説明

熱転写プリンタおよび記録開始制御方法

【課題】 記録時に熱転写プリンタのサーマルヘッドの温度制御を行なって、良好な記録結果を得ること。
【解決手段】 サーマルヘッド5の温度を検出する温度検出部17と、サーマルヘッド5を記録許可温度以上に加熱処理する制御を行なう加熱制御部18と、サーマルヘッド5を記録許可温度まで放熱処理する制御を行なう放熱制御部19とを有し、記録開始直前のサーマルヘッド5の温度勾配を、前記サーマルヘッド5から放熱することにより前記記録許可温度とする下り勾配となるように制御する制御手段16を備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、サーマルヘッドに記録エネルギを印加してサーマルヘッドを加熱することにより、熱溶融性インクリボンまたは熱昇華性インクリボンのインクを用紙に転写させて記録を行なう熱転写プリンタおよび記録開始制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】サーマルヘッドを搭載したキャリッジをプラテンに沿って移動させながら1行分の記録を行い、この1行分の記録を行った後、記録用紙を1行分搬送し、次の行の記録を行うことを繰り返して所定の記録を行う熱転写プリンタは、高品質記録、低騒音、低コストあるいはメンテナンスの容易性等の理由により、コンピュータ、ワープロ等の出力装置として多く用いられている。
【0003】このような熱転写プリンタは、プラテンに沿ってキャリッジを移動自在に形成し、このキャリッジに複数の発熱素子が整列形成されたサーマルヘッドを搭載するとともに、所望の色のインクリボンが収納されたリボンカセットを着脱自在に装着している。そして、前記プラテンとサーマルヘッドの間にこのリボンカセットから送出されるインクリボンと用紙とを挟持し、サーマルヘッドをキャリッジとともにプラテンに沿って移動させインクリボンを巻き取りながら、画像情報に基づいて前記サーマルヘッドの発熱素子を選択的に通電駆動することで発熱させ、インクリボンのインクを部分的に用紙に転写して所望の記録を行うようになっている。
【0004】前記熱転写プリンタにおいては、通常はインクリボンとしてプラスチックフィルム等からなる基材の表面に熱溶融性のインクが塗布された熱溶融性インクリボンを用いた記録がなされているが、最近では、前記基材の表面に熱昇華性インクが塗布された熱昇華性インクリボンを用いた記録を行うものも提案されている。
【0005】前記熱溶融性インクリボンを用いて用紙に記録を行う熱転写プリンタは、普通紙、厚紙、葉書などの幅広い種類の用紙に記録することができ、使い勝手に優れたものである。また、熱昇華性インクリボンを用いて用紙に記録を行う熱転写プリンタは、サーマルヘッドに印加するエネルギを制御することにより、熱昇華性インクの昇華量を調整して用紙に転写するインクの量を制御して前記用紙上における記録画像の濃度を調節するため、用紙として表面処理が施された専用紙を用いることにより銀塩写真に匹敵する高画質のフルカラー記録画像を得ることができる。このため、熱昇華型プリンタは、近年、高画質のビデオプリンタなどとして広く利用されるようになってきている。
【0006】さらに、近年、一台のプリンタで熱溶融性インクリボンおよび熱昇華性インクリボンの両方のインクリボンに対応し、記録を可能とする熱転写プリンタも提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述したいずれの熱転写プリンタにおいても、記録時における前記サーマルヘッドの温度制御は、その記録結果に大きな影響を与えることとなる。
【0008】例えば、記録開始直後にはそのサーマルヘッドの温度がインクリボンのインクを用紙に対して転写させることが可能な程度に上昇しておらず、前記サーマルヘッドの発熱素子を選択的に発熱させても良好な記録結果が得られないことがあった。
【0009】そして、これを防止するために、前記サーマルヘッドの発熱素子に対して記録開始前に予め熱を加える制御を行なうことが考えられた。
【0010】しかし、従前の記録温度の制御は、単に記録開始前にサーマルヘッドを加熱し、サーマルヘッドの温度が記録可能温度以上となったか否かのみを判断し、サーマルヘッドの温度が記録開始可能温度よりも高温の場合に記録を開始させる制御を行なうものにすぎず、この制御では、サーマルヘッドの温度が記録には不適なほど高温であることをも判断することはできなかった。さらには、前記サーマルヘッドの温度がさらに上昇傾向にある中で記録が開始されてしまうこともあり、いずれにせよ、その後の記録は良好なものとならないという問題点を有していた。
【0011】特に、熱昇華性インクリボンを用いた記録においては、前記サーマルヘッドの発熱素子の発熱により熱昇華性インクの昇華量を調整して用紙に転写するインクの量を制御し、前記用紙上における記録画像の濃度の調節を行なうため、良好な記録結果を得るためには、その記録時のサーマルヘッドの温度管理は必須なものとなる。
【0012】本発明は前述の課題に鑑みてなされたものであり、記録時に前記熱転写プリンタのサーマルヘッドの温度制御を行なって、良好な記録結果の得られる熱転写プリンタおよび記録開始制御方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る熱転写プリンタは、プラテンと、プラテンに沿って往復移動自在とされたキャリッジと、キャリッジ上に搭載されインクリボンおよび記録媒体を介して前記プラテンに圧接するサーマルヘッドと、記録に関する制御を行なう制御手段とを備えた熱転写プリンタであって、前記制御手段は、サーマルヘッドの温度を検出する温度検出部と、サーマルヘッドを記録許可温度以上に加熱処理する制御を行なう加熱制御部と、サーマルヘッドを記録許可温度まで放熱処理する制御を行なう放熱制御部とを有し、記録開始直前のサーマルヘッドの温度勾配を、前記サーマルヘッドから放熱することにより前記記録許可温度とする下り勾配となるように制御することを特徴とするものである。
【0014】本発明に係る熱転写プリンタによれば、前記制御部により、記録開始時に前記熱転写プリンタのサーマルヘッドの温度を検出し、検出したサーマルヘッドの温度が記録許可温度以下である場合にはサーマルヘッドに加熱を行なって一度サーマルヘッドの温度を記録許可温度以上とし、その後に前記サーマルヘッドの放熱を行なって温度勾配を下り勾配とした中で記録可能温度を得ることができる。
【0015】また、本発明の請求項2に係る記録開始制御方法は、記録開始信号の受信を開始条件としてサーマルヘッドの温度を検出し、この検出したサーマルヘッドの温度が記録許可温度以下である場合には、前記サーマルヘッドに対して加熱処理を行なって前記サーマルヘッドの温度を一度記録許可温度より高温とし、その後にサーマルヘッドの放熱処理を行ない、前記サーマルヘッドの温度が印刷許可温度となるのを待ってから記録を開始し、前記検出したサーマルヘッドの温度が記録許可温度以上である場合には、そのままサーマルヘッドの放熱処理を行ない、前記サーマルヘッドの温度が印刷許可温度となるのを待ってから記録を開始するように制御することを特徴とするものである。
【0016】本発明に係る記録開始制御方法によれば、記録開始直前の前記サーマルヘッドの温度勾配を下り勾配とした中で、確実に、記録に適した状態で前記記録可能温度を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図1乃至図4を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0018】図1は本発明の熱転写プリンタの概略構成を示す説明図であり、プリンタのフレーム1には、長手方向に沿って延在する平板状のプラテン2が配設されており、前記フレーム1の両側面の間には、前記プラテン2の前方に位置し前記プラテン2と平行に延在するキャリッジシャフト3が支持されている。このキャリッジシャフト3には、キャリッジ4がこのキャリッジシャフト3に沿って往復動自在に取付けられており、このキャリッジ4の先端部には、前記プラテン2に対向するように記録ヘッドとしてのサーマルヘッド5が接離動作自在に取付けられている。また、前記キャリッジ4の上面には、図示しないインクリボンを収納し、このインクリボンを前記サーマルヘッド5とプラテン2との間に案内するリボンカセット6が着脱自在に装着されるようになされており、さらに前記リボンカセット6のインクリボンを巻取るための巻取りボビン7およびインクリボンを送り出す送出しボビン8がそれぞれ配設されている。
【0019】また、前記フレーム1の一端部下側には、キャリッジ駆動モータ9がその出力軸が前記フレーム1の上面に貫通するように配設されており、このキャリッジ駆動モータ9の前記出力軸には、このキャリッジ駆動モータ9により回転駆動される駆動プーリ10が配設されている。また、前記フレーム1の他端部上面には、従動プーリ11が回転自在に配設されており、前記駆動プーリ10と従動プーリ11との間には、一部が前記キャリッジ4の下面に連結されたキャリッジ駆動ベルト12が掛け渡されている。そして、前記キャリッジ駆動モータ9を回転駆動して前記駆動プーリ10を介してキャリッジ駆動ベルト12を駆動させることにより、前記キャリッジ4をキャリッジシャフト3に沿ってプラテン2と平行に往復動させるようになされている。
【0020】また、前記プラテン2の後部下方には、図2R>2に示すように、所定の記録媒体を所定速度で搬送する搬送ローラ13が配設されている。さらに、前記搬送ローラ13の下方には、この搬送ローラ13に圧接される複数の圧接ローラ14が回転自在に配設されている。さらに、前記フレーム1の後方には、図示しない給紙装置が配置されるようになされており、この給紙装置には、例えば、原稿等の読み取り媒体や通常の印刷用紙、孔版印刷用紙等の記録媒体が収納されるようになされている。そして、前記搬送ローラ13を回転駆動させることにより、前記給紙装置から前記搬送ローラ13とこの圧接ローラ14との間に供給される原稿および記録媒体をサーマルヘッド5とプラテン2との間に搬送するようになされている。さらに、前記プラテン2の上方には、記録後の記録媒体を案内する排紙ローラ15が配設されている。
【0021】また、図3は前記熱転写プリンタの電気的な概略構成を示すものである。
【0022】前記熱転写プリンタは、制御手段としてのCPU16によって記録に関する一切の制御がなされている。前記CPU16には、インターフェースを介してコンピュータ等の入力装置から記録開始信号や記録データ等が送られ、前記CPU16からは、サーマルヘッド駆動回路20に記録パターンの情報が送られ、この記録情報に応じてサーマルヘッド5の発熱素子に対するエネルギの印加がなされることとなっている。さらに、前記CPU16からは、サーマルヘッド5の温度を検出する温度検出回路21、前記サーマルヘッド5の記録媒体への圧接・離間を行なうヘッドアップダウン機構の駆動回路22、キャリッジ4の移動を制御するキャリッジ駆動回路23及び記録媒体を送るための搬送モータを制御する搬送モータ制御回路24等へ制御信号がそれぞれ送られるように構成されている。
【0023】さらに、本実施形態において、前記CPU16は、サーマルヘッド5の温度を検出する温度検出部17と、サーマルヘッドを記録許可温度以上に加熱処理する制御を行なう加熱制御部18と、サーマルヘッド5を前記記録許可温度まで放熱処理する制御を行なう放熱制御部19とを有しており、記録開始直前のサーマルヘッドの温度勾配を、前記サーマルヘッドから放熱することにより前記記録許可温度とする下り勾配とするように制御するように構成されている。
【0024】次に、本実施形態の熱転写プリンタの記録開始制御方法について、図4に示すフローチャートで説明する。
【0025】前述のような構成の熱転写プリンタにおいて、前記CPU16は、コンピュータ等の入力装置から送信された記録開始信号を受けたことを開始条件として、まず、前記CPU16の温度検出部17によって前記温度検出回路21を介してサーマルヘッド5の温度を検出する(ステップST1)。
【0026】そして、この検出したサーマルヘッド5の温度を前記CPU16内の図示しないROMに記憶された記録許可温度と比較する(ステップST2)。そして、このサーマルヘッド5の温度が前記記録許可温度よりも低い場合(No)には、前記加熱制御部18によりサーマルヘッド5に対して加熱する処理を行なう(ステップST3)。
【0027】この加熱制御部18による加熱処理は、前記サーマルヘッド5を前記プラテン2に対して当接させない状態(いわゆるヘッドアップ状態)で、サーマルヘッド5の発熱素子に対してエネルギを印加することで行なわれるものとする。そして、前記温度検出部17により温度検出回路21を介してサーマルヘッド5の温度を検出し(ステップST4)、その検出温度が前記記録許可温度以上であるか否かを判断する(ステップST5)。そして、前記加熱制御部18によるサーマルヘッド5に対する加熱処理(ステップST3)から前記検出温度が前記記録許可温度以上であるか否かの判断(ステップST5)までの処理動作を、前記検出温度が前記記録許可温度以上となるまで繰り返し行なうように制御する。
【0028】一方、記録開始信号を受信した直後の前記サーマルヘッド5の温度検出時(ステップST1)において、前記サーマルヘッド5の温度が、既に前記記録許可温度よりも高い場合(Yes)には、前記加熱制御部18による前記サーマルヘッド5に対するステップST3からステップST5までの一連の工程は省略する。
【0029】そして、次に、前記記録許可温度以上となっているサーマルヘッド5に対して、前記放熱制御部19により、前記サーマルヘッド5を前記記録許可温度まで放熱処理する制御を行なう(ステップST6)。この放熱制御部19による放熱処理は、前記サーマルヘッド5に対する全ての動作を停止させ、前記サーマルヘッド5の熱を放熱する処理である。この時、前記サーマルヘッド5を搭載する前記キャリッジ4を前記プラテン2に沿って移動させ、このキャリッジ4が移動することによって生じる風によって放熱を促すように制御することも可能である。
【0030】続いて、前記温度検出部17により前記温度検出回路21を介して前記サーマルヘッド5の温度を検出し(ステップST7)、その検出温度が前記記録許可温度以下であるか否かを判断する(ステップST8)。そして、前記放熱制御部19によるサーマルヘッド5に対する放熱処理(ステップST6)から前記検出温度が前記記録許可温度以下であるか否かの判断(ステップST8)までの処理動作を、前記検出温度が前記記録許可温度以下となるまで繰り返し行なうように制御する。
【0031】そして、前記CPU16は、前記サーマルヘッド5の検出温度が前記記録許可温度以下まで降下したことを検出したら、コンピュータ等の入力装置から送信された記録データに基づいて、前記サーマルヘッド駆動回路20、前記キャリッジ駆動回路23及び前記搬送モータ制御回路24等へ制御信号をそれぞれ送信して、所望の記録を実行する。
【0032】このような記録開始時のサーマルヘッド5の温度制御を行ない、サーマルヘッド5の温度勾配を下り勾配とした中で、記録可能温度となったことを検出して記録を開始するようにしたことで、サーマルヘッド5の温度が記録には不適なほど高温となっていること、または、その後、記録には不適なほど高温となる温度勾配にあるにも拘らず記録が開始されてしまうことを防止しすることができ、よって、確実に良好な記録結果を得ることができるものである。
【0033】そして、このことは、熱昇華性インクの昇華量を調整して用紙に転写するインクの量を制御して用紙上における記録画像の濃度の調節を行なう熱昇華性インクリボンを用いた記録において、特に有用なものとなる。
【0034】なお、本発明は前記実施形態のものに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【0035】
【発明の効果】以上述べたように、本発明に係る熱転写プリンタおよび記録開始制御方法によれば、簡単な制御で確実に所望の記録結果を得ることができる熱転写プリンタを安価に提供することができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る熱転写プリンタの概略構成を示す平面図。
【図2】図1の熱転写プリンタの側面図。
【図3】本実施形態の熱転写プリンタの電気的な概略構成を示す説明図。
【図4】本実施形態の熱転写プリンタの記録開始制御方法を示すフローチャート。
【符号の説明】
2 プラテン
4 キャリッジ
5 サーマルヘッド
16 CPU
17 温度検出部
18 加熱制御部
19 放熱制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 プラテンと、プラテンに沿って往復移動自在とされたキャリッジと、キャリッジ上に搭載されインクリボンおよび記録媒体を介して前記プラテンに圧接するサーマルヘッドと、記録に関する制御を行なう制御手段とを備えた熱転写プリンタであって、前記制御手段は、サーマルヘッドの温度を検出する温度検出部と、サーマルヘッドを記録許可温度以上に加熱処理する制御を行なう加熱制御部と、サーマルヘッドを記録許可温度まで放熱処理する制御を行なう放熱制御部とを有し、記録開始直前のサーマルヘッドの温度勾配を、前記サーマルヘッドから放熱することにより前記記録許可温度とする下り勾配となるように制御することを特徴とする熱転写サーマルプリンタ。
【請求項2】 プラテンと、プラテンに沿って往復移動自在とされたキャリッジと、キャリッジ上に搭載されインクリボンおよび記録媒体を介して前記プラテンに圧接するサーマルヘッドと、記録に関する制御を行なう制御手段とを備えた熱転写プリンタの記録開始制御方法であって、記録開始信号の受信を開始条件としてサーマルヘッドの温度を検出し、この検出したサーマルヘッドの温度が記録許可温度以下である場合には、前記サーマルヘッドに対して加熱処理を行なって前記サーマルヘッドの温度を一度記録許可温度より高温とし、その後にサーマルヘッドの放熱処理を行ない、前記サーマルヘッドの温度が印刷許可温度となるのを待ってから記録を開始し、前記検出したサーマルヘッドの温度が記録許可温度以上である場合には、そのままサーマルヘッドの放熱処理を行ない、前記サーマルヘッドの温度が印刷許可温度となるのを待ってから記録を開始するように制御することを特徴とする記録開始制御方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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