説明

熱転写リボンおよびそれを備えるサーマルプリンタ

【課題】使用済みとなり廃棄するときでも印字された内容を読み取ることができず、高いセキュリティ性を有する熱転写リボンを提供する。
【解決手段】基層22と、基層の一面側に積層された、所定の条件によって接着性を発揮するプライマー層23と、プライマー層の表面に積層されたインク層24と、を備える熱転写リボン20。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱転写リボンおよびそれを備えるサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写記録方法は、使用する装置が軽量かつコンパクトで騒音が少なく、比較的低価格で得られ、操作性、保守性にも優れ、さらに記録画像の耐久性も良好であることから、近年、コンピュータ端末機用のプリンタ等に多く用いられている。この熱転写記録方法において用いられる熱転写リボンは、熱溶融ワックス等に有色染料や有色顔料を含有させてなるインク層等が基材の表面に施されたもので、サーマルプリンタのサーマルヘッドによりインク層が溶融され、紙等の印刷媒体にインク層が部分的に転移して情報を印字するものである(特許文献1参照)。
【0003】
熱転写記録方法のうち熱溶融転写記録方法と称される方法においては、一般に、熱転写記録媒体として、シート状の基材の一面側にプライマー層、インク層、トップコート層を順次積層させ、他面側にバックコート層を積層させた熱転写リボンが使用されている。この熱転写リボンのバックコート層側からサーマルヘッド等の発熱素子を用いてインク層を加熱溶融させ、記録紙等の被転写体にインクを移行させて転写画像を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の熱転写リボンは、使用済みの状態において、印字された部分のインクが抜けているため(図3参照)、その抜けた部分から印字された内容を読み取ることができた。そのため、使用済みの熱転写リボンを廃棄するときのセキュリティ性に問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の熱転写リボンは、基層と、基層の一面側に積層された、所定の条件によって接着性を発揮するプライマー層と、プライマー層の表面に積層されたインク層と、を備える。
【0006】
また、実施形態のサーマルプリンタは、上述した熱転写リボンと、印字情報に基づいて熱転写リボンを過熱し印字を行うサーマルヘッドと、サーマルヘッドによる印字後の熱転写リボンを加圧しつつ巻き取る巻取部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態に係る熱転写リボンの断面図である。
【図2】図2は、実施形態に係るサーマルプリンタの概略側面図である。
【図3】図3は、使用済みの上記熱転写リボンの状態を示す断面図である。
【図4】図4は、上記使用済みの熱転写リボン同士が接着された様子を示す断面図である。
【図5】図5は、別の実施形態に係るサーマルプリンタの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、実施形態に係る熱転写リボンの断面図である。この熱転写リボン20は、PET等により形成されているシート状の基材22の一面側にプライマー層23、インク層24、トップコート層25を順次積層させ、他面側にバックコート層21を積層させることで形成されている。
【0009】
プライマー層23は、基材22に対するインク層24の接着性を良好にするとともに、転写時にインク層24を剥がれ易くし印刷媒体への転移を容易にすることで印字品質を良好にするために設けられている。プライマー層23は、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム等のエラストマー類等から形成されている。
【0010】
また、プライマー層23には、接着剤が封入されたマイクロカプセル231が含まれている。このマイクロカプセル231は、直径が5μm弱程度であり、印字後の使用済みの熱転写リボン20が後述するサーマルプリンタ1(図2参照)のリボン巻取部17に巻き取られる際に熱転写リボン20に加わる巻取圧により破裂し、封入されている接着剤が滲出するようになっている。マイクロカプセル231の素材として、ポリマー等が用いられている。接着剤としては、エポキシオリゴマー、アクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルの単量体またはこれらの混合物等を含むものが用いられている。
【0011】
インク層24は、顔料や染料等の着色剤をバインダーに分散させた熱溶融性インクを用いて形成されている。顔料としては、カーボンブラックや種々の有機顔料あるいは無機顔料を使用することができる。バインダーとしては、パラフィンやマイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、モンタンワックスやセレシンワックス等の天然系ワックス、酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、天然ゴム等を使用することができる。また、インク層24に、可塑剤や分散剤などの添加物を加えることができる。
【0012】
トップコート層25は、インクの記録紙に対する接着力を高めるために設けられている層であり、エラストマー樹脂と粘着付与性樹脂とからなる。エラストマー樹脂としては、例えばニトリルゴムを用いることができる。また、粘着付与性樹脂としては、テルペン樹脂、ロジン樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂等を用いることができる。さらに、トップコート層25はブロッキング防止剤としてのワックス等や、その他の添加剤も含有することができる。このトップコート層25は、省略することも可能である。
【0013】
バックコート層21は、熱転写リボン20のスティッキングを防止し、スムーズな走行を確保するために必要に応じて設けられる層であり、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース等の耐熱性に優れた樹脂から形成することができる。このバックコート層21は、省略することも可能である。
【0014】
上述した本実施形態に係る熱転写リボン20は、例えば図2に示すサーマルプリンタ1において用いられる。
【0015】
図2に示すように、サーマルプリンタ1の本体ハウジング(筐体)10には、受容紙保持部11、プラテンローラ12、印字ヘッド部13、ヘッド駆動部14、リボン保持部16、リボン巻取部17などが設けられている。
【0016】
受容紙保持部11は、長尺状の受容紙30をロール状に巻回したロール紙40を回転自在に保持する保持手段である。
【0017】
プラテンローラ12は、印字ヘッド部13との間で受容紙30及び熱転写リボン20を圧接挟持するとともに、モータ(不図示)により回転駆動されて受容紙保持部11で保持されたロール紙40から受容紙30の自由端側を引き出してラベル発行口10aの方向(搬送方向)に搬送する搬送手段である。
【0018】
印字ヘッド部13は、熱転写リボン20のインク層24を熱により融解させ、受容紙30にインクを熱転写させて印字を行う印字手段である。
【0019】
例えば、本実施形態の印字ヘッド部13は、ヘッド保持部を構成するブラケット130と、そのブラケット130に保持されたサーマルヘッド131と、そのサーマルヘッド131をプラテンローラ12に向けて押圧する付勢部材132などを有している。
【0020】
なお、サーマルヘッド131には、ライン状に配置された複数の発熱素子を有する発熱体131aが形成されている。また、付勢部材132は、板バネやコイルバネなどで構成される。
【0021】
ヘッド駆動部14は、サーマルヘッド131(特に、発熱体131a)をプラテンローラ12または挟持される受容紙30及び熱転写リボン20に圧接、退避させる駆動手段である。
【0022】
リボン保持部16は、融解性のインク層24が形成された熱転写リボン20がロール状に巻回された熱転写リボンロール26を回転自在に保持する保持手段である。
【0023】
リボン巻取部17は、サーマルヘッド131の発熱体131aの発熱により受容紙30にインクが熱転写された後の使用済みの熱転写リボン20を巻き取り回収する巻取手段である。リボン巻取部17は、熱転写リボン20のプライマー層23に含まれ、マイクロカプセル231を破裂させることができる程度の巻取圧を有する。なお、リボン巻取部17の巻取圧とヘッド駆動部14によるサーマルヘッド131の押圧力とは、熱転写リボン20の搬送が適切に行われるようにそれぞれ調整されている。
【0024】
前記したサーマルプリンタ1においては、受容紙保持部11に保持されるロール紙40、及び、リボン保持部16に保持される熱転写リボンロール26は、当該サーマルプリンタ1を利用する利用者により種々様々なものに交換自在となっている。
【0025】
即ち、前記したような構成のサーマルプリンタ1では、利用者などによって所望のロール紙40及び熱転写リボンロール26がセットされ、利用者などにより印字する情報が設定され且つラベル発行指示が行われると、プラテンローラ12や受容紙供給ローラ18が回転駆動されることにより、受容紙保持部11で保持されたロール紙40から受容紙30が引き出されるとともに、リボン案内ローラ19が回転駆動されることにより、リボン保持部16で保持される熱転写リボンロール26から熱転写リボン20が引き出されて、受容紙30及び熱転写リボン20の両者が、サーマルヘッド131とプラテンローラ12との間に案内され、両者が同じ速度で搬送される。
【0026】
そして、前記した搬送過程でサーマルヘッド131が駆動及び発熱制御されることにより、熱転写リボン20のインクが融解されて受容紙30の印字面に熱転写されることにより、印字データに従った情報(即ち、商品名、値段、バーコードなどの商品に関する情報)が印字される。
【0027】
なお、インクが熱転写された受容紙30は、不図示のカッター機構で所定の長さにカットされてラベル(印字物)としてラベル発行口10aから排出される。
【0028】
図3に示すように、印字が終わった使用済みの熱転写リボン20は、インク層24の印字内容に対応する部分(以下、「部分C」という。)が抜け落ちている状態となっている。そのため、このままの状態では、部分Cから印字内容を読み取ることができてしまう。
【0029】
しかし、本実施例に係る熱転写リボン20は、使用後、リボン巻取部17に巻き取られる際に加わる巻取圧により、プライマー層23に含まれているマイクロカプセル231が破裂する。そして、マイクロカプセル231内部の接着剤がマイクロカプセル231からプライマー層23の外部に向けて滲出し、図4に示すように、巻き取られている熱転写リボン20同士が接着される。
【0030】
そのため、巻かれた状態の熱転写リボン20を解くことができなくなり、部分Cから印字情報を読み取ることができなくなる。これにより、使用済みの熱転写リボン20の廃棄時のセキュリティ性を高めることができる。また、サーマルヘッド131による加熱でマイクロカプセル231は軟化しているため、いっそう巻取圧により破裂し易い状態となっている。
【0031】
なお、上述した実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0032】
例えば、上述した実施例においては、プライマー層に接着剤が封入されたマイクロカプセルが含まれていたが、本発明においてはこれに限らず、例えばマイクロカプセル内にUV硬化性樹脂を含むようにしても良い。
【0033】
この場合、図5に示すように、サーマルプリンタ1に、リボン巻取部17に巻き取られた熱転写リボン20にUVを照射するUV照射機構50を設ける。そして、リボン巻取部17に使用済みの熱転写リボン20が巻き取られる際に、巻取圧によりプライマー層23に含まれているマイクロカプセル231が破裂する。そして、巻き取られている熱転写リボン20の間隙に、UV硬化性樹脂が滲出する。
【0034】
そして、この状態の熱転写リボン20にUV照射機構50からUVが照射されることで、UV硬化性樹脂が硬化し、熱転写リボン20を解くことができなくなるため、インク層24から印字情報を読み取ることができなくなる。これにより、使用済みの熱転写リボン20の廃棄時のセキュリティ性を高めることができる。
【0035】
また、プライマー層に熱可塑性樹脂を含むようにしても良い。この場合、熱可塑性樹脂としては、印字時にサーマルヘッドにより加えられる熱よりも高い融点を有するものが用いられる。また、サーマルプリンタには、リボン巻取部に巻き取られた使用済みの熱転写リボンに対して、熱可塑性樹脂の融点以上の熱を加えることのできる加熱機構が、例えば図5に示すUV照射機構50と同じ位置に設けられる。
【0036】
リボン巻取部に巻き取られている使用済みの熱転写リボンに対して、加熱機構から熱可塑性樹脂の融点以上の熱が加えられると、プライマー層から巻き取られている熱転写リボンの間隙に、溶融した熱可塑性樹脂が滲出する。
【0037】
そして、この状態の熱転写リボンを熱可塑性樹脂の融点より低い温度に冷却すると、熱可塑性樹脂が硬化し、熱転写リボンを解くことができなくなるため、インク層から印字情報を読み取ることができなくなる。これにより、使用済みの熱転写リボンの廃棄時のセキュリティ性を高めることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 サーマルプリンタ(印字装置)
12 プラテンローラ(被圧接部材)
13 印字ヘッド部
131 サーマルヘッド(印字ヘッド)
131a 発熱体
14 ヘッド駆動部
16 リボン保持部
17 リボン巻取部
20 熱転写リボン
21 バックコート層
22 基材
23 プライマー層
231 マイクロカプセル
24 インク層
25 トップコート層
26 熱転写リボンロール
30 受容紙
40 ロール紙
C 印字内容に対応する部分
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】特開2002−166657号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層と、
前記基層の一面側に積層された、所定の条件によって接着性を発揮するプライマー層と、
前記プライマー層の表面に積層されたインク層と、
を備える熱転写リボン。
【請求項2】
前記プライマー層は、接着剤が封入されたマイクロカプセルを含む請求項1記載の熱転写リボン。
【請求項3】
前記プライマー層は、UV硬化性樹脂を含む請求項1記載の熱転写リボン。
【請求項4】
前記プライマー層は、熱可塑性樹脂を含む請求項1記載の熱転写リボン。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の熱転写リボンと、
印字情報に基づいて前記熱転写リボンを加熱し印字を行うサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドによる印字後の前記熱転写リボンのプライマー層に接着性を発揮させつつ巻き取る巻取部と、
を備えたサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記巻取部にUVを照射するUV照射機構を備える請求項5記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−52643(P2013−52643A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193688(P2011−193688)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】