説明

熱解析装置、熱解析方法、熱解析プログラム、および記録媒体

【課題】放電管の周囲の導体の影響、あるいはリーク電流の影響を考慮することによって、解析対象物の温度分布をより正確に計算することができる熱解析装置、熱解析方法、熱解析プログラム、および記録媒体を提供する。
【解決手段】熱解析装置100は、放電管を表わす放電管モデルと導体を表わす導体モデルとを記憶するためのメモリ105と、熱解析装置を制御するためのプロセッサ110とを備える。プロセッサは、放電管モデルを第1の個数のエリアへと分割し、エリアのそれぞれと導体との間の浮遊容量を計算し、浮遊容量に基づいて解析対象物の温度分布を解析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電管と導体とを含む解析対象物の温度分布を解析するための熱解析装置、熱解析方法、熱解析プログラム、および記録媒体に関し、特に、放電管を適切なブロックに分割することによって解析対象物の温度分布を解析するための熱解析装置、熱解析方法、熱解析プログラム、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
対象となる物体の温度分布を解析する熱解析装置が知られている。熱解析装置は、対象となる物体を表わすモデルについて、当該モデルを複数の要素に分割することによって、要素単位の温度分布を計算する。たとえば、特開2006−190499号公報(特許文献1)には、内側にランプヒータが内蔵された加圧ローラ本体の各部の温度分布をシミュレーションする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−190499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、放電管は、高電圧・高周波であるため、上記の加圧ローラのようなコイル巻線の発熱モデルを適用することができない。
【0005】
また、液晶モジュールには、バックライト用の光源として、円管形状の放電管(ランプ)が内蔵されている。ランプはバックライトシャーシのような導体に近接して配置されることが多いため、ランプからバックライトシャーシへのリーク電流による発熱への影響が無視できない。液晶モジュールにおいては、ランプは、入力電力の約7割以上を使用する主要発熱源である。そのため、ランプを、回路基板のチップ部品等と同様に、単純な均一な発熱体として定義すると、ランプから各部品への伝熱が正しく考慮されず、液晶モジュールを構成する各部品の温度予測にも影響を与えてしまう。
【0006】
例えば、液晶モジュール前面(液晶パネルの表面)への放熱を考える。ランプから発生した熱は、空気層、光学シートを介して、パネルへと伝熱する。しかしながら、ランプの正確な発熱量の分布が考慮されていないと、パネル中央部は実際の温度よりもその予測値が高く、パネル端部は実際の温度よりもその予測値が低く出力されてしまう。すなわち、パネルの全体的な温度だけでなく、パネルにおける温度むらに関しても、予測値と実測値とのずれが大きくなってしまう。
【0007】
そのため、液晶モジュールに関する熱シミュレーションによって、対象となるパネルが温度に関する設計基準を満たしているかどうかを確認する事が難しかった。換言すれば、温度に関する設計上の検証手段として、熱シミュレーションを有効に利用することができなかった。
【0008】
本発明の目的は、解析領域内に導体と近接する放電管を有する数値計算モデルであっても、リーク電流の影響を考慮したランプの発熱モデルにより、液晶モジュールのパネルの温度を正確に計算できる熱解析装置、熱解析方法、熱解析プログラムおよび記録媒体を提供することである。
【0009】
あるいは、本発明は上記の不具合を解決するためになされたものであって、本発明の主たる目的は、放電管の周囲の導体の影響、あるいはリーク電流の影響を考慮することによって、解析対象物の温度分布をより正確に計算することができる熱解析装置、熱解析方法、熱解析プログラム、および記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面に従えば、放電管と導体とを含む解析対象物の温度分布を解析するための熱解析装置が提供される。熱解析装置は、放電管を表わす放電管モデルと導体を表わす導体モデルとを記憶するためのメモリと、熱解析装置を制御するためのプロセッサとを備える。プロセッサは、放電管モデルを第1の個数のエリアへと分割し、エリアのそれぞれと導体との間の浮遊容量を計算し、浮遊容量に基づいて解析対象物の温度分布を解析する。
【0011】
好ましくは、プロセッサは、浮遊容量に基づいてエリアを第1の個数よりも少ない第2の個数のブロックへと分類し、分類結果に基づいて解析対象物の温度分布を解析する。
【0012】
好ましくは、プロセッサは、浮遊容量に基づいてエリアそれぞれの発熱量の比率を計算し、発熱量の比率が近しい複数のエリアを1つのブロックへとまとめることによってエリアを分類する。
【0013】
好ましくは、プロセッサは、ブロックのそれぞれへと分類されたエリアの発熱量の比率の合計が等しくなるように、エリアを分類する。
【0014】
好ましくは、放電管は、液晶パネルのランプである。導体は、バックライトシャーシである。
【0015】
この発明の別の局面に従うと、メモリとプロセッサとを含むコンピュータにおける、放電管と導体とを含む解析対象物の温度分布を解析するための熱解析方法が提供される。熱解析方法は、メモリが、放電管を表わす放電管モデルと導体を表わす導体モデルとを記憶するステップと、プロセッサが、放電管モデルを第1の個数のエリアへと分割するステップと、プロセッサが、エリアのそれぞれと導体との間の浮遊容量を計算するステップと、プロセッサが、浮遊容量に基づいて解析対象物の温度分布を解析するステップとを備える。
【0016】
この発明の別の局面に従うと、メモリとプロセッサとを含むコンピュータに、放電管と導体とを含む解析対象物の温度分布を解析させるための熱解析プログラムが提供される。メモリは、放電管を表わす放電管モデルと導体を表わす導体モデルとを記憶する。熱解析プログラムは、プロセッサに、放電管モデルを第1の個数のエリアへと分割するステップと、エリアのそれぞれと導体との間の浮遊容量を計算するステップと、浮遊容量に基づいて解析対象物の温度分布を解析するステップとを実行させる。
【0017】
この発明の別の局面に従うと、メモリとプロセッサとを含むコンピュータに、放電管と導体とを含む解析対象物の温度分布を解析させるための熱解析プログラムを格納するコンピュータ読取可能な記録媒体が提供される。メモリは、放電管を表わす放電管モデルと導体を表わす導体モデルとを記憶する。熱解析プログラムは、プロセッサに、放電管モデルを第1の個数のエリアへと分割するステップと、エリアのそれぞれと導体との間の浮遊容量を計算するステップと、浮遊容量に基づいて解析対象物の温度分布を解析するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、この発明によれば、放電管の周囲の導体の影響、あるいはリーク電流の影響を考慮することによって、解析対象物の温度分布をより正確に計算することができる熱解析装置、熱解析方法、熱解析プログラム、および記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態に係る熱解析装置(コンピュータ)を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る熱解析装置(コンピュータ)のハードウェア構成を示す制御ブロック図である。
【図3】本実施の形態に係る熱解析装置(コンピュータ)の機能構成を示すブロック図である。
【図4】本実施の形態に係る熱解析装置(コンピュータ)における熱解析処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態に係る解析対象物の一例を示す概略斜視図である。
【図6】解析対象物をY軸(高さ)方向の中央位置で切断した概略断面図である。
【図7】区間計算テーブルを示す表である。
【図8】リーク電流モデルとしてのランプとバックライトシャーシの浮遊容量を示すイメージ図である。
【図9】ランプの解析モデルを100個に分割する場合のランプの発熱密度分布を示す。
【図10】本実施の形態に係るブロックへの分割後の解析モデルを示す斜視図である。
【図11】本実施の形態に係るブロックへの分割後の解析モデルを示す断面図である。
【図12】液晶モジュールの端部と中央部との温度分布を示すイメージ図である。
【図13】パターン1の解析モデルの断面図である。
【図14】パターン2の解析モデルの断面図である。
【図15】パターン4の解析モデルの断面図である。
【図16】熱解析処理の解析結果の一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお以下の説明では、同一の部品については同一の符号を付すものとし、それらの部品の名称や機能が同一である場合には、それらの部品についての詳細な説明は繰り返さない。
【0021】
<用語の定義>
「出力」とは、データや信号に基づいて表示や印刷を行う動作だけでなく、少なくともデータや信号を他のプログラムや装置に与える動作も含む概念である。すなわち、「出力」とは、コンピュータ内部において他のアプリケーションなどにデータを受け渡す動作や、ネットワークを介してデータを送信する動作も含む概念である。
【0022】
また、「受け付け」や「入力」とは、少なくともデータや信号を取得する動作をいうものであって、プロセッサが、キーボードやマウスやタッチパネルなどのユーザインターフェイスを介してユーザから情報を受け付ける動作だけでなく、他のインターフェイスを介して他のプログラムや他の媒体などからデータや信号を受け付ける動作をも含む概念である。あるいは、「受け付け」や「入力」は、コンピュータ内部において他のアプリケーションなどからデータを受け付ける動作や、ネットワークを介してコンピュータの外部からデータを受信する動作も含む概念である。
【0023】
<全体構成>
まず、本実施の形態に係る熱解析装置の一例であるコンピュータ100の全体構成について説明する。本実施の形態に係るコンピュータ100は、解析対象物に含まれる部品の温度分布をシミュレートするためのものである。特に、本実施の形態に係るコンピュータ100は、近接する部品同士の浮遊容量を考慮し、リーク電流を考慮することによって、対象となる解析対象物の温度分布をより正確に計算するものである。
【0024】
<ハードウェア構成>
図1は、本実施の形態に係るコンピュータ100を示す斜視図である。図1を参照して、このコンピュータ100は、コンピュータ本体101と、モニタ102と、キーボード103と、マウス104とを含む。
【0025】
図2は、本実施の形態に係るコンピュータ100のハードウェア構成を示す制御ブロック図である。図2を参照して、コンピュータ本体101は、相互に内部バス109で接続されたCPU(Central Processing Unit)110と、RAM(Random access memory)などのメモリ105と、HDD(Hard Disk Drive)などの固定ディスク106と、通信インターフェイス107と、CD(Compact Disk)−DVD(Digital Versatile Disc)駆動装置108とを含む。
【0026】
CD−DVD駆動装置108にはCD118やDVDなどが装着される。なお、コンピュータ100は、CD(Compact Disk)−DVD(Digital Versatile Disc)駆動装置108だけでなく、USB(Universal Serial Bus)コネクタやFD(Flexible Disk)駆動装置などを有してもよい。
【0027】
モニタ102は、液晶パネルやCRTから構成されるものであって、CPU110が出力した情報を表示する。キーボード103は、キー入力により、ユーザから情報を受け付ける。マウス104は、クリックされたりスライドされたりすることによって、ユーザから情報を受け付ける。メモリ105は、各種の情報を記憶するものであって、たとえば、CPU110がプログラムを実行する際に必要となるデータを一時的に記憶する。固定ディスク106は、CPU110が実行するプログラムやデータベースを記憶する。
【0028】
CPU110は、コンピュータ100の各要素を制御するものであって、各種の演算を実施する装置である。また、CPU110は、後述するように、メモリ105へと読み出されたCAD情報と材料情報とに基づいて、解析対象物に含まれる部品にて発生する熱量やそれらにおける温度分布を解析結果として作成するものである。CPU110は、解析結果をメモリ105の所定領域に格納したり、当該解析結果を、内部バス109を介してモニタ102に出力したり、通信インターフェイス107を介して外部の装置に送信したりする。
【0029】
なお、コンピュータ100に搭載されるCPU110は、1つに限定されるものではない。すなわち、コンピュータ100は、複数のCPUを含んでもよい。また、CPU110は、並列計算が可能なものが好ましく、計算速度が速いものが好ましい。
【0030】
通信インターフェイス107は、CPU110が出力した情報を電気信号へと変換する、すなわちCPU110が出力した情報をその他の装置が利用できる信号へと変換する。また、通信インターフェイス107は、本実施の形態に係るコンピュータ100の外部から入力された信号を受信して、CPU110が利用できる情報に変換する。
【0031】
CPU110は、通信インターフェイス107を用いて、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)やインターネットなどを介して、他の装置との間でデータを送受信することができる。また、コンピュータ100には、必要に応じて、プリンタなどの他の出力装置や、アンテナなどの他の入力装置が接続され得る。
【0032】
本実施の形態に係る熱解析装置および熱解析処理は、コンピュータ100などのハードウェアと制御プログラムなどのソフトウェアとによって実現される。一般的にこうしたソフトウェアは、UCBメモリ、CD、DVD、FDなどの記録媒体に格納されて、もしくはインターネットなどのネットワークを介して流通する。当該ソフトウェアは、CD−DVD駆動装置108や他のインターフェイスを介して記録媒体から読取られて、若しくは通信インターフェイス107を介して受信されて、固定ディスク106へと格納される。当該ソフトウェアは、固定ディスク106からメモリ105に読出されて、CPU110により実行される。
【0033】
このようにして、本実施の形態に係るコンピュータ100は、解析が行われる領域(以下、「解析領域」と記す)に解析対象物の形状に関するデータを入力することによって解析モデルを生成する。コンピュータ100は、当該解析モデルを用いて、解析領域内に物理的な作用を加えたときのシミュレーション(熱解析処理)を行う。コンピュータ100は、モニタ102や他の装置にシミュレーション結果(熱解析処理結果)を出力する。
【0034】
本実施の形態においては、3次元空間である解析領域に対応させて、3次元の解析モデルを生成してシミュレーションを行っているが、2次元の解析モデルを生成してシミュレーションを行ってもよい。
【0035】
<機能構成>
次に、本実施の形態に係るコンピュータ100が有する各機能について説明する。図3は、本実施の形態に係る熱解析装置(コンピュータ100)の機能構成を示すブロック図である。
【0036】
図3を参照して、本実施の形態に係るコンピュータ100は、入力部111、区間分割部112、浮遊容量算出部113、発熱量分布算出部114、ブロック分割部115、放電管解析モデル生成部116、解析部117、出力部118、および制御部119を含む。なお、前述したように、コンピュータ100は、メモリ105(あるいは固定ディスク106)、モニタ102なども含む。
【0037】
入力部111、区間分割部112、浮遊容量算出部113、発熱量分布算出部114、ブロック分割部115、放電管解析モデル生成部116、解析部117、出力部118、および制御部119は、CPU110によって実現される機能ブロック(モジュール)である。より詳細には、CPU110が有する上記の機能は、CPU110がメモリ105や固定ディスク106などに記憶される制御プログラムを実行することによって実現される。
【0038】
本実施の形態においては、熱解析処理を実行するための機能がCPU110上で実行されるソフトウェアによって実現される構成としているが、各ブロックの機能や各ステップの処理をソフトウェアによって実現する代わりに、各々を専用のハードウェア回路等によって実現してもよい。
【0039】
本実施の形態においては、CPU110が、不揮発性の固定ディスク106に格納されている各種制御プログラム、CAD情報、および材料情報を、ワークメモリとして機能するメモリ105へと一旦読み出した上で、メモリ105に記憶されているプログラムを実行することによってCAD情報と材料情報とに基づく熱解析処理を実行する。そして、CPU110は、熱解析処理によって得られた解析結果を、メモリ105または固定ディスク106に格納する。
【0040】
本実施の形態においては、メモリ105は、CAD(Computer Aided Design)情報データベースD1と、材料情報データベースD2と、および解析結果データベースD3とを記憶する。
【0041】
以下、コンピュータ100が有する各機能ブロック(モジュール)について詳細に説明する。
【0042】
制御部119は、入力部111、区間分割部112、浮遊容量算出部113、発熱量分布算出部114、放電管解析モデル生成部116、解析部117、出力部118、CAD情報データベースD1、材料情報データベースD2、解析結果データベースD3を制御する。制御部119は、制御プログラムに基づいて、これら機能ブロックの間での情報の受け渡しを制御する。
【0043】
入力部111は、CAD装置などによって作成された解析対象物の3次元形状データを解析領域内へと取り込む。すなわち、入力部111は、解析領域内に解析対象物の3次元形状を作成する。この3次元形状の作成に関しては、ユーザが入力装置を操作することによって解析対象物の形状をコンピュータ100に直接入力してもよいし、コンピュータ100が記録媒体などから解析対象物の形状を取得してもよい。
【0044】
なお、本実施の形態においては、解析領域は、有限の3次元の空間領域である。そして、解析領域は、熱解析処理の開始時に、CPU110(たとえば、入力部111)によって、メモリ105内に確保される。
【0045】
また、入力部111は、ユーザからの操作や、メモリ105に格納されているデータに基づいて、解析対象物について所望のシミュレーションを実行するために必要な境界条件および初期条件などの条件および必要なデータを設定する。また、ランプの発熱モデルを作成するのに必要なランプの管電圧、駆動周波数、管電流、電力、および空気の誘電率を入力する。これらの条件およびデータは、ユーザが、たとえば表示装置の表示画面に表示された設定用画面に対し、入力装置を操作して適切な値を入力することによって設定される。
【0046】
入力部111は、解析対象物に設定された形状情報をCAD情報としてCAD情報データベースD1に、解析対象物に設定された材料情報を材料情報データベースD2に、格納する。
【0047】
なお、入力部111は、CPU105に実行されるソフトウェアだけでなく、キーボード103や、マウス104や、通信インターフェイス107や、CD−DVD駆動装置108などのハードウェアを含む概念であってもよい。
【0048】
区間分割部112は、ランプを表わすモデルを、当該ランプの長さに対して十分に細かい微小区間によって等間隔に離散化する。区間分割部112は、予め定められた、あるいは入力部111を介して今回設定された、分割数に基づいて、ランプのモデルを微小区間へと分割する。
【0049】
浮遊容量算出部113は、予め定められた、あるいは入力部111を介して入力された、空気の誘電率や、ランプとバックライトシャーシ(導体)との距離およびランプの表面積などの幾何学的な条件から、区間分割部112で分割した微小区間毎に、ランプと近接するバックライトシャーシとの浮遊容量を算出する。
【0050】
なお、本実施の形態では、説明のために、ランプとバックライトシャーシとが平行平板であるものと近似することによって、浮遊容量を算出している。しかし、浮遊容量は、ランプの表面形状や、ランプとバックライトシャーシとの位置関係を、より厳密に考慮した他の算出方法に基づいて、算出されてもよい。
【0051】
発熱量分布算出部114は、予め定められた、あるいは入力部111を介して入力された、駆動周波数とランプ各部の電位と、浮遊容量算出部113で算出された浮遊容量とに基づいて、区間分割部112で分割した微小区間毎に、ランプ−バックライトシャーシ間のリーク電流を算出する。本実施の形態においては、発熱量分布算出部114は、各微小区間を流れるリーク電流を求めて、当該リーク電流に電圧を掛け合わせる事で、ランプ全区間に占める各微小区間の発熱量の比率を求める。
【0052】
発熱量分布算出部114は、予め定められた、あるいは入力部111を介して入力された、ランプの電力を乗じることによって、各小区間の発熱量を計算する。すなわち、発熱量分布算出部114は、ランプの発熱量分布を算出する。なお、発熱量分布算出部114は、入力部111を介して入力されたランプ管電圧に基づいて、各微小区間の電圧を算出する。
【0053】
ブロック分割部115は、予め定められた、あるいは入力部111を介して入力された、ブロック分割数に基づいて、区間分割部112で分割された微小区間に関して、発熱密度が略等しい複数の微小区間をひとつのブロックとしてまとめる。すなわち、ブロック分割部115は、ブロック分割数に従って、ランプのモデルを複数のブロックへと分割し直す。
【0054】
なお、各ブロックを構成する複数の微小区間の発熱量の総和を、各ブロックの発熱量として定義する。本実施の形態においては、ブロック分割部115は、ブロックに含まれる複数の微小区間の発熱量の合計がブロック間で等しくなるように、全ての微小区間を複数のブロックへと分類する。
【0055】
そのため、本実施の形態においては、ブロックに含まれる微小区間の個数は、ブロック間で異なるものとなる。たとえば、各微小区間の発熱量が大きいブロックに含まれる微小区間の数は、各微小区間の発熱量が小さいブロックに含まれる微小区間の数よりも少ない。
【0056】
放電管解析モデル生成部116は、予め定められた、あるいは入力部111を介して入力されたランプの解析モデルを、ブロック分割部115で設定されたブロックで構成されるランプの解析モデルへと変換する。なお、放電管解析モデル生成部116は、密度、熱伝導率、比熱、輻射率など、当該変換の前後で変更を必要としないパラメータを踏襲する。一方、放電管解析モデル生成部116は、ランプの解析モデルが分割されることによって変更を要する初期条件や境界条件を設定し直すことによって、新たに分割されたランプの解析モデルを作成する。
【0057】
解析部117は、解析モデルに物理的な作用を加えるシミュレーションをして解析結果を算出する。たとえば、解析部117は、予め定められた、あるいは入力部111を介して入力された条件に基づいて、運動量保存式、質量保存式、エネルギ方程式および熱伝導方程式などの支配方程式や、有限要素法、境界要素法、有限体積法および有限差分法などの離散化手法など用いて解析を行う。本実施の形態においては、解析部117は、ブロック毎の発熱量に基づいて、解析対象物(解析モデル)に含まれる部品(部品モデル)の温度を計算する。
【0058】
出力部118は、モニタ102を制御することによって、モニタ102に、解析モデルを表示させたり、解析部117によって算出された解析結果を表示させたりする。なお、出力部118は、CPU105に実行されるソフトウェアだけでなく、モニタ102や、通信インターフェイス107や、CD−DVD駆動装置108などのハードウェアを含む概念であってもよい。
【0059】
CAD情報データベースD1は、CAD情報が格納されるデータベースである。CAD情報は、解析領域に入力される解析対象物を構成する部品についての情報を含む。CAD情報は、たとえば、部品の形状を表す形状情報、部品の材料種類を表す材料種類情報、部品の発熱量を表す発熱量情報、部品の体積を表す体積情報、および部品の位置を表す位置情報、ならびに解析領域の形状などを表す情報である。ここでの部品は、ランプやバックライトシャーシなどである。
【0060】
材料情報データベースD2は、材料情報が格納されるデータベースである。材料情報は、材料種類ごとの材料物性値を表す情報であり、たとえば密度を表す密度情報、熱伝導率を表す熱伝導率情報、比熱を表す比熱情報および輻射率を表わす輻射率情報などが含まれる。
【0061】
解析結果データベースD3は、解析部117によって算出された解析結果を、出力部118がメモリ105へと出力した出力情報として、格納する。
【0062】
<熱解析処理>
次に、本実施の形態に係るコンピュータ100における熱解析処理について説明する。図4は、本実施の形態に係るコンピュータ100における熱解析処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0063】
図4を参照して、このフローチャートに示されている処理は、CPU110がメモリ105に記憶されるプログラムを実行することによって実行される。換言すれば、このフローチャートは、本実施の形態に係る熱解析方法の処理工程を示す。
【0064】
本実施の形態においては、キーボード103やマウス104などの操作部から熱解析処理の実行が指示されると、CPU110が当該フローチャートに記載の処理を開始する。まず、ステップS102において、入力部111を実現するCPU110は、解析領域内に解析対象物の3次元形状データを取り込む。CPU110は、解析領域内に解析対象物の3次元形状を作成する。なお、本実施の形態においては、3次元形状データの取り込みは、たとえば所定の選択画面で、ユーザが、キーボード103やマウス104を操作することによって、既にメモリ105に格納されている、所望の解析対象物に係る3次元形状データを選択することによって実行される。
【0065】
ここで、図5は、解析領域内に解析対象物10が取り込まれた状態、すなわち解析領域内に解析対象物10のモデルが生成された状態を説明するための図である。換言すれば、図5は、解析対象物10の一例を示す概略斜視図である。図5では、ランプの管軸方向をX軸方向とし、ランプ端側をX軸における正方向とし、液晶モジュールの厚み方向をZ軸方向とし、パネル側をZ軸における正方向、液晶モジュールの高さ方向をY軸方向とする。
【0066】
また、図6は、解析対象物10をY軸(高さ)方向の中央位置で切断した概略断面図である。なお、後述する解析モデルの断面図も、Y軸(高さ)方向の中央位置で切断した断面図とする。
【0067】
本実施の形態においては、解析領域は、直交する解析領域境界面に覆われた直方体形状の空間である。
【0068】
図5および図6を参照して、本実施の形態において入力される解析対象物10(ここでは液晶モジュールの一部)は、37型の液晶モジュールのうちのランプ一本分である。具体的には、解析対象物10は、バックライトシャーシ21と、拡散シート22と、パネル24と、ベゼル25と、インバータ基板26と、インバータ部品27と、ランプ30とを含む。解析対象物10(解析モデル)を構成する部品(部品モデル)の外形寸法は以下のようになっている。
【0069】
まず、バックライトシャーシ21は、X方向の長さが433.8mm、Y方向の長さが12.9mm、Z方向の長さが15mm、厚みが0.8mmである、箱形状の板金であるものとする。
【0070】
ランプ30は、バックライトシャーシ21に対して、Z方向に1.45mm離れた位置に配置されている。すなわち、リーク電流が無視できないぐらい、ランプ30とバックライトシャーシ21とは近接している。ランプは、X方向の長さが420mm、Y方向の長さが3.5mm、Z方向の長さが3.5mmである。
【0071】
拡散シート22は、X方向の長さが432mm、Y方向の長さが12.9mm、厚み(Z方向の長さ)が2mmである。拡散シート23は、X方向の長さが432mm、Y方向の長さが12.9mm、厚み(Z方向の長さ)が1.98mmである。
【0072】
パネル24は、X方向の長さが432mm、Y方向の長さが12.9mm、厚み(Z方向の長さ)が1.87mmである。
【0073】
ベゼル25は、X方向の長さが20.8mm、Y方向の長さが12.9mm、Z方向の長さが16.6mmであり、厚みが0.8mmである、箱形状の板金である。
【0074】
インバータ基板26は、X方向の長さが20mm、Y方向の長さが12.9mm、厚み(Z方向の長さ)が1.6mmである。
【0075】
インバータ部品27が、X方向の長さが20mm、Y方向の長さが12.9mm、Z方向の長さが9mmである。
【0076】
そして、バックライトシャーシ21、ランプ30、拡散シート22、拡散シート23、パネル24、ベゼル25などを含むバックライト(解析対象物10)の外形は、X方向の長さが435.8mm、Y方向の長さが12.9mm、Z方向の長さが16.6mmである。
【0077】
なお、本実施の形態においては、バックライト(解析対象物10)の形状が左右対称であり、インバータ基板26も両側駆動タイプであって左右対称である。そこで、本実施の形態では、左右対称のハーフモデルについて説明する。すなわち、本実施の形態においては、パネル面から見てX軸方向の右側半分をモデル化し、左側半分を解析領域面に対称条件を設定しており、省略している。
【0078】
また、本実施の形態においては、直交格子モデルに関する解析を行うために、全ての曲面形状が角形状へと近似されるものとする。たとえば、ランプ30は実際は円管形状であるが、説明のために、ランプ30は解析モデルとして四角柱の棒形状へと近似されている。このようにして、解析領域内に解析対象物10が取り込まれると、CPU110は、ステップS104へと移行する。
【0079】
ステップS104では、入力部111によって初期条件が設定される。解析空間(ランプ30やバックライトシャーシ21などの解析対象物10を含む空間)には、空気が充填されているものとする。初期温度は40℃とする。ランプ30の発熱量は2.11Wとする。インバータ部品27の発熱量は0.05Wとする。
【0080】
各部材の材質について説明する。バックライトシャーシ21には機械構造用炭素鋼S35Cが設定される。ランプ30にはガラスが設定される。拡散シート22にはポリカーボネートが設定される。拡散シート23にはポリカーボネートが設定される。パネル24にはガラスが設定される。ベゼル25には機械構造用炭素鋼S35Cが設定される。インバータ基板26には熱伝導率10[W/m・K]を有する基板材料が設定される。インバータ部品27にはコーニングが設定される。
【0081】
また、ステップS104では、入力部111によって境界条件も設定される。具体的には、解析領域の、X軸における負側、Y軸における正側、Y軸における負側の境界面には対称条件が設定される。すなわち、本実施の形態においては、解析対象物の左右対称条件かつ上下対称条件が設定される。重力の向きは、Y軸における負方向に設定される。また、本実施の形態においては、自然対流の定常問題として、解析処理が実行されている。初期条件、および境界条件が設定されると、CPU110は、ステップS106に移行する。
【0082】
ステップS106では、入力部111によってランプに関するパラメータが入力される。ランプ30の管電圧は1300V、駆動周波数は60kHz、管電流は6mA、電力2.11Wとする。空気の誘電率としては、真空誘電率8.854×10−12F/mに空気の比誘電率1.000536を掛け合わせた数値が入力される。ランプパラメータが入力されると、CPU110は、ステップS108に移行する。
【0083】
ステップS108では、区間分割部112を実現するCPU110によって区間分割数が入力される。本実施の形態においては、区間分割数として100が入力される。CPU110は、区間分割数に基づいて、ランプ30を管軸方向において等間隔に分割する。一区間の幅は4.2mmであって、ランプ30の長さ420mmに対して十分に小さくなっている。以下では、ランプ30の端部から中央部に向けて、区間番号を1、2・・・100とする。
【0084】
ここで、図7は、区間計算テーブルを示す表である。図7を参照して、区間計算テーブルは、ランプの解析モデルをブロックに分割するために利用するテーブルである。区間計算テーブルは、メモリ105に記憶される。より詳細には、以後のステップS110からステップS120において、CPU110は、各区間の発熱量、すなわちランプの発熱量の分布を求めるために、区間計算テーブルを作成したり、区間計算テーブルに数値を格納したり、区間計算テーブルの数値を更新していく。
【0085】
図4に戻って、ステップS108では、CPU110は、区間計算テーブルの2列目に各区間の番号を格納し、1列目には各区間の終了位置であるランプ端部からの距離を格納する。CPU110は、ランプを複数の微小区間に分割すると、ステップS110に移行する。
【0086】
ステップS110では、浮遊容量算出部113を実現するCPU110によって、ステップS108で定義した微小区間毎に、ランプとバックライトシャーシ間の浮遊容量[F]を算出する。高電圧の放電管と導体とが近接すると、放電管−導体間に浮遊容量が発生する。
【0087】
図8は、リーク電流モデルとしてのランプとバックライトシャーシの浮遊容量を示すイメージ図である。図面では、説明のために、区間分割数を4としているが、本実施の形態においては、ランプは100つの区間に分割されている。浮遊容量の計算式は、ランプとバックライトシャーシとを平行平板として近似すると、次式のようになる。
【0088】
浮遊容量 = 真空の誘電率 × 空気の比誘電率 × 平行平板の面積 / ランプとバックライトシャーシ間の距離 …(1)
平行平板の面積、ランプとバックライトシャーシと間の距離は入力部111によって入力される。本実施の形態においては、平行平板の面積は、ステップS108で定義した区間毎の長さ4.2mmに、ランプの解析モデルである四角柱のZ軸方向のサイズ3.5mmを掛け合わせたものとしている。ランプとバックライトシャーシとの間の距離は1.45mmである。
【0089】
本実施の形態においては、全ての区間において、計算パラメータは上記と同様である。そのため、式(1)で計算した各区間の浮遊容量は同じであって、1.03×10−13Fとなる。浮遊容量は、図7の区間計算テーブルの4列目に対応している。各区間の浮遊容量を算出すると、CPU110は、ステップS112に移行する。
【0090】
ステップS112では、発熱量分布算出部114を実現するCPU110が、各区間のリーク電流を計算する。入力部111によって入力された駆動周波数、ランプ各部の電位、浮遊容量算出部113によって算出された浮遊容量に基づいて、区間分割部112によって分割された微小区間毎に、ランプ−バックライトシャーシ間のリーク電流を次式を使って算出する。
【0091】
各区間のリーク電流=2π×駆動周波数×ランプ各部の電位×各区間の浮遊容量…(2)
ランプ各部の電位は次のように求める。図8は、リーク電流を説明するためのイメージ図である。ランプの長さが長くなるにつれて、ランプに印加すべき電圧を高くする必要がある。そこで、図8に示すように、2個の電源を用いて、ランプの両側から逆位相の電圧を印加する方法が一般的である。
【0092】
本実施の形態のように、ランプの一方の端部にランプ管電圧1300Vの半分である650Vが印加され、他方の端部に−650Vが印加された場合、ランプ中央が中性点となる。すなわち、ランプ端の電位は650Vであり、ランプ中央は0Vであるから、各区間の電位は、ランプ端からランプ中央へかけて比例的に減少した分布となる。CPU110は、区間計算テーブルの3列目に各区間の電位を、5列目にリーク電流を格納する。CPU110は、各区間のリーク電流を計算すると、ステップS114に移行する。
【0093】
ステップS114では、発熱量分布算出部114を実現するCPU110が、ステップS112で求めたリーク電流に基づいて、各区間の電流を求める。CPU110は、リーク電流に各区間の電圧を掛け合わせることによって、ランプの全区間に占める各区間の発熱量の比率を算出する。
【0094】
より詳細には、図8を参照して、各区間の電流の求め方について説明する。以下では、ランプ管電流をIlamp、各区間のリーク電流をIleak1、Ileak2、Ileak3、Ileak4とする。区間1を流れる電流は、管電流Ilampからリーク電流Ileak1を引いたものとなる。区間2を流れる電流は、区間1を流れる電流から、区間2からバックライトシャーシへのリーク電流Ileak2を引いたものとなり、これを区間4まで同様に考えると、各区間を流れる電流は、次のように表される。
【0095】
区間1を流れる電流 = Ilamp − Ileak1
区間2を流れる電流 = 区間1を流れる電流 − Ileak2
区間3を流れる電流 = 区間2を流れる電流 − Ileak3
区間4を流れる電流 = 区間3を流れる電流 − Ileak4
区間分割数が100の場合も、上記と同様の考え方で計算することができる。CPU110は、ステップS112の区間計算シート3列目で求めた各区間の電位差に基づいて、各区間の電圧を計算する。CPU110は、次式を用いることによって、これら各区間の電流と電圧とに基づいて各区間の発熱量の比率を求める。
【0096】
各区間の発熱量の比率 = 各区間の電流 × 各区間の電圧 / Σ(各区間の電流 × 各区間の電圧) …(3)
CPU110は、区間計算テーブルの7列目に各区間を流れる電流を、6列目に各区間の電圧を、8列目に各区間の発熱量の比率を格納する。CPU110は、各区間の発熱量の比率を計算すると、ステップS116に移行する。
【0097】
ステップS116では、発熱量分布算出部114を実現するCPU110が、各区間の発熱量を算出する。CPU110は、入力部111によって入力されたランプ電力に、発熱量分布算出部114によって算出した各区間の発熱量の比率を掛け合わせることによって、各区間の発熱量を算出する。CPU110は、区間計算テーブルの9列目に各区間の発熱量を格納する。CPU110は、各区間の発熱量を計算すると、ステップS118に移行する。
【0098】
ステップS118では、ブロック分割部115を実現するCPU110が、予め定められた、あるいは入力されたブロック分割数に基づいて、複数の微小区間をその発熱密度が近いもの同士を1つのブロックとしてまとめる。たとえば、CPU110は、100個の微小区間を4つのブロックに分類する。換言すれば、CPU110は、ランプの解析モデルを、入力されたブロック分割数に基づいて、ブロックに分割する。
【0099】
なお、ブロック分割数は、微小区間分割数より少ないことが好ましい。ただし、ブロック分割数は、区間分割数と同じでもよい。
【0100】
微小区間に分割されたランプの解析モデルに関しては、当該微小区間を表すために、微小区間の頂点を通るように多数のメッシュを作成する必要がある。メッシュの数が増大することによって、解析処理に必要なCPU110の計算負荷が大きくなってしまう。そのため、指定したブロック分割を用いることで、ランプのメッシュ数(分割数)を減らすことが好ましい。
【0101】
本実施の形態においては、CPU110は、指定したブロック分割数の範囲内で、解析精度の高い分割位置を計算する。本実施の形態に係るブロック分割部115は、ランプの解析モデルを、4個(ブロック分割数)に分割する。
【0102】
CPU110は、ステップS116で求めた各区間の発熱量を、ステップS108で求めた一区間の幅で割る事によって、発熱密度を計算する。CPU110は、区間計算テーブルの10列目に各区間の発熱密度を格納する。
【0103】
図9は、ランプ30の解析モデルを100個に分割する場合のランプ30の発熱密度分布を示す。図9を参照して、区間分割数が多いほど、発熱量の分布は、より連続的な曲線に近づく。逆に、区間分割数が少ないほど、発熱量の分布は、階段形状で表され、熱解析の精度が低下する。
【0104】
CPU110は、各微小区間の発熱量の積分値と、指定したブロック分割数に対応する各ブロックの発熱量の積分値とが略等しくなる、放電管の管軸方向の位置で放電管をブロック分割する。すなわち、CPU110は、ブロックに含まれる微小区間の発熱量の合計が、ランプの発熱量の合計をブロック分割数で除した値となる位置で、ランプをブロックへと分割する。
【0105】
なお、区間1から区間100までの、発熱量の積分値は次のように、計算する。
区間1の発熱量の積分値=区間1の電力
区間2の発熱量の積分値=区間1の電力+区間2の電力
区間100の発熱量の積分値=区間1の電力+区間2の電力+・・・区間100の電力
CPU110は、区間計算テーブルの11列目に各区間の積分電力を格納する。入力部111によって入力されたランプの電力2.11Wを、ブロック分割数4で割ると、0.528Wとなる。CPU110は、ブロックの発熱量の積分電力を次式のように計算する。
【0106】
ブロック1の発熱量の積分値 = 2.11W/4 = 0.528W
ブロック2の発熱量の積分値 = 2.11W/4×2 = 1.057W
ブロック3の発熱量の積分値 = 2.11W/4×3 = 1.585W
ブロック4の発熱量の積分値 = 2.11W/4×3 = 2.113W
CPU110は、区間計算テーブルに基づいて、微小区間の電力の合計値が、上記の各ブロックの発熱量の積分値に最も近くなる、ブロック同士の境界を探す。CPU110は、区間計算テーブルの1列目の各区間のランプ端部からの距離を参照して、以下の境界を計算する。
【0107】
ブロック1のランプ端部からの距離 92.4mm(1.23)
ブロック2のランプ端部からの距離 197.4mm(1.08)
ブロック3のランプ端部からの距離 306.6mm(1.03)
ブロック4のランプ端部からの距離 420.0mm(1.00)
各ブロックの発熱量は0.528Wである。CPU110は、発熱密度=発熱量/ブロック長を計算することによって、各ブロックの発熱密度比を計算する。発熱密度比は、括弧内に示している。なお、ここでは、ランプ中央部のブロック4を1としている。区間計算テーブルのそれぞれ対応する行に太線枠でマークしている。CPU110は、ブロック単位でランプの分割位置を算出すると、ステップS120に移行する。
【0108】
ステップS120では、放電管解析モデル生成部116を実現するCPU110が、ステップS102で入力されたランプの解析モデルを変更する。CPU110は、ステップS118で設定されたランプのブロック分割数、ブロック分割位置、発熱量に従って、ランプの分割モデルを作成する。なお、CPU110は、密度、熱伝導率、比熱、輻射率など、変更を必要としないパラメータを踏襲する。ここでは、ランプに対する初期条件や、境界条件に変更はない。
【0109】
図10は、本実施の形態に係る、ブロックへの分割後の解析モデルを示す斜視図である。図11は、本実施の形態に係る、ブロックへの分割後の解析モデルを示す断面図である。
【0110】
図9および図10を参照して、ランプ30はブロック分割部115によって指定された分割位置で分割されている。CPU110は、ランプ30の解析モデルが作成されると、ステップS122へ移行する。
【0111】
ステップS122では、解析部117を実現するCPU110が、ランプ30を含む解析対象物10に対して新たなメッシュを作成する。すなわち、CPU110は、解析領域に含まれる部品全てを要素分割する。本実施の形態においては、CPU110は、直交メッシュとして、解析領域をX方向、Y方向、Z方向にそれぞれ88個に、14個に、49個に分割する。解析対象物10がメッシュ分割されると、CPU110は、ステップS124へと移行する。
【0112】
ステップS124では、解析部117を実現するCPU110が、メッシュに分割された解析対象物10について、解析処理を実行する。
【0113】
ステップS126では、出力部118を実現するCPU110は、解析部117によって算出された解析結果を、モニタ102の表示画面に表示する。解析結果が表示されると、CPU110は、ステップS128に移行して解析処理を終了する。
【0114】
<まとめ>
本実施の形態に係るコンピュータ100によれば、着目している解析対象物10(たとえば、液晶モジュールなど)に関して、液晶モジュールの端部の温度が48.7℃、中央部の温度が46.8℃であった。図12は、液晶モジュールの端部と中央部との温度分布を示すイメージ図である。出力部118を実現するCPU110は、モニタ102に、図12に示すような映像などを、解析結果として出力させる。
【0115】
たとえば、パネルの温度むら=パネルの端部の温度−パネルの中央部の温度とすると、本実施の形態に係るパネルの温度むらは、2.0℃であった。
【0116】
以下では、本実施の形態に係るコンピュータ100を用いた場合の解析結果の精度と、通常の熱解析装置を用いた場合の解析結果の精度とを比較する。ランプ30の解析モデルに対して、以下の4パターンにおける熱解析処理が考えられる。
【0117】
1.ブロック分割なし
2.区間分割数4、ブロック分割数4
3.区間分割数100、ブロック分割数4(本実施の形態)
4.区間分割数100、ブロック分割数100
パターン1,2,3,4の解析モデルの断面図をそれぞれ、図13、図14、図11、図15に示す。より詳細には、図14(a)はパターン2の場合の解析モデルの断面図であって、図14(b)と図11とが本実施の形態に係るパターン3の場合の解析モデルの断面図である。
【0118】
そして、図16は、熱解析処理の解析結果の一覧表である。図16に示すように、パターン3に対応する本実施の形態に係るコンピュータ100は、パターン1に示される通常の熱解析装置と比較して、パネル温度むらが2℃改善されている。
【0119】
そして、本実施の形態に係るコンピュータ100は、区間分割数とブロック分割数とが共に大きい(すなわち微小区間とブロックとが共に十分に細かい)パターン4に対応する熱解析装置と比較して、同程度の解析精度を有していることが分かる。
【0120】
また、本実施の形態に係るコンピュータ100は、区間分割数とブロック数とが共に小さい(微小区間とブロックとがどちらも細かくない)パターン2に対応する熱解析装置と比較して、0.3℃分、パネル温度むらに関する解析精度が向上されている。
【0121】
このことから、本実施の形態に係るコンピュータ100においては、区間分割数を増やし、ブロック分割数を低減することによって、区間分割数とブロック分割数とが共に大きい場合(パターン4)と略同程度の解析精度を実現しつつ、処理量(処理速度)を区間分割数とブロック分割数とがどちらも小さい場合(パターン2)と略同程度に抑えることができる。
【0122】
本実施の形態においては、単純な解析モデルを用いているが、コンピュータ100は、さらに複雑なランプ形状を有する解析対象物や、より大規模な組品の解析モデルのためにも使用することができる。
【0123】
また、本実施の形態においては、両側駆動タイプのインバータ基板についての解析を行っているが、コンピュータ100は、片側駆動インバータのためにも使用することができる。なお、片側駆動インバータの場合、ランプの片側が接地されている点に注意する必要がある。その他の条件については、両側駆動タイプと同様に、会席処理を実行することができる。
【0124】
上記説明のように、本実施の形態に係るコンピュータ100によれば、ランプのブロック分割位置を最適化することによって、パネルの温度やパネルの温度むらの解析精度向上を図る事ができる。その結果、コンピュータ100は、熱シミュレーションによって、パネルが温度設計基準を満たしているかどうかを確認できる。すなわち、熱設計の検証手段として、熱シミュレーションを利用する事が可能となる。
【0125】
本実施の形態においては、プログラムは、コンピュータ100に内蔵されている記憶装置(メモリ105、固定ディスク106など)に格納されている。しかしながら、これらの記憶装置に限定されるものではなく、プログラムは、コンピュータが読取り可能な記録媒体(CD118やDVDやUSBメモリなど)に記録されていればよい。すなわち、記録媒体は、プログラム読取装置(CD−DVD駆動装置108など)に挿入されることによって、コンピュータ100に読取り可能な記録媒体であってもよい。記録媒体は、他の装置を利用することによって、そのプログラムがコンピュータ100に読み取られるものであっても良い。
【0126】
すなわち、コンピュータ100が、当該記録媒体に記憶されているプログラムにアクセスして、読み出して、実行できればよい。さらに、コンピュータ100は、通信ネットワークを介して他の装置からプログラムをダウンロードすることによって、内蔵の記憶装置にプログラムを記憶させても良い。ダウンロード用のプログラムは、予めコンピュータ100の記憶装置に記憶されているか、または別の記録媒体から記憶装置にインストールされている。
【0127】
なお、コンピュータ100の本体101と分離可能な記録媒体は、たとえば磁気テープ、カセットテープなどのテープ系の記録媒体、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスクなどの磁気ディスク、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto Optical disk)、MD(Mini Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)などの光ディスク、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)、光カードなどのカード系の記録媒体、マスクROM/EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROMなどの半導体メモリを含む固定的にプログラムを担持する記録媒体であっても良い。
【0128】
また、コンピュータ100を通信ネットワークに接続することによって、上記のプログラムを、通信ネットワークを介して供給しても良い。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、たとえばインターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN(Integrated Services Digital Network)、CATV(Community Antenna TeleVision)通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網などが利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、たとえばIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394、USB(Universal Serial Bus)、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線などの有線でも、IrDA(Infrared Data Association)やリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(High Data Rate)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網などの無線でも利用可能である。
【0129】
なお、本発明は、上記のプログラムが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0130】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0131】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0132】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0133】
10 解析対象物、21 バックライトシャーシ、22 拡散シート、23 拡散シート、24 パネル、25 ベゼル、26 インバータ基板、27 インバータ部品、30 ランプ、100 コンピュータ、101 コンピュータ本体、102 モニタ、103 キーボード、104 マウス、105 メモリ、106 固定ディスク、107 通信インターフェイス、108 駆動装置、109 内部バス、110 CPU、111 入力部、112 区間分割部、113 浮遊容量算出部、114 発熱量分布算出部、115 ブロック分割部、116 放電管解析モデル生成部、117 解析部、118 出力部、119 制御部、D1 情報データベース、D2 材料情報データベース、D3 解析結果データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電管と導体とを含む解析対象物の温度分布を解析するための熱解析装置であって、
前記放電管を表わす放電管モデルと前記導体を表わす導体モデルとを記憶するためのメモリと、
前記熱解析装置を制御するためのプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
前記放電管モデルを第1の個数のエリアへと分割し、
前記エリアのそれぞれと前記導体との間の浮遊容量を計算し、
前記浮遊容量に基づいて前記解析対象物の温度分布を解析する、熱解析装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記浮遊容量に基づいて前記エリアを前記第1の個数よりも少ない第2の個数のブロックへと分類し、
分類結果に基づいて前記解析対象物の温度分布を解析する、請求項1に記載の熱解析装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記浮遊容量に基づいて前記エリアそれぞれの発熱量の比率を計算し、
前記発熱量の比率が近しい複数の前記エリアを1つの前記ブロックへとまとめることによって、前記エリアを分類する、請求項2に記載の熱解析装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記ブロックのそれぞれへと分類された前記エリアの発熱量の比率の合計が等しくなるように、前記エリアを分類する、請求項3に記載の熱解析装置。
【請求項5】
前記放電管は、液晶パネルのランプであって、
前記導体は、バックライトシャーシである、請求項1から4のいずれか1項に記載の熱解析装置。
【請求項6】
メモリとプロセッサとを含むコンピュータにおける、放電管と導体とを含む解析対象物の温度分布を解析するための熱解析方法であって、
前記メモリが、前記放電管を表わす放電管モデルと前記導体を表わす導体モデルとを記憶するステップと、
前記プロセッサが、前記放電管モデルを第1の個数のエリアへと分割するステップと、
前記プロセッサが、前記エリアのそれぞれと前記導体との間の浮遊容量を計算するステップと、
前記プロセッサが、前記浮遊容量に基づいて前記解析対象物の温度分布を解析するステップとを備える、熱解析方法。
【請求項7】
メモリとプロセッサとを含むコンピュータに、放電管と導体とを含む解析対象物の温度分布を解析させるための熱解析プログラムであって、
前記メモリは、前記放電管を表わす放電管モデルと前記導体を表わす導体モデルとを記憶し、
前記熱解析プログラムは、前記プロセッサに、
前記放電管モデルを第1の個数のエリアへと分割するステップと、
前記エリアのそれぞれと前記導体との間の浮遊容量を計算するステップと、
前記浮遊容量に基づいて前記解析対象物の温度分布を解析するステップとを実行させる、熱解析プログラム。
【請求項8】
メモリとプロセッサとを含むコンピュータに、放電管と導体とを含む解析対象物の温度分布を解析させるための熱解析プログラムを格納するコンピュータ読取可能な記録媒体であって、
前記メモリは、前記放電管を表わす放電管モデルと前記導体を表わす導体モデルとを記憶し、
前記熱解析プログラムは、前記プロセッサに、
前記放電管モデルを第1の個数のエリアへと分割するステップと、
前記エリアのそれぞれと前記導体との間の浮遊容量を計算するステップと、
前記浮遊容量に基づいて前記解析対象物の温度分布を解析するステップとを実行させる、記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−237249(P2011−237249A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108204(P2010−108204)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】