説明

熱負荷を受ける冷却式の構成部分

【課題】熱負荷を受ける冷却式の構成部分(30)であって、該構成部分は、冷却のために冷却システムに熱的に接続されており、冷却システムは、外部から強制的に供給される冷却媒体により流過され、冷却媒体と構成部分と熱接触により、構成部分から熱が吸熱されかつ排出されるようになっている形式のものにおいて、冷却能力を経済的に高めるようにする。
【解決手段】冷却媒体と構成部分との間の熱接触の促進のために、少なくとも1つのヘルムホルツ共鳴器(26,28)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱負荷を受ける冷却式の構成部分の冷却の分野に関する。特に本発明は、熱負荷を受ける冷却式の構成部分であって、該構成部分は、冷却のために冷却システムに熱的に接続され、つまり冷却システムにより冷却作用を受けるようになっており、このために、外部から強制的に供給される冷却媒体が、冷却システムを通って流れて、構成部分と熱接触することにより、構成部分から熱を吸熱して排出するようになっている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばタービンの高温のガスと接触する構成部分、つまり、ロータ翼又は動翼、ステータ翼又は静翼、若しくは燃焼器部分等の効果的な冷却は、機械の性能や耐用年数(運用寿命)の向上のための重要な要素である。例えば圧縮機から取り出されてガスタービンの高温の部位へ送られる空気は、ロータ及びケーシングを通して導かれる。このような構成により、ロータ及びケーシングの高温の領域も冷却され、このような冷却は、最新の発電機の駆動のための高性能のガスタービンにとって、所期の耐用年数を得るために不可欠である。取り出された空気は、2つの仕事を有しており、つまり、ロータ及びケーシングの金属温度を許容レベルに減少させ、かつこれにより、高温ガスにさらされる構成要素(コンポーネント)、つまりタービン翼や燃焼器部分を冷却するものである。このような仕事は、ほかの冷却媒体、例えば、冷却目的のために特別に発生される蒸気、或いは複合サイクル発電プラントの既存の蒸気回路から、若しくは別個の蒸気ボイラーから取り出される蒸気にも課せられ得るものである。取り出された冷却媒体は、開回路式冷却システムでは失われ、しかしながら閉冷却回路では蒸気回路に戻されるものの、いくらかエネルギー損失が発生している。
【0003】
冷却システムを構成する際に意図することは、
圧縮機や蒸気発生器若しくは冷却媒体用の他の媒体源から到来する冷却媒体の使用量を減少すること、並びに、
例えば構成部分の内部の冷却通路内を流れる冷却媒体の冷却効率若しくは冷却能力を高めることである。
【0004】
冷却システムのための従来技術の例として、図1にタービン翼10を示してある。図1の図面部分a)はタービン翼10の縦断面であり、図面部分b)は、図面部分a)のA−A線に沿った横断面図である。タービン翼10は、翼基部13、及びタービンの半径方向で翼基部(翼ベース)13に続く翼ブレード11から成っており、翼ブレード11は翼先端12で終わっている。翼ブレード11は、通常そうであるように、前縁21及び後縁22、並びに両縁間にある圧力面24及び負圧面25を有している。翼ブレード11の内部には、半径方向へ延びる複数の冷却通路14,15,16,17を設けてある。冷却通路15,16内には、翼基部13から冷却媒体が流入し(矢印)、冷却通路15内に流入して翼先端12に向かって流れる冷却媒体は、翼先端12の領域に設けられている流れ転向部18で180°にわたって転向されて、冷却通路14内に入り、冷却通路14内を翼基部13に向かって流れ戻り、該流れの一部分は、後縁22の小さい冷却孔を経て流出するようになっている。冷却通路16内に流入した冷却媒体は、通路壁の貫通孔19を経て隣接の冷却通路17内に流れ込み、そこから流出孔20,23を経て外側へ流出し、これにより翼の外面に沿って冷却膜を形成して翼を冷却するようになっている。
【0005】
熱負荷を受ける構成部分(ここに示す例では、熱負荷されるタービン翼)を構成する場合に、冷却効率は、一般的に冷却通路内に種々の障害物を設けることにより、或いは、隣接する冷却通路間若しくは冷却すべき壁に種々の形状の開口部若しくはスリットを設けることにより高められている。このような幾何学形状に基づく構成要素は、冷却媒体の流れに局所的な乱流を形成し、若しくは局所的な領域における対流を促進して、構成部分の高温の内壁と低温の冷却媒体との間の熱伝達率を高めようとするものである。製造コストの高い極めて複雑な冷却システム若しくは冷却機構を冷却すべき構成部分内に設ける場合でも、特定の領域、例えば構成部分内の角隅部(コーナー部)は、まだ効果的な冷却のための改良の余地が残されたままであり、酸化やクリープ或いは早期の亀裂発生等の局所的な作用に基づき、寿命に関して問題となっている部位である。
【0006】
冷却システムは、一般的に、高温になる構成部分内への冷却媒体の流入のための1つ若しくは複数の入口ポート、並びに冷却媒体の流出のための1つ若しくは複数の出口ポートを含んでいる。冷却システムは、構成部分の高温になる壁と冷却媒体との間の熱伝達のメカニズムに対応して種々の中空室(若しくは空間)を有しており、該中空室は、通路若しくはスリットを介して互いに接続されている。中空室及び通路における種々の形状、寸法、温度及び圧力に基づき、冷却システム内には種々の音響共鳴(若しくは音響共振)が発生している。一般的に、各中空室及び各通路は固有の各音響共鳴を有している。冷却システムの構成(形成)に際して、冷却システム内を流れる冷却媒体の流れのマッハ数は、流体の剥離、ひいてはこれに伴う熱伝達率の低下を避けるために、所定の上限値と下限値との間に保たれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、熱負荷を受ける冷却式の構成部分(コンポーネント)に改良を加えて、従来技術の前述の欠点を排除して、損傷の発生しやすい領域、つまり危険領域又は臨界領域において低コストでより効果のある強力な冷却を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の構成によれば、冷却媒体と構成部分との間の熱接触の促進のために、少なくとも1つのヘルムホルツ共鳴器が設けられている。
【0009】
ヘルムホルツ共鳴器は、冷却システムと、流体の作用若しくはエネルギーを受けられるように接続(流体接続)され、つまり冷却システムと流体的に連通していて、冷却システム内を流動する冷却媒体自体によって励振されるようになっている。
【0010】
本発明の有利な形態によれば、ヘルムホルツ共鳴器は、冷却システム内に組み込まれている。
【0011】
本発明の別の形態によれば、複数のヘルムホルツ共鳴器を、互いに並べて配置してあり、該ヘルムホルツ共鳴器は、エネルギー変換若しくはエネルギー輸送のために、つまり、より具体的には音響式のヒートポンプの形成のために、接続通路を介して互いに流体的(液圧的又は空圧的)に接続されている。
【0012】
本発明の別の形態によれば、ヘルムホルツ共鳴器は、熱負荷を受ける構成部分内に組み込まれて、該構成部分の特に高い熱負荷を受ける領域に配置されている。
【0013】
本発明の形態によれば、熱負荷を受ける構成部分は、熱を発生する電気式の装置の部品(一部分)、特にジェネレータ(generator)又は発電機の部品、モータの部品若しくは電子式高出力形の装置の部品である。
【0014】
本発明の有利な形態によれば、構成部分は、熱機関の部品、特に蒸気タービン若しくはガスタービンの部品である。
【0015】
本発明の特に有利な形態によれば、構成部分は、冷却式の翼ブレードを有するタービン翼であり、翼ブレードは、有利には外部から強制的に供給される冷却媒体(又は冷却流体)、例えばガス状の冷却媒体(空気若しくは蒸気)によって貫流されるようになっており、つまり、有利には外部から強制的に供給される冷却媒体は、翼ブレードの内部を通って流れるようになっており、翼ブレードの内部に1つ若しくは複数のヘルムホルツ共鳴器を設けてあり、ヘルムホルツ共鳴器は、翼ブレードの内部を通って流れる冷却媒体により負荷され、つまり該冷却媒体の作用を受けるようになっている。
【0016】
本発明の形態によれば、タービン翼は翼ブレード内に、蒸気タービン若しくはガスタービンの半径方向にかつ互いに並列的に延びる複数の冷却通路を有しており、ヘルムホルツ共鳴器は、冷却通路内に組み込まれている。
【0017】
本発明の形態によれば、翼ブレードは、前縁及び後縁を有しており、ヘルムホルツ共鳴器は、前縁の領域に配置されている。
【0018】
次に本発明を図示の実施形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】内部に冷却手段を有する従来技術のタービン翼を示す図であり、図部分a)は縦断面図であり、図部分b)は横断面図である。
【図2】図1の図部分a)の、タービン翼の冷却されにくい危険(クリティカル)な角隅領域の拡大断面図である。
【図3】タービン翼の、本発明の実施形態に基づき適切に形成された冷却通路を介して互いに接続されるヘルムホルツ共鳴器を備える、図2の領域に対応する領域を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の重要な点は、冷却システムにおいて所定の領域で冷却媒体に音響振動を励起して、冷却作用を局所的に向上させることにある。本発明の図示の実施形態は、冷却システム内における離散的な非線形連成振動形の複数の中空室から成る熱音響回路網により形成される熱音響モデル(サーモ・アコーステッィク・モデル[thermo-acoustic model])を用いて説明されるものである。振動は、冷却システム内を流れる冷却媒体自体によって励起される。音響振動を別の手段によって、例えば温度差等により励起することも考えられる。特定の中空室の形状及び寸法は、図2(従来技術)と図3(本発明の実施形態)との比較により明確であるように、所定のヘルムホルツ共鳴器の必要な形状及び寸法に適合される。
【0021】
図3には、本発明の実施形態のタービン翼30の翼先端の領域を示してあり、該実施形態においては、図2の従来技術に対して、冷却通路17の、特に熱負荷を受ける角隅部32に改良を加えてあり、つまり、少なくとも2つのヘルムホルツ共鳴器26,28を形成してあり、該ヘルムホルツ共鳴器(中空室又はキャビティー[cavitie])は、接続通路31を介して互いに流体的に接続されている。ヘルムホルツ共鳴器26は、隘路部27を介して冷却媒体の隣接の流れに接続されており、ヘルムホルツ共鳴器28は、スリット29を介して同様に冷却媒体の隣接の流れに接続されている。スリット29の形状及び寸法は、スリット29の前を流過する冷却媒体(矢印)の流れ速度に対応して規定されるものである。
【0022】
冷却媒体の流れパラメータに対応してヘルムホルツ共鳴器26,28の隘路部及び中空室の寸法を適切に選ぶことにより、隣接の共鳴器間に、互いに異なる強さの音響振動(音波)を励起することができるようになっている。このような構成に基づき、音響式のヒートポンプが形成され、振幅の小さい方の共鳴器の熱が、振幅の大きい方の共鳴器へ汲み出され、つまり輸送されるようになっている。
【0023】
1つの接続通路(31、図3)により互いに接続された隣接の中空室間の熱輸送量は、次の式:

で推定(概算)され、この場合に、Sは、接続通路(31)の内面の面積を表し、δは熱の侵入深さを表し、σはプラントル数を表し、pcは音響振動の振幅を表し、vcは接続通路(31)内の速度を表している。速度vcは、次の式:

で算出され、この場合に、Δpは隣接の共鳴器の振幅の差を表し、ρは冷却媒体の密度を表し、ωは音響系の角振動数を表し、leは接続通路(31)の有効長さを表しており、有効長さは通路の両端における損失により規定されるものである。
【0024】
ヘルムホルツ共鳴器の適切な構成及び配置により、熱が、冷却にとって重要な領域、つまり熱負荷により損傷の生じるおそれのある危険な領域から汲み出され、つまり放出されるようになり、このことは、危険な領域の増強された冷却を意味している。
【0025】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。別の形態も可能であり、例えば、熱負荷を受ける構成部分のためにガス状の冷却媒体、特に空気を用いる冷却システムにおいて熱音響現象により、効率の高められた冷却を達成することもできるようになっている。必要な音響共鳴器は、冷却通路若しくは場の既存形状を変更することにより形成されてよいものである。
【0026】
冷却システム内の音響共鳴器は、
例えば0.2の低いマッハ数において、冷却通路に対して横方向の定常波の波形若しくは冷却通路に沿った定常波の波形に基づき形成され、或いは、
0.3以上の高いマッハ数において、冷却通路に対して横方向の過度波又は非定常波の波形若しくは冷却通路に沿った過度波又は非定常波の波形に基づき形成され、或いは、
冷却通路に沿った回転波の波形に基づき形成され、或いは
冷却効果の向上のための上記波形の適切な組み合わせに基づき形成されるようになっている。
【0027】
幾何学形状及び寸法のほかに、温度及び圧力も、音響手段により冷却能力を高めるために、考慮されるものである。
【0028】
音響的に冷却効率を高めるための上述の方法は、ガスタービンにおいて、所定の作業領域内にも、また作業領域外でも用いられるものであり、更に、冷却を必要とする他のあらゆる機械若しくは装置、例えば発電機、ジェットエンジン、あらゆる形式のピストン機械、電動式のモータ若しくはアクチュエータ等に用いられるものである。音響共鳴器は、それ自体単独に冷却系の中央の構成要素として用いられ得るものでもある。このような形態は、ガスタービンのほかの構成要素、例えばロータ若しくはケーシングの中空室にも用いられるものである。
【符号の説明】
【0029】
10 タービン翼、 11 翼ブレード、 12 翼先端、 13 翼基部、 14,15,16,17 冷却通路、 18 流れ転向部、 19 貫通孔、 20 流出孔、 21 前縁、 22 後縁、 23 流出孔、 24 圧力面、 25 負圧面、 26 ヘルムホルツ共鳴器、 27 隘路部、 28 ヘルムホルツ共鳴器、 29 スリット、 30 タービン翼、 31 接続通路、 32 高い熱負荷を受ける角隅部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱負荷を受ける冷却式の構成部分(30)であって、該構成部分は、冷却のために冷却システム(14,15,16,17,19)に熱的に接続されており、外部から強制的に供給されるガス状の冷却媒体が、前記冷却システム(14,15,16,17,19)を通って流れて、前記構成部分(30)と熱接触することにより、該構成部分(30)から熱を吸熱して排出するようになっている形式のものにおいて、前記冷却媒体と前記構成部分(30)との間の前記熱接触の促進のために、少なくとも1つのヘルムホルツ共鳴器(26,28)が設けられていることを特徴とする、熱負荷を受ける冷却式の構成部分。
【請求項2】
前記ヘルムホルツ共鳴器(26,28)は、前記冷却システム(14,15,16,17,19)と連通されていて、前記流れる冷却媒体自体によって励振されるようになっている請求項1に記載の構成部分。
【請求項3】
前記ヘルムホルツ共鳴器(26,28)は、前記冷却システム(14,15,16,17,19)内に組み込まれている請求項2に記載の構成部分。
【請求項4】
複数の前記ヘルムホルツ共鳴器(26,28)は、互いに並べて配置されていて、音響式のヒートポンプの形成のために、接続通路(31)を介して互いに連通されている請求項1から3のいずれか1項に記載の構成部分。
【請求項5】
前記ヘルムホルツ共鳴器(26,28)は、前記構成部分(30)内に組み込まれて、該構成部分(30)の特に高い熱負荷を受ける領域に配置されている請求項1から4のいずれか1項に記載の構成部分。
【請求項6】
該構成部分(30)は、熱を発生する電気式の装置の部品、特に発電機の部品、モータの部品若しくは電子式高出力形の装置の部品である請求項1から5のいずれか1項に記載の構成部分。
【請求項7】
該構成部分(30)は、熱機関の部品、特に蒸気タービン若しくはガスタービンの部品である請求項1から5のいずれか1項に記載の構成部分。
【請求項8】
該構成部分(30)は、タービン翼(30)であり、該タービン翼(30)は冷却式の翼ブレード(11)を有しており、前記ガス状の冷却媒体は、前記翼ブレード(11)の内部を通って流れるようになっており、該翼ブレード(11)の前記内部に1つ若しくは複数のヘルムホルツ共鳴器(26,28)を設けてあり、該ヘルムホルツ共鳴器(26,28)は、前記流れる冷却媒体の作用を受けるようになっている請求項7に記載の構成部分。
【請求項9】
前記タービン翼(30)は前記翼ブレード(11)内に、前記タービンの半径方向にかつ互いに並列的に延びる複数の冷却通路(14,15,16,17)を有しており、前記ヘルムホルツ共鳴器(26,28)は、前記冷却通路(14,15,16,17)内に組み込まれている請求項8に記載の構成部分。
【請求項10】
前記翼ブレード(11)は、前縁(21)及び後縁(22)を有しており、前記ヘルムホルツ共鳴器(26,28)は、前記前縁(21)の領域に配置されている請求項9に記載の構成部分。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−7616(P2012−7616A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141057(P2011−141057)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】