説明

熱転写受像シート

【課題】さばき性を向上させた熱転写受像シートの提供。
【解決手段】熱転写受像シート10は、基材11と、該基材上に、中空層A12と、中空層B13と、受容層15とをこの順に有してなり、該受容層が、バインダー樹脂と、層状珪酸塩とを含んでなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写受像シートに関し、より詳細には、基材と、基材上に、中空層と、受容層とをこの順に有してなる、熱転写受像シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の印字方法が知られているが、その中でも熱拡散型転写方式(昇華型熱転写方式)は、昇華性染料を色材としているため、濃度階調を自由に調節でき、中間色や階調の再現性にも優れ、銀塩写真に匹敵する高品質の画像を形成することができる。
【0003】
この熱拡散型転写方式とは、色素(昇華性染料)を含有する熱転写インクシートと熱転写受像シートとを重ね合わせ、次いで、電気信号によって発熱が制御されるサーマルヘッドによってインクシートを加熱することでインクシート中の色素を受像シートに転写して画像情報の記録を行うものである。このような熱拡散型転写方式が普及するなかで、印画速度の高速化が進んでおり、従来の熱転写インクシートと熱転写受像シートを用いて従来の熱エネルギーを印画しても十分な発色濃度を得られない等の問題が生じている。
【0004】
さらに、熱拡散型転写方式では、その他の種々の問題も存在している。例えば、受像シートの離型性不足に起因して、印画の際にインクシートが受像シートの受容層表面に貼り付き、印画後にインクシートを画像受容層から剥離する際に、剥離音の発生、走行不良、および画像上の剥離線の発生等の問題が生じている。
【0005】
また、昇華転写用プリント材料において、例えば100枚以上のプリント物を連続印画するに際し、熱転写受像シート表裏の剥離、インクリボンとの剥離、プリンター及びプリンターシステム中の搬送用部材との摩擦などにより発生した静電気により印画したプリント物の取扱い性(以下、「さばき性」とする)の悪化という問題が生じている。そこで、帯電防止性を向上させるために、熱転写受像シートの基材シートと受容層の間の少なくとも1層に導電性を有する層を設けることが提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−299108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記の背景技術を検討した結果、熱転写受像シートの基材シートと受容層の間の少なくとも1層に導電性を有する層を逐次塗布により設ける方法では、十分なさばき性が得られないという課題を知見した。
【0008】
本発明は上記の背景技術および新たに知見した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、さばき性を向上させた熱転写受像シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、特定の層構成を有する熱転写受像シートにおいて、受容層に、バインダー樹脂と層状珪酸塩とを含有させることで、上記課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明の一態様によれば、
基材と、該基材上に、中空層と、受容層とをこの順に有してなる、熱転写受像シートであって、
該受容層が、バインダー樹脂と、層状珪酸塩とを含んでなる、熱転写受像シートが提供される。
【0011】
本発明の態様においては、該バインダー樹脂が、塩酢ビ系樹脂であることが好ましい。
【0012】
本発明の態様においては、該受容層がワックス添加剤をさらに含んでなることが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、該層状珪酸塩の含有量が、該受容層の総固形分質量に対して、0.5〜10質量%であることが好ましい。
【0014】
本発明の態様においては、該中空層と該受容層の間に、プライマー層をさらに含むことが好ましい。
【0015】
本発明の態様においては、該前記基材の該受容層を有する面側を構成する全ての層が、水系塗布により形成されたものであることが好ましい。
【0016】
本発明の態様においては、該基材の該受容層と反対側の面に、裏面層をさらに有してなることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱転写受像シートによれば、さばき性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による熱転写受像シートの一実施形態を示した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
熱転写受像シート
本発明の熱転写受像シートは、基材と、基材上に、中空層と、受容層とをこの順に有してなり、受容層が、バインダー樹脂と、層状珪酸塩とを含んでなるものである。好ましい態様では、熱転写受像シートは、中空層と受容層の間に、プライマー層や中間層をさらに有してもよく、受容層と反対側の面に、裏面層をさらに有してもよい。以下、本発明の熱転写受像シートの構成を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
本発明の一態様によれば、基材の一方の面上に、2層の中空層と、プライマー層と、受容層とをこの順に有してなり、基材の受容層と反対側の面上に、裏面層を有してなる、熱転写受像シートが提供される。具体的に、本発明による熱転写受像シートの一実施形態の模式断面図を図1に示す。図1に示される熱転写受像シート10は、基材11と、該基材11の一方の面に、中空層A(下層)12と、中空層B(上層)13と、プライマー層14と、受容層15とをこの順に有してなり、基材の受容層と反対側の面上に、裏面層16を有してなるものである。以下、本発明の熱転写受像シートを構成する各層について説明する。
【0021】
基材
本発明における基材は、中空層と、受容層とを保持するという役割を有するとともに、熱転写時には熱が加えられるため、加熱された状態でも取り扱い上支障のない程度の機械的強度を有する材料であることが好ましい。
【0022】
このような基材の材料としては、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、レジンコート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等のフィルムが挙げられ、また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルム、または多孔質フィルムも使用でき、特に限定されない。また、上記基材の任意の組み合わせによる積層体も使用できる。代表的な積層体の例として、セルロース繊維紙と合成紙或いはセルロース繊維紙とプラスチックフィルム或いはプラスチックフィルムと合成紙の組み合わせ等が挙げられる。更にセルロース繊維紙の表裏をポリエチレンやポリプロピレン樹脂で被覆したレジンコート紙(RCペーパー)を使用することができる。本発明においては、市販の基材を用いることもでき、例えば、三菱製紙(株)社製の写真用のRCペーパー等が好ましい。なお、基材厚みは、熱転写受像シートに要求される強度や耐熱性等や、基材として採用した素材の材質に応じて、適宜変更可能であり、具体的に、基材の厚みは、50μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、100μm〜300μmの範囲内であることがより好ましい。
【0023】
受容層
本発明における受容層は、熱転写による画像形成時に熱転写インクシートから転写される昇華性染料を受容するとともに、受容した昇華性染料を受容層に保持することで、受容層の面に画像を形成かつ維持することができる。受容層は、バインダー樹脂と、層状珪酸塩とを含むものであり、ワックス添加剤をさらに含んでもよい。好ましい態様によれば、受容層は、離型剤や界面活性剤等を、各種目的に応じて含んでもよい。なお、受容層は、水系塗布方式により形成されたものであることが好ましい。また、受容層は2層以上からなるものであってもよい。
【0024】
受容層に含有される層状珪酸塩は、ナトリウム、マグネシウム、およびリチウムの塩と珪酸ソーダを適正条件下で反応させた合成物である。層状珪酸塩を受容層に含有させることで、熱転写受像シートの表面の帯電性を制御し、さばき性を向上させることができる。また、層状珪酸塩の含有量は、受容層の総固形分質量に対して、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。層状珪酸塩の含有量が上記範囲内であれば、発色特性、離型性などの受容層本来の機能を損なうことなく、また、層状珪酸塩を添加した受容層塗布液の安定性を維持できる。また、層状珪酸塩の平均粒子径は、30nm以下であることが好ましい。上記範囲内であればプリント物の光沢性や印画ざらつきを損なうことがない。本発明においては、市販の層状珪酸塩を用いることもでき、例えば、ラポナイトJS、ラポナイトS(ウイルバー・エリス(株)製)等が好ましい。
【0025】
受容層に含有されるバインダー樹脂としては、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル・アクリル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体(塩酢ビ系樹脂)、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル等のビニルポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等、およびこれら樹脂の混合系が挙げられ、特に好ましいものは、塩酢ビ系樹脂である。
【0026】
受容層に含有されるワックス添加剤としては、カルナバワックスやパラフィンワックスが挙げられ、これらを単独で用いても、混合して用いてもよい。本発明において、カルナバワックスとは、天然のカルナバワックスならびにその精製物および誘導体を含み、添加剤等により改質されたものも含むものである。好ましい態様によれば、カルナバワックスの融点は80〜90℃であり、酸価は10mg・KOH/g以下であり、けん化価は78〜88mg・KOH/gである。また、パラフィンワックスとは、天然のパラフィンワックスならびにその精製物および誘導体を含み、添加剤等により改質されたものも含むものである。パラフィンワックスの融点は、好ましくは40〜105℃であり、より好ましくは40〜90℃であり、さらに好ましくは40〜75℃である。
【0027】
ワックス添加剤としては、カルナバワックスおよびパラフィンワックスを乳化剤により乳化させたエマルジョン型のものを用いてもよく、乳化方法は公知の方法を用いることができる。本発明においては、ワックス添加剤として、カルナバワックスとパラフィンワックスの混合物を用いることが好ましく、受容層塗布液の安定性を向上させ、製造工程における生産性を向上することができる。カルナバワックスとパラフィンワックスの混合比は、好ましくは1:0.1〜1:5であり、より好ましくは1:0.5〜1:2である。混合比が上記範囲程度であれば、受容層形成塗工液の安定性をより向上できる。また、受容層中のカルナバワックスとパラフィンワックスの合計含有量は、樹脂の固形分質量に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。カルナバワックスおよびパラフィンワックスの合計含有量が上記範囲程度であれば、受容層形成塗工液の安定性をより向上できる。本発明においては、市販のワックス添加剤を用いることもでき、例えば、Q526(カルナバワックスとパラフィンワックスの1:1混合物、中京油脂(株)製)等が好ましい。
【0028】
受容層に含有される離型剤としては、シリコーンオイル(反応硬化型シリコーンを含む)、リン酸エステル系可塑剤、およびフッ素系化合物を挙げることができ、特にシリコーンオイルが好ましい。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーン等の各種の変性シリコーンを用いることができる。具体的には、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーン、アミド変性シリコーン等を用い、これらを混合したり、各種の反応を用いて重合させて用いることもできる。また、2種以上の離型剤を混合して用いてもよい。このような離型剤を用いることで、印画時に熱転写インクシートと熱転写受像シートの受容層との融着および印画感度低下などの問題を改善することができる。本発明においては、ポリエーテル変性シリコーン型の離型剤を用いることが特に好ましい。ポリエーテル変性シリコーン型の離型剤を2種以上用いてもよく、その他の離型剤と併用しても良い。本発明においては、市販の離型剤を適宜水分散して用いることもできる。市販の離型剤としてはX−22−3000T、KF−343、KF−1001、X−24−510およびKF410(以上、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。エポキシ変性シリコーンを単独あるいはその他シリコーンと組み合わせて用いることが、上記のバインダー樹脂との組み合わせの観点から好ましい。
【0029】
中空層
本発明における中空層は、熱転写による画像形成時に加えられた熱が、基材等への伝熱によって損失されることを防止できる断熱性を有するものである。好ましい態様では、中空層は、中空粒子を含むものであり、親水性バインダーやその他の添加剤をさらに含んでもよい。好ましい態様によれば、中空層は2層以上からなるものであってもよい。中空層は、中空粒子を含むことにより、クッション性を備える。ここで、中空層のクッション性の程度は、熱転写受像シートの用途等に応じて適宜調整することができるものである。なお、中空層のクッション性の程度についても、例えば、中空層の厚みを変更することにより任意の範囲に調整することができる。中空層の厚みは、断熱性、クッション性等を所望の程度に調整できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。また、中空層の密度は、例えば0.1g/cm〜0.8g/cmの範囲内、なかでも0.2g/cm〜0.7g/cmの範囲内であることが好ましい。
【0030】
本発明で用いる中空粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.3〜5μmである。中空粒子の平均粒子径が、上記範囲程度であれば、断熱性およびクッション性を中空層に与えることができる。平均粒子径が小さすぎると、中空粒子の使用量が増えコストが高くなり、平均粒子径が大きすぎると、平滑な中空層を形成することが困難になるからである。また、中空粒子の平均中空率は、好ましくは20%以上、より好ましくは30〜80%である。中空粒子の平均中空率が、上記範囲程度であれば、断熱性およびクッション性を中空層に与えることができる。さらに、樹脂等から構成される有機系中空粒子であってもよく、ガラス等から構成される無機系中空粒子であってもよい。また、上記中空粒子は、架橋中空粒子であってもよい。本発明においては、市販の中空粒子を用いることもでき、例えば、ローペイクHP−1055、ローペイクHP−91、ローペイクOP−84J、ローペイクウルトラおよびローペイクSE(ロームアンドハース(株)製)、二ポールMH−5055(日本ゼオン(株))、SX8782、SX866(JSR(株))等が好ましい。
【0031】
その他の層
本発明の熱転写受像シートは、上記の層以外の他の層をさらに有してもよい。好ましい態様では、熱転写受像シートは、受容層側に、プライマー層、中間層、および離型層等のその他の層をさらに有することができる。また、受容層と反対側に、裏面層をさらに有することができる。
【0032】
プライマー層
本発明におけるプライマー層は、中空層と受容層とを良好に接着する役割を有するとともに、高温高湿度環境下における、染料の中空層側への移行を防止して画像保存性を向上させる機能を有するものである。好ましい態様では、プライマー層は、中空粒子、樹脂、および親水性バインダーを含むものであり、樹脂としては、アクリル系樹脂を含むものが好ましい。プライマー層の厚みとしては特に限定されるものではないが、例えば1μm〜40μmであることが好ましく、1μm〜20μmがより好ましく、1μm〜10μmがさらに好ましい。
【0033】
本発明において、アクリル系樹脂とは、アクリル酸またはメタクリル酸のモノマーの重合体もしくはその誘導体、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマーの重合体もしくはその誘導体、アクリル酸またはメタクリル酸のモノマーと他のモノマーとの共重合体もしくはその誘導体、およびアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマーと他のモノマーとの共重合体もしくはその誘導体を含むものである。
【0034】
本発明の好ましい態様によれば、アクリル系樹脂は、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマーと他のモノマーとの共重合体もしくはその誘導体であるのが好ましい。アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマーとしては、例えば、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート等、好ましくは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、およびラウリルメタクリレート等を挙げることができる。他のモノマーとしては、例えば、芳香族炭化水素、アリール基含有化合物、アミド基含有化合物、および塩化ビニル等、好ましくは、スチレン、ベンジルスチレン、フェノキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、およびメタクリルアミド等を挙げることができる。本発明においては、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートと、芳香族炭化水素、アリール基含有化合物、およびアミド基含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の他のモノマーとの共重合体もしくはその誘導体を用いることが特に好ましい。上記のようなモノマーを共重合させることで、濃度および離型性を向上させることができる。なお、2種以上のアクリル系樹脂を混合して用いてもよい。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、上記の中空層やプライマー層等に含まれる親水性バインダーとしては、ゼラチンおよびその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオイキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸およびその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、ならびにアラビアゴムを挙げることができ、特にゼラチンが好ましい。このような親水性バインダーを用いることで、各層の層間接着性を向上させることができる。特に、水系塗布および同時重層塗布方式により各層を形成する場合には、ゼラチンを用いることで、各塗布液の粘度を所望の範囲に調整し、所望の膜厚を得ることができる。本発明においては、市販のゼラチンを用いることもでき、例えば、RR、R、CLVおよびG1236K(新田ゼラチン(株)製)等が好ましい。
【0036】
中間層
本発明においては、中空層とプライマー層の間やプライマー層と受容層の間に少なくとも1層の中間層を設けてもよい。中間層を設けることで、耐溶剤、高温/高湿下での画像保存時の染料拡散バリア、層間接着、白色付与、基材のギラつき感/ムラの隠蔽、および帯電防止等の機能を付加するこができる。中間層の形成手段としては公知の手段を用いることができ、例えば、中間層に、蛍光増白剤、無機微粒子、中空微粒子、および導電性フィラーやポリアニリンスルホン酸のような有機導電材等を添加する方法が挙げられる。
【0037】
離型層
本発明においては、上記の離型剤を受容層に添加せず、受容層上に別途離型層として設けても良い。
【0038】
裏面層
本発明における裏面層は、インクジェット方式やドットインパクト方式、筆記具等で使用するインキの定着性を有しており、記録部のにじみが生じ難く速乾性に優れたバックプリントを可能とする(バックプリント適性を向上させる)ものである。さらに、以下に示す受像紙裏面としての基本特性を有するものでもある。
1.受容層面と重ね合わせた際に、温度や加重をかけて保存しても貼り付き(ブロッキング)を生じない。
2.受容層面と擦れても受容層面を傷付けず、また、裏面層からの粒子成分の脱落(粉落ち)を生じない。
また、裏面層は、バインダー樹脂および無機微粒子を含むことが好ましく、その他の添加剤、例えば、消泡剤や帯電防止剤等を裏面層に適宜添加することができる。近年では環境配慮の観点から水系塗布方式が好まれているが、本発明の裏面層は、 水系塗布方式で受容層を形成した受像紙の裏面として特に好適に用いることができる。
【0039】
裏面層に含有されるバインダー樹脂は、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である。このようなバインダー樹脂を用いることで、基材への接着性が良好であり、かつ、良好なバックプリント適性を持たせることが可能になる。本発明においては、市販のバインダー樹脂を用いることもでき、ルシデン375CI、ルシデン606APEF、プライマルASR PlUS S25、プライマルI−2183N(以上、ローム・アンド・ハース社製)、ジョンクリル60J、61J、62J、63J、354J、PDX7700、PDX7641、PDX7643(以上、BASF社製)、バイロナールMD−1500、MD−2000(東洋紡社製)、ポリエスターWR−905S20WO、WR−961(以上、日本合成化学社製)、プラスコートZ−690、Z−687(以上、互応化学工業社製)、パテラコールIJ−150R、RSI−001、RSI−017(以上、DIC社製)、スーパーフレックス130(以上、第一工業製薬社製)等が好ましい。
【0040】
裏面層に含有される無機微粒子は、コロイダルアルミナ、コロイダルシリカ、およびシリカ粒子からなる群から選択される少なくとも1種である。このような無機微粒子を用いることで、バックプリント適性を向上させ、ブロッキングを防止することができる。
【0041】
本発明において、裏面層の塗布量は特に限定されるものではないが、塗布量は乾燥後0.1g/m〜3.0g/mの範囲内であることが好ましく、0.3g/m〜1.5g/mの範囲内であることがより好ましい。塗布量が上記範囲程度であれば、十分なバックプリント適性が得られる。
【0042】
熱転写受像シートの製造方法
本発明の熱転写受像シートの製造には、公知の製造方法を用いることができる。熱転写受像シートの各層の塗布には、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ダイコート、スライドコート、およびカーテンコート等の公知の方法を用いることができる。本発明においては、受容層を有する面側において、中空層から受容層間を構成する全ての層を、水系塗布により形成することが好ましい。
【0043】
熱転写インクシート
本発明の熱転写受像シートと共に用いる熱転写インクシートは、基材シートの一方の面に熱転写性色材層が設けられており、基材シートの他方の面に耐熱滑性層が設けられている層構成を有するものがよい。以下、熱転写インクシートを構成する各層について説明する。
【0044】
基材シート
本発明に用いられる熱転写インクシートを構成する基材シートの材料は、従来公知のものを使用することができ、また、それ以外のものであっても、ある程度の耐熱性と強度とを有していれば使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ナイロン、酢酸セルロース、アイオノマー等の樹脂フィルム、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類、不織布等が挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、これらを任意に組み合わせた積層体を使用してもよい。これらの中でも、薄膜化可能で安価な汎用性プラスチックであるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0045】
基材シートの厚さは、強度、耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は0.5〜50μm程度が好ましく、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜10μmである。
【0046】
基材シートは、隣接する層との接着性を向上させるため、表面処理が施されていてもよい。上記表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、およびグラフト化処理等の、公知の樹脂表面改質技術を適用することができる。上記表面処理は、1種のみ施されてもよいし、2種以上施されてもよい。
【0047】
さらに、上記基材シートの接着処理として、基材シート上に接着層を塗工して形成することも可能である。接着層は、例えば、以下の有機材料および無機材料から形成することができる。上記有機材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドンおよびその変性体等のビニル系樹脂、ならびにポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂等が挙げられる。上記無機材料としては、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナあるいはアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物またはその水和物、疑ベークマイト等)、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、および酸化チタン等のコロイド状無機顔料超微粒子等が挙げられる。
【0048】
また、上記の表面処理として、プラスチックフィルムを延伸処理して製造する場合、未延伸フィルムにプライマー液を塗布し、その後に延伸処理して行うこともできる(プライマー処理)。
【0049】
熱転写性色材層
本発明に用いられる熱転写インクシートは、基材シートの一方の面に熱転写性色材層が設けられている。熱転写インクシートが昇華型熱転写インクシートの場合には、熱転写性色材層として昇華性染料を含有する層を形成し、熱溶融型熱転写インクシートの場合には、着色剤を含む熱溶融組成物からなる熱溶融性のインクを含有する層を形成する。なお、昇華性染料を含有する層領域と、着色剤を含む熱溶融組成物からなる熱溶融性のインクを含有する層領域と、を連続した1枚の基材シート上に面順次に設けてもよい。
【0050】
熱転写性色材層の材料は、従来公知の染料を使用することができるが、印画材料として良好な特性を有するもの、例えば、十分な着色濃度を有し、光、熱、温度等により変褪色しないものが好ましい。例えば、赤色染料としては、MS Red G(三井東圧化学社製)、Macrolex Red Violet R(バイエル社製)、CeresRed 7B(バイエル社製)、Samaron Red F3BS(三菱化学社製)等が、黄色染料としては、ホロンブリリアントイエロー6GL(クラリアント社製)、PTY−52(三菱化成社製)、マクロレックスイエロー6G(バイエル社製)等が、青色染料としては、カヤセットブルー714(日本化薬社製)、ワクソリンブルーAP−FW(ICI社製)、ホロンブリリアントブルーS−R(サンド社製)、MSブルー100(三井東圧化学社製)等が挙げられる。
【0051】
上記染料を担持するためのバインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、エチルヒドロキシセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、セルロース系、ビニル系、アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の樹脂が耐熱性、染料の移行性等の点から好ましい。
【0052】
熱転写性色材層の形成方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。上記染料およびバインダー樹脂に、必要に応じて離型剤等の添加剤を加え、トルエン、メチルエチルケトン等の適当な有機溶剤に溶解させ、あるいは、水に分散させ、得られた熱転写性色材層用塗布液(溶解液または分散液)を、例えば、グラビア印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法、ロールコーター、バーコーター等の形成手段により、基材シートの一方の面に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。熱転写性色材層は、厚みが0.2〜5.0μm程度であり、また、熱転写性色材層中の昇華性染料の含有量は、5〜90質量%、好ましくは5〜70質量%であることが好ましい。
【0053】
保護層
本発明に用いられる熱転写インクシートは、熱転写性色材層と同一面側に面順次で保護層を設けてもよい。熱転写受像シートに色材を転写した後、この保護層を転写して画像を被覆することにより、画像を光、ガス、液体、擦過等から保護することができる。保護層として接着層、剥離層、離型層、または、下引き層等のその他の層を設けてなるものであってもよい。
【0054】
耐熱滑性層
耐熱滑性層は、主に耐熱性樹脂からなるものである。耐熱性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンまたはエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテート−ヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、および塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0055】
耐熱滑性層は、上記耐熱性樹脂に加え、滑り性付与剤、架橋剤、離型剤、有機粉末、無機粉末等の添加剤を配合してなるものであってもよい。
【0056】
耐熱滑性層は、一般に、上述の耐熱性樹脂、並びに、所望により添加する上記滑り性付与剤および添加剤を溶剤中に加えて、各成分を溶解または分散させて耐熱滑性層塗布液を調製した後、該耐熱滑性層塗布液を基材の上に塗工し、乾燥させて形成することができる。上記耐熱滑性層塗布液における溶剤としては、上述の染料インキにおける溶剤と同様のものを使用することができる。
【0057】
耐熱滑性層塗布液の塗工法としては、例えば、ワイヤーバーコーティング、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等が挙げられるが、なかでもグラビアコーティングが好ましい。耐熱滑性層塗布液は、乾燥塗布量が好ましくは0.1〜3g/m、より好ましくは1.5g/m以下となるよう塗布すればよい。
【0058】
画像形成方法
本発明の熱転写受像シートを用いる画像形成方法においては、熱転写受像シートと、熱拡散性色素を含有する熱転写インクシートとを重ね合わせて、記録信号に応じて加熱することにより、該熱転写インクシートが含有する熱拡散性色素を、該熱転写受像シートに転写することにより画像形成することできる。
【0059】
このような画像形成方法で用いることのできる熱転写記録装置としては、公知のものを用いることができ、特に限定されない。本発明においては、市販の熱転写記録装置を用いることができ、例えば、昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS社製、型式:MEGAPIXELIII)が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈されるものではない。なお、表記の質量部は固形分で記載し、必要に応じて純水にて希釈した。
【0061】
実施例1
熱転写受像シート1の作製
基材としてRCペーパー(三菱製紙(株)製)を用い、一方の面に、下記組成の裏面層用塗布液1をグラビアリバース方式にて、乾燥後の塗布量が0.8g/mとなるように塗布し、120℃にて30秒間乾燥した。
裏面層用塗布液1の組成
・バインダー樹脂(スチレン・アクリル樹脂、ローム・アンド・ハース(株)製、商品名:ルシデン606APEF) 28.6質量部
・バインダー樹脂(スチレン・アクリル樹脂、ローム・アンド・ハース(株)製、商品名:ルシデン375CI) 28.6質量部
・アルミナ(平均粒子径1μm(レーザー回折法)、住友化学工業(株)製、商品名:AM−27) 42.8質量部
【0062】
続いて、下記組成の中空層A用塗布液1を40℃に加熱し、基材の他方の面に、グラビアリバース方式を用いて、乾燥後の塗布量が2.0g/mとなるように中空層A用塗布液1を塗布し、50℃にて2分間乾燥し、基材上に中空層Aを形成した。その後、下記組成の中空層B用塗布液1、プライマー層用塗布液1、および受容層用塗布液1を用いて、順次、乾燥後の塗布量がそれぞれ3.0g/m、3.0g/m、3.5g/mとなるように各塗布液をグラビアリバース方式にて逐次塗布、乾燥(各50℃2分間)して、中空層B、プライマー層、および受容層を形成し、熱転写受像シート1(層構成:裏面層/基材/中空層A/中空層B/プライマー層/受容層)を得た。この熱転写受像シートは、図1に示されるような層構成を有していた。
中空層A用塗布液1(下層用)の組成
・中空粒子(平均粒子径:0.5μm、平均中空率:45%、ローム・アンド・ハース(株)製、商品名:ローペイクウルトラ) 61.2質量部
・ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G1236K) 18.3質量部
・バインダー樹脂(スチレン・アクリル樹脂、新中村化学工業(株)製、商品名:ニューコートB−13) 10.2質量部
・バインダー樹脂(スチレン・アクリル樹脂、BASFジャパン(株)製、商品名:ジョンクリル62J) 10.2質量部
中空層B用塗布液1(上層用)の組成
・中空粒子(平均粒子径:0.5μm、平均中空率:45%、ローム・アンド・ハース(株) 製、商品名:ローペイクウルトラ) 67.0質量部
・ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G1236) 20.0質量部
・バインダー樹脂(スチレン・アクリル樹脂、新中村化学工業(株)製、商品名:ニューコートB−13) 5.0質量部
・バインダー樹脂(スチレン・アクリル樹脂、BASFジャパン(株)製、商品名:ジョンクリル62J) 8.0質量部
プライマー層用塗布液1の組成
・中空粒子(平均粒子径:0.1μm、平均中空率:30%、JSR(株)製、商品名:SX866) 72.8質量部
・ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G1236) 18.7質量部
・バインダー樹脂(スチレン・アクリル樹脂、BASFジャパン(株)製、商品名:ジョンクリル62J) 3.1質量部
・バインダー樹脂(変性ゴム、(株)レヂテックス製、商品名 MG−67)
5.2質量部
・界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム) 0.2質量部
受容層用塗布液1の組成
・塩酢ビ系エマルション(塩ビ/酢ビ=97.5/2.5) 74.0質量部
・離型剤の水分散体 8.1質量部
・ワックス添加剤(カルナバワックス/パラフィンワックス分散液、中京油脂(株)製、商品名:Q−526) 5.2質量部
・エポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス(株)製、商品名:EX−512)
3.7質量部
・界面活性剤(ジオクチルコハク酸ナトリウム) 2.3質量部
・増粘剤((株)ADEKA製、商品名:UH−526) 6.7質量部
・層状珪酸塩(ウイルバー・エリス(株)製、商品名:ラポナイトJS) 3.0質量部
【0063】
塩酢ビ系エマルションの調製
受容層用塗布液1で用いた塩酢ビ系樹脂ラテックスは、以下のように調製した。2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水600g、塩化ビニル単量体438.8g(全仕込み単量体に対して97.5質量%)と酢酸ビニル11.2g(全仕込み単量体に対して2.5質量%)からなる単量混合体、過硫酸カリウム2.25gを仕込んだ。この反応混合物を攪拌翼で回転数120rpmを維持するように攪拌し、反応混合物の温度を60℃に上げて重合を開始した。5質量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液180g(全仕込み単量体に対して2質量%)を重合開始〜4hr後まで連続添加し、重合圧が60℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.6MPa降下した時に重合を停止した後、残存の単量体を回収して、塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。
【0064】
離型剤の水分散体の調製
受容層用塗布液1で用いた離型剤の水分散体は、以下のように調製した。酢酸エチル85gにエポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)製、商品名X−22−3000T)16gとアラルキル変性シリコーン(信越化学工業(株)製、商品名KF−410)8gを溶解し、溶剤系溶液を調製した。次に、トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム塩(固形分10%)14gを純水110gに溶解し、水系溶液を調製した。続いて、溶剤系溶液と水系溶液とを混合・攪拌した後、ホモジナイザーを用いて分散を行い、分散体を調整した。その後、分散体を30〜60℃に加温しながら減圧下で酢酸エチルを除去し、シリコーンの水分散体を得た。
【0065】
実施例2
熱転写受像シート2の作製
受容層用塗布液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート2を作製した。
受容層用塗布液2の組成
・塩酢ビ系エマルション(塩ビ/酢ビ=97.5/2.5) 74.0質量部
・離型剤の水分散体 8.1質量部
・ワックス添加剤(カルナバワックス/パラフィンワックス分散液、中京油脂(株)製、商品名:Q−526) 5.2質量部
・エポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス(株)製、商品名:EX−512)
3.7質量部
・界面活性剤(ジオクチルコハク酸ナトリウム) 2.3質量部
・増粘剤((株)ADEKA製、商品名:UH−526) 6.7質量部
・層状珪酸塩(ウイルバー・エリス(株)製、商品名:ラポナイトJS) 0.5質量部
【0066】
実施例3
熱転写受像シート3の作製
受容層用塗布液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート3を作製した。
受容層用塗布液3の組成
・塩酢ビ系エマルション(塩ビ/酢ビ=97.5/2.5) 74.0質量部
・離型剤の水分散体 8.1質量部
・ワックス添加剤(カルナバワックス/パラフィンワックス分散液、中京油脂(株)製、商品名:Q−526) 5.2質量部
・エポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス(株)製、商品名:EX−512)
3.7質量部
・界面活性剤(ジオクチルコハク酸ナトリウム) 2.3質量部
・増粘剤((株)ADEKA製、商品名:UH−526) 6.7質量部
・層状珪酸塩(ウイルバー・エリス(株)製、商品名:ラポナイトJS)10.0質量部
【0067】
実施例4
熱転写受像シート4の作製
受容層用塗布液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート4を作製した。
受容層用塗布液4の組成
・バインダー樹脂(塩ビ系エマルジョン、日信化学工業(株)製、商品名:ビニブラン985) 66.6質量部
・バインダー樹脂(塩酢ビ系エマルジョン、日信化学工業(株)製、商品名:ビニブラン603) 7.4質量部
・離型剤(ポリエーテル変性シリコーン、信越化学工業(株)製、商品名:KF6004) 8.1質量部
・ワックス添加剤(カルナバワックス/パラフィンワックス分散液、中京油脂(株)製、商品名:Q−526) 5.2質量部
・エポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス(株)製、商品名:EX−512)
3.7質量部
・界面活性剤(ジオクチルコハク酸ナトリウム) 2.3質量部
・増粘剤((株)ADEKA製、商品名:UH−526) 6.7質量部
・層状珪酸塩(ウイルバー・エリス(株)製、商品名:ラポナイトJS) 3.0質量部
【0068】
実施例5
熱転写受像シート5の作製
受容層用塗布液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート5を作製した。
受容層用塗布液5の組成
・バインダー樹脂(塩ビ系エマルジョン、日信化学工業(株)製、商品名:ビニブラン985) 37.0質量部
・バインダー樹脂(塩酢ビ系エマルジョン、日信化学工業(株)製、商品名:ビニブラン603) 37.0質量部
・離型剤(ポリエーテル変性シリコーン、信越化学工業(株)製、商品名:KF6004) 8.1質量部
・ワックス添加剤(カルナバワックス/パラフィンワックス分散液、中京油脂(株)製、商品名:Q−526) 5.2質量部
・エポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス(株)製、商品名:EX−512)
3.7質量部
・界面活性剤(ジオクチルコハク酸ナトリウム) 2.3質量部
・増粘剤((株)ADEKA製、商品名:UH−526) 6.7質量部
・層状珪酸塩(ウイルバー・エリス(株)製、商品名:ラポナイトJS) 3.0質量部
【0069】
比較例1
熱転写受像シート6の作製
受容層用塗布液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート6を作製した。
受容層用塗布液6の組成
・塩酢ビ系エマルション(塩ビ/酢ビ=97.5/2.5) 74.0質量部
・離型剤の水分散体 8.1質量部
・ワックス添加剤(カルナバワックス/パラフィンワックス分散液、中京油脂(株)製、商品名:Q−526) 5.2質量部
・エポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス(株)製、商品名:EX−512)
3.7質量部
・界面活性剤(ジオクチルコハク酸ナトリウム) 2.3質量部
・増粘剤((株)ADEKA製、商品名:UH−526) 6.7質量部
【0070】
比較例2
熱転写受像シート7の作製
プライマー層用塗布液および受容層用塗布液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート7を作製した。
プライマー層用塗布液2の組成
・中空粒子(平均粒子径:0.1μm、平均中空率:30%、JSR(株)製、商品名:SX866) 72.8質量部
・ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G1236) 18.7質量部
・バインダー樹脂(スチレン・アクリル樹脂、BASFジャパン(株)製、商品名:ジョンクリル62J) 3.1質量部
・バインダー樹脂(変性ゴム、(株)レヂテックス製、商品名 MG−67)
5.2質量部
・界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム) 0.2質量部
・層状珪酸塩(ウイルバー・エリス(株)製、商品名:ラポナイトJS) 3.0質量部
受容層用塗布液7の組成
・塩酢ビ系エマルション(塩ビ/酢ビ=97.5/2.5) 74.0質量部
・離型剤の水分散体 8.1質量部
・ワックス添加剤(カルナバワックス/パラフィンワックス分散液、中京油脂(株)製、商品名:Q−526) 5.2質量部
・エポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス(株)製、商品名:EX−512)
3.7質量部
・界面活性剤(ジオクチルコハク酸ナトリウム) 2.3質量部
・増粘剤((株)ADEKA製、商品名:UH−526) 6.7質量部
【0071】
比較例3
熱転写受像シート8の作製
中空層B用塗布液および受容層用塗布液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート8を作製した。
中空層B用塗布液2(上層用)の組成
・中空粒子(平均粒子径:0.5μm、平均中空率:45%、ローム・アンド・ハース(株) 製、商品名:ローペイクウルトラ) 67.0質量部
・ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G1236) 20.0質量部
・バインダー樹脂(スチレン・アクリル樹脂、新中村化学工業(株)製、商品名:ニューコートB−13) 5.0質量部
・バインダー樹脂(スチレン・アクリル樹脂、BASFジャパン(株)製、商品名:ジョンクリル62J) 8.0質量部
・層状珪酸塩(ウイルバー・エリス(株)製、商品名:ラポナイトJS) 3.0質量部
受容層用塗布液8の組成
・塩酢ビ系エマルション(塩ビ/酢ビ=97.5/2.5) 74.0質量部
・離型剤の水分散体 8.1質量部
・ワックス添加剤(カルナバワックス/パラフィンワックス分散液、中京油脂(株)製、商品名:Q−526) 5.2質量部
・エポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス(株)製、商品名:EX−512)
3.7質量部
・界面活性剤(ジオクチルコハク酸ナトリウム) 2.3質量部
・増粘剤((株)ADEKA製、商品名:UH−526) 6.7質量部
【0072】
比較例4
熱転写受像シート9の作製
中空層A用塗布液および受容層用塗布液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート9を作製した。
中空層A用塗布液2(下層用)の組成
・中空粒子(平均粒子径:0.5μm、平均中空率:45%、ローム・アンド・ハース(株)製、商品名:ローペイクウルトラ) 61.2質量部
・ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G1236K) 18.3質量部
・バインダー樹脂(スチレン・アクリル樹脂、新中村化学工業(株)製、商品名:ニューコートB−13) 10.2質量部
・バインダー樹脂(スチレン・アクリル樹脂、BASFジャパン(株)製、商品名:ジョンクリル62J) 10.2質量部
・層状珪酸塩(ウイルバー・エリス(株)製、商品名:ラポナイトJS) 3.0質量部
受容層用塗布液9の組成
・塩酢ビ系エマルション(塩ビ/酢ビ=97.5/2.5) 74.0質量部
・離型剤の水分散体 8.1質量部
・ワックス添加剤(カルナバワックス/パラフィンワックス分散液、中京油脂(株)製、商品名:Q−526) 5.2質量部
・エポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス(株)製、商品名:EX−512)
3.7質量部
・界面活性剤(ジオクチルコハク酸ナトリウム) 2.3質量部
・増粘剤((株)ADEKA製、商品名:UH−526) 6.7質量部
【0073】
塗布液および熱転写受像シートの評価
上記で作製した塗布液および熱転写受像シートについて、(1)塗布液安定性評価および(2)さばき性評価を行った。
【0074】
(1)塗布液安定性評価
上記の実施例および比較例で用いた層状珪酸塩を添加した塗布液を、常温、暗所で1日間静置後に、塗布液を下記の基準で評価した。なお、層状珪酸塩を添加した塗布液が無い場合には、「−」とした。
評価基準
○:塗布液が多少増粘したが、実用上問題なかった。
△:塗布液が増粘しており、塗布に支障があった。
×:塗布液に凝集物が発生し、塗布できなかった。
【0075】
(2)さばき性評価
上記で作製した熱転写受像シートを使用して、昇華転写型プリントシステム「Print Center((株)DNPフォトルシオ製)」にて自然画を100枚印画し、印画物の揃えやすさを官能評価した。
評価基準
○:容易に揃えることができ、さばき性が良好であった。
△:揃えることができ、さばき性が通常であった。
×:揃えることができず、さばき性が不良であった。
【0076】
上記の各評価の結果を表1に示す。本発明の組成を満たす実施例1〜5の熱転写受像シートは、比較例1〜4の熱転写受像シートと比較して、さばき性に優れていることがわかる。
【表1】

【符号の説明】
【0077】
10 熱転写受像シート
11 基材
12 中空層A(下層)
13 中空層B(上層)
14 プライマー層
15 受容層
16 裏面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に、中空層と、受容層とをこの順に有してなる、熱転写受像シートであって、
前記受容層が、バインダー樹脂と、層状珪酸塩とを含んでなる、熱転写受像シート。
【請求項2】
前記バインダー樹脂が、塩酢ビ系樹脂である、請求項1に記載の熱転写受像シート。
【請求項3】
前記受容層がワックス添加剤をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の熱転写受像シート。
【請求項4】
前記層状珪酸塩の含有量が、前記受容層の総固形分質量に対して、0.5〜10質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
【請求項5】
前記中空層と前記受容層の間に、プライマー層をさらに有してなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
【請求項6】
前記基材の前記受容層を有する面側を構成する全ての層が、水系塗布により形成されたものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
【請求項7】
前記基材の前記受容層と反対側の面に、裏面層をさらに有してなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。

【図1】
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