説明

熱膨張性ゴム組成物を含むトレッドを有する車両用タイヤ

本発明は、未加硫状態においては熱膨張性であり、加硫状態においては膨張しているゴム組成物を含むトレッドを有する車両用のタイヤ、特に、冬季タイヤに関し、該組成物は、天然ゴムおよび/またはポリブタジエンのようなジエンエラストマー、70〜120phrのシリカおよび/またはカーボンブラックのような補強用充填剤、5phrと25phrの間の量のアゾジカルボンアミド化合物のような発泡剤および5phrと25phrの間の量の、70℃と150℃の間の溶融温度を有する尿素のような熱溶融性化合物含み、上記発泡剤と熱溶融性化合物の総含有量は15phrよりも多く、好ましくは20phrよりも多いことを特徴とする。この2つの化合物の推奨する高量での組合せ使用は、融氷上でのタイヤのグリップ性を強力に増進させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 本発明の分野
本発明は、空気式または非空気式車両タイヤ用、特に、スタッドを装着することなしに氷または薄氷(black ice)で覆われた地面表面上を回転することのできる “冬季”空気式タイヤ(“スタッドレス”空気式タイヤとしても知られる)用のトレッドとして使用し得るゴム組成物に関する。
本発明は、さらに詳細には、典型的に−5℃と0℃の間の温度範囲内において直面する“融氷”条件下で回転するのに特に適する冬季空気式タイヤ用のトレッドに関する。そのような範囲内では、車両の通過中のタイヤの圧力によって氷の表面融解が生じ、氷は、これらの空気式タイヤのグリップ性に有害な水の薄膜によって覆われることを特に思い起すべきである。
【背景技術】
【0002】
2. 従来技術
スタッドの有害な作用、特に、地面自体の表面舗装に対するスタッドの強力な摩耗作用および有意に劣化する乾燥地面上での道路挙動を回避するために、空気式タイヤ製造業者等は、ゴム組成物自体の配合を改変することからなる種々の解決策を提供している。
そのように、先ず第1に、例えば、炭化ケイ素のような高硬度を有する固形粒子を混入するという提案がなされており(例えば、US 3 878 147号参照)、これら固形粒子の相当数は、トレッドが磨耗するにつれてトレッド表面に達し、ひいては氷と接触する。そのような粒子は、周知の“クロー(claw)”作用によって硬質な氷上でマイクロスタッドとして実際に作用し得、地面に対して比較的侵略的な状態にある;そのような粒子は、融氷上での回転条件には良好に適するものではない。
【0003】
従って、特にトレッドを構成する組成物中に水溶性粉末を混入することからなる他の解決法が提案されている。そのような粉末は、雪または融氷との接触時に多かれ少なかれ溶解し、一方では、トレッドの地面へのグリップ性を改良し得る多孔のタイヤトレッド表面での形成を、他方では、タイヤと地面表面間に形成された液体膜を排出する通路として作用する溝の形成を可能にする。水溶性粉末の例としては、例えば、セルロース粉末、ビニルアルコール粉末または澱粉粉末、或いはグアーガム粉末またはキサンタンガム粉末の使用を挙げることができる(例えば、特許出願JP 3‐159803号、JP 2002‐211203号、EP 940 435号、WO 2008/080750号およびWO 2008/080751号を参照されたい)。
【0004】
また、高硬度または水溶性のいずれでもないが、にもかかわらず有効な表面微細粗さを生じさせることのできる粉末粒子を使用することも提案されている(特に、特許出願WO 2009/083125号およびWO 2009/112220号参照)。
【0005】
最後に、トレッドの氷上でのグリップ性能を改良するためには、ジエンエラストマー、発泡剤および各種他の添加剤をベースとする発泡ゴムの層を使用することも周知である。例えば、ニトロ、スルホニルまたはアゾ化合物のようなこれらの発泡剤は、熱活性化中、例えば、空気式タイヤの加硫中に、大量のガス(特に窒素)を放出し、従って、そのような発泡剤を含むゴム組成物のような十分に軟質の材料内に気泡の形成をもたらし得る。冬季空気式タイヤ用のそのような発泡ゴム配合物は、例えば、特許文献JP 2003‐183434号、JP 2004‐091747号、JP 2006‐299031号、JP 2007‐039499号、JP 2007‐314683号、JP 2008‐001826号、JP 2008‐150413号、EP 826 522号、US 5 147 477号およびUS 6 336 487号に記載されている。
【発明の概要】
【0006】
3. 発明の簡単な説明
発泡ゴムの使用に関連する上記技術の研究中に、本出願人等は、融氷上でのトレッドのグッリプ性を大いに改良することを可能にする、高含有量の発泡剤と熱溶融性化合物組合せをベースとする特定のゴム組成物を見出した。
【0007】
結果として、本発明は、トレッドが、未加硫状態で、少なくとも、ジエンエラストマー、70〜120phrの補強用充填剤、5phrと25phrの間の量の発泡剤、および5phrと25phrの間の量の、融点が70℃と150℃の間である熱溶融性化合物を含む熱膨張性ゴム組成物を含み、発泡剤と熱溶融性化合物の総含有量が15phrよりも多いことを特徴とするタイヤに関する。
【0008】
また、本発明は、上述したような本発明に従う未硬化タイヤを硬化(加硫)させた後に得られる加硫状態のタイヤにも関する。
本発明のタイヤは、特に、4×4 (四輪駆動)車およびSUV (スポーツ用多目的)車のような乗用車タイプの自動車;二輪車(特に、オートバイ);さらにまた、特に、バン類および重量車両(即ち、地下鉄列車、バス、トラックおよびトラクターユニットのような重量道路輸送車)から選ばれる産業用車両に装着することを意図する。
【0009】
本発明およびその利点は、以下の説明および典型的な実施態様に照らして容易に理解し得るであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
4. 本発明の詳細な説明
本説明においては、他に明確に断らない限り、示す百分率(%)は、全て質量%である。略記“phr”は、エラストマー(数種のエラストマーが存在する場合はエラストマーの総量)の100質量部当りの質量部を意味する。
さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、“a”よりも大きいから“b”よりも小さいまでに及ぶ値の範囲を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、“a”から“b”に及ぶ値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
【0011】
従って、本発明のタイヤは、そのトレッドが、未加硫状態において、熱膨張性ゴム組成物を、少なくとも道路表面と直接接触するトレッドの上部部分において含むという本質的な特徴を有し、上記の組成物は、少なくとも下記を含む:
・少なくとも1種のジエンエラストマー;
・70〜120phrの少なくとも1種の補強用充填剤;
・5phrと25phrの間の量の少なくとも1種の発泡剤;
・5phrと25phrの間の量の、融点が70℃と150℃の間である少なくとも1種の熱溶融性化合物;
・15phrよりも多い、発泡剤と熱溶融性化合物の総含有量。
上記の各化合物は、以下で詳細に説明する。
【0012】
4‐1. ジエンエラストマー
知られている通り、 “ジエン”タイプの“エラストマー”(またはゴム、これら2つの用語は同義である)は、ジエンモノマー(共役型であり得るまたはあり得ない2個の炭素‐炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも一部由来するエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきであることを思い起こされたい。
【0013】
ジエンエラストマーは、知られている通り、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”と称するジエンエラストマーおよび“本質的に飽和”と称するジエンエラストマーに分類し得る。ブチルゴム、さらにまた、例えば、EPDMタイプのジエン/α‐オレフィンコポリマーは、常に15%(モル%)未満である、低いまたは極めて低いジエン起原単位含有量を有する本質的に飽和のジエンエラストマーのカテゴリーに属する。逆に、“本質的に不飽和のジエンエラストマー”なる表現は、15%(モル%)よりも多いジエン起源(共役ジエン類)の単位含有量を有する共役ジエンモノマーに少なくとも一部由来するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。“本質的に不飽和”のジエンエラストマーのカテゴリーにおいては、“高不飽和ジエンエラストマー”なる表現は、特に、50%よりも多いジエン起源(共役ジエン)の単位含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0014】
好ましくは、少なくとも1種の高不飽和タイプのジエンエラストマー、特に、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーを使用する;そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、およびそのようなコポリマーの混合物からなる群から選ばれる。
【0015】
上記エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液中または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤(star‐branching agent)或いは官能化剤によってカップリング化および/または星型枝分れ化或いは官能化し得る。カーボンブラックとカップリングさせるには、例えば、C‐Sn結合を含む官能基または、例えば、ベンゾフェノンのようなアミノ化官能基を挙げることができ;シリカのような補強用無機充填剤とカップリングさせるには、例えば、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、US 6 013 718号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、US 5 977 238号に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、US 6 815 473号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)、或いはポリエーテル基(例えば、US 6 503 973号に記載されているような)を挙げることができる。また、他の官能化エラストマーの例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)も挙げることができる。
【0016】
以下は、好ましく適している:ポリブタジエン、特に、4%と80%の間の1,2‐単位含有量を有するポリブタジエンまたは80%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のスチレン含有量、4%と65%の間のブタジエン成分1,2‐結合含有量および20%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のガラス転移温度(“Tg”、ASTM D3418‐82に従って測定)を有するコポリマー;または、イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および−25℃と−50℃の間のTgを有するコポリマー。
【0017】
ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合は、5質量%と50質量%の間、特に10質量%と40質量%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン成分1,2‐単位含有量、6%と80%の間のブタジエン成分トランス‐1,4‐単位含有量、5%と70%の間のイソプレン成分1,2‐+3,4‐単位含有量および10%と50%の間のイソプレン成分トランス‐1,4‐単位含有量を有するコポリマー、さらに一般的には、−20℃と−70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが、特に適している。
【0018】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、90%よりも多いシス‐1,4‐結合含有量を有するポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。
【0019】
さらに具体的で且つ好ましい実施態様によれば、上記熱膨張性ゴム組成物は、50〜100phrの天然ゴムまたは合成ポリイソプレンを含む;上記天然ゴムまたは合成ポリイソプレンは、特に、多くとも50phrの90%よりも多いシス‐1,4‐結合含有量を有するポリブタジエンとのブレンド(混合物)として使用し得る。
もう1つの特定で且つ好ましい実施態様によれば、上記熱膨張性ゴム組成物は、50〜100phrの90%よりも多いシス‐1,4‐結合含有量を有するポリブタジエンを含む;上記ポリブタジエンは、特に、多くとも50phrの天然ゴムまたは合成ポリイソプレンとのブレンドとして使用し得る。
上記ジエンエラストマー以外の合成エラストマー、またはエラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーでさえも、本発明に従うトレッドのジエンエラストマーと少量で組合せ得る。
【0020】
4‐2. 充填剤
ゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、カップリング剤と既知の方法で組合せるシリカのような補強用無機充填剤を使用し得る。
そのような充填剤は、好ましくは、ナノ粒子からなり、その平均粒度(質量による)は、1マイクロメートルよりも低く、一般に500nmよりも低く、通常20nmと200nmの間、特に好ましくは20nmと150nmの間である。
【0021】
補強用充填剤全体(特に、シリカまたはカーボンブラックまたはシリカとカーボンブラックの混合物)の含有量は、70phrと120phrの間の量である。70phr以上の含有量が、良好な機械的強度にとっては好ましい。120phrよりも多いと、ゴム層の過度の剛性のリスクが存在する。これらの理由により、補強用充填剤全体の含有量は、さらに好ましくは、75〜115phrの範囲内にある。
【0022】
全てのカーボンブラック類、特に、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347およびN375ブラック類のような、100、200または300シリーズのブラック類(ASTM級)のようなタイヤにおいて通常使用するカーボンブラック類(“タイヤ級”ブラック類)が、カーボンブラックとして適している。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、ジエン(特にイソプレン)エラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
【0023】
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願 WO‐A‐2006/069792号、WO‐A‐2006/069793号、WO‐A‐2008/003434号およびWO‐A‐2008/003435号に記載されているような官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
【0024】
“補強用無機充填剤”なる表現は、この場合、カーボンブラックに対比して“白色充填剤”、“透明充填剤”として或いは“非黒色充填剤”としても知られており、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、空気式タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得、換言すれば、その補強役割において通常のタイヤ級カーボンブラックと置換わり得る、その色合およびその起源(天然または合成)の如何にかかわらない任意の無機または鉱質充填剤を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
【0025】
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特に、シリカ(SiO2)は、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/g、特に60m2/gと300m2/gの間にあるBET表面積とCTAB比表面積を有する任意の沈降または焼成シリカであり得る。高分散性沈降シリカ(“HDS”)としては、例えば、Degussa社からの“Ultrasil”7000および“Ultrasil”7005シリカ類;Rhodia社からの“Zeosil”1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からの“Hi‐Sil”EZ150Gシリカ;Huber社からの“Zeopol”8715、8745または8755シリカ類が挙げられる。
【0026】
もう1つの特に好ましい実施態様によれば、補強用無機充填剤、特に、シリカを主要充填剤として使用し、この補強用無機充填剤に、カーボンブラックを、有利には、多くとも15phrに等しい、特に1〜10phrの範囲内の少含有量で添加し得る。
【0027】
補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、知られている通り、無機充填剤(その粒子表面)とジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質の満足し得る結合を付与することを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)を使用する。特に、少なくとも二官能性のオルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用する。
特に、例えば、出願 WO 03/002648号(またはUS 2005/016651号)およびWO 03/002649号(またはUS 2005/016650号)に記載されているような、その特定の構造に応じて“対称形”または“非対称形”と称されるシランポリスルフィド類を使用する。
【0028】
特に適切なのは、以下の定義に限定されることなく、下記の一般式(I)に相応するシランポリスルフィドである:
(I) Z‐A‐Sx‐A‐Z
[式中、xは、2〜8 (好ましくは2〜5)の整数であり;
A符号は、同一または異なるものであって、2価の炭化水素系基(好ましくはC1〜C18アルキレン基またはC6〜C12アリーレン基、特にC1〜C10、特にC1〜C4アルキレン基、特にプロピレン)であり;
Z符号は、同一または異なるものであって、下記の3つの式の1つに相応する:
【化1】

(式中、R1基は、置換されているかまたは置換されてなく、互いに同一かまたは異なるものであって、C1〜C18アルキル、C5〜C18シクロアルキルまたはC6〜C18アリール基(好ましくはC1〜C6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC1〜C4アルキル基、特にメチルおよび/またはエチル)を示し;
R2基は、置換されているかまたは置換されてなく、互いに同一かまたは異なるものであって、C1〜C18アルコキシルまたはC5〜C18シクロアルコキシル基(好ましくはC1〜C8アルコキシルおよびC5〜C8シクロアルコキシル基から選ばれた基、より好ましくはC1〜C4アルコキシル基、特に、メトキシルおよびエトキシルから選ばれた基)を示す)]。
【0029】
上記式(I)に相応するアルコキシシランポリスルフィドの混合物、特に、標準の商業的に入手可能な混合物の場合、“x”の平均値は、好ましくは2と5の間、より好ましくは4に近い分数である。しかしながら、本発明は、例えば、アルコキシシランジスルフィド(x = 2)によっても有利に実施し得る。
【0030】
さらに詳細には、シランポリスルフィドの例としては、例えば、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたはビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドのようなビス((C1〜C4)アルコキシル(C1〜C4)アルキルシリル(C1〜C4)アルキル)ポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)が挙げられる。特に、これらの化合物のうちでは、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2を有するTESPTと略記するビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2を有するTESPDと略記するビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。また、好ましい例としては、上述した特許出願WO 02/083782号(またはUS 7 217 751号)に記載されているような、ビス(モノ(C1〜C4)アルコキシルジ(C1〜C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、特に、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0031】
アルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤としては、特に、特許出願WO 02/30939号(またはUS 6 774 255号)、WO 02/31041号(またはUS 2004/051210号)およびWO 2007/061 550号に記載されているような、二官能性POS (ポリオルガノシロキサン)類またはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式(I)において、R2 = OH)、または、例えば、特許出願WO 2006/125532号、WO 2006/125533号またはWO 2006/125534号に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持するシランまたはPOS類が挙げられる。
【0032】
他のシランスルフィドの例としては、例えば、特許または特許出願US 6 849754号、WO 99/09036号、WO 2006/023815号またはWO 2007/098080号に記載されているような、少なくとも1個のチオール(‐SH)官能基および/または少なくとも1個のブロックトチオール官能基を担持するシラン(メルカプトシランと称する)が挙げられる。
【0033】
勿論、特に上記の出願WO 2006/125534号に記載されているような、上述したカップリング剤の混合物も使用し得る。
上記ゴム組成物は、シリカのような無機充填剤で補強した場合、好ましくは2phrと15phrの間、より好ましくは3phrと12phrの間の量のカップリングを含む。
【0034】
当業者であれば、この項で説明した補強用無機充填剤と等価の充填剤として、もう1つの性質、特に有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層によって被覆されているか或いはその表面に、官能部位、特にヒドロキシル部位を含み、該充填剤と上記エラストマー間の結合を形成させるためのカップリング剤の使用を必要とすることを条件として使用し得ることを理解されたい。
【0035】
4‐3. 発泡剤および関連ホットメルト化合物
知られている通り、発泡剤は、熱活性化中に、例えば、空気式タイヤの加硫中に、大量のガスを放出し、従って、気泡の形成をもたらすことを意図する熱分解性化合物である。従って、ゴム組成物中へのガスの放出は、発泡剤のこの熱分解に由来する。殆どの場合、形成されるガスは窒素であるが、使用する発泡剤次第では、このガスが二酸化炭素を含有することもあり得る。
吸熱または発熱タイプの物理または化学発泡剤が存在する。好ましくは化学発泡剤、さらに好ましくは発熱タイプの化学発泡剤を使用する。
【0036】
好ましく使用することのできる発泡剤のうちでは、特に、アゾ、ニトロソ、ヒドラジン、カルバジド、セミカルバジド、テトラゾール、カーボネートおよびシトレート化合物、並びにそのような化合物の混合物からなる群から選ばれる発泡剤が挙げられる。
これらの発泡剤は、さらに好ましくは、ジアゾ、ジニトロソ、スルホニルセミカルバジド、スルホニルヒドラジド化合物、およびそのような化合物の混合物からなる群から選ばれる。これらの化合物のうちでは、特に、ジニトロソ‐ペンタン‐エチレンテトラミン、ジニトロソ‐ペンタン‐スチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、N,N'‐ジメチル‐N,N'‐ジニトロソフタルアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'‐オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p‐トルエンスルホニルセミカルバジドまたはp,p'‐オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)を挙げることができる;これらの例においては、形成されるガスは、窒素と二酸化炭素の混合物からなる。
【0037】
二酸化炭素のみを放出する発泡剤のうちでは、例えば、以下の化合物をあげることができる:アルカリおよびアルカリ土類金属の炭酸塩および重炭酸塩、例えば、炭酸または重炭酸ナトリウム;炭酸または重炭酸アンモニウム;モノクエン酸ナトリウムのようなクエン酸塩;マロン酸およびクエン酸。
好ましくは、上記発泡剤の含有量は、8phrと20phrの間である。
【0038】
本発明の1つの本質的特徴は、融点が70℃と150℃の間、好ましくは100℃と150℃の間、より好ましくは110℃と140℃の間である熱溶融性化合物を上記発泡剤に添加することである。融点は、有機または無機熱溶融性化合物の周知の基本的物理定数である(例えば、“Handbool of Chemistry and Physics”において得ることができる):融点は、任意の既知の方法によって、例えば、シール法(Thiele method)、コフラーベンチ法(Kofler bench method)またはDSCによって検証し得る。
【0039】
この熱溶融性化合物の含有量は、好ましくは、8phrと20phrの間の量である。この熱溶融性化合物は、発泡剤が熱分解し、気泡を放出する前または放出するときに上記の特定の温度範囲内において液体に転換する役割を有する。
【0040】
70℃と150℃の間、好ましくは100℃と150℃の間、より好ましくは110℃と140℃の間の融点を有する任意の化合物が、適切であるようである。特に、その形態(例えば、粉末形にある)およびその化学的性質の双方に関して空気式タイヤ用の標準のゴム組成物と適合性があると当業者にとって知られているゴム添加剤を使用し得る。
例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンのような熱可塑性ポリマーを特に挙げることができる。
【0041】
また、高ガラス転移温度(Tg)を有する熱可塑性炭化水素系樹脂の例としては、70℃と150℃の間、好ましくは100℃と150℃の間、より好ましくは110℃と140℃の間にある融点(または、この場合は等価とみなされる性質、即ち、例えば既知の“Ring and Ball”法(規格ISO 4625)に従って測定した軟化点)を挙げることができる。
用語“樹脂”とは、本出願においては、当業者にとって既知であるように、定義によれば、オイルのような液体可塑剤化合物とは対照的に、室温(23℃)で固体である化合物に対して使用される。
【0042】
これらの炭化水素系樹脂は、炭素と水素を本質的にベースとする、当業者にとって周知のポリマーであり、特に、ポリマーマトリックス中で可塑剤または粘着付与剤として使用し得る。これらの炭化水素樹脂は、脂肪族、脂環式、芳香族、水素化芳香族、または脂肪族/芳香族タイプであり得、即ち、脂肪族および/または芳香族モノマーをベースとし得る。これらの炭化水素樹脂は、石油系(そのような場合、石油樹脂としても知られている)または石油系でない天然または合成樹脂であり得る。そのような熱可塑性炭化水素系樹脂は、シクロペンタジエンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペン・フェノールのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C9留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、α‐メチルスチレンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれる。
【0043】
1つの特に好ましい実施態様によれば、選択する熱溶融性化合物は、尿素または尿素の熱溶融性誘導体である。尿素は、特に、目的とする用途に良好に適する融点を有する。
【0044】
トレッドの融氷上での最適なグリップ性を得るための本発明の本質的な特徴は、発泡剤と熱溶融性化合物の総量が、15phrよりも多く、好ましくは15phrと40phrの間の量であることである。この総量は、より好ましくは20phrよりも多く、特に20phrと40phrの間、特に20phrと35phrの間の量である。
【0045】
4‐4. 各種添加剤
また、上記熱膨張性ゴム組成物は、例えば、オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;可塑剤;補強用樹脂;イオウまたはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドをベースとする架橋系;加硫促進剤または加硫活性化剤のような、空気式タイヤのトレッド用のゴム組成物において慣例的に使用する通常の添加剤の全部または数種を含み得る。
【0046】
また、1つの好ましい実施態様によれば、上記熱膨張性ゴム組成物は、液体(20℃で)である可塑化剤も含み、その役割は、マトリックスをジエンエラストマーおよび補強用充填剤を希釈することによって軟化させることである;そのTg (ガラス転移温度)は、定義によれば、−20℃よりも低く、好ましくは−40℃よりも低い。
さらに好ましくは、本発明のタイヤトレッドの最適な性能のために、この液体可塑剤は、補強用充填剤対液体可塑剤の質量比が、2.0よりも大きい、より好ましくは2.5よりも大きい、特に3.0よりも大きいような比較的低含有量で使用する。
【0047】
芳香族性または非芳香族性いずれかの任意の増量剤オイル、即ち、ジエンエラストマーに対するその可塑化特性について知られている任意の液体可塑剤を使用し得る。周囲温度(20℃)において、これらの可塑剤またはオイル類は、多かれ少なかれ粘稠であり、特にその性質からして室温で固体である可塑化用炭化水素系樹脂と対比して液体(即ち、注釈すれば、最終的にその容器の形に適合する能力を有する物質)である。
【0048】
ナフテン系オイル (低または高粘度、特に水素化されているまたは水素化されていない)、パラフィン系オイル、MES (中度抽出溶媒和物(medium extracted solvate))オイル、TDAE(処理留出物芳香族系抽出物(treated distillate aromatic extract))オイル、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤およびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる液体可塑剤が、特に適している。
【0049】
ホスフェート可塑剤としては、例えば、12個と30個の間の炭素原子を含有するリン酸可塑剤、例えば、リン酸トリオクチルが挙げられる。エステル可塑剤の例としては、特に、トリメリテート、ピロメリテート、フタレート、1,2‐シクロヘキサンジカルボキシレート、アジペート、アゼレート、セバケート、グリセリントリエステルおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる化合物を挙げることができる。上記トリエステルの中では、好ましくは、特に不飽和C18脂肪酸、即ち、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびこれらの酸の混合物からなる群から選ばれる不飽和脂肪酸から主として(50質量%よりも多く、より好ましくは80質量%よりも多くにおいて)なるグリセリントリエステルを挙げることができる。さらに好ましくは、合成起原または天然起原(この場合は、例えば、ヒマワリまたはナタネ植物油)のいずれであれ、使用する脂肪酸は、50質量%よりも多くの、さらにより好ましくは80質量%よりも多くのオレイン酸を含む。高含有量のオレイン酸を含むそのようなトリエステル(トリオレアート)は周知である;例えば、そのようなトリエステルは、特許出願WO 02/088238号に、タイヤ用のトレッド中の可塑化剤として記載されている。
【0050】
また、上記熱膨張性層のエラストマー組成物は、カップリング剤を使用する場合のカップリング活性化剤、無機充填剤を使用する場合の無機充填剤の被覆用の薬剤、或いはゴムマトリックス中での充填剤の分散性を改善し且つ組成物の粘度を低下させることによって、知られている通り、生状態における組成物の被加工能力を改善することのできるより一般的な加工助剤も含有し得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシランのような加水分解性シランまたはヒドロキシシラン類;ポリオール類;ポリエーテル類;アミン類;または、ヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサン類である。
【0051】
4‐5. 組成物の製造
上記ゴム組成物は、適切なミキサー内で、例えば、当業者にとって周知の一般的手順に従う3つの連続する製造段階、即ち、130℃と200℃の間、好ましくは145℃と185℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階とも称する);その後の、発泡剤を混入する、低めの温度(好ましくは100℃よりも低い)の第2(非生産)段階;および、最後の、典型的には120℃よりも低い、例えば、60℃と100℃の間の低温で機械加工する第3段階(“生産”段階とも称する)を使用して製造し、この仕上げ段階において架橋または加硫系を混入する。
【0052】
そのようなゴム組成物の製造において使用し得る方法は、例えば、好ましくは、下記の段階を含む:
・ミキサー内で、ジエンエラストマー中またはジエンエラストマーの混合物中に、少なくとも上記充填剤および熱溶融性化合物を混入し、全てを、1以上の工程で、130℃と200℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する段階;
・混ぜ合せた混合物を100℃よりも低い温度に冷却する段階;
・その後、発泡剤を、そのようにして得られ冷却した混合物に混入し、全てを、100℃よりも低い最高温度に達するまで熱機械的に混練する段階;
・その後、架橋系を混入する段階;
・全てを120℃よりも低い最高温度まで混練する段階;
・そのようにして得られたゴム組成物を押出またはカレンダー加工する段階。
【0053】
例えば、第1の非生産段階において、全ての必須成分、任意構成成分としてのさらなる被覆剤または加工助剤、並びに発泡剤と架橋系を除いた各種他の添加剤を、標準の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入する。熱機械的に加工し、そのようにして得られた混合物を落下させ、冷却した後、熱機械的加工の第2(非生産)段階を、同じ密閉ミキサー内で実施し、この第2段階において、発泡剤をより穏やかな温度(例えば、60℃)において混入し、100℃よりも低い最高落下温度に到達させる。その後、架橋系を、一般的には開放ミルのような開放ミキサー内で低温にて導入する。その後、混ぜ合せた混合物を、数分間、例えば、5分と15分の間の時間で混合する(生産段階)。
【0054】
架橋系自体は、好ましくは、イオウと、一次加硫促進剤、特にスルフェンアミドタイプの促進剤とをベースとする。この加硫系に、各種既知の二次促進剤または加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)等を添加し、上記第1非生産段階中および/または上記生産段階中に混入する。イオウ含有量は、好ましくは0.5phrと5phrの間であり、また、一次促進剤の含有量は、0.5phrと8phrの間である。
【0055】
(一次または二次)促進剤としては、イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫促進剤として作用し得る任意の化合物、特に、チアゾールタイプの促進剤およびその誘導体、チウラムおよびジチオカルバミン酸亜鉛タイプの促進剤を使用することができる。これらの促進剤は、例えば、2‐メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(“MBTS”と略記する)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(“TBZTD”)、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“CBS”)、N,N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“DCBS”)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“TBBS”)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンイミド(“TBSI”)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(“ZBEC”)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択する。
【0056】
その後、そのようにして得られた最終組成物を、例えば、特に実験室での特性決定のためのシートまたはスラブの形にカレンダー加工するか、或いは熱膨張性トレッドの形にカレンダー加工または押出加工する。
未硬化(即ち、未加硫)状態、従って、膨張していない状態においては、上記熱膨張性ゴム組成物のD1で示す密度または比重は、好ましくは1.100〜1.400g/cm3、より好ましくは1.150〜1.350g/cm3の範囲内である。
【0057】
加硫(即ち硬化)は、既知の方法で、一般的には130℃と200℃の間の温度で、特に硬化温度、使用する加硫系および当該組成物の加硫速度に応じて、例えば、5分と90分の間で変動し得る十分な時間で実施する。
発泡剤が大量のガスを放出し、発泡ゴム組成物中に気泡の形成を、最終的にはその膨張をもたらすのはこの加硫工程においてである。
【0058】
硬化(即ち、加硫)状態においては、上記ゴム組成物の膨張したとき(即ち発泡ゴム状態)のD2で示す密度は、好ましくは0.700 g/cm3と1.000g/cm3の間、より好ましくは0.750〜0.950g/cm3の範囲内である。
TEで示すその体積膨張比(%で表す)は、好ましくは25%と75%の間、より好ましくは30%〜60%範囲内にある;この膨張比TEは、上記の密度D1およびD2から、下記のように既知の方法で算出する:
TE = [(D1/D1)−1]×100
【0059】
5. 本発明の典型的な実施態様
上述した熱膨張性ゴム組成物は、以下の試験において実証するように、任意のタイプの車両用の冬季空気式タイヤのトレッドにおいて、特に、乗用車の空気式タイヤにおいて有利に使用し得る。
この試験の必要条件として、2通りのゴム組成物(C‐1およびC‐2で示す)を製造した;その配合は、下記の表1に示している(phrで表した各種成分の含有量)。組成物C‐0は対照組成物であり、組成物C‐1は、本発明に従う組成物であり、さらに発泡剤および熱溶融性化合物を含む。液体可塑剤の含有量を組成物C‐1において調整して、硬化後の剛性を、対照組成物C‐0の剛性と同じレベルに維持した(規格ASTM D 2240‐86に従って測定した、双方の場合におけるおよそ51に等しいショアA硬度)。
【0060】
これらの組成物の製造は、以下の方法で実施した:補強用充填剤(シリカ)、ジエンエラストマー(NRとBRのブレンド)、組成物C‐1用の熱溶融性化合物(尿素)、さらにまた、加硫系および発泡剤を除く各種他の成分を、初期容器温度がおよそ60℃である密閉ミキサーに連続して導入した;ミキサーをそのようにしておよそ70%(容量%)まで満たした。その後、熱機械加工(非生産段階)を、およそ150℃の最高“落下”温度に達するまで、およそ2〜4分間の1工程で実施した。その後、そのようにして得られた混合物を100℃よりも低い温度に冷却し、冷却した混合物を同じ密閉ミキサー(初期温度60℃) 内に再導入し、その後、組成物C‐1においては、発泡剤(ジアゾ化合物)を上記混合物(およそ70容量%まで充たしたミキサー)内に混入した。その後、第2の熱機械的加工(非生産段階)を、100℃よりも低い最高落下温度に達するまで、およそ2〜4分間の1工程で実施した。そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、次いで、スルフェンアミドタイプの促進剤とイオウとを30℃の開放ミキサー(ホモフィッシャー)内で混入し、混ぜ合せた混合物を数分間混合した(生産段階)。
【0061】
その後、そのようにして製造した組成物C‐0およびC‐1を、それぞれT‐0 (対照タイヤ)およびT‐1 (本発明に従うタイヤ)を示し、通常に製造した205/65 R15のサイズを有し且つそれらタイヤを構成するゴム組成物は別にして全ての点で同一であるラジアルカーカス乗用車冬季空気式タイヤ用のトレッドとして使用した。
【0062】
表2は、硬化前後において測定した特性を示す:等価のショア硬度において、本発明に従う空気式タイヤのトレッドは、硬化後、即ち、発泡ゴム(即ち、膨張)状態にある時点で、およそ47%の特段に高い体積膨張比に相応する有意に低下した密度を有する。
【0063】
T‐0およびT‐1タイヤを、公称タイヤ圧において、アンチロックブレーキシステム(ABS装置)および加速中の滑り防止装置 (トラクションコントロールシステム用のTCS装置)を備えた乗用車(“Honda Civic”)の前輪と後輪に装着した。氷で覆われ、−2℃の温度(“融氷”条件)に維持した進路上での縦方向急ブレーキ(ABS作動)中に20km/時から5km/時に変速するのに必要な距離を測定する。
新品空気式タイヤに対するこの最初の1連の試験の後、これらのタイヤを、磨耗開始のために、乾燥地面上でのおよそ10000kmのサーキット上での走行に供した。次に、部分的に摩耗したタイヤを、再度、上述したような氷上でのグリップ性試験に供する。
【0064】
全ての走行試験の結果を、下記の表3に、相対単位で報告している;基本値100を、対照タイヤT‐0において選定している。任意に100に設定した対照の値よりも高い値が、改良された結果、即ち、より短い制動距離を示す。
改良(6%)が新品空気式タイヤにおいて既に観察されているものの、融氷上での制動距離は、著しく且つ予期に反して、10000kmの走行後、対照空気式タイヤに対比してほぼ50%上昇していることに注目されたい。
【0065】
この結果は、加硫(膨張)した時点での上記発泡ゴム組成物の、本発明の空気式タイヤの使用中に、発泡剤と熱溶融性化合物の推奨する高含有量での組合せ使用によって、特段に有効で且つ有意な表面微小粗さを生じる能力を極めて明白に例証している。
【0066】
表1

(1) 4.3%の1,2‐単位;2.7%のトランス単位;97%のシス‐1,4単位を含むBR (Tg = −104℃);
(2) 天然ゴム(解凝固化物)
(3) Degussa社からのシリカ“Ultrasil 7000”、“HDS”タイプ (BETおよびCTAB:約160m2/g);
(4) カップリング剤 TESPT (Degussa社からの“Si69”);
(5) ASTM級N234 (Cabot社);
(6) アゾジカルボンアミド (Sankyo Kasei社からの“Cellmic C‐22”);
(7) 尿素 (Mitsui Chemical社);
(8) MESオイル (Shell社からの“Catenex SNR”);
(9) ジフェニルグアニジン (Flexsys社からのPerkacit DPG);
(10) N‐1,3‐ジメチルブチル‐N‐フェニル‐パラ‐フェニレンジアミン (Flexsys社からの“Santoflex 6‐PPD”);
(11) N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド (Flexsys社からの“Santocure CBS”)。
【0067】
表2

【0068】
表3

(1) 新品空気式タイヤ
(2) 部分摩耗空気式タイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドが、未加硫状態で、少なくとも、ジエンエラストマー、70〜120phrの補強用充填剤、5phrと25phrの間の量の発泡剤、および5phrと25phrの間の量の、融点が70℃と150℃の間である熱溶融性化合物を含む熱膨張性ゴム組成物を含み、発泡剤と熱溶融性化合物の総含有量が15phrよりも多いことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記ジエンエラストマーが、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーである、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム組成物が、50〜100phrの天然ゴムまたは合成ポリイソプレンを含む、請求項2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記天然ゴムまたは合成ポリイソプレンを、多くとも50phrの、90%よりも多いシス‐1,4結合含有量を有するポリブタジエンとのブレンドとして使用する、請求項3記載のタイヤ。
【請求項5】
前記組成物が、50〜100phrの、90%よりも多いシス‐1,4結合含有量を有するポリブタジエンを含む、請求項2記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ポリブタジエンを、多くとも50phrの天然ゴムまたは合成ポリイソプレンとのブレンドとして使用する、請求項5記載のタイヤ。
【請求項7】
前記補強用充填剤が、無機充填剤、カーボンブラック、または無機充填剤とカーボンブラックの混合物を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項8】
前記補強用充填剤の含有量が、75〜115phrの範囲内にある、請求項1〜7のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ゴム組成物が、20℃で液体である可塑剤を、補強用充填剤対液体可塑剤の質量比が2.0よりも大きい、好ましくは2.5よりも大きいような含有量でさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項10】
前記発泡剤が、アゾ、ニトロソ、ヒドラジン、カルバジド、セミカルバジド、テトラゾール、カーボネートおよびシトレート化合物、並びにそのような化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜9のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項11】
前記発泡剤が、ジアゾ、ジニトロソ、スルホニルセミカルバジドおよびスルホニルヒドラジド化合物、並びにそのような化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項10記載のタイヤ。
【請求項12】
前記発泡剤が、アゾジカルボンアミド化合物である、請求項11記載の空気式タイヤ。
【請求項13】
発泡剤の含有量が、8phrと20phrの間の量である、請求項1〜12のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項14】
熱溶融性化合物の含有量が、8phrと20phrの間の量である、請求項1〜13のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項15】
発泡剤と熱溶融性化合物の総量が、20phrよりも多く、好ましくは20phrと40phrの間の量である、請求項1〜14のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項16】
前記熱溶融性化合物の融点が、100℃と150℃の間、好ましくは110℃と140℃の間である、請求項1〜15のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項17】
前記熱溶融性化合物が、尿素または尿素の熱溶融性誘導体である、請求項1〜16のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項18】
前記熱膨張性ゴム組成物の密度が、1.100〜1.400g/cm3、好ましくは1.150〜1.350g/cm3の範囲内にある、請求項1〜17のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項記載の空気式タイヤを硬化させた後に得られる、加硫状態のタイヤ。
【請求項20】
膨張させた時点の前記ゴム組成物の密度が、0.700g/cm3と1.000g/cm3の間、好ましくは0.750〜0.950g/cm3の範囲内にある。請求項19項記載のタイヤ。
【請求項21】
膨張させた時点の前記ゴム層の体積膨張比が、25%と75%の間、好ましくは30%〜60%の範囲内にある、請求項19または20に記載のタイヤ。

【公表番号】特表2013−512289(P2013−512289A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540361(P2012−540361)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067669
【国際公開番号】WO2011/064128
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】