説明

熱転写受像用紙

【課題】 本発明は基紙の受像層が設けられていない側に、基紙の吸放湿によるカールを防止できる防水層を介して筆記性,印字性,印刷性を有する繊維紙による層を低コストで設けた新たな熱転写受像用紙を提供すること。
【解決手段】 基紙1上に発泡プラスチックフィルム層2を設け、該プラスチックフィルム層2上に受像層3を設けると共に、前記基紙1の受像層3が設けられていない側に防水層5を介して繊維紙層4を設けて成ること。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は熱転写受像用紙に関し、基紙の受像層が設けられていない側に筆記性,印字性,印刷性を有する繊維紙層を設けた熱転写受像用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から発泡プラスチックフィルム層を具備する熱転写受像用紙はよく知られており、このような熱転写受像用紙において、発泡プラスチックフィルムのもつクッション性と平坦性に加え、基紙のもつ剛性により、プリント時の搬送性や受像用紙の熱カールを防止し、また上記基紙の受像層を設けた側と反対側の面に防水層乃至は樹脂層を設けて、基紙の吸放湿による受像用紙のカールを防止する技術は、下記の公報に開示されている。
【0003】即ち、特公平6−84119号公報には、基紙上に発泡プラスチックフィルムを貼合し、このプラスチックフィルム上にインク吸収層を設けて成る感熱転写用受像紙において、基紙の片面にのみ発泡プラスチックフィルムを設けたものは吸放湿により全体がカールしてしまうことがあるため、カール防止のために基紙の発泡プラスチックフィルムを貼合しない面に防水層を設けた感熱転写用受像紙が開示されている。
【0004】また、特開平6−15975号公報には、多孔質プラスチックフィルムの片面にカール防止のための芯材を貼着して基材を形成し、この基材の多孔質プラスチックフィルム側に受容層を設けると共に、上記芯材の多孔質プラスチックフィルムが貼着されていない側にカール防止の補強的役割を果たす樹脂層を設けた被熱転写シートが開示されている。
【0005】更に、特開昭62−198497号公報には、合成紙の片面にカール防止のための芯材を貼着してなる基材の合成紙側に受容層を設けると共に、上記芯材の合成紙が貼着されていない側にカール防止の補強的役割を果たす樹脂層を設けた被熱転写シートが開示されている。
【0006】しかし乍ら、上記従来の熱転写受像用紙における、基紙又は基材のインク吸収層又は受容層が設けられていない側にカールを防止するために設けられた防水層や樹脂層は、いずれも広義の合成樹脂層であるため、これらをエアーナイフコーティング,ロールコーティング,エクストルージョンコーティング等のコーティングやドライラミネート,押出しラミネート等のラミネートにより設けると概してコストが高くなってしまうという問題があった。
【0007】また、上記のように設けられた防水層や樹脂層には、繊維紙のような筆記性や印刷性がないので、これらにインクジェットプリントのような繊維紙の有する印字性や印刷性、或は、筆記性を付与するには、特殊なコーティングを要し、更にコストが掛かってしまうという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、上記従来の熱転写受像用紙における問題点を改良し、基紙の受像層が設けられていない側に、基紙の吸放湿によるカールを防止できる防水層を介して筆記性,印字性,印刷性を有する繊維紙による層を低コストで設けた新たな熱転写受像用紙を提供することをその課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決することを目的としてなされた本発明の構成は、基紙上に発泡プラスチックフィルム層を設け、該プラスチックフィルム層上に受像層を設けると共に、前記基紙の受像層が設けられていない側に防水層を介して繊維紙層を設けて成ることを特徴とするものである。
【0010】上記構成の本発明熱転写受像用紙において、繊維紙層は、防水層を予め基紙側に予め製膜したフィルムを溶融ポリマーの押出しラミネートにより又は樹脂のロールコーティングラミネートにより設けておき、その上に繊維紙を貼合して設けるか、又は予め上記のような方法で防水層が設けられた繊維紙を基紙の受像層が設けられていない側に貼合して設けることができる。また、繊維紙層を、基紙の受像層が設けられていない側に予め製膜したフィルムを用いることなく溶融押出しラミネート方式、ドライラミネート方式、溶融樹脂のロールコーティング方式等で直接設ける場合は、基紙と繊維紙層との接合部における接着剤層が防水層となる。
【0011】なお、本発明熱転写受像用紙において、繊維紙層の厚みを、基紙、又は、基紙と発泡プラスチックフィルム層を合わせたものより相対的に薄くすることで、この繊維紙層自体の吸放湿によるカールを防ぐのである。
【0012】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図により説明する。図1は本発明熱転写受像用紙の一例の断面図である。
【0013】図1において、1は基紙、2はこの基紙1の表面上に設けた発泡プラスチックフィルム層、3はこの発泡プラスチックフィルム層2の上に設けた受像層である。発泡プラスチックフィルム層2と受像層3との間にはプラスチックフィルムや繊維紙、或は、接着強化や色相を変えることを目的とするアンダーコート層などの中間層(図示せず)を設けることもできる。なお、本発明において、基紙1の表面上に発泡プラスチックフィルム層2を設け、また、発泡プラスチックフィルム層2の上に受像層3を設ける方法は、公知の貼合方法やコーティング方法等の技術を利用している。
【0014】4は基紙1の受像層3が設けられていない側に設けた繊維紙層で、防水層5を介して設けられている。
【0015】基紙1には、受像用紙としての感触や搬送時のトラブル防止の点から、受像用紙として求められるコシ(剛性)の強いものを使用するのが好ましく、そのようなものとしてキャストコート紙、アートコート紙、塗工紙、上質紙、化学繊維紙等、一般的に市販されているものを使用することができ、好ましくは、キャストコート紙、アートコート紙等の表面が平滑なものがよい。また、基紙1にはこれら以外にプラスチックフィルムや発泡プラスチックフィルムを用いることもできるが、セルロースに代表される繊維紙を用いるのが望ましい。基紙1の坪量は70〜160g/m2、好ましくは90〜140g/m2である。
【0016】次に、発泡プラスチックフィルム層2には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の合成樹脂中に炭酸カルシウムや酸化チタン等の微細な無機粉末を内添させたものを製膜する際に延伸させることにより発泡させ多孔質状態にした発泡プラスチックフィルムを使用する。本発明において発泡プラスチックフィルムとは、その製法如何を問わず、層内部に多数の気泡やボイドを抱いたプラスチックフィルムをいう。例えば、上記例以外に、発泡剤を用いて発泡させた発泡プラスチックフィルムや発泡ビーズを混入させて発泡させた発泡プラスチックフィルムなどを使用することができるが、コスト及び平坦性の点で、上記延伸法によるものが好ましい。発泡プラスチックフィルムの厚みとしては20〜125μm好ましくは25〜80μmである。
【0017】発泡プラスチックフィルム層2上に設ける受像層3は、例えばバインダー樹脂,分散剤,可塑剤,顔料等から組成されるものであり、発泡プラスチックフィルム層2上に設けるには湿式法や乾式法等の公知の表層形成法を用いることができる。なお、熱転写方式には、熱によってインクを昇華拡散する熱昇華型と、熱によってインクを含むワックスを溶融転写する熱溶融型があって、それぞれ必要とされる受像層表面の特性は異なっており、本発明における受像層3は、発泡プラスチックフィルム層2上に平坦に設ける限り、上記いずれの方式にも適合するものとすることができるが、熱転写時の熱カールが問題となる熱昇華型に用いてより効果を発揮する。
【0018】また、防水層5は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、エチレン−酢酸ビニル等の共重合樹脂のフィルム又は樹脂層等が使用できる。防水層5の厚みは1〜100μm好ましくは5〜80μmである。
【0019】次に、繊維紙層4はその繊維紙の有する筆記性やロールとの摩擦性の機能を発揮するものであり、繊維紙層4となる繊維紙には、上質紙、中質紙、更紙、模造紙、キャストコート紙、アート紙、微塗工紙、薄葉紙、化学パルプ紙等が用いられる。これら以外に筆記性やインクジェットプリントによる印字性,印刷性を有するものであればよく、また、繊維紙層4には用途に合わせた機能を持たせるため、クレープ紙等ファンシーペーパーを使用したり、色紙や印刷された紙、葉書として使用できるように印刷した用紙(切手の位置や郵便番号を記載する欄を予め印刷したもの)などを使用することができる。
【0020】なお、図示していないが、繊維紙層4の非貼着面には、紙捌きや印画面の保護等の取り扱い性を良くするために、また見かけを良くするために、滑り剤の塗布、静電防止剤の塗布、紫外線防止剤・酸化防止剤の添付や塗布、にじみを防止するサイジング剤等の添加や塗布等の処理を施すことができる。
【0021】次に、基紙1に防水層5と繊維紙層4を設ける方法について説明する。
(1)基紙1に防水層5となるプラスチックフィルムを貼合後、繊維紙層4となる繊維紙を貼合する方法・貼合方法は、ドライラミネート、押出しラミネート等公知のフィルムや紙のラミネート方式である。
(2)防水層5となるプラスチックフィルムと繊維紙層4となる繊維紙を貼合したものを基紙1に貼合する方法・貼合方法は上記(1)と同様である。
・この方法では市販のポリラミネート紙、例えば、菓子類の包装に用いられるものや、耐水包装紙が安価に利用できる。
(3)押出しラミネート方式で直接基紙1と繊維紙層4となる繊維紙を貼合する方法・この方法は、工程が1度で済み、予め製膜したフィルムが不要であり、大幅なコストダウンが可能である。
・この方法では、基紙1と繊維紙層4との接合部の接着剤層が防水層となる。
(4)溶融した樹脂をロールコーティング方式で塗布し直接基紙1と繊維紙層4となる繊維紙を貼合する方法・この方法は、ホットメルト接着方式として公知である。
(5)ドライラミネーション方式で基紙1と繊維紙層4となる繊維紙を貼合する方法、・この方法では、低粘度による紙への樹脂の浸透や溶剤等の乾燥付加により上記の方法に比べ、コストが掛かる。
【0022】本発明では、上記の貼合方法を適宜選択して使用することができるが、特に(3)(4)の方法がコストの低減を図ることができ、効果的である。
【0023】
【発明の効果】本発明は以上の通りであって、本発明熱転写受像用紙は、受像層が設けられていない側に繊維紙層を有するため繊維紙の持つ有利な作用により裏面を有効に利用することができる。例えば、受像用紙の裏面は筆記性に優れるため、鉛筆,ボールペン等による筆記ができ、特にインク吸収性があるため筆ペン,水性ペンの筆記性に優れる。また、印刷性に優れ、特に一般紙用のインクで印刷可能となる。更に、現在主流のインクジェットプリンターで印画,印字,印刷も容易に行うことができ、葉書印刷をして葉書として利用できる。
【0024】また、本発明熱転写受像用紙は、機械的印刷性が良く、プリント位置合わせのセンサーマーク等も容易に印刷でき、更に、プリンター内部での搬送性に優れ、熱転写の画質を従来技術並に維持できるという効果もある。
【0025】更に、本発明熱転写受像用紙は、中間の防水層によって基紙の吸放湿によるカールを防止することができ、また、繊維紙層が吸湿しても実用上問題となるカールを生じない。
【0026】加えて、本発明熱転写受像用紙は、繊維紙層となる繊維紙を基紙の受像層が設けられていない側に容易に貼合等して設けることができるので、従来のカール防止のために設けられていた防水層や樹脂層に特殊なコーティング処理を施して筆記性や印字性,印刷性を付与するよりは容易に製造でき、コストを低減することができる。
【0027】次に、本発明熱転写受像用紙の実施例について説明する。
【0028】(実施例)下記組成のものを充分撹拌、分散したものをロールコーターにて乾燥厚み10μmになるよう発泡フィルム上に受像層として設けたものを、以下の実施例で共通して用いることにした。
水分散性ポリエステル樹脂 100重量部 (東洋紡社製:バイロナールMD1200)
シリカ 30重量部 (日本アエロジル社製:アエロジル200)
水 50重量部 尿素系フィラー 10重量部 (日本化成社製:有機フィラーIM−3)
【0029】(実施例1)基紙として米坪127.9gの片面アート紙のアート面に溶融ポリマーとしてポリエチレンを用い、溶融押出しラミネート方式で発泡ポリエステルフィルム50μmを貼合した。又、基紙の反対側に同様の条件で米坪30gの薄葉紙を貼合し、更に発泡ポリエステルフィルムの表面に上記受像層を設け本発明の第一例の受像用紙を得た。このものの両サイドのポリエチレン層の厚みは20μmであった。
【0030】(実施例2)基紙として米坪127.9gの両面アート紙の片面に実施例1と同様に発泡ポリエステルフィルム50μmを貼合した。又、基紙の反対側に実施例1と同様に米坪40.0gの微塗工紙を貼合し、更に発泡ポリエステルフィルムの表面に上記受像層を設け本発明の第二例の受像用紙を得た。このものの両サイドのポリエチレン層の厚みは25μmであった。
【0031】(実施例3)基紙として米坪104.7gの片面アート紙のアート面側に発泡ポリエステルフィルム50μmを貼合した。又、基紙の反対側に実施例1と同様に25μmの透明PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを貼合し、更にその表面にドライラミネート方式でエチレン−酢酸ビニル樹脂を貼材として米坪30gの薄葉紙を貼合した。そして最後に発泡ポリエステルフィルムの表面に上記受像層を設け本発明の第三例の受像用紙を得た。
【0032】(実施例4)基紙として米坪127.9gの片面アート紙のアート面側に実施例1と同様に発泡ポリプロピレンフィルム50μmを貼合しその反対側に米坪30gの薄紙紙を20μmのポリエチレンフィルムの片面にラミネートしたポリエチレンラミネート紙を紙が外面にくるように実施例3と同様にドライラミネート方式で基紙に貼合した。そして発泡ポリプロピレンフィルム上に上記受像層を設け本発明の第四例の受像用紙を得た。
【0033】(実施例5)基紙として米坪157gの片面アート紙のアート面側に実施例1と同様に発泡ポリプロピレンフィルム20μmを貼合し、基紙の反対側にロールコーターを用いたホットメルト方式にてエチレン−酢酸ビニル樹脂を貼材として乾燥坪量30gになるよう米坪30gの薄葉紙を貼合した。そして発泡ポリプロピレンフィルム上に上記受像層を設け本発明の第五例の受像用紙を得た。
【0034】(実施例6)実施例3において透明PETフィルムを基紙に貼合する際、溶融押出しラミネートの代わりにPETフィルム片面に予めホットメルト処理を施し熱ロールをとおすことにより接着貼合させ本発明の第六例の受像用紙を得た。
【0035】(比較例1)実施例1の米坪30gの薄葉紙を貼合する方式において、溶融押出し方式の代わりに貼材としてエチレン−酢酸ビニル樹脂を乾燥坪量5gになるようにドライラミネート方式を用いて貼合し受像用紙を得た。
【0036】(比較例2)実施例1において米坪30gの微塗工紙を貼合せず、貼材であるポリエチレンのみを溶融押出し方式で受像層と反対側のアート紙面上にラミネートして受像用紙を得た。
【0037】(比較例3)実施例3において透明ポリエステルフィルム上に米坪30gの薄葉紙を貼合しない状態で受像用紙を得た。
【0038】(比較例4)実施例1において米坪30gの微塗工紙の代わりに米坪64gの微塗工紙を貼合して受像用紙を得た。
【0039】実施例1〜6、比較例1〜4を、次の表1の下欄に記載した(1)〜(3)の3水準の環境下で、72時間放置した状態でのカールの測定結果、及び受像用紙裏面の鉛筆・水性ペンでの筆記性を表1に示す。
【0040】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明熱転写受像用紙の一例の断面図。
【符号の説明】
1 基紙
2 発泡プラスチックフィルム層
3 受像層
4 繊維紙層
5 防水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基紙上に発泡プラスチックフィルム層を設け、該プラスチックフィルム層上に受像層を設けると共に、前記基紙の受像層が設けられていない側に防水層を介して繊維紙層を設けて成ることを特徴とする熱転写受像用紙。
【請求項2】 防水層は、溶融ポリマーの押出しラミネートにより設けた請求項1の熱転写受像用紙。
【請求項3】 防水層は、樹脂のロールコーティングにより設けた請求項1の熱転写受像用紙。
【請求項4】 繊維紙層は、溶融押出しラミネート方式により基紙の受像層が設けられていない側に予め製膜したフィルムを用いることなく設けた請求項1の熱転写受像用紙。

【図1】
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【公開番号】特開2000−255173(P2000−255173A)
【公開日】平成12年9月19日(2000.9.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−60692
【出願日】平成11年3月8日(1999.3.8)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】