説明

熱転写用ヘッドユニットの制御方法及び装置並びに印刷装置

【課題】 多層の重ね塗りを行う場合に、印刷位置精度を保つことができ、シワの発生を抑制することがすることができる熱転写用ヘッドユニットの制御方法及び装置並びに印刷装置を提供すること。
【解決手段】 サーマルヘッドユニット4によりインクリボン2のインクを中間転写フィルム5に熱転写する熱転写用ヘッドユニットの制御方法において、熱転写の際のサーマルヘッドユニット4の制御位置を、中間転写フィルム5のインク膜厚に応じた位置にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写用ヘッドユニットの制御方法及び装置並びに印刷装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、熱転写を行うサーマルヘッドを圧縮コイルばねによりドラムへ付勢し、圧縮コイルばねの加圧力を通常より小さい20〜150g/cmに設定している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平4−85047号公報(第1−20頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の熱転写用ヘッドユニットの制御方法及び装置並びに印刷装置にあっては、中間転写フィルムに多層のインクを塗り重ねていく際、フィルム上のインクの累積膜厚が大きくなり、摩擦力の増大によりインクリボンや中間転写フィルムの搬送状態に影響し、シワ及び位置ズレが発生していた。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、多層の重ね塗りを行う場合に、印刷位置精度を保つことができ、シワの発生を抑制することがすることができる熱転写用ヘッドユニットの制御方法及び装置並びに印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、サーマルヘッドユニットにより、複数のインクリボンのインクを順次積層しながら中間転写フィルムに熱転写する熱転写用ヘッドユニットの制御方法において、熱転写の際の前記サーマルヘッドユニットの制御位置を、前記中間転写フィルムに積層されたインク膜厚に応じた位置にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、多層の重ね塗りを行う場合に、印刷位置精度を保つことができ、シワの発生を抑制することがすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の熱転写用ヘッドユニットの制御方法及び装置並びに印刷装置を実現する実施の形態を、請求項1〜3,5〜8に係る発明に対応する実施例1と、請求項1,2,4,5〜8に係る発明に対応する実施例2とに基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の熱転写用ヘッドユニットの制御方法を実施する熱転写用ヘッドユニットの制御装置を備えた印刷装置の説明図である。
印刷装置1は、インクリボン供給機構2、駆動モータ3、サーマルヘッドユニット4、中間転写フィルム5、プラテンロール6を備えている。
インクリボン供給機構2は、筒状の回転体21を制御される駆動モータ22で回転させる構造である。そして、回転体21には、複数のインクリボン2a〜2hが取り付けられる。
【0009】
インクリボン2aについて詳細に説明する。インクリボン2aは、ローラー状の供給インクリボン2a1と巻き取りインクリボン2a2からなる。つまり供給側のローラーから引き出して回収側で巻き取る構造である。そして、供給インクリボン2a1と巻き取りインクリボン2a2の間に、転写のためにサーマルヘッドユニット4により中間転写フィルム5に押し付けられる部分が張り渡されるようになっている。
他のインクリボン2b〜2hについても同じ構造で回転体21に取り付けられる。
【0010】
駆動モータ3は、転写位置に位置するインクリボン2aの巻き取りインクリボン2a2を駆動する。
サーマルヘッドユニット4は、インクリボン2aを中間転写フィルム5に押し付けて、複数の素子により加熱されてインクを中間転写フィルム5に熱転写させ、中間製造物を作成するものである。構造の詳細は後述する。
まず、中間転写フィルム5に熱転写された印画インク部分が、後に被印刷物に熱転写されることになる。この中間転写フィルム5は、供給ロール51から引き出され、回収ロール52に巻き取られる。実施例1の印刷装置1では、中間転写フィルム5への印画を行うものとし、その後の被印刷物への熱転写は、図示されない他の装置で行う。
【0011】
プラテンロール6は、駆動モータ61で回転が制御され、供給ロール51と回収ロール52の間に張り渡した部分の中間転写フィルム5を巻回させて、回転することにより、中間転写フィルム5の転写位置を変更する。具体的には、所定の意匠部分が転写されるように、サーマルヘッドユニット4を加熱し、かつ押し付けた状態でインクリボン2a、中間転写フィルム5を移動させる。
【0012】
図2は実施例1のサーマルヘッドの説明図である。
サーマルヘッドユニット4は、ヘッド部41、一方向駆動制御部42を備えている。
ヘッド部41は、回転体21やプラテンロール6の軸方向(図1の奥行き方向)に複数の細分化素子411を列状に配置している。これらの素子は選択的にそれぞれ加熱、非加熱が制御される。
一方向駆動制御部42は、駆動されることによって、出力軸を進退させるものであり、この出力軸の先端部にヘッド部41を取り付ける構造にしている。そのため、一方向駆動制御部42の駆動によりヘッド部41が進退することになる。
なお、サーマルヘッドユニット4のヘッド部41がインクリボン2を中間転写フィルム5に押し付けた位置を印画点7とする。
【0013】
図3は実施例1の印刷装置の主なブロック構成を示す図である。
制御部8(熱転写用ヘッドユニットの制御装置に相当する)は、外部から起動・停止に関わる信号を入力すると共に、メモリ9に記憶させている印刷データ91に基づき、メモリ9に記憶させているデータベース92を参照し、駆動モータ22、駆動モータ3、駆動モータ61、一方向駆動制御部42、細分化素子411を制御する。
メモリ9には印刷データ91とデータベース92とが存在し、制御部8からの要求に応じてデータの出力を行う。
印刷データ91は、多層重ね塗りで印画する意匠形状と、使用するインク、これと関連付けされるインクリボン2のデータ等を備えたデータである。
データベース92は、インクと、インクの膜厚データのデータベースである。
【0014】
作用を説明する。
[印刷処理]
図4に示すのは、実施例1の印刷装置1の制御部8で実行する印刷処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
【0015】
ステップS1では、印画処理を開始する前の初期位置に各制御位置を制御する。
【0016】
ステップS2では、最初の印画点7に係るヘッド位置を初期設定位置に設定する。
【0017】
ステップS3では、メモリ9から印刷データ91を読み込む。
【0018】
ステップS4では、印刷データ91から該当する印画層の印画内容を決定する。
【0019】
ステップS5では、使用するインクの情報、現在の印画点7のヘッド位置情報をメモリ9に記憶させる。
【0020】
ステップS6では、使用するインクリボン2aを印画位置へ位置させるよう駆動モータ22を駆動制御して移動させる。
【0021】
ステップS7では、サーマルヘッドユニット4のヘッド部41のヘッド位置を印画点ヘッド位置へ移動させる。この移動は一方向駆動制御部42で行う。
【0022】
ステップS8では、その該当するインク層の印画処理を行う。この印画処理では、細分化素子411の加熱、非加熱、プラテンロール6の回転、巻き取りインクリボン2a2の制御が行われる。
【0023】
ステップS9では、印画処理が終了したことにより、サーマルヘッドユニット4のヘッド部41のヘッド位置、プラテンロール6の回転位置を原点位置へ移動させる。
【0024】
ステップS10では、終了した印画処理(前回)のインク情報、ヘッド位置情報をメモリ9から呼び出す。
【0025】
ステップS11では、メモリ9から呼び出した情報をデータベース92と照合し、インク膜厚情報を取得する。
【0026】
ステップS12では、サーマルヘッドユニット4の印画点ヘッド位置を、前回の印画点のヘッド位置からインク膜厚の分、プラテンロール6の側から退く方向に移動させた位置に設定する。
【0027】
ステップS13では、印刷データ91から設定された全てのインク層の印画が完了したかどうかを判断し、完了したならば処理を終了し、完了していないならばステップS14へ進む。
【0028】
ステップS14では、該当するインク層の印画を次の層へ設定し、ステップS4へ戻る。
【0029】
[良好な多層塗りを実現する作用]
図5は実施例1のデータベースの例を示す説明図である。
実施例1では、例として車両メータのメータパネルを製造する際、中間転写フィルム5に意匠を多層塗りで印画し、その後にメータパネル用の透明基板に中間転写フィルム5からさらに熱転写させるものとする。
そして、印刷装置1は、中間転写フィルム5への印画を行うものとする。
【0030】
印刷装置1における中間転写フィルム5への印画は、精度よく多層塗りを行うために、初期位置への制御を行うことから始まる(ステップS1)。ここでは、例えばカウンタのリセット、可動部のストッパへの当接処理などを行う。
まず、最初の層の印画を行う場合には、印画点ヘッド位置を初期設定位置とする(ステップS2)。
なお、印刷装置1における制御は、制御部8で行うものとする。
次に制御部8では、メモリ9から印刷データ91を読み込む(ステップS3)。これにより、何層の印画を行うのか、それぞれどのインクリボン2(2a〜2h)で、どのような意匠を印画するのかを得る。
【0031】
そして、次に最初の層の印画内容を決定し(ステップS4)、使用するインクの情報、ヘッド位置情報(この最初の場合は初期設定位置)をメモリ9に記憶させる(ステップS5)。
制御部8は、記憶させたならば、駆動モータ22を駆動させて、使用するインクリボン(この場合、インクリボン2aとする)が転写位置になるように回転体21を回転させる(ステップS6)。
【0032】
次に制御部8は、サーマルヘッドユニット4の一方向駆動制御部42を駆動させて、ヘッド部41を印画点ヘッド位置へ移動させる(ステップS7)。
このヘッド部41の移動により、ヘッド部41は、インクリボン2aの供給インクリボン2a1と巻き取りインクリボン2a2の間に張り渡した部分を、プラテンロール6に巻き取られている部分の中間転写フィルム5の印画点7の部分に押し付けることになる。
【0033】
この状態で、制御部8の制御により、プラテンロール6を原点位置から意匠印画範囲を超えて設定される終了位置まで回転させる。プラテンロール6の回転に伴い、インクリボン2aは、供給インクリボン2a1から引き出され、巻き取りインクリボン2a2に駆動モータ3の駆動に回収される。
このインクリボン2aの移動、プラテンロール6による中間転写フィルム5の移動は、同じ移動速度で移動するよう制御される。
そして、インクリボン2a及び中間転写フィルム5の移動に合わせて、サーマルヘッドユニット4のヘッド部41の複数の細分化素子411を選択的に加熱、非加熱に制御することにより、加熱部分のインクリボン2aのインクを中間転写フィルム5へ熱転写する。
このようにして、このインクリボン2aによる層の印画を行う(ステップS8)。
【0034】
さらに説明すると、プラテンロール6は適度な弾性を備えており、ヘッド部41の印画点位置の位置制御により、適度な押し付け圧にする。つまり、細分化素子411がインクリボン2aを介して中間転写フィルム5に押し付けられた状態となる。熱転写は、この状態で、インクリボン2aと中間転写フィルム5が強制的に移動させられつつ、細分化素子411の選択的に加熱、非加熱により意匠形状のインクの熱転写を行う。この際、これらの間に隙間が生じれば加熱不具合、転写不具合を生じることになる。そのため、適度な押し付け力により間隙が生じないようにしつつ、インクリボン2aと中間転写フィルム5が強制的に移動させられる押し付けであることが要求される。
【0035】
最初の層の印画が終了すると、ヘッド部41がプラテンロール6、インクリボン2aから離れた位置まで退行するよう一方向駆動制御部42を制御部8が駆動させる。
さらに、プラテンロール6は、先ほどの印画の回転方向と逆に回転するよう駆動モータ61を制御部8で制御され、原点位置へ戻される(ステップS9)。
このように、プラテンロール6に巻きつけた中間転写フィルム5を回転方向に往復させる動きを行い、印画位置を変更して熱転写を行う。
【0036】
原点復帰を行ったならば、次に、先ほど印画処理のインク情報、ヘッド位置情報をメモリ9から呼び出すようにし(ステップS10)、データベース92と照合し、インク膜厚情報を取得する(ステップS11)。
データベース92は、図5に例を示すように、インク情報からインク膜厚情報を得られるよう多数のデータが関連付けされて参照可能に設けられたものである。
そして、印画点ヘッド位置を、先ほどの印画点ヘッド位置から先ほどのインクリボン2aのインク膜厚分を引いた位置にする。つまり、一方向駆動制御部42の進退方向における退行方向へインク膜厚分、移動させた位置を印画点ヘッド位置として設定する(ステップS12)。
【0037】
次に印画の際に印画点ヘッド位置を設定したならば、最初の層の印画が終了したので、次に層の印画を行うようにする(ステップS13,S14→S4)。
次の層の印画では、前の層のインク膜厚分、印画点ヘッド位置が移動していることにより、印画点ヘッド位置がインク膜厚を考慮した適切な位置となる。
そのため、多層に重ね塗りする際の中間転写フィルム5の累積膜厚によりヘッド部41の押し付け圧が大きくなり、インクリボン2aとヘッド部41の摩擦力が大きくなることが生じない。
よって、印画中のインクリボン2a及び中間転写フィルム5の搬送状態が変わることなく安定し、シワ及び位置ズレの発生を抑制する。
【0038】
そして、その後の層の印画においても、前回のインク膜厚の分、ヘッド部41の印画点ヘッド位置をプラテンロール6から離れる方向に退行させる。これにより、その後の層の印画においても、ヘッド部41の押し付け圧が適切なものとなり、インクリボン2aとヘッド部41の摩擦力が大きくなることが生じない。
よって、その後のインク層の印画においても、印画中のインクリボン2a及び中間転写フィルム5の搬送状態が変わることなく安定し、シワ及び位置ズレの発生を抑制する。
【0039】
もし、インクリボン2にシワが発生すれば、熱転写の状態が一律でなくなり、インクの印画不良を生じることになる。また、中間転写フィルム5にシワが生じれば、その後に、例えばメータ基板へさらに熱転写された際に、意匠に異常が生じることになる。さらに、インクリボン2に位置ズレを生じると、複数列状に配置された細分化素子411により、所定位置に熱転写がされない部分が生じる不具合につながる。また、中間転写フィルム5に位置ずれが生じると多層の重ね塗りが行なわれる際に、意匠に異常が生じることになる。
実施例1では、このような異常を生じることなく、良好な熱転写による重ね塗りが行なわれ、精度良く意匠が印画された中間転写フィルム5を生産する。
【0040】
このようにして、中間転写フィルム5に多層の塗りで意匠を印画したならば、その後に、メータパネルの透明な基板へ熱転写させ、中間転写フィルム5を基板からはがすようにして、メータパネルの印刷を終了する。
【0041】
効果を説明する。
実施例1では、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1)サーマルヘッドユニット4によりインクリボン2のインクを中間転写フィルム5に熱転写する熱転写用ヘッドユニットの制御方法において、熱転写の際のサーマルヘッドユニット4の制御位置を、中間転写フィルム5のインク膜厚に応じた位置にしたため、多層の重ね塗りを行う場合に、印刷位置精度を保つことができ、シワの発生を抑制することがすることができる。
【0042】
(2)上記(1)において、熱転写の際のサーマルヘッドユニット4の制御位置を、中間転写フィルム5のインク膜厚の増大に応じて、中間転写フィルム5から離間方向に移動した位置としたため、重ね塗りによりインク膜厚が累積して行くのに応じて、熱転写の際のサーマルヘッドユニット4の制御位置を、離間方向に移動させ、ヘッド部41に適切な押圧を維持させるので、多層の重ね塗りを行う場合に、印刷位置精度を保つことができ、シワの発生を抑制することがすることができる。
【0043】
(3)上記(2)において、インクリボン2は、サーマルヘッドユニット4と中間転写フィルム5の間を転写位置とし、予め設定される印刷データ91に基づいて、複数の中から使用するインクリボン2を転写位置に移動させるようにし、印刷データ91の複数のインクリボン2に対応したインク膜厚データをデータベース92として予め準備し、熱転写に使用されたインクリボン2の印刷データ91から、データベース92を参照し、熱転写の際のサーマルヘッドユニット4の制御位置を、インク膜厚データに応じて、中間転写フィルム5から離間方向に移動した位置としたため、データベース92を参照することにより使用したインクリボン2のインク膜厚を照合して、その分、離間方向へ制御位置を移動させて、多層の重ね塗りを行う場合に、印刷位置精度を保つことができ、シワの発生を抑制することがすることができる。
また、データベース92には、使用する可能性のあるインクの膜厚情報を多数データとして備えることになるので、異なる意匠を印刷する場合に、別のインクリボンが加わる場合でも、そのインクリボンの情報又はインク情報を照合することにより、頻繁にインク膜厚データを用意することなく、異なる意匠を良好に印刷することができる。
【0044】
(4)上記(3)において、中間転写フィルム5は、筒状のプラテンロール6の外周に巻き取られ、プラテンロール6の回転により熱転写される位置を変更するようにし、サーマルヘッドユニット4は、プラテンロール6の軸方向へ複数列状に配置した素子により加熱を行い、一方向駆動制御部42による1軸の進退により転写位置のインクリボン2をプラテンロール6外周の中間転写フィルム5に押し付けるようにし、サーマルヘッドユニット4で挟み付けた中間転写フィルム5とインクリボン2がプラテンロール6の回転により熱転写される位置を変更しつつ、サーマルヘッドユニット4の複数列状に配置した細分化素子411の加熱、非加熱を制御して、中間転写フィルム5へインクを印画するため、多層の重ね塗りの際、中間転写フィルム5のインクリボン2側の面には、インク膜厚が累積することになり、熱転写の際のインクリボン2との摩擦が大きくなるが、サーマルヘッドユニット4のヘッド部41の位置が制御されることによって、摩擦が大きくならないようにするので、押し付けられた状態で強制的に位置をずらされる中間転写フィルム5とインクリボン2の印刷位置精度を保つことができ、シワの発生を抑制することがすることができる。
【0045】
(5)上記(4)において、熱転写後、サーマルヘッドユニット4をインクリボン2から間隔を空けるよう離間させた原点位置に移動させ、プラテンロール6の回転位置を、予め設定した原点位置に回転移動させ、次に使用するインクリボン2を転写位置に移動させる際に、インク膜厚データに応じたサーマルヘッドユニット4の熱転写の際の制御位置を算出するため、プラテンロール6及びサーマルヘッドユニット4が次の層を印画するために必要な原点位置への移動の際に、インク膜厚を考慮した制御位置を算出することで、インク膜厚を制御に加えることにより、全体の印画時間が遅れを生じるようなことがなく、効率よく多層塗りの印画が行われるようにできる。
【0046】
(6)サーマルヘッドユニット4によりインクリボン2のインクを中間転写フィルム5に熱転写する熱転写用ヘッドユニットの制御装置において、熱転写の際のサーマルヘッドユニット4の制御位置を、中間転写フィルム5のインク膜厚に応じた位置にするステップS10〜S12の処理を行う制御部8を備えたため、多層の重ね塗りを行う場合に、印刷位置精度を保つことができ、シワの発生を抑制することがすることができる。
【0047】
(7)サーマルヘッドユニット4によりインクリボン2のインクを中間転写フィルム5に熱転写する印刷装置1において、回転体21の外周に複数のインクリボン2を取付け、サーマルヘッドユニット4と中間転写フィルム5の間の転写位置に、回転体21の回転によりインクリボン2を移動させる制御部8で制御された駆動モータ22と、中間転写フィルム5を筒状の外周に巻き取り、且つ回転させるプラテンロール6と、サーマルヘッドユニット4を、回転体21の内周側で、1軸の進退により、転写位置のインクリボン2をプラテンロール6の外周の中間転写フィルム5に押し付ける方向、及び離間する方向に移動させる制御部8で制御された一方向駆動制御部42と、サーマルヘッドユニット4に設けられた、プラテンロール6の軸方向へ複数列状に配置した細分化素子411の加熱、非加熱を行う制御部8によるステップS8の処理と、少なくともインクリボン2の選択内容と、印画内容が示された印刷データ91と、インクリボン2のインク膜厚の情報が示されたデータベース92と、インクリボン2移動手段及びプラテンロール6の回転、ヘッド移動手段、素子制御手段を印刷データ91に基づき、制御する制御部8を備え、制御部8は、熱転写の際のサーマルヘッドユニット4の制御位置を、中間転写フィルム5のインク膜厚データに応じた位置にするステップS10〜S12の処理を備えたため、多層の重ね塗りを行う場合に、印刷位置精度を保つことができ、シワの発生を抑制することがすることができ、良好な品質の印刷を行なうことができる。
【実施例2】
【0048】
実施例2は、印刷データがインク膜厚データを備えるようにした例である。
図6は実施例2の印刷装置の主なブロック構成を示す図である。
実施例2の印刷装置1のメモリ9に収容されている印刷データ93には、インク情報と関連させて、インク膜厚情報を備えるようにする。
その他構成は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0049】
作用を説明する。
[印刷処理]
図7に示すのは、実施例2の印刷装置1の制御部8で実行する印刷処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
なお、図4と同じ処理については、同じ符号を示し説明を省略する。
【0050】
ステップS21では、インク膜厚情報がインク情報に対応させて備えられた印刷データ93から各層の印画点ヘッド位置を算出し、メモリ9に記憶させる。
【0051】
ステップS22では、これから印画を行なう層(該当層)の印画点ヘッド位置をメモリ9から読み出す。
【0052】
[良好な多層塗りを実現する作用]
図8は実施例2における印刷データのデータ内容を示す説明図である。
実施例2の印刷装置1では、初期位置制御(ステップS1)の次に、制御部8がメモリ9から印刷データ93を読み込む(ステップS3)。
実施例2の印刷データ93には、インクリボン2のインク情報に対応させて、インク膜厚情報がデータとして備えられている(図8参照)。
これにより、何層の印画を行うのか、それぞれどのインクリボン2(2a〜2h)で、どのような意匠を印画するのか、そして、それぞれの層のインク膜厚が何μmなのかを得る。
【0053】
そして、次に最初の層の印画内容を決定し(ステップS4)、該当層の印画点ヘッド位置をメモリ9から読み出す(ステップS22)。
そして制御部8は、駆動モータ22を駆動させて、使用するインクリボン(この場合、インクリボン2aとする)が転写位置になるように回転体21を回転させる(ステップS6)。
次に制御部8は、読み出した印画点ヘッド位置のデータに基づき、サーマルヘッドユニット4の一方向駆動制御部42を駆動させて、ヘッド部41を印画点ヘッド位置へ移動させる(ステップS7)。
【0054】
この状態で、制御部8の制御により、プラテンロール6を原点位置から意匠印画範囲を超えて設定される終了位置まで回転させる。プラテンロール6の回転に伴い、インクリボン2aは、供給インクリボン2a1から引き出され、巻き取りインクリボン2a2に駆動モータ3の駆動に回収される。
そして、インクリボン2a及び中間転写フィルム5の移動に合わせて、サーマルヘッドユニット4のヘッド部41の複数の細分化素子411を加熱、非加熱に制御することにより、加熱部分のインクリボン2aのインクを中間転写フィルム5へ熱転写する。
このようにして、このインクリボン2aによる層の印画を行う(ステップS8)。
【0055】
最初の層の印画が終了すると、ヘッド部41がプラテンロール6、インクリボン2aから離れた位置まで退行するよう一方向駆動制御部42を制御部8が駆動させる。
さらに、プラテンロール6は、先ほどの印画の回転方向と逆に回転するよう駆動モータ61を制御部8で制御され、原点位置へ戻される(ステップS9)。
【0056】
原点復帰を行ったならば、次の層(該当層)の印画内容を決定し(ステップS13→S14→S4)、その該当層の印画点ヘッド位置を読み出す(ステップS7)。
そして、インクリボン2の選択(ステップS6)を行ない、読み出した印画点ヘッド位置のデータに基づいて、制御部8が一方向駆動制御部42を駆動してヘッド部41を印画点ヘッド位置へ移動させる。この際、ステップS21の処理により、各印画層において、前の印画層からのインク膜厚分、印画点ヘッド位置をプラテンロール側から退行させるよう位置設定がされ、データとしてメモリ9に記憶させている。そのため、次々に印画される各層におけるヘッド部41の位置は、適切な位置が維持されることになる。
【0057】
そのため、多層を重ね塗りする際の中間転写フィルム5の累積膜厚によりヘッド部41の押し付け圧が大きくなり、インクリボン2aとヘッド部41の摩擦力が大きくなることが生じない。
よって、印画中のインクリボン2a及び中間転写フィルム5の搬送状態が変わることなく安定し、シワ及び位置ズレの発生を抑制する。
このようにして、中間転写フィルム5に多層の塗りで意匠を印画したならば、その後に、メータパネルの透明な基板へ転写させ、中間転写フィルム5を基板からはがすようにして、メータパネルの印刷を終了する。
【0058】
次に、効果を説明する。
実施例2にあっては、上記(1),(2),(5)〜(8)に加えて、以下の効果を有する。
(4)インクリボン2は、サーマルヘッドユニット4と中間転写フィルム5の間を転写位置とし、予め設定される印刷データ93に基づいて、複数の中から使用するインクリボン2を転写位置に移動させるようにし、印刷データ93には、複数のインクリボン2に対応したインク膜厚データが含まれるよう予め設定し、熱転写に使用されたインクリボン2の印刷データからインク膜厚データを得るようにし、熱転写の際のサーマルヘッドユニット4のヘッド部41の印画点ヘッド位置を、印刷データ93のインク膜厚データに応じて、中間転写フィルム5から離間方向に移動した位置としたため、予め印刷データ93に使用するインク膜厚のデータを備えるようにし、印画を行なう前段階として印刷データを読み込んだ際に、各層における印画点ヘッド位置を決定し、メモリ9に記憶させ順にデータを読み込んでヘッド部41の位置を制御し、各層ごとに離間方向へ制御位置を移動させて、多層の重ね塗りを行う場合に、印刷位置精度を保つことができ、シワの発生を抑制することがすることができる。
【0059】
以上、本発明の熱転写用ヘッドユニットの制御方法及び印刷装置を実施例1、実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、実施例1、実施例2では、それぞれの印画層ごとに印画点ヘッド位置を変更したが、インク膜厚が非常に薄い場合に、複数の印画層ごとに、印画点ヘッド位置を変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1の熱転写用ヘッドユニットの制御方法を実施する熱転写用ヘッドユニットの制御装置を備えた印刷装置の説明図である。
【図2】実施例1のサーマルヘッドの説明図である。
【図3】実施例1の印刷装置の主なブロック構成を示す図である。
【図4】実施例1の印刷装置の制御部で実行する印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例1のデータベースの例を示す説明図である。
【図6】実施例2の印刷装置の主なブロック構成を示す図である。
【図7】実施例2の印刷装置の制御部で実行する印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例2における印刷データのデータ内容を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 印刷装置
2 インクリボン供給機構
2a〜2h インクリボン
2a1 供給インクリボン
2a2 巻き取りインクリボン
21 回転体
22 駆動モータ
3 駆動モータ
4 サーマルヘッドユニット
41 ヘッド部
411 細分化素子
42 一方向駆動制御部
5 中間転写フィルム
51 供給ロール
52 回収ロール
6 プラテンロール
61 駆動モータ
7 印画点
8 制御部
9 メモリ
91 印刷データ
92 データベース
93 印刷データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドユニットにより、複数のインクリボンのインクを順次積層しながら中間転写フィルムに熱転写する熱転写用ヘッドユニットの制御方法において、
熱転写の際の前記サーマルヘッドユニットの制御位置を、前記中間転写フィルムに積層されたインク膜厚に応じた位置にした、
ことを特徴とする熱転写用ヘッドユニットの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱転写用ヘッドユニットの制御方法において、
熱転写の際の前記サーマルヘッドユニットの制御位置を、前記中間転写フィルムに積層されたインク膜厚の増大に応じて、前記中間転写フィルムから離間方向に移動した位置とした、
ことを特徴とする熱転写用ヘッドユニットの制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の熱転写用ヘッドユニットの制御方法において、
前記インクリボンは、前記サーマルヘッドユニットと前記中間転写フィルムの間を転写位置とし、予め設定される印刷データに基づいて、複数の中から使用する前記インクリボンを転写位置に移動させるようにし、
前記印刷データの複数のインクリボンに対応した、積層されたインク膜厚データをデータベースとして予め準備し、
熱転写に使用された前記インクリボンの前記印刷データから、前記データベースを参照し、
熱転写の際の前記サーマルヘッドユニットの制御位置を、前記積層されたインク膜厚データに応じて、前記中間転写フィルムから離間方向に移動した位置とした、
ことを特徴とする熱転写用ヘッドユニットの制御方法。
【請求項4】
請求項2に記載の熱転写用ヘッドユニットの制御方法において、
前記インクリボンは、前記サーマルヘッドユニットと前記中間転写フィルムの間を転写位置とし、予め設定される印刷データに基づいて、複数の中から使用する前記インクリボンを転写位置に移動させるようにし、
前記印刷データには、複数のインクリボンに対応した、積層されたインク膜厚データが含まれるよう予め設定し、
熱転写に使用された前記インクリボンの前記印刷データから積層されたインク膜厚データを得るようにし、
熱転写の際の前記サーマルヘッドユニットの制御位置を、前記積層されたインク膜厚データに応じて、前記中間転写フィルムから離間方向に移動した位置とした、
ことを特徴とする熱転写用ヘッドユニットの制御方法。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の熱転写用ヘッドユニットの制御方法において、
前記中間転写フィルムは、筒状のプラテンロールの外周に巻き取られ、前記プラテンロールの回転により熱転写される位置を変更するようにし、
前記サーマルヘッドユニットは、前記プラテンロールの軸方向へ複数列状に配置した素子により加熱を行い、モータによる1軸の進退により転写位置の前記インクリボンを前記プラテンロール外周の前記中間転写フィルムに押し付けるようにし、
前記サーマルヘッドユニットで挟み付けた前記中間転写フィルムと前記インクリボンが前記プラテンロールの回転により熱転写される位置を変更しつつ、前記サーマルヘッドユニットの複数列状に配置した素子の加熱、非加熱を制御して、前記中間転写フィルムへインクを印画する、
ことを特徴とする熱転写用ヘッドユニットの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の熱転写用ヘッドユニットの制御方法において、
熱転写後、前記サーマルヘッドユニットを前記インクリボンから間隔を空けるよう離間させた原点位置に移動させ、
前記プラテンロールの回転位置を、予め設定した原点位置に回転移動させ、
次に使用する前記インクリボンを転写位置に移動させる際に、前記積層されたインク膜厚データに応じた前記サーマルヘッドユニットの熱転写の際の制御位置を算出する、
ことを特徴とする熱転写用ヘッドユニットの制御方法。
【請求項7】
サーマルヘッドユニットにより、複数のインクリボンのインクを順次積層しながら中間転写フィルムに熱転写する熱転写用ヘッドユニットの制御装置において、
熱転写の際の前記サーマルヘッドユニットの制御位置を、前記中間転写フィルムに積層されたインク膜厚に応じた位置にする制御手段を備えた、
ことを特徴とする熱転写用ヘッドユニットの制御装置。
【請求項8】
サーマルヘッドユニットによりインクリボンのインクを中間転写フィルムに熱転写する印刷装置において、
回転体の外周に複数の前記インクリボンを取付け、前記サーマルヘッドユニットと前記中間転写フィルムの間の転写位置に、回転体の回転により前記インクリボンを移動させるインクリボン移動手段と、
前記中間転写フィルムを筒状の外周に巻き取り、且つ回転させるプラテンロールと、
前記サーマルヘッドユニットを、前記回転体の内周側で、駆動制御部による1軸の進退により、転写位置の前記インクリボンを前記プラテンロール外周の前記中間転写フィルムに押し付ける方向、及び離間する方向に移動させるヘッド移動手段と、
前記サーマルヘッドユニットに設けられた、前記プラテンロールの軸方向へ複数列状に配置した素子の加熱、非加熱を行う素子制御手段と、
少なくとも前記インクリボンの選択内容と、印画内容が示された印刷データと、
前記インクリボンの積層されたインク膜厚の情報が示されたインク膜厚データと、
前記インクリボン移動手段及び前記プラテンロールの回転、ヘッド移動手段、素子制御手段を前記印刷データに基づき、制御する印刷制御手段と、
を備え、
前記印刷制御手段は、熱転写の際の前記サーマルヘッドユニットの制御位置を、前記中間転写フィルムの積層されたインク膜厚データに応じた位置にする処理を備えた、
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−132122(P2009−132122A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311848(P2007−311848)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】