説明

熱転写機の転写ロール

【目的】 異形断面形状を有する被転写物でも転写箔が均一に密接し、美麗に転写できる熱転写機の転写ロールを提供するにある。
【構成】 ロール軸1に耐熱性弾性材からなるロール本体3が嵌合された熱転写機の転写ロールにおいて、ロール本体3がスプリング5の復元力によりロール軸1の軸方向に圧縮されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱転写機の転写ロールに関し、詳しくは、ロール軸に耐熱性弾性材からなるロール本体が嵌合された熱転写機の転写ロールにおいて、ロール本体が熱膨張できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば、実公平2−19235号公報等に記載されているように、ロール軸に多数個の弾性リングが嵌合され、多数個の弾性リングの上に耐熱性弾性材からなるロール本体が嵌合された熱転写機の転写ロールが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、叙上の従来の熱転写機の転写ロールにおいては、加熱されるとロール本体の中央部が拡径した状態で膨張変形し、その結果、転写箔が被転写物に均一に密接せず美麗に転写されない欠点がある。このような欠点は、被転写物が平凡な板状形状ではなくて凹凸を有する異形断面形状を有するものでは、特に顕著に表れる。
【0004】本発明は、従来の熱転写機の転写ロールにおけるこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記の問題を解決し、異形断面形状を有する被転写物でも転写箔が均一に密接し、美麗に転写できる熱転写機の転写ロールを提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明熱転写機の転写ロールは、ロール軸に耐熱性弾性材からなるロール本体が嵌合された熱転写機の転写ロールにおいて、ロール本体がスプリングの復元力によりロール軸の軸方向に圧縮されていることを特徴とするものである。
【0006】又、請求項2記載の本発明熱転写機の転写ロールは、請求項1記載の熱転写機の転写ロールにおいて、ロール軸のロール本体の両側に固定リングが固定され、ロール本体の両端と固定リングとの間にスプリングが夫々設けられていることを特徴とするものである。
【0007】又、請求項3記載の本発明熱転写機の転写ロールは、請求項2記載の熱転写機の転写ロールにおいて、ロール軸の表面に螺旋状の突条が突設されていることを特徴とするものである。
【0008】又、請求項4記載の本発明熱転写機の転写ロールは、請求項2記載の熱転写機の転写ロールにおいて、ロール軸の表面に周方向に沿う複数条の凹溝が間隔をおいて凹設され、各凹溝に沿って複数個のボールが設けられ、各ボールの表面はロール軸の表面から弾性的に突出されていることを特徴とするものである。
【0009】又、請求項5記載の本発明熱転写機の転写ロールは、請求項1記載の熱転写機の転写ロールにおいて、ロール軸のロール本体の両側に固定用凸部が突設され、ロール本体の一端と固定用凸部との間にスプリングが設けられていることを特徴とするものである。
【0010】又、請求項6記載の本発明熱転写機の転写ロールは、請求項1記載の熱転写機の転写ロールにおいて、ロール軸の表面に軸方向に沿って鋸歯状凹凸が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】本発明において、ロール本体の材質は耐熱性弾性材であれば特に限定されないが、例えば、シリコンゴム、ポリウレタン等が使用できる。
【0012】
【作用】請求項1記載の熱転写機の転写ロールにおいては、ロール本体がスプリングの復元力によりロール軸の軸方向に圧縮されているので、ロール本体が加熱されるとスプリングの復元力に逆らって膨張することができ、ロール本体が変形することなく転写箔が被転写物に均一に密接して美麗に転写される。
【0013】又、請求項2記載の本発明熱転写機の転写ロールは、ロール軸のロール本体の両側に固定リングが固定され、ロール本体の両端と固定リングとの間にスプリングが夫々設けられているので、ロール本体が加熱されると双方のスプリングの復元力に逆らって膨張することができ、ロール本体が変形することなく転写箔が被転写物に均一に密接して美麗に転写される。
【0014】又、請求項3記載の本発明熱転写機の転写ロールにおいては、ロール軸の表面に螺旋状の突条が突設されているので、ロール本体が加熱されると双方のスプリングの復元力に逆らって膨張することができる上にロール本体の膨張が螺旋状の突条により規制される結果、ロール本体が変形することなく転写箔が被転写物に均一に密接して美麗に転写される。
【0015】又、請求項4記載の本発明熱転写機の転写ロールにおいては、ロール軸の表面に周方向に沿う複数条の凹溝が間隔をおいて凹設され、各凹溝に沿って複数個のボールが設けられ、各ボールの表面はロール軸の表面から弾性的に突出されているので、ロール本体が加熱されると双方のスプリングの復元力に逆らって膨張することができる上にロール本体の膨張がロール軸の表面から弾性的に突出されているボールにより規制される結果、ロール本体が変形することなく転写箔が被転写物に均一に密接して美麗に転写される。
【0016】又、請求項5記載の本発明熱転写機の転写ロールにおいては、ロール軸のロール本体の両側に固定用凸部が突設され、ロール本体の一端と固定用凸部との間にスプリングが設けられているので、ロール本体が加熱されるとスプリングの復元力に逆らって膨張することができてロール本体が変形することなく転写箔が被転写物に均一に密接して美麗に転写される。
【0017】又、請求項6記載の本発明熱転写機の転写ロールにおいては、ロール軸の表面に軸方向に沿って鋸歯状凹凸が設けられているので、ロール本体が加熱されるとスプリングの復元力に逆らって膨張することができる上にロール本体の膨張がロール軸の表面の鋸歯状凹凸により規制される結果、ロール本体が変形することなく転写箔が被転写物に均一に密接して美麗に転写される。
【0018】
【実施例】次に、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。
〔実施例1:請求項2記載の発明の実施例〕図1は本発明熱転写機の転写ロールの一例を示す正面図である。
【0019】図1において、1は鋼製ロール軸、2はロール軸1の2箇所においてビス21により間隔をおいて取付けられた固定リング、3はロール軸1の固定リング2、2の間に嵌合されたシリコンゴム製ロール本体であり、ロール本体3の表面は被転写物であるデッキ材(図示しない)の表面形状に適合した形状とされている。尚、11はロール軸1の両端部の2箇所に設けられたビス溝であり、ビス21の先端がビス溝11に嵌合されるようになっている。
【0020】4はロール本体3の両端部に設けられた鋼製可動リング、5は固定リング2と可動リング4との間のロール軸1に嵌合された鋼製コイルスプリングであり、ロール本体3はコイルスプリング5の復元反発力によりロール本体3はロール軸1の方向に圧縮されている。固定リング2、2間の間隔はロール本体3が加熱されたときの膨張を吸収でき、且つ、或る程度膨張をコイルスプリング5の復元反発力により規制できるように調整されている。
【0021】〔実施例1の作用〕次に図1に示す本発明の実施例の作用について説明する。図1に示す本発明転写ロールを図示しない熱転写機に取付けて使用した場合に、ロール本体3が加熱されるとコイルスプリング5、5の復元力に逆らって膨張することができるので、ロール本体3が変形することなく図示しない転写箔が図示しない被転写物に均一に密接して美麗に転写される。
【0022】〔実施例2:請求項3記載の発明の実施例〕図2は本発明熱転写機の転写ロールの他の一例を示す正面図である。図2に示す本発明転写ロールにおいては、図1に示す本発明転写ロールにおいてロール軸1aの表面に図3に拡大して示すように、螺旋状の突条12aが突設されたものである。
【0023】〔実施例2の作用〕図2に示す本発明転写ロールにおいては、ロール本体3aが加熱されるとコイルスプリング5a、5aの復元力に逆らって膨張することができる上にロール本体3aの膨張がロール軸1aの表面の螺旋状の突条12aにより規制される結果、ロール本体3aが変形することなく図示しない転写箔が図示しない被転写物に均一に密接して美麗に転写される。又、ロール本体3aをロール軸1aに嵌合する際には、螺旋状の突条12aに沿ってロール本体3aを回転することにより嵌合が容易となる。
【0024】〔実施例3:請求項4記載の発明の実施例〕図4は本発明熱転写機の転写ロールの更に他の一例を示す正面図である。図4に示す本発明転写ロールにおいては、図2に示す本発明転写ロールのロール軸1aに螺旋状の突条12aを設ける代わりに、ロール軸1bに複数状の周方向の凹溝13bを一定間隔をおいて凹設し、この凹溝13bに沿って複数個のボール14bが設けられ、図5に拡大して示すように、各ボール14bと凹溝13bの底面との間には小型のコイルスプリング15bが設けられ、各ボール14bの表面はロール軸1bの表面から弾性的に突出されている。尚、図5において、16bはボール押え板であり、ボール押え板16bはビス17bにより凹溝13bの入口部に取付けられている。
【0025】〔実施例3の作用〕図4に示す本発明転写ロールにおいては、ロール本体3bが加熱されるとコイルスプリング5b、5bの復元力に逆らって膨張することができる上にロール本体3bの膨張がロール軸1bの表面のボール14bにより規制される結果、ロール本体3bが変形することなく図示しない転写箔が図示しない被転写物に均一に密接して美麗に転写される。
【0026】〔実施例4:請求項5記載の発明の実施例〕図6は本発明熱転写機の転写ロールの更に他の一例を示す正面図である。図6に示す本発明転写ロールにおいては、ロール軸1cの1箇所に固定用凸部として固定リング2cがビス21cにより固定され、ロール軸1cに嵌合されているロール本体3cの一端に設けられた可動リング4cと固定リング2cとの間にコイルスプリング5cが設けられ、ロール軸1cの他端側に固定用凸部として台形状に切削加工された台形部18cのテーパー面にロール軸1cの他端側に設けられた可動リング41cの中心部の逆テーパー面がコイルスプリング5cの復元反発力により密接されるようになっている。
【0027】〔実施例4の作用〕図6に示す本発明熱転写機の転写ロールにおいては、ロール本体3cが加熱されるとスプリング5cの復元力に逆らって膨張することができてロール本体3cが変形することなく図示しない転写箔が図示しない被転写物に均一に密接して美麗に転写される。又、台形部18cのテーパー面にロール軸1cの他端側に設けられた可動リング41cの中心部の逆テーパー面がスプリング5cの復元反発力により密接されるので、ロール本体3cの膨張が不均等であっても、膨張が吸収される。
【0028】〔実施例5:請求項6記載の発明の実施例〕図7は本発明熱転写機の転写ロールの更に他の一例を示す正面図である。図7に示す本発明転写ロールにおいては、ロール軸1dの2箇所に固定用凸部として固定リング2dがビス21dにより固定され、ロール軸1dに嵌合されているロール本体3dの一端に設けられた可動リング4dと固定リング2dとの間にコイルスプリング5dが設けられ、ロール軸1dの他端側は直接固定リング2dに密接されている。
【0029】ロール軸1dの表面には緩やかな斜面191dと垂直面192dとからなる鋸歯状の凹凸19dが設けられ、この鋸歯状の凹凸19dが設けられたロール本体3dは加熱時に一端側にはコイルスプリング5dの復元反発力に逆らいながら膨張できるが、他端側には膨張は規制されるようになっている。
【0030】〔実施例5の作用〕図7に示す本発明熱転写機の転写ロールにおいては、ロール本体3dが加熱されるとスプリング5dの復元力に逆らって膨張することができる上に鋸歯状の凹凸19dにより膨張が規制されてロール本体3dが変形することなく図示しない転写箔が図示しない被転写物に均一に密接して美麗に転写される。
【0031】以上、本発明の実施例を図により説明したが、本発明の具体的な構成は図示の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない設計変更は本発明に含まれる。例えば、図示の実施例のように、コイルスプリングを使用する代わりに板状スプリングを使用してもよい。
【0032】
【発明の効果】本発明熱転写機の転写ロールにおいては、加熱時にロール本体の膨張がスプリングの復元力に逆らって吸収されるので、ロール本体が変形することなく転写箔が被転写物に均一に密接して美麗に転写される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明転写ロールの一例を示す正面図。
【図2】本発明転写ロールの他の一例を示す正面図。
【図3】図2に示す本発明転写ロールの要部拡大正面。
【図4】本発明転写ロールの更に他の一例を示す正面図。
【図5】図4に示す本発明転写ロールの要部拡大断面図。
【図6】本発明転写ロールの更に他の一例を示す正面図。
【図7】本発明転写ロールの更に他の一例を示す正面図。
【符号の説明】
1 ロール軸
2 固定リング
3 ロール本体
4 可動リング
5 コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロール軸に耐熱性弾性材からなるロール本体が嵌合された熱転写機の転写ロールにおいて、ロール本体がスプリングの復元力によりロール軸の軸方向に圧縮されていることを特徴とする熱転写機の転写ロール。
【請求項2】 ロール軸のロール本体の両側に固定リングが固定され、ロール本体の両端と固定リングとの間にスプリングが夫々設けられていることを特徴とする請求項1記載の熱転写機の転写ロール。
【請求項3】 ロール軸の表面に螺旋状の突条が突設されていることを特徴とする請求項2記載の熱転写機の転写ロール。
【請求項4】 ロール軸の表面に周方向に沿う複数条の凹溝が間隔をおいて凹設され、各凹溝に沿って複数個のボールが設けられ、各ボールの表面はロール軸の表面から弾性的に突出されていることを特徴とする請求項2記載の熱転写機の転写ロール。
【請求項5】 ロール軸のロール本体の両側に固定用凸部が突設され、ロール本体の一端と固定用凸部との間にスプリングが設けられていることを特徴とする請求項1記載の熱転写機の転写ロール。
【請求項6】 ロール軸の表面に軸方向に沿って鋸歯状凹凸が設けられていることを特徴とする請求項5記載の熱転写機の転写ロール。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【公開番号】特開平7−205404
【公開日】平成7年(1995)8月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−4017
【出願日】平成6年(1994)1月19日
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)