説明

熱転写プリンターのヘッドアップ装置

【課題】 サーマルヘッド3をプラテンローラー4から効率的に離間可能として熱転写リボンの消費量を抑制可能とするとともに、ヘッドアップの応答速度を向上させることができ、構造を単純かつ小型化可能な熱転写プリンターのヘッドアップ装置を提供すること。
【解決手段】 ステッピングモーター16の駆動力によってサーマルヘッド3をできるだけ直接移動させること、駆動源であるステッピングモーター16と被駆動部であるサーマルヘッド3との間の機構をできるだけ簡潔にすることに着目したもので、その出力軸17をサーマルヘッド3のヘッド開閉軸8に平行に設けたステッピングモーター16を設けるとともに、熱転写リボンを用いる被印字媒体への印字が不要なときに、ステッピングモーター16を駆動することにより、サーマルヘッド3をプラテンローラー4からわずかに離間させるように引き上げることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱転写プリンターのヘッドアップ装置にかかるもので、とくにそのサーマルヘッドを必要時リフトアップして、熱転写リボンの消費量を極力抑制可能な熱転写プリンターのヘッドアップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の熱転写プリンターにおいては、サーマルヘッドとプラテンローラーとの間にラベルやタグなどの被印字媒体および熱転写リボンを挟持して移送しながら印字を行っているが、その熱転写リボンの消費量を抑えるために、被印字媒体における非印字領域の部分が印字部に至ったときに、サーマルヘッドとプラテンローラーとの間を互いに離間させることにより、熱転写リボンを移送しないようにしているものがある。
たとえば、電磁ソレノイドを駆動源としてサーマルヘッドをプラテンローラーから離間するようにヘッドアップさせる構造、さらには、特許文献1のように、サーマルヘッドの下部に設けた偏心カムの回動によってヘッドアップを行う構造、あるいは特許文献2のようにプラテンローラーの方をサーマルヘッドから離間するように移動させる構造、などがある。
【0003】
しかしながら、電磁ソレノイドによるヘッドアップ構造の場合には、ソレノイド吸引までの応答時間、およびソレノイドとサーマルヘッドとの間のリンク間の機械的な効率のロスにより、ヘッドアップまでのタイムロスが発生するという問題がある。このタイムロスのため、その分だけリボンの未使用領域が巻き取られる結果、リボンの消費量が多くなるという問題がある。
さらに、ソレノイドを用いた場合、プリンターの構造上ソレノイドを横置きすることが一般的であるが、そのプランジャーの水平運動を縦方向の運動に変換する必要があるために、動作効率が悪いという問題がある。
また、ソレノイドの動作時のプランジャーの動作音が大きいという問題がある。
さらにまた、サーマルヘッド下部からの偏心カムによるヘッドアップ構造の場合には、構造が大きくなり全体のコンパクト化が困難であるという問題がある。
なお、プラテンローラーをサーマルヘッドから離間させるように構成することは、印字動作の基準となる部分(プラテンローラー)を可動構造とするため、堅固な構成を必要とするという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平8−224933号公報
【特許文献2】特開2002−86837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、サーマルヘッドをプラテンローラーから効率的に離間可能として熱転写リボンの消費量を抑制可能とした熱転写プリンターのヘッドアップ装置を提供することを課題とする。
【0006】
また本発明は、印字が不必要となる信号に応答してヘッドアップの応答速度を向上させることができる熱転写プリンターのヘッドアップ装置を提供することを課題とする。
【0007】
また本発明は、構造を単純かつ小型化可能な熱転写プリンターのヘッドアップ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、ステッピングモーターの駆動力によってサーマルヘッドをできるだけ直接移動させること、駆動源であるステッピングモーターと被駆動部であるサーマルヘッドとの間の機構をできるだけ簡潔にすることに着目したもので、サーマルヘッドおよびプラテンローラーを有し、このサーマルヘッドおよびプラテンローラーの間に被印字媒体および熱転写リボンを挟持して移送するとともに、この被印字媒体に印字を行う熱転写プリンターのヘッドアップ装置であって、その出力軸を上記サーマルヘッドのヘッド開閉軸に平行に設けたステッピングモーターを設けるとともに、上記熱転写リボンを用いる上記被印字媒体への印字が不要なときに、このステッピングモーターを駆動することにより、上記サーマルヘッドを上記プラテンローラーからわずかに離間させるように引き上げることを特徴とする熱転写プリンターのヘッドアップ装置である。
【0009】
上記ステッピングモーターは、上記サーマルヘッドの上方にこれを位置して設けることができる。
【0010】
上記ステッピングモーターは、上記出力軸に係合するギアと、このギアに連結するとともにリンク回動軸のまわりに上記サーマルヘッドの閉鎖方向および開放方向に揺動可能なリンクと、を介して、これを上記サーマルヘッドに連結していることができる。
【0011】
上記リンクは、上記リンク回動軸とは反対側の端部において上記サーマルヘッドのヘッドブラケットに連結していることができる。
【0012】
上記ヘッドブラケットには、上記サーマルヘッドを上記プラテンローラー方向に所定の印字圧で付勢可能であるとともに、上記リンクによる上記サーマルヘッドの開放方向への揺動時に上記サーマルヘッドのリフトアップを可能とするヘッド押圧部材を当接してあることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による熱転写プリンターのヘッドアップ装置においては、作動性ないし応答性の良好なステッピングモーターによってサーマルヘッドをできるだけ直接移動させるようにしたので、被印字媒体への印字が不要時に、その印字不要信号に速やかに応答してステッピングモーターがサーマルヘッドをプラテンローラーから効率的に離間させることができるとともに、構造を簡略化して、小型化および単純化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ステッピングモーターによってサーマルヘッドのリフトアップを行うようにしたので、応答性良好でコンパクトな熱転写プリンターのヘッドアップ装置を実現した。
【実施例】
【0015】
つぎに本発明の実施例による熱転写プリンターのヘッドアップ装置を図1ないし図4にもとづき説明する。
図1は、本発明の実施例によるヘッドアップ装置6を組み込んだ熱転写プリンター1の概略斜視図であって、熱転写プリンター1は、左右一対大小のサイドフレーム2と、両方のサイドフレーム2にまたがって設けたサーマルヘッド3と、一方のより大きいサイドフレーム2(図中右側)に片持ち式に、かつサーマルヘッド3に対向して設けたプラテンローラー4と、ヘッド開閉レバー5と、当該ヘッドアップ装置6と、を有する。
【0016】
サーマルヘッド3は、ヘッドブラケット7の下方にこれを取り付けるとともに、ヘッド開閉軸8のまわりにヘッドブラケット7とともに開閉方向(プラテンローラー4との離間方向および押圧方向)にこれを回動可能である。
サーマルヘッド3の開放状態で、ラベルやタグその他の帯状の被印字媒体Lおよび同じく帯状の熱転写リボンRをサーマルヘッド3とプラテンローラー4との間に装填が可能である。
サーマルヘッド3の閉鎖状態で、プラテンローラー4との間に被印字媒体Lおよび熱転写リボンRを挟持して移送するとともに、印字可能とする。
【0017】
ヘッド開閉レバー5は、被印字媒体Lおよび熱転写リボンRの移送方向に平行に左右一対のサイドフレーム2にまたがって設けたレバーシャフト9のまわりに回動操作することによってサーマルヘッド3を開閉するとともに、その閉鎖状態で左右一対のヘッド押圧部材10をヘッドブラケット7(サーマルヘッド3)に所定押圧力で押圧可能とする。
【0018】
図2は、このヘッド押圧部材10の一部切欠き側面図であって、ヘッド押圧部材10は、支持部11と、支持部11に出没可能な押圧部12と、支持部11および押圧部12の間に設けたコイルスプリング13と、を有する。
支持部11をレバーシャフト9に一体に固着するとともに、押圧部12の下端部をヘッドブラケット7の上面部に当接し、コイルスプリング13により押圧部12を所定押圧力でヘッドブラケット7に当接可能とし、サーマルヘッド3とプラテンローラー4との間に所定の印字圧を発生させている。
なお、ヘッドアップ装置6の作動によってサーマルヘッド3がプラテンローラー4から離間したときに、コイルスプリング13が蓄力するとともに、所定の押圧力を保持したまま押圧部12がヘッドブラケット7に当接しており、サーマルヘッド3がプラテンローラー4に再度接触したときに必要な印字圧を付与可能である。
【0019】
図3は、ヘッドアップ装置6部分の要部斜視図であり、ヘッドアップ装置6は、左右一対のサイドフレーム2の間にまたがって設けた取付けプレート14の下面部に取り付けたモーターブラケット15と、ステッピングモーター16と、その出力軸17に係合させた左右三対のギア18と、ギア18に連結している左右一対のリンク19と、リンク19とヘッドブラケット7とを連結する左右一対の連結板20と、を有する。
【0020】
ステッピングモーター16は、取付けプレート14およびモーターブラケット15によりサーマルヘッド3(ヘッドブラケット7)の上方に位置して固定的にこれを取り付けてある。
ステッピングモーター16の出力軸17からギア18を介して、リンク回動軸21にリンク19の一端部を固定し、ギア18の正逆回転方向にしたがって、リンク19が上下に揺動可能である。
したがって、図3において右側に現れる出力軸17が時計方向(図中実線方向)に回動すれば、右側に現れるリンク19はリンク回動軸21のまわりに時計方向(上方向)に揺動し、サーマルヘッド3をプラテンローラー4から開放方向にリフトアップ可能とする。また、出力軸17が反時計方向(図中点線方向)に回動すれば、リンク19はリンク回動軸21のまわりに反時計方向(下方向)に揺動し、サーマルヘッド3をプラテンローラー4方向(閉鎖方向)に押圧可能とする。
【0021】
リンク19は、リンク回動軸21とは反対側の端部に長窓22を形成してあり、この長窓22に対向する連結板20に固定した左右一対の連結ピン23がこの長窓22に臨んで、リンク19の揺動を連結板20を介してヘッドブラケット7およびサーマルヘッド3に伝達可能である。
【0022】
なお、ヘッドアップ装置6によりサーマルヘッド3がプラテンローラー4から離間されて熱転写リボンRの移送が一時的に停止しても被印字媒体Lの移送を可能とする任意の移送機構(図示せず)をサーマルヘッド3の上流側あるいは下流側に設けているものとする。
【0023】
こうした構成のヘッドアップ装置6を有する熱転写プリンター1において、被印字媒体Lおよび熱転写リボンRをサーマルヘッド3およびプラテンローラー4の間に挟持してプラテンローラー4を回転駆動することにより、被印字媒体Lおよび熱転写リボンRを移送しながら所定の情報を情報を被印字媒体Lに印字する。
熱転写リボンRが必要ではない非印字領域にきたことを知らせる信号を制御部(図示せず)が出力したときに、ヘッドアップ装置6のステッピングモーター16が回動駆動され、その出力軸17がサーマルヘッド3の開放方向に回動駆動される。
【0024】
図4は、ヘッドアップ装置6の駆動によるサーマルヘッド3とプラテンローラー4との相対関係を示す概略側面図であって、出力軸17からギア18を介してリンク19はそのリンク回動軸21のまわりに上方向(時計方向、実線矢印)に揺動し、長窓22に臨んでいる連結ピン23、および、連結ピン23を取り付けている連結板20を介してヘッドブラケット7を上方に引き上げ、サーマルヘッド3をプラテンローラー4から離間するようにリフトアップさせる。
ただしこの開放状態においても、ヘッド押圧部材10の押圧部12がコイルスプリング13の付勢力に抗して支持部11内に進入し、その押圧力を保持したまま押圧部12がヘッドブラケット7に当接している。
【0025】
被印字媒体Lの移送にともなってその非印字領域が通過し、印字領域がサーマルヘッド3およびプラテンローラー4の位置に到達するタイミングでステッピングモーター16を再度駆動することにより、上述とは逆に、リンク19をリンク回動軸21のまわりに下方向(半と系方向、点線矢印)に揺動させて、サーマルヘッド3をプラテンローラー4に再度接触させ、ヘッド押圧部材10が所定の印字圧で押圧し、つぎの印字を可能とする。
【0026】
かくして、必要なタイミングでステッピングモーター16を回動駆動することにより、リンク19をリンク回動軸21のまわりに上下方向に揺動させ、サーマルヘッド3をプラテンローラー4に対して離間および押圧させることが可能となるが、サーマルヘッド3の上方に位置して応答性の良好なステッピングモーター16を設けたので、ステッピングモーター16の駆動力をサーマルヘッド3にできる限り直接伝達可能で、応答性が良好であるとともに、簡単な構成でサーマルヘッド3のリフトアップが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例によるヘッドアップ装置6を組み込んだ熱転写プリンター1の概略斜視図である。
【図2】同、ヘッド押圧部材10の一部切欠き側面図である。
【図3】同、ヘッドアップ装置6部分の要部斜視図である。
【図4】同、ヘッドアップ装置6の駆動によるサーマルヘッド3とプラテンローラー4との相対関係を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 熱転写プリンター(図1)
2 左右一対のサイドフレーム
3 サーマルヘッド
4 プラテンローラー
5 ヘッド開閉レバー
6 熱転写プリンター1のヘッドアップ装置(実施例、図3)
7 ヘッドブラケット
8 ヘッド開閉軸
9 レバーシャフト
10 ヘッド押圧部材(図1、図2)
11 支持部
12 押圧部
13 コイルスプリング
14 取付けプレート
15 モーターブラケット
16 ステッピングモーター
17 ステッピングモーター16の出力軸
18 ギア
19 リンク
20 連結板
21 リンク回動軸
22 長窓
23 連結ピン
L 被印字媒体(ラベルやタグなど)
R 熱転写リボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドおよびプラテンローラーを有し、
このサーマルヘッドおよびプラテンローラーの間に被印字媒体および熱転写リボンを挟持して移送するとともに、この被印字媒体に印字を行う熱転写プリンターのヘッドアップ装置であって、
その出力軸を前記サーマルヘッドのヘッド開閉軸に平行に設けたステッピングモーターを設けるとともに、
前記熱転写リボンを用いる前記被印字媒体への印字が不要なときに、このステッピングモーターを駆動することにより、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラーからわずかに離間させるように引き上げることを特徴とする熱転写プリンターのヘッドアップ装置。
【請求項2】
前記ステッピングモーターは、
前記サーマルヘッドの上方にこれを位置して設けたことを特徴とする請求項1記載の熱転写プリンターのヘッドアップ装置。
【請求項3】
前記ステッピングモーターは、
前記出力軸に係合するギアと、
このギアに連結するとともにリンク回動軸のまわりに前記サーマルヘッドの閉鎖方向および開放方向に揺動可能なリンクと、を介して、これを前記サーマルヘッドに連結していることを特徴とする請求項1記載の熱転写プリンターのヘッドアップ装置。
【請求項4】
前記リンクは、前記リンク回動軸とは反対側の端部において前記サーマルヘッドのヘッドブラケットに連結していることを特徴とする請求項3記載の熱転写プリンターのヘッドアップ装置。
【請求項5】
前記ヘッドブラケットには、
前記サーマルヘッドを前記プラテンローラー方向に所定の印字圧で付勢可能であるとともに、前記リンクによる前記サーマルヘッドの開放方向への揺動時に前記サーマルヘッドのリフトアップを可能とするヘッド押圧部材を当接してあることを特徴とする請求項3記載の熱転写プリンターのヘッドアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−82367(P2006−82367A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269044(P2004−269044)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】