説明

熱転写媒体の製造方法

【課題】 熱転写媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】1)基材上に、還元性高分子微粒子及び熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布して塗膜層を形成するか、又は、基材上に、導電性高分子微粒子及び熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布し続いて導電性高分子微粒子を還元性にする脱ドープ処理して塗膜層を形成する工程、
2)前記塗膜層上に、無電解めっき液から化学めっきして金属めっき膜を形成するか、又は、無電解めっき液から化学めっきし次いでその上に更に電気めっきして金属めっき膜を形成する工程、及び
3)前記金属めっき膜上に、接着層を形成する工程
を含む熱転写媒体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた転写性を有し且つ形成された印像における金属めっき膜の防錆性に優れる、金属からなる印像を形成するための熱転写媒体の、簡易な操作による製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱転写媒体として、金属からなる印像を形成するための媒体が既に報告されている。
例えば、特許文献1(特開2008−110534号公報)には、基材上に転写制御層、離型層、アンカー層、金属蒸着層及び接着層がこの順番で積層された構成を有する熱転写媒体が記載されている。
そして、特許文献1には、上記熱転写媒体が、熱転写を意図しない領域まで熱転写されてしまう面状剥離を起こすことなく、被転写体に熱転写できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−110534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、引用文献1に記載の熱転写媒体を用いて、被転写体に熱転写して金属からなる印像を形成したところ、転写された層(蒸着アンカー層、金属蒸着層及び接着層からなる)は、金属蒸着層の防錆性において十分な性能を有するものではなかった。
これは、金属蒸着層の支持層として、或いは着色層として機能する蒸着アンカー層が、防錆層としては不十分な機能しか有さないことによるものと考えられた。
上記問題を解決するために、金属蒸着層の表面に、新たな防錆層を設ける等の更なる防錆処理を行うことも考えられるが、そうすると、製造工程が煩雑になることに加えて、製造コストが高くなるという新たな問題を生じることになる。
従って、本発明は、優れた転写性を有し且つ形成された印像における金属めっき膜の防錆性に優れる、金属からなる印像を形成するための熱転写媒体の、簡易な操作による製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、基材上に、還元性高分子微粒子及び熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布して塗膜層を形成するか、又は、基材上に、導電性高分子微粒子及び熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布して塗膜層を形成した後、該塗膜層中の導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して還元性とし、形成された塗膜層上に、無電解めっき液から金属膜を化学めっきして金属めっき膜を形成するか、又は、無電解めっき液から金属膜を化学めっきした後、該金属膜上に電気めっきして金属めっき膜を形成し、形成された金属めっき膜上に、接着層を形成するという簡易な操作で製造された熱転写媒体が、該媒体を用いて被転写体に熱転写して金属からなる印像を形成させた場合、基材表面に塗膜層が残存することなく剥離できる優れた転写性を示し、且つ、形成された印像は、その金属めっき膜の防錆性において優れた性能を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は、
(1)
1)基材上に、還元性高分子微粒子及び熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布して塗膜層を形成
するか、又は、基材上に、導電性高分子微粒子及び熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布し続いて導電性高分子微粒子を還元性にする脱ドープ処理して塗膜層を形成する工程、
2)前記塗膜層上に、無電解めっき液から化学めっきして金属めっき膜を形成するか、又は、無電解めっき液から化学めっきし次いでその上に更に電気めっきして金属めっき膜を形成する工程、及び
3)前記金属めっき膜上に、接着層を形成する工程
を含む熱転写媒体の製造方法、
(2)前記塗膜層の厚みが0.02μmないし30μmである前記(1)記載の製造方法、
(3)前記熱可塑性樹脂の流動開始点が、60℃ないし140℃である前記(1)又は(2)記載の製造方法、
(4)前記塗料が無機系フィラーを含む前記(1)ないし(3)の何れか1つに記載の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法により、簡易な操作で、即ち、基材上に塗料を塗布して塗膜層を形成し、該塗膜層上に金属めっき膜を形成し、該金属めっき膜上に接着層を形成するだけで、金属からなる印像を形成し得る熱転写媒体を得ることができる。
また、得られた熱転写媒体は、熱転写して金属からなる印像を形成させた場合、優れた転写性を示し且つ形成された金属からなる印像は優れた防錆性を示す。
特に、本発明における塗膜層は、本来、無電解めっきを形成させるための下地層として機能するものであるが、熱転写して金属からなる印像を形成させた場合には、金属めっき膜を腐食から守る保護層としても機能するため、非常に有用且つ効率的である。
【0008】
上記のように、熱転写により形成される印像は、金属めっき膜上に保護層としての塗膜層が存在することにより、優れた防錆性を示すものであるが、何故、優れた防錆性を示し得るのかに付いての機構は必ずしも明確ではない。
しかし、上記機構は、例えば以下のように考えることで説明することが可能である。
基材上に形成された塗膜層は、該層上に無電解めっき法による金属めっき膜を形成するために、塩化パラジウム等の触媒金属を含む触媒液で処理されるが、この際、塗膜層の表面付近に存在する還元性高分子微粒子は、パラジウム等の触媒金属の付着により導電性となる。
一方、塗膜層の内部には、還元性のまま維持される高分子微粒子がある程度残存することが想定され、この残存した還元性高分子微粒子は、熱転写して金属からなる印像を形成した、即ち、塗膜層が金属めっき膜を覆う表面の層となった際に、この表面の層(塗膜層)の表面側に存在することになり、そして該微粒子の還元性により金属めっき膜が表面側から酸化されるのを防ぎ、その結果として優れた防錆性が示されたものと考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の製造方法により得られる熱転写媒体を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
更に詳細に本発明を説明する。
本発明の熱転写媒体の製造方法は、
1)基材上に、還元性高分子微粒子及び熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布して塗膜層を形成するか、又は、基材上に、導電性高分子微粒子及び熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布し続いて導電性高分子微粒子を還元性にする脱ドープ処理して塗膜層を形成する工程、
2)前記塗膜層上に、無電解めっき液から化学めっきして金属めっき膜を形成するか、又
は、無電解めっき液から化学めっきし次いでその上に更に電気めっきして金属めっき膜を形成する工程、及び
3)前記金属めっき膜上に、接着層を形成する工程
を含む。
【0011】
前記工程1)で使用し得る基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等から形成されるフィルム又はシート等が挙げられる。
基材の厚さは、5ないし200μmの範囲となるものが好ましく、12ないし50μmの範囲となるものがより好ましい。
【0012】
前記工程1)に記載の塗膜層は、基材上に、還元性高分子微粒子及び熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布することにより形成することができる。
上記塗料に含まれる還元性高分子微粒子としては、0.01S/cm未満の導電率を有するπ−共役二重結合を有する高分子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。
また、還元性高分子微粒子としては、0.005S/cm以下の導電率を有する高分子微粒子が好ましい。
還元性高分子微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる還元性高分子微粒子を使用することもできる。
還元性高分子微粒子は、有機溶媒に分散された分散液として使用されるが、該還元性高分子微粒子は、分散液中における分散安定性を維持するために、固形分として該分散液の質量の15質量%以下(固形分比)となるようにするのが好ましい。
【0013】
還元性高分子微粒子を分散する有機溶媒としては、例えば、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n−オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、メタノール、エタノール、n−オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0014】
上記塗料に含まれる熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
【0015】
好ましい熱可塑性樹脂としては、流動開始点が60℃ないし140℃である熱可塑性樹脂が挙げられる。
流動開始点が60℃未満であると、本来熱転写を意図しない領域まで熱転写されてしまうことがあり、逆に、流動開始点が140℃を超えると、熱転写時に金属めっき膜と接着層間で剥離することがある。
使用する熱可塑性樹脂の量は、還元性高分子微粒子1質量部に対して0.1質量部ないし60質量部の範囲とするのが好ましい。熱可塑性樹脂が60質量部を超えると金属めっきが析出しにくくなる場合があり、熱可塑性樹脂が0.01質量部未満であると、塗膜層と金属めっき膜間で、十分な密着性が得られにくくなる場合がある。
【0016】
上記塗料には、無機系フィラーを添加することもできる。
この無機系フィラーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン及びシリカ粒子等が挙げられる。
無機系フィラーとしては、平均1次粒子径が1ないし100nmの範囲となるものが好ましい。
無機系フィラーを使用する際の使用量は、特に、限定されるものではないが、バインダー1質量部に対して0.1ないし1.5質量部の範囲とするのが好ましい。
無機系フィラーの使用量が、バインダー1質量部に対して1.5質量部を超える場合、基材と塗膜層間での剥離が起こり易くなり、良好な密着性が得られ難くなることがあり、また、0.1質量部未満となる場合、金属めっきが析出しにくくなることがある。
【0017】
上記塗料は、上記成分に加えて溶媒を含み得る。
溶媒としては、特に限定されるものではないが、具体的には、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n−オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、メタノール、エタノール、n−オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類及びこれらの混合物等が挙げられる。
また、メチルセルソルブ等の多価アルコール誘導体溶媒、ミネラルスピリット等の炭化水素溶媒、ジヒドロターピネオール、D−リモネン等のテルペン類に分類される溶媒を用いることもできる。
【0018】
更に、上記塗料は用途や塗布対象物等の必要に応じて、分散安定剤、増粘剤、インキバインダ等の樹脂を加えることも可能である。
【0019】
上記で調製した塗料を基材上に塗布し、必要に応じて加熱乾燥することにより、塗膜層を形成することができる。
基材への塗布方法は特に限定されず、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、ドライオフセット印刷、パッド印刷、インクジェット印刷、ディッピング、スピンコーター、ロールコーター等により印刷またはコーティングすることができる。
尚、上記塗料を、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、ドライオフセット印刷、パッド印刷等によりパターン印刷する場合は、上記塗料の粘度を50cps以上とすることが好ましい。
【0020】
上述の方法により、上記工程1)における塗膜層が形成される。
得られる塗膜層の厚みは、0.02μmないし30μmとするのが好ましい。
塗膜層の厚みが0.02μm未満であると、所望の防錆性が得られ難くなることがあり、逆に、塗膜層の厚みが30μmを超えると、塗膜層と金属めっき膜との密着性が得られ難くなることがあり、場合によっては塗膜層と金属めっき膜間で剥離してしまうこともある。
【0021】
前記工程1)に記載の塗膜層はまた、基材上に、導電性高分子微粒子及び熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布し続いて導電性高分子微粒子を還元性にする脱ドープ処理することによっても形成することができる。
【0022】
上記導電性高分子微粒子としては、導電性を有するπ−共役二重結合を有する高分子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれ
らの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。
導電性高分子微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる導電性高分子微粒子を使用することもできる。
導電性高分子微粒子は、有機溶媒に分散された分散液として使用されるが、該導電性高分子微粒子は、分散液中における分散安定性を維持するために、固形分として該分散液の質量の15質量%以下(固形分比)となるようにするのが好ましい。
【0023】
導電性高分子微粒子を分散する有機溶媒としては、前述の還元性高分子微粒子を分散する有機溶媒と同様のものを用いることができる。
上記塗料における導電性高分子微粒子以外の成分の種類、添加量等は、前述の還元性高分子微粒子を含む塗料と同様であり、即ち、上記の導電性高分子微粒子を含む塗料は、上述の還元性高分子微粒子を含む塗料における還元性高分子微粒子を導電性高分子微粒子に置き換える以外は、上述の還元性高分子微粒子を含む塗料と同様にして調製することができる。
また、導電性高分子微粒子を含む塗料を用いる塗膜層の形成方法も、上述の還元性高分子微粒子を含む塗料を用いた場合と同様にして行うことができる。
得られる塗膜層の厚みも同様に、0.02μmないし30μmとするのが好ましい。
塗膜層の厚みが0.02μm未満であると、所望の防錆性が得られ難くなることがあり、逆に、塗膜層の厚みが30μmを超えると、塗膜層と金属めっき膜との密着性が得られ難くなることがあり、場合によっては塗膜層と金属めっき膜間で剥離してしまうこともあるからである。
【0024】
塗膜層中の導電性高分子微粒子の脱ドープ処理としては、還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、トリエチルアミンボラン等のアルキルアミンボラン、及び、ヒドラジン等を含む溶液で処理して還元する方法、又は、アルカリ性溶液で処理する方法が挙げられる。
【0025】
操作性及び経済性の観点からアルカリ性溶液で処理するのが好ましい。
特に、導電性高分子微粒子を含む塗膜層は比較的薄いものであるため、緩和な条件下で短時間のアルカリ処理により脱ドープを達成することが可能である。
例えば、1M 水酸化ナトリウム水溶液中で、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃の温度で、1ないし30分間、好ましくは3ないし10分間処理することで達成し得る。
【0026】
前記工程2)において、前記工程1)で形成された塗膜層上に金属めっき膜が形成される。
前記金属めっき膜は、無電解めっき液から金属膜を化学めっきして形成された金属めっき膜であるか、又は、無電解めっき液から化学めっきし次いでその上に更に電気めっきして形成された金属めっき膜である。
【0027】
無電解めっき液から金属膜を化学めっきして金属めっき膜を形成する方法は、通常知られた方法に従って行うことができる。
即ち、前記基材を塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬した後、水洗等を行い、無電解めっき浴に浸漬することにより無電解めっき膜を設けることができる。
【0028】
触媒液は、無電解めっきに対する触媒活性を有する貴金属(触媒金属)を含む溶液であり、触媒金属としては、パラジウム、金、白金、ロジウム等が挙げられ、これら金属は単体でも化合物でもよく、触媒金属を含む安定性の点からパラジウム化合物が好ましく、そ
の中でも塩化パラジウムが特に好ましい。
好ましい、具体的な触媒液としては、0.05%塩化パラジウム−0.005%塩酸水溶液(pH3)が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、0.1ないし20分、好ましくは、1ないし10分である。
上記の操作により、少なくとも塗膜層の表面付近に存在する還元性高分子微粒子は、結果的に、導電性高分子微粒子となる。
【0029】
上記で処理された基材は、金属を析出させるためのめっき液に浸され、これにより無電解めっき膜が形成される。
めっき液としては、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば、特に限定されない。
即ち、無電解めっきに使用できる金属、銅、金、銀、ニッケル等、全て適用することができるが、銅が好ましい。
無電解銅めっき浴の具体例としては、例えば、ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)、スルカップELC−SP浴(上村工業(株)社製)等が挙げられる。
処理温度は、20ないし70℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、1ないし60分、好ましくは、5ないし15分である。
得られためっき物は、使用した基材のTgより低い温度範囲において、数時間以上、例えば、2時間以上養生するのが好ましい。
形成される無電解めっき膜の厚さは、100ないし2000nmの範囲とするのが好ましく、200ないし500nmの範囲とするのがより好ましい。
【0030】
上記の無電解めっき法で形成された金属膜上に、電気めっきして金属めっき膜を形成する方法は、通常この分野で採用されている電気めっき法に従って行うことができる。
尚、電気めっきに用いる金属の種類は、無電解めっきで使用した金属の種類と同一であってもよく、また異なっていてもよい。
無電解めっきによる金属膜上に、電気めっきにより金属膜を形成する際の、電気めっきによる金属膜の厚さは、例えば、1ないし100μmの範囲である。
【0031】
前記工程3)において、前記工程2)で形成された金属めっき膜上に接着層が形成される。
上記接着層は接着剤樹脂を主成分とするものである。
この接着層の接着剤樹脂としては、たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、石油系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂などの1種の樹脂または2種以上の樹脂混合物が挙げられる。
【0032】
前記接着層は前記接着剤樹脂を適宜の溶剤(水を含む)に溶解または分散し、必要に応じてこれに粒子を分散したものを金属めっき膜上に塗布、乾燥することによって形成できる。
接着層の塗布量は0.2〜1g/m2程度が適当である。
【0033】
前記工程1)ないし3)を行うことにより、熱転写媒体が製造されることになるが、この熱転写媒体1は、例えば、模式的な断面図である図1で示されるように、基材2上に、塗膜層3が形成され、該塗膜層上に金属めっき膜4が形成され、該金属めっき膜上に接着層5が形成される。
本発明の製造方法により得られる熱転写媒体の塗膜層における還元性高分子微粒子は、無電解めっきを行った際に、塗膜層の表面付近に存在したものは導電性になると考えられ
るものの、塗膜層の内部に存在するものの一部は、還元性のまま維持されることが期待される。
そのため、得られる熱転写媒体は、a)基材、b)還元性高分子微粒子、導電性高分子微粒子及び熱可塑性樹脂を含む塗膜層、c)金属めっき膜、並びに、d)接着層の順に積層されたものになると考えられる。
そして、得られる熱転写媒体は、上記積層構造を有することにより、該媒体を用いて被転写体に熱転写して金属からなる印像を形成させた場合、優れた転写性を示し、且つ、形成された印像は、その金属めっき膜の防錆性において優れた性能を示すことになると考えられるものである。
【0034】
以下に、塗膜層を形成するために使用され得る導電性又は還元性の高分子微粒子を製造するための具体的な方法を記載する。
【0035】
(1)還元性高分子微粒子の製造方法
還元性高分子微粒子は、有機溶媒と水とアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤とを混合撹拌してなるO/W型の乳化液中に、π−共役二重結合を有するモノマーを添加し、該モノマーを酸化重合することにより製造することができる。
【0036】
π−共役二重結合を有するモノマーとしては、還元性高分子を製造するために使用されるモノマーであれば特に限定されないが、例えば、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール及び3−フェニルナフチルアミノピロール等のピロール誘導体、アニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン、m−エトキシアニリン、p−エトキシアニリン、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン及びp−メチルアニリン等のアニリン誘導体、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−n−ブチルチオフェン、3−n−ペンチルチオフェン、3−n−ヘキシルチオフェン、3−n−ヘプチルチオフェン、3−n−オクチルチオフェン、3−n−ノニルチオフェン、3−n−デシルチオフェン、3−n−ウンデシルチオフェン、3−n−ドデシルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ナフトキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等のチオフェン誘導体が挙げられ、好ましくは、ピロール、アニリン、チオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等が挙げられ、より好ましくはピロールが挙げられる。
【0037】
また前記製造に用いるアニオン系界面活性剤としては、種々のものが使用できるが、疎水性末端を複数有するもの(例えば、疎水基に分岐構造を有するものや、疎水基を複数有するもの)が好ましい。このような疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤を使用することにより、安定したミセルを形成させることができ、重合後において水相と有機溶媒相との分離がスムーズであり、有機溶媒相に分散した還元性高分子微粒子が入手し易い。
疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤の中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適に使用できる。
【0038】
反応系中でのアニオン系界面活性剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対し0.05mol未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.005mol〜0.03molである。0.05mol以上では添加したアニオン性界面活性剤がドーパントとして作用し、得られる微粒子は導電性を発現するため、これを用いて無電解めっきを行うためには脱ドープの工程が必要となる。
【0039】
ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、アルキルグルコシド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビダン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が挙げられる。これらを一種類または複数混ぜて使用してもよい。特に安定的にO/W型エマルションを形成するものが好ましい。
【0040】
反応系中でのノニオン系界面活性剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対し、アニオン系界面活性剤と足して0.2mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.15molである。0.05mol未満では収率や分散安定性が低下し、一方、0.2mol以上では重合後において、水相と有機溶媒相との分離が困難になり、有機溶媒相にある還元性高分子微粒子を得る事ができなくなる事から好ましくない。
【0041】
前記製造において乳化液の有機相を形成する有機溶媒は疎水性であることが好ましい。なかでも、芳香族系の有機溶媒であるトルエンやキシレンは、O/W型エマルションの安定性およびπ−共役二重結合を有するモノマーとの親和性の観点から好ましい。両性溶媒でもπ−共役二重結合を有するモノマーの重合を行うことはできるが、生成した還元性高分子微粒子を回収する際の有機相と水相との分離が困難になる。
【0042】
乳化液における有機相と水相との割合は、水相が75体積%以上であることが好ましい。水相が20体積%以下ではπ−共役二重結合を有するモノマーの溶解量が少なくなり、生産効率が悪くなる。
【0043】
前記製造で使用する酸化剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸およびクロロスルホン酸のような無機酸、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルナフタレンスルホン酸のような有機酸、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよび過酸化水素のような過酸化物が使用できる。これらは単独で使用しても、二種類以上を併用してもよい。塩化第二鉄等のルイス酸でもπ−共役二重結合を有するモノマーを重合できるが、生成した粒子が凝集し、微分散できない場合がある。特に好ましい酸化剤は、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
【0044】
反応系中での酸化剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対して0.1mol以上、0.8mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6molである。0.1mol未満ではモノマーの重合度が低下し、ポリマー微粒子を分液回収することが困難になり、一方、0.8mol以上では凝集してポリマー微粒子の粒径が大きくなり、分散安定性が悪化する。
【0045】
前記ポリマー微粒子の製造方法は、例えば以下のような工程で行われる:
(a)アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、有機溶媒および水を混合攪拌し乳化液を調製する工程、
(b)π−共役二重結合を有するモノマーを乳化液中に分散させる工程、
(c)モノマーを酸化重合させる工程、
(d)有機相を分液しポリマー微粒子を回収する工程。
【0046】
前記各工程は、当業者に既知である手段を利用して行うことができる。例えば、乳化液の調製時に行う混合攪拌は、特に限定されないが、例えばマグネットスターラー、攪拌機、ホモジナイザー等を適宜選択して行うことができる。また重合温度は0〜25℃で、好ましくは20℃以下である。重合温度が25℃を越えると副反応が起こるので好ましくない。
【0047】
酸化重合反応が停止されると、反応系は有機相と水相の二相に分かれるが、この際に未反応のモノマー、酸化剤および塩は水相中に溶解して残存する。ここで有機相を分液回収し、イオン交換水で数回洗浄すると、有機溶媒に分散した還元性高分子微粒子を入手することができる。
【0048】
上記の製造法により得られるポリマー微粒子は、主としてπ−共役二重結合を有するモノマー誘導体のポリマーよりなり、そしてアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を含む微粒子である。そしてその特徴は、微細な粒径を有し、有機溶媒中で分散可能であることである。
ポリマー微粒子は球形の微粒子となるが、その平均粒径は、10〜100nmとするのが好ましい。
上記のように平均粒径の小さな微粒子にすることで、微粒子の表面積が極めて大きくなり、同一質量の微粒子でも、より多くの触媒金属を吸着できるようになり、それにより塗膜層の薄膜化が可能となる。
得られたポリマー微粒子の導電率は0.01S/cm未満であり、好ましくは、0.005S/cm以下である。
【0049】
こうして得られた有機溶媒に分散した還元性高分子微粒子は、そのままで、下地塗料の還元性高分子微粒子成分として使用することができる。
【0050】
(2)導電性高分子微粒子の製造方法
使用する導電性高分子微粒子は、例えば、有機溶媒と水とアニオン系界面活性剤とを混合撹拌してなるO/W型の乳化液中に、π−共役二重結合を有するモノマーを添加し、該モノマーを酸化重合することにより製造することができる。
【0051】
π−共役二重結合を有するモノマー及びアニオン系界面活性剤としては還元性微粒子の製造の際に例示したものと同様のものが挙げられるが、好ましくは、ピロール、アニリン、チオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等が挙げられ、より好ましくはピロールが挙げられる。
【0052】
反応系中でのアニオン系界面活性剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対し0.2mol未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.05mol〜0.15molである。0.05mol未満では収率や分散安定性が低下し、一方、0.2mol以上では得られた導電性高分子微粒子に導電性の湿度依存性が生じてしまう場合がある。
【0053】
前記製造において乳化液の有機相を形成する有機溶媒は疎水性であることが好ましい。なかでも、芳香族系の有機溶媒であるトルエンやキシレンは、O/W型エマルションの安定性およびモノマーとの親和性の観点から好ましい。両性溶媒でもπ−共役二重結合を有するモノマーの重合を行うことはできるが、生成した導電性高分子微粒子を回収する際の有機相と水相との分離が困難になる。
【0054】
乳化液における有機相と水相との割合は、水相が75体積%以上であることが好ましい。水相が20体積%以下ではπ−共役二重結合を有するモノマーの溶解量が少なくなり、生産効率が悪くなる。
【0055】
前記製造で使用する酸化剤としては、還元性微粒子の製造の際に例示したものと同様のものが挙げられるが、特に好ましい酸化剤は、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
反応系中での酸化剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対して0.1mol以上、0.8mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6molである。0.1mol未満ではモノマーの重合度が低下し、導電性高分子微粒子を分液回収することが困難になり、一方、0.8mol以上では凝集して導電性高分子微粒子の粒径が大きくなり、分散安定性が悪化する。
【0056】
前記導電性高分子微粒子の製造方法は、例えば以下のような工程で行われる:
(a)アニオン系界面活性剤、有機溶媒および水を混合攪拌し乳化液を調製する工程、
(b)π−共役二重結合を有するモノマーを乳化液中に分散させる工程、
(c)モノマーを酸化重合しアニオン系界面活性剤にポリマー微粒子を接触吸着させる工程、
(d)有機相を分液し導電性高分子微粒子を回収する工程。
【0057】
前記各工程は、当業者に既知である手段を利用して行うことができる。例えば、乳化液の調製時に行う混合攪拌は、特に限定されないが、例えばマグネットスターラー、攪拌機、ホモジナイザー等を適宜選択して行うことができる。また重合温度は0〜25℃で、好ましくは20℃以下である。重合温度が25℃を越えると副反応が起こるので好ましくない。
【0058】
酸化重合反応が停止されると、反応系は有機相と水相の二相に分かれるが、この際に未反応のモノマー、酸化剤および塩は水相中に溶解して残存する。ここで有機相を分液回収し、イオン交換水で数回洗浄すると、有機溶媒に分散した導電性高分子微粒子を入手することができる。
【0059】
上記の製造法により得られる導電性高分子微粒子は、主としてπ−共役二重結合を有するモノマー誘導体よりなり、そしてアニオン系界面活性剤を含む微粒子である。そしてその特徴は、微細な粒径と、有機溶媒中で分散可能であることである。
ポリマー微粒子は球形の微粒子となるが、その平均粒径は、10〜100nmとするのが好ましい。
上記のように平均粒径の小さな微粒子にすることで、微粒子の表面積が極めて大きくなり、同一質量の微粒子でも、脱ドープ処理して還元性とした際に、より多くの触媒金属を吸着できるようになり、それにより塗膜層の薄膜化が可能となる。
【0060】
こうして得られた有機溶媒に分散した導電性高分子微粒子は、そのままで、塗料の導電性高分子微粒子成分として使用することができる。
【実施例】
【0061】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
製造例1:還元性ポリピロール微粒子分散液の調製
アニオン性界面活性剤ペレックスOT−P(花王株式会社)0.42mmol、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系ノニオン界面活性剤エマルゲン409P(花王株式会社)2.1mmol、トルエン10mL、イオン交換水100mLを加えて20℃に保持しつつ乳化するまで撹拌した。得られた乳化液にピロールモノマー21.2mmolを加え、1
時間撹拌し、次いで過硫酸アンモニウム6mmolを加えて2時間重合反応を行った。反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエンに分散した還元性能を有する還元性ポリピロール微粒子を得た。尚、得られたトルエン分散液中の還元性ポリピロール微粒子の固形分は、5.0%であった。
【0062】
製造例2:塗料の調製
熱可塑性樹脂:ニチゴーポリエスターLP035S50T0(ポリエステル系樹脂、流動開始点:83℃、日本合成化学工業株式会社製)と無機系フィラー:粉末シリカ AEROSIL(アエロジル)200(日本アエロジル株式会社製)とを固形分比(質量比)が熱可塑性樹脂:無機系フィラー=4:1となるように配合し、プレ攪拌後、3本ロールミルにて無機系フィラーを熱可塑性樹脂中に分散させた。
次に製造例1で調製した還元性ポリピロール微粒子分散液(固形分5%)に、前記で調製した熱可塑性樹脂及び無機系フィラーを含む分散液を、固形分比(質量比)が還元性高分子微粒子:熱可塑性樹脂:無機系フィラー=1:4:1となるように配合し、攪拌、脱泡を行うことにより塗料を得た。
【0063】
実施例1
基材として、厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、該基材上に、製造例2で調製した塗料を、グラビア印刷機にて印刷し、印刷後、100℃の熱風オーブンで10分間加熱乾燥を行って、膜厚が3μmの塗膜層が形成されたフィルムを得た。
【0064】
続いて、上記で製造した塗膜層が形成されたフィルムを、0.05%塩化パラジウム−0.005%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬後、洗浄水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴 スルカップELC−SP浴(上村工業株式会社製)に60℃で30分間浸漬すことにより、塗膜層が設けられた部分にのみ銅めっきが施されためっきフィルムを得た。
その後、上記で得られためっきフィルムをさらに電気めっきし、銅厚25μmの金属めっき膜を形成した。
【0065】
続いて、下記組成の接着層用塗工液を金属めっき膜上に塗布・乾燥して接着層を形成することにより、熱転写媒体を得た。
[接着層用塗工液]
(1)アクリル樹脂: 8部
(2)シリカ : 2部
(3)トルエン :90部
【0066】
実施例2
塗膜層の厚みを30μmとした以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、熱転写媒体を得た。
【0067】
実施例3
塗膜層の厚みを0.02μmとした以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、熱転写媒体を得た。
【0068】
実施例4
塗膜層における熱可塑性樹脂をニチゴーポリエスターTP236(ポリエステル系樹脂、流動開始点:125℃、日本合成化学工業株式会社製)とした以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、熱転写媒体を得た。
【0069】
実施例5
塗膜層における熱可塑性樹脂をニチゴーポリエスターLP011(ポリエステル系樹脂、流動開始点:65℃、日本合成化学工業株式会社製)とした以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、熱転写媒体を得た。
【0070】
比較例1
特開2008−110534号公報の実施例1に記載の製造方法に従って、基材上に、転写制御層、離型層、アンカー層、金属蒸着層、接着層を積層した熱転写媒体を製造した。
【0071】
試験例1
実施例1〜5及び比較例1で製造した熱転写媒体の転写性及び防錆性を評価して表1に示した。
尚、各評価方法は以下に示した通りである。
評価方法
<転写性>
実施例1〜5及び比較例1で製造した熱転写媒体をホットスタンプにて150℃に加熱し、それを被着体(転写基材)へ貼り付け、基材を剥がし、転写体(実施例1〜5:接着層、金属めっき膜及び塗膜層、比較例1:接着層、金属蒸着層及びアンカー層)を被着体へ転写し、その時の剥離状態を評価した。
○:塗膜層(又はアンカー層)が残存することなく剥離できた。
×:剥離した際、塗膜層(又はアンカー層)が残存した。
<防錆性>
実施例1〜5及び比較例1で製造した熱転写媒体を、150℃の条件下で3時間放置し、外観の評価を行った。
○:金属表面において、腐食が認められなかった。
×:金属表面において、腐食が確認された。
【表1】

【0072】
結果:本発明の実施例1〜5の熱転写媒体は、優れた転写性と優れた防錆性を示したのに対して、比較例1の熱転写媒体は、防錆性において劣るものであった。
【符号の説明】
【0073】
1:熱転写媒体
2:基材
3:塗膜層
4:金属めっき膜
5:接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)基材上に、還元性高分子微粒子及び熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布して塗膜層を形成するか、又は、基材上に、導電性高分子微粒子及び熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布し続いて導電性高分子微粒子を還元性にする脱ドープ処理して塗膜層を形成する工程、
2)前記塗膜層上に、無電解めっき液から化学めっきして金属めっき膜を形成するか、又は、無電解めっき液から化学めっきし次いでその上に更に電気めっきして金属めっき膜を形成する工程、及び
3)前記金属めっき膜上に、接着層を形成する工程
を含む熱転写媒体の製造方法。
【請求項2】
前記塗膜層の厚みが0.02μmないし30μmである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂の流動開始点が、60℃ないし140℃である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記塗料が無機系フィラーを含む請求項1ないし3の何れか1項に記載の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−224835(P2011−224835A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95317(P2010−95317)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】