説明

熱転写シート

【課題】サーマルヘッドの発熱体進入前に蓄積するカスを抑え、かつサーマルヘッドの磨耗を回避することができる熱転写シートを提供すること。
【解決手段】基材の一方の面に、背面層を含む1つ又は2つ以上の層から構成される耐熱滑性層が設けられた熱転写シートであって、耐熱滑性層が2つ以上の層から構成される場合に、背面層は、基材から最も離れた位置に配置され、耐熱滑性層を構成する少なくとも1つの層には、バインダー樹脂と、多角形状の有機微粒子が含有され、該有機微粒子の表面の一部分が背面層の表面から突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートに関し、さらに詳しくは、サーマルヘッド発熱体周辺部に蓄積するカスを抑え、かつサーマルヘッドの磨耗を回避することができる熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇華性染料を適当なバインダーで担持した色材層をポリエステルフィルム等の基材の一方面に設けた熱転写シートと、被転写体とを重ね合わせ、基材の他方面側と、サーマルヘッドとを接触させながらサーマルヘッドによる加熱処理を行うことで、昇華染料を被転写体に転写する昇華転写方式が知られている。この、昇華転写方式によれば、熱転写シートに印加するエネルギー量によってドット単位で昇華性染料の移行量を制御出来るため濃度階調が可能であることから、画像が非常に鮮明であり、且つ透明性、中間調の色再現性、階調性に優れフルカラー写真画像に匹敵する高品質画像の形成が可能である。
【0003】
ところで、熱転写シートにおいては、基材に直接サーマルヘッドを直接的に接触させて印画を行うと、基材とサーマルヘッド間に生じる摩擦力により、走査時にスティッキングが発生し、印画不良となってしまう場合がある。また、印画時の熱によって基材がサーマルヘッドに融着し、熱転写シートの走行を妨げ、スティッキングを発生させるばかりか、著しい場合はシート破断を引き起こすことがある。したがって、熱転写シートの分野においては、基材の他方面に、耐熱性の向上や滑性付与による走行安定性を目的として背面層を設けることが通常行われている。
【0004】
しかしながら、走行安定性を目的とする背面層には、熱転写時に背面成分由来のカスがサーマルヘッドの発熱体周辺部へ蓄積してしまう問題が内在している。サーマルヘッドにカスが付着した場合には、サーマルヘッドからの熱が熱転写シートに充分に伝わらず、高品質画像の形成ができなくなる場合や、蓄積したカスに起因する印画キズが生ずることとなる。また、多くの印画条件の中で、濃ベタの印画部と、ハーフトーンの階調パターンが隣接したような印画条件では、サーマルヘッドに印加される加熱エネルギーが高レベルから低レベルに急激に変化する場合、サーマルヘッドと熱転写シートの背面側との接触部で堆積されたカスの影響と思われる、尾引きの汚れ(濃淡ムラ)がハーフトーンの階調パターン部分で生じてしまうという問題がある。したがって、熱転写シートの分野では、背面層のカスがサーマルヘッドに付着することを防止する、或いは付着したカスがサーマルヘッドに蓄積されることがないようにすることが、重要な課題となっている。
【0005】
このような状況下、例えば、特許文献1には、有機フィラーを含有する背面層を備えた熱転写シートが開示されている。特許文献1に開示がされている熱転写シートによれば、サーマルヘッドへのカスの付着がなく、転写性保護層の転写不良を引き起こすことがないとされている。また、これ以外にも、サーマルヘッドに付着したカスを除去するための微小粒子を背面層に含有せしめた熱転写シートも種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−307764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示がされている背面層を備える熱転写シートや、現在までに提案されている熱転写シートでは、サーマルヘッドに付着するカスの抑制性能、サーマルヘッドの摩耗防止性能の双方の性能を満たすことは困難である。また、特許文献1の背面層に含有される有機フィラーの形状では、サーマルヘッドに付着したカスの掻き取り性能が十分であるとはいえず、背面層に含有される成分のみならず、その形状についても検討する必要がある。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、サーマルヘッドに蓄積するカスの抑制性能、サーマルヘッドの摩耗防止性能の双方の性能を満たし、この性能を長期にわたって維持することのできる熱転写シートを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、基材の一方の面に、背面層を含む1つ又は2つ以上の層から構成される耐熱滑性層が設けられた熱転写シートであって、前記耐熱滑性層が2つ以上の層から構成される場合に、前記背面層は、前記基材から最も離れた位置に配置され、前記耐熱滑性層を構成する少なくとも1つの層には、バインダー樹脂と、多角形状の有機微粒子が含有され、該有機微粒子の表面の一部分が前記背面層の表面から突出していることを特徴とする。
【0010】
また、前記有機微粒子がシリコーン樹脂微粒子であってもよい。また、前記有機微粒子が前記背面層に含有される場合における当該有機微粒子の平均粒子径が、0.3μm以上15μm以下であってもよい。
【0011】
また、前記背面層に含有されるバインダー樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂の何れか一方又は双方を、イソシアネート系硬化剤によって硬化せしめた硬化型樹脂であり、前記ポリビニルブチラール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂の何れか一方の又は双方が有する水酸基と、前記イソシアネート系硬化剤が有するイソシアネート基とのモル当量比(―NCO/−OH)が0.01以上0.7未満であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱転写シートによれば、サーマルヘッドに蓄積するカスの抑制性能、サーマルヘッドの摩耗防止性能の双方の性能を満たし、この性能を長期にわたって維持することのできる熱転写シートを提供することができる。また、本発明の熱転写シートの一実施形態によれば、背面層の架橋密度を調整することで背面層に所望される性能を最大限発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の耐熱滑性層を備える本発明の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
【図2】第1実施形態の耐熱滑性層を備える本発明の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
【図3】第1実施形態の耐熱滑性層を備える本発明の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
【図4】第1実施形態の耐熱滑性層を備える本発明の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
【図5】第2実施形態の耐熱滑性層を備える本発明の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
【図6】第2実施形態の耐熱滑性層を備える本発明の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の熱転写シート10について図面を用いて具体的に説明する。図1〜図6に示すように本発明の熱転写シート10は、基材1の一方の面に、背面層5を含む1つ又は2つ以上の層から構成される耐熱滑性層7が設けられた熱転写シートであって、耐熱滑性層7が2つ以上の層から構成される場合に、背面層5は、基材から最も離れた位置に配置され、耐熱滑性層7を構成する少なくとも1つの層には、バインダー樹脂と、多角形状の有機微粒子が含有され、該有機微粒子の表面の一部分が前記背面層の表面から突出していることを特徴とする。
【0015】
図1〜図4は、耐熱滑性層7を構成する背面層5に、多角形状の有機微粒子20が含有され、背面層5の表面から多角形状の有機微粒子20の表面の一部分が突出している例を示す熱転写シート10の概略断面図であり、第1実施形態の耐熱滑性層7を備える熱転写シート10の概略断面図である。図1、2では、耐熱滑性層7が、背面層5のみで構成された例を示し、図3、4では、耐熱滑性層7が、背面層5を含む2以上の層から構成された例を示している。
【0016】
図5、図6は、耐熱滑性層7が背面層5を含む2つ以上の層から構成され、当該2つ以上の層のうち、背面層5以外の層に多角形状の有機微粒子20が含有され、当該背面層5以外の層に含有された多角形状の有機微粒子20の表面の一部が、背面層5の表面から突出している例を示す熱転写シート10の概略断面図であり、第2実施形態の耐熱滑性層を備える熱転写シートの概略断面図である。
【0017】
図1、3、5に示す形態の熱転写シートでは、基材1の他方の面に転写性保護層3が設けられており、図2、4、6に示す形態の熱転写シートでは、基材1の他方の面に色材層4が設けられている。なお、図1〜図6に示される転写性保護層3、色材層4、プライマー層6及び離型層2は本発明の熱転写シート10における任意の構成である。
【0018】
以下、本発明の熱転写シート10について図面を用いてさらに詳細に説明する。
【0019】
(基材)
基材1は本発明の熱転写シート10における必須の構成であり、色材層4、或いは転写性保護層3、及び背面層5を含む耐熱滑性層7を保持するために設けられる。基材1の材料については特に限定されないが、色材層4の染料、或いは転写性保護層3を被転写体上に転写する際にサーマルヘッドにより加えられる熱に耐え、取り扱い上支障のない機械的特性を有することが望ましい。このような基材として、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の各種プラスチックフィルムまたはシートを挙げることができる。また、基材1の厚さは、その強度及び耐熱性が適切になるように材料に応じて適宜設定することができ、2.5〜100μm程度が一般的で、好ましくは1〜10μmである。
【0020】
(耐熱滑性層)
図1〜図6に示すように基材1の一方の面(図1に示す場合には基材1の下面)には、1つ又は2つ以上の層から構成される耐熱滑性層7が設けられている。なお、本発明の熱転写シートでは、耐熱滑性層7が、1つの層から構成される場合、2つ以上の層から構成される場合のいずれの場合であっても耐熱滑性層7には背面層5が含まれる。したがって、耐熱滑性層7が、1つの層から構成される場合には、背面層5がそのまま耐熱滑性層7となり、背面層5には多角形状の有機微粒子20が含有されることとなる。また、耐熱滑性層7が、2つ以上の層から構成される場合には、背面層5は、基材1から最も遠い位置に配置されている。以下、耐熱滑性層7について、背面層5に多角形状の有機微粒子20が含まれ、当該多角形状の有機微粒子20の表面の一部分が、背面層5の表面から突出している場合と、背面層5以外の層に多角形状の有機微粒子20が含まれ、当該多角形状の有機微粒子20の表面の一部分が、背面層5の表面から突出している場合にわけて説明する。
【0021】
(第1実施形態の耐熱滑性層)
第1実施形態の耐熱滑性層7は、図1〜図4に示すように、必須の構成である背面層5を含む1つ、又は2つ以上の層から構成されている。
【0022】
(第1実施形態における背面層)
第1実施形態の耐熱滑性層7は、背面層5が、バインダー樹脂と、多角形状の有機微粒子20を含有しており、背面層5に含有された多角形状の有機微粒子20の表面の一部分は、背面層5の表面から突出する形態をとっている。以下、多角形状の有機微粒子20、バインダー樹脂について説明する。
【0023】
「多角形状の有機微粒子」
図1〜4に示すように、耐熱滑性層を構成する背面層5には、多角形状の有機微粒子20が含有されており、背面層5の表面近傍に位置する多角形状の有機微粒子20は、その表面の一部分が背面層5の表面から突出している。本発明では、背面層5の表面から突出した多角形状の多角形状の有機微粒子によって、背面層5を含む耐熱滑性層7にサーマルヘッドに付着したカスの掻き取り性能を付与している。
【0024】
本発明では、耐熱滑性層を構成する背面層5にサーマルヘッドに付着したカスの掻き取り性能を付与するための有機微粒子が含有されており、この有機微粒子が多角形状であることを必須の要件とする。したがって、角を有しない有機微粒子、例えば、真球状の有機微粒子は、多角形状の有機微粒子からは除外される。なお、このことは、耐熱滑性層を構成する背面層5に真球状の有機微粒子が含有されることを禁止するものではなく、多角形状の有機微粒子20が含有されていれば、必要に応じてこれ以外の有機微粒子が含有されていてもよい。以下、特に断りがない限り、単に有機微粒子という場合には、多角形状の有機微粒子を意味する。
【0025】
次に、サーマルヘッド走行中において、サーマルヘッドに付着する背面成分由来のカスを、多角形状の有機微粒子20が掻き取るメカニズムについて説明する。図示するように、耐熱滑性層を構成する背面層5の表面からは、多角形状の有機微粒子20の表面の一部分が突出しており、耐熱滑性層を構成する背面層5の表面には、該突出した有機微粒子20によって、凹凸が形成されている。有機微粒子20は、耐熱滑性層を構成する背面層5に含まれるバインダー樹脂と比較して硬度が高いことから、サーマルヘッドに付着したカスは、サーマルヘッド走行中に耐熱滑性層を構成する背面層5の表面に形成された凸部に掻き取られるように除去される。さらに、本発明では、この凹凸を形成する有機微粒子は、多角形状であることから、突出した部分、すなわち凸部にも角が存在しており、この角によって極めて高いカスの掻き取り効果が発揮される。
【0026】
また、上述したように耐熱滑性層を構成する背面層5に含まれる成分は有機微粒子20であることから、無機微粒子の如く、サーマルヘッドに付着したカスを掻き取る際に、サーマルヘッドを摩耗させることがない。換言すれば、耐熱滑性層を構成する背面層5の表面から突出する微粒子を有機微粒子とすることでサーマルヘッドの摩耗を防止することができる。これにより、サーマルヘッドの摩耗によって生じうる印画シワやカスレなどの印画不良の発生を防止でき、またサーマルヘッドの摩耗にともないプリンタ寿命が短くなることも防止できる。
【0027】
耐熱滑性層を構成する背面層5に含有される多角形状の有機微粒子20の粒子径について特に限定はないが、有機微粒子20の粒子径が著しく微小な場合、例えば、0.3μm未満である場合には、耐熱滑性層を構成する背面層5を形成するための塗工液内に有機微粒子20を十分に分散させた場合であっても、有機微粒子20を背面層5の表面に突出させることが困難となる場合がある。また、有機微粒子の粒子径を大きくしていった場合、例えば、15μmより大きい場合には、サーマルヘッド走行中に、有機微粒子20が、背面層5から脱落してしまう場合がある。
【0028】
この点を考慮すると、耐熱滑性層を構成する背面層5に含有される多角形状の有機微粒子20の粒子径は、0.3μm以上15μm以下の範囲内であることが好ましく、4μm以上11μm以下の範囲内であることが特に好ましい。特に、4μm以上11μm以下の範囲内とすることで、サーマルヘッドに付着した微小な削りカスの掻き取り性能を向上させることができる。さらに、上記粒子径にするとともに、耐熱滑性層を構成する背面層5の厚みを適宜調整することで背面層5から突出している部分の有機微粒子の体積を、背面層5に埋まっている部分の有機微粒子20の体積よりも小さくすることができ、サーマルヘッド走行中における脱落頻度の少ない突出量とすることができる。
【0029】
なお、有機微粒子20の粒子径は、レーザー回折散乱法による粒度分布測定装置で測定される平均粒子径であり、体積基準により算出した体積平均粒子径である。粒度分布測定装置としては例えば、ベックマン・コールター(株)製のコールターLS230等を使用することができる。以下で説明する第2実施形態の耐熱滑性層に含有される有機微粒子20についても同様である。
【0030】
上述したように多角形状の有機微粒子20を、耐熱滑性層7を構成する背面層5に含有せしめることで、サーマルヘッドに付着するカスの抑制性能、サーマルヘッドの摩耗防止性能の双方の性能を満たすことができる。多角形状の有機微粒子20としては、シリコーン樹脂微粒子、フッ素系樹脂フィラー、アクリル樹脂、ラウロイル樹脂、フェノール樹脂、アセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂等からなる有機樹脂微粒子、またはこれらを架橋剤と反応させた架橋樹脂微粒子等を挙げることができるが、これらに限定されることはなく、多角形状であるとの条件を満たす従来公知の有機微粒子を適宜選択して使用することができる。
【0031】
また、多角形状の有機微粒子は、耐熱性が高いものであることが好ましい。耐熱性の高い多角形状の有機微粒子を背面層5に含有せしめることで、印画時に背面層5の表面とサーマルヘッドとが熱融着を起こすことを防止することができ、熱融着によって熱転写シートの走行が妨げられることによる印画キズの発生も防止することができる。耐熱性の高い有機微粒子としては、シリコーン樹脂微粒子等を挙げることができる。
【0032】
これらの有機微粒子は、市販品をそのまま使用することもでき、シリコーン樹脂微粒子としては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のトスパール240や、日興リカ(株)製のMSP−4000等を挙げることができる。上記のシリコーン樹脂微粒子(トスパール240)は、熱分解温度が420℃、また、シリコーン樹脂微粒子(MSP−4000)は熱分解開始温度が350℃以上と非常に耐熱性に優れることから、本発明において好適に使用することができる。
【0033】
背面層5に含有される多角形状の有機微粒子20の添加量について特に限定はないが、有機微粒子20の添加量が背面層5の固形成分に対して0.01質量%未満である場合には、有機微粒子20が背面層5の表面に突出する量が少なくなり、カスの掻き取り性能が不十分となる可能性がある。一方で、有機微粒子20の添加量が3質量%より多くなると、背面層5とサーマルヘッドとの摩擦が高くなり、印画シワや、印画不良が生ずる可能性がある。このような点を考慮すると、有機微粒子20の添加量は、背面層5の固形成分に対して0.01質量%以上3質量%以下であることが好ましい。
【0034】
(バインダー樹脂)
背面層5に含有されるバインダー樹脂について特に限定はなく、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、フッ化ビニリデン樹脂、ナイロン、ポリビニルカルバゾール、塩化ゴム、環化ゴム及びポリビニルアルコールが挙げられる。これらの樹脂は耐熱性を考慮して、ガラス転移点が60℃以上のものを好ましく使用可能である。
【0035】
なお、背面層5に含有されるバインダー樹脂は、背面層5の架橋密度に大きな影響を与え、一般的に背面層5の架橋密度が高くなるにつれて、背面層5の耐熱性は向上するとされている。一方で、背面層5に滑剤成分を含有させた場合において、背面層5の架橋密度を高くしすぎた場合には、サーマルヘッド走行時に、背面層5の表面に滑剤成分を十分にブリードさせることができず、滑剤成分の働きを阻害する要因ともなる。
【0036】
したがって、背面層5に含まれるバインダー樹脂は、背面層5に一定の耐熱性を付与しつつ、滑剤成分の働きを阻害することのない架橋密度に調整することが望ましい。このような点を考慮すると、背面層5に含まれるバインダー樹脂は、分子中に多くの水酸基(−OH)を有しているポリビニルブチラール樹脂、及びポリアセトアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂の何れか一方又は双方を、イソシアネート系硬化剤によって硬化せしめた硬化型樹脂であって、ポリビニルブチラール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂の何れか一方又は双方が有する水酸基と、イソシアネート系硬化剤が有するイソシアネート基とのモル当量比(―NCO/−OH)が0.01以上0.7未満である硬化型樹脂であることが好ましい。
【0037】
この硬化型樹脂とした場合には、バインダー樹脂が一定の範囲で硬化されていることから、背面層5に使用上問題のないレベルの耐熱性を付与することができ、かつ印画時において背面層5に必要に応じて含有される滑剤成分を背面層5の表面にブリードさせることができ、滑剤成分の働きを十分に発揮し得る。
【0038】
硬化型樹脂を形成するためのポリビニルアセタール樹脂は、水酸基価が9質量%以上25質量%以下であることが好ましい。当該範囲内とすることで、耐熱性を向上させることができるとともに、酢酸エチルやトルエン等の溶剤に容易に溶解させることができる。このような水酸基価のポリビニルアセタール樹脂としては、積水化学株式会社製のエスレックBX−L、BX−1、BX−5、KS−1、KS−3、KS−5、KS−10等が挙げられる。なお、本明細書中、「水酸基価」とは、樹脂ポリマー中の、水酸基を有するモノマー成分の割合を意味するものであり、樹脂ポリマー全体の質量に対する水酸基を有するモノマー成分の質量の割合(質量%)として算出される値である。
【0039】
イソシアネート系硬化剤は、上記したポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂を、その水酸基を利用して架橋させ、耐熱滑性層の塗膜強度または耐熱性を向上させるものである。イソシアネート系硬化剤としては、従来種々のものが知られているが、そのうち芳香族系イソシアネートのアダクト体を使用することが望ましい。芳香族系ポリイソシアネートとしては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、又は、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、trans−シクロヘキサン、1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェートがあげられ、特に2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、又は、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物が好ましい。
【0040】
「ポリエチレンワックス」
背面層5には、ポリエチレンワックスやタルクが含有されていてもよい。上述した多角形状の有機微粒子20が、サーマルヘッドに蓄積するカスの抑制性能、サーマルヘッドの摩耗防止性能の双方の性能を満たすために含有されているのに対し、ポリエチレンワックスは、背面層5の滑り性を向上させるために含有される。ポリエチレンワックスとしては、密度が0.94〜0.97のポリエチレンワックス粒子、例えば、ポリエチレンワックスを微粉末化したものを好適に使用できる。ポリエチレンワックスとしては、高密度または低密度ポリエチレンワックスがあり、低密度ポリエチレンは構造上、エチレン重合体で分岐が存在しているものが多く含まれ、これに対し、高密度ポリエチレンは比較的、ポリエチレンの直鎖状構造を主体に構成されているものである。
【0041】
ポリエチレンワックスは、その粒子径が、1μm以上15μm以下のものを好適に用いることができる。当該範囲のポリエチレンワックスを含有せしめることで、ポリエチレンワックスの表面の一部分を背面層5の表面から突出させることができ、背面層5の滑性を向上させることができる。また、上述した多角形状の有機微粒子20によるサーマルヘッドに付着したカスの掻き取り効果と相まって、サーマルヘッドに付着したカスの掻き取り性能を更に向上させることができる。
【0042】
ポリエチレンワックスは、背面層の固形分総量に対し、1〜15質量%の割合で含有させることが好ましい。含有量を上記範囲内とすることで、背面層5に特に優れた滑性を付与することができる。ポリエチレンワックスの融点は、110〜140℃であることが好ましい。
【0043】
「タルク」
上記ポリエチレンワックスと同様の観点から、背面層5には、ポリエチレンワックスにかえて、またはこれとともにタルクが含有されていることが好ましい。
【0044】
タルクは、その粒子径が、1μm以上15μm以下のものを好適に用いることができる。当該範囲のタルクを含有せしめることによる効果は上述したポリエチレンワックスと同様である。
【0045】
タルクは、背面層の固形分総量に対し、1質量%以上10質量%以下の割合で含有させることが好ましい。含有量を上記範囲内とすることで、背面層5に特に優れた滑性を付与することができる。なお、ポリエチレンワックスと併せて使用する場合には、ポリエチレンワックスとタルクの合計質量が上記範囲内であることが好ましい。
【0046】
また、これ以外にも滑剤成分として背面層5に金属石鹸やリン酸エステル等を含有させることもできる。金属石鹸としては、例えば、アルキルリン酸エステルの多価金属塩、アルキルカルボン酸の金属塩等が挙げられる。上記アルキルリン酸エステルの多価金属塩としては、プラスチック用添加剤として公知のものを使用することができる。上記アルキルリン酸エステルの多価金属塩は、一般に、アルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩を多価金属で置換することによって得られ、種々のグレードのものが入手可能である。
【0047】
リン酸エステルとしては、例えば、(1)炭素数6〜20の飽和又は不飽和高級アルコールのリン酸モノエステル又はジエステル、(2)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテルのリン酸モノエステル又はジエステル、(3)上記飽和又は不飽和高級アルコールのアルキレンオキシド付加物(平均付加モル数1〜8)のリン酸モノエステル又はジエステル、(4)炭素数8〜12のアルキル基を有するアルキルフェノール又はアルキルナフトールのリン酸モノエステル又はジエステル等が挙げられる。上記(1)及び(3)における飽和又は不飽和高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。上記(3)におけるアルキルフェノールとしては、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、ジフェニルフェノール等が挙げられる。
【0048】
「その他の成分」
また、背面層5には、背面層の滑性の補助的な調整のために、無機微粒子、もしくはシリコーンオイルを添加することができる。無機微粒子としては、例えば、カオリン等の粘土鉱物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、硫酸カルシウム等の硫酸塩、シリカ等の酸化物、グラファイト、硝石、窒化ホウ素等の無機微粒子が挙げられる。
【0049】
上記の無機微粒子は、平均粒子径で0.3μm〜3μm程度のものが好ましく用いられる。また上記の無機微粒子は、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂の何れか一方、又は双方の合計質量を100質量部としたときに、5質量部以上40質量部以下の割合で使用することが望ましい。この範囲内とすることで、滑性を向上させることができ、背面層の可撓性や塗膜強度を向上させることができる。
【0050】
耐熱滑性層7を構成する背面層5の厚みについても特に限定はなく、多角形状の有機微粒子20の表面の一部分を背面層5の表面から突出させることができる厚みとすればよい。なお、多角形状の有機微粒子20の粒子径に対する背面層5の厚みが薄すぎる場合には背面層5から有機微粒子20が脱落する可能性が高くなり、多角形状の有機微粒子20の粒子径に対する背面層5の厚みが厚すぎる場合には背面層5の表面から有機微粒子20の表面の一部分を突出させることができない場合が生じうる。
【0051】
第1実施形態の耐熱滑性層7を構成する背面層5の形成方法について特に限定はなく、必須の成分であるバインダー樹脂、多角形状の有機微粒子と、必要に応じて添加される各種の成分を適当な溶媒に溶解、或いは分散させた背面層用塗工液を、例えば、グラビア印刷法、クラビア版を用いたリバースロールコーティング法、ロールコーター、バーコーター等の形成手段により、基材1上、或いは耐熱滑性層7を構成する他の任意の層上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
【0052】
なお、第1実施形態の耐熱滑性層7は、図1、2に示すように、多角形状の有機微粒子が含有される背面層5のみから構成されていてもよく、図3、4に示すように多角形状の有機微粒子が含有される背面層5と、他の任意の層とを含む2つ以上の層から構成されていてもよい。いずれの構成をとる場合であっても、背面層5に含有され、かつその表面の一部分が背面層5の表面から突出する多角形状の有機微粒子の存在によって、上記で説明したようにサーマルヘッドの摩耗を防止することができる。他の任意の層としては、図示するプライマー層6や、帯電防止層等を挙げることができる。他の任意の層は、1つ、又は2つ以上あってもよい。
【0053】
(プライマー層)
図3、4に示すように基材1と背面層5との間に、耐熱滑性層7を構成する他の任意の層として、プライマー層6を設けることとしても良い。耐熱滑性層7を構成するプライマー層6は、基材1と、耐熱滑性層7を構成する背面層5との密着性を向上させるために設けられる層である。プライマー層6に含有されるバインダー樹脂として、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。
【0054】
また、プライマー層6には、硬化剤、接着助剤、帯電防止剤を含有させることもできる。接着助剤としては、水系ポリウレタン、水系ポリエステル、水系アクリル等を挙げることができる。中でも、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上のものが好ましい。帯電防止剤としては、例えば、酸化スズ等の金属酸化物の微粉末や、スルホン化ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等のπ電子共役系構造を有する導電性材料を挙げることができる。
【0055】
プライマー層6の形成方法について特に限定はなく、上記で例示したバインダー樹脂、その他必要に応じて含有される硬化剤、接着助剤、帯電防止剤等を適当な溶媒に溶解、或いは分散させたプライマー層用塗工液を、例えば、グラビア印刷法、クラビア版を用いたリバースロールコーティング法、ロールコーター、バーコーター等の形成手段により、基材1上に塗布し、乾燥・硬化させることにより形成することができる。
【0056】
プライマー層6の厚さについても特に限定はないが、耐熱性、接着性を考慮すると0.01μm〜0.3μm程度の厚さの範囲内であることが好ましい。
【0057】
また、プライマー層6とともに、またはこれにかえて、基材1と背面層5との間に、別の層を設けることもできる。別の層としては、例えば、帯電防止層等を挙げることができる。
【0058】
(第2実施形態の耐熱滑性層)
図5、6に示すように、第2実施形態の耐熱滑性層7は、背面層5を含む2つ以上の層から構成されている。そして、本実施形態では、耐熱滑性層7を構成する層のうち、背面層5以外の層に多角形状の有機微粒子20が含有され、当該背面層5以外の層に含有された多角形状の有機微粒子20は、その表面の一部分が、背面層5から突出している形態をとる。以下、背面層5以外の層であって、多角形状の有機微粒子が含有されている層のことを「他の層」という場合がある。
【0059】
第2実施形態の熱転写シートでは、背面層5以外の「他の層」に、多角形状の微小粒子20が含有される。したがって、本実施形態では、耐熱滑性層7は、少なくとも、背面層5と、「他の層」とを含む2つ以上の層を含むこととなる。背面層5は、耐熱滑性層7を構成する層のうち、基材1から最も遠い位置に配置されている。
【0060】
第2実施形態の耐熱滑性層7は、多角形状の微小粒子20が含有されている層が異なる点で上記の第1実施形態の耐熱滑性層と相違している。換言すれば、第2実施形態の耐熱滑性層7は、「他の層」に多角形状の有機微粒子が含有されており、この「他の層」に含有されている多角形状の有機微粒子20の表面の一部分が、背面層5の表面から突出している点で上記第1実施形態の耐熱滑性層と相違する。
【0061】
一方で、第1実施形態の耐熱滑性層、及び第2実施形態の耐熱滑性層はともに、多角形状の有機微粒子20の表面の一部分が、耐熱滑性層を構成する背面層5の表面から突出している点で共通する。第2実施形態の耐熱滑性層7では、この共通点により上記の第1実施形態の耐熱滑性層と同様の作用効果を奏する。
【0062】
(他の層)
多角形状の有機微粒子が含有される「他の層」について特に限定はなく、基材1と背面層5との間に設けられるあらゆる層を採用することができる。例えば、図5、6に示すように、基材1と背面層5との密着性を向上させるプライマー層6を、「他の層」としてもよく、それ以外の層を「他の層」としてもよい。プライマー層6以外の「他の層」としては、例えば、帯電防止層等を挙げることができる。なお、図示する形態の熱転写シート10は、基材1と、背面層5との間に、「他の層」としてプライマー層6が設けられ、当該プライマー層6に、多角形状の有機微粒子20が含有されている。また、プライマー層6に含有される多角形状の有機微粒子20の表面の一部分は、背面層5の表面から突出している。以下、「他の層」がプライマー層6である場合を中心に説明を行うが、プライマー層6は、本発明、及び本実施形態の熱転写シート10における任意の構成である。
【0063】
なお、図5、6に示す形態の熱転写シート10にかえて、プライマー層6と、背面層5との間に、各種の機能性を付与した「他の層」を設け、当該プライマー層6と背面層5との間に設けられる「他の層」に多角形状の有機微粒子20を含有させてもよい。また、基材1と、プライマー層6と、との間に、各種の機能性を付与した「他の層」を設け、当該基材1と、プライマー層6との間に設けられる「他の層」に多角形状の有機微粒子20を含有させてもよい。
【0064】
「他の層」には、バインダー樹脂と、多角形状の有機微粒子20が含まれる。本実施形態における多角形状の有機微粒子20については、特に断りがない限り、上記第1実施形態の熱転写シート10で説明したものを適宜選択して用いることができ、ここでの説明は省略する。
【0065】
「他の層」に含有される有機微粒子20の粒子径について特に限定はないが、少なくとも、「他の層」には、背面層5の厚みよりも大きい粒子径の有機微粒子20が含有されている。なお、「他の層」に含有される有機微粒子20の粒子径が、背面層5の厚みよりも小さい場合には、図5、6に示すように、有機微粒子20の表面の一部分を、背面層5の表面から突出させることができない。
【0066】
したがって、有機微粒子20は、背面層5、「他の層」の厚みを考慮して、最適な粒子径のものを選択する必要がある。また、背面層5と「他の層」との間に、当該背面層5と「他の層」とは異なる別の層を設ける場合には、背面層5、「他の層」、及び別の層の厚みを考慮して最適な粒子径のものを選択する必要がある。
【0067】
「他の層」には、有機微粒子20を保持するためのバインダー樹脂が含まれる。バインダー樹脂について特に限定はなく、「他の層」の機能等に応じて適宜選択すればよい。例えば、上記第1実施形態の背面層5で説明したバインダー樹脂や、プライマー層6で説明したバインダー樹脂等を適宜選択して用いることができる。また、これ以外のバインダー樹脂を用いることもできる。「他の層」に含有されるバインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0068】
「他の層」に含有される有機微粒子20の添加量について特に限定はなく、背面層5に要求される機能等を低下させることのない範囲内で添加すればよい。例えば、プライマー層6に有機微粒子20を含有せしめる場合には、プライマー層6の固形分総量に対する有機微粒子の含有量は、0.01質量%以上3質量%以下であることが好ましい。また、プライマー層6に有機微粒子20を含有せしめる場合における、当該有機微粒子20の粒子径について特に限定はなく、プライマー層6や、背面層5の厚みを考慮して耐熱滑性層7の表面から有機微粒子の表面の一部分を突出させることができる範囲で決定すればよい。
【0069】
第2実施形態における背面層5と、第1実施形態における背面層5とは、多角形状の有機微粒子20を含有しているか否かの点でのみ相違し、それ以外は、上記第1実施形態における背面層5において説明した通りである。したがって、第2実施形態の熱転写シート10の耐熱滑性層7に含まれる背面層5としては、上記第1実施形態の熱転写シートで説明した背面層5から、多角形状の有機微粒子20を除いた構成のものを用いることができる。
【0070】
なお、第2実施形態における背面層5に含有されるバインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂の何れか一方又は双方を、イソシアネート系硬化剤によって硬化せしめた硬化型樹脂であることが好ましい。第2実施形態における背面層5に、これらの硬化型樹脂を含有せしめることで、「他の層」の表面から突出している有機微粒子20を、背面層5に含有される硬化型樹脂によって強固に保持することができ、有機微粒子20の脱落を効果的に防止することができる。
【0071】
以上、本発明の熱転写シート10を構成する耐熱滑性層について第1実施形態、及び第2実施形態の耐熱滑性層について説明を行ったが、本発明の趣旨を妨げない範囲で種々の変更が可能である。例えば、耐熱滑性層7が、背面層5を含む2つ以上の層から構成される場合において、第1実施形態と、第2実施形態の耐熱滑性層を組合せた構成、具体的には、背面層5、「他の層」の双方に、多角形状の有機微粒子を含有させ、それぞれの層に含有される有機微粒子20の表面の一部分を、背面層5の表面から突出させた構成とすることもできる。
【0072】
本発明は、基材1の一方の面に上記で説明した背面層5が設けられている点に特徴を有し、したがって、基材1の他方の面に設けられる層について特に限定はなく、例えば、熱転写シートの分野において従来公知の転写性保護層や色材層等を設けることができる。
【0073】
(転写性保護層)
図1、3、5に示す形態では、基材1の背面層が設けられた面とは異なる面上(図1、3、5に示す場合には基材1の上面)には基材1から剥離可能な転写性保護層3が形成されている。転写性保護層3は印画物の耐久性を向上させるとともに、該転写性保護層3が転写された印画物に光沢感を付与するために設けられる。なお、転写性保護層3は本発明の熱転写シートにおける任意の構成である。
【0074】
転写性保護層3を形成する材料は、透明性、光沢性を有する材料であれば特に限定されない。このような材料として、例えば、メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、紫外線吸収性樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、これらの各樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線吸収性樹脂等が挙げられる。
【0075】
また、電離放射線硬化性樹脂を含有する転写性保護層3は、耐可塑剤性や耐擦過性が特に優れている点で転写性保護層3の材料として好適に用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては特に限定されることはなく、従来公知の電離放射線硬化性樹脂の中から適宜選択して用いることができ、例えば、ラジカル重合性のポリマー又はオリゴマーを電離放射線照射により架橋、硬化させ、必要に応じて光重合開始剤を添加し、電子線や紫外線によって重合架橋させたものを用いることができる。紫外線吸収性樹脂を含有する転写性保護層3は、印画物に耐光性を付与することに優れている。
【0076】
紫外線吸収性樹脂としては、例えば、反応性紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂又は上記の電離放射線硬化性樹脂に反応、結合させて得た樹脂を使用することができる。より具体的には、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系のような従来公知の非反応性の有機系紫外線吸収剤に、付加重合性二重結合(例えばビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基など)、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基のような反応性基を導入したものが挙げられる。
【0077】
転写性保護層3の厚さについても特に限定はないが、転写性保護層3の厚さが0.1μmより薄い場合には、転写性保護層3が転写された印画物表面に耐久性を付与することが困難となる。このような点を考慮すると、転写性保護層3の厚さは、通常0.1〜10μm程度、好ましくは0.5〜5.0μm程度である。
【0078】
また、転写性保護層3には、被転写体との滑り性を向上させるためのシリコンフィラー、タルク、カオリン、マイカ、グラファイト、炭酸カルシウム、二硫化モリブデン、シリコーンゴムフィラー、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物等が含有されていてもよい。
【0079】
転写性保護層3の形成方法としては、上記樹脂の1種または2種以上を適当な溶剤により、溶解または分散させて転写性保護層用塗工液を調製し、これを基材1上にグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の従来公知の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
【0080】
(色材層)
図2、4、6に示す形態では、基材1の背面層が設けられた面とは異なる面上(図2、4、6に示す場合には基材1の上面)には色材層4が形成されている。
【0081】
この色材層4は、本発明の熱転写シートが昇華型熱転写シートの場合には、昇華性の染料を含有する色材層であり、熱溶融型熱転写シートの場合には、着色剤を含む熱溶融組成物からなる熱溶融性のインクを含有する色材層となる。なお、昇華性の染料を含有する色材層と、着色剤を含む熱溶融組成物からなる熱溶融性のインクを含有する色材層とを連続した1枚の基材上に面順次に設けてもよい。以下、昇華型熱転写シートの場合を代表例として説明するが、本発明は、昇華型熱転写シートのみに限定されるものではない。
【0082】
色材層4の材料は、従来公知の染料を使用することができるが、印画材料として良好な特性を有するもの、例えば、十分な着色濃度を有し、光、熱、温度等により変退色しないものが好ましく、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、チアゾール系染料、メロシアニン染料、ピラゾロン染料、メチン系染料、インドアニリン系染料、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系染料、キサンテン系染料、オキサジン系染料、ジシアノスチレン、トリシアノスチレン等のシアノスチレン系染料、チアジン系染料、アジン系染料、アクリジン系染料、ベンゼンアゾ系染料、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系染料、スピロピラン系染料、インドリノスピロピラン系染料、フルオラン系染料、ローダミンラクタム系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料等が挙げられる。具体的には、MSRedG(三井東圧化学社製)、Macrolex Red Violet R(バイエル社製
)、CeresRed 7B(バイエル社製)、Samaron Red F3BS(三菱化学社製)等の赤色染料、ホロンブリリアントイエロー6GL(クラリアント社製)、PTY−52(三菱化成社製)、マクロレックスイエロー6G(バイエル社製)等の黄色染料、カヤセットブルー714(日本化薬社製)、ワクソリンブルーAP−FW(ICI社製)、ホロンブリリアントブルーS−R(サンド社製)、MSブルー100(三井東圧化学社製)、C.I.ソルベントブルー22等の青色染料が挙げられる。
【0083】
上記染料を担持するためのバインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、エチルヒドロキシセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、セルロース系、ビニル系、アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の樹脂が、耐熱性、染料の移行性等の点において好ましい。
【0084】
色材層4の形成方法としては、上記染料及びバインダー樹脂に、必要に応じて離型剤、フィラー等の添加物を加え、トルエン、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド等の適当な有機溶剤に溶解させ、或いは、水に分散させ、得られた色材層用塗工液を、例えば、グラビア印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法、ロールコーター、バーコーター等の形成手段により、基材シートの一方の面に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
【0085】
(離型層)
図1、3、5に示すように基材1と転写性保護層3との間に離型層2を形成することとしてもよい。なお、離型層は本発明の熱転写シート10における任意の層である。離型層2を形成する樹脂としては、従来公知の離型性樹脂であれば特に限定されることはなく、例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、熱架橋性エポキシ−アミノ樹脂及び熱架橋性アルキッド−アミノ樹脂等が挙げられる。また、離型層2は、1種の樹脂からなるものであってもよく、2種以上の樹脂からなるものであってもよい。また離型層2は、離型性樹脂に加えイソシアネート化合物等の架橋剤、錫系触媒、アルミニウム系触媒等の触媒を用いて形成することとしてもよい。なお、離型層2は、転写時に被転写体側へ移行してもよく、基材1側に残ることとしてもよい。また離型層2の厚みは0.5〜5μm程度が一般的である。離型層2の形成方法としては、上記樹脂を適当な溶剤により、溶解または分散させて離型層用塗工液を調製し、これを基材1上にグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の従来公知の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
【0086】
(ヒートシール層)
転写性保護層3上にヒートシール層を設けてもよい(図示しない)。ヒートシール層は、本発明の熱転写シート10における任意の層であり転写性保護層3の被転写体に対する密着性を向上させるために設けられる。ヒートシール層を形成する材料については特に限定はなく、従来公知の感熱接着剤等を使用できるが、ガラス転移温度が50〜100℃の熱可塑性樹脂から形成することがより好ましく、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂などの如く熱時接着性の良好な樹脂から、屈折率が1.52〜1.59程度のもので、また適当なガラス転移温度を有するものが好ましい。
【0087】
ヒートシール層の形成方法について特に限定はないが、上記樹脂を、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコールなどの溶剤に、溶解あるいは分散して、また必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、無機あるいは有機のフィラー成分、界面活性剤、離型剤等を添加し、塗布液を調製し、該塗布液を、従来公知のグラビアコート、グラビアリバースコートなどの方法で厚み0.5〜10μmになるように塗布および乾燥して形成することができる。
【0088】
また、本発明の熱転写シートとして、基材1上に、上記で説明した転写性保護層3と色材層4とを面順次に設けることもできる。
【0089】
(被転写体)
上記熱転写シート10の転写に使用可能な被転写体(熱転写受像シート)としては、例えば、普通紙、上質紙、トレーシングペーパー、プラスチックフィルム等の従来公知の材料を挙げることができ、その材料について特に限定されない。
【実施例】
【0090】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、文中の「部」は特に断りのない限り質量基準である。
【0091】
(実施例1)
基材として厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、該基材の一方の面に下記組成の離型層用塗工液をグラビアコート法にて塗工し、厚さ1.0μmの離型層を形成した。次いで、該離型層上に下記組成の転写性保護層用塗工液をグラビアコート法にて塗工し、厚さ1.0μmの転写性保護層を形成した。基材の他方の面には、下記組成のプライマー層用塗工液1をグラビアコート法にて塗工し、厚さ0.2μmのプライマー層を形成し、次いでプライマー層上に下記組成の背面層用塗工液1をグラビアコート法にて塗工し、厚さ0.5μmの背面層を形成して実施例1の熱転写シートを得た。
【0092】
(離型層用塗工液)
・シリコーン変性アクリル樹脂 16部
(セルトップ226、ダイセル化学工業(株)製
・シリコーン変性アクリル樹脂 8部
(セルトップ227、ダイセル化学工業(株)製)
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 2.4部
(ソルバインA、日信化学工業(株)製)
・硬化触媒 4.5部
(セルトップCAT−A、ダイセル化学工業(株)製
・紫外線吸収剤 0.05部
(ユビテックスOB、日本チバガイギー(株)製)
・トルエン 9.8部
・メチルエチルケトン 9.8部
【0093】
(転写性保護層用塗工液)
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 4.5部
(ソルバインCNL、日信化学工業(株)製)
・紫外線吸収剤 15部
(ST−I UVA 40KT、ダイセル化学工業(株)製)
・アクリル樹脂溶液 15部
(LP−45M 昭和インキ工業(株)製、固形分:13%)
【0094】
(プライマー層用塗工液1)
・ポリエステル 16.67部
(商品名 ポリエスター WR−961、日本合成化学社製 固形分30%)
・水 41.67部
・イソプロピルアルコール 41.67部
【0095】
(背面層用塗工液1)
モル当量比(―NCO/−OH);0.53
・ポリビニルアセタール樹脂 51.2部
(エスレックKS−1 積水化学工業(株))
・ポリイソシアネート 17.8部
(バーノックD750 大日本インキ化学工業(株))
・シリコーンレジン(粒子径;3μm 多角形状) 1部
(MSP−4000 日興リカ(株)製)
・ステアリルリン酸亜鉛 10部
(LBT1830精製 堺化学工業(株)製)
・ステアリン酸亜鉛 10部
(SZ−PF 堺化学工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 10部
(ポリワックス3000 東洋アドレ(株)製)
・メチルエチルケトン 200部
・トルエン 100部
【0096】
(実施例2)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液2を使用した以外は、全て実施例1と同様にして実施例2の熱転写シートを得た。
【0097】
(背面層用塗工液2)
モル当量比(―NCO/−OH);0.53
・ポリビニルアセタール樹脂 51.2部
(エスレックKS−1 積水化学工業(株))
・ポリイソシアネート 17.8部
(バーノックD750 大日本インキ化学工業(株))
・シリコーン樹脂微粒子(粒子径;4μm 多角形状) 1部
(トスパール240 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)
・ステアリルリン酸亜鉛 10部
(LBT1830精製 堺化学工業(株)製)
・ステアリン酸亜鉛 10部
(SZ−PF 堺化学工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 10部
(ポリワックス3000 東洋アドレ(株)製)
・メチルエチルケトン 200部
・トルエン 100部
【0098】
(実施例3)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液3を使用した以外は、全て実施例1と同様にして実施例3の熱転写シートを得た。
【0099】
(背面層用塗工液3)
モル当量比(―NCO/−OH);0.52
・ポリビニルアセタール樹脂 47.5部
(エスレックKS−1 積水化学工業(株))
・ポリイソシアネート 16.5部
(バーノックD750 大日本インキ化学工業(株))
・シリコーン樹脂微粒子(粒子径;4μm 多角形状) 1部
(トスパール240 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)
・ステアリルリン酸亜鉛 10部
(LBT1830精製 堺化学工業(株)製)
・ステアリン酸亜鉛 10部
(SZ−PF 堺化学工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 10部
(ポリワックス3000 東洋アドレ(株)製)
・フィラー 5部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株)製
・メチルエチルケトン 200部
・トルエン 100部
【0100】
(実施例4)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液4を使用した以外は、全て実施例1と同様にして実施例4の熱転写シートを得た。
【0101】
(背面層用塗工液4)
モル当量比(―NCO/−OH);0.21
・ポリビニルアセタール樹脂 60.6部
(エスレックKS−1 積水化学工業(株))
・ポリイソシアネート 8.4部
(バーノックD750 大日本インキ化学工業(株))
・シリコーン樹脂微粒子(粒子径;4μm 多角形状) 1部
(トスパール240 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)
・ステアリルリン酸亜鉛 10部
(LBT1830精製 堺化学工業(株)製)
・ステアリン酸亜鉛 10部
(SZ−PF 堺化学工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 10部
(ポリワックス3000 東洋アドレ(株)製)
・メチルエチルケトン 200部
・トルエン 100部
【0102】
(実施例5)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液5を使用し、プライマー層用塗工液1にかえて、下記組成のプライマー層用塗工液2を使用した以外は全て実施例1と同様にして、実施例5の熱転写シートを得た。
【0103】
(背面層用塗工液5)
モル当量比(―NCO/−OH);0.21
・ポリビニルアセタール樹脂 60.6部
(エスレックKS−1 積水化学工業(株))
・ポリイソシアネート 8.4部
(バーノックD750 大日本インキ化学工業(株))
・ステアリルリン酸亜鉛 10部
(LBT1830精製 堺化学工業(株)製)
・ステアリン酸亜鉛 10部
(SZ−PF 堺化学工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 10部
(ポリワックス3000 東洋アドレ(株)製)
・メチルエチルケトン 200部
・トルエン 100部
【0104】
(プライマー層用塗工液2)
・ポリビニルアルコール樹脂 2.67部
(クラレポバールPVA−117 クラレ(株)製 固形分100% 重合度1700)
・チタンキレート剤 55.5部
(オルガチックスTC−300 マツモトファインケミカル(株)製 固形分42%)
・シリコーン樹脂微粒子(粒子径;4μm 多角形状) 0.26部
(トスパール240 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)
・水 45.89部
・変性エタノール 45.89部
【0105】
(実施例6)
背面層用塗工液1にかえて、上記組成の背面層用塗工液5を使用し、プライマー層用塗工液1にかえて、下記組成のプライマー層用塗工液3を使用した以外は全て実施例1と同様にして、実施例5の熱転写シートを得た。
【0106】
(プライマー層用塗工液3)
・ポリエステル樹脂 16.67部
(ポリエスターWR−961 日本合成化学(株)製 固形分30%)
・シリコーン樹脂微粒子(粒子径;4μm 多角形状) 0.05部
(トスパール240 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)
・水 41.67部
・変性エタノール 41.66部
【0107】
(実施例7)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液7を使用した以外は、全て実施例1と同様にして実施例7の熱転写シートを得た。
【0108】
(背面層用塗工液7)
モル当量比(―NCO/−OH);0.01
・ポリビニルアセタール樹脂 68.6部
(エスレックKS−1 積水化学工業(株))
・ポリイソシアネート 0.5部
(バーノックD750 大日本インキ化学工業(株))
・シリコーン樹脂微粒子(粒子径;4μm 多角形状) 1部
(トスパール240 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)
・ステアリルリン酸亜鉛 10部
(LBT1830精製 堺化学工業(株)製)
・ステアリン酸亜鉛 10部
(SZ−PF 堺化学工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 10部
(ポリワックス3000 東洋アドレ(株)製)
・メチルエチルケトン 200部
・トルエン 100部
【0109】
(実施例8)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液8を使用した以外は、全て実施例1と同様にして実施例8の熱転写シートを得た。
【0110】
(背面層用塗工液8)
モル当量比(―NCO/−OH);0.21
・ポリビニルアセタール樹脂 60.6部
(エスレックKS−1 積水化学工業(株))
・ポリイソシアネート 8.4部
(バーノックD750 大日本インキ化学工業(株))
・シリコーン樹脂微粒子(粒子径;4μm 多角形状) 0.01部
(トスパール240 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)
・ステアリルリン酸亜鉛 10部
(LBT1830精製 堺化学工業(株)製)
・ステアリン酸亜鉛 10部
(SZ−PF 堺化学工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 10部
(ポリワックス3000 東洋アドレ(株)製)
・フィラー 1部
(MICRO ACE P−3 日本タルク工業(株)製
・メチルエチルケトン 200部
・トルエン 100部
【0111】
(比較例1)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液Aを使用した以外は、全て実施例1と同様にして比較例1の熱転写シートを得た。
【0112】
(背面層用塗工液A)
モル当量比(―NCO/−OH);0.52
・ポリビニルアセタール樹脂 52部
(エスレックKS−1 積水化学工業(株))
・ポリイソシアネート 18部
(バーノックD750 大日本インキ化学工業(株))
・ステアリルリン酸亜鉛 10部
(LBT1830精製 堺化学工業(株)製)
・ステアリン酸亜鉛 10部
(SZ−PF 堺化学工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 10部
(ポリワックス3000 東洋アドレ(株)製)
・メチルエチルケトン 200部
・トルエン 100部
【0113】
(比較例2)
背面層用塗工液1にかえて、下記組成の背面層用塗工液Bを使用した以外は、全て実施例1と同様にして比較例2の熱転写シートを得た。
【0114】
(背面層用塗工液B)
モル当量比(―NCO/−OH);0.53
・ポリビニルアセタール樹脂 51.2部
(エスレックKS−1 積水化学工業(株))
・ポリイソシアネート 17.8部
(バーノックD750 大日本インキ化学工業(株))
・シリコーン樹脂微粒子(平均粒子径;2μm 真球状) 1部
(トスパール120 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)
・ステアリルリン酸亜鉛 10部
(LBT1830精製 堺化学工業(株)製)
・ステアリン酸亜鉛 10部
(SZ−PF 堺化学工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 10部
(ポリワックス3000 東洋アドレ(株)製)
・メチルエチルケトン 200部
・トルエン 100部
【0115】
(印画カスの評価)
実施例1〜8、及び比較例1、2の熱転写シートを、三菱電機社製昇華型プリンタ(CP9800D)用熱転写受像シートと組み合わせ、以下の印画条件にて0階調、128階調、255階調の印画を、印画メートル数400m、800m、及び1200mでそれぞれ行った。このときのサーマルヘッドに付着する印画カスの状態を目視にて確認し、以下の評価基準に基づいて印画カスの評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0116】
「印画条件」
・サーマルヘッド;ヘッド抵抗値5020Ω、解像度300dpi(dots per inch)(東芝ホクト電子社製)
・ライン速度;1ms/Line、(用紙搬送方向の解像度は、300lpi(line per inch))
・パルスデューティ;90%
・印加電力;32V
・印圧;40N
・印画画像;幅1600ピクセル×長さ1090ピクセルのサイズで、階調0〜255のグラデーション画像(1ピクセルは、1ドットに相当)
【0117】
「評価基準」
◎・・・発熱体周辺部にカスが溜まらない
○・・・発熱体周辺部に非常に微量のカスが見られる。
△・・・発熱体周辺部にカスが溜まっているが、印画物に濃淡ムラがない。
×・・・発熱体周辺部にカスが溜まっており、印画物に濃淡ムラが発生している。
なお、評価が◎、○である場合には、印画物に色抜けが生じる虞が殆どなく良好な印画物を得ることができる。
【0118】
(印画物濃淡ムラの評価)
実施例1〜8、及び比較例1、2の熱転写シートを、三菱電機社製昇華型プリンタ(CP9800D)用熱転写受像シートと組み合わせ、以下の印画条件にて前半分が255階調、後半分が180階調のパターンを印画した。このときの印画物を目視にて確認し、以下の評価基準に基づいて、印画物濃淡ムラの評価行った。評価結果を表1に示す。なお、印画条件は上記印画カスの評価で行った印画と同条件である。
【0119】
「評価基準」
○・・・印画物の180階調部分が均一となっている。印画物の濃淡ムラがない。
△・・・印画物の180階調部分にわずかに濃淡ムラがある。
×・・・印画物の180階調部分に激しい濃淡ムラがある。
【0120】
(印画キズの評価)
実施例1〜8、及び比較例1、2の熱転写シートを、三菱電機社製昇華型プリンタ(CP9800D)用熱転写受像シートと組み合わせ、上記印画条件にて255階調の印画を、印画メートル数20mで行った。なお、印画は、0℃環境下にて行った。印画後の印画物を目視にて確認し、以下の評価基準により印画キズの評価を行った。評価結果を表1に併せて示す。
【0121】
「評価基準」
○・・・印画キズの発生がない。
△・・・印画キズの発生はあるが、増加傾向はない。
×・・・印画キズが発生し、印画枚数を重ねると印画キズの発生本数が増加する。
なお、評価が○である場合には、印画物に色抜けが生じる恐れが殆どなく、良好な印画物を得ることができる。
【0122】
【表1】

【符号の説明】
【0123】
1…基材
2…離型層
3…転写性保護層
4…色材層
5…背面層
6…プライマー層
7…耐熱滑性層
20…多角形状の有機微粒子
10…熱転写シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に、背面層を含む1つ又は2つ以上の層から構成される耐熱滑性層が設けられた熱転写シートであって、
前記耐熱滑性層が2つ以上の層から構成される場合に、前記背面層は、前記基材から最も離れた位置に配置され、
前記耐熱滑性層を構成する少なくとも1つの層には、バインダー樹脂と、多角形状の有機微粒子が含有され、該有機微粒子の表面の一部分が前記背面層の表面から突出していることを特徴とする熱転写シート。
【請求項2】
前記有機微粒子がシリコーン樹脂微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記有機微粒子が前記背面層に含有される場合における当該有機微粒子の平均粒子径が、0.3μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記背面層に含有されるバインダー樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂の何れか一方又は双方を、イソシアネート系硬化剤によって硬化せしめた硬化型樹脂であり、
前記ポリビニルブチラール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂の何れか一方又は双方が有する水酸基と、前記イソシアネート系硬化剤が有するイソシアネート基とのモル当量比(−NCO/−OH)が0.01以上0.7未満であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の熱転写シート。
【請求項5】
前記基材の他方の面に色材層及び転写性保護層の何れか一方又は双方を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の熱転写シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−82210(P2013−82210A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−201010(P2012−201010)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】