説明

熱融着性多層フィルム

【課題】
常温雰囲気下でのヒートシール部の易開封性に優れ、且つ高温雰囲気下で開封した場合、適度なヒートシール強度を有し、さらに開封時の剥離状態が安定した熱融着性多層フィルムを提供すること。
【解決手段】
融点が120〜150℃のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)10〜50重量%、極性基含有重合体(B)10〜40重量%、エチレン系重合体(C)20〜60重量%((A)、(B)及び(C)の合計で100重量%とする。)からなる凝集破壊層(1)及びポリオレフィン系ヒートシール層(2)さらに反対側の面に、エチレン系重合体或いはプロピレン系重合体からなるラミネート層(3)が積層されていることを特徴とする熱融着性多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装材の用途に適した熱融着性多層フィルムに関し、内容物の収納時のヒートシール強度と、内容物を取り出す際の開封容易性のバランスが優れた包装用等の用途に適し、特に、適度な高温雰囲気下でのヒートシール強度を有するため、ボイル殺菌あるいはレトルト殺菌等の加熱殺菌を伴う包装用途、中でも含気包装形態に好適な熱融着性多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品用途に用いられる包装材は密封性が良いと同時に内容物を取り出す際には容易に開封できる易開封性(イージーオープン性)を有することが望まれている。
この用途には、従来からポリプロピレン等のフィルムが利用されており、特許文献1には、プロピレン系樹脂(a)を含有してなるラミネート用樹脂層(A)と、プロピレン系樹脂(b1)及び密度0.955g/cm3以上の高密度ポリエチレン(b2)を合計で95重量%以上含有し、その重量比(b1)/(b2)が40/60〜75/25で、しかも、厚さが1〜15μmのヒートシール樹脂層(B)とが隣接して積層された共押出多層フィルムが提案されている。このフィルムはより広い温度範囲で容易に安定したヒートシールをすることが可能で、レトルト殺菌等の際にも破袋に耐えてヒートシール部の破損が防止でき、しかも、開封時にデラミネーションを起こすことなく容易に開封することができるとしている。しかし、これらイージーオープン性フィルムは、常温雰囲気下では開封時にデラミネーション、あるいは糸引き現象などを起こすことなく容易に開封可能だが、高温雰囲気下で開封した場合、ヒートシール強度の極度の低下、あるいは開封時にデラミネーション、糸引き現象など剥離状態が不安定になり、高温雰囲気下でのヒートシール強度と易開封性のバランスが良いとはいえない。
【0003】
【特許文献1】特開2005−88283(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は常温雰囲気下でのヒートシール部の易開封性に優れ且つ、高温雰囲気下で開封した場合、適度なヒートシール強度を有し、さらに開封時の剥離状態が安定し、ボイル殺菌あるいはレトルト殺菌等の加熱殺菌を伴う包装用途、中でも含気包装形態に適した熱融着性多層フィルムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、融点が120〜150℃のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)10〜50重量%、極性基含有重合体(B)10〜40重量%、エチレン系重合体(C)20〜60重量%((A)、(B)及び(C)の合計で100重量%とする。)からなる凝集破壊層(1)及びポリオレフィン系ヒートシール層(2)からなる熱融着性多層フィルムに関する。
また本発明は、凝集破壊層(1)のヒートシール層(2)が積層された面とは反対側の面に、エチレン系重合体或いはプロピレン系重合体からなるラミネート層(3)が積層されていることを特徴とする熱融着性多層フィルムに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱融着性多層フィルムは、常温雰囲気下でのヒートシール部の易開封性に優れ、且つ高温雰囲気下での適度なヒートシール強度、および易開封性に優れ、これらのバランスの良い熱融着性多層フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)
本発明に係わるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)は、融点が120〜150℃、好ましくは125〜147℃の範囲にある。かかる範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)は、通常プロピレン含有量が、98〜86重量%、好ましくは96〜88重量%の範囲にある。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等の炭素数が2〜10のα−オレフィンである。中でも、エチレン含有量が0.5〜8重量%、好ましくは1〜6重量%、1−ブテンが0.5〜10重量%、好ましくは1〜8重量%のランダム共重合体が低温熱融着性、易開封性のバランスに優れるので好ましい。
【0008】
また、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)(JIS K 7210、温度230℃)は、フィルムとして使用できる範囲であれば特に限定はないが、通常、0.5〜20g/10分、好ましくは1〜15g/10分の範囲である。
【0009】
極性基含有共重合体(B)
極性基含有重合体(B)としては、ポリエステル、ポリアミド等があるが中でもエチレン・極性基含有モノマー共重合体が好適である。ラジカル重合性極性基含有モノマーとしては、不飽和カルボン酸及びその誘導体、極性基含有芳香族ビニル化合物、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、窒素含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、ビニルエステル化合物などが例示される。
極性基含有モノマーには、ラジカル重合性モノマー、環状モノマー、イオン重合性モノマー等があり種々の方法でエチレンとの共重合体とされる。
不飽和カルボン酸には、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等があり、不飽和カルボン酸誘導体には、これらの酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、及びエステルなどの誘導体が例示される。
これらの中では、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル等が好ましい。
エチレン・極性基含有モノマーとの共重合体には、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アイオノマー、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチルと共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体が例示される。
また、極性基含有重合体(B)のメルトフローレート(MFR)(JIS K 7210、温度230℃)は、フィルムとして使用できる範囲であれば特に限定はないが、通常、0.5〜20g/10分、好ましくは1〜15g/10分の範囲である。
【0010】
エチレン系重合体(C)
エチレン系重合体(C)には、従来公知の種々のポリエチレン、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレンがあり、中でも直鎖状低密度ポリエチレン(D)が好適であるが、本発明の目的を損なわない範囲で、種々のポリエチレンを混合して使用しても良い。
直鎖状低密度ポリエチレン(D)
直鎖状低密度ポリエチレン(D)は、通常、密度が0.905〜0.940g/cm3、好ましくは0.910〜0.935g/cm3、MFR(JIS K 7210、温度190℃)が0.5〜20g/10分、好ましくは1〜15g/10分のエチレンと炭素数が3〜10のα−オレフィン、例えばプロピレン、ブテン−1、ヘプテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチル−ペンテン−1とのランダム共重合体である。又、かかる直鎖状低密度ポリエチレン(D)は、分子量分布(重量平均分子量:Mw、と数平均分子量:Mn、との比:Mw/Mnで表示)が通常1.5〜4.0、好ましくは1.8〜3.5の範囲にある。このMw/Mnはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
【0011】
また、直鎖状低密度ポリエチレン(D)は、示差走査熱量計(DSC)の昇温速度10℃/分で測定した吸熱曲線から求めた鋭いピークが1個ないし複数個あり、該ピークの最高温度、すなわち融点が通常70〜130℃、好ましくは80〜120℃の範囲にある。上記のような直鎖状低密度ポリエチレン(D)は、チーグラー触媒、シングルサイト触媒等を用いた従来公知の製造法により調整することができる。
【0012】
プロピレン系重合体(E)
本発明に用いられるプロピレン系重合体(E)は、プロピレンの単独重合体あるいは、プロピレンとエチレン、1―ブテン、1−ヘキセン、4−メチルー1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数2〜10のα―オレフィンとのプロピレンを主成分とするランダム若しくはブロック共重合体である。共重合体の場合は、通常プロピレン含有量が50重量%以上、好ましくは60重量%以上の共重合体である。単独重合体か共重合体を用いるかは、要求される外観によって適宜選択でき、例えば、透明な多層フィルムを得るには、単独重合体あるいはランダム共重合体を選択し、不透明な多層フィルムを得るにはブロック共重合体を夫々選択すれば良い。
【0013】
このようなプロピレン系重合体(E)のMFR(JIS K 7210、温度230℃)は、フィルムとして使用できる範囲であれば特に限定はないが、通常、0.5〜20g/10分、好ましくは1〜15g/10分の範囲にある。
【0014】
ランダム共重合体としては、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)と同じ範疇の共重合体も用い得る。ラミネート層(3)として用いる場合、多層フィルムの剛性(腰)を保つために、プロピレン含有量が98〜95重量%と比較的プロピレン含有量が多いランダム共重合体を選択しても良い。また、ポリオレフィン系ヒートシール層(2)として用いる場合、低温ヒートシール性付与ために、比較的プロピレン含有量が少ないランダム共重合体を選択しても良い。
【0015】
ブロック共重合体は、プロピレンとエチレン等のα―オレフィン、通常はエチレンとを複数の重合反応装置で、プロピレン及びエチレンを夫々重合させることにより得られるもの、別途重合したポリプロピレンとポリエチレンとを混合したもの、あるいはそれらの組合せによるもので、主な成分として、プロピレン重合部、エチレン重合部、及び低結晶性若しくは非晶性のエチレン・プロピレン共重合体を含む共重合体である。かかるブロック共重合体におけるプロピレン含有量は通常、60〜90重量%の範囲にある。
【0016】
本発明に用いられるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)、極性基含有共重合体(B)及びエチレン系重合体(C)からなる凝集破壊層(1)には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、無機フィラー、粘着付与剤等の添加剤あるいは他の重合体を必要に応じて配合することができる。
ポリオレフィン系ヒートシール層(2)には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、無機フィラー、粘着付与剤などの添加剤あるいは他の重合体を必要に応じて配合することができる。特に、アンチブロッキング剤、スリップ剤を配合することによって、フィルム成形時、ラミネート加工時、包装作業時等における加工性や作業性を向上させることができる。
【0017】
熱融着性多層フィルム
本発明の熱融着性多層フィルムは、凝集破壊層(1)とポリオレフィン系ヒートシール層(2)とからなる。
凝集破壊層(1)
凝集破壊層(1)を構成する重合体は、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)、極性基含有重合体(B)及びエチレン系重合体(C)からなる。
凝集破壊層(1)を構成する重合体のうち、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)は10〜50重量%であり、好ましくは15〜45重量%、極性基含有重合体(B)は10〜40重量%、好ましくは15〜35重量%、エチレン系重合体(C)は20〜60重量%、好ましくは25〜55重量%(いずれの場合も(A)、(B)及び(C)の合計で100重量%とする。)からなる。
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)、極性基含有重合体(B)とエチレン系重合体(C)の量が上記範囲を外れると、高温雰囲気下でのヒートシール強度、および開封時の剥離状態が改良されない傾向にあるだけでなく、常温雰囲気下でのイージーオープン性が損なわれる傾向にある。
凝集破壊層(1)は通常は厚さ1〜30μm、好ましくは3〜20μmの無延伸フィルムである。
ポリオレフィン系ヒートシール層(2)
ポリオレフィン系ヒートシール層(2)は、プロピレン系重合体(E)またはエチレン系重合体(C)からなり、通常は厚さ1〜20μm、好ましくは2〜10μmの無延伸フィルムである。
また、プロピレン系重合体(E)をポリオレフィン系ヒートシール層(2)に用いる場合、低温ヒートシール性付与ために、1種類以上のエチレン系重合体(C)、あるいは熱可塑性エラストマーを添加しても良い。熱可塑性エラストマーとしては、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・α―オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α―オレフィンランダム共重合体等が例示される。
なお、プロピレン系重合体(E)は、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)と同一でもよく異なっていてもよい。さらに、ポリオレフィン系ヒートシール層(2)に用いられるチレン系重合体(C)は、凝集破壊層(1)に用いられるチレン系重合体(C)と同一でもよく異なっていてもよい。
【0018】
熱融着性多層フィルム
本発明の熱融着性多層フィルムは、凝集破壊層(1)とポリオレフィン系ヒートシール層(2)を一般に共押出成形することにより得ることができる。
また、凝集破壊層(1)のポリオレフィン系ヒートシール層(2)が積層された面とは反対側の面には、プロピレン系重合体(E)或いはエチレン系重合体(C)からなるラミネート層(3)が積層されていることが望ましい。
【0019】
本発明の熱融着性多層フィルムは、ラミネート層(3)を利用して基材層に積層して利用することが望ましい。
【0020】
本発明に利用される基材層には、通常、包装材料として使用されている種々材料、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム及びポリメチルペンテンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリカーボネートフィルム等のポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム等の熱可塑性樹脂製フィルム、アルミニウム箔、紙等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂製フィルムからなる基材は無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであってもよく、これら基材は1層でも2層以上としてもよい。
【0021】
凝集破壊層(1)とポリオレフィン系ヒートシール層(2)からなる熱融着性多層フィルムの厚さは、通常10〜100μm、好ましくは20〜70μmの範囲にあり、通常は凝集破壊層(1):1〜30μm、ポリオレフィン系ヒートシール層(2):1〜20μm、好ましくは凝集破壊層(1):3〜20μm、ポリオレフィン系ヒートシール層(2):2〜10μmの範囲である。
また、ラミネート層(3)は、通常3〜90μm、好ましくは3〜60μmの範囲である。
【0022】
本発明の熱融着性多層フィルムは種々公知の方法で製造できる。例えば、予め凝集破壊層(1)及びポリオレフィン系ヒートシール層(2)、必要に応じてラミネート層(3)となるフィルムを別個に成形した後、貼り合わせる方法、複数の押出機で各層を形成する重合体を個別に溶融して一つのダイから多層フィルムとする、所謂共押出成形法により製造できる。中でも、共押出成形法が、多層フィルムを容易に成形でき、且つ得られる多層フィルムも層間接着性に優れるので好ましい。かかる共押出成形して多層フィルムを製造する方法としては、例えば、凝集破壊層(1)となるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)と極性基含有重合体(B)及びエチレン系重合体(C)とを所定の量で混合した後、一つの押出機に投入し、他の押出機にラミネート層(3)となるプロピレン重合体(E)及び必要に応じて他の層となる重合体を投入して多層フィルムとする方法、予めプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)及び極性基含有重合体(B)及びエチレン系重合体(C)とを所定の量で混合して押出機等で溶融混練して組成物を得た後、上記方法により成形する方法等が挙げられる。共押出成形法は、T−ダイ等のフラットダイを用いるキャスト法であっても、サーキュラーダイを用いるインフレーション法の何れでもよい。更に基材層を積層する場合は、共押出成形法に加え、基材層の上に凝集破壊層(1)とポリオレフィン系ヒートシール層(2)を直接共押出ラミネートする方法、予め熱融着性多層フィルムを得た後に、ドライラミネートする方法、予め熱融着性多層フィルム得た後に、基材層と熱融着性多層フィルムの間に、ポリエチレンなど溶融押出しラミネートする方法等をとることができる。
【0023】
本発明の熱融着性多層フィルムの表面には、通常、一般的な包装用グラビアインキで印刷されるが、必ずしも印刷されていなくてもよい。
本発明の熱融着性多層フィルムは、常温雰囲気下、および高温雰囲気下でのヒートシール性能と易開封性のバランスが良く、開封時の凝集破壊層(1)の凝集破壊が適切に行われることのよるものと思われる。
本発明の熱融着性多層フィルムは、包装材として種々の用途に用いることができる。
【実施例】
【0024】
次に本発明を、実施例を通して説明するが本発明はそれら実施例によって限定されるものではない。
【0025】
特性値は以下の方法で測定した。
(1)ヒートシール強度(N/15mm)
ヒートシール強度を測定する前に、コロナ処理を施した熱融着性多層フィルムのラミネート層と厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムをウレタン系接着剤(三井武田ケミカル製:商品名「タケラックA616」(50%)+「タケラックA65」(3.13%)+酢酸エチル(46.87%))を用い、ドライラミネートして積層フィルムを用意した。
ヒートシール強度の測定は、積層フィルムのヒートシール層と厚さ300μmの無延伸ポリプロピレンシートを、テスター産業製ヒートシーラーTP−701−Bを用いて、各温度で、シールゲージ圧0.2MPa、時間1秒、シール幅5mmの条件下でヒートシールした後放冷した。尚、加熱は上側のみとした。次いで、上記方法でヒートシールした試験片を熱水シャワー式の高圧高温殺菌処理装置に入れて80℃で30分間処理し、その後冷却した。
自然乾燥した試験片を15mm幅にカットし、オリエンテック製テンシロン万能試験機RTM−100を用いて、500mm/分の引張速度で剥離し、その最大強度をヒートシール強度とした。測定値は5回の平均値である。ヒートシール強度以外にもヒートシール開封部の剥離の状態を観察した。
【0026】
(2)高温雰囲気下でのヒートシール強度(N/15mm)
ヒートシール強度測定と同様の操作で15mm幅にカットした試験片を、オリエンテック製引張試験機用恒温槽TLF−R3−Cをセットしたオリエンテック製テンシンロン万能試験機RTC−1225を用いて設定温度となってから5分経過後、500mm/分の引張速度で剥離し、その最大強度をヒートシール強度とした。測定値は5回の平均値である。ヒートシール強度以外にもヒートシール開封部の剥離の状態を観察した。
(3)破裂強度(kPa)
ヒートシール強度の測定と同様に、コロナ処理を施した熱融着性多層フィルムのラミネート層と厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムをウレタン系接着剤(三井武田ケミカル製:商品名「タケラックA616」(50%)+「タケラックA65」(3.13%)+酢酸エチル(46.87%))を用い、ドライラミネートして積層フィルムを用意した。
破裂強度の測定は、積層フィルムのヒートシール層と、外径70mm、内径62.5mmのポリプロピレンカップを、エーシンパック工業製カップシーラーON−T200を用いて、各温度で、シール圧440N/カップ、時間1秒の条件下でシールした後放冷しカップシールサンプルを作成した。次いで、蓋面にシリコーンゴムシートを貼り付け、注射針を刺し、サン科学製シールテスターFKT−100を用いて、1.0L/分の流量で空気を注入し、空気リーク時の圧力値を計測し破裂強度とした。機械上の最大圧力は70kPaであるため、70kPaの値を示したサンプルは破裂せずとした。測定値は3回の平均値である。
高温雰囲気下での破裂強度は、オリエンテック製引張試験機用恒温槽TLF−R3−C内に、蓋面にシリコーンゴムシートを貼り付け、注射針を刺し、サン科学製シールテスターFKT−100と接続したカップシールサンプルを放置し、設定温度となってから5分経過後、空気リーク時の圧力値を計測し破裂強度とした。また、同様に70kPaの値を示したサンプルは破裂せずとした。測定値は3回の平均値である。
【0027】
尚、本実施例で使用した原料は次の通りである。
(1)プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A−1)
プライムポリマー製 プライムポリプロ F327、MFR=7g/10min(JIS K 7210、温度230℃)
(2)極性基含有重合体(B−1)
三井・デュポンポリケミカル製 ニュクレル AN4214C(エチレン・メタクリル酸共重合体、メタクリル酸含量:4重量%)、密度930kg/m、MFR=7g/10min(JIS K 7210、温度190℃)
(3)極性基含有重合体(B−2)
三井・デュポンポリケミカル製 ニュクレル N0908C(エチレン・メタクリル酸共重合体、メタクリル酸含量:9重量%)、密度930kg/m、MFR=8g/10min(JIS K 7210、温度190℃)
(4)エチレン系重合体(C−1)(直鎖状低密度ポリエチレン(D−1))
プライムポリマー製 エボリュー SP2520、密度925kg/m、MFR=1.9g/10min(JIS K 7210、温度190℃)
(5)エチレン系重合体(C−2)(直鎖状低密度ポリエチレン(D−2))
プライムポリマー製 エボリュー SP2540、密度924kg/m、MFR=3.8g/10min(JIS K 7210、温度190℃)
(6)エチレン系重合体(C−3)
高圧法低密度ポリエチレン 密度918kg/m、MFR=1.1g/10min(JIS K 7210、温度190℃)
(7)プロピレン系重合体(E−1)
プライムポリマー製 プライムポリプロ F327、MFR=7g/10min(JIS K 7210、温度230℃)
【0028】
実施例1
凝集破壊層(1)として、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A−1)30重量%、極性基含有重合体(B−1)25重量%、エチレン系重合体(C−1)(直鎖状低密度ポリエチレン(D−1))45重量%をドライブレンドした樹脂を用い、ポリオレフィン系ヒートシール層(2)として、プロピレン系重合体(E−1)75重量%、エチレン系重合体(C−3)25重量%をドライブレンドした樹脂を用い、ラミネート層(3)として、エチレン系重合体(C−2)(直鎖状低密度ポリエチレン(D−2))を、三種三層無延伸フィルム成形機の75mmφ押出機×3台に各々投入し、180〜210℃の押出温度で、210℃のマルチマニホールド方式のTダイより押し出し、45℃のキャスティングロールで急冷し熱融着性多層フィルムを成形し、ラミネート層(3)にコロナ処理を施した。
得られた熱融着性多層フィルムの総厚は50μmで、各層の厚みはラミネート層(3)/凝集破壊層(1)/ポリオレフィン系ヒートシール層(2)=35/10/5μmであった。
【0029】
実施例2
実施例1で用いた凝集破壊層(1)を、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A−1)30重量%、極性基含有重合体(B−2)25重量%、エチレン系重合体(C−1)(直鎖状低密度ポリエチレン(D−1))45重量%をドライブレンドした樹脂に代える以外は実施例1と同様に行い、得られた熱融着性多層フィルムの総厚は50μmで、各層の厚みはラミネート層(3)/凝集破壊層(1)/ポリオレフィン系ヒートシール層(2)=35/10/5μmであった。
熱融着性多層フィルムのヒートシール強度、および高温雰囲気下でのヒートシール強度の評価結果を表1、破裂強度の評価結果を表2に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の熱融着性多層フィルムは、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)、極性基含有ポリマー(B)及びエチレン系重合体(C)から形成されてなる凝集破壊層(1)を有することにより、内容物を取り出す際の開封容易性のバランスが優れた包装用等の用途に適し、特に、適度な高温雰囲気下でのヒートシール強度を有するため、ボイル殺菌あるいはレトルト殺菌等の加熱殺菌を伴う包装用途、中でも含気包装形態において、内容物の飛び出しや漏れなどを防止することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が120〜150℃のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)10〜50重量%、極性基含有重合体(B)10〜40重量%、エチレン系重合体(C)20〜60重量%((A)、(B)及び(C)の合計で100重量%とする。)からなる凝集破壊層(1)及びポリオレフィン系ヒートシール層(2)からなる熱融着性多層フィルム。
【請求項2】
極性基含有重合体(B)が、エチレン・極性基含有モノマー共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の熱融着性多層フィルム。
【請求項3】
エチレン系重合体(C)が、直鎖状低密度ポリエチレン(D)であることを特徴とする請求項1に記載の熱融着性多層フィルム。
【請求項4】
ポリオレフィン系ヒートシール層(2)が、プロピレン系重合体(E)からなることを特徴とする請求項1に記載の熱融着性多層フィルム。
【請求項5】
ポリオレフィン系ヒートシール層(2)が、エチレン系重合体(C)からなることを特徴とする請求項1に記載の熱融着性多層フィルム。
【請求項6】
凝集破壊層(1)のヒートシール層(2)が積層された面とは反対側の面に、プロピレン系重合体(E)からなるラミネート層(3)が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の熱融着性多層フィルム。
【請求項7】
凝集破壊層(1)のヒートシール層(2)が積層された面とは反対側の面に、エチレン系重合体(C)からなるラミネート層(3)が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の熱融着性多層フィルム。


【公開番号】特開2008−254251(P2008−254251A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96949(P2007−96949)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】