説明

熱融着性積層フィルム

【課題】突刺し強度、耐摩耗性、耐ピンホール性などの機械的強度に優れ、且つ透明性などの光学特性にも優れる熱融着性積層フィルムを得ることを目的とする。
【解決手段】密度が910〜938Kg/m3、示差走査熱量計(DSC)により得られ
る融解熱量(ΔHT)が100〜140J/g、融解開始温度〜110℃の範囲の融解熱
量(ΔHL)が50〜80J/g、110℃〜融解終了温度の範囲の融解熱量(ΔHH)が35〜80J/gの範囲にあり、(ΔHH)/(ΔHL)が0.5〜1.5の範囲にあるエチレン系重合体(A)を二軸延伸してなるエチレン系重合体フィルムからなる熱融着層(I)と、ポリアミド等から選ばれる熱可塑性樹脂からなる基材層(II)を有することを特徴とする熱融着性積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的強度と光学特性に優れる熱融着性積層フィルムに関する。特に詳しくは特定の熱融解特性を有するエチレン系重合体からなる二軸延伸フィルムを熱融着層とする突刺し強度、耐摩耗性、耐ピンホール性などの機械的強度に優れ、且つ透明性などの光学特性にも優れる熱融着性積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体、所謂線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、高圧法低密度ポリエチレンに比べ、透明性、耐ストレスクラッキング性、低温ヒートシール性、ヒートシール強度、耐衝撃性等に優れておりその特徴を活かして食品包装用のシーラントとして広く用いられている。中でも、シングルサイト触媒で重合されたエチレン・α−オレフィンランダム共重合体は、更に透明性、低温ヒートシール性、夾雑物シール性、ホットタック性にも優れている。
【0003】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体フィルムの透明性、機械的強度等を改良する方法としてエチレン・α−オレフィンランダム共重合体を特定の条件下で二軸延伸する方法(特許文献1)、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体及びエチレン・α−オレフィンランダム共重合体に高密度ポリエチレンあるいは高圧法低密度ポリエチレンを加えてなる組成物を二軸延伸してなる収縮フィルム(特許文献2)が提案されている。
【0004】
しかしながら、かかる方法で得られる二軸延伸フィルムは透明性、引張強度等が強くなると共に、引裂き強度も強くなることから、易引裂き性フィルムとしては使用できない。
本発明者らは、特定の熱融解特性を有するエチレン系重合体を二軸延伸することにより、縦横何れの方向にも容易に引裂け、且つ透明性、収縮性に優れる二軸延伸エチレン系重合体フィルムが得られることを見出し、先に提案した(特許文献3)。そして、さらに検討した結果、二軸延伸エチレン系重合体フィルム基材層の少なくとも片面に、特定の密度を有するエチレン・α−オレフィンランダム共重合体から得られる熱融着層を備えることにより、ヒートシール性及び耐屈曲性にも優れる二軸延伸エチレン重合体多層フィルムが得られることを見出した(特許文献4)。
【0005】
かかる特許文献3及び4には、二軸延伸エチレン系重合体フィルムをポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどからなる二軸延伸熱可塑性フィルムと積層することも開示されているが、何れも二軸延伸エチレン系重合体フィルムを直接熱融着層(ヒートシール層)として用いることは提案されていない。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−90924号公報
【特許文献2】特開昭57−181828号公報
【特許文献3】特開2005−298642号公報
【特許文献4】特開2006−181831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどからなる二軸延伸熱可塑性フィルムと二軸延伸エチレン系重合体フィルムを積層し、二軸延伸エチレン系重合体フィルムを熱融着層とすることにより、突刺し強度、耐摩耗性、耐ピンホール性などの機械的強度に優れ、且つ透明性などの光学特性にも優れる熱融着性積層フィルムが得られることが判り、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明の目的は、突刺し強度、耐摩耗性、耐ピンホール性などの機械的強度に優れ、且つ透明性などの光学特性にも優れる熱融着性積層フィルムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、下記の熱融着性積層フィルムが提供され、上記課題が解決される。
〔1〕密度が910〜938Kg/m3、示差走査熱量計(DSC)により得られる融
解熱量(ΔHT)が100〜140J/g、融解開始温度〜110℃の範囲の融解熱量(
ΔHL)が50〜80J/g、110℃〜融解終了温度の範囲の融解熱量(ΔHH)が35〜80J/gの範囲にあり、(ΔHH)/(ΔHL)が0.5〜1.5の範囲にあるエチレン系重合体(A)を二軸延伸してなるエチレン系重合体フィルムからなる熱融着層(I)と、ポリアミド、ポリエステルおよびポリプロピレンから選ばれる熱可塑性樹脂からなる基材層(II)を有することを特徴とする熱融着性積層フィルム。
【0010】
〔2〕基材層(II)が、二軸延伸されてなる前記〔1〕に記載の熱融着性積層フィルム。
〔3〕熱融着層(I)の厚さ(T)が20〜75μmの範囲にあり、突刺し強度(P)とTが下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の熱融着性積層フィルム;
P≧1.2T+70 (1)
〔Tはフィルム厚さ、Pは−30℃で測定した突刺し強度(単位;N)を示す。〕
〔4〕熱融着層(I)の厚さ(T)が20〜75μmの範囲にあり、耐ピンホール性試験後のピンホール数(H)とTが下記式(2)の関係を満たすことを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の熱融着性積層フィルム;
H≦−0.4T+30 (2)
〔Tはフィルム厚さ、Hは−30℃で測定した耐ピンホール性試験後に発生したピンホール数(単位;個/m2)を示す。〕
〔5〕厚さ25μmの積層フィルムのヘイズが7%以下である前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の熱融着性積層フィルム。
【0011】
〔6〕エチレン系重合体(A)が、密度が895〜925Kg/m3のエチレン・α−
オレフィンランダム共重合体(a1)成分が5〜95重量部と、密度が926〜970Kg/m3のエチレン系重合体(a2)成分が95〜5重量部〔(a1)+(a2)=10
0重量部〕とからなるエチレン共重合体組成物(A−1)である前記〔1〕に記載の熱融着性積層フィルム。
【0012】
〔7〕エチレン系重合体(A)が、密度が895〜925Kg/m3のエチレン・α−
オレフィンランダム共重合体(a1)成分、密度が926〜970Kg/m3のエチレン
系重合体(a2)成分及び密度が910〜935Kg/m3の高圧法低密度ポリエチレン
(a3)とからなるエチレン共重合体組成物(A−2)である前記〔1〕に記載の熱融着性積層フィルム。
【0013】
〔8〕エチレン重合体組成物(A−2)が、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(a1)成分とエチレン系重合体(a2)成分との合計量が50〜95重量部及び高圧法低密度ポリエチレン(a3)が50〜5重量部〔[(a1)+(a2)]+(a3)=100重量部〕からなる前記〔7〕に記載の熱融着性積層フィルム。
【0014】
〔9〕エチレン系重合体(a2)成分が、密度が926〜945Kg/m3のエチレン
系重合体(a2−1)成分と密度が946〜970Kg/m3のエチレン系重合体(a2
−2)成分とからなる前記〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の熱融着性積層フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱融着性積層フィルムは、突刺し強度、耐摩耗性、耐ピンホール性などの機械的強度に優れ、且つ透明性などの光学特性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の熱融着性積層フィルムについて詳細に説明する。
[エチレン系重合体(A)]
本発明の熱融着性積層フィルムの熱融着層(I)となる二軸延伸してなるエチレン系重合体フィルムを形成するエチレン系重合体(A)は、密度が910〜938Kg/m3
好ましくは915〜935Kg/m3、示差走査熱量計(DSC)により得られる融解熱
量(ΔHT)が100〜140J/g、好ましくは115〜135J/g、融解開始温度
〜110℃の範囲の融解熱量(ΔHL)が50〜80J/g、好ましくは55〜80J/
g、110℃〜融解終了温度の範囲の融解熱量(ΔHH)が35〜80J/g、好ましく
は45〜80J/gの範囲にあり、(ΔHH)/(ΔHL)が0.5〜1.5、好ましくは0.65〜1.4の範囲にあるエチレン系重合体である。
【0017】
密度が上記範囲外、あるいは(ΔHT)が上記範囲外のエチレン系重合体は、二軸延伸
フィルムの成形が困難な場合がある、また、(ΔHH)が35J/g未満、あるいは(Δ
H)/(ΔHL)が0.5未満のエチレン系重合体は、二軸延伸フィルムを成形しても、一方向の引裂き強度が大きくなり、突刺し強度、耐摩耗性、耐ピンホール性などに優れる熱融着性積層フィルムが得られない虞がある。
【0018】
本発明に係るエチレン系重合体(A)は、フィルム形成能がある限り、メルトフローレート(MFR:ASTM D1238 荷重2160g、温度190℃)は特に限定はされないが、通常、0.5〜10g/10分、好ましくは0.8〜5g/10分の範囲にある。
【0019】
本発明に係るエチレン系重合体(A)の密度は、後述するように密度勾配管により測定される。
本発明に係るエチレン系重合体(A)の各熱融解量は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、以下の方法で測定した値である。
【0020】
示差走査熱量計(DSC)としてティ・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い
、試料約5mgを精秤し、JIS K 7122に準拠し、10℃から加熱速度:10℃/分で180℃迄昇温して試料を一旦融解させた後、180℃に10分間維持し、冷却速度:10℃/分で10℃迄降温して結晶化させた後、10℃に5分間維持した後、再度加熱速度:10℃/分で180℃迄昇温して熱融解曲線を得、得られた熱融解曲線から、試料の熱融解量(ΔHT)、得られた熱融解曲線を110℃で二分し、融解開始温度〜110
℃の範囲の融解熱量(ΔHL)及び110℃〜融解終了温度の範囲の融解熱量(ΔHH)を求めた。
【0021】
本発明に係るエチレン系重合体(A)の(ΔHL)は、主としてエチレン系重合体(A
)に含まれる低密度成分に由来し、(ΔHH)は、主としてエチレン系重合体(A)に含
まれる高密度成分に由来するものであり、(ΔHH)/(ΔHL)が上記範囲にあるということは、換言すれば、本発明に係るエチレン系重合体(A)は、特定の範囲の組成分布を有するエチレン系重合体とも言えるものである。
【0022】
したがって、本発明に係るエチレン系重合体(A)は、チーグラー触媒、シングルサイト触媒等を適宜選択し、得られるエチレン系重合体の組成分布(密度分布)を調整するこ
とにより得られるが、密度の異なるエチレン系重合体を適宜混合することによっても得られる。その場合は、密度の異なるエチレン系重合体、例えば、密度が895〜915kg/m3の範囲にある重合体の量及び密度が915〜965kg/m3の範囲にある重合体の量を夫々増減することによっても得られる。
【0023】
本発明に係るエチレン系重合体(A)は、特には、密度の異なるエチレン系重合体を混合することにより得られる下記エチレン共重合体組成物(A−1)またはエチレン共重合体組成物(A−2)が好ましい。
【0024】
[エチレン共重合体組成物(A−1)]
本発明に係るエチレン共重合体組成物(A−1)は、密度が895〜925Kg/m3
、好ましくは900〜920Kg/m3の範囲にあるエチレン・α−オレフィン共重合体
(a1)成分と密度が926〜970Kg/m3、好ましくは930〜965Kg/m3の範囲にあるエチレン系重合体(a2)成分とからなるエチレン共重合体組成物であり、好ましくは、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(a1)成分が5〜95重量部、より好ましくは20〜80重量部及びエチレン系重合体(a2)成分が95〜5重量部、より好ましくは80〜20重量部〔(a1)+(a2)=100重量部〕の範囲にある。
【0025】
本発明に係るエチレン共重合体組成物(A−1)は、フィルム形成能がある限り、メルトフローレート(MFR:ASTM D1238 荷重2160g、温度190℃)は特に限定はされないが、通常、0.5〜10g/10分、好ましくは0.8〜5g/10分の範囲にある。
【0026】
[エチレン共重合体組成物(A−2)]
本発明に係るエチレン共重合体組成物(A−2)は、密度が895〜925Kg/m3
、好ましくは900〜920Kg/m3の範囲にあるエチレン・α−オレフィンランダム
共重合体(a1)成分、密度が926〜970Kg/m3、好ましくは930〜965K
g/m3の範囲にあるエチレン系重合体(a2)成分及び密度が910〜935Kg/m3、好ましくは915〜930Kg/m3の範囲にある高圧法低密度ポリエチレン(a3)
とからなるエチレン共重合体組成物である。エチレン共重合体組成物(A−2)は、(a1)、(a2)および(a3)のうち、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(a1)成分が、好ましくは5〜95重量部、より好ましくは20〜80重量部及びエチレン系重合体(a2)成分が95〜5重量部、より好ましくは80〜20重量部〔(a1)+(a2)=100重量部〕の範囲にあることが望ましい。また、エチレン共重合体組成物(A−2)は、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(a1)成分+エチレン系重合体(a2)成分が、好ましくは50〜95重量部、好ましくは60〜90重量部及び高圧法低密度ポリエチレン(a3)が50〜5重量部、好ましくは40〜10重量部〔[(a1)+(a2)]+(a3)=100重量部〕の範囲にあることが望ましい。
【0027】
本発明の係るエチレン共重合体組成物(A−2)は、フィルム形成能がある限り、メルトフローレート(MFR:ASTM D1238 荷重2160g、温度190℃)は特に限定はされないが、通常、0.5〜10g/10分、好ましくは0.8〜5g/10分の範囲にある。
【0028】
[エチレン・α−オレフィン共重合体(a1)]
本発明の熱融着性積層フィルムの熱融着層(I)となる二軸延伸してなるエチレン系重合体フィルムを形成するエチレン共重合体組成物(A−1)またはエチレン共重合体組成物(A−2)を構成する成分であるエチレン・α−オレフィン共重合体(a1)は、密度が895〜925Kg/m3、好ましくは900〜920Kg/m3の範囲にあるエチレンと炭素数4以上のα−オレフィン、例えば、1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、
1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン、好ましくは炭素数が6以上のα−オレフィンとのランダム共重合体である。本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体(a1)は前記範囲の密度であれば、1種あるいは2種以上の混合物であってもよい。
【0029】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体(a1)のメルトフローレート(MFR:ASTM D1238 荷重2160g、温度190℃)は、後述のエチレン系重合体(a2)との組成物(A−1)またはエチレン系重合体(a2)と高圧法低密度ポリエチレン(a3)との組成物(A−2)とした際に、フィルム形成能がある限りとくに限定はされないが、通常0.01〜10g/10分、好ましくは0.2〜5g/10分の範囲にある。
【0030】
また、かかるエチレン・α−オレフィン共重合体(a1)は、分子量分布(重量平均分子量:Mw、と数平均分子量:Mn、との比:Mw/Mnで表示)が通常1.5〜4.0、好ましくは1.8〜3.5の範囲にある。このMw/Mnはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
【0031】
また、エチレン・α−オレフィン共重合体(a1)は、示差走査熱量計(DSC)の昇温速度10℃/分で測定した吸熱曲線から求めた鋭いピークが1個ないし複数個あり、該ピークの最高温度、すなわち融点が通常70〜130℃、好ましくは80〜120℃の範囲にある。
【0032】
上記のようなエチレン・α−オレフィン共重合体(a1)は、チーグラー触媒、シングルサイト触媒等を用いた従来公知の製造法により調整することができるが、シングルサイト触媒(メタロセン触媒)により得られた共重合体がとくに好ましい。このメタロセン化合物を含む触媒は、(a)遷移金属のメタロセン化合物と、(b)有機アルミニウムオキシ化合物と、(c)担体とから形成されることが好ましく、さらに必要に応じて、これらの成分と(d)有機アルミニウム化合物および/または有機ホウ素化合物とから形成されていてもよい。
【0033】
なお、このようなメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒、および触媒を用いたエチレン・α−オレフィン共重合体(a1)の調整方法は、たとえば特開平8−269270号公報に記載されている。
【0034】
[エチレン系重合体(a2)]
本発明の熱融着性積層フィルムの熱融着層(I)となる二軸延伸してなるエチレン系重合体フィルムを形成するエチレン共重合体組成物(A−1)またはエチレン共重合体組成物(A−2)を構成する他の成分であるエチレン系重合体(a2)は、密度が926〜970Kg/m3、好ましくは930〜965Kg/m3の範囲にあるエチレンの単独重合体またはエチレンと炭素数3以上のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとのランダム共重合体である。本発明に係るエチレン系重合体(a2)は前記範囲の密度であれば、1種あるいは2種以上の混合物であってもよい。
【0035】
エチレン系重合体(a2)のメルトフローレート(MFR:ASTM D1238 荷重2160g、温度190℃)は、前述のエチレン系重合体(a1)との組成物(A−1)及びエチレン系重合体(a1)及び後述の高圧法低密度ポリエチレン(a3)との組成物(A−2)とした際に、フィルム形成能がある限りとくに限定はされないが、通常0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜80g/10分の範囲にある。
【0036】
エチレン系重合体(a2)は、さらには、密度が926〜945Kg/m3、好ましく
は935〜945Kg/m3の範囲のエチレン系重合体(a2−1)成分と密度が946
〜970Kg/m3、好ましくは950〜965Kg/m3の範囲のエチレン系重合体(a2−2)成分と低密度成分と高密度成分を併用すると、より突刺し強度、耐摩耗性、耐ピンホール性などの機械的強度に優れ、且つ透明性などの光学特性にも優れる熱融着性積層フィルムが得られる。
【0037】
エチレン系重合体(a2)としてエチレン系重合体(a2−1)成分とエチレン系重合体(a2−2)成分を用いる場合は、エチレン系重合体(a2−1)成分を1〜99重量部、好ましくは30〜70重量部及びエチレン系重合体(a2−2)成分を99〜1重量部、好ましくは30〜70重量部〔(a2−1)+(a2−2)=100重量部〕の割合とすることが望ましい。
【0038】
また、かかるエチレン系重合体(a2)は、分子量分布(重量平均分子量:Mw、と数平均分子量:Mn、との比:Mw/Mnで表示)が通常1.5〜4.0、好ましくは1.8〜3.5の範囲にある。このMw/Mnはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
【0039】
また、エチレン系重合体(a2)は、示差走査熱量計(DSC)の昇温速度10℃/分で測定した吸熱曲線から求めた鋭いピークが1個ないし複数個あり、該ピークの最高温度、すなわち融点が通常122〜135℃、の範囲にある。
【0040】
上記のようなエチレン系重合体(a2)は、チーグラー触媒、シングルサイト触媒等を用いた従来公知の製造法により調整することができる。特に、エチレン系重合体(a2)としてエチレン系重合体(a2−1)を用いる場合は、シングルサイト触媒(メタロセン触媒)により得られた共重合体がとくに好ましい。このメタロセン化合物を含む触媒は、(a)遷移金属のメタロセン化合物と、(b)有機アルミニウムオキシ化合物と、(c)担体とから形成されることが好ましく、さらに必要に応じて、これらの成分と(d)有機アルミニウム化合物および/または有機ホウ素化合物とから形成されていてもよい。
【0041】
なお、このようなメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒、および触媒を用いたエチレン・α−オレフィン共重合体(a2)の調整方法は、たとえば特開平8−269270号公報に記載されている。
【0042】
一方、エチレン系重合体(a2)としてエチレン系重合体(a2−2)を用いる場合は、シングルサイト触媒(メタロセン触媒)により得られる重合体であってもよいが、従来公知のチーグラー触媒等で製造されている、所謂高密度ポリエチレンであってもよい。
【0043】
[高圧法低密度ポリエチレン(a3)]
本発明の熱融着性積層フィルムの熱融着層(I)となる二軸延伸してなるエチレン系重合体フィルムを形成するエチレン共重合体組成物(A−2)を構成する他の一つ成分である高圧法低密度ポリエチレン(a3)は、密度が910〜935Kg/m3、好ましくは
915〜930Kg/m3の範囲にある。かかる高圧法低密度ポリエチレンは、高圧下で
重合されるエチレンの単独重合体、若しくは5重量%以下の、他のα−オレフィンあるいは酢酸ビニル等のビニル化合物との共重合体で、低密度ポリエチレンの範疇に入るエチレン系重合体である。
【0044】
密度が910Kg/m3未満の高圧法低密度ポリエチレンは、前記エチレン共重合体組
成物(A−2)として二軸延伸フィルムを成形した場合に得られるフィルムがブロッキングし易く、引裂き強度が強く、本発明の目的が達成出来ない虞がある。
【0045】
高圧法低密度ポリエチレン(a3)のメルトフローレート(MFR:ASTM D12
38 荷重2160g、温度190℃)は、前述のエチレン系重合体(a1)及びエチレ
ン系重合体(a1)との組成物(A−2)とした際に、フィルム形成能がある限りとくに限定はされないが、通常、0.1〜30g/10分、好ましくは0.1〜10g/10分の範囲にある。
【0046】
本発明に係るエチレン共重合体組成物(A−1)及びエチレン共重合体組成物(A−2)は、各々別個にエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(a1)、エチレン系重合体(a2)及び高圧法低密度ポリエチレン(a3)を得た後、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、V−ブレンダー等によりドライブレンドする方法またはドライブレンドした後、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等により溶融混練することにより得られる。
【0047】
本発明に係るエチレン共重合体組成物(A−1)はまた、連続・多段重合プロセスにより、複数の重合器を用いて、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(a1)とエチレン系重合体(a2)を夫々重合した後、混合してエチレン共重合体組成物(A−1)とする方法、1個の重合器を用いて、先にエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(a1)若しくはエチレン系重合体(a2)を重合した後、続いてエチレン系重合体(a2)若しくはエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(a1)を重合する方法等、種々公知の重合方法を採り得る。
【0048】
本発明に係るエチレン系重合体(A)、エチレン共重合体組成物(A−1)、エチレン共重合体組成物(A−2)若しくはそれら組成物を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(a1)、エチレン系重合体(a2)または高圧法低密度ポリエチレン(a3)には本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加剤或いは他の重合体を必要に応じて配合することができる。
【0049】
[二軸延伸エチレン重合体フィルム]
本発明の熱融着性積層フィルムの熱融着層(I)となる二軸延伸エチレン系重合体フィルムは、前記エチレン系重合体(A)を二軸延伸してなるフィルムである。
【0050】
本発明に係る二軸延伸エチレン重合体フィルムの厚さは、通常、20〜75μmの範囲にある。厚さが上記範囲より薄い場合は、得られる熱融着性積層フィルム機械的強度や耐ピンホール性等が不十分となる場合があり、一方、上記範囲を超える場合は軽包装に適さない場合があり、かかる観点から上記範囲にあることが好ましい。
【0051】
本発明に係る二軸延伸エチレン重合体フィルムは、基材層(II)との接着性を改良するために、基材層(II)と貼り合せる面の表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0052】
[二軸延伸エチレン重合体フィルムの製造方法]
本発明の熱融着性積層フィルムの熱融着層(I)となる二軸延伸エチレン重合体フィルムは、種々公知の方法、例えば、チューブラー方式又はフラット方式(テンター方式)により、一方向の延伸倍率が3〜14倍、好ましくは5〜10倍及び他方向の延伸倍率が3〜14倍、好ましくは5〜10倍の範囲で縦(MD)方向及び横(TD)方向に二軸延伸することにより得られる。二軸延伸は同時二軸延伸でも、逐次二軸延伸でもよい。これら方式の中でも、フラット方式により得られる二軸延伸エチレン重合体フィルムが、より透明性に優れるので好ましい。
【0053】
フラット方式による場合は、通常、押出し成形して得たシートを90〜125℃の温度範囲で縦方向に延伸した後、90〜130℃の温度範囲で横方向に延伸することにより得られる。二軸延伸した後は、用途により、80〜140℃の温度範囲でヒートセットを行ってもよい。ヒートセットの温度は目的とする熱収縮率に応じて変える事が出来る。
【0054】
[熱可塑性樹脂]
本発明の熱融着性積層フィルムの基材層(II)となる熱可塑性樹脂は、ポリアミド、ポリエステルおよびポリプロピレンから選ばれる重合体である。
【0055】
[ポリアミド]
本発明に係るポリアミドはフィルム形成能がある限り、種々公知のポリアミドを使用することがでる。具体的には、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−612、ナイロン−11、ナイロン−12、ポリメタキシレンアジパミド等、を例示できる。
【0056】
[ポリエステル]
本発明に係るポリエステルはフィルム形成能がある限り、種々公知のポリエステルを使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレート、ポリブチレン2,6ナフタレート等、を例示できる。
【0057】
[ポリプロピレン]
本発明に係るポリプロピレンはフィルム形成能がある限り、種々公知のポリプロピレンを使用することができる。具体的には、プロピレンの単独重合体、プロピレンと少量の炭素数2〜10のα−オレフィンとの共重合体を例示できる。プロピレンの共重合体としては、例えば、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体が挙げられる。これらポリプロピレンとしては、融点が135℃以上の重合体が好ましく、特に160以上のプロピレン単独重合体若しくはプロピレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0058】
[基材層(II)]
本発明に係る基材層(II)は、前記ポリアミド、ポリエステルおよびポリプロピレンから選ばれる熱可塑性樹脂からなるフィルムである。かかるフィルムとしては、延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムが、得られる熱融着性積層フィルムの耐衝撃強度、突刺し強度、耐摩耗性、耐ピンホール性などの機械的強度に優れ、且つ透明性などの光学特性にも優れるので好ましい。これらフィルムの中でも、ポリアミドフィルム、特に二軸延伸ポリアミドフィルムが、突刺し強度、耐摩耗性に優れるので好ましい。
【0059】
本発明に係る基材層(II)の厚さは、用途により適宜決め得るが、通常、5〜100μm、好ましくは10〜50μmの範囲にある。
[熱融着性積層フィルム]
本発明の熱融着性積層フィルムは、前記エチレン系重合体(A)を二軸延伸してなる二軸延伸エチレン重合体フィルムを熱融着層(I)とし、前記ポリアミド、ポリエステルおよびポリプロピレンから選ばれる熱可塑性樹脂からなるフィルムを基材層(II)に有する積層フィルムである。
【0060】
本発明の熱融着性積層フィルムは、好ましくは、熱融着層(I)の厚さ(T)が20〜75μmの範囲にあり、突刺し強度(P)とTが下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする。
【0061】
P≧1.2T+70 (1)
〔Tはフィルム厚さ、Pは−30℃で測定した突刺し強度(単位;N)を示す。〕
本発明の熱融着性積層フィルムは、好ましくは、熱融着層(I)の厚さ(T)が20〜75μmの範囲にあり、耐ピンホール性試験後のピンホール数(H)とTが下記式(2)の関係を満たすことを特徴とする。
【0062】
H≦−0.4T+30 (2)
〔Tはフィルム厚さ、Hは−30℃で測定した耐ピンホール性試験後に発生したピンホール数(単位;個/m2)を示す。〕
本発明の熱融着性積層フィルムは、好ましくは、厚さ25μmまたは40μmの積層フィルムのヘイズが7%以下、より好ましくは6%以下である。
【0063】
本発明の熱融着性積層フィルムは、前記熱融着層(I)と基材層(II)を有する積層フィルムであるが、用途により、基材層(II)に他の層、例えば、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン系重合体あるいはアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素等の無機化合物蒸着層等の種々公知のバリア層を積層してもよい。
【0064】
[熱融着性積層フィルムの製造方法]
本発明の熱融着性積層フィルムは、種々公知の方法で、熱融着層(I)となる前記二軸延伸エチレン系重合体フィルムと基材層(II)となる前記ポリアミド、ポリエステルおよびポリプロピレンから選ばれる熱可塑性樹脂からなるフィルムとを貼り合せることにより製造し得る。
【0065】
熱可塑性樹脂からなるフィルムとして、無延伸フィルムを用いる場合は、前記二軸延伸エチレン系重合体フィルムの片面に、ポリアミド、ポリエステルおよびポリプロピレンから選ばれる熱可塑性樹脂を押出しコーティングする方法を採り得る。
【0066】
熱可塑性樹脂からなるフィルムとして、二軸延伸フィルムを用いる場合は、ドライラミネート法、無溶剤ラミネート法、押出しラミネート法を採り得る。かかるラミネート法を用いる際には、種々公知の接着剤を用い得る。又、押出しラミネート法を用いる場合は、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等、種々公知の押出しラミネート用の熱可塑性樹脂を用い得る。
【実施例】
【0067】
次に本発明を、実施例を通して説明するが、本発明はそれら実施例によって限定されるものではない。
本発明における各種試験法および評価法は次の通りである。
(1)メルトフローレート(g/10分)
ASTM D1238に準拠し、荷重2160g、温度190℃の条件で測定した。
(2)密度(Kg/m3
MFRを測定して得た重合体ストランドを120℃で2時間処理し、1時間かけて室温(23℃)まで徐冷した後、JIS K 7112に準拠し、D法(密度勾配管)により測定した。
(3)ヘイズ(曇価)(%)
Haze Meter(日本電色工業社製 NDH−2000)を使用して熱融着性積層フィルム1枚の曇り度をJIS K 7136に準拠して測定した。
(4)インパクト強度(KJ/m)
東洋精機製作所製のフィルムインパクトテスターを使用し、先端形状は0.5インチ径
半球を使用し、熱融着性積層フィルムから100mm四方の正方形の試験片を切り出し、23℃、0℃及び−30℃の雰囲気温度下にてインパクト強度を測定した。
(5)突刺強度(N)
オリエンテック社製テンシロンRT1225型を使用し、先端形状は0.25インチ径半球を用いて、熱融着性積層フィルムから幅60mm、長さ200〜300mm程度の試験片を切り出し、JIS Z1707に準拠して、23℃、0℃及び−30℃の雰囲気温度下にて基材側から打ち抜き、突刺強度を測定した。
(6)耐ピンホール性
テスター産業社製のゲルボフレックステスターを使用し、熱融着性積層フィルムから幅208mm、長さ205mmの試験片を切り出し、−10℃及び−30℃の雰囲気温度下にて、ねじれ角度440度、ストローク152mm及び屈曲回数42回/分で、1000回及び3000回の屈曲試験を行なった後、屈曲試験後の試験片で袋をつくり、三菱ガス化学製のエージレスシールチェックでピンホール数(個/m2)を測定した。
(7)ヒーシール強度(N/15mm)
東洋精機製ヒートシールテスターを使用し、熱融着性積層フィルムから幅100mm、長さ150mmの試験片を切り出し、半分に折ってシールバー温度(上部)が140℃及び150℃(下部温度23℃)で圧力が0.2MPaで、シール時間が0.5秒で、ヒートシールを行った後、シールした試験片を幅15mmの試験片に切り出し、オリエンテック製テンシロンRT1225型を使用し、剥離強度を測定し、ヒートシール強度とした。(8)耐摩耗性(往復回数)
熱融着性積層フィルムから幅200mm、長さ200mmの試験片を切り出し、試験片を4つ折後、三菱化学製のエージレス液を注入、ダンボール上で200mmの距離を摩擦往復させ、穴あきまでの摩擦往復回数をカウントした。なお、耐摩耗試験は5回行い、その平均値を求めた。
【0068】
本発明の実施例及び比較例で用いた重合体及び組成物は次の通りである。
(i)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(a1)
(1)エチレン・1−ヘキセンランダム共重合体(a1−1):メタロセン触媒を用いた重合体、密度;905Kg/m3、MFR;0.5g/10分。
(ii)エチレン系重合体(a2)
(a2−1)
(1)エチレン・1−ヘキセンランダム共重合体(a2−1−1):メタロセン触媒を用いた重合体、密度;930Kg/m3、MFR;60g/10分。
(a2−2)
エチレン・プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(a2−2−1):チーグラー触媒を用いた重合体、密度;958Kg/m3、MFR;0.9g/10分。
(iii)高圧法低密度ポリエチレン(a3)
(1)高圧法低密度ポリエチレン(a3−1):密度;917Kg/m3、MFR;7g
/10分。
エチレン重合体組成物(A−1)
前記エチレン・1−ヘキセンランダム共重合体(a1−1)、エチレン・1−ヘキセンランダム共重合体(a2−1−1)、エチレン・プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(a2−2−1)及び高圧法低密度ポリエチレン(a3−1)を36:24:25:15(重量部)の割合でドライブレンドした後、池貝鉄工社製二軸押出機(46mmφ)を用いて、温度190℃、押出量50Kg/時の条件で溶融混練し、エチレン重合体組成物(A−1)を得た。
【0069】
得られたエチレン重合体組成物(A−1)は密度;927Kg/m3、MFR;2.0
g/10分、融解熱量(ΔHT);127.1J/g、融解開始温度〜110℃の範囲の
融解熱量(ΔHL);63.55J/g、110℃〜融解終了温度の範囲の融解熱量(Δ
H);63.55J/g及び(ΔHH)/(ΔHL);1.00であった。
【0070】
[実施例1]
熱融着性積層フィルムの熱融着層として、前記エチレン重合体組成物(A−1)を二軸延伸フィルム成形機を用いて溶融押出しし、T−ダイで賦形した後、冷却ロール上にて急冷し厚さ約1.1mmのシートを得た。このシートを112℃に加熱しフィルムの流れ方向(縦方向)に5倍延伸した。この5倍延伸したシートを116℃に加熱し流れ方向に対して直交する方向(横方向)に8.5倍延伸して厚さ25μmの二軸延伸エチレン重合体フィルム(1)からなる熱融着層を得た。
【0071】
次いで、二軸延伸エチレン重合体フィルム(1)にアンカー剤を塗布した後、押出しラミネート機を用いて高圧法低密度ポリエチレン(商品名;ミラソン11P 三井化学社製
)を溶融押出しして、二軸延伸エチレン重合体フィルム(1)と厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(商品名;エンブレム ユニチカ社製)からなる基材層とを貼り合わ
せて熱融着性積層フィルムを得た。なおアンカー剤は、コロネートL、ニッポラン1100(ともに日本ポリウレタン工業)に、溶剤として酢酸エチル(広島和光純薬製)を混合したものを使用した。
得られた熱融着性積層フィルムの物性等を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0072】
[実施例2]
熱融着性積層フィルムの熱融着層として、前記エチレン重合体組成物(A−1)を二軸延伸フィルム成形機を用いて溶融押出しし、T−ダイで賦形した後、冷却ロール上にて急冷し厚さ約(1.6)mmのシートを得た。このシートを112℃に加熱しフィルムの流れ方向(縦方向)に5倍延伸した。この5倍延伸したシートを116℃に加熱し流れ方向に対して直交する方向(横方向)に8.5倍延伸して厚さ40μmの二軸延伸エチレン重合体フィルム(2)からなる熱融着層を得た。
【0073】
ついで、実施例1に記載と同様に、二軸延伸エチレン重合体フィルム(2)と厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(商品名;エンブレム ユニチカ社製)からなる基材
層と貼り合わせて熱融着性積層フィルムを得た。
得られた熱融着性積層フィルムの物性等を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0074】
[比較例1]
実施例2で用いた二軸延伸エチレン重合体フィルム(2)に換えて厚さ40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(商品名;T.U.X FCS 東セロ社製)を用いる以外は実施例2と同様に行い、二軸延伸ポリアミドフィルムと貼り合せ、熱融着性積層フィルムを得た。
得られた熱融着性積層フィルムの物性等を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0075】
[実施例3]
実施例1で用いた厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(商品名;エンブレム
ユニチカ社製)からなる基材層に換えて、厚さ25μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(商品名;エンブレム ユニチカ社製)を用いる以外は実施例1と同様に行い、熱融着性積
層フィルムを得た。
得られた熱融着性積層フィルムの物性等を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0076】
[実施例4]
実施例2で用いた厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(商品名;エンブレム
ユニチカ社製)からなる基材層に換えて、厚さ25μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(商品名;エンブレム ユニチカ社製)を用いる以外は実施例2と同様に行い、熱融着性積
層フィルムを得た。
得られた熱融着性積層フィルムの物性等を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0077】
[比較例2]
実施例4で用いた二軸延伸エチレン重合体フィルム(2)に換えて厚さ40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(商品名;T.U.X FCS 東セロ社製)を用いる以外は実施例4と同様に行い、熱融着性積層フィルムを得た。
得られた熱融着性積層フィルムの物性等を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0078】
[実施例5]
実施例1で用いた厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(商品名;エンブレム
ユニチカ社製)からなる基材層に換えて、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名;ルミラー 東レ社製)を用いる以外は実施例1と同様に行い、熱融着性積層フィルムを得た。
得られた熱融着性積層フィルムの物性等を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0079】
[実施例6]
実施例2で用いた厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(商品名;エンブレム
ユニチカ社製)からなる基材層に換えて、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名;ルミラー 東レ社製)を用いる以外は実施例2と同様に行い、熱融着性積層フィルムを得た。
得られた熱融着性積層フィルムの物性等を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0080】
[比較例3]
実施例6で用いた二軸延伸エチレン重合体フィルム(2)に換えて厚さ40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(商品名;T.U.X FCS 東セロ社製)を用いる以外は実施例6と同様に行い、熱融着性積層フィルムを得た。
得られた熱融着性積層フィルムの物性等を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0081】
[実施例7]
実施例1で用いた厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(商品名;エンブレム
ユニチカ社製)からなる基材層に換えて、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名;OP U−1 東セロ社製)を用いる以外は実施例1と同様に行い、熱融着性積層フィルムを得た。
得られた熱融着性積層フィルムの物性等を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0082】
[実施例8]
実施例2で用いた厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(商品名;エンブレム
ユニチカ社製)からなる基材層に換えて、厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名;OP U−1 東セロ社製)を用いる以外は実施例2と同様に行い、熱融着
性積層フィルムを得た。
得られた熱融着性積層フィルムの物性等を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0083】
[比較例4]
実施例8で用いた二軸延伸エチレン重合体フィルム(2)に換えて厚さ40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(商品名;T.U.X FCS 東セロ社製)を用いる以外は実施例8と同様に行い、熱融着性積層フィルムを得た。
【0084】
得られた熱融着性積層フィルムの物性等を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1から明らかなように、本発明の熱融着性積層フィルムは、突刺し強度、耐摩耗性、耐ピンホール性などの機械的強度に優れ、且つ透明性などの光学特性にも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の熱融着性積層フィルムは、突刺し強度、耐摩耗性、耐ピンホール性などの機械的強度に優れ、且つ透明性などの光学特性にも優れており、食品、産業材、その他の包装材として広く利用される。中でも、冷凍食品、氷ブロック等の低温で使用される用途や、鋭利な突起を有する電子部品、エビ、カニ等の甲殻類、珍味串もの等の鋭利な突起を持つ物品の包装、さらには鮮魚の包装に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が910〜938Kg/m3、示差走査熱量計(DSC)により得られる融解熱量
(ΔHT)が100〜140J/g、融解開始温度〜110℃の範囲の融解熱量(ΔHL)が50〜80J/g、110℃〜融解終了温度の範囲の融解熱量(ΔHH)が35〜80
J/gの範囲にあり、(ΔHH)/(ΔHL)が0.5〜1.5の範囲にあるエチレン系重合体(A)を二軸延伸してなるエチレン系重合体フィルムからなる熱融着層(I)と、ポリアミド、ポリエステルおよびポリプロピレンから選ばれる熱可塑性樹脂からなる基材層(II)を有することを特徴とする熱融着性積層フィルム。
【請求項2】
基材層(II)が、二軸延伸されてなる請求項1に記載の熱融着性積層フィルム。
【請求項3】
熱融着層(I)の厚さ(T)が20〜75μmの範囲にあり、突刺し強度(P)とTが下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の熱融着性積層フィルム;
P≧1.2T+70 (1)
〔Tはフィルム厚さ、Pは−30℃で測定した突刺し強度(単位;N)を示す。〕
【請求項4】
熱融着層(I)の厚さ(T)が20〜75μmの範囲にあり、耐ピンホール性試験後のピンホール数(H)とTが下記式(2)の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の熱融着性積層フィルム;
H≦−0.4T+30 (2)
〔Tはフィルム厚さ、Hは−30℃で測定した耐ピンホール性試験後に発生したピンホール数(単位;個/m2)を示す。〕
【請求項5】
厚さ25μmの積層フィルムのヘイズが7%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱融着性積層フィルム。
【請求項6】
エチレン系重合体(A)が、密度が895〜925Kg/m3のエチレン・α−オレフ
ィンランダム共重合体(a1)成分が5〜95重量部と、密度が926〜970Kg/m3のエチレン系重合体(a2)成分が95〜5重量部〔(a1)+(a2)=100重量
部〕とからなるエチレン共重合体組成物(A−1)である請求項1に記載の熱融着性積層フィルム。
【請求項7】
エチレン系重合体(A)が、密度が895〜925Kg/m3のエチレン・α−オレフ
ィンランダム共重合体(a1)成分、密度が926〜970Kg/m3のエチレン系重合
体(a2)成分及び密度が910〜935Kg/m3の高圧法低密度ポリエチレン(a3
)とからなるエチレン共重合体組成物(A−2)である請求項1に記載の熱融着性積層フィルム。
【請求項8】
エチレン重合体組成物(A−2)が、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(a1)成分とエチレン系重合体(a2)成分との合計量が50〜95重量部及び高圧法低密度ポリエチレン(a3)が50〜5重量部〔[(a1)+(a2)]+(a3)=100重量部〕からなる請求項7に記載の熱融着性積層フィルム。
【請求項9】
エチレン系重合体(a2)成分が、密度が926〜945Kg/m3のエチレン系重合
体(a2−1)成分と密度が946〜970Kg/m3のエチレン系重合体(a2−2)
成分とからなる請求項6〜8のいずれか1項に記載の熱融着性積層フィルム。

【公開番号】特開2009−78420(P2009−78420A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248714(P2007−248714)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】