説明

熱輸送器およびそれを用いた磁気冷暖房装置

【課題】耐久性を備え機械的および熱的な損失を小さくし熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させる。
【解決手段】磁気熱量効果を有する磁性体10A−10Fと磁性体10A−10Fの熱を輸送する熱伝導部30A−30Gとを交互に配置する熱輸送器であって、熱伝導部30A−30Gは、電圧を印加すると金属に相転移して磁性体10A−10Fとの熱伝導を可能にし、電圧を除去すると絶縁体に相転移して前記熱伝導を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱輸送器およびそれを用いた磁気冷暖房装置に係り、特に、磁気熱量効果を発現する磁性体の熱を、電圧の印加、除去によって熱の伝導が制御できる熱伝導部を利用して輸送する熱輸送器およびそれを用いた磁気冷暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられている室温域の冷凍機、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、エアコンなどの冷凍機の大半は、フロンガスや代替フロンガスなどの気体冷媒の相変化を利用している。最近では、フロンガスの排出に伴うオゾン層破壊の問題が露呈し、さらに、代替フロンガスの排出に伴う地球温暖化への影響も懸念されている。このため、フロンガスや代替フロンガスなどの気体冷媒を用いた冷凍機に代わる、クリーンでかつ熱輸送能力の高い、革新的な冷凍機の開発が強く望まれている。
【0003】
このような背景から、最近になって注目されるようになった冷凍技術が磁気冷凍技術である。磁性体の中には、その磁性体に印加する磁界の大きさが変化すると、その変化に応じて自身の温度を変化させる、いわゆる磁気熱量効果を発現するものがある。この磁気熱量効果を発現する磁性体を利用して熱を輸送する冷凍技術が磁気冷凍技術である。
【0004】
磁気冷凍技術を応用した冷凍機としては、例えば、下記特許文献1に記載されているような、固体物質の熱伝導を利用して熱を輸送する磁気冷凍機がある。この磁気冷凍機は以下のような構成によって熱を伝導させる。
【0005】
磁気を印加すると温度が上昇する正の磁性体と、磁気を印加すると温度が下降する負の磁性体とを、所定の間隔で交互に複数一方向に並べて配置する。正負一対の磁性体で1つの磁性体ブロックを形成する。一方向に並ぶ複数の磁性体ブロックを環状に複数配置して磁性体ユニットを形成する。この磁性体ユニットと同心で内径と外径が略等しいハブ状の回転体に永久磁石を配置して磁気印加除去部を形成する。正負の磁性体との間を挿脱する熱伝導部材を正負の磁性体との間で摺動自在となるように配置する。
【0006】
永久磁石が配置されている回転体を磁性体ユニットと対向するように配置して磁性体ユニットに対し相対的に回転させる。正負の磁性体との間で挿脱される熱伝導部材を磁性体ユニットに対し相対的に回転させる。この回転体の回転によって正負の磁性体に同時に磁気が印加されまた除去される。また、熱伝導部材が回転方向に並ぶ正負の磁性体との間で挿脱される。永久磁石と熱伝導部材が回転することで、磁気熱量効果により磁性体が発生する熱を磁性体が配置される一方向に熱伝導部材を介して輸送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−147209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている発明の場合、磁性体が発生する熱を輸送するときに、熱伝導部材が正負の磁性体との間で挿脱される。熱伝導部材は正負の磁性体との間で摺動を繰り返すことから、熱伝導部材に耐久性を持たせる必要がある。また、熱伝導部材の摺動に伴い、磁性体との間で生じる摩擦により機械的な損失が発生する。
【0009】
さらに、熱伝導部材は正負の磁性体との間で摺動を繰り返すことから、実際には、構造上一方向にのみ熱を輸送することはできず、熱の輸送に際して熱的な損失が発生する。
【0010】
熱的な損失は次のような理由から発生する。
【0011】
熱伝導部材が熱伝導部材を挟む磁性体間にあるときには、熱伝導部材を挟む磁性体間でのみ熱が輸送される。ところが熱伝導部材が回転方向に隣り合う磁性体とまたがる位置にあるときには、熱伝導部材を挟む磁性体間だけではなく、回転方向に隣り合う磁性体間にも熱が輸送される。回転方向に隣り合う磁性体に輸送される熱は損失となり、磁気冷凍機の熱輸送能力及び熱輸送効率の低下を招く。
【0012】
本発明は、上記の問題を解決するために成されたものであり、摺動の耐久性を持たせる必要がなく、機械的および熱的な損失が極めて小さく、熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させることができる、熱輸送器およびそれを用いた磁気冷暖房装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係る熱輸送器は、磁気熱量効果を有する磁性体と当該磁性体の熱を輸送する熱伝導部とを交互に配置する。熱伝導部は、電圧を印加すると金属に相転移して磁性体との熱伝導を可能にし、電圧を除去すると絶縁体に相転移して当該熱伝導を遮断する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る磁気冷暖房装置によれば、熱伝導部は、電圧の印加、除去に応じて熱伝導を断続できるので、磁性体間に熱伝導部を摺動させずに熱を輸送させることができる。このため、熱伝導部に摺動の耐久性を持たせる必要がなく、熱伝導部の信頼性が向上する。また、摩擦による機械的な損失をなくすことができ、熱伝導部を駆動させるための損失を低減できる。
【0015】
また、熱伝導部は磁性体との並び方向にのみ熱を輸送でき、熱伝導部の熱伝導率は摺動型のものに比較して大きくできるので、熱の輸送に際して熱的な損失が小さくできる。
【0016】
さらに、熱伝導部は、電圧の印加、除去に応じて、磁性体間を全ての接触面を使って接続できるので、熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理の説明に供する図であり、複数の熱輸送器を配置した固定部の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理の説明に供する図であり、複数の磁気印加除去部を配置した上側の回転部の構成を示す図である。
【図3】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理の説明に供する図であり、複数の磁気印加除去部を配置した下側の回転部の構成を示す図である。
【図4】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作説明に供する図である。
【図5】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作説明に供する図である。
【図6】本発明に係る磁気冷暖房装置において熱が移動していく様子の説明に供する図である。
【図7】本発明に係る磁気冷暖房装置の効果を示すグラフである。
【図8】実施形態1に係る熱伝導部の構造図である。
【図9】実施形態2に係る熱伝導部の構造図である。
【図10】実施形態3に係る熱伝導部の構造図である。
【図11】実施形態4に係る熱伝導部の構造図である。
【図12】実施形態5に係る熱伝導部の構造図である。
【図13】実施形態6に係る熱伝導部の構造図である。
【図14】本発明に係る磁気冷暖房装置の固定部の構成図である。
【図15】本発明に係る磁気冷暖房装置の上側の回転部の構成図である。
【図16】本発明に係る磁気冷暖房装置の下側の回転部の構成図である。
【図17】本発明に係る磁気冷暖房装置のA−B断面図である。
【図18】本発明に係る磁気冷暖房装置の制御系のブロック図である。
【図19】図18の空調制御部と空調情報入力部のさらに具体的な制御系のブロック図である。
【図20】図18の磁気冷暖房装置の動作フローチャートである。
【図21】本発明に係る他の磁気冷暖房装置における磁気冷暖房の原理図である。
【図22】本発明に係る他の磁気冷暖房装置の構成図である。
【図23】図23の磁気冷暖房装置の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
各実施形態を説明する前に本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理を説明する。
【0019】
(磁気冷暖房装置の動作原理)
<固定部の構成>
図1は複数の熱輸送器を配置した固定部の構成を示す図である。円形状の固定部は分離部130A−130Dで区分した4つの熱輸送器1−4を有する。各熱輸送器は低温側熱交換部400Aから高温側熱交換部400Bに熱を伝導させる。各熱輸送器は磁性体と熱伝導部を交互に配置して形成する。磁性体には、発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として正の磁性体を用いる。熱伝導部には、電圧の印加、除去により熱伝導率が大きく変化する特性を持つ材料を用いる。熱伝導部は、電圧を印加(ON)すると熱伝導率が大きくなり、電圧を除去(OFF)すると熱伝導率が小さくなる。このため、熱伝導部は、電圧の印加、除去を制御することで磁性体に熱を伝導させたりさせなかったりすることができ、磁性体の並び方向に向けて効率的に熱を伝達させることができる。
【0020】
たとえば、熱輸送器1は、磁性体100A−100Eと熱伝導部300A−300Gとを交互に配置している。具体的には、低温側熱交換部400Aから熱伝導部300A−磁性体100A−熱伝導部300B−磁性体100B−熱伝導部300C−磁性体100C−熱伝導部300D−磁性体100D−熱伝導部300E−磁性体100E−熱伝導部300F−磁性体100F−熱伝導部300Gの順に配置して高温側熱交換部400Bに至る。低温側熱交換部400Aと熱伝導部300A、熱伝導部300Aから熱伝導部300Gまでの各熱伝導部と磁性体、熱伝導部300Gと高温側熱交換部400Bは相互に隙間なく接続してある。熱輸送器2−4の構成も熱輸送器1の構成と同一である。
【0021】
<回転部の構成>
図2及び図3に示す回転部は、図1に示した固定部を上下方向の両側から一定の隙間を設けて挟む。回転部の構成は下記のとおりである。
【0022】
図2は、複数の磁気印加除去部を配置した上側の回転部の構成を示す図である。円形状の上側の回転部は分離部200AU−200DUで区分した4つの磁気印加除去部1U−4Uを有する。図2に示す上側の回転部は、図の表側を図1に示す固定部の表側に対向して位置させ、上側の回転部の中心を固定部の中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図2は、固定部に対向して位置させた上側の回転部を固定部に向かって上から透視した状態を表している。
【0023】
磁気印加除去部1Uは、熱輸送器1に磁気印加除去部1Uが対峙する時刻T1の時に、回転部の外周から内周に向けて、磁性体100Aに対向する永久磁石210A、磁性体100Cに対向する永久磁石210C、磁性体100Eに対向する永久磁石210Eを有する。
【0024】
磁気印加除去部2Uは、熱輸送器1に磁気印加除去部2Uが対峙する時刻T2の時に、回転部の外周から内周に向けて、磁性体100Bに対向する永久磁石220B、磁性体100Dに対向する永久磁石220D、磁性体100Fに対向する永久磁石220Fを有する。
【0025】
磁気印加除去部3Uと磁気印加除去部4Uは上側の回転部の中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Uと磁気印加除去部2Uと同一である。磁気印加除去部3Uは時刻T3の時に熱輸送器1と対峙し、磁気印加除去部4Uは時刻T4の時に熱輸送器1と対峙する。
【0026】
図3は、複数の磁気印加除去部を配置した下側の回転部の構成を示す図である。円形状の下側の回転部は分離部200AD−200DDで区分した4つの磁気印加除去部1D−4Dを有する。図3に示す下側の回転部は、図の表側を図1に示す固定部の裏側に対向して位置させ、下側の回転部の中心を固定部の中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図3は、固定部に対向して位置させた下側の回転部を固定部側から見た状態を表している。
【0027】
磁気印加除去部1Dは、熱輸送器1に磁気印加除去部1Dが対峙する時刻T1の時に、回転部の外周から内周に向けて、磁性体100Aに対向する永久磁石260A、磁性体100Cに対向する永久磁石260C、磁性体100Eに対向する永久磁石260Eを有する。
【0028】
磁気印加除去部2Dは、熱輸送器1に磁気印加除去部2Dが対峙する時刻T2の時に、回転部の外周から内周に向けて、磁性体100Bに対向する永久磁石270B、磁性体100Dに対向する永久磁石270D、磁性体100Fに対向する永久磁石270Fを有する。
【0029】
磁気印加除去部3Dと磁気印加除去部4Dは下側の回転部の中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Dと磁気印加除去部2Dと同一である。磁気印加除去部3Dは時刻T3の時に熱輸送器1と対峙し、磁気印加除去部4Dは時刻T4の時に熱輸送器1と対峙する。
【0030】
上側の回転部の各磁気印加除去部1U−4Uと下側の回転部の各磁気印加除去部1D−4Dは固定部の各熱輸送器1−4を介して上下方向で対向する。上側の回転部と下側の回転部は、上側の回転部の分離部200AU−200DUと下側の回転部の分離部200AD−200DDが常に対向するように、相対的な位置を変えずに同期して回転する。
【0031】
<熱輸送の原理>
図4及び図5は、本発明に係る磁気冷暖房装置の動作説明に供する図である。図4は、時刻T1と時刻T2の2つの状態を示す。時刻T1の状態は、図1の固定部のA−A線が図2及び図3の上側と下側の回転部のA−A線と一致している状態である。つまり、固定部の熱輸送器1が上側の回転部の磁気印加除去部1Uと下側の回転部の磁気印加除去部1Dに対峙している状態である。また、時刻T2の状態は、固定部の熱輸送器1が上側の回転部の磁気印加除去部2Uと下側の回転部の磁気印加除去部2Dに対峙している状態である。図5は、時刻T3と時刻T4の2つの状態を示す。時刻T3の状態は、固定部の熱輸送器1が上側の回転部の磁気印加除去部3Uと下側の回転部の磁気印加除去部3Dに対峙している状態である。また、時刻T4の状態は、固定部の熱輸送器1が上側の回転部の磁気印加除去部4Uと下側の回転部の磁気印加除去部4Dに対峙している状態である。
【0032】
時刻T1では、図4に示す通り、磁性体100Aに永久磁石210Aと260Aが位置する。また、磁性体100Cに永久磁石210Cと260Cが位置する。また、磁性体100Eに永久磁石210Eと260Eが位置する。時刻T1では、熱伝導部300B、300D、300Fに電圧を印加して、隣り合う磁性体100A−100B、100C−100D、100E−100F間で熱伝導できるようにする。
【0033】
時刻T2では、上側と下側の回転部が時刻T1から90度時計方向に回転するので、図4に示す通り、磁性体100Bに永久磁石220Bと270Bが位置する。また、磁性体100Dに永久磁石220Dと270Dが位置する。また、磁性体100Fに永久磁石220Fと270Fが位置する。時刻T2では、熱伝導部300A、300C、300E、300Gに電圧を印加して、低温側熱伝導部400Aと磁性体100A、磁性体100B−100C、100D−100E、磁性体100Fと高温側熱伝導部400Bそれぞれの間で熱伝導できるようにする。
【0034】
時刻T3では、上側と下側の回転部が時刻T2からさらに90度時計方向に回転するので、図5に示す通り、磁性体100Aに永久磁石230Aと280Aが位置する。また、磁性体100Cに永久磁石230Cと280Cが位置する。また、磁性体100Eに永久磁石230Eと280Eが位置する。時刻T3では、時刻T1と同じく、熱伝導部300B、300D、300Fに電圧を印加して、隣り合う磁性体100A−100B、100C−100D、100E−100F間で熱伝導できるようにする。
【0035】
時刻T4では、上側と下側の回転部が時刻T3からさらに90度時計方向に回転するので、図5に示す通り、磁性体100Bに永久磁石240Bと290Bが位置する。また、磁性体100Dに永久磁石240Dと290Dが位置する。また、磁性体100Fに永久磁石240Fと290Fが位置する。時刻T4では、時刻T2と同じく、熱伝導部300A、300C、300E、300Gに電圧を印加して、低温側熱伝導部400Aと磁性体100A、磁性体100B−100C、100D−100E、磁性体100Fと高温側熱伝導部400Bそれぞれの間で熱伝導できるようにする。
【0036】
このように、永久磁石の位置関係を追うと、時刻T1からT4に移行する間に、時刻T1とT2における、永久磁石、磁性体、熱伝導部の同じ位置関係が2回繰り返される。
【0037】
上記のように、各磁性体には正の磁性体を用いているので、磁気が印加されると発熱し、磁気が除去されると吸熱する。また、熱伝導部には磁気の印加除去によって熱伝導率が変化する材料を用いているので、磁気が印加されると熱伝導率が相対的に大きくなり、磁気が除去されると熱伝導率が相対的に小さくなる。
【0038】
したがって、時刻T1からT4に移行するにしたがって、低温側熱交換部400Aから高温側熱交換部400Bに向けて熱が移動し、低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間に温度差ができる。温度差ができる原理は次のとおりである。
【0039】
図6は、本発明に係る磁気冷暖房装置において熱が移動していく様子の説明に供する図である。熱が移動していく様子は図4と図5を参照しながら説明する。
【0040】
まず前提として、全ての磁性体が同一材料で形成されており、全ての磁性体の磁気熱量効果が同一の種類であって、温度変化量が5℃のものを用いた場合を想定する。具体的には、全ての磁性体は、磁気が印加されると5℃温度が上昇し、磁気が除去されると5℃温度が下降する特性を持っていると想定する。また、全ての熱伝導部材も電圧の印加、除去によって同じように熱伝導率が大きくなりまた小さくなる特性を持っていると想定する。
【0041】
まず、初期の時刻T1の状態では全ての磁性体100A−100F及び熱伝導部300A−300Gが室温の20℃になっている。低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間で、交互に配置した磁性体と熱伝導部は熱輸送器を形成する。
【0042】
次に、時刻T2の状態に移行すると、永久磁石、磁性体、熱伝導部の位置関係が、図4の時刻T1で示す状態から時刻T2で示すような状態になる。時刻T2では、熱伝導部300A、300C、300E、300Gに電圧を印加する。その結果、図6に示すように、磁性体100Aの温度が5℃下降し、熱伝導部300Aによる熱伝導が可能になって、低温側熱交換部400Aから磁性体100Aに熱が移動する。また、磁性体100B、100Dの温度が5℃上昇し、磁性体100C、100Eの温度が5℃下降し、熱伝導部300C、300Eによる熱伝導が可能になって、磁性体100Bから磁性体100Cに、磁性体100Dから磁性体100Eに熱が移動する。また、磁性体100Fの温度が5℃上昇し、熱伝導部300Gによる熱伝導が可能になって、磁性体100Fから高温側熱交換部400Bに熱が移動する。
【0043】
時刻T2の状態では、磁気が除去された磁性体100A、100C、100Eの温度が15℃に下降し、磁気が印加された磁性体100B、100D、100Fの温度が25℃に上昇する。このため、図6に示すように、熱伝導部300A、300C、300E、300Gを介して温度の高い方から温度の低いほうに熱が移動する。
【0044】
この熱の移動によって、図6のT2´の状態で示すように、磁性体100Aと低温側熱交換部400Aの温度が17.5℃になり、磁性体100Fと高温側熱交換部400Bの温度が22.5℃になる。
【0045】
次に、時刻T2´の状態からT3の状態に移行すると、永久磁石、磁性体、熱伝導部の位置関係が、図4及び図5の時刻T2に示す状態から時刻T3で示すような状態になる。時刻T3では、熱伝導部300B、300D、300Fに電圧を印加する。その結果、磁性体100A、100C、100Eの温度が5℃上昇し、磁性体100B、100D、100Fの温度が5℃下降し、熱伝導部300B、300D、300Fによる熱伝導が可能になって、磁性体100Aから磁性体100Bに、磁性体100Cから磁性体100Dに、磁性体100Eから磁性体100Fに熱が移動する。
【0046】
時刻T3の状態では、磁気が印加された磁性体100A、100C、100Eの温度が22.5℃または25℃に上昇し、磁気が除去された磁性体100B、100D、100Fの温度が15℃または17.5℃に下降する。このため、図6に示すように、熱伝導部300B、300D、300Fを介して温度の高い方から温度の低いほうに熱が移動する。
【0047】
この熱の移動によって、図6のT3´に示すように、低温側熱交換部400Aの温度が17.5℃になり、磁性体100A、100Bの温度が18.75℃になる。磁性体100C、100Dの温度が20℃になり、磁性体100E、100Fの温度が21.25℃になる。高温側熱交換部40Bの温度は22.5℃のままである。
【0048】
次に、時刻T3´の状態からT4の状態に移行すると、永久磁石、磁性体、熱伝導部の位置関係が、図4の時刻T2で示した状態と同一の状態になる。時刻T4では、時刻T2と同じく、熱伝導部300A、300C、300E、300Gに電圧を印加する。その結果、図6のT2. T4に示すような状態となって、低温側熱交換部400Aから磁性体100Aに熱が移動し、磁性体100Bから磁性体100Cに、磁性体100Dから磁性体100Eに熱が移動し、磁性体100Fから高温側熱交換部400Bに熱が移動する。
【0049】
以上の通り、上側の回転部と下側の回転部が同期して1回転する度に、時刻T1の状態から時刻T4の状態が繰り返されて、低温側熱交換部400Aから高温側熱交換部400Bに熱が移動する。時間が経過するにしたがって、図7に示すように、低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間の温度差が大きくなっていく。最終的には、低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間の温度差が安定する。この状態で、低温側熱交換部400Aの熱を利用して、たとえば室内の温度を下げることができ、高温側熱交換部400Bの熱を利用して、たとえば室内の温度を上げることができる。
【0050】
なお、図1−図7の説明は、発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として正の磁性体を用いた場合に当てはまる。発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として負の磁性体を用いた場合には、熱の移動方向は図4−図6に示した方向とは逆になる。したがって、負の磁性体を用いた場合、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bの位置が図1、図4−図6とは逆になる。
【0051】
次に、本発明に係る磁気冷暖房装置が採用する熱伝導部の具体的な構造について、[実施形態1]から[実施形態6]に分けて説明する。図8から図13は各実施形態に係る熱伝導部の構造図である。[実施形態1]から[実施形態6]の熱伝導部は、電圧を印加すると金属に相転移して磁性体との熱伝導を可能にし、電圧を除去すると絶縁体に相転移して前記熱伝導を遮断する。
【0052】
図1に示したように、本発明に係る磁気冷暖房装置は、低温側熱交換部400Bと磁性体100Aとの間に熱伝導部300Aを接続する。磁性体100A−100Fのそれぞれの磁性体間に熱伝導部300B−300Fを接続する。磁性体100Fと高温側熱交換部400Bとの間に熱伝導部300Gを接続する。図8から図13では、磁性体100Aと100Bの間に接続する熱伝導部300Bを、磁性体10A、磁性体10B、熱伝導部30Bとして例示する。
【0053】
[実施形態1]
図8は実施形態1に係る熱伝導部の構成図である。
【0054】
実施形態1に係る熱伝導部30Bは、磁性体10Aと10Bに取り付ける電極31A、31Bと、電極31A、31Bの間に取り付ける金属/絶縁相転移体32とによって構成される。電極31Aの一方の面は磁性体10Aの一方の面に接合又は接着によって取り付ける。電極31Bの一方の面は磁性体10Bの一方の面に接合又は接着によって取り付ける。同様に、金属/絶縁相転移体32の両面は電極31Aと電極31Bの他方の面に接合又は接着によって取り付ける。したがって、磁性体10A、熱伝導部30B、磁性体10Bは一体化される。図示はしていないが、熱輸送器を構成する他の磁性体と熱伝導部も上記のように接合又は接着によって一体化される。
【0055】
電極31A、31Bは導電性の良好なアルミや銅などの金属を用いる。磁性体10A、10Bの間では電極31Aと31Bを介して熱が伝導するので、電極31Aと31Bは熱伝導率のより大きい金属を用いることが好ましい。
【0056】
電極31A、31Bを磁性体10A、10B及び金属/絶縁相転移体32に接着する接着剤は、熱伝導率の大きいものを用いる。例えば、接着剤に金属粉を接着性が妨げられない程度に混ぜ込んだ熱伝導性を改善した接着剤を用いる。
【0057】
金属/絶縁相転移体32は、電圧を印加すると絶縁体から金属に相転移し、熱伝導率が大きくなり、逆に、電圧を遮断すると金属から絶縁体に相転移し、熱伝導率が小さくなる性質を持つものである。金属と絶縁体の相互間の相転移を示す絶縁体は、無機酸化物モット絶縁体または有機モット絶縁体がある。無機酸化物モット絶縁体は少なくとも遷移金属元素を含む。モット絶縁体としては、LaTiO3、SrRuO4、BEDT−TTF(TCNQ)が知られている。金属と絶縁体の相互間の相転移が可能なデバイスとして現在知られているものは、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子がある。熱は、熱電子および格子結晶によって移送することができる。ZnO単結晶薄膜電気二重層FET及びTMTSF/TCNQ積層型FET素子は、電圧を印加すると熱電子が活発に移動するようになる性質を利用する。実施形態1では、金属/絶縁相転移体32に、少なくとも遷移金属元素を含む無機酸化物モット絶縁体、有機モット絶縁体、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子など、電圧の印加除去によって熱伝導率が大きく変化するものを用いる。
【0058】
図8に示すように、電極31Aと31Bとの間に直流電圧Vを印加すると、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率が相対的に大きくなって、磁性体10Aと10Bとの間で熱の移動が起こる。一方、電極31Aと31Bとの間の直流電圧Vを除去すると、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率が相対的に小さくなって、磁性体10Aと10Bとの間の熱の移動が阻止される。したがって、熱伝導部30Bは、電圧の印加、除去によって熱の移動を制御する熱スイッチとなる。
【0059】
熱伝導部30A−30Gの熱伝導の断続は、電圧の印加、除去によって制御できるので、磁性体間に熱伝導部を摺動させずに熱を輸送させることができる。このため、熱伝導部に摺動の耐久性を持たせる必要がなく、熱伝導部の信頼性が向上する。また、摩擦による機械的な損失をなくすことができ、熱伝導部を駆動させるための損失を低減できる。さらに、熱伝導部は磁性体との並び方向にのみ熱を輸送でき、熱伝導部の熱伝導率は摺動型のものに比較して大きくできるので、熱の輸送に際して熱的な損失が小さくできる。加えて、熱伝導部は、電圧の印加、除去に応じて、磁性体間を全ての接触面を使って接続できるので、熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させることができる。
【0060】
熱伝導部30Bの熱伝導の断続は、電極31Aと31Bに電圧を印加、除去することによってできる。電極31Aと31Bを設けることで、金属/絶縁相転移体32に容易に電圧を印加することができる。また、金属/絶縁相転移体32に、少なくとも遷移金属元素を含む無機酸化物モット絶縁体、有機モット絶縁体、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子を用いると、熱伝導率の変化の応答性が良好になる。
【0061】
[実施形態2]
図9は実施形態2に係る熱伝導部の構成図である。
【0062】
実施形態2に係る熱伝導部30Bは、実施形態1に係る図8の熱伝導部30Bに補助電極33A、33Bを追加している。補助電極33A、33B以外の構成及び動作は実施形態1と同一である。
【0063】
補助電極33Aと33Bは、金属/絶縁相転移体32に接合または接着によって取り付ける。補助電極33Aと33Bは熱伝導性を考慮しなくても良い。また補助電極33Aと33Bを金属/絶縁相転移体32に接着する接着剤も熱伝導性を考慮しなくても良い。補助電極33Aと33Bと接着剤には、熱電子が通過しないからである。
【0064】
補助電極33Aと33Bは、電極31Aと31Bに対して、直交方向に電圧を印加する。補助電極33Aと33Bとの間に直流電圧を印加すると、金属/絶縁相転移体32内の電子の分布が補助電極33Aと33Bの方向に偏る。このため、磁性体10Aと10Bとの間を移動する熱電子の抵抗が減少し、熱電子が移動しやすくなる。つまり、補助電極33Aと33Bを設けることで、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率をより大きくすることができる。
【0065】
[実施形態3]
図10は実施形態3に係る熱伝導部の構成図である。
【0066】
実施形態3に係る熱伝導部30Bは、電極31Aと31Bを、金属/絶縁相転移体32と磁性体10A、10Bとの間には設けずに、金属/絶縁相転移体32内を移動する熱電子の移動方向に対して直交する方向から電圧が印加できるように設ける。
【0067】
したがって、金属/絶縁相転移体32は、磁性体10Aと10Bに直接取り付ける。金属/絶縁相転移体32と磁性体10A、10Bとは、接合または接着剤で取り付ける。このときに用いる接着剤は、熱伝導性の大きいものを用いる。
【0068】
電極31Aと31Bは、金属/絶縁相転移体32に接合または接着によって取り付ける。電極31Aと31Bは熱伝導性を考慮しなくても良い。また電極31Aと31Bを金属/絶縁相転移体32に接着する接着剤も熱伝導性を考慮しなくても良い。電極31Aと31Bと接着剤には、熱電子が通過しないからである。
【0069】
電極31Aと31Bは、金属/絶縁相転移体32内を移動する熱電子の移動方向に対して、直交方向に電圧を印加する。電極31Aと31Bとの間に直流電圧を印加すると、金属/絶縁相転移体32内の電子の分布が電極31Aと31Bの方向に偏って相転移する。このため、磁性体10Aと10Bとの間を移動する熱電子の抵抗が減少し、熱電子が移動しやすくなる。
【0070】
実施形態1、2の場合には、熱電子の通過方向に電極31A、31Bが存在するので、熱電子にとっては電極31A、31Bが障害物となる。このため、電極31A、31Bの存在は熱伝導率を小さくする方向に働く。実施形態3の場合には、金属/絶縁相転移体32を磁性体10Aと10Bに直接取り付けるので、電極31A、31Bの存在は熱伝導率を下げる方向には働かない。したがって、実施形態3に係る熱伝導部30の熱伝導率は、実施形態1、2の場合と比較して、大きくなる。
【0071】
[実施形態4]
図11は実施形態4に係る熱伝導部の構成図である。
【0072】
実施形態4に係る熱伝導部30Bは、金属/絶縁相転移体32を磁性体10Aと10Bに直接取り付け、磁性体10Aと10Bに直流電圧を印加できるようにしたものである。金属/絶縁相転移体32と磁性体10A、10Bとは接合または接着剤で取り付ける。接着剤は熱伝導率の大きいものを用いる。
【0073】
磁性体10Aと10Bを電極の代わりに用いると、構造が単純化され、また、部品点数の減少と製造工程の簡略化が図れる。また、実施形態3の場合と同様に、熱伝導部30の熱伝導率は、実施形態1、2の場合と比較して、大きくなる。
【0074】
[実施形態5]
図12は実施形態5に係る熱伝導部の構成図である。
【0075】
実施形態5は、実施形態1に係る図8の熱伝導部30Bに絶縁体34を追加している。具体的には、図12に示すように、熱電子の移動を妨げる絶縁体34を電極31Aと金属/絶縁相転移体32との間に設けている。図12では、実施形態1の構成に絶縁体34を追加しているが、実施形態2から4の構成に対して絶縁体34を追加しても良い。
【0076】
絶縁体34は、熱電子以外の電子の移動を阻止するために設ける。電極31Aと31Bとの間に直流電圧を印加すると、電極31Aと31Bとの間に電流が流れるが、本来移動してほしい熱電子に加え、熱輸送に関与しない電子を過剰に移動させてしまう可能性がある。この熱輸送に関与しない電子の過剰の移動を防ぐために、絶縁体34を金属/絶縁相転移体32に取り付けることによって、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率の低下を防止できる。
【0077】
[実施形態6]
図13は実施形態6に係る熱伝導部の構成図である。
【0078】
実施形態6は、実施形態3に係る図10の熱伝導部30Bに分極体35を追加している。具体的には、電極31Aと金属/絶縁相転移体32との間に熱電子の移動を促す分極体35を配置する。分極体35は、誘電体及びイオン性液体のうちの少なくとも1種類以上から形成する。
【0079】
分極体35は、金属/絶縁相転移体32内を移動する電子を取り出したり、金属/絶縁相転移体32内に電子を注入したりする。このため、金属/絶縁相転移体32内の電子の分布状態が変化して、熱電子が流れやすくなる。分極体35を配置することで、金属/絶縁相転移体32の熱伝導率をより大きくすることができる。
【0080】
実施形態1から6のように、電圧の印加、除去によって熱伝導率が変化する熱伝導部30Bを用いると、隣接する磁性体との熱伝導を、電圧の印加、除去だけで断続させることができる。このため、従来のように、熱伝導を断続させるために熱伝導部を磁性体間で摺動させる必要がなく、熱伝導部の耐久性が向上し、同時に信頼性も向上する。磁気冷暖房装置を車載するためには小型化が要求され、小型化するためには磁気冷暖房装置の高周波化が必要である。高周波化するためには、磁性体間の熱伝達を高速(例えば0.1秒程度)で行う必要がある。本実施形態の熱伝導部30Bは、電圧をON、OFFする周期を短くすることで高周波化できる。
【0081】
次に、図14−図17を参照して本発明に係る磁気冷暖房装置の構成について説明する。以下に説明する磁気冷暖房装置の動作原理は上述の動作原理と同一である。図14は、本発明に係る磁気冷暖房装置の固定部の構成図である。図15は、本発明に係る磁気冷暖房装置の上側の回転部の構成図である。図16は、本発明に係る磁気冷暖房装置の下側の回転部の構成図である。図17は、本発明に係る磁気冷暖房装置の図14−図16に示すA−B断面図である。
【0082】
(磁気冷暖房装置の構成)
<固定部の構成>
図14及び図17に示すように、磁気冷暖房装置の固定部1000は円形状に形成する。固定部1000の中心部分には円筒状の高温側熱交換部40Bを設け、高温側熱交換部40Bを取り囲むように円形状の低温側熱交換部40Aを設ける。低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間の空間に1mm程度の厚みの熱輸送器配置板150(図11参照)をはめ込み、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとで固定する。
【0083】
熱輸送器配置板150上の中心角30度の扇状の空間に、図14及び図17に示すように、磁気熱量効果を有する磁性体10A−10Fとこれらの磁性体の熱を輸送する熱伝導部30A−30Gとを交互に配置する。交互に配置した磁性体10A−10Fと熱伝導部30A−30Gで1つの熱輸送器50−1を構成する。熱輸送器50−1に隣接する中心角30度の扇状の空間に、図14に示すように、磁気熱量効果を有する磁性体11A−11Fとこれらの磁性体の熱を輸送する熱伝導部31A−31Gとを交互に配置する。交互に配置した磁性体11A−11Fと熱伝導部31A−31Gで1つの熱輸送器50−2を構成する。
【0084】
図14に示すように、熱輸送器配置板150上には、中心角30度ごとに1つの扇状の熱輸送器50−1、50−2、…を配置し、熱輸送器配置板150上には、並列に合計12個の扇状の熱輸送器50−1、50−2、…を形成する。なお、12個の扇状の熱輸送器50−1、50−2、…のそれぞれの間には熱絶縁を図るための空間を形成してある。また、低温側熱交換部40Aは熱輸送器50−1、50−2、…の一端に熱伝導部(熱輸送器50−1の場合には熱伝導部30A)を介して配置する。さらに、高温側熱交換部40Bは熱輸送器50−1、50−2、…の他端に熱伝導部(熱輸送器50−1の場合には熱伝導部30G)を介して配置する。低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bの内部には、熱交換効率を向上させるためフィン41(図17参照)と42(図14参照)を設けている。なお、熱輸送器配置板150上に形成する熱伝導部30A−30G、熱伝導部31A−31G、…は、上記の実施形態1−6のいずれかの形態の熱伝導部を用いる。各熱伝導部の電極に電圧を印加するための配線は、熱輸送器同士の熱絶縁を図るために設けてある空間を利用して行う。
【0085】
熱輸送器配置板150は、互いに独立して分離された12個の熱輸送器50−1、50−2、…を配置している。このため、熱輸送器50−1、50−2、…が輸送している熱を奪わないように、熱輸送器配置板150は断熱性の高い材料で形成するか、熱輸送器配置板150と熱輸送器50−1、50−2、…との間に断熱性の高い材料を挟む。なお、熱輸送器配置板150は磁性体に印加される磁束を減少させてはならないので、磁束を通過させやすい材料で形成することが好ましい。また、熱輸送器50は熱輸送器配置板150の上側に設けたが、熱輸送器配置板150の下側に設けても良い。また、熱輸送器配置板150は上下の熱輸送器配置板150に挟まれるように設けても良い。
【0086】
<磁性体の構成>
磁性体10A−10Fは、本実施形態では同一材料で形成しており、同一材料として正の磁性体を用いる。正の磁性体は、磁気を印加していないときには常磁性状態(磁気スピンが無秩序の状態)となり、磁気を印加すると強磁性状態(磁気スピンが一方向に揃う状態)となる、常磁性状態と強磁性状態が可逆的に生じる材料を用いて製造する。
【0087】
正の磁性体の材料は、GdやGdをベースとした合金である、Gd−Y系、Gd−Dy系、Gd−Er系、Gd−Ho系、La(Fe,Si)13やLa(Fe,Al)13などの磁性材料を用いることができる。
【0088】
一方、本実施形態では用いていないが、磁性体10A−10Fに同一材料として負の磁性材料を用いることもできる。負の磁性体の材料としては、FeRh合金、CoMnSiGe系、NiMnSn系などの磁性材料を用いることができる。
【0089】
一般的に、正の磁性体と負の磁性体は、磁気の印加に対して、熱発生が、発熱するか、吸熱するか反対なので、正の磁性体と負の磁性体の磁気熱量効果による温度変化の大きさは相違する。したがって、本実施形態のように、正か負のどちらか一方の磁性体を用いた場合には、全ての磁性体の磁気熱量効果による温度変化の大きさが同一になる。したがって、磁気冷暖房装置全体として安定した熱伝達特性が得られ熱輸送効率が向上する。また、正の磁性体の磁気熱量効果に比較して負の磁性体の磁気熱量効果の方が小さいので、熱輸送効率を考慮すると、正の磁性体を用いることが好ましい。さらに、負の磁性体の材料は正の磁性体の材料に比較して希少な材料を用いることになるので、コストの面でも正の磁性体を用いることが好ましい。
【0090】
本実施形態では、磁性体10A−10F及び熱伝導部30A−30Gの形状を、扇を径方向に一定の幅で切り取ったような形状とした。しかし、これ以外の形状、例えば、球状、楕円体状、立方体状、円柱状、楕円柱状などの形状を採用しても良い。
【0091】
また、磁性体10A−10Fに正または負の磁性体を用い、さらにこれらの磁性体10A−10Fの作動温度を全て同一のものとすることができる。しかし、これに限らず、磁性体の作動温度が異なるものを配置することもできる。例えば、高温側熱交換部40Bに隣り合う磁性体10Fから低温側熱交換部40Aに隣り合う磁性体10Aに向けて段階的に作動温度が低い磁性体を配置することもできる。ここで、作動温度が高い磁性体と作動温度が低い磁性体との相違は、磁気熱量効果を発現する温度域が高い温度であるか低い温度であるかという点にある。
【0092】
このように、熱輸送器50−1、50−2、…内において、磁性体の位置に応じて最適な作動温度を選択すると、均一の作動温度の磁性体を用いた熱輸送器50−1、50−2、…よりも、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間で、より大きな温度差を得ることができ、熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させることができる。
【0093】
<熱伝導部の構成>
次に、本発明に係る磁気冷暖房装置が採用する熱伝導部の具体的な構造について説明する。
【0094】
本実施形態に係る熱伝導部30A−30Gは、磁性体10A−10Fが磁気熱量効果により発生した熱を低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに向けて伝導する。熱伝導部30A−30Gは、電圧の印加、除去により熱伝導率が大きく変化する特性を持つ。熱伝導部30A−30Gは、電圧を印加すると熱伝導率が大きくなり、電圧を除去すると熱伝導率が小さくなる。このため、熱伝導部30A−30Gは、電圧の印加、除去によって磁性体10A−10Fに熱を伝導させたりさせなかったりすることができ、磁性体の並び方向に向けて効率的に熱を伝達させることができる。具体的な構成は、図8−図13で説明した。
【0095】
このように、電圧の印加、除去によって熱伝導率が変化する熱伝導部30A、30Bを用いると、隣接する磁性体との熱伝導を、電圧の印加、除去だけで断続させることができる。磁気冷暖房装置を車載するためには小型化が要求されるが、小型化するためには磁気冷暖房装置の高周波化が必要である。高周波化するためには、磁性体間の熱伝達を高速(例えば0.1秒程度)で行う必要がある。本発明に係る熱伝導部30A−30Gは、電圧を印加する周期を短くすることで容易に高周波化できる。
【0096】
<回転部の構成>
図15及び図16に示す回転部は、図14に示した固定部1000を上下方向の両側から一定の隙間を設けて挟む。回転部の構成は下記のとおりである。
【0097】
円形状の上側の回転部2000Aは、図15の表側を図14に示す固定部1000の表側に対向して位置させ、上側の回転部2000Aの中心を固定部1000の中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図15は、固定部1000に対向して位置させた上側の回転部2000Aを固定部1000に向かって上から透視した状態を表している(図17参照)。
【0098】
図15に示す磁気印加除去部1Uは、ある時刻で、図14に示した熱輸送器50−1に対峙する。その時刻では、回転部2000Aの外周から内周に向けて、磁性体10Aに対向する永久磁石21A、磁性体10Cに対向する永久磁石21C、磁性体10Eに対向する永久磁石21Eを有する。
【0099】
図15に示す磁気印加除去部2Uは、上記と同じ時刻で図14に示した熱輸送器50−2に対峙する。その時刻では、回転部2000Aの外周から内周に向けて、磁性体10Bに対向する永久磁石22B、磁性体10Dに対向する永久磁石22D、磁性体10Fに対向する永久磁石22Fを有する。
【0100】
回転部2000Aに存在するその他の磁気印加除去部は、回転部2000Aの中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Uまたは磁気印加除去部2Uと同一である。
【0101】
円形状の下側の回転部2000Bは、図16の表側を図14に示す固定部1000の裏側に対向して位置させ、下側の回転部2000Bの中心を固定部1000の中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図16は、固定部1000に対向して位置させた下側の回転部2000Bを固定部1000側から見た状態を表している(図17参照)。
【0102】
図16に示す磁気印加除去部1Dは、上記と同じ時刻で、図14に示した熱輸送器50−1に対峙する。その時刻では、回転部2000Bの外周から内周に向けて、磁性体10Aに対向する永久磁石26A、磁性体10Cに対向する永久磁石26C、磁性体10Eに対向する永久磁石26Eを有する。
【0103】
図16に示す磁気印加除去部2Dは、上記と同じ時刻で図14に示した熱輸送器50−2に対峙する。その時刻では、回転部2000Bの外周から内周に向けて、磁性体10Bに対向する永久磁石27B、磁性体10Dに対向する永久磁石27D、磁性体10Fに対向する永久磁石27Fを有する。
【0104】
回転部2000Bに存在するその他の磁気印加除去部は、回転部2000Bの中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Dまたは磁気印加除去部2Dと同一である。
【0105】
上側の回転部2000Aの各磁気印加除去部1U、2U、…と下側の回転部2000Bの各磁気印加除去部1D、2D、…は固定部1000の各熱輸送器50−1、50−2、…を介して上下方向で対向する。上側の回転部2000Aと下側の回転部2000Bは、磁気印加除去部1Uと磁気印加除去部1Dを対峙させた状態で相対的な位置を変えずに同期して回転する。
【0106】
<磁気冷暖房装置の動作>
図17は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の図14−図16に示すA−B断面図である。図に示すように、上側の回転部2000Aと下側の回転部2000Bは、ごく狭い間隔を設けて固定部1000を挟む。
【0107】
図17は図14−図16に示す固定部と回転部を組み上げた状態におけるA−B断面図である。したがって、A断面では、熱輸送器50−1を構成する磁性体10Aに永久磁石21Aと26Aが対向する。磁性体10Cに永久磁石21Cと26Cが対向する。磁性体10Eに永久磁石21Eと26Eが対向する。この状態は、図14に示す熱輸送器50−1に図15、図16で示す磁気印加除去部1Uと1Dが対向している状態である。
【0108】
また、B断面では、熱輸送器50−2を構成する磁性体11Bに永久磁石22Bと27Bが対向する。磁性体11Dに永久磁石22Dと27Dが対向する。磁性体11Fに永久磁石22Fと27Fが対向する。この状態は、図14に示す熱輸送器50−2に図15、図16で示す磁気印加除去部2Uと2Dが対向している状態である。
【0109】
上側の回転部2000Aと下側の回転部2000Bが同期して回転すると、30度回転する度に、各熱輸送器50−1、50−2、…において、上述のA断面の状態とB断面の状態が繰り返される。したがって、各熱輸送器50−1、50−2、…において、図4−6で説明したのと同一のことが繰り返され、磁性体10A−10F、11A−11F、…で発生した熱が、電圧の印加、除去で熱伝導を制御する熱伝導部30A−30G、31A−31G、…を介して低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに伝達される。
【0110】
図17に示すように、上側の回転部2000A、下側の回転部2000Bはその中心部が開口し、その中心部にはベアリング410A、410Bを設けてある。また、両回転部2000A、2000Bの外周部にはベアリグ420A、420Bを設けてある。ベアリング410A、410B、ベアリング420A、420Bは、両回転部2000A、2000Bを固定部1000の上下面で回転自在に支持する。したがって、両回転部2000A、2000Bは高温側熱交換部40Bを回転軸として図示矢印方向(図15、図16参照)に回転する。
【0111】
上側の回転部2000A、下側の回転部2000Bの一方の面の外周にはリングギア430A、430Bを取り付ける。リングギア430A、430Bは、サーボモータ350A、350Bのギア360A、360Bと噛み合う。サーボモータ350Aが回転すると、ギア360Aと噛み合うリングギア430Aが自転して上側の回転部2000Aが回転する。また、サーボモータ350Bが回転すると、ギア360Bと噛み合うリングギア430Bが自転して下側の回転部2000Bが回転する。サーボモータ350Aと350Bを同期して回転させると、両回転部2000A、2000Bが一体的に回転する。
【0112】
本実施形態では、サーボモータ350A、350Bを同期して回転させる。したがって、両回転部2000A、2000Bは高温側熱交換部40Bを中心に、固定部1000を挟むようにして同一の回転速度で回転する。両回転部2000A、2000Bを同期させて回転するには、両回転部2000A、2000Bの基準位置とサーボモータ350A、350Bの回転位置を検出することが必要である。そのため、図17に示すように、両回転部2000A、2000Bの基準位置を検出するための基準位置検出センサ250A、250Bを設けてある。また、サーボモータ350Aと350Bの回転位置を検出するための回転位置検出センサをサーボモータ350Aと350Bに内蔵してある。
【0113】
上側の回転部2000Aと下側の回転部2000Bに配置する永久磁石は、両回転部2000A、回転部2000Bの間でN極とS極とが対峙するように極性を考慮して配置する。上側の回転部2000Aの片面に配置した永久磁石と下側の回転部2000Bの片面に配置した永久磁石は、常に対峙した状態となるように、両回転部2000A、2000Bは同期して回転させる。たとえば、図17に示すように、上側の回転部2000Aの永久磁石21A、21C、21E、22B、22D、22Fと下側の回転部2000Bの永久磁石26A、26C、26E、27B、27D、27Fは、両回転部2000A、2000Bが回転中または停止中にかかわらず常に対峙した状態である。
【0114】
なお、本実施形態では、両回転部2000A、2000Bに配置する磁気印加除去部に永久磁石を用いたが、電磁石を用いても良い。電磁石を用いた場合には、両回転部2000A、2000Bの構造が複雑になる。回転した状態で、電磁石への給電がきるように配線する必要があるからである。したがって、本実施形態では、永久磁石を用いている。
【0115】
また、図17に示すように、固定部1000に上側の回転部2000A、下側の回転部2000Bを取り付けた状態で、固定部1000、上側の回転部2000A、下側の回転部2000Bで囲まれた内部空間は、減圧または真空に近い環境にする。内部空間を減圧または真空に近い環境にすれば、各熱輸送器50−1、50−2、…は、真空内、または減圧下の環境内で設置されることになって、内部の空気への放熱が防止され、また、永久磁石が回転することによる空気抵抗が減少されるからである。
【0116】
両回転部2000A、2000Bが回転すると、固定部1000の各熱輸送器50−1、50−2、…では、30度回転するごとに、図4に示した時刻T1の状態と時刻T2の状態を繰り返される。このため、両回転部2000A、2000Bが30度回転するごとに、各熱輸器50−1、50−2、…の磁性体が発熱と吸熱を繰り返し、熱伝導部が熱の輸送と遮断を繰り返す。磁性体の単位時間当たりの発熱量は、両回転部2000A、2000Bの回転速度によって変化する。発熱量を大きくしたければ両回転部2000A、2000Bの回転速度を速くする。大きな発熱量が必要なければ両回転部2000A、2000Bの回転速度を遅くする。
【0117】
各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体が発熱しまた吸熱するときの熱を、低温側熱交換器40Aから高温側熱交換器40Bに伝達させ、要求される熱量が得られるようにするためには、両回転部2000A、2000Bの回転速度を最適化し、熱伝導部による熱の輸送と遮断のタイミングを制御しなければならない。両回転部2000A、2000Bの回転速度の最適化と熱伝導部への電圧の印加、除去のタイミングを制御するものが、図18以降に示す制御系である。
【0118】
図18は、本発明に係る磁気冷暖房装置の制御系のブロック図である。また、図19は、図18の空調制御部と空調情報入力部のさらに具体的な制御系のブロック図である。
【0119】
図18に示すように、本発明に係る磁気冷暖房装置の制御系は、基準位置検出センサ250A、基準位置検出センサ250B、空調情報入力部460、サーボモータ350A、サーボモータ350B、サーボモータ制御部350、熱伝導部30Aから35G、電圧印加制御部38、空調制御部450を有する。サーボモータ350A、サーボモータ350Bは、自身の回転位置を検出する回転位置検出センサ370A、370Bを備えている。
【0120】
基準位置検出センサ250Aは上側の回転部2000A(図17参照)に設定した基準位置を検出する。基準位置は上側の回転部2000Aの外周に設ける。例えば、光を反射する反射体を上側の回転部2000Aの外周に取り付けた場合には、その反射体の取り付け位置が基準位置となる。この場合、基準位置検出センサ250Aには受発光素子を用い、反射体が受発光素子からの光を反射すると、基準位置が検出される。
【0121】
基準位置検出センサ250Bは下側の回転部2000Bに設定した基準位置を検出する。その他は基準位置検出センサ250Aと同一である。
【0122】
上側の回転部2000Aと下側の回転部2000Bに設ける基準位置は、両回転部2000A、回転部2000Bの永久磁石が固定部1000を介して正しく向き合うように(図17に示すように)、正確な位置に設定する。したがって、両回転部2000A、回転部2000Bは、基準位置検出センサ250Aと基準位置検出センサ250Bが、基準位置を常に同時に検出するように、同一の速度で同期して回転する。
【0123】
空調情報入力部460は空調に必要な情報を入力する。空調に必要な情報は、設定温度、低温側熱交換部入口温度、低温側熱交換部出口温度、高温側熱交換部入口温度、高温側熱交換部出口温度である。空調情報入力部460の具体的な説明は、後述の図19に基づいて行う。
【0124】
サーボモータ350A、サーボモータ350Bは、熱輸送器50−1、50−2、…の各磁性体に選択的に磁気を印加し除去するため磁気印加除去部を駆動するモータである。具体的には、サーボモータ350Aは、図17に示したように永久磁石が配置してある上側の回転部2000Aを回転させる。また、サーボモータ350Bは、図17に示したように永久磁石が配置してある下側の回転部2000Bを回転させる。サーボモータ350A、サーボモータ350Bには、それぞれのサーボモータの回転位置を検出する回転位置検出センサ370A、370Bを設けてある。回転位置検出センサ370A、370Bで検出した回転位置は、サーボモータ350A、サーボモータ350Bの回転速度を同期させるために用いる。
【0125】
サーボモータ制御部380は、回転位置検出センサ370A、370Bで検出した回転位置と、基準位置検出センサ250A、250Bで検出した基準位置を用いて、サーボモータ350A、350Bの回転を制御する。
【0126】
熱伝導部30A−30Gは、上述の通り、電圧が印加されると熱伝導率が大きくなり、電圧が除去されると熱伝導率が小さくなる。熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体間の熱伝導を断続させるものである。
【0127】
電圧印加制御部38は、サーボモータ350A、サーボモータ350Bの回転位置に応じて、各熱伝導部30A−30Gに選択的に電圧を印加し除去する。サーボモータ350A、サーボモータ350Bの回転位置は、回転位置検出センサ370A、370Bで検出した回転位置と、基準位置検出センサ250A、250Bで検出した基準位置によって判別できる。つまり、各永久磁石の位置が、各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体に対してどの位置にあるのかが認識できる。電圧印加制御部38は、各永久磁石の位置が各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体の位置に対して最適な位置となったときに、各熱伝導部30A−30Gに選択的に電圧を印加し除去する。このように、電圧印加制御部38は、磁気印加除去部1U、2U、…、1D、2D、…が各磁性体に選択的に磁気を印加し除去するタイミングと同期させて各熱伝導部に電圧を印加し除去することにより、低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに熱を効率的に輸送させる。
【0128】
電圧印加制御部38は、運転条件ごとに定めた、電圧の印加、除去のタイミングを用いて、各熱伝導部30A−30Gに電圧を印加し除去する。運転条件ごとに定めた、電圧の印加、除去のタイミングは、磁気冷暖房装置の運転に伴って、最適なタイミングに書き換える。運転条件は、熱輸送器50−1、50−2、…の要求熱量、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間の温度差または磁気印加除去部の駆動パターンの少なくともいずれかである。駆動パターンは、磁気印加除去部を一定の速度で駆動するか、一定ではない速度で駆動するか、のいずれかである。
【0129】
空調制御部450は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の動作を総括的に制御する。空調制御部450の具体的な説明については、後述の図20の動作フローチャートに基づいて行う。
【0130】
図19に示すように、空調情報入力部460は、温度設定部462、低温側熱交換部入口温度センサ464、低温側熱交換部出口温度センサ466、高温側熱交換部入口温度センサ468、高温側熱交換部出口温度センサ470を有する。
【0131】
温度設定部462は、磁気冷暖房装置が空調する車室内の温度を設定するコントローラである。低温側熱交換部入口温度センサ464は、図14または図17に示した固定部100の低温側熱交換部40Aに供給される冷媒の温度を検出する。低温側熱交換部入口温度センサ464は、低温側熱交換部40Aの冷媒入口部分に設ける。
【0132】
低温側熱交換部出口温度センサ466は、図14に示した固定部1000の低温側熱交換部40Aから排出される冷媒の温度を検出する。低温側熱交換部出口温度センサ466は、低温側熱交換部40Aの冷媒出口部分に設ける。高温側熱交換部入口温度センサ468は、図14または図17に示した高温側熱交換部40Bに供給される冷媒の温度を検出する。高温側熱交換部入口温度センサ468は、高温側熱交換部40Bの冷媒入口部分に設ける。高温側熱交換部出口温度センサ470は、高温側熱交換部40Bから排出される冷媒の温度を検出する。高温側熱交換部出口温度センサ470は、高温側熱交換部40Bの冷媒出口部分に設ける。
【0133】
温度設定部462、低温側熱交換部入口温度センサ464、低温側熱交換部出口温度センサ466、高温側熱交換部入口温度センサ468、高温側熱交換部出口温度センサ470を設けるのは、固定部1000でどの程度の熱量を低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに移動させなければならないかを知るためである。移動させなければならない熱量がわかれば、サーボモータ350A、350Bの回転速度や、熱伝達部の電圧のON、OFFのタイミングを調整することができる。
【0134】
空調制御部450は、スイッチング制御部452とスイッチングパターン記憶部454を有する。スイッチング制御部452は、設定温度、低温側熱交換部入口温度、低温側熱交換部出口温度、高温側熱交換部入口温度、高温側熱交換部出口温度を用いて、各熱伝導部30A−30Gに印加する電圧のON、OFFのスイッチングを制御する。スイッチングパターン記憶部454は、各熱伝導部30A−30Gに印加する電圧のON、OFFのスイッチングのパターンを記憶する。
【0135】
次に、本発明に係る磁気冷暖房装置の動作を、図20の動作フローチャートに基づいて簡単に説明する。図20は、本発明に係る磁気冷暖房装置の動作フローチャートである。
【0136】
(磁気冷暖房装置の動作)
まず、操作者は、温度設定部462から車室内の設定温度を入力する。設定温度が入力されると、空調制御部450は、要求熱量と要求温度差を入力する(S1)。空調制御部450は、車室内の空間容量、現在の車室内の温度、車室内の設定温度を参照して、車室内を設定温度にするために必要な要求熱量を求める。また、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの温度差を求める。この求めた値を、要求熱量、要求温度差として入力する。
【0137】
次に、空調制御部450は、入力した要求熱量と要求温度差をあらかじめ記憶しているマップと照合して磁気印加周波数fを求め、熱伝導部30A−30GのON、OFFのスイッチングパターンをスイッチングパターン記憶部420から取得する(S2)。スイッチングパターンのTSsは、熱伝導部30A−30GをONさせるタイミング、換言すれば熱伝導部30A−30Gに電圧を印加するタイミングである。一方、スイッチングパターンのTSeは、熱伝導部30A−30Gによる熱伝導をOFFさせるタイミング、換言すれば熱伝導部30A−30Gから電圧を除去するタイミングである。
【0138】
空調制御部450は磁気冷暖房装置を運転する(S3)。つまり、空調制御部450は、求めた磁気印加周波数fを実現するために、サーボモータ制御部380に回転数の指示を出す。磁気印加周波数は、1つの磁性体に対して1秒間に何回磁気の印加除去をするかを示すものである。例えば、磁気印加周波数fが6Hzであったとすると、図14から図17に示す構成の磁気冷暖房装置の場合、両回転部2000A、2000Bが1秒間に1回転すると6回磁気の印加除去が行われるので、両回転部2000A、2000Bに要求される回転数は60rpmである。サーボモータ制御部380には、両回転部2000A、2000Bが60rpmで回転するために必要なサーボモータ350A、350Bの回転数を指示する。また、空調制御部450は、スイッチングパターン記憶部454から取得したスイッチングパターンを再現するために、電圧印加制御部38にスイッチングパターンを送る。
【0139】
空調制御部450はステップS3の運転が規定のサイクル行われたか否かを判断する(S4)。図7に示したように、磁気冷暖房装置の運転が開始された直後から、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間にだんだんと温度差が拡大していく。この温度差が要求温度差に達するまでには、あらかじめ規定してあるサイクルだけ磁気の印加、除去を繰り返さなければならない。本実施形態の磁気冷暖房装置の場合、両回転部2000A、2000Bが1回転すると各熱輸送器50−1、50−2、…に磁気の印加、除去が6回繰り返される。したがって、例えば、規定サイクルが1200サイクルに設定されていたとすると、両回転部2000A、2000Bが200回転したか否かが判断される。
【0140】
空調制御部450はステップS3の運転が規定のサイクルまで達していなければ(S4:NO)、S3のステップの処理を繰り返す。一方、ステップS3の運転が規定のサイクルに達したら(S4:YES)次のステップの処理に進む。
【0141】
次に、空調制御部450は、出力熱量と出力温度差を演算する(S5)。出力熱量は、低温側熱交換部入口温度センサ464が検出した冷媒の低温側熱交換部入口温度Tciと低温側熱交換部出口温度センサ466が検出した低温側熱交換部出口冷媒の温度Tcoとの温度差を求め、その温度差に冷媒の質量mcと比熱Cpを掛けることによって求める。
【0142】
また、出力温度差は、高温側熱交換部出口温度センサ468が検出した冷媒の高温側熱交換部出口温度Thoと低温側熱交換部出口温度センサ466が検出した冷媒の温度低温側熱交換部出口Tcoとの温度差である。
【0143】
次に、空調制御部450は、ステップS1で入力した要求熱量とステップS5で求めた出力熱量との差を演算する。また、ステップS1で入力した要求温度差とステップS5で求めた出力温度差との差を演算する(S6)。
【0144】
空調制御部450は、要求熱量と出力熱量との差と、要求温度差と出力温度差との差が規定範囲以内であるかを判断する(S7)。
【0145】
空調制御部450は、要求熱量と出力熱量との差と、要求温度差と出力温度差との差が規定範囲以内であれば(S7:YES)、ステップS2で求めた磁気印加周波数fと、熱伝導部30A−30GのON、OFFのスイッチングパターンを更新してスイッチングパターン記憶部454に記憶させる。ステップS2で求めた磁気印加周波数fと、熱伝導部30A−30GのON、OFFのスイッチングパターンを用いて、磁気冷暖房装置の運転を継続する(S8)。
【0146】
空調制御部450は、要求熱量と出力熱量との差と、要求温度差と出力温度差との差が規定範囲以内でなければ、ステップS2で求めた磁気印加周波数fをf+Δfにし、熱伝導部30A−30GのON、OFFのスイッチングパターンのTSsをTSs+ΔTSsに、TSeをTSe+ΔTSeに、それぞれ設定する(S9)。そして、ステップS3からステップS7までの処理を繰り返す。このようにして、最適な磁気印加周波数f及び最適なスイッチングパターンを学習させると、磁性体ごとに異なる熱発生特性及び熱伝導部ごとに異なる熱伝達特性のばらつきを補正することができる。
【0147】
以上のように、本実施形態に係る磁気冷暖房装置では、永久磁石が配置されている両回転部2000A、2000Bを回転させ、スイッチングパターンに沿って熱伝導部に電圧を印加するだけで、低温側熱交換器40Aから高温側熱交換器40Bに向けて熱を移動させることができる。
【0148】
以上の本発明に係る磁気冷暖房装置では、以下のような効果を得ることができる。
【0149】
各熱伝導部30A−30Gは、電圧の印加、除去に応じて熱伝導率が大きく変化するので、磁性体10A−10F、低温側熱交換部40A、高温側熱交換部40Bに対して摺動させずに熱を輸送させることができる。このため、各熱伝導部30A−30Gに摺動の耐久性を持たせる必要がなく、各熱伝導部30A−30Gの信頼性が向上する。また、摩擦による機械的な損失をなくすことができ、各熱伝導部30A−30Gを駆動するための損失を低減できる。
【0150】
また、各熱伝導部30A−30Gは各磁性体10A−10Fとの並び方向にのみ熱を輸送できるので、熱の輸送に際して熱的な損失が小さくできる。
【0151】
さらに、各熱伝導部30A−30Gは、電圧の印加、除去に応じて、磁性体間10B−10E、磁性体10Aと低温側熱交換部40Aとの間、磁性体10Fと高温側熱交換部40Bとの間を、全ての接触面を使って接続するので、熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させることができる。
【0152】
磁気印加除去部の永久磁石20A−20Fを駆動することで各磁性体10A−10Fに連続的に熱を発生させることができ、各熱伝導部30A−30Gに電圧印加制御部38が選択的に電圧を印加し除去することで、各磁性体10A−10Fが発生した熱を熱輸送器50の一端から他端に輸送させることができる。
【0153】
各磁性体10A−10Fに選択的に磁気を印加し除去するタイミングと同期させて各熱伝導部30A−30Gに電圧を印加し除去するようにしたので、低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに熱を効率的に輸送させることができる。
【0154】
運転条件ごとに定めた、電圧の印加、除去のタイミングを用いて各熱伝導部30A−30Gに電圧を印加し除去するようにしたので、運転条件に適合させて、最大限の効率で低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに熱を輸送させることができる。
【0155】
運転条件ごとに定めた、電圧の印加、除去のタイミングは、磁気冷暖房装置の運転に伴って、最適なタイミングに書き換えるようにしたので、磁性体10A−10Fごとに異なる熱発生特性及び熱伝導部30A−30Gごとに異なる熱伝達特性のばらつきを補正することができる。そのため、最大限の効率で低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに熱を輸送させることができ、磁気冷暖房装置の高出力化及びコンパクト化を達成することができる。
【0156】
熱輸送器50の要求熱量、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間の温度差または磁気印加除去部の駆動パターンごとに、電圧の印加、除去のタイミングを定めているので、それぞれの運転条件ごとに最大限の効率で低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに熱を輸送させることができる。そのため、磁気冷暖房装置の高出力化及びコンパクト化を達成することができる。
【0157】
真空内、または減圧下の環境内に熱輸送器50を設置すると、熱輸送器50を構成する磁性体10A−10Fと熱伝導部30A−30Gの断熱性を向上させることができる。そのため、低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに効率的に熱を輸送させることができ磁気冷暖房装置の高出力化及びコンパクト化を達成することができる。
【0158】
熱伝導部30A−30Gは、低温側熱交換部40Aと磁性体10Aとの間、複数の磁性体10B−10Fとの間、磁性体10Fと高温側熱交換部40Bとの間で接合又は接着により一体化されるので、熱的な接触抵抗の低減が図れ、熱輸送器50−1、50−2、…の製造が容易になる。
次に、本発明に係る他の磁気冷暖房装置における磁気冷暖房の原理を図面に基づいて詳細に説明する。
【0159】
(磁気冷暖房の原理)
図21は、本発明に係る他の磁気冷暖房装置における磁気冷暖房の原理図である。上述した磁気冷暖房装置と同様、磁性体10A−10Dには、発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として正の磁性体を用いる。また、熱伝導部30A−30Eには、磁気が印加されると熱伝導率が相対的に大きくなり、磁気が除去されると熱伝導率が相対的に小さくなる同一材料を用いる。
【0160】
磁気印加除去部20A、20B、磁気印加除去部20C、20Dは、磁性体10A−10Dを挟むようにして、磁性体10A−10D、熱伝導部30A−30Eの間で往復移動する。
【0161】
まず、図21Aの状態から図21Bの状態になる。すなわち、磁気印加除去部20A、20Bが磁性体10Aから磁性体10Bに、磁気印加除去部20C、20Dが磁性体10Cから磁性体10Dに、一斉に移動する。
【0162】
次に、図21Bの状態から図21Aの状態になる。すなわち、磁気印加除去部20A−20Dが一斉に図示左方向に移動して、磁気印加除去部と磁性体、熱伝導部の位置関係が図21Aの状態に戻る。
【0163】
したがって、磁気印加除去部が往復移動すると、図21Aと図21Bの状態が交互に繰り返される。本実施形態では、磁気印加除去部の移動にしたがって、熱伝導部30A−30Eに電圧が印加され、除去される。熱が低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに移動する原理は図1−図7で説明したとおりである。
【0164】
(磁気冷暖房装置の構成)
図22は、本発明に係る他の磁気冷暖房装置の構成図である。本発明に係る他の磁気冷暖房装置は熱輸送器を直線的に設けている。
【0165】
図22に示すように、本実施形態に係る磁気冷暖房装置500は、ベース板520の長手方向の両端に、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bを取り付ける。ベース板520の低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間には、図21と同様に、磁性体10A−10D及び熱伝導部30A−30Eを交互に直線状に並べて配置する。磁性体を直線状に並べたときには、細長い空間に熱伝達機構を構成させることができ、狭い空間を有効利用できる。
【0166】
磁性体10A−10D及び熱伝導部30A−30Eは、ベース板520上に直接接合しても良いが、磁気熱量効果を有効に利用できるようにするためには、ベース板520は熱抵抗の大きな材料で構成することが望ましい。熱抵抗が小さいと、磁性体10A−10Dで発生した熱がベース板520を伝って放熱されてしまうからである。また、熱抵抗を大きくするために、磁性体10A−10D及び熱伝導部30A−30Eは、ベース板520上に直接接合するのではなく、ベース板520との間に熱絶縁性フィルムや熱絶縁層を設けても良い。
【0167】
磁性体10A−10Dは、上述の通り正の磁性体を用いるが、負の磁性材料で形成することもできる。正・負の磁性体の材料や形状については上述した。また、熱伝導部30A−30Eは、電圧が印加されると熱伝導率が相対的に大きくなり、電圧が除去されると熱伝導率が小さくなる。熱伝導部30A−30Eは、具体的には、図8−図13に示した構成の熱伝導部を用いる。
【0168】
磁気印加部530A、530Bは、これらを図示左右方向に直線状に往復移動させるスライダー540に取り付ける。スライダー540は、ベース板520の長手方向に沿って往復移動する。スライダー540はスライドガイド580に取り付ける。スライドガイド580は固定部570A及び570Bによって支持される。
【0169】
固定部570A及び570Bはベース板520の下部両端に位置しスライドガイド580を支持する。スライダー540は、ボールねじやリニアスライダーなどの直線移動機構585に取り付けられ、スライドガイド580に沿って直線状に往復移動する。直線移動機構585は磁気回路駆動部590によって駆動される。磁気回路駆動部590はモータの回転を直線運動に変えるカム機構を有するものや、リニアモータ、圧電アクチュエータを用いることができる。
【0170】
空調制御部600は、磁気回路駆動部590に磁気印加部530A、530Bを往復移動させるための命令を出力し、同時に、磁気印加部530A、530Bの移動とともに各熱伝導部30A−30Eに個別に電圧を印加、除去する。
【0171】
(磁気冷暖房装置の動作)
図23は、本発明に係る他の磁気冷暖房装置の動作フローチャートである。磁気冷暖房装置500の動作は空調制御部600が総括的に制御する。
【0172】
空調制御部600は、磁気冷凍の開始信号が入力されたか否かを判断する(S11)。空調制御部600は、磁気冷凍の開始信号が入力されなければ(S11:NO)、入力されるのを待ち、入力されれば(S11:YES)次のステップに進む。
【0173】
空調制御部600は、磁気冷凍の開始信号が入力されると、磁気回路駆動部590を動作させ、磁気印加部530A、530Bを往復移動させる。例えば、図21A、Bに示すように、磁気印加部530A、530Bを磁性体10A、10Cの位置から、磁性体10B、10Dの位置に移動させる。このとき、磁性体10A、10Cは吸熱し、磁性体10B、10Dは発熱する。また、空調制御部600は、磁気印加部530A、530Bの移動に同期させて、熱伝導部30A、30C、30Eに電圧を印加する。電圧が印加されると、熱伝導部30A、30C、30Eの熱伝導率が大きくなる。次に、磁気印加部530A、530Bを磁性体10B、10Dの位置から、磁性体10A、10Cの位置に移動させる。このとき、磁性体10B、10Dは吸熱し、磁性体10A、10Cは発熱する。空調制御部600は、磁気印加部530A、530Bの移動に同期させて、熱伝導部30B、30Dに電圧を印加する。電圧が印加されると、熱伝導部30B、30Dの熱伝導率が大きくなる。この動作を繰り返すことで、低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに熱が移動する(S12)。
【0174】
そして、空調制御部600は、磁気冷凍の終了信号が入力されたか否かを判断する(S13)。空調制御部600は、磁気冷凍の終了信号が入力されなければ(S13:NO)、ステップ12の処理に戻る。つまり、空調制御部600は、磁気回路駆動部590を動作させ、磁気印加部530A、530Bを往復移動させ、熱伝導部に印加する電圧のON、OFFを制御する。空調制御部600は、磁気冷凍の終了信号が入力されない限り、上記のステップS12の動作を繰り返す。磁気冷凍の終了信号が入力されれば(S13:YES)処理を終了して、磁気冷暖房装置500の動作を終了する。
【0175】
以上のように磁気印加部530A、530Bを往復移動させることによって、図7に示すグラフのように、低温側熱交換部40Aの温度を下げ、高温側熱交換部40Bの温度を上げることができ、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間に温度差を生じさせることができる。
【符号の説明】
【0176】
10A−10F、11A−11F 磁性体、
21A−21E、22B−22F 永久磁石(磁性体用)、
30A−30G、31A−31G 熱伝導部、
40A 低温側熱交換部、
40B 高温側熱交換部、
50−1、50−2 熱輸送器、
250A、250B 基準位置検出センサ、
350A、350B サーボモータ(モータ)、
450、600 空調制御部、
1000 固定部、
2000A、2000B 回転部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気熱量効果を有する磁性体と当該磁性体の熱を輸送する熱伝導部とを交互に配置する熱輸送器であって、
前記熱伝導部は、電圧を印加すると金属に相転移して前記磁性体との熱伝導を可能にし、電圧を除去すると絶縁体に相転移して前記熱伝導を遮断することを特徴とする熱輸送器。
【請求項2】
前記熱伝導部は、
前記磁性体に取り付ける電極と、
前記電極の間に取り付ける金属/絶縁相転移体と、
を有し、
前記電極に電圧を印加すると前記金属/絶縁相転移体の熱伝導率が大きくなり、前記電極に印加する電圧を遮断すると前記金属/絶縁相転移体の熱伝導率が小さくなることを特徴とする請求項1に記載の熱輸送器。
【請求項3】
前記金属/絶縁相転移体に熱伝導率をより大きくするための補助電極をさらに取り付けることを特徴とする請求項2に記載の熱輸送器。
【請求項4】
前記熱伝導部は、
前記磁性体の間に取り付ける金属/絶縁相転移体と、
前記金属/絶縁相転移体に取り付ける電極と、
を有し、
前記電極に電圧を印加すると前記金属/絶縁相転移体の熱伝導率が大きくなり、前記電極に印加する電圧を遮断すると前記金属/絶縁相転移体の熱伝導率が小さくなることを特徴とする請求項1に記載の熱輸送器。
【請求項5】
前記熱伝導部は、
前記磁性体の間に取り付ける金属/絶縁相転移体であり、
前記磁性体に電圧を印加すると、前記金属/絶縁相転移体の熱伝導率が大きくなり、前記磁性体に印加する電圧を遮断すると前記金属/絶縁相転移体の熱伝導率が小さくなることを特徴とする請求項1に記載の熱輸送器。
【請求項6】
前記金属/絶縁相転移体に熱電子の移動を妨げる絶縁体を取り付けたことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の熱輸送器。
【請求項7】
前記電極と前記前記金属/絶縁相転移体との間に熱電子の移動を促す分極体を配置したことを特徴とする請求項4に記載の熱輸送器。
【請求項8】
前記分極体は、誘電体及びイオン性液体のうちの少なくとも1種類以上から形成することを特徴とする請求項7に記載の熱輸送器。
【請求項9】
前記金属/絶縁相転移体は、無機酸化物モット絶縁体または有機モット絶縁体であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の熱輸送器。
【請求項10】
前記無機酸化物モット絶縁体は、少なくとも遷移金属元素を含むことを特徴とする請求項9に記載の熱輸送器。
【請求項11】
前記磁気熱量効果を有する磁性体は、磁気を印加すると発熱し除去すると吸熱する正の磁性体、又は、磁気を印加すると吸熱し除去すると発熱する負の磁性体の、いずれか一方の磁性体であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の磁気冷暖房装置。
【請求項12】
磁気熱量効果を有する磁性体と当該磁性体の熱を輸送する熱伝導部とを交互に配置する熱輸送器と、
前記熱輸送器の一端に前記熱伝導部を介して配置する低温側熱交換部と、
前記熱輸送器の他端に前記熱伝導部を介して配置する高温側熱交換部と、
前記熱輸送器の各磁性体に選択的に磁気を印加し除去する磁気印加除去部と、を有し、
前記熱輸送器は、請求項1から11のいずれかの構成を有することを特徴とする磁気冷暖房装置。
【請求項13】
前記磁気熱量効果を有する磁性体は、磁気を印加すると発熱し除去すると吸熱する正の磁性体、又は、磁気を印加すると吸熱し除去すると発熱する負の磁性体の、いずれか一方の磁性体であることを特徴とする請求項12に記載の磁気冷暖房装置。

【図7】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図23】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−108664(P2013−108664A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253278(P2011−253278)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)