説明

熱転写受像用シート

【課題】染料画像の拡散を防止するバリヤー効果や、基材から染料受容層が剥離するのを防ぐのに十分な接着性を有する中間層が形成されてなる、従来の製品と遜色なく、或いはそれ以上に、画像の保存性に優れ、高濃度及び高解像度の印刷画像の形成が可能であり、さらに、上記優れた特性を実現し得る中間層を環境保全性にも資する材料によって形成した熱転写受像用シートを提供すること。
【解決手段】基材の少なくとも一方の面に、中間層と染料受容層とをこの順に積層した熱転写受像用シートであって、上記中間層が、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を主成分としてなることを特徴とする熱転写受像用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートと重ね合わせて使用される熱転写受像用シートに関し、さらに詳しくは、印字画像保存性に優れ、高濃度、高解像度の記録画像の形成が可能な熱転写受像用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より種々の熱転写記録方式が知られているが、それらの中に昇華転写記録方式がある。昇華転写記録方式では、昇華性転写染料を色材とし、これをポリエステルフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートが用いられている。そして、該昇華転写記録方式を用い、昇華染料で染着可能な被転写材、例えば、紙やプラスチックフィルム等に染料受容層を形成してなる熱転写受像用シート上に、上記熱転写シートから、基材に担持させた昇華転写染料を熱転写し、各種のフルカラー画像を形成する方法が提案されている。
【0003】
この場合、記録信号に応じて発熱するサーマルヘッドを用い、極めて短時間の加熱によって多色の色ドットを熱転写受像用シートの受容層に転写させ、フルカラー画像を得ている。この記録方式によれば、染料により形成された画像は、非常に鮮明で且つ透明性に優れているため、得られる画像は中間色や階調の再現性に優れ、従来のオフセット印刷やグラビア印刷による画像と同様であり、かつ、銀塩写真に匹敵する高品質の画像を形成することが可能である。
【0004】
上述したように、昇華型転写方式に使用される熱転写受像用シートは、基材上に染料を染着するための受容層を有している。さらに、基材と受容層の間には、クッション性や柔軟性を出すため中間層が形成されている。しかし、一般的に使用される中間層用樹脂は、染料の拡散防止のバリヤー性に乏しいため、熱転写受像用シートを高温下で長期保存した際に染料画像が中間層内に拡散して、画像がにじんだりぼやけたりして鮮明な画像が消失してしまうという問題があった。また、上記した中間層に対する要求性能として、基材と受容層との間における接着性がある。これは、プリンターにおいて画像を形成する際や、印刷画像を使用している時に、基材から受容層が剥離するのを防ぐことが必要であることによる。
【0005】
このため、中間層の形成材料として、(染料拡散防止に対する)バリヤー性に優れたポリビニルアルコール樹脂やポリウレタン系樹脂、又はそれらの混合物を用いたものが提案されている。しかし、これらは、中間層としての染料画像の拡散を防止するバリヤー効果や、基材及び染料受容層に対する接着性の点ではまだ不十分である(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0006】
さらに、最近では、環境問題の高まりからこの対策に積極的に取り組むメーカーが多くなり、環境保全性に優れた材料を用いて製品を構成する動きがあり、熱転写受像用シートに関しても例外ではない。例えば、前記中間層及び染料受像層(受容層)に使用する樹脂を製造する際に使用する有機溶剤から特定の溶剤を選択しない検討や、有機溶剤の代わりに水系樹脂を使用してVOC(揮発性有機化合物)排出量をできるだけ抑制する検討も盛んに行われている。しかし、現在の地球規模での環境保全性に対応するにはまだ不十分である。
【0007】
二酸化炭素を製造原料とする樹脂として、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が以前から知られている(例えば、特許文献3及び4参照)が、その応用展開は進んでいないのが実情である。その理由は、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、同種系の高分子化合物として対比されるポリウレタン系樹脂に比べ、その特性面で明らかに劣るからである。
【0008】
一方、近年、増加の一途をたどる二酸化炭素の排出に起因すると考えられる地球の温暖化現象は、世界的な問題となっており、二酸化炭素の排出量低減は、全世界的に重要な課題となっている。さらに、枯渇性石化資源(石油)問題の観点からも、バイオマス、メタンなどの再生可能資源への転換が世界的潮流となっており(例えば、非特許文献1及び2)、二酸化炭素を製造原料とできる技術の開発が待望されている。
【0009】
上記したような背景下、再び、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が見直されている。すなわち、この樹脂を構成する5員環環状カーボネート化合物の原料となる二酸化炭素は、容易に入手可能で、かつ、持続可能な炭素資源であり、このような二酸化炭素を炭素原料とできるプラスチックは、上記した地球温暖化、資源枯渇などの問題を解決する有効な手段となり得ると考えられるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−276669号公報
【特許文献2】特開平11−34515号公報
【特許文献3】米国特許第3,072,613号公報
【特許文献4】特開2000−319504号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】N.Kihara,T.Endo,J.Org.Chem.,1993,58,6198
【非特許文献2】N.Kihara,T.Endo,J.Polymer Sci.,PartA Polmer Chem.,1993,31(11),2765
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような状況下、前記した昇華型転写方式に使用される熱転写受像用シートの中間層に使用する形成材料に関しても、画像の保存性に優れ、高濃度及び高解像度の印刷画像の形成が可能である共に、地球規模での環境保全性を持った環境対応製品の開発が要望されている。
【0013】
したがって、本発明の目的は、染料画像の拡散を防止するバリヤー効果や、基材から染料受容層が剥離するのを防ぐのに十分な接着性を有する中間層が形成されてなる、従来の製品と遜色なく、或いはそれ以上に、画像の保存性に優れ、高濃度及び高解像度の印刷画像の形成が可能な、熱転写受像用シートを提供することにある。さらには、上記優れた特性を実現し得る中間層を、環境保全性にも資する材料によって形成した熱転写受像用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、基材の少なくとも一方の面に、中間層と染料受容層とをこの順に積層した熱転写受像用シートであって、上記中間層が、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を主成分としてなることを特徴とする熱転写受像用シートを提供する。
【0015】
さらに、好ましい形態としては、上記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、その水酸基価が50〜350mgKOH/gであること;上記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導された樹脂であること;該5員環環状カーボネート化合物が、エポキシ化合物と二酸化炭素との反応物であること;上記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、該樹脂構成中に二酸化炭素を1〜25質量%の範囲で含むことが挙げられる。
【0016】
また、上記本発明においては、前記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、樹脂を構成する水酸基と反応する架橋剤で架橋されていること;前記中間層が、白色顔料及び/又は蛍光増白剤を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明によれば、熱転写受像用シートの中間層を、前記の如き構成にすることで、該中間層が、染料画像の拡散を防止するバリヤー効果や、基材から染料受容層が剥離するのを防ぐのに十分な優れた接着性を示し、特に、昇華型転写方式に使用した場合に、従来の製品と遜色なく、或いはそれ以上に、画像の保存性に優れ、高濃度及び高解像度の印刷画像の形成が可能な製品である熱転写受像用シートが提供される。これとともに、上記本発明によれば、二酸化炭素を樹脂中に取り入れ固定した材料を中間層の形成材料に利用できることから、温暖化ガスとして世界的に問題視されている二酸化炭素削減にも寄与することが可能な、環境対応製品でもある熱転写受像用シートの提供が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の熱転写受像用シートは、基材の少なくとも一方の面に、中間層と染料受容層(以下、単に受容層という場合がある)とをこの順序で積層してなり、該中間層を構成する高分子化合物が、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を主成分とするものであることを特徴とする。より好ましくは、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導されたポリヒドロキシポリウレタン樹脂を用いる。さらに、該樹脂は、その水酸基価が50〜350mgKOH/gであることが好ましい。以下、各構成について、それぞれ説明する。
【0019】
<基材>
本発明の熱転写受像用シートを構成する基材は、受容層を保持する役割を有するとともに、熱転写時には熱が加えられるため、下記に挙げるような、比較的耐熱性のよいフィルムを用いて形成することが好ましい。例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、PEEK、PEN、PET、ポリスチレン、ポリサルフォン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、トリアセチロセルロースなどの各種フィルム、或いは、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙などが挙げられる。
【0020】
これら基材の厚みは、任意でよく、通常10〜300μm程度である。また、これら基材と、上に設ける層(後述する中間層)との接着性に乏しい場合には、基材の表面に各種プライマー処理やコロナ放電処理を施すことが好ましい。基材の、上記した中間層などを設ける側と反対の面(背面)には、離型性や導電性などを付与することを目的とした層をさらに設けてもよい。
【0021】
<中間層>
本発明は、上記基材上に積層される中間層が、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を主成分として形成されていることを特徴とする。本発明を特徴づけるポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導された樹脂であることが好ましい。5員環環状カーボネート化合物は、例えば、下記[式−A]で示されるように、エポキシ化合物と二酸化炭素とを反応させて製造することができる。更に詳しくは、エポキシ化合物を、有機溶媒の存在下又は不存在下、及び触媒の存在下、40℃〜150℃の温度で常圧又は僅かに高められた圧力下、10〜20時間、二酸化炭素と反応させることによって得ることができる。
【0022】

【0023】
本発明で使用する上記エポキシ化合物としては、例えば、次のような化合物が例示できる。
【0024】








【0025】
列記したエポキシ化合物は、本発明において使用する好ましい化合物であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。従って、上述の例示の化合物のみならず、その他現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物は、いずれも本発明において使用することができる。
【0026】
本発明に用いる5員環環状カーボネート化合物は、上記のようなエポキシ化合物と、二酸化炭素との反応によって得ることができる。この反応に使用できる触媒として、塩基触媒及びルイス酸触媒が挙げられる。
【0027】
上記塩基触媒としては、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロオクタン、ピリジンなどの環状アミン類、リチウムクロライド、リチウムブロマイド、フッ化リチウム、塩化ナトリウムなどのアルカリ金属塩類、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属塩類、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、などの四級アンモニウム塩類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩類、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸銅、酢酸鉄などの金属酢酸塩類、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物、テトラブチルホスホニウムクロリドなどのホスホニウム塩類が挙げられる。
【0028】
また、ルイス酸触媒としては、テトラブチル錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オクトエートなどの錫化合物が挙げられる。
【0029】
これらの触媒の使用量は、エポキシ化合物50質量部当たり、0.1〜100質量部、好ましくは0.3〜20質量部とすればよい。上記の使用量が0.1質量部未満では、触媒としての効果が小さく、100質量部を超えると最終樹脂の諸性能を低下させるおそれがあるので好ましくない。従って、残留触媒が重大な性能低下を引き起こすような場合は、純水で洗浄して除去してもよい。
【0030】
エポキシ化合物と二酸化炭素の反応においては使用できる有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。また、これら有機溶剤と他の貧溶剤、例えば、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノンなどの混合系で使用してもよい。
【0031】
本発明で使用するポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、下記[式−B]で示されるように、例えば、上記のような反応で得た5員環環状カーボネート化合物と、アミン化合物とを、有機溶媒の存在下、20℃〜150℃の温度下で反応させることで得ることができる。
【0032】

【0033】
上記反応に使用するアミン化合物としては、例えば、ジアミンが好ましく、従来ポリウレタン樹脂の製造に使用されているものがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、1,4’−ジアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどの脂環族ジアミン;モノエタノールジアミン、エチルアミノエタノールアミン、ヒドロキシエチルアミノプロピルアミンなどのアルカノールジアミンが挙げられる。
【0034】
以上列記したアミン化合物は、本発明において使用する好ましい化合物であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。従って、上述の例示の化合物のみならず、その他現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物は、いずれも本発明において使用することができる。
【0035】
また、本発明で用いるポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、その数平均分子量(GPCで測定した、標準ポリスチレン換算値)が、2,000〜100,000程度であることが好ましく、より好ましくは5,000〜70,000程度である。
【0036】
また、本発明で用いるポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、該樹脂を構成する水酸基により、分子間で水素結合を形成して染料の拡散防止のバリヤー性を発現することができる。本発明を特徴づける中間層によって、本発明が目的としている染料画像の拡散を防止するに十分なバリヤー効果を得るためには、該樹脂の水酸基価が50〜350mgKOH/gであることが好ましい。水酸基の含有量が上記範囲未満では、形成した中間層のバリヤー性が劣る場合があるだけでなく、二酸化炭素削減効果が不足であり、一方、水酸基の含有量が上記範囲を超えると、高分子化合物としての諸物性不足となるため好ましくない。なお、特に昇華型転写方式に使用される熱転写受像用シートにおいて、中間層における、十分な昇華染料に対するバリヤー性を確保するためには、本発明で用いるポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、その酸素ガス透過度が低いことが好ましい。これは、一般に、染料拡散防止のバリヤー性と酸素ガスバリヤー性は相関関係にあると言われていることによる。
【0037】
さらに、中間層を形成する際に、上記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を構成する水酸基と反応する架橋剤を用いることで、架橋皮膜として使用することもできる。中間層を架橋皮膜とすることで、基材との接着性や、受容層との接着性を向上させることができ、基材からの受容層の剥離をより良好に防止することが可能になるために好ましい。架橋剤としては、該樹脂中の水酸基と反応するような架橋剤であれば、すべて使用することができる。例えば、アルキルチタネート化合物やポリイソシアネート化合物が挙げられるが、従来、ポリウレタン樹脂の架橋に使用されている公知の架橋剤が好ましいが、特に限定されない。具体的には、例えば、下記のような構造式のポリイソシアネートと他の化合物との付加体などが挙げられる。
【0038】


【0039】
また、中間層を形成する際に、上記したポリヒドロキシポリウレタン樹脂と共に添加剤として、白色顔料を用いてもよい。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛などを使用することができる。中間層に上記したような白色顔料を含有させると、積層する基材シートのギラつき感やムラを隠蔽することができるため、基材の選択の自由度が広がる、といった効果が得られるので好ましい。これら白色顔料の配合比は、質量比でポリヒドロキシポリウレタン樹脂/白色顔料=0.1〜6.0程度が好ましく、より好ましくは0.5〜3.0の範囲である。さらに、従来公知の蛍光増白剤を添加剤としてもよい。蛍光増白剤の配合比は、質量比でポリヒドロキシポリウレタン樹脂/蛍光増白剤=0.001〜0.50程度が好ましく、より好ましくは0.005〜0.20の範囲である。
【0040】
また、本発明においては、中間層を形成する樹脂成分として上述したポリヒドロキシポリウレタン樹脂を単体で使用することが好ましいが、接着性や、塗膜の成膜性の向上といった機能を付与する目的で、従来公知の各種バインダー樹脂を混合して使用してもよい。併用するバインダー樹脂は、上述したポリヒドロキシポリウレタン樹脂と相溶性の高い樹脂が好ましい。また、その使用量は、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の効果を損なわない程度であればよい。
【0041】
中間層は、上記したようなポリヒドロキシポリウレタン樹脂を主成分とする組成物を、グラビア、スクリーン、リバースロールなどの公知の方法で塗布・乾燥することによって容易に形成できる。その塗工量は、0.2〜10.0g/m2程度とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜4.0g/m2である。
【0042】
<染料受容層>
本発明の熱転写受像用シートは、上記のようにして基材上に形成された中間層の上に、さらに染料受容層が積層されてなる。該受容層は、加熱された際に熱転写シートから移行してくる染料を受容し、形成された画像を維持するためのものである。本願発明における受容層を形成するための樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩ビ・酢ビ・ビニルアルコール共重合樹脂、セルロースエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂などが挙げられ、これらは市場から容易に入手できる。
【0043】
上記に列挙した樹脂は一般的に軟化点が低いために、使用する樹脂によっては、画像形成時に発生するサーマルヘッドの熱により、受容層と熱転写シートとが融着を起こす場合もある。このため、より良好な離型性を得る目的で、上記樹脂と共に各種離型剤や離型性樹脂を含有させて受容層を形成するか、又は、上記樹脂により形成した受容層の上にさらに離型層を積層してもよい。
【0044】
上記受容層には、白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高めたり、マット感を得る目的などで、必要に応じて、本技術分野で公知の、例えば、顔料や充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤などの添加剤を用いてもよい。本発明の熱転写受像用シートを構成する染料受容層は、上記した樹脂と共に、必要に応じてこれらの添加剤を適宜に使用し、適当な有機溶剤に溶解させ、或いは有機溶剤や水に分散させて、前記中間層形成の手段と同様の方法で塗布・乾燥することで形成される。形成する受容層の厚さは任意であるが、一般的には1.0〜20.0g/m2とする。
【0045】
本発明の熱転写受像用シートは、上記したような中間層及び受容層を必須とし、必要に応じて受容層の上に離型層が積層されてなるが、これら以外に、印刷性能や画像の耐久性向上やカール防止のため、断熱層やクッション層、さらには接着層やカール防止層をさらに設けてもよい。
【0046】
以上のような構成の本発明の熱転写受像用シートは、特定の中間層を有するため、染料画像の拡散を防止するバリヤー効果や、基材と受容層とを十分に接着することができるので、熱転写に用いた場合に、基材から受容層が剥離するのを有効に防止でき、従来の製品と遜色なく、或いはそれ以上に、画像の保存性に優れ、高濃度及び高解像度の印刷画像の形成が可能なものとなる。また、本発明で中間層に使用する樹脂の合成に用いられる5員環環状カーボネート化合物は、二酸化炭素を製造原料とすることができるため、地球温暖化の原因とされている二酸化炭素の削減の観点からも有用な、従来品では到達できなかった環境対応製品としての熱転写受像用シートの提供が可能になる。
【実施例】
【0047】
次に、具体的な製造例、重合例、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の各例における「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0048】
<製造例1>(5員環環状カーボネート化合物の製造)
攪拌機、温度計、ガス導入管及び還流冷却器を備えた反応容器中に、下記式Aで表される2価エポキシ化合物(エピコート828(商品名)、ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ当量187g/mol)100部、N−メチルピロリドン100部、ヨウ化ナトリウム1.5部を加え均一に溶解させた。
【0049】

【0050】
その後、炭酸ガスを0.5リッター/分の速度でバブリングしながら80℃で30時間加熱攪拌させた。反応終了後、得られた溶液を300部のn−ヘキサン中に300rpmで高速攪拌しながら徐々に添加し、生成した粉末状生成物をフィルターでろ過、更にメタノールで洗浄し、N−メチルピロリドン及びヨウ化ナトリウムを除去した。粉末を乾燥機中で乾燥し、白色粉末の5員環環状カーボネート化合物(1−A)118部(収率95%)を得た。
【0051】
得られた生成物(1−A)の赤外吸収スペクトル(堀場製作所 FT−720)は、910cm-1付近の原料のエポキシ基由来のピークが、生成物ではほぼ消滅し、1,800cm-1付近に原料には存在しない環状カーボネート基のカルボニル基の吸収が確認された。また、生成物の数平均分子量は414(ポリスチレン換算、東ソー;GPC−8220)であった。得られた5員環環状カーボネート化合物(1−A)中には、19%の二酸化炭素が固定化されていた。
【0052】
<重合例1〜3>(ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の製造)
攪拌機、温度計、ガス導入管及び還流冷却器を備えた反応容器を窒素置換し、これに製造例1で得られた5員環環状カーボネート化合物(1−A)に、固形分が35%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGM)を加え均一に溶解した。次に、表1に記載の各アミン化合物を所定当量加え、90℃の温度で10時間攪拌し、アミン化合物が確認できなくなるまで反応させた。得られた3種類のポリヒドロキシポリウレタン樹脂の性状を表1に記載した。
【0053】

【0054】
<比較製造例1>(ポリエステルウレタン樹脂)
下記のようにして、比較例で用いるポリエステルウレタン樹脂を合成した。攪拌機、温度計、ガス導入管及び還流冷却器を備えた反応容器を窒素置換し、平均分子量約2,000のポリブチレンアジペート150部と、1,4−ブタンジオール15部とを、200部のメチルエチルケトン(MEK)と、50部のジメチルホルムアミドからなる混合有機溶剤中に溶解した。その後、60℃でよく攪拌しながら、62部の水添加MDI(メチレンビス(1,4−シクロヘキサン)−ジイソシアネート)を、171部のジメチルホルムアミドに溶解したものを徐々に滴下し、滴下終了後80℃で6時間反応させた。この溶液は固形分35%で3.2MPa・s(25℃)の粘度を有し、水酸基価はゼロであった。また、酸素ガス透過度は、4,380cm3/m2・24h・atm(25℃,65%RH、厚さ25μm)であった。
【0055】
上記において、染料(昇華染料)に対するバリヤー性と評価する目的で、該バリヤー性と相関関係にあるとされている「酸素ガス透過度」を測定した。すなわち、酸素ガス透過度の値が小さい材料ほど、染料拡散防止に優れた中間層の形成が可能であると評価できる。後述するように、各材料の酸素ガス透過度の値と、画像におけるにじみの発生との間には相関がある。なお、「酸素ガス透過度」は、下記の方法で測定した。まず、上記で得た樹脂溶液を、キャストフィルム成型機を用い210℃で成型し、厚みが25μmのフィルムを得た。得られたフィルムの酸素ガス透過度をガス透過率測定器(モダンコントローラ社製MOCON OXTRAN−10/50A)を用いて、25℃,65%RHの条件で測定した。
【0056】
<比較製造例2>(ポリビニルアルコール)
比較例で用いるポリビニルアルコールとして、NM−11(商品名、日本合成化学工業(株)、ケン化度99.0モル%以上)を使用した。このNM−11を温水に溶解し、固形分5%のポリビニルアルコール溶液とした。酸素ガス透過度は0.5cm3/m2・24h・atm(25℃,65%RH、厚さ25μm)であった。
【0057】
<比較製造例3>(酢酸セルロース)
比較例で用いる酢酸セルロースとして、L−20((商品名)、ダイセル化学工業(株))を使用した。L−20を溶媒(アセトン/アノン=1/1)に溶解し、固形分10%の酢酸セルロース溶液とした。酸素ガス透過度は1,820cm3/m2・24h・atm(25℃,65%RH、厚さ25μm)であった。
【0058】
<実施例1〜3、比較例1〜3>
(中間層の作成)
厚さ150μmの合成紙(ユポ・コーポレーション製)を基材として使用し、一方の面に、表2の組成からなる各塗工液を用いて、乾燥後の塗布量がそれぞれ3.0g/m2になるように塗工した後、130℃で4分間乾燥し、各中間層を作成した。
【0059】

【0060】
(熱転写受像用シートの作成)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合(日信化学製 Aタイプ)100部、シリコーン油SF8417(トーレシリコーン製)5部、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製、コロネートL)10部に、メチルエチルケトン/トルエン(=1/1)を加えて固形分が20%になるよう調整し、受容層用塗料とした。この受容層用塗料を、上記で得た各中間層の上に5μmで塗工し、実施例及び比較例の各熱転写受像用シートを得た。
【0061】
<評価>
上記で得た各熱転写受像用シートを用いて、画像濃度、にじみ、接着性、環境対応性について、以下の方法で評価した。
【0062】
(画質濃度)
実施例及び比較例の各熱転写受像用シート上に、ソニー製の昇華型熱転写プリンターCVP−G7を用いて、32階調のグラデーション印画を行った。そして、得られた印画物のそれぞれについて、高濃度階調部の印画濃度を反射型マクベス濃度計(マクベス社製、RD918)にて測定し、下記の基準で評価した。結果を表3に示した。
○;1.8以上
△;1.5以上〜1.8未満
×;1.5未満
【0063】
(にじみ)
画質濃度の評価の際に行ったと同様にして得た。それぞれの印画物を50℃の環境下に1週間放置後、画像のにじみの有無をルーペ(10倍)で観察し、下記の基準で評価した。結果を表3に示した。
○;にじみが全く観察されない
△;にじみがあるが、目視では観察されないレベルである
×;にじみがあり、目視でもにじみが認められる
【0064】
(接着性)
実施例及び比較例の各熱転写受像用シートの中間層及び受容層が塗工された面(染料受容層面)にセロハンテープを張り、1分後に剥離した。そして、染料受容層面及びセロハンテープ面を目視にて観察し、下記の基準で評価した。結果を表3に示した。
○;染料受容層に剥離部分がない
△;一部に染料受容層の剥離が見られる
×;染料受容層が剥離している
【0065】
(環境対応性)
各熱転写受像シートにおける二酸化炭素の固定化の有無により、○×で評価した。結果を表3に示した。
【0066】

【産業上の利用可能性】
【0067】
以上の本発明によれば、特に、昇華型転写方式に使用される熱転写受像用シートとして有用であり、その一方の面に、中間層と受容層とをこの順序で積層し、該中間層がポリヒドロキシポリウレタン樹脂からなることによって、染料画像の拡散を防止するバリヤー効果や、基材及び染料受容層に対する接着性に優れる熱転写受像用シートが提供される。これとともに、中間層の原料に地球温暖化ガスとされている二酸化炭素を利用できるため、地球環境保全の観点からも従来品では到達できなかった環境対応製品としての熱転写受像用シートの提供が可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に、中間層と染料受容層とをこの順に積層した熱転写受像用シートであって、上記中間層が、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を主成分としてなることを特徴とする熱転写受像用シート。
【請求項2】
前記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、その水酸基価が50〜350mgKOH/gである請求項1に記載の熱転写受像用シート。
【請求項3】
前記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導された樹脂である請求項1又は2に記載の熱転写受像用シート。
【請求項4】
前記5員環環状カーボネート化合物が、エポキシ化合物と二酸化炭素との反応物である請求項3に記載の熱転写受像用シート。
【請求項5】
前記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、該樹脂構成中に二酸化炭素を1〜25質量%の範囲で含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱転写受像用シート。
【請求項6】
前記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、樹脂を構成する水酸基と反応する架橋剤で架橋されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱転写受像用シート。
【請求項7】
前記中間層が、白色顔料及び/又は蛍光増白剤を含有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱転写受像用シート。