説明

熱輸送デバイスの製造方法及び熱輸送デバイス

【課題】少ない工程により効率的に製造される、安価な熱輸送デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】下板部材1の内面11に、フレーム部材2の厚みより大きい厚みでなる毛細管部材5が載置される。続いて下板部材1の内面11上に、フレーム部材2が載置され、また、毛細管部材5上に上板部材3が載置される。毛細管部材5の厚みとフレーム部材2の厚みとの差により、フレーム部材2と上板部材3との間に、押しつぶし量Gが設けられる。そして下板部材1とフレーム部材2、及び上板部材3とフレーム部材2とが拡散接合される。このとき毛細管部材5は押しつぶし量G分圧縮される。毛細管部材5は弾性を有しているので、圧力Pの一部が吸収され、その圧力Pよりも小さい圧力P´が、毛細管部材5から下板部材1へ加えられる。この圧力P´により、下板部材1の内面11と毛細管部材5とが拡散接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の相変化により熱を輸送する熱輸送デバイスの製造方法及び熱輸送デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の電子機器を冷却するために、その電子機器の発熱部から発生する熱を凝縮部に輸送し放熱する、ヒートパイプ等の冷却デバイスが用いられている。
【0003】
これらの冷却デバイスは、電子機器の高温の発熱部で発生する熱によって蒸発した作動流体の蒸気が、低温の凝縮部へ移動し、その凝縮部で凝縮して熱を放出するものであり、これにより、冷却対象物が冷却される。
【0004】
近年においては、電子機器等の小型化、薄型化に伴い、その内部に含まれるIC等の発熱が大きな問題となっている。例えば薄型テレビの更なる薄型化が強く望まれており、これを実現させるためには、上記した電子機器内部の発熱の問題に対処しなければならない。この問題の解決手段として、小型、薄型、高効率の廉価な冷却デバイスが求められている。
【0005】
特許文献1には、ヒートスプレッダーを構成する上カバー及び下カバーへメッシュを取り付ける拡散接合工程1と、上記メッシュを有している上カバー、下カバー、及び補強部材を接合する拡散接合工程2の、複数の拡散接合工程が記されている。複数の拡散接合工程はそれぞれ別の工程において、それぞれの好適な条件のもとで行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−140435号公報(段落[0022]−[0027]、[0032]、[0033]、図6A、図6B、図7、及び図8−図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、複数の拡散接合工程が別の工程において行われる場合、各拡散接合工程に費やされる時間、及び各拡散接合工程にかかるコストにより、冷却デバイスの製造に費やされる時間、及び冷却デバイスの製造にかかるコストが増える。これにより、効率の良い冷却デバイスの製造、及び安価な冷却デバイスの製造が難しくなる。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、少ない工程により効率的に製造される、安価な熱輸送デバイスの製造方法、及び熱輸送デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る熱輸送デバイスの製造方法は、作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成する第1の板及び第2の板の間に、前記作動流体に毛細管力を作用させる毛細管部材を挟むように、前記第1の板、前記毛細管部材及び前記第2の板を積層させることを含む。
前記第1の板と前記毛細管部材とが拡散接合されるように、前記第1の板と前記第2の板とが拡散接合される。
【0010】
熱輸送デバイスの容器を構成するために、第1の板と第2の板とが拡散接合される。この拡散接合工程において、第1の板と、第1の板及び第2の板に挟まれるように積層された毛細管部材とが拡散接合される。従って、複数の拡散接合が同じ工程において行われるので、少ない工程により効率的に製造される、安価な熱輸送デバイスの製造方法が実現する。
【0011】
前記毛細管部材は弾性を有する材料からなってもよい。その場合、前記拡散接合工程において、前記毛細管部材を圧縮しながら、前記第1の板と前記第2の板とが拡散接合される。
【0012】
第1の板及び第2の板は、容器の密封性を目的に、高い接合力により拡散接合される。一方、上記拡散接合工程において、第1の板及び毛細管部材は、容器に含まれる作動流体に毛細管力が適切に作用するような適度な圧力で拡散接合される。つまり、これらの拡散接合にそれぞれ求められる圧力は異なることが多い。毛細管部材が所定の弾性を有していることにより、第1の板及び第2の板が拡散接合されるときの圧力の一部を毛細管部材が吸収するので、その圧力よりも小さい圧力で第1の板と毛細管部材とが拡散接合される。
【0013】
前記毛細管部材の厚みは、前記第1の板及び前記第2の板により構成される前記容器の内部空間の厚みより大きくてもよい。
【0014】
これにより上記拡散接合工程において、確実に毛細管部材が圧縮され、第1の板及び第2の板が拡散接合されるときの圧力の一部が確実に吸収される。
【0015】
前記毛細管部材は、第1のメッシュ層と、前記第1のメッシュ層に積層された、前記第1のメッシュ層に含まれるメッシュよりも目の粗いメッシュからなる第2のメッシュ層とを有してもよい。
【0016】
前記第2の板は突起部を有してもよい。その場合、前記拡散接合工程において、前記突起部により前記毛細管部材を圧縮しながら、前記第1の板と前記第2の板とが拡散接合される。
【0017】
突起部は、容器の内部空間を補強することができる上、突起部により、確実に毛細管部材を圧縮することができる。
【0018】
前記熱輸送デバイスは、前記容器の側壁を構成するフレーム部材を有してもよい。その場合、前記拡散接合工程において、前記第1の板と前記毛細管部材とが拡散接合されるように、前記第1の板と前記フレーム部材とが、かつ、前記第2の板と前記フレーム部材とが拡散接合される。
【0019】
容器の側壁を構成するフレーム部材の厚みと毛細管部材の厚みとの関係により、毛細管部材が圧縮される程度が調節され、毛細管部材に吸収される圧力の程度が調節される。従って、フレーム部材の厚みと毛細管部材の厚みとを適宜設定することで、第1の板と毛細管部材との拡散接合に求められる、所望の圧力を得ることができる。
【0020】
前記積層工程は、前記第1の板及び前記第2の板の間に前記毛細管部材を挟むように積層された、前記第1の板、前記毛細管部材及び前記第2の板を有するユニットを、凹部を有する治具部の前記凹部に嵌めるように、前記治具部と前記ユニットとを積層してもよい。その場合、前記拡散接合工程において、前記積層方向に前記治具部及び前記ユニットに圧力が加えられることで、前記ユニットの前記第1の板と前記第2の板とが拡散接合される。
【0021】
治具部が有する凹部の深さと毛細管部材の厚みとを適宜設定することで、上記拡散接合工程において、第1の板と毛細管部材との拡散接合に求められる圧力を、ばらつきなく得ることができる。
【0022】
前記積層工程において、前記第1の板、前記毛細管部材及び前記第2の板をそれぞれ有する複数のユニットの各間に、治具部がそれぞれ積層されるように、前記複数のユニット及び前記複数の治具部が積層されてもよい。その場合、前記拡散接合工程において、前記積層方向に、前記複数のユニット及び前記複数の治具部に圧力が加えられることで、前記複数のユニットの前記第1の板と前記第2の板とが拡散接合される。
【0023】
複数のユニット及び複数の治具部が積層された方向に、複数のユニット及び複数の治具部に圧力が加えられることで、複数の熱輸送デバイスが一度に製造される。これにより製造時間が短縮される。
【0024】
前記毛細管部材は、第1の部材と、第2の部材とを含んでもよい。
前記第1の部材は、第1のバネ定数を有し前記第1の板に拡散接合される。
前記第2の部材は、前記第1のバネ定数より大きい第2のバネ定数を有し前記第1の部材に積層される。
【0025】
第1の部材はバネ定数が小さく変形しやすいので、上記の拡散接合工程で毛細管部材が圧縮される際に確実に圧縮され、その応力により第1の板と十分に拡散接合される。また拡散接合工程にて、第1の部材により、例えば寸法公差による第2の部材の変形量のばらつき等が吸収される。これにより拡散接合工程後にて、バネ定数が大きく変形しにくい第2の部材により熱輸送の性能に係わる毛細管部材の機能が十分に発揮される。
【0026】
前記拡散接合工程は、前記第1の板と前記毛細管部材とが拡散接合されるように、かつ、前記第2の板と前記毛細管部材とが拡散接合されるように、前記第1の板と前記第2の板とを拡散接合することを含んでもよい。この場合、前記毛細管部材は、第3の部材を含み、前記第3の部材は、前記第2のバネ定数より小さい第3のバネ定数を有し、前記第2の部材に積層され前記第2の板と拡散接合される。
【0027】
毛細管部材が第1及び第2の板に拡散接合されることで、毛細管部材により熱輸送デバイスの容器の内部空間が補強される。この際、バネ定数が小さい第3の部材と第2の板とが拡散接合されることで、毛細管部材と第2の板とが十分に拡散接合される。
【0028】
本発明の他の形態に係る熱輸送デバイスの製造方法は、作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成するための板を曲げることにより、前記作動流体に毛細管力を作用させる毛細管部材を、前記曲げられて形成される前記板の第1の部位及び第2の部位で挟む。
そして、少なくとも前記第1の部位と前記毛細管部材とが拡散接合されるように、前記第1の部位の端部と前記第2の部位の端部とが拡散接合されることで、前記容器が形成される。
【0029】
これにより、1つの板が曲げられて容器が形成されるので、部品数が減り、コストを削減することができる。また、複数の部品により容器が構成される場合において、それら各部品の所定の位置決め精度が必要となるが、本発明では、そのような高い位置決め精度は必要がない。
【0030】
本発明の一形態に係る熱輸送デバイスは、内面を有する容器と、作動流体と、毛細管部材とを具備する。
前記作動流体は、前記容器に収容され、相変化することで熱を輸送する。
前記毛細管部材は、第1の部材と、第2の部材とを含み、前記作動流体に毛細管力を発生させる。
前記第1の部材は、第1のバネ定数を有し前記内面に拡散接合される。
前記第2の部材は、前記第1のバネ定数より大きい第2のバネ定数を有し前記第1の部材に積層される。
【0031】
本発明の他の形態に係る熱輸送デバイスは、側壁を有する容器と、作動流体と、毛細管部材とを具備する。
前記容器は、前記側壁を構成するフレーム部材と、前記フレーム部材を挟み込むように前記フレーム部材に接合された第1の板及び第2の板とを有する。
前記作動流体は、前記容器内で、相変化することにより熱を輸送する。
前記毛細管部材は、前記作動流体に毛細管部力を作用させる。
【0032】
この熱輸送デバイスでは、簡単な構成の部品で容器を構成することができる。また、フレーム部材の厚みにより容器の内部空間の容積が定められるので、フレーム部材の厚みを適宜設定することで、簡単に内部空間の容積を設定することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明によれば、少ない工程により効率的に製造される、安価な熱輸送デバイスの製造方法、及び熱輸送デバイスが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法により製造された、熱輸送デバイスを示す模式的な断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法により製造された、熱輸送デバイスを示す模式的な分解斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を説明するための図である。
【図4】第1の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を順に示す模式的な断面図である。
【図5】押しつぶし量と、その押しつぶし量で製造された熱輸送デバイスのリーク不良率を表す表である。
【図6】第1の実施形態により製造された熱輸送デバイスの、下板部材の内面を観察した図である。
【図7】第2の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を順に示す模式的な断面図である。
【図8】第3の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法で製造された、熱輸送デバイスを示す模式的な断面図である。
【図9】第3の実施形態により製造された熱輸送デバイスの、下板部材の内面を観察した図である。
【図10】治具を用いた熱輸送デバイスの製造方法を説明するための図である。
【図11】第4の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を順に示す模式的な断面図である。
【図12】第5の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を順に示す模式的な断面図である。
【図13】熱源が気相側に近い側に配置された熱輸送デバイスを示す断面図である。
【図14】第6の実施形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。
【図15】図14に示すA−A間の断面図である。
【図16】第6の実施形態に係る熱輸送デバイスの容器を構成する板部材の展開図である。
【図17】第6の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を示す図である。
【図18】変形例に係る熱輸送デバイスを説明するための図であり、板部材の展開図である。
【図19】第7の実施形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。
【図20】図19に示すA−A間の断面図である。
【図21】第7の実施形態に係る熱輸送デバイスの容器を構成する板部材の展開図である。
【図22】第8の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を説明するための図である。
【図23】各メッシュ部材に加えられる応力と、その応力による変形量(潰れ量)との関係を示す模式的なグラフである。
【図24】第8の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を順に示す模式的な断面図である。
【図25】図24で示す上板部材、接合用メッシュ部材、及び第2のメッシュ部材を拡大して示した図である。
【図26】比較例として挙げる毛細管部材と上板部材との拡散接合を示した拡大図である。
【図27】金属細線の編み込まれ方が異なるメッシュ部材をそれぞれ示した模式的な図である。
【図28】図22に示した毛細管部材の変形例を示した図である。
【図29】第9の実施形態に係る熱輸送デバイスを説明するための図である。
【図30】図29に示す注入口及び注入路を拡大して示した平面図である。
【図31】第10の実施形態に係る熱輸送デバイスを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0036】
<第1の実施形態>
[熱輸送デバイスの構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法により製造された、熱輸送デバイスを示す模式的な断面図である。図2は、その分解斜視図である。図1の断面図は、熱輸送デバイス100の長手方向における断面図である。以後、断面図の方向は同様である。
【0037】
熱輸送デバイス100は、容器4と、容器4内に設けられた毛細管部材5とを含む。容器4は、下板部材1、フレーム部材2及び上板部材3により構成される。フレーム部材2により、容器4における側壁が構成される。容器4の内部には、相変化により熱を輸送する図示しない作動流体が封入されており、この作動流体に毛細管力を作用させる毛細管部材5が形成されている。毛細管部材5は、第1のメッシュ層6と、第1のメッシュ層6に積層された第2のメッシュ層7とを含む。第2のメッシュ層7は、第1のメッシュ層6に含まれるメッシュよりも目の粗いメッシュからなる。
【0038】
作動流体としては、純水やエタノール等が用いられる。
【0039】
容器4を構成する下板部材1、フレーム部材2及び上板部材3の材料としては、典型的には銅が用いられる。その他に、例えばニッケル、アルミニウム、又はステンレス等が用いられてもよい。下板部材1及び上板部材3の厚みは、典型的には0.1mm〜0.8mmである。フレーム部材2の幅aは典型的には2mmである。
【0040】
フレーム部材2の厚みについては、後に説明するように、毛細管部材5の厚みとの関係で適宜設定される。ここで典型的な例として挙げる材料及び数値等は、これに限られるという意味ではなく、それは以後も同様である。
【0041】
図2に示すように、第1のメッシュ層6及び第2のメッシュ層7は、金属細線による網目状のメッシュを有するメッシュ部材8が、1枚又は複数枚積層されて形成されている。各メッシュ部材8の厚みは、典型的には0.02mm〜0.05mmである。
【0042】
毛細管部材5として、メッシュ層以外のものが用いられてもよい。例えば複数のワイヤーが束になったものなどが挙げられる。作動流体に毛細管力を作用させるものであり、かつ所定の弾性を有しているものであればどのようなものでもよい。本実施形態では、第1のメッシュ層6として、2〜5枚のメッシュ部材8が積層され、第1のメッシュ層6の上に第2のメッシュ層7として、1枚のメッシュ部材8が積層されている。複数のメッシュ部材8は、例えばろう付け、接着剤を用いた接合、めっき処理等により積層される。
【0043】
熱輸送デバイス100が動作していないときは、作動流体は、第1のメッシュ層6及び第2のメッシュ層7のうち、主に毛細管力の強い第1のメッシュ層6の方に引き寄せられて保持されている。
【0044】
[熱輸送デバイスの動作]
熱輸送デバイス100の動作について説明する。熱輸送デバイス100の吸熱部V(図1参照)において、例えば回路デバイス等の熱源9から熱を受け、液相の作動流体が蒸発する。気相になった作動流体は容器4内を放熱部Wへ移動し、放熱部Wにおいて熱を放出し、凝縮する。放熱部Wで液相になった作動流体は容器4内を吸熱部Vへ移動し、熱源9からの熱を受けて再び蒸発する。このサイクルが繰り返されることで、熱源9が冷却される。本実施形態に係る熱輸送デバイス100においては、主に第2のメッシュ層7を通って、気相の作動流体が移動する。また第1のメッシュ層6による毛細管力を受けて、液相の作動流体が移動する。
【0045】
なお図1では、熱源9は、熱輸送デバイス100の液相側に近い側、つまり第1のメッシュ層6に近い側に配置される例を示した。しかし、熱輸送デバイス100は、薄板形状で形成されているので、図13に示すように、例えば熱輸送デバイス100の気相側に近い側、つまり第2のメッシュ層7側に近い側に配置されても、高い熱輸送性能を発揮することができる。
【0046】
[熱輸送デバイス100の製造方法]
図3は熱輸送デバイス100の製造方法を説明するための図である。ここで、第1のメッシュ層6及びその上に積層される第2のメッシュ層7からなる毛細管部材5の厚みをt1とする。また、下板部材1及び上板部材3とフレーム部材2とが拡散接合されることで構成される容器4の内部空間の厚み、つまりフレーム部材2の厚みをt2とする。図3に示すように、毛細管部材5の厚みt1とフレーム部材2の厚みt2とを比べると、毛細管部材5の厚みt1の方が大きい。毛細管部材5の厚みt1とフレーム部材2の厚みt2との差は、典型的には0mm〜0.2mmである。
【0047】
図4は、その熱輸送デバイス100の製造方法を順に示す模式的な断面図である。
【0048】
図4(A)に示すように、下板部材1の、容器4における内部空間側の面を、下板部材1の内面11とする。この内面11に、毛細管部材5が載置される。
【0049】
図4(B)に示すように、下板部材1の内面11上にフレーム部材2が載置され、また、毛細管部材5上に上板部材3が載置される。つまり、下板部材1及び上板部材3の間に、毛細管部材5が挟まれるように、下板部材1、毛細管部材5及び上板部材3が積層される。
【0050】
上述したように毛細管部材5の厚みt1とフレーム部材2の厚みt2とでは、毛細管部材5の厚みt1の方が大きい。従って図4(B)に示すように、上板部材3は毛細管部材5に載置されることになり、上板部材3とフレーム部材2とは間隔がある。上板部材3の、容器4における内部空間側の面を上板部材3の内面31とし、フレーム部材2の上板部材3と対向する面を対向面21とする。また上板部材3の内面31とフレーム部材2の対向面21との間隔をGとする。
【0051】
本実施形態では、毛細管部材5の厚みt1とフレーム部材2の厚みt2との差を0mm〜0.2mmとするので、上板部材3の内面31とフレーム部材2の対向面21との間隔Gは0mm〜0.2mmの範囲である。上板部材3及びフレーム部材2は拡散接合されるので、その拡散接合に求められる圧力により、間隔Gは押しつぶされることになる。以後、間隔Gを、押しつぶし量Gと言う。
【0052】
図4(C)に示すように、上板部材3側から圧力Pが加えられ、下板部材1とフレーム部材2、及び上板部材3とフレーム部材2とが拡散接合される。このとき、毛細管部材5は押しつぶし量G分圧縮される。毛細管部材5は弾性を有しているので、圧力Pの一部が吸収され、その圧力Pよりも小さい圧力P´が、毛細管部材5から下板部材1へ加えられる。この圧力P´により、下板部材1の内面11と毛細管部材5とが拡散接合される。
【0053】
例えば小さな穴等で容器4内の気密性が破られるリーク不良を防ぐために、下板部材1とフレーム部材2、及び上板部材3とフレーム部材2とは、高い接合力(圧力P)で拡散接合される。下板部材1及び第1のメッシュ層6は、作動流体に毛細管力が適切に作用するような適度な圧力(圧力P´)で拡散接合される。
【0054】
また、圧力P´の反作用により、上板部材3にも、圧縮された毛細管部材5から、圧力Pよりも小さい圧力P´´が加えられる。この圧力P´´により、上板部材3の内面31と毛細管部材5とが拡散接合される。本実施形態では、上板部材3側から圧力Pが加えられるが、下板部材1側から圧力Pが加えられてもよい。
【0055】
押しつぶし量Gが0mmの場合は、毛細管部材の厚みt1とフレーム部材2の厚みt2との差が0mmとなり、t1=t2となる。しかしながら、押しつぶし量Gが0mmの場合でも、図4(B)において毛細管部材5に載置された上板部材3は、毛細管部材5及びフレーム部材2に載置される。図4(C)における拡散接合工程は高温状態で行われるので、上板部材3も高温になりわずかに変形する。この変形によって、毛細管部材5が圧縮される。
【0056】
図5は、押しつぶし量Gと、その押しつぶし量Gで製造された熱輸送デバイス100のリーク不良率を表す表である。図5の表に示すように、押しつぶし量Gが例えば0mm〜0.10mmの範囲で、リーク不良率0%が確認された。
【0057】
図6(A)は、押しつぶし量Gを0.10mmとして製造された熱輸送デバイス100の、下板部材1の内面11を観察した写真である。図6(B)も同様で、こちらは押しつぶし量Gを0mmとして製造された熱輸送デバイス100の下板部材1の内面11である。
【0058】
図6(A)(B)共に、下板部材1の内面11には、ほぼ等間隔に並んだ窪みが見える(丸で囲ったK)。この窪みは、下板部材1の内面11と第1のメッシュ層6との拡散接合によりできた窪みである。つまり、押しつぶし量0mm〜0.10mmの範囲で、図4(C)の拡散接合工程において、下板部材1の内面11と第1のメッシュ層6とが確実に拡散接合されることが分かる。
【0059】
以上により、本実施形態に係る熱輸送デバイス100の製造方法では、熱輸送デバイス100の容器4を構成するために下板部材1とフレーム部材2、及びフレーム部材2と上板部材3とが拡散接合される。この拡散接合工程において、下板部材1と、下板部材1及び上板部材3に挟まれるように積層された毛細管部材5とが拡散接合される。従って、複数の拡散接合が同じ工程において行われるので、少ない工程により効率的に製造される、安価な熱輸送デバイスの製造方法が実現する。
【0060】
複数の拡散接合が別の工程で行われる場合、各拡散接合ごとに熱輸送デバイスが高温状態にさらされる。このことは、熱輸送デバイスの製造における歩留まり低下の原因となる。例えば、下板部材1の内面11及び毛細管部材5が拡散接合された(拡散接合α)後、別の工程で、下板部材1とフレーム部材2、及びフレーム部材2と上板部材3とが拡散接合され容器4が構成される(拡散接合β)。この場合、下板部材1、フレーム部材2及び上板部材3が、拡散接合αにおいて一度高温にさらされているので、拡散接合βにおいて形成される容器4に小さな穴が開くといった不良が多く発生する。しかしながら、本実施形態に係る熱輸送デバイス100の製造方法では、上記のような歩留まりの低下を防ぐことができ、コストを抑えることができる。
【0061】
また、容器4の側壁を構成するフレーム部材2の厚みt2と毛細管部材5の厚みt1との関係により、毛細管部材5が圧縮される程度が調節され、毛細管部材5に吸収される圧力Pの一部が調節される。従って、フレーム部材2の厚みt2と毛細管部材5の厚みt1とを適宜設定することで、下板部材1の内面11と毛細管部材5との拡散接合に求められる、所望の圧力P´を得ることができる。
【0062】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について説明する。これ以降の説明では、第1の実施形態で説明した熱輸送デバイス100の製造方法における構成及び作用と同様な部分については、その説明を省略又は簡略化する。
【0063】
[熱輸送デバイスの構成]
図7は、本発明の第2の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を順に示す模式的な断面図である。熱輸送デバイス200は、第1の実施形態に係る熱輸送デバイス100において、上板部材3及びフレーム部材2に代えて上板部材203を有する。この上板部材203と下板部材1とで熱輸送デバイス200の容器204が構成される。
【0064】
上板部材203は、ベッセル状の形状を有し、毛細管部材5上に載置される上板部203aと、容器204の側壁を構成する側壁部203bと、下板部材1と拡散接合される接合部203cとを有する。
【0065】
容器204の内部空間側から見た側壁部203bの高さ(以後、側壁部203bの高さと言う)をt3とすると、容器204の内部空間の厚みはt3となる。側壁部203bの高さt3と、毛細管部材5の厚みt1とを比べると、毛細管部材5の厚みt1の方が大きい。
【0066】
[熱輸送デバイス200の製造方法]
図7(A)に示すように、下板部材1の内面11に、毛細管部材5が載置される。
【0067】
図7(B)に示すように、毛細管部材5上に上板部材203が載置される。側壁部203bの高さt3よりも、毛細管部材5の厚みt1の方が大きいので、上板部材203は毛細管部材5に載置されることになり、上板部材203と下板部材1とは間隔がある。上板部材203の接合部203cにおける下板部材1と対向する面を対向面231とし、この対向面231と下板部材1の内面11との間隔を押しつぶし量Gとする。
【0068】
図7(C)に示すように、上板部材203側から圧力Pが加えられ、下板部材1と上板部材203が拡散接合される。このとき、毛細管部材5は押しつぶし量G分圧縮され、圧力Pの一部が吸収される。毛細管部材5から圧力Pより小さい圧力P´が下板部材1へ加えられ、この圧力P´により、下板部材1の内面11と毛細管部材5とが拡散接合される。
【0069】
以上により、本実施形態に係る熱輸送デバイス200の製造方法では、側壁部203bの高さt3と毛細管部材5の厚みt1とを適宜設定することで、第1の実施形態に係る熱輸送デバイス100の製造方法と同様な効果を得ることができる。また上板部材203を、例えばプレス加工、又は鋳造加工等の金型加工を用いて製造することで、熱輸送デバイス200の製造におけるコストを抑えることができる。また、上板部材203が接合部203cを有しているので、上板部材203及び下板部材1の接合面積を充分に取ることができる。これにより、上板部材203及び下板部材1が拡散接合されることで形成される容器204の気密性が高められる。
【0070】
<第3の実施形態>
図8は、第3の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法で製造された、熱輸送デバイスを示す模式的な断面図である。図8の断面図は、熱輸送デバイス300の短手方向の断面図である。また、これ以降の説明では、毛細管部材5を簡略化して図示する。
【0071】
熱輸送デバイス300は、第2の実施形態に係る熱輸送デバイス200において、上板部材203に代えて上板部材303を有する。上板部材303と下板部材1とで熱輸送デバイス300の容器304が構成される。
【0072】
上板部材303は、第2の実施形態に係る熱輸送デバイス200が有する上板部材203と同様に、上板部303aと、側壁部303bと、接合部303cとを有している。上板部303aが突起部313を有している点で、上板部材203と異なる。
【0073】
突起部313は、熱輸送デバイス300の容器304における内部空間側に突起している。突起部313は、熱輸送デバイス300の長手方向に沿って長い形状を有し、上板部材303の上板部303aに設けられる。
【0074】
本実施形態の熱輸送デバイス300の製造時においては、毛細管部材5は、突起部313により圧縮され押しつぶされた状態で、上板部材303と下板部材1とが拡散接合される。また、この拡散接合工程により、毛細管部材5と下板部材1とが拡散接合される。
【0075】
図9は、本実施形態により製造された熱輸送デバイス300の、下板部材1の内面11を観察した写真である。
【0076】
突起部313により毛細管部材5が圧縮される。その圧縮された部分に対応する下板部材1の内面11上の領域(破線の丸で囲った領域)を中心に、下板部材1の内面11と毛細管部材5との拡散接合による窪みが見える(丸で囲ったK)。本実施形態では、突起部313は、熱輸送デバイス300の長手方向に沿って、2ヶ所設けられている。図9に示すように、内面11上に略等間隔で並ぶ窪みが2本確認できる(L1及びL2)。
【0077】
以上により、本実施形態に係る熱輸送デバイス300では、上板部材303が突起部313を有しているので、この突起部313により、容器304の内部空間を補強することができる上、確実に毛細管部材5を圧縮することができる。また突起部313により、毛細管部材5の厚みt1が容器304の内部空間の厚みより小さい範囲でも、毛細管部材5の圧縮が可能となる。例えば、毛細管部材5を液相の作動流体の流路に設け、気相の作動流体の流路には設けないといった、所望の設計が可能となる(図8参照)。
【0078】
また、突起部313は金型加工や、例えばRIE(Reactive Ion Etching)等のエッチング技術により形成することができ、熱輸送デバイス300の製造におけるコストを抑えることができる。
【0079】
本実施形態では突起部313は熱輸送デバイス300の長手方向に沿って長い形状を有しているが、これに限られない。上板部303aの所望の位置に、所望の数の突起部313を設けてもよい。これにより、例えば、気相の作動流体の流路の容積が大きくなり、熱輸送デバイス300の熱輸送効率が上がる等の効果を実現することができる。
【0080】
<第4の実施形態>
図10は、治具を用いた熱輸送デバイスの製造方法を説明するための図である。
【0081】
熱輸送デバイス400は、第2の実施形態に係る熱輸送デバイス200とほぼ同様の構成である。ベッセル状の形状を有する上板部材403の側壁部403bが、容器404の厚み方向に対して傾斜している点で、熱輸送デバイス200の構成と異なる。本実施形態では、上板部材403の上板部403a、側壁部403b及び接合部403cは、ほぼ同じ厚みからなる。
【0082】
上板部材403、下板部材1、及びこれらに挟まれた毛細管部材5により熱輸送デバイスユニット450が構成される。
【0083】
治具部600は、熱輸送デバイスユニット450の上板部材403を載置する載置面610を有する。治具部600の載置面610は、上板部材403の上板部403aを載置する下段面610aと、接合部403cを載置する上段面610bとを含む。下段面610a及び上段面610bは、段差を介して繋がっており、この段差と下段面610aと上段面610bとで、治具部600の凹部が形成される。
【0084】
治具部600の凹部の深さとなる、下段面610aから上段面610bまでの高さをt4とする。高さt4と毛細管部材5の厚みt1とを比べると、毛細管部材5の厚みt1の方が、0mm〜0.2mm大きい。
【0085】
治具部600の材料としては、典型的にはカーボン又はステンレスが用いられる。
【0086】
[熱輸送デバイス400の製造方法]
図11は、熱輸送デバイス400の製造方法を順に示す模式的な断面図である。
【0087】
図11(A)に示すように、上板部材403、毛細管部材5及び下板部材1が順に、治具部600の載置面610上に積層される。上板部材403の接合部403cと下板部材1との間には、押しつぶし量Gが設けられる。この押しつぶし量Gは、高さt4及び接合部403cの厚みを足したもの(高さX)と、毛細管部材5の厚みt1及び上板部403aの厚みを足したもの(高さY)との差である。
【0088】
本実施形態では、上板部403aと接合部403cとが、ほぼ同じ厚みからなる。従って、上記押しつぶし量Gは、高さt4と毛細管部材5の厚みt1との差にほぼ等しくなる。
【0089】
図11(B)に示すように、熱輸送デバイスユニット450及び治具部600が積層された方向で、熱輸送デバイスユニット450の上板部材403と下板部材1との拡散接合に求められる圧力Pがかけられる。このとき、弾性を有する毛細管部材5から下板部材1に加えられる圧力P´´により、下板部材1の内面11と毛細管部材5とが拡散接合される。
【0090】
例えば上板部材403を金型加工等で複数形成した場合、形成における誤差等で、複数の上板部材403の各側壁部403bの高さが均等にならず、ばらつく場合が考えられる。
【0091】
しかしながら、本実施形態においては、上板部材403の接合部403cが、治具部600の上段面610bに押さえつけられながら、下板部材1と拡散接合される。従って、各側壁部403bの高さのばらつきに関わらず、高さt4と毛細管部材5の厚みt1との差により、押しつぶし量Gが定められる。これにより、図11(B)に示す拡散接合工程において、毛細管部材5がばらつきなく押しつぶし量G分圧縮されるので、下板部材1と毛細管部材5との拡散接合に求められる圧力P´´を、ばらつきなく得ることができる。
【0092】
本実施形態では、上板部材403の上板部403aと接合部403cとがほぼ同じ厚みからなるが、これに限られない。上板部材403の形状に基づいて、高さt4と毛細管部材5の厚みt1とを適宜設定し、所望の押しつぶし量Gを設けることができる。
【0093】
<第5の実施形態>
図12は、複数の治具を用いた熱輸送デバイスの製造方法を順に示す模式的な断面図である。治具部700及び熱輸送デバイス500は、第4の実施形態に係る治具部600及び熱輸送デバイス400とほぼ同様の構成である。
【0094】
図12(A)に示すように、治具部700の載置面710上に、上板部材503、毛細管部材5及び下板部材1が順に積層される。さらに、その下板部材1上に治具部700が積層され、その治具部700の載置面710上には、また上板部材503、毛細管部材5及び下板部材1が順に積層される。このようにして複数の熱輸送デバイスユニット550と複数の治具部700とが積層される。各熱輸送デバイスユニット550の、上板部材503の接合部503cと下板部材1との間には、押しつぶし量Gが設けられる。
【0095】
図12(B)に示すように、複数の熱輸送デバイスユニット550及び複数の治具部700が積層された方向で、各熱輸送デバイスユニット550の上板部材503と下板部材1との拡散接合に求められる圧力Pがかけられる。このとき、弾性を有する毛細管部材5から下板部材1に加えられる圧力P´´により、下板部材1の内面11と毛細管部材5とが拡散接合される。
【0096】
以上により、本実施形態の熱輸送デバイス500の製造方法では、複数の熱輸送デバイスユニット550及び複数の治具部700が積層された方向に、複数の熱輸送デバイスユニット550及び複数の治具部700に圧力Pが加えられることで、複数の熱輸送デバイス500が一度に製造される。つまり熱輸送デバイス500の製造におけるバッチ処理が可能となる。
【0097】
拡散接合は真空環境下で大きな荷重により行われるので、1回の拡散接合工程にかかるコストは大きい。また、拡散接合工程は、高温状態で熱輸送デバイスの容器が接合された後に、そのまま真空環境下で熱輸送デバイスが冷却されるというプロセスを含むので、費やされる時間も多い。しかしながら、本実施形態における熱輸送デバイス500の製造方法によれば、上記したバッチ処理が可能となるので、コストが抑えられ、また製造時間も短縮される。これにより、さらに効率のよい、安価な熱輸送デバイスの製造方法が実現する。
【0098】
<第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
【0099】
上記各実施形態では、容器が、上板部材、下板部材等により形成されるとして説明した。一方、第6実施形態では、容器が、1つの板部材が曲げられることで形成される。従って、その点を中心に説明する。
【0100】
図14は、第6の実施形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。図15は、図14に示すA−A間の断面図である。図16は、熱輸送デバイスの容器を構成する板部材の展開図である。
【0101】
図14に示すように、熱輸送デバイス110は、一方向(Y軸方向)に長い矩形の薄板形状を有する容器51を備えている。この容器51は、1つの板部材52が曲げられることで形成される。
【0102】
板部材52は、典型的には、無酸素銅、タフピッチ銅、あるいは銅合金で構成される。しかしこれに限られず、板部材52は、銅以外の金属で構成されてもよく、その他、熱伝導率の高い材料が用いられてもよい。
【0103】
図14及び図15に示すように、容器51は、長手方向(Y軸方向)に沿う方向での側部51cが、湾曲した形状とされている。すなわち、容器51は、図16に示す板部材52が、板部材52の略中央で曲げられて形成されることから、側部51cが湾曲した形状とされている。以降では、側部51cを湾曲部51cと呼ぶ場合がある。
【0104】
容器51は、側部51c(湾曲部51c)とは反対側の側部51dと、短手方向に沿う方向での側部51e、51fとに接合部53を有している。接合部53は、それぞれの側部51d、51e、51fから突出するように設けられている。この接合部53において、曲げられた板部材52が接合される。接合部53は、図16に示す板部材52の、接合領域52a(斜線で示す領域)に相当する。接合領域52aは、板部材52の縁部52bから所定の距離d、の範囲内の領域とされる。
【0105】
容器51の内部には、毛細管部材5が設けられている。毛細管部材5は、上述のように、1つまたは複数のメッシュ部材8を含む。毛細管部材5の厚みは、容器51の内部空間の厚み程度(内部空間の厚みよりわずかに大きくてもよいし、小さくてもよい。)に設定することができる。
【0106】
[熱輸送デバイス110の製造方法]
図17は、熱輸送デバイスの製造方法を示す図である。
【0107】
図17(A)に示すように、まず、板部材52が用意される。そして、板部材52の略中央において、板部材52が曲げられる。
【0108】
板部材52が所定の角度まで曲げられると、図17(B)に示すように、曲げられた板部材52の間に、毛細管部材5が入れられる。なお、毛細管部材5は、板部材52の曲げが開始される前に、板部材52上の所定の位置に配置されていてもよい。
【0109】
板部材52の間に、毛細管部材5が入れられると、図17(C)に示すように、毛細管部材5を挟み込むように、板部材52がさらに曲げられる。そして、曲げられた板部材52の接合部53(接合領域52a)が拡散接合により接合されることにより、毛細管部材5が板部材52の上板部52c及び下板部52dに拡散接合により接合される。
【0110】
この熱輸送デバイス110の場合、容器51が1つの板部材52により形成されるので、部品数が減り、コストを削減することができる。また、2つ以上の部材で容器51が形成される場合、これらの部材の位置を合わせる必要があるが、本実施形態では、部材の位置を合わせる必要がない。従って、熱輸送デバイス110を容易に製造することができる。
【0111】
[変形例]
図18は、上記熱輸送デバイス110の変形例を説明するための図であり、板部材の展開図である。
【0112】
図18に示すように、板部材52は、板部材52の中央において、長手方向(Y軸方向)に沿うように、溝54を有している。溝54は、例えば、プレス加工や、エッチング加工により形成されるが、溝54の形成方法は、特に限定されない。
【0113】
板部材52に溝54が設けられることで、板部材52を曲げ易くすることができる。これにより、さらに容易に、熱輸送デバイス110を製造することができる。なお、板部材52は長手方向で(Y方向を軸として)折り曲げる構造を示したが、短辺(短手方向)で(X方向を軸として)折り曲げるようにしてもよい。
【0114】
<第7の実施形態>
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。なお、第7の実施形態では、上述の第6の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0115】
図19は、第7の実施形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。図20は、図19に示すA−A間の断面図である。図21は、熱輸送デバイスの容器を構成する板部材の展開図である。
【0116】
図19及び図20に示すように、熱輸送デバイス120は、一方向(Y軸方向)に長い矩形の薄板形状を有する容器61を備えている。
【0117】
この容器61は、図21に示す板部材62が中央から折り返されて形成される。板部材62は、板部材62の中央において、板部材62の長手方向に沿うように、2つの開口65が設けられている。このように開口65が設けられることにより、板部材62の左側の板と右側の板とが、3つの領域66で接続されたような形状となっている。
【0118】
容器61は、長手方向(Y軸方向)に沿う方向での側部61c、61dと、短手方向(x軸方向)に沿う方向での側部61e、61fとに接合部63を有している。この接合部63において、上板と下板とが拡散接合により接合されて、容器61が形成される。接合部63は、図21に示す板部材62の、斜線で示す接合領域62a、62bに相当する。
【0119】
このように上板と下板とが接合された結果、側部61cから突出した3つの突出部64が形成される。
【0120】
熱輸送デバイス120では、板部材62に開口65が設けられるため、板部材62を容易に曲げることができる。これにより、さらに容易に熱輸送デバイス120を製造することができる。
【0121】
板部材62の、開口65及び縁部62cとの間の領域66と、2つの開口65の間の領域66とに、例えば、プレス加工により形成された溝が設けられていてもよい。これによりさらに容易に、板部材62を折り曲げることができる。
【0122】
<第8の実施形態>
[熱輸送デバイスの構成]
図22は、本発明の第8の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を説明するための図である。本実施形態に係る熱輸送デバイス800は、第2の実施形態に係る熱輸送デバイス200において、毛細管部材5に代えて、厚みがt1でなる毛細管部材805を有するものである。
【0123】
毛細管部材805は、第1のメッシュ部材860と、第1のメッシュ部材860に積層された第2のメッシュ部材870と、第2のメッシュ部材870に積層された接合用メッシュ部材850とを有する。本実施形態に係る熱輸送デバイス800では、気相の作動流体は主に第1のメッシュ部材860を通って移動し、液相の作動流体は主に第2のメッシュ部材870を通って移動する。
【0124】
第2のメッシュ部材870のバネ定数と、接合用メッシュ部材850のバネ定数とを比べると、第2のメッシュ部材870のバネ定数の方が大きい。第1のメッシュ部材860のバネ定数も、接合用メッシュ部材850のバネ定数より大きく設定されている。第1のメッシュ部材860のバネ定数及び第2のメッシュ部材870のバネ定数は、同じでもよいし、異なってもよい。しかしながら、第1のメッシュ部材860及び第2のメッシュ部材870の各バネ定数が異なる場合、その差は、第2のメッシュ部材870及び接合用メッシュ部材850の各ばね定数の差と比べて小さいものである。本実施形態では、第1のメッシュ部材860のバネ定数及び第2のメッシュ部材870のバネ定数は、ほぼ等しいものとする。
【0125】
ここで、バネ定数について説明する。本実施形態の説明において述べるバネ定数とは、各メッシュ部材の厚み方向についてのバネ定数である。図23は、バネ定数が異なる接合用メッシュ部材850と、第1のメッシュ部材860及び第2のメッシュ部材870とに厚み方向で応力が加えられた際の、応力とその応力による厚み方向の変形量(潰れ量)との関係を示す模式的なグラフである。
【0126】
図23に示すグラフでは、バネ定数の小さい接合用メッシュ部材850についての応力と変形量との関係を破線で示している。一方、バネ定数の大きい第1のメッシュ部材860及び第2のメッシュ部材870についての応力と変形量との関係を実線で示している。グラフに「変形量の差」として示されているように、接合用メッシュ部材850と、第1のメッシュ部材860及び第2のメッシュ部材870とに、同じ応力σが加えられた場合では、接合用メッシュ部材850の変形量の方が大きい。つまり、バネ定数の小さい接合用メッシュ部材850の方が、バネ定数の大きい第1のメッシュ部材860及び第2のメッシュ部材870よりも変形しやすい。
【0127】
バネ定数とメッシュ部材の形状について説明する。複数の金属細線が編み込まれてなるメッシュ部材において、編み込まれた金属細線の網目の大きさが同じ場合、金属細線の太さ(径)が大きい方が、バネ定数は大きい。金属細線の径が同じ場合では、網目が小さい方がバネ定数は大きい。このように、編み込まれる金属細線の網目の大きさ及び径を適宜設定することで、所望のバネ定数を有するメッシュ部材が得られる。この他、用いられる金属細線の材料等を適宜設定することで、メッシュ部材のバネ定数が適宜設定されてもよい。
【0128】
本実施形態では、バネ定数が小さい接合用メッシュ部材850は、金属細線の網目の大きさが、第1のメッシュ部材860及び第2のメッシュ部材870として編み込まれる金属細線の網目よりも小さい。しかしながら、接合用メッシュ部材850では、第1のメッシュ部材860及び第2のメッシュ部材870に用いられる金属細線よりも径の小さい金属細線が用いられる。これにより、接合用メッシュ部材850のバネ定数は、第1のメッシュ部材860及び第2のメッシュ部材870より小さく設定されている。
【0129】
[熱輸送デバイス800の製造方法]
図24(A)に示すように、下板部材1の内面11上に、毛細管部材805の第1のメッシュ部材860が載置される。また、毛細管部材805の接合用メッシュ部材850上に上板部材203が載置される。下板部材1及び上板部材203の間には、押しつぶし量Gが設けられる。
【0130】
図24(B)に示すように、上板部材203側から圧力Pが加えられ、下板部材1と上板部材203が拡散接合される。この際、押しつぶし量G分圧縮された毛細管部材805からの圧力P´及びP´´により、毛細管部材805と、下板部材1及び上板部材203とがそれぞれ拡散接合される。
【0131】
図24(B)に示す拡散接合工程での、毛細管部材805と上板部材203との拡散接合について詳しく説明する。図25は、図24で示す上板部材203、接合用メッシュ部材850、及び第2のメッシュ部材870を拡大して示した図である。図26は、比較例として挙げる毛細管部材895と上板部材203との拡散接合を示した拡大図である。毛細管部材895は、第2のメッシュ部材870上に接合用メッシュ部材850が積層されていないものである。従って、図26では、上板部材203と第2のメッシュ部材870とが拡大されて図示されている。以降の説明では、毛細管部材895の第2のメッシュ部材870を第2のメッシュ部材870´として説明する。
【0132】
図25には、接合用メッシュ部材850として編み込まれる複数の金属細線855及び第2のメッシュ部材870として編み込まれる複数の金属細線875(875a及び875b)が図示されている。金属細線855及び875は、図25で示すX方向で編み込まれている。同様に図26にも、第2のメッシュ部材870´として編み込まれる複数の金属細線875´(875a´及び875b´)が図示されている。図25及び図26では、金属細線855、875及び875´に、X方向と異なる方向で編み合わされる金属細線は省略されている。
【0133】
図25(A)には、上板部材203に拡散接合される前の接合用メッシュ部材850及び第2のメッシュ部材870が図示されている。図25(A)に示すように、編み込まれる各金属細線855及び875は、熱輸送デバイス800の厚み方向(図25で示すZ方向)における位置で、寸法公差によるばらつきがある。同様に、第2のメッシュ部材870´の金属細線875´にも、寸法公差によるばらつきがある。
【0134】
上記のばらつきを有する第2のメッシュ部材870´が上板部材203と拡散接合される場合、図26(A)に示すように、金属細線875a´は上板部材203と拡散接合されるが、金属細線875b´は上板部材203と拡散接合されない。この状態では、毛細管部材895及び上板部材203の拡散接合は十分とはいえない。
【0135】
金属細線875b´を上板部材203に拡散接合させるために、拡散接合工程における圧力を大きくした場合、図26(B)に示すように、金属細線875a´が、金属細線875b´と比べて大きく変形してしまう。このような金属細線875a´及び875b´の変形量の違いが発生すると、液相の作動流体に毛細管力を発生させる等の熱輸送の性能に係わる機能が十分に発揮されない可能性がある。
【0136】
一方で、接合用メッシュ部材850を有する本実施形態に係る毛細管部材805が上板部材203と拡散接合される場合、図25(B)に示すように接合用メッシュ部材850及び第2のメッシュ部材870が上板部材203に拡散接合される。バネ定数が小さい接合用メッシュ部材850は、拡散接合工程において十分に変形し、上板部材203と十分に拡散接合される。バネ定数が大きく変形しにくい第2のメッシュ部材870は、金属細線875aが上板部材203と拡散接合される。金属細線875bは上板部材203とは拡散接合されないが、金属細線855と拡散接合される。
【0137】
以上により、本実施形態では、バネ定数が小さい接合用メッシュ部材850が、拡散接合工程において、十分に圧縮され、その応力により上板部材203と十分に拡散接合される。また、接合用メッシュ部材850により、第2のメッシュ部材870の寸法公差による変形量のばらつきを吸収することができる。従って、図25(B)に示すように、上板部材203に拡散接合される金属細線875aが、金属細線875bと比べて大きく変形してしまうのを防ぐことができる。これにより、第2のメッシュ部材870は上板部材203に十分に接合されると共に、上記した熱輸送の性能に係わる機能を十分に発揮することができる。例えば、熱輸送デバイス800を高い熱流束密度に対応させる場合に、本実施形態における効果は大きいものとなる。
【0138】
本実施形態では、第2のメッシュ部材870の寸法公差について説明した。しかしながら、例えば、上板部材203の厚みや、側壁部203bの高さ(図22で示すt3)等のばらつきが原因となって第2のメッシュ部材870の変形量のばらつきが発生してしまうことも考えられる。こういった場合でも、接合用メッシュ部材850により、第2のメッシュ部材870の変形量のばらつきが吸収される。
【0139】
図27(A)及び(B)は、金属細線の編み込まれ方が異なるメッシュ部材をそれぞれ示した模式的な図である。図27(A)及び(B)には、同じ金属細線が、同じ網目の大きさで編み込まれてなるメッシュ部材M及びNがそれぞれ図示されている。図27(A)で示すメッシュ部材Mは、その厚みmが金属細線の径rのほぼ3倍になるように形成されている。図27(B)に示すメッシュ部材Nは、その厚みnが金属細線の径rのほぼ2倍になるように形成されている。つまり、メッシュ部材Nの方が、メッシュ部材Mよりも、メッシュ部材の厚み方向(図27で示すZ方向)においてきつく編み込まれているので、メッシュ部材Nの方がメッシュ部材Mよりもバネ定数が大きい。このように、金属細線の編み込まれ方により、バネ定数が適宜設定されてもよい。
【0140】
本実施形態の毛細管部材805は、メッシュ部材が積層されてなる。しかしながら、第1の実施形態で説明したように、作動流体に毛細管力を作用させるものであり、かつ所定の弾性を有しているものであればどのようなものでもよい。そのようなものとして、上記で挙げたものの他に、例えばエッチング技術により、すだれ形状、又は格子状に形成されたものや、溝が形成されたもの等が挙げられる。また、毛細管部材として、金属粉体の焼結構造を有するものが用いられてもよい。この場合、毛細管部材の上板部材に接合される側に、バネ定数が小さく変形しやすい部材を配置すれば、本実施形態と同様の効果を得ることができる。また、上記で挙げたものは、本発明の各実施形態において毛細管部材として用いることが可能である。
【0141】
[変形例]
図28は、毛細管部材805の変形例を示した図である。この毛細管部材805には、第1のメッシュ部材860の第2のメッシュ部材870が積層されている側の反対側に、接合用メッシュ部材840が積層されたものである。接合用メッシュ部材840のバネ定数は、第1のメッシュ部材860のバネ定数よりも小さい。つまり、接合用メッシュ部材840は、第1のメッシュ部材860と比べて変形しやすい。
【0142】
毛細管部材805が上板部材203及び下板部材1にそれぞれ拡散接合されることで、熱輸送デバイス800の容器204の内部空間が補強される。この際、第1のメッシュ部材860に積層された接合用メッシュ部材840と下板部材1とが拡散接合されることで、毛細管部材805と下板部材1とが十分に拡散接合される。
【0143】
第1のメッシュ部材860は、気相の作動流体の流路となる部材である。従って、拡散接合工程において第1のメッシュ部材860が大きく変形すると、気相の作動流体が移動する時の流路抵抗が大きくなってしまう可能性がある。また、第1のメッシュ部材860が大きく変形してしまうことで、熱輸送デバイス800の容器204内を作動流体が循環する際の圧力損失が大きくなってしまう可能性もある。しかしながら、バネ定数が大きく変形しにくい第1のメッシュ部材860が用いられることで、上記した問題が発生することを防ぐことができる。
【0144】
<第9の実施形態>
図29は、本発明の第9の実施形態に係る熱輸送デバイスを説明するための図である。本実施形態に係る熱輸送デバイス900は、第1の実施形態に係る熱輸送デバイス100において、下板部材1の内面11に、以下で説明する注入口900a及び注入路900bが形成されたものである。
【0145】
注入口900a及び注入路900bは、熱輸送デバイス900の製造過程において、容器4内に作動流体を注入するために形成される。注入口900a及び注入路900bは、下板部材1の長手方向(図29で示すX方向)における端部であり、内面11においてフレーム部材2と拡散接合される領域に形成される。
【0146】
図30は、注入口900a及び注入路900bを拡大して示した平面図である。注入口900aは、下板部材1を貫通するように形成されている。注入路900bは、注入口900aと連通するように内面11上に形成された溝であり、注入口900aが設けられた側と反対側の端部で容器4の内部に連通している。図30に示すように、注入路900bは、例えばL字状に形成される。
【0147】
注入路900bは、例えばエンドミル加工、レーザ加工、プレス加工、または、半導体製造におけるフォトリソグラフィ及びハーフエッチング等の微細加工により形成されればよい。プレス加工によればバリが出ないという特徴がある。レーザ加工及びエンドミル加工の場合は、型が不要であり、自由な形状の溝を形成することができる。
【0148】
注入口900a及び注入路900bは、熱輸送デバイス900の製造工程において、容器4内に作動流体が注入された後に、例えばかしめ加工により封止される。
【0149】
<第10の実施形態>
図30は、本発明の第10の実施形態に係る熱輸送デバイスを説明するための図である。図29で示す熱輸送デバイス900では、下板部材1に注入口900a及び900bが形成されている。本実施形態に係る熱輸送デバイス910では、図30に示すように、上板部材3に注入口910aが形成され、フレーム部材2に注入路910bとなる溝が形成されている。
【0150】
注入口910aは、上板部材3の長手方向(図30で示すX方向)における端部に、上板部材3を貫通するように形成されている。注入路910bは、フレーム部材2において上板部材3と拡散接合される領域に形成される。注入路910bは注入口910aと連通するように形成され、注入路910bの注入口910aと連通する側の反対側の端部は、容器4の内部と連通している。本実施形態では、注入口910aは上板部材3に形成されるが、注入口910aが下板部材1に形成され、注入路910bがフレーム部材2において下板部材1と拡散接合される領域に形成されてもよい。
【0151】
注入路910bが、仮にプレス加工によりフレーム部材2に形成されるとすると、注入路910bが形成される側とは反対側のフレーム部材2の面に凸が形成されてしまう。その場合、フレーム部材2と下板部材1とを接合することができない。従って、本実施形態の場合、注入路910bはレーザ加工またはエンドミル加工により形成されればよい。
【0152】
上記した本発明に係る各実施形態において、上板部材、下板部材、フレーム部材、又は毛細管部材の加工や切断等に、ワイヤー放電加工(ワイヤーカット)が用いられてもよい。ワイヤー放電加工とは、例えば真鍮、タングステン又はモリブデン等のワイヤーに電圧を加え、加工したい部材とワイヤーとの間で放電を発生させることにより、部材を加工する加工方法である。ワイヤー放電加工が用いられることにより、精度の高い微細加工が実現される。また部材の加工時間を短縮することができる。
【0153】
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更され得る。
【0154】
例えば、第5の実施形態におけるバッチ処理を、第1、第2、第3、及び第4の実施形態における熱輸送デバイスの製造方法に用いてもよい。第5の実施形態で用いられる治具部700の形状を、下板部材及び上板部材に対応した形状にすれば、他の実施形態におけるバッチ処理が可能となる。
【符号の説明】
【0155】
1…下板部材
2…フレーム部材
3、203、303、403、503…上板部材
4、51、61、204、304、404…容器
5、805…毛細管部材
6…第1のメッシュ層
7…第2のメッシュ層
8…メッシュ部材
9…熱源
11…下板部材の内面
21…側壁部の対向面
31…上板部材の内面
52、62…板部材
100、110、120、200、300、400、500、800、900、910…熱輸送デバイス
203a、303a、403a…上板部
203b、303b、403b…側壁部
203c、303c、403c、503c…接合部
231…接合部の対向面
313…突起部
450、550…熱輸送デバイスユニット
600、700…治具部
610、710…載置面
610a…下段面
610b…上段面
840、850…接合用メッシュ部材
860…第1のメッシュ部材
870…第2のメッシュ部材
900a、910a…注入口
900b、910b…注入路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成する第1の板及び第2の板の間に、前記作動流体に毛細管力を作用させる毛細管部材を挟むように、前記第1の板、前記毛細管部材及び前記第2の板を積層させ、
前記第1の板と前記毛細管部材とが拡散接合されるように、前記第1の板と前記第2の板とを拡散接合する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記毛細管部材の厚みは、前記第1の板及び前記第2の板により構成される前記容器の内部空間の厚みより大きい
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記毛細管部材は弾性を有する材料からなり、
前記拡散接合工程は、前記毛細管部材を圧縮しながら、前記第1の板と前記第2の板とを拡散接合する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記毛細管部材は、
第1のメッシュ層と、
前記第1のメッシュ層に積層された、前記第1のメッシュ層に含まれるメッシュよりも目の粗いメッシュからなる第2のメッシュ層とを有する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記第2の板は突起部を有し、
前記拡散接合工程は、前記突起部により前記毛細管部材を圧縮しながら、前記第1の板と前記第2の板とを拡散接合する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記熱輸送デバイスは、前記容器の側壁を構成するフレーム部材を有し、
前記拡散接合工程は、前記第1の板と前記毛細管部材とが拡散接合されるように、前記第1の板と前記フレーム部材とを、かつ、前記第2の板と前記フレーム部材とを拡散接合する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記積層工程は、前記第1の板及び前記第2の板の間に前記毛細管部材を挟むように積層された、前記第1の板、前記毛細管部材及び前記第2の板を有するユニットを、凹部を有する治具部の前記凹部に嵌めるように、前記治具部と前記ユニットとを積層し、
前記拡散接合工程は、前記積層方向に前記治具部及び前記ユニットに圧力を加えることで、前記ユニットの前記第1の板と前記第2の板とを拡散接合する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記積層工程は、前記第1の板、前記毛細管部材及び前記第2の板をそれぞれ有する複数のユニットの各間に、治具部がそれぞれ積層されるように、前記複数のユニット及び前記複数の治具部を積層させ、
前記拡散接合工程は、前記積層方向に前記複数のユニット及び前記複数の治具部に圧力を加えることで、前記複数のユニットの前記第1の板と前記第2の板とを拡散接合する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記毛細管部材は、
第1のバネ定数を有し前記第1の板に拡散接合される第1の部材と、
前記第1のバネ定数より大きい第2のバネ定数を有し前記第1の部材に積層される第2の部材とを含む
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記拡散接合工程は、前記第1の板と前記毛細管部材とが拡散接合されるように、かつ、前記第2の板と前記毛細管部材とが拡散接合されるように、前記第1の板と前記第2の板とを拡散接合し、
前記毛細管部材は、第3の部材を含み、前記第3の部材は、前記第2のバネ定数より小さい第3のバネ定数を有し、前記第2の部材に積層され前記第2の板と拡散接合される
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項11】
作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成するための板を曲げることにより、前記作動流体に毛細管力を作用させる毛細管部材を、前記曲げられて形成される前記板の第1の部位及び第2の部位で挟み、
前記第1の部位と前記毛細管部材とが拡散接合されるように、前記第1の部位の端部と前記第2の部位の端部とを拡散接合することで、前記容器を形成する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項12】
内面を有する容器と、
前記容器に収容され、相変化することで熱を輸送する作動流体と、
第1のバネ定数を有し前記内面に拡散接合される第1の部材と、前記第1のバネ定数より大きい第2のバネ定数を有し前記第1の部材に積層される第2の部材とを含み、前記作動流体に毛細管力を作用させる毛細管部材と
を具備する熱輸送デバイス。
【請求項13】
側壁を有する容器であって、前記側壁を構成するフレーム部材と、前記フレーム部材を挟み込むように前記フレーム部材に接合された第1の板及び第2の板とを有する容器と、
前記容器内で、相変化することにより熱を輸送する作動流体と、
前記作動流体に毛細管部力を作用させる毛細管部材と
を具備する熱輸送デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図6】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−169379(P2010−169379A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127374(P2009−127374)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】