%であった。熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率を測定したところ、30.8重量%であった。
【0164】
この熱膨張性微小球を、図1に示す発泡工程部を備えた製造装置で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。膨張条件については、原料供給量1.0kg/h、原料分散気体量0.05m/min、熱風流量0.5m/minに固定し、熱風温度を表8に示すように、それぞれ、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃に設定した。得られた膨張した微小球(熱膨張性微小球)の物性をそれぞれ評価し、結果を表8に示した。
【0165】
【表8】

表8の結果から明らかなように本実施例で得られた熱膨張性微小球は、タイヤとリムの組立体に充填して用いた場合、通常内圧(高速)走行性能及びタイヤ受傷時の走行性能ともに良好な性能を示すことがわかる。実施例C1に対して熱融着防止剤の効果により特にタイヤ受傷時の走行性能が向上していることが確認される。
【0166】
〔実施例C6〕
実施例C1において、アクリロニトリル120g、メタクリロニトリル30g、メタクリル酸150g、トリメチロールプロパントリメタクリレート1.2g、アゾビスイソブチロニトリル2.0gおよびC2HF4OC223150gを油相とした以外は実施例C1と同様に重合を行った。
得られた熱膨張性微小球は、平均粒子径29μm、変動係数CV23%、膨張開始温度183℃、最大膨張温度230℃であった。熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率を測定したところ、32.5重量%であった。熱膨張性微小球に着火源を近づけたが燃焼することはなかった。
【0167】
得られた熱膨張性微小球を〔熱膨張した微小球の製造方法〕で説明した図2の発泡工程部を備えた製造装置で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。膨張条件については、原料供給量1.0kg/h、原料分散気体量0.05m/min、熱風流量0.5m/minに固定し、熱風温度を表9に示すように、それぞれ、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃に設定した。得られた膨張した微小球(熱膨張性微小球)の物性をそれぞれ評価し、結果を表9に示した。
【0168】
【表9】

表9の結果から明らかなように本実施例で得られた熱膨張性微小球は、タイヤとリムの組立体に充填して用いた場合、通常内圧(高速)走行性能及びタイヤ受傷時の走行性能ともに良好な性能を示すことがわかる。
【0169】
〔実施例C7〕
実施例C1において、アクリロニトリル72g、メタクリロニトリル18g、メタクリル酸210g、トリメチロールプロパントリメタクリレート1.2g、アゾビスイソブチロニトリル2.0gおよびC49OCH3150gを油相とした以外は実施例C1と同様に重合を行った。
得られた熱膨張性微小球は、平均粒子径36μm、変動係数CV23%、膨張開始温度188℃、最大膨張温度232℃であった。熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率を測定したところ、32.7重量%であった。熱膨張性微小球に着火源を近づけたが燃焼することはなかった。
【0170】
得られた熱膨張性微小球を、図2に示す発泡工程部を備えた製造装置で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。膨張条件については、原料供給量1.0kg/h、原料分散気体量0.05m/min、熱風流量0.5m/minに固定し、熱風温度を表10に示すように、それぞれ、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃に設定した。得られた膨張した微小球(熱膨張性微小球)の物性をそれぞれ評価し、結果を表10に示した。
【0171】
【表10】

表10の結果から明らかなように本実施例で得られた熱膨張性微小球は、タイヤとリムの組立体に充填して用いた場合、通常内圧(高速)走行性能及びタイヤ受傷時の走行性能ともに良好な性能を示すことがわかる。
【0172】
〔比較例C4〕
実施例C1において、アクリロニトリル24g、メタクリロニトリル6.0g、メタクリル酸270g、トリメチロールプロパントリメタクリレート1.2g、アゾビスイソブチロニトリル2.0gおよびC49OCH3150gを油相とした以外は実施例C1と同様に重合を行った。
得られた熱膨張性微小球は、平均粒子径31μm、変動係数CV26%ではあったが、膨張性能は確認されなかった。
【0173】
〔実施例D1〕
ポリ塩化ビニル(住友化学社製のスミリットPCX、軟化温度:80℃)100g、重質炭酸カルシウム(白石カルシウム社製のホワイトンSB、平均粒子径:2.2μm)100g、軟質炭酸カルシウム(神島化学社製の軽微炭酸カルシウム、平均粒子径:0.3μm)50g、可塑剤(新日本理化社製のサンソサイザーDINP、フタル酸エステル系可塑剤)120g、溶剤(日本石油社製のミネラルスピリッツ)10gをグレンミキサーで混合し、ベース塗料を調製した。
次に、実施例B3で得られた熱膨張した微小球1.0gとベース塗料99gとを混合し、軽量塗料(塗料比重:0.90)を調製した。なお、熱膨張した微小球は、再膨張できる余力を有し、最大再膨張温度が196℃で、再膨張倍率が180%であった。得られた軽量塗料を、室温、圧力15MPaの条件下で表11に示す時間加圧した後、塗料比重を測定した。その後、軽量塗料を厚さ7mmの鉄板に塗膜厚2mmで塗布し、140℃のオーブンで30分間焼付して塗膜を作製し、塗膜比重を測定した。得られた焼付塗膜を170℃のオーブンで30分間再加熱し、塗膜比重を測定した。結果を表11に示す。
【0174】
【表11】

【0175】
〔比較例D1〕
実施例D1において、実施例B3で得られた膨張した微小球の代わりに比較例B3で得られた膨張した微小球を用いた以外は同様にして、軽量塗料(塗料比重0.94)を調製した。
その物性を実施例D1と同様にして測定した。結果を表12に示す。
【0176】
【表12】

【0177】
実施例D1では、加圧処理時間が長くても塗料比重がほとんど変化しないのに対して、比較例D1では、加圧処理時間が長くなるほど、外力によって熱膨張した微小球が破損し、塗料比重が大きくなっている。また、実施例D1では、焼付後塗膜比重と再加熱後塗膜比重との差がほとんどなく、熱ヘタリが観察されないのに対して、比較例D1では、焼付後塗膜比重と再加熱後塗膜比重とに有意差があり、熱ヘタリが観察される。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明の熱膨張した微小球の製造方法は、熱膨張前後において粒度分布の変動係数の変化が少なく、凝集微小球や真比重の大きな微小球の含有率の極めて低い、熱膨張した微小球を製造できる。
【0179】
本発明の熱膨張した微小球は、凝集微小球や真比重の大きな微小球の含有率の極めて低い物性を有する。熱膨張した微小球は、また、外力で破損しにくく、軽量化を目的とした中空体組成物に配合した場合、成形時の硬化収縮を防止でき、得られた中空体成形品における経時的な熱ヘタリの問題を解消できる。
【0180】
本発明の熱膨張性微小球Aは、外力で破損しにくく、軽量化を目的とした中空体組成物に配合した場合、成形時の硬化収縮を防止でき、得られた中空体成形品における経時的な熱ヘタリの問題を解消できる。
【0181】
本発明の中空体成形品は、十分な軽量化が図れ、成形時の硬化収縮を防止でき、経時的な熱ヘタリの問題が発生することがなく、寸法安定性が高い。
【0182】
本発明の熱膨張した微小球および熱膨張性微小球Aが特定の含弗素化合物を発泡剤として含む場合は、タイヤとリムの組立体内部に充填されてタイヤ受傷部封止材、タイヤ内圧付与材として使用される際に、良好なタイヤ受傷部封止機能、タイヤ内圧付与機能を発揮することができる。
【0183】
本発明の特定の含弗素化合物を発泡剤として含む熱膨張性微小球は、熱膨張した微小球および熱膨張性微小球Aの原料となり、これから得られた微小球は、タイヤとリムの組立体内部に充填されてタイヤ受傷部封止材、タイヤ内圧付与材として使用される際に、良好なタイヤ受傷部封止機能、タイヤ内圧付与機能を発揮することができる。この熱膨張性微小球では、通常内圧走行性能評価のみならず、通常内圧高速走行性能評価においても、良好な評価結果が得られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球を含む気体流体を、出口に分散ノズルを備え且つ熱風流の内側に設置された気体導入管に流し、前記分散ノズルから噴射させる工程と、
前記気体流体を前記分散ノズルの下部に設置された衝突板に衝突させ、熱膨張性微小球を前記熱風気流中に分散させる工程と、
分散した熱膨張性微小球を前記熱風気流中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる工程とを含む、
熱膨張した微小球の製造方法。
【請求項2】
前記気体導入管および/または衝突板が過熱防止機能を備える、請求項1に記載の熱膨張した微小球の製造方法。
【請求項3】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球を含む気体流体を、熱風流の外部に設置された少なくとも1つの分散ノズルから噴射させ、熱膨張性微小球を前記熱風流中に分散させる工程と、
分散した熱膨張性微小球を前記熱風流中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる工程とを含む、
熱膨張した微小球の製造方法。
【請求項4】
前記熱膨張性微小球が前記外殻の外表面に付着した微粒子充填剤からさらに構成され、前記微粒子充填剤の平均粒子径が付着前の熱膨張性微小球の平均粒子径の1/10以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張した微小球の製造方法。
【請求項5】
得られた熱膨張した微小球を、その外殻を溶解させない液状有機化合物で湿潤させる工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の熱膨張した微小球の製造方法。
【請求項6】
前記熱膨張した微小球が再膨張開始温度を有しないように、前記熱膨張性微小球の膨張条件が制御される、請求項1〜5のいずれかに記載の熱膨張した微小球の製造方法。
【請求項7】
前記熱膨張した微小球が再膨張開始温度を有するように、前記熱膨張性微小球の膨張条件が制御される、請求項1〜5のいずれかに記載の熱膨張した微小球の製造方法。
【請求項8】
前記発泡剤が、エーテル構造を有し、塩素原子および臭素原子を含まない、炭素数2〜10の含弗素化合物を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の熱膨張した微小球の製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体とカルボキシル基含有単量体とを必須成分として含む単量体混合物を重合して得られ、前記ニトリル系単量体の重量割合が前記単量体混合物に対して20〜80重量%であり、前記カルボキシル基含有単量体の重量割合が80〜20重量%である、請求項8に記載の熱膨張した微小球の製造方法。
【請求項10】
前記熱膨張性微小球が前記外殻の外表面に付着した微粒子充填剤からさらに構成され、前記微粒子充填剤の平均粒子径が付着前の熱膨張性微小球の平均粒子径の1/10以下であり、前記微粒子充填剤が融点90℃以上の有機化合物および層状構造を有する無機化合物から選ばれた少なくとも1種の熱融着防止剤である、請求項8または9に記載の熱膨張した微小球の製造方法。
【請求項11】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球を、膨張開始温度以上に加熱して膨張させる製造方法で得られる熱膨張した微小球であって、
凝集微小球の含有率が5重量%以下であり且つ25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球の含有率が5重量%以下である、
熱膨張した微小球。
【請求項12】
前記熱膨張性微小球が前記外殻の外表面に付着した微粒子充填剤からさらに構成され、前記微粒子充填剤の平均粒子径が付着前の熱膨張性微小球の平均粒子径の1/10以下である、請求項11に記載の熱膨張した微小球。
【請求項13】
前記熱膨張性微小球を加熱して膨張させた微小球であって、膨張前後における粒度分布の変動係数の変化が±5%以内である、請求項11または12に記載の熱膨張した微小球。
【請求項14】
再膨張開始温度を有する、請求項11〜13のいずれかに記載の熱膨張した微小球。
【請求項15】
前記外殻を溶解させない液状有機化合物で湿潤させた状態にある、請求項11〜14のいずれかに記載の熱膨張した微小球。
【請求項16】
前記発泡剤が、エーテル構造を有し、塩素原子および臭素原子を含まない、炭素数2〜10の含弗素化合物を含む、請求項11〜15のいずれかに記載の熱膨張した微小球。
【請求項17】
前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体とカルボキシル基含有単量体とを必須成分として含む単量体混合物を重合して得られ、前記ニトリル系単量体の重量割合が前記単量体混合物に対して20〜80重量%であり、前記カルボキシル基含有単量体の重量割合が80〜20重量%である、請求項16に記載の熱膨張した微小球。
【請求項18】
前記熱膨張性微小球が前記外殻の外表面に付着した微粒子充填剤からさらに構成され、前記微粒子充填剤の平均粒子径が付着前の熱膨張性微小球の平均粒子径の1/10以下であり、前記微粒子充填剤が融点90℃以上の有機化合物および層状構造を有する無機化合物から選ばれた少なくとも1種の熱融着防止剤である、請求項16または17に記載の熱膨張した微小球。
【請求項19】
タイヤとリムの組み立て体の空洞部分に充填することにより、タイヤ受傷時に受傷部封止機能およびタイヤ内圧付与機能を示す、請求項16〜18のいずれかに記載の熱膨張した微小球。
【請求項20】
前記製造方法が請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法である、請求項11〜19のいずれかに記載の熱膨張した微小球。
【請求項21】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、
平均粒子径が1〜1000μmの範囲にあり、
最大膨張温度における膨張倍率が100%超であり、
凝集微小球の含有率が5重量%以下であり、
25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球の含有率が5重量%以下である、
熱膨張性微小球。
【請求項22】
前記外殻の外表面に付着した微粒子充填剤からさらに構成され、微粒子充填剤の平均粒子径が10μm以下である、請求項21に記載の熱膨張性微小球。
【請求項23】
凝集微小球の含有率が1重量%以下であり、25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球の含有率が3重量%以下である、請求項21または22に記載の熱膨張性微小球
【請求項24】
前記外殻を溶解させない液状有機化合物で湿潤させた状態にある、請求項21〜23のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【請求項25】
前記発泡剤が、エーテル構造を有し、塩素原子および臭素原子を含まない、炭素数2〜10の含弗素化合物を含む、請求項21〜24のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【請求項26】
粒度分布の変動係数が30%以下である、請求項25に記載の熱膨張性微小球。
【請求項27】
前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体とカルボキシル基含有単量体とを必須成分として含む単量体混合物を重合して得られ、前記ニトリル系単量体の重量割合が前記単量体混合物に対して20〜80重量%であり、前記カルボキシル基含有単量体の重量割合が80〜20重量%である、請求項25または26に記載の熱膨張性微小球。
【請求項28】
前記熱膨張性微小球が前記外殻の外表面に付着した微粒子充填剤からさらに構成され、前記微粒子充填剤の平均粒子径が10μm以下であり、前記微粒子充填剤が融点90℃以上の有機化合物および層状構造を有する無機化合物から選ばれた少なくとも1種の熱融着防止剤である、請求項25〜27のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【請求項29】
タイヤとリムの組み立て体の空洞部分に充填することにより、タイヤ受傷時に受傷部封止機能およびタイヤ内圧付与機能を示す、請求項25〜28のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【請求項30】
基材成分と、請求項11〜20のいずれかに記載の熱膨張した微小球および/または請求項21〜29のいずれかに記載の熱膨張性微小球とを含む、中空体組成物。
【請求項31】
請求項30に記載の中空体組成物を成形してなる、中空体成形品。
【請求項32】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球であって、
前記発泡剤が、エーテル構造を有し、塩素原子および臭素原子を含まない、炭素数2〜10の含弗素化合物を含み、
前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体とカルボキシル基含有単量体とを必須成分として含む単量体混合物を重合して得られ、前記ニトリル系単量体の重量割合が前記単量体混合物に対して20〜80重量%であり、前記カルボキシル基含有単量体の重量割合が80〜20重量%である、
熱膨張性微小球。
【請求項33】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤と、前記外殻の外表面に付着した熱融着防止剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球であって、
前記発泡剤が、エーテル構造を有し、塩素原子および臭素原子を含まない、炭素数2〜10の含弗素化合物を含み、
前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体とカルボキシル基含有単量体とを必須成分として含む単量体混合物を重合して得られ、前記ニトリル系単量体の重量割合が前記単量体混合物に対して20〜80重量%であり、前記カルボキシル基含有単量体の重量割合が80〜20重量%であり、
前記熱融着防止剤が融点90℃以上の有機化合物および層状構造を有する無機化合物から選ばれた少なくとも1種である、
熱膨張性微小球。
【請求項34】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤と、前記外殻の外表面に付着した熱融着防止剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球であって、
前記発泡剤が、エーテル構造を有し、塩素原子および臭素原子を含まない、炭素数2〜10の含弗素化合物を含み、
前記熱融着防止剤が融点90℃以上の有機化合物および層状構造を有する無機化合物から選ばれた少なくとも1種である、
熱膨張性微小球。


【図1】
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【図2】
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【国際公開番号】WO2005/049698
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515601(P2005−515601)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016940
【国際出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【特許番号】特許第3955612号(P3955612)
【特許公報発行日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】