熱遮蔽用積層体及びその製造に用いられる積層フィルム
【課題】自動車のフロントガラスや建築物の窓ガラスなどに使用される熱遮蔽用積層体であって、可視光透過率の経時的な低下を抑制できる熱遮蔽用積層体を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る熱遮蔽用積層体は、一対の透明基板と、一対の透明基板の間に配置された光吸収層とを備え、光吸収層がタングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、オキシム化合物とを含む。
【解決手段】本発明の一態様に係る熱遮蔽用積層体は、一対の透明基板と、一対の透明基板の間に配置された光吸収層とを備え、光吸収層がタングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、オキシム化合物とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱遮蔽用積層体及びその製造に用いられる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
開放感のある空間を創出できることから、近年、フロントガラスが大きい自動車や窓ガラスが大きい建築物が好まれる傾向にある。ガラス面積の増大に伴い、ガラスを通じて車内や室内に入る太陽光エネルギーが増大する傾向にある。炎天下に自動車を駐車したときに経験するように、太陽光エネルギーは車内を著しく高い温度にまで至らしめる。太陽光エネルギーによる車内温度の上昇は乗員の快適性を損なうとともにエアコンに対して過度な負担をかけることにもなりエアコン稼動時の燃費の著しい低下を招来する。
【0003】
自動車のフロントガラスは、割れたときにガラスの破片が飛散するのを防止するため、一般に2枚の着色透明ガラスを可塑化ポリビニルブチラールで貼り合わせた、合わせガラス構造体からなる。上記着色透明ガラスはグリーンガラスとも呼ばれる。夜間に自動車を運転するときでも十分に外が見えるように、安全基準上、フロントガラスの可視光領域の透過率は指定された値以上に保つ必要がある。
【0004】
これに対し、車内の温度上昇を抑制するには近赤外領域をなるべく遮蔽することが望ましい。その遮蔽技術は、エネルギーの吸収技術及び反射技術に大別できる。エネルギー吸収技術は、太陽光エネルギーを吸収して熱に変換するものであり、生じた熱はガラス構造体に蓄熱される。自動車の運転時にあっては、フロントガラスの外側に当たる空気によってフロントガラスは冷却されるが、屋外駐車時にあっては外側からの冷却が期待できないため、再放射及び伝熱によって内部領域に熱が持ち込まれやすい。この点で、蓄熱を伴わないエネルギー反射技術が望ましい。
【0005】
エネルギー反射技術として、合わせガラス構造体の内部に透明金属膜を配置した熱線反射ガラスが実用化されている。ただし、この透明金属膜が電磁波障害を起こし、ガラス構造体を通しての通信を妨げることが課題となっている。他方、非金属系の材料を利用したエネルギー反射技術として、屈折率の異なる2種の薄膜を100層以上積み重ねた光反射多層フィルムが知られている。光反射多層フィルムは反射すべき光の波長領域に応じて薄膜の厚さを適宜設定することにより所望の波長領域を選択的に反射することが可能であり、近赤外領域のみを選択的に反射することもできる。このようなフィルムは近赤外反射多層フィルムと呼ばれる。
【0006】
近赤外反射多層フィルムを合わせガラス構造体の内部に配置した場合、その両側に配置される一対のガラスのうち外側のガラスには上述の着色透明ガラス(例えば、グリーンガラス)ではなく、無色透明なガラス(クリアガラス)を採用することが望ましい。これは、着色透明ガラスは可視光領域のみならず、近赤外領域のエネルギーも幾分か吸収するため、外部領域側に着色透明ガラスが配置されていると太陽光エネルギーが近赤外反射多層フィルムに到達する前に着色透明ガラスが熱を吸収し、内部領域に熱が持ち込まれやすくなるからである。
【0007】
しかし、クリアガラスと近赤外反射多層フィルムの組み合わせでは、太陽光エネルギーの半分を占める可視光の遮蔽が不十分となりやすいという課題がある。従って、近赤外反射多層フィルムとエネルギー吸収技術とを併用し、近赤外反射多層フィルムを通過した後の光について、安全基準で指定された範囲内において可視光領域の透過率を制御することも検討されている。
【0008】
近赤外反射多層フィルムと併用し得るエネルギー吸収技術として、タングステン酸化物微粒子を利用したものが挙げられる。タングステン酸化物微粒子は、可視光領域のみならず近赤外領域にも優れたエネルギー吸収能を持つ。このため、熱線吸収合わせガラスの内部に分散させる材料として利用することが検討されている。
【0009】
例えば、特許文献1には、波長850〜1000nmの帯域の平均反射率が60%以上であり、酸化タングステン化合物を含んだ積層フィルムが記載されている。また、特許文献2には、日射遮蔽機能を有する微粒子がタングステン酸化物の微粒子及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子で構成された日射遮蔽用合わせ構造体が記載されている。特許文献3には、紫外線照射による硬化によって得られる熱線防御機能を有する中間膜を備えた熱線防御積層ガラスが記載されている。特許文献4には、多層ガラスに用いられる中間膜であって、タングステン酸化物質と、ベンゾイル基を有する分子又は多価金属塩、あるいは、ベンゾイル基を有する分子と多価金属塩の両方を含むポリマー層を有するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−200924号公報
【特許文献2】国際公開第2005/087680号
【特許文献3】米国特許出願公開2010/0203322号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開2009/035583号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、エネルギー反射技術とエネルギー吸収技術を組み合わせることによって、可視光領域で透過率aを調整しつつ、近赤外線領域で反射率bを高めることが可能となる(図14参照)。しかし、タングステン酸化物を近赤外反射多層フィルムに配して合わせガラスに組み込んで耐候性試験を行うと、従来の技術では時間の経過とともに可視光領域の透過率が低下する現象が見られる(図15参照)。本発明者らの検討によると、この透過率の低下はタングステン酸化物が太陽光の影響により濃色化して生じるものである。可視光領域について所定の透過率を維持すべき自動車のフロントガラスにあっては、タングステン酸化物の濃色化による可視光透過率の過度な低下は望ましくない。自動車のフロントガラスに限らず、例えば建築物用の合わせガラス構造体においても濃色化といった変色はデザイン性等の観点から避けることが望ましい。本発明は、上述するタングステン酸化物を使用した場合に生じていた可視光領域の透過率の経時的低下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様に係る熱遮蔽用積層体は、一対の透明基板と、一対の透明基板の間に配置された光吸収層とを備え、光吸収層はタングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、オキシム化合物とを含む。
【0013】
本発明の第二の態様に係る熱遮蔽用積層体は、一対の透明基板と、一対の透明基板の間に配置された光吸収層とを備え、光吸収層はタングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、非酸性分散剤とを含む。
【0014】
本発明の第一の態様に係る積層フィルムは、上記熱遮蔽用積層体の製造に用いられるものであり、透明フィルムと、透明フィルム上に設けられた粒子含有層とを備え、粒子含有層はタングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、オキシム化合物及びオキシム化合物のイソシアネート付加物の少なくとも一方とを含む。
【0015】
本発明の第二の態様に係る積層フィルムは、上記熱遮蔽用積層体の製造に用いられるものであり、透明フィルムと、透明フィルム上に設けられた粒子含有層とを備え、粒子含有層はタングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、非酸性分散剤とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、可視光透過率の経時的な低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】熱遮蔽用積層体の一態様を示す模式断面図である。
【図2】図1に示す熱遮蔽用積層体の熱遮蔽機能を説明する模式図である。
【図3】熱遮蔽用積層体の他の態様を示す模式断面図である。
【図4】熱遮蔽用積層体の製造に用いられる積層フィルムの一態様を示す模式断面図である。
【図5】熱遮蔽用積層体の製造に用いられる積層フィルムの他の態様を示す模式断面図である。
【図6】実施例A−1〜5及び参照例A−1〜4で作製した積層体(直接積層型)の試験結果を示すグラフである。
【図7】実施例A−1〜5及び参照例A−1〜4で作製した積層体(直接積層型)の試験結果を示すグラフである。
【図8】実施例A−1〜5及び参照例A−1〜4で作製した積層体(標準型)の試験結果を示すグラフである。
【図9】実施例A−1〜5及び参照例A−1〜4で作製した積層体(標準型)の試験結果を示すグラフである。
【図10】実施例A−6、7及び参照例A−5で作製した積層体(直接積層型)の試験結果を示すグラフである。
【図11】実施例A−6〜9及び参照例A−5、6で作製した積層体(標準型)の試験結果を示すグラフである。
【図12】実施例B−1及び参照例B−1で作製した積層体(標準型)の試験結果を示すグラフである。
【図13】実施例B−2〜7、参照例B−2〜3及び参照例A−6で作製した積層体(標準型)の試験結果を示すグラフである。
【図14】太陽光エネルギー領域における透過率及び近赤外線領域の反射率の一例を示すグラフである。
【図15】太陽光エネルギー領域の透過率の経時変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
なお、本明細書において、特に断らない限り、「透明」とは、可視光透過率が60%以上を意味する。また、ここで「可視光透過率」とは、JIS−R−3212に規定されるように、分光透過率の値に、A光源(色温度2856Kに点灯した光源)のスペクトルとCIE明順応の被視感度の波長分布から得られる重価係数に乗じて加重平均し、求められる値をいう。「可視光」とは、波長380nm〜780nmの光をいい、「近赤外光」とは、波長780〜2500nmの光をいう。
【0020】
また、「中間膜」とは、合わせガラス等の一対の透明基板を貼り合わせ部材を作製する際に、一対の透明基板の間に直接または間接に挟み込まれる、接着性のある膜をいい、代表的には、ガラス等の透明基板の耐貫通性、飛散防止、防犯性向上の機能を併せ持つ、厚さ0.3〜1mmの接着性シートをいう。
【0021】
図1は、熱遮蔽用積層体の第一実施形態を模式的に示す断面図である。同図に示す熱遮蔽用積層体10は、透明基板4a、中間膜3、透明フィルム1、光吸収層2及び透明基板4bがこの順序で積層された構造を有する。熱遮蔽用積層体10は、透明基板4aが外側領域側となり、透明基板4bが内側領域側となるように自動車や建築物に取り付けられる(図2参照)。図1に示すとおり、熱遮蔽用積層体10は、透明基板4bの表面上に光吸収層2が直接積層された構造を有することから、このタイプの積層体を以下、場合により「直接積層型」と称する。透明基板4bは着色された透明基板でもよい。
【0022】
透明フィルム1は、可視光線を透過させ、赤外線を反射させる機能を有するフィルムであることが好ましく、近赤外反射多層フィルムであることが好ましい。近赤外反射多層フィルムとしては、例えば、可視光線を透過させ赤外線を反射し、すべての可視光波長の少なくとも60%を透過し、850nm〜1100nmの赤外線の少なくとも60%又はすべての波長の赤外線の少なくとも60%を反射するものが使用できる。すべての可視光波長の少なくとも75%を透過し、850nm〜1100nmの赤外線の少なくとも75%を反射するもの、あるいは、すべての可視光波長の少なくとも90%を透過し、850nm〜1100nmの赤外線の少なくとも90%を反射するものが使用できる。
【0023】
近赤外反射多層フィルムは、複数の金属層を含む多層金属フィルムであってもよく、複数の交互のポリマー層を備える多層ポリマーフィルムであってもよい。多層金属フィルムは近赤外線及び赤外線を反射する一方で可視光線を透過させる複数の薄い金属層を有する。多層ポリマーフィルムは、屈折率の異なる2種の薄膜を100層以上積み重ね近赤外の波長領域に応じて薄膜の厚さを適宜設定することにより、赤外線を反射し可視光線は透過させる。交互のポリマー層は、任意の有用な組み合わせによって形成することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートのコポリマーと、ポリ(メチルメタクリレート)又はポリ(メチルメタクリレート)のコポリマーとの層を交互にすることによって形成することができる。
【0024】
近赤外反射多層フィルムは光拡散層を備えてもよい。光拡散層は光散乱粒子を含んでおり、近赤外反射多層フィルムの光拡散機能を向上させることができる。
【0025】
光吸収層2は、透明フィルム1を透過した可視光線と赤外線の一部を吸収する機能を有し、タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方を含む。光吸収層2は、例えば、高分子バインダーからなるベース層に、分散剤を介して凝集することなく分散したタングステン酸化物粒子あるいは複合タングステン酸化物粒子を含む。高分子バインダーの機械的強度を向上させる目的でバインダーの官能基と反応しうる架橋剤を含む場合もある。
【0026】
タングステン酸化物は、一般式WyOzで表される酸化物である。タングステン酸化物は、タングステンに対する酸素の組成比が2.2≦z/y≦2.999であることが好ましい。このz/yの値が、2.2以上であれば、赤外線遮蔽材料中にWO2の結晶相が現れるのを回避することができるとともに、材料としての化学的安定性を得ることができる。また、このz/yの値が2.999以下であれば、必要とされる量の自由電子が生成され効率よい赤外線遮蔽材料となり得る。
【0027】
複合タングステン酸化物は、一般に、MxWyOzで表される酸化物である。ここで、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素である。特に、光吸収機能を向上させる観点から、M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちの1種類以上であるものが好ましい。また複合タングステン酸化物が、シランカップリング剤で処理されていることも好ましい。優れた分散性が得られ、優れた赤外線カット機能、透明性が得られる。
【0028】
上記MxWyOzにおいて、x、y及びzは、0.001≦x/y≦1であり、2.2≦z/y≦3の関係を満たすことが好ましい。元素Mの添加量を示すx/yの値が0.001より大きければ、十分な量の自由電子が生成され、赤外線遮蔽効果を十分に得ることができる。元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線遮蔽効果も上昇するが、x/yの値が1程度で飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、微粒子含有層中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。また、酸素量の制御を示すz/yの値については、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物においても、上述のWyOzで表記される赤外線遮蔽材料と同様の機構が働くことに加え、z/y=3.0においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給があるため、2.2≦z/y≦3.0が好ましく、さらに好ましくは2.45≦z/y≦3.0である。さらに、複合タングステン酸化物が六方晶の結晶構造を有する場合、可視光領域の透過が向上し、近赤外領域の吸収が向上しやすい。
【0029】
タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子は、光吸収層2のヘイズを抑える観点から、一次粒子の平均粒径はなるべく小さいことが好ましく、好ましくは300nm以下であり、より好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下である。なお、ここでいう平均粒径とは、タングステン酸化物粒子又は複合タングステン酸化物粒子の平均粒径を画像解析法、コールター法、レーザー回折散乱法、動的光散乱法、超遠心沈降法等によって測定した値を意味し、当該測定にはコールター株式会社製のCoulter N4 Plus(商品名)を使用できる。
【0030】
タングステン酸化物粒子又は複合タングステン酸化物粒子の含有量あるいはこれらの粒子の合計量は、粒子の平均粒径、使用する透明基板、透明フィルム等の其の他の構成部材の可視光透過率により一概に言えないが、例えば、この構成部材の可視光透過率が90%の場合は、1.1g/m2となる。
【0031】
本発明の一実施形態では、光吸収層2は、以下の一般式(1)で表されるオキシム化合物を含有することを特徴とする。オキシム化合物を含有することで、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子の濃色化が抑制され、熱遮蔽用積層体10(特に光吸収層2)の可視光透過率の経時的な低下を抑制することができる。本発明者らは、光吸収層2に含まれる架橋剤としてオキシム化合物のイソシアネート付加物を用いた場合に、この濃色化が軽減される事実に偶然気づき、さらに鋭意検討を行った結果、光吸収層2中にオキシム化合物を含有させることで、上記効果が奏されることを見出した。
【0032】
【化1】
[式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、水素、置換もしくは非置換の鎖状アルキル基又は環状アルキル基、置換もしくは非置換のアラルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、又は、置換もしくは非置換のアシル基であり、R1およびR2は、独立に存在するか、もしくは結合して環状構造を形成する。]
【0033】
本実施形態において用いられるオキシム化合物としては、アセナフテンキノンジオキシム、アセトアルドキシム、アセトフェノンオキシム、アセトキシムベンゾアート、2−アダマンタノンオキシム、α−ベンズアルドキシム、ベンズアミドオキシム、ベンジルジオキシム、α−ベンゾインオキシム、2−ブタノンオキシム(別名:Methyl ethyl ketoxime(MEKO))、ブチルアルドキシム、(1R)−カンファーオキシム、anti−(1R)−(+)−カンファーキノン3−オキシム、シクロヘプタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、シクロペンタデカノンオキシム、シクロペンタノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、4,4’−ジベンゾイルキノンジオキシム、1,3−ジヒドロキシアセトンオキシム、ジメドンジオキシム、ジメチルグリオキシム、ジ−2−ピリジルケトキシム、9−フルオレノンオキシム、ホルムアルドキシムトリマー、ホルムオキシム、α−フリルジオキシム、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノンオキシム、N−ヒドロキシフタルイミド、β−イサトキシム、イソニトロソアセトフェノン、2−イソニトロソプロピオフェノン、メチルグリオキシム、5−メチル−2−ヘキサノンオキシム、4−メチル−2−ペンタノンオキシム、1−メチル−4−ピペリドンオキシム、ニオキシム、アセチルアセトンジオキシム、フェニル2−ピリジルケトキシム、ピナコリンオキシム、ピリジン−2−アルドキシム、ピリジン−4−アルドキシム、サリチルアルドキシム、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドンオキシム、ビオルル酸を挙げることができる。ここで耐光性の観点からは、アルキルオキシムが好ましく、製品コストや入手容易さの観点から、2−ブタノンオキシム(MEKO)およびシクロヘキサノンオキシムが特に好ましい。
【0034】
オキシム化合物の含有量は、光吸収層2の全固形分中0.1質量%以上含むことが好ましい。0.1質量%以上の場合、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子を含む光吸収層2の濃色化を効果的に抑制できる。オキシム化合物の含有量は、1質量%以上、あるいは10質量%以上であってもよい。一方、オキシム化合物の含有量は30質量%以下が好ましい。30質量%を超えると光吸収層2の機械的物性の劣化を招く恐れがある。
【0035】
本発明の一実施形態では、光吸収層2に含有されるタングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子の分散剤として、非酸性分散剤を使用する。従来、このようなタングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子の分散剤としては、一般に酸性の分散剤が使用されているが、分散剤として非酸性分散剤を使用することで、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子を含む光吸収層2の濃色化を効果的に抑制できる。
【0036】
先に説明したオキシム化合物とともに非酸性分散剤が光吸収層2に含有される場合は、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子を含む光吸収層2の濃色化をより効果的に抑制することも可能になる。
【0037】
タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子を光吸収層2に高度に分散せしめるには分散剤を使用することが好ましく、アミン価を有し、酸価を全く有しないか、酸価が所定値以下の非酸性分散剤を使用することがより好ましい。アミン価を有する分散剤は、分散性に優れ、光吸収層2に配合することで、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子の高い分散性を達成できるとともに、これらの粒子の濃色化を抑制することができる。
【0038】
非酸性分散剤として好ましいアミン価は1〜100mgKOH/gであり、より好ましくは1〜50mgKOH/gである。アミン価が1mgKOH/g以上とすることで、無機粒子に対する分散剤としての機能を効果的に発揮する。ただし、50mgKOH/gを超えると経時でのアミノ基に起因する黄変を起こす場合がある。ここでいうアミン価とは、試料1g中の第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンの総量を中和するのに必要な塩酸の量から、試料1g中に含有される第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンの総量を求め、その総量をmg単位の水酸化カリウムに換算した値で、その測定は、ASTM D 2073に準拠した方法で行うことができる。具体的には、溶媒とフェノールフタレイン指示薬溶液を加え、電位差滴定装置を用いて対応する濃度のアルコール性塩酸溶液で滴定し、溶液の色が無色から微紅色に変わった点を終点とする。また、同時にブランク試験を行って補正する。
【0039】
非酸性分散剤の中には、同時に酸価を有する化合物も存在するが、その場合は酸価がなるべく低いものが好ましく、具体的には酸価が20以下のものが好ましい。ここでいう酸価とは、試料1g中に含まれる脂肪酸基含有成分を中和するのに必要なmg単位の水酸化カリウムの質量を表し、その測定はJIS K 0070−1966に準拠した方法で行うことができる。具体的には、溶媒と1%程度のフェノールフタレイン指示薬溶液を加え、対応する濃度のアルコール性水酸化カリウム標準液で滴定し、溶液の色が無色から微紅色に変わった点を終点とする。また、同時にブランク試験を行って補正する。
【0040】
非酸性分散剤により光吸収層2の濃色化を抑制できる理由は必ずしも明らかではないが、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子の濃色化は、これらの還元反応が要因と考えられるため、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子近傍に存在する分散剤を非酸性とすることで、強力な還元剤である水素イオンを粒子近傍から減らし、還元反応が抑制される結果、濃色化の進行を抑えることができると考えられる。従って、非酸性分散剤としては、酸価を全く有しないか、極力少ない分散剤を使用することが好ましい。例えば、上述するように、酸価20以下の非酸性分散剤が好ましい。
【0041】
なお、工業的には、分散剤の選択には、分散能のみならず、長期間にわたる保管安定性等が重要な決定因子となる場合は、必ずしも上述のような非酸性分散剤が使用されない場合もある。この場合も、光吸収層の形成の際、即ち、非酸性分散剤を後から添加することにより、最終的に非酸性分散剤を含む光吸収層を形成して、同様の効果を得ることもできる。
【0042】
なお、分散剤としては、界面活性剤やカップリング剤のような低分子化合物を用いてもよく、さまざまな官能基を有する高分子化合物を用いてもよい。タングステン酸化物粒子又は複合タングステン酸化物粒子の微粒子表面に吸着するための官能基としては、スルホン酸、リン酸、カルボン酸基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、アミド基、エステル基、エーテル基などが用いられるが、非酸性官能基としてはアミノ基が主となる。また、高分子分散剤の主たる骨格は、ビニル化合物のランダム共重合物、ブロック共重合物、グラフト共重合物およびポリエステル等の重縮合物、ポリウレタン等の重付加物およびそれらの塩であってもよい。具体的には、ビックケミー社のDISPERBYKシリーズ、エボニック デグサ社のTEGO Dispersシリーズ、楠本化成社のDISPARLONシリーズ、共栄社のフローレンシリーズニューセンチュリーコーティングス社のAgriSperseシリーズなどから入手することが可能である。
【0043】
光吸収層2には、上記成分の他に、被着体に対する接着性や機械的に安定した層構造を形成するために樹脂バインダーを配合してもよい。樹脂バインダーとしては、特に限定されないが、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、トリアセチルセルロース等の高分子化合物を添加してもよく、層構造の耐久性、耐熱性を強化するためにバインダーの官能基と反応しうる架橋剤を配合したりしてもよい。また、樹脂バインダーとして、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート等の光硬化性樹脂であってもよい。
【0044】
さらに、光吸収層2には、特性を著しく損なわない程度に、フィルムの色調を調整する目的で有機顔料、無機顔料等を添加してもよく、樹脂バインダーの経時安定性を向上する目的でヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類等の老化防止剤を添加してもよい。
【0045】
光吸収層2を形成する方法としては、樹脂バインダー、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子、上述する分散剤、架橋剤および其の他の添加物等の成分を有機溶剤に溶解・分散させた塗液をフィルム上に塗布して加熱乾燥して形成する方法、加熱乾燥後光照射し、硬化させる方法がある。さらに、溶剤を用いない光吸収層2の形成方法としては、有機溶剤なしで塗液を調整し、フィルム上に塗布して光照射で硬化させる方法、押出し機で混練しダイを通じてフィルム化する方法等が挙げられる。
【0046】
中間膜3は、図1で示すように、透明基板4aと透明フィルム1との間に配置されていることが好ましい。熱遮蔽用積層体10が中間膜3を備えることによって、積層化を強化できるとともに透明基板4a、4bが割れても破片が飛散すること、重量物が当たった際に貫通することを防止できる。中間膜3としては、特に限定はないが、PVB層(ポリビニルブチラール層)を用いてもよく、EVA層(エチレン酢酸ビニル共重合体層)を用いてもよい。PVB層を構成するPVB樹脂組成物は、PVB樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤などを含んでいてもよい。また、EVA層を構成するEVA樹脂組成物は、EVA、有機過酸化物、紫外線吸収剤などを含んでいてもよい。
【0047】
一対の透明基板4a、4bは、ガラス板であってもよく、ポリカーボネートなどの樹脂で成形された板でもよい。ガラス板としては、例えば珪酸塩ガラスが用いられる。ガラス板厚は、フィルム強化ガラスの場合、それを設置する場所等により異なる。自動車のフロントガラス等に適当な両方がガラス板である合わせガラスの場合は、ガラス板の厚さは、0.5〜10mmが一般的であり、1〜5mmが好ましい。
【0048】
次に、熱遮蔽用積層体10の熱遮蔽機能について図2を用いて説明する。外部領域Aから太陽光線が熱遮蔽用積層体10に照射する場合において、太陽光線における近赤外線S1は透明基板4aと中間膜3を通過する。その際、透明フィルム1が近赤外反射多層フィルムの場合、透明フィルム1で大部分(近赤外線S2)は外部領域Aへ反射される。一方、透明フィルム1を透過した近赤外線S3は光吸収層2で吸収され、熱となったうちの一部(P1)が内部領域Bへ侵入する。一方、太陽光線における可視光線T1は透明基板4a、中間膜3及び透明フィルム1を通過し、さらに光吸収層2においてもその70%以上(可視光線T3)が透過し、透明基板4bを通過して内部領域Bへ入射する。また、光吸収層2において吸収された可視光線T2は、熱としてその一部(P3)が内部領域Bへ侵入する。
【0049】
熱遮蔽用積層体10によれば、光吸収層2に含まれるオキシム化合物及び/又は非酸性分散剤の作用により、光吸収層2の濃色化を抑制でき、可視光透過率の経時的な低下を抑制できる。
【0050】
図3は、熱遮蔽用積層体の第二実施形態を模式的に示す断面図である。同図に示す熱遮蔽用積層体20は、透明基板4a、中間膜3a、透明フィルム1、光吸収層2、中間膜3b及び透明基板4bがこの順序で積層された構造を有する。熱遮蔽用積層体20は、透明基板4aが外側領域側となり、透明基板4bが内側領域側となるように自動車や建築物に取り付けられる。熱遮蔽用積層体20は、光吸収層2の構成等に特徴があるが、上述の積層構造自体は標準的なものであるから、このタイプの積層体を以下、場合により「標準型積層体」と称する。
【0051】
熱遮蔽用積層体20は、中間膜3a,3bが透明フィルム1及び光吸収層2を封止するように配置されている点の他は、上述の熱遮蔽用積層体10と同様の構成を有する。熱遮蔽用積層体20の構成部材も熱遮蔽用積層体10と同様のものを使用できる。
【0052】
熱遮蔽用積層体20によれば、光吸収層2に含まれるオキシム化合物及び/又は非酸性分散剤の作用により、光吸収層2の濃色化を抑制でき、可視光透過率の経時的な低下を抑制できる。
【0053】
図4は、熱遮蔽積層体を製造するための積層フィルムの第一実施形態を模式的に示す断面図である。同図に示す積層フィルム30は、透明フィルム1とその一方面上に設けられた粒子含有層2Aを備える。粒子含有層2Aは、熱遮蔽用積層体において光吸収層2をなすものであり、上述の光吸収層2と同様、タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、オキシム化合物及び非酸性分散剤の少なくとも一方とを含有する。この積層フィルム30と、中間膜3もしくは中間膜3a,3b及び一対の透明基板4a、4bとを用いて積層体を構成し、この積層体に対する真空脱気処理等を経ることで、図1,3に示す構成の熱遮蔽用積層体を製造できる。
【0054】
図5は、熱遮蔽積層体を製造するための積層フィルムの第二実施形態を模式的に示す断面図である。同図に示す積層フィルム40は、透明フィルム1とその一方面上に設けられた前駆体層(粒子含有層)2Bとを備える。前駆体層2Bは、オキシム化合物のイソシアネート付加物及び非酸性分散剤の少なくとも一方を含有する。前駆体層2Bに含まれるオキシム化合物のイソシアネート付加物から加熱処理等によってオキシム化合物が発生することで、前駆体層2Bは光吸収層2となる。より具体的には、積層フィルム40と、中間膜3もしくは中間膜3a,3b及び一対の透明基板4a、4bとを用いて積層体を構成し、この積層体に対する加熱処理及び真空脱気処理等を経ることで、図1,3に示す構成の熱遮蔽用積層体を製造できる。なお、前駆体層2Bはオキシム化合物のイソシアネート付加物とともに、オキシム化合物も含んでもよい。
【0055】
ここで、オキシム化合物のイソシアネート付加物とは、オキシム化合物にイソシアネート化合物が付加した化合物であり、潜在的なオキシム化合物ということができる。オキシムのイソシアネート付加物は、加熱によりイソシアネートが解離し、オキシム化合物を発生させることができるため、積層フィルム40は上記熱遮蔽用積層体10,20の製造過程において加熱処理がなされる直前まで安定的にオキシム化合物を内在させることができる。
【0056】
オキシム化合物に付加するイソシアネート化合物としては、ベンゼンスルホニルイソシアナート、イソシアン酸ベンジル、イソシアン酸2−ビフェニル、イソシアン酸n−ブチル、イソシアン酸tert−ブチル、イソシアン酸4−ブチルフェニル、イソシアン酸シクロヘキシル、イソシアン酸2,6−ジイソプロピルフェニル、イソシアン酸2,6−ジメチルフェニル、イソシアン酸3,5−ジメチルフェニル、イソシアン酸ドデシル、イソシアン酸4−エトキシフェニル、イソシアン酸エチル、イソシアン酸4−エチルフェニル、イソシアン酸ヘプチル、イソシアン酸ヘキシル、メタクリル酸2−イソシアナトエチル、イソシアン酸3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジル、イソシアン酸イソプロピル、イソシアン酸2−メトキシフェニル、イソシアン酸3−メトキシフェニル、イソシアン酸4−メトキシフェニル、イソシアン酸(R)−(+)−α−メチルベンジル、イソシアン酸(S)−(−)−α−メチルベンジル、イソシアン酸(R)−(−)−1−(1−ナフチル)エチル、イソシアン酸(S)−(+)−1−(1−ナフチル)エチル、イソシアン酸1−ナフチル、イソシアン酸4−ニトロフェニル、イソシアン酸オクタデシル、イソシアン酸フェネチル、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸プロピル、イソシアン酸p−トルエンスルホニル、イソシアン酸m−トリル、イソシアン酸o−トリル、イソシアン酸p−トリル、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(2,2,4−, 2,4,4−混合物)、イソシアン酸トリメチルシリル等のモノイソシアネート化合物が挙げられる。また、1,4−フェニレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート、ジイソシアン酸イソホロン、4,4’−ジイソシアン酸メチレンジフェニル、ジイソシアン酸1,3−フェニレン、2,4−ジイソシアン酸トリレン、トリレン−2,6−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジイソシアナート−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナート−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、1,5−ジイソシアナトナフタレン、ヘキサメチレンジイソシアナートなどのジイソシアネート化合物およびこれら化合物の2量体(ウレトジオン構造)および3量体(イソシアヌレート構造)、ビウレット構造を形成していてもよい。またジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオールとの反応物であってもよい。
【0057】
オキシム化合物とイソシアネート化合物の付加物の入手可能な例としては、デュラネートTPA−B80E: 旭化成ケミカル製、MEKO(methylethylketoxime)によるHDI 3量体(hexamethylene diisocyanate trimer)付加物、デスモジュール BL4265SN: Bayer Material Science製、MEKO(methylethylketoxime)によるIPDI trimerの付加物、カレンズMOI−MP2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートとMEKO(methylethylketoxime)による付加物等を挙げることができる。
【0058】
オキシム化合物とイソシアネート化合物の付加物の添加量は、光吸収層2の全固形分中0.1質量%以上とすることが好ましい。0.1質量%以上とすることで効果的に光吸収層の濃色化を抑制できる。さらに1質量%以上であってもよい。また、30質量%以下とすることで、光吸収層2の機械的物性の劣化を抑制できる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子を「CWO」という場合がある。
【0060】
(実施例A−1)
まず、バインダーであるポリビニルブチラール樹脂(製品名:SLEC BLSHZ、積水化学社製)2.7重量部を溶媒であるメチルエチルケトン8.1重量部に完全に溶解させて溶液を得た。この溶液に、CWO含有率が17.6重量%であり、アミン価11mgKOH/gの非酸性分散剤を使用したCWO分散液(固形分48.3%)1.19重量部と黄色顔料分散液(製品名:#A954M、御国色素社製)0.01重量部、非酸性分散剤(製品名:Disperbyk−2000、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分40%、アミン価4mgKOH/g)1.0重量部を添加した。透明フィルムへの塗布直前に架橋剤として、メチルエチルケトキシムによるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化イソシアネート(製品名:デュラネートTPA−B80E、旭化成ケミカル社製、固形分80%)0.41重量部を添加し、混合してCWO溶液を得た。
【0061】
このCWO溶液を両面アルゴンプラズマ処理された近赤外反射多層ポリマーフィルム(製品名:CM875、スリーエム社製)上にハンドコーターを用いてコーティングし、100℃オーブンに3分間放置して乾燥させた。その後、可視光透過率が73〜74%になるようにコーティング厚みを調製し、積層フィルムを得た。
【0062】
上記積層フィルムを両側からPVB中間膜(製品名:S−LEC Clear Film、積水化学工業社製)で挟み込み、更にその両側から合わせガラスで挟み、熱遮蔽用積層体の形に組み上げた。これをレトルト用袋に入れ、真空脱気及び密封してオートクレーブによる加熱及び加圧(95℃、6kg/cm2、30分保持)を行って熱遮蔽用積層体を作製した。このように、2枚のPVB中間膜を備えた標準型積層体を得た。
【0063】
他方、PVB中間膜を1枚のみ使用し、PVB中間膜を配置しない側は透明基板と光吸収層とが直接接している直接積層型積層体を、標準型積層体と同様の部材を用いて作製した。
【0064】
(実施例A−2)
架橋剤として、メチルエチルケトキシムによるイソホロンジイソシアネートのブロック化イソシアネート(製品名:デスモジュールBL4265SN、Bayer Material Science社製、固形分65%)0.78重量部を添加した以外は、実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0065】
(実施例A−3)
架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(製品名:デュラネートTPA−100、旭化成ケミカル社製、固形分100%)0.18重量部を添加し、さらに、オキシム化合物として、メチルエチルケトキシム0.22重量部を加えた以外は実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0066】
(実施例A−4)
オキシム化合物として、メチルエチルケトキシムの配合量を1.1重量部にした以外は実施例A−3と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0067】
(実施例A−5)
オキシム化合物として、シクロヘキサノンオキシムを0.3重量部加えた以外は実施例A−3と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0068】
(実施例A−6)
実施例A−1で使用したCWO分散液の代わりに、CWO含有率が17.4重量%であり、酸系分散剤を使用したCWO分散液(製品名YMF−02、住友金属鉱山社製、固形分26.5%)1.21重量部を添加し、ポリビニルブチラール樹脂の代わりにアクリル樹脂(製品名:Carboset 526、Lubrizol社製、酸価100)3重量部を添加し、非酸性分散剤(製品名:Disperbyk−2000、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分40%、アミン価4mgKOH/g)は添加せず、溶媒であるメチルエチルケトンは7.1重量部とし、メチルイソブチルケトン0.79重量部を添加した以外は、実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0069】
(実施例A−7)
YMF−02の代わりに、実施例A−1で使用したCWO分散液を1.19重量部添加した以外は、実施例6と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0070】
(参照例A−1)
架橋剤として、オキシム以外の化合物によるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化イソシアネート(製品名:デュラネートK−6000、旭化成ケミカル社製、固形分60%)0.96重量部を添加した以外は実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0071】
(参照例A−2)
架橋剤として、オキシム以外の化合物によるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化イソシアネート(製品名:デュラネートSBN−70D、旭化成ケミカル社製、固形分70%)0.58重量部を添加した以外は実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0072】
(参照例A−3)
架橋剤として、オキシム以外の化合物によるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化イソシアネート(製品名:デスモジュールBL3575、Bayer Material Science社製、固形分75%)0.52重量部を添加した以外は、実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0073】
(参照例A−4)
架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(製品名:デュラネートTPA−100、旭化成ケミカル社製、固形分100%)0.18重量部を添加した以外は実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0074】
(参照例A−5)
架橋剤として、トリグリシジル2メチループロパン(製品名:ED505、アデカ社製)0.03重量部と、触媒(トリフェニルホォスフィン、和光純薬社製)0.01重量部を添加した以外は、実施例6と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0075】
上記実施例A−1〜7及び参照例A−1〜5の各配合量をまとめると表1及び表2のとおりである。表中の単位は重量部である。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
(参照例A−6)
バインダーであるアクリル樹脂(製品名:Carboset 526、Lubrizol社製、酸価100)2.7重量部を溶媒であるメチルエチルケトン6.3重量部に完全に溶解させて溶液を得た。この溶液に、CWO含有率が17.4重量%であり、酸系分散剤を使用したCWO分散液(製品名YMF−02、住友金属鉱山社製、固形分26.5%)1.19重量部と黄色顔料分散液(製品名:#A954M、御国色素社製)0.01重量部を添加した。透明フィルムへの塗布直前に架橋剤(トリグリシジル2メチループロパン、製品名:ED505、アデカ社製)0.12重量部と、触媒(トリフェニルホォスフィン、和光純薬社製)0.01重量部をメチルイソブチルケトン0.8重量部に溶解させた上で添加し、混合してCWO溶液を得た。
【0079】
このCWO溶液を両面アルゴンプラズマ処理された近赤外反射多層ポリマーフィルム(製品名:CM875、スリーエム社製)上にハンドコーターを用いてコーティングし、100℃オーブンに3分間放置して乾燥させた。その後、可視光透過率が73〜74%になるようにコーティング厚みを調製し、積層フィルムを得た。
【0080】
上記積層フィルムを両側からPVB中間膜(製品名:S−LEC Clear Film、積水化学工業社製)で挟み込み、更にその両側から合わせガラスで挟み、熱遮蔽用積層体の形に組み上げた。これをレトルト用袋に入れ、真空脱気及び密封してオートクレーブによる加熱及び加圧(95℃、6kg/cm2、30分保持)を行って熱遮蔽用積層体を作製した。このように、2枚のPVB中間膜を備えた標準型積層体を得た。
【0081】
(実施例A−8)
オキシム化合物として、シクロヘキサノンオキシム0.3重量部をメチルエチルケトン1.35部に溶解させた上で加えた以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0082】
(実施例A−9)
オキシム化合物として、ジアセチルモノオキシム(ブタンジオンモノオキシム:BDMO)0.27重量部をメチルエチルケトン1.35部に溶解させた上で加えた以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0083】
上記実施例A−8、9及び参照例A−6の各配合量をまとめると表3のとおりである。表中の単位は重量部である。
【0084】
【表3】
【0085】
<耐候性加速試験>
実施例A−1〜7及び参照例A−1〜5においてそれぞれ作製した熱遮蔽用積層体(直接積層型及び標準型)について、耐候性加速試験機(製品名:Super xenon weather−Ometer(SXWOM)、型式SX2−75、スガ試験機社製)を用いて加速試験を実施した。照射強度は180W/m2(300−400nm)であり、ブラックパネル温度は63℃、湿度は50%RHとした。また、運転パターンとしては、102分間は照射のみとして、その後18分間は照射と降雨という条件を繰り返した。また、実施例A−8、9及び参照例A−6において作製した標準型熱遮蔽用積層体についても、同様に加速試験を実施した。
【0086】
<可視光透過率の測定>
ヘーズメーター(型式NDH2000、日本電色社製)の全光線透過率を近似的に可視光透過率として測定した。実施例A−1〜5及び参照例A−1〜4で作製した積層体(直接積層型)の測定結果を図6及び図7に示す。なお、図7は、照射開始時の透過率の値と2000時間後の透過率の値の差(透過率の減少分)をプロットしたグラフである。
【0087】
実施例A−1〜5及び参照例A−1〜4で作製した積層体(標準型)の測定結果を図8及び図9に示す。実施例A−6、7及び参照例A−5で作製した直接積層型の積層体の測定結果を図10に、実施例A−6〜9及び参照例A−5、6で作製した標準型の積層体の測定結果を図11にそれぞれ示す。
【0088】
(実施例B−1)
<積層フィルムの作製>
まず、バインダーであるアクリル樹脂(製品名:Carboset 526、Lubrizol社製、酸価100)33.7重量部を溶媒であるメチルエチルケトン78.9重量部に完全に溶解させて溶液を得た。この溶液に、CWO含有率が17.6重量%であり、アミン価11の非酸性分散剤を使用したCWO分散液(固形分48.3%)13.43重量部と黄色顔料分散液(製品名:#A954M、御国色素社製)0.12重量部を添加した。さらに、メチルイソブチルケトン8.77重量部を添加し、透明フィルムへの塗布直前に架橋剤(トリグリシジル2メチループロパン、製品名:ED505、アデカ社製、固形分25%)1.49重量部と、触媒(トリフェニルホォスフィン、和光純薬社製)0.45重量部を添加し、混合してCWO溶液を得た。
【0089】
このCWO溶液を両面アルゴンプラズマ処理された近赤外反射多層ポリマーフィルム(製品名:CM875、スリーエム社製)上にハンドコーターを用いてコーティングし、100℃オーブンに3分間放置して乾燥させた。その後、可視光透過率が73〜74%になるようにコーティング厚みを調製し、積層フィルムを得た。
【0090】
<熱遮蔽用積層体の作製>
この積層フィルムを両側からPVB中間膜(製品名:S−LEC Clear Film、積水化学工業社製)で挟み込み、更にその両側から合わせガラスで挟み、熱遮蔽用積層体の形に組み上げ、レトルト用袋に入れ、真空脱気及び密封したものをオートクレーブによる加熱及び加圧(95℃、6kg/cm2、30分保持)を行い、熱遮蔽用積層体を得た。
【0091】
(参照例B−1)
実施例B−1で使用したCWO分散液の代わりに、酸系分散剤を使用したCWO分散液(製品名YMF−02、住友金属鉱山社製、固形分26.5%)13.48重量部を使用した以外は、実施例B−1と同様にして熱遮蔽用積層体を得た。
【0092】
上記実施例B−1及び参照例B−1の各配合量をまとめると表4のとおりである。
【0093】
【表4】
【0094】
(実施例B−2)
架橋剤及び触媒を添加する前に非酸性分散剤(製品名:フローレン DOPA−15BHFS、共栄社化学社製、固形分30%、アミン価10mgKOH/g)1重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0095】
(実施例B−3)
架橋剤及び触媒を添加する前に非酸性分散剤(製品名:フローレン DOPA−17HF、共栄社化学社製、固形分30%、アミン価13mgKOH/g)1重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0096】
(実施例B−4)
架橋剤及び触媒を添加する前に非酸性分散剤(製品名:フローレン DOPA−22、共栄社化学社製、固形分40%、アミン価17mgKOH/g)0.75重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0097】
(実施例B−5)
架橋剤及び触媒を添加する前に非酸性分散剤(製品名:Disperbyk−166、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分29.5%、アミン価20mgKOH/g)1重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0098】
(実施例B−6)
架橋剤及び触媒を添加する前に非酸性分散剤(製品名:Disperbyk−182、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分43%、アミン価13mgKOH/g)0.7重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0099】
(実施例B−7)
架橋剤及び触媒を添加する前に酸価も含む非酸性分散剤(製品名:Disperbyk−2001、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分46%、アミン価29mgKOH/g、酸価19mgKOH/g)0.65重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0100】
(参照例B−2)
架橋剤及び触媒を添加する前に酸性分散剤(製品名:Disperbyk−174、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分52.5%、酸価22mgKOH/g)0.57重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0101】
(参照例B−3)
架橋剤及び触媒を添加する前に酸性分散剤(製品名:Disperbyk−P104S、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分50%、酸価150mgKOH/g)0.6重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0102】
上記実施例B−2〜7及び参照例B−2、3の各配合量をまとめると表5のとおりである。表中の単位は重量部である。
【0103】
【表5】
【0104】
<耐候性加速試験>
実施例B−1及び参照例B−1で得た熱遮蔽用積層体(実施例1で計3回実施して得た3試料、参照例1で計3回実施して得た3試料の計6試料)について、耐候性加速試験機(製品名:Super xenon weather−Ometer(SXWOM)、型式SX2−75、スガ試験機社製)を用いて加速試験を実施した。照射強度は180W/m2(300−400nm)であり、ブラックパネル温度は63℃、湿度は50%RHとした。また、運転パターンとしては、102分間は照射のみとして、その後18分間は照射と降雨という条件を繰り返した。また、実施例B−2〜7、参照例B−2、3及び参照例A−6において作製した標準型熱遮蔽用積層体についても、1試料ずつであること以外は上記と同様に加速試験を実施した。
【0105】
<可視光透過率の測定>
ヘーズメーター(型式NDH2000、日本電色社製)の全光線透過率を近似的に可視光透過率として測定した。実施例B−1及び参照例B−1で作製した積層体の測定結果を図12に、実施例B−2〜7、参照例B−2、3及び参照例A−6で作製した積層体の測定結果を図13に示す。
【符号の説明】
【0106】
1…透明フィルム、2…光吸収層、2A…粒子含有層、2B…前駆体層(粒子含有層)、3,3a,3b…中間膜、4a,4b…透明基板、10,20…熱遮蔽用積層体、30,40…積層フィルム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱遮蔽用積層体及びその製造に用いられる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
開放感のある空間を創出できることから、近年、フロントガラスが大きい自動車や窓ガラスが大きい建築物が好まれる傾向にある。ガラス面積の増大に伴い、ガラスを通じて車内や室内に入る太陽光エネルギーが増大する傾向にある。炎天下に自動車を駐車したときに経験するように、太陽光エネルギーは車内を著しく高い温度にまで至らしめる。太陽光エネルギーによる車内温度の上昇は乗員の快適性を損なうとともにエアコンに対して過度な負担をかけることにもなりエアコン稼動時の燃費の著しい低下を招来する。
【0003】
自動車のフロントガラスは、割れたときにガラスの破片が飛散するのを防止するため、一般に2枚の着色透明ガラスを可塑化ポリビニルブチラールで貼り合わせた、合わせガラス構造体からなる。上記着色透明ガラスはグリーンガラスとも呼ばれる。夜間に自動車を運転するときでも十分に外が見えるように、安全基準上、フロントガラスの可視光領域の透過率は指定された値以上に保つ必要がある。
【0004】
これに対し、車内の温度上昇を抑制するには近赤外領域をなるべく遮蔽することが望ましい。その遮蔽技術は、エネルギーの吸収技術及び反射技術に大別できる。エネルギー吸収技術は、太陽光エネルギーを吸収して熱に変換するものであり、生じた熱はガラス構造体に蓄熱される。自動車の運転時にあっては、フロントガラスの外側に当たる空気によってフロントガラスは冷却されるが、屋外駐車時にあっては外側からの冷却が期待できないため、再放射及び伝熱によって内部領域に熱が持ち込まれやすい。この点で、蓄熱を伴わないエネルギー反射技術が望ましい。
【0005】
エネルギー反射技術として、合わせガラス構造体の内部に透明金属膜を配置した熱線反射ガラスが実用化されている。ただし、この透明金属膜が電磁波障害を起こし、ガラス構造体を通しての通信を妨げることが課題となっている。他方、非金属系の材料を利用したエネルギー反射技術として、屈折率の異なる2種の薄膜を100層以上積み重ねた光反射多層フィルムが知られている。光反射多層フィルムは反射すべき光の波長領域に応じて薄膜の厚さを適宜設定することにより所望の波長領域を選択的に反射することが可能であり、近赤外領域のみを選択的に反射することもできる。このようなフィルムは近赤外反射多層フィルムと呼ばれる。
【0006】
近赤外反射多層フィルムを合わせガラス構造体の内部に配置した場合、その両側に配置される一対のガラスのうち外側のガラスには上述の着色透明ガラス(例えば、グリーンガラス)ではなく、無色透明なガラス(クリアガラス)を採用することが望ましい。これは、着色透明ガラスは可視光領域のみならず、近赤外領域のエネルギーも幾分か吸収するため、外部領域側に着色透明ガラスが配置されていると太陽光エネルギーが近赤外反射多層フィルムに到達する前に着色透明ガラスが熱を吸収し、内部領域に熱が持ち込まれやすくなるからである。
【0007】
しかし、クリアガラスと近赤外反射多層フィルムの組み合わせでは、太陽光エネルギーの半分を占める可視光の遮蔽が不十分となりやすいという課題がある。従って、近赤外反射多層フィルムとエネルギー吸収技術とを併用し、近赤外反射多層フィルムを通過した後の光について、安全基準で指定された範囲内において可視光領域の透過率を制御することも検討されている。
【0008】
近赤外反射多層フィルムと併用し得るエネルギー吸収技術として、タングステン酸化物微粒子を利用したものが挙げられる。タングステン酸化物微粒子は、可視光領域のみならず近赤外領域にも優れたエネルギー吸収能を持つ。このため、熱線吸収合わせガラスの内部に分散させる材料として利用することが検討されている。
【0009】
例えば、特許文献1には、波長850〜1000nmの帯域の平均反射率が60%以上であり、酸化タングステン化合物を含んだ積層フィルムが記載されている。また、特許文献2には、日射遮蔽機能を有する微粒子がタングステン酸化物の微粒子及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子で構成された日射遮蔽用合わせ構造体が記載されている。特許文献3には、紫外線照射による硬化によって得られる熱線防御機能を有する中間膜を備えた熱線防御積層ガラスが記載されている。特許文献4には、多層ガラスに用いられる中間膜であって、タングステン酸化物質と、ベンゾイル基を有する分子又は多価金属塩、あるいは、ベンゾイル基を有する分子と多価金属塩の両方を含むポリマー層を有するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−200924号公報
【特許文献2】国際公開第2005/087680号
【特許文献3】米国特許出願公開2010/0203322号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開2009/035583号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、エネルギー反射技術とエネルギー吸収技術を組み合わせることによって、可視光領域で透過率aを調整しつつ、近赤外線領域で反射率bを高めることが可能となる(図14参照)。しかし、タングステン酸化物を近赤外反射多層フィルムに配して合わせガラスに組み込んで耐候性試験を行うと、従来の技術では時間の経過とともに可視光領域の透過率が低下する現象が見られる(図15参照)。本発明者らの検討によると、この透過率の低下はタングステン酸化物が太陽光の影響により濃色化して生じるものである。可視光領域について所定の透過率を維持すべき自動車のフロントガラスにあっては、タングステン酸化物の濃色化による可視光透過率の過度な低下は望ましくない。自動車のフロントガラスに限らず、例えば建築物用の合わせガラス構造体においても濃色化といった変色はデザイン性等の観点から避けることが望ましい。本発明は、上述するタングステン酸化物を使用した場合に生じていた可視光領域の透過率の経時的低下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様に係る熱遮蔽用積層体は、一対の透明基板と、一対の透明基板の間に配置された光吸収層とを備え、光吸収層はタングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、オキシム化合物とを含む。
【0013】
本発明の第二の態様に係る熱遮蔽用積層体は、一対の透明基板と、一対の透明基板の間に配置された光吸収層とを備え、光吸収層はタングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、非酸性分散剤とを含む。
【0014】
本発明の第一の態様に係る積層フィルムは、上記熱遮蔽用積層体の製造に用いられるものであり、透明フィルムと、透明フィルム上に設けられた粒子含有層とを備え、粒子含有層はタングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、オキシム化合物及びオキシム化合物のイソシアネート付加物の少なくとも一方とを含む。
【0015】
本発明の第二の態様に係る積層フィルムは、上記熱遮蔽用積層体の製造に用いられるものであり、透明フィルムと、透明フィルム上に設けられた粒子含有層とを備え、粒子含有層はタングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、非酸性分散剤とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、可視光透過率の経時的な低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】熱遮蔽用積層体の一態様を示す模式断面図である。
【図2】図1に示す熱遮蔽用積層体の熱遮蔽機能を説明する模式図である。
【図3】熱遮蔽用積層体の他の態様を示す模式断面図である。
【図4】熱遮蔽用積層体の製造に用いられる積層フィルムの一態様を示す模式断面図である。
【図5】熱遮蔽用積層体の製造に用いられる積層フィルムの他の態様を示す模式断面図である。
【図6】実施例A−1〜5及び参照例A−1〜4で作製した積層体(直接積層型)の試験結果を示すグラフである。
【図7】実施例A−1〜5及び参照例A−1〜4で作製した積層体(直接積層型)の試験結果を示すグラフである。
【図8】実施例A−1〜5及び参照例A−1〜4で作製した積層体(標準型)の試験結果を示すグラフである。
【図9】実施例A−1〜5及び参照例A−1〜4で作製した積層体(標準型)の試験結果を示すグラフである。
【図10】実施例A−6、7及び参照例A−5で作製した積層体(直接積層型)の試験結果を示すグラフである。
【図11】実施例A−6〜9及び参照例A−5、6で作製した積層体(標準型)の試験結果を示すグラフである。
【図12】実施例B−1及び参照例B−1で作製した積層体(標準型)の試験結果を示すグラフである。
【図13】実施例B−2〜7、参照例B−2〜3及び参照例A−6で作製した積層体(標準型)の試験結果を示すグラフである。
【図14】太陽光エネルギー領域における透過率及び近赤外線領域の反射率の一例を示すグラフである。
【図15】太陽光エネルギー領域の透過率の経時変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
なお、本明細書において、特に断らない限り、「透明」とは、可視光透過率が60%以上を意味する。また、ここで「可視光透過率」とは、JIS−R−3212に規定されるように、分光透過率の値に、A光源(色温度2856Kに点灯した光源)のスペクトルとCIE明順応の被視感度の波長分布から得られる重価係数に乗じて加重平均し、求められる値をいう。「可視光」とは、波長380nm〜780nmの光をいい、「近赤外光」とは、波長780〜2500nmの光をいう。
【0020】
また、「中間膜」とは、合わせガラス等の一対の透明基板を貼り合わせ部材を作製する際に、一対の透明基板の間に直接または間接に挟み込まれる、接着性のある膜をいい、代表的には、ガラス等の透明基板の耐貫通性、飛散防止、防犯性向上の機能を併せ持つ、厚さ0.3〜1mmの接着性シートをいう。
【0021】
図1は、熱遮蔽用積層体の第一実施形態を模式的に示す断面図である。同図に示す熱遮蔽用積層体10は、透明基板4a、中間膜3、透明フィルム1、光吸収層2及び透明基板4bがこの順序で積層された構造を有する。熱遮蔽用積層体10は、透明基板4aが外側領域側となり、透明基板4bが内側領域側となるように自動車や建築物に取り付けられる(図2参照)。図1に示すとおり、熱遮蔽用積層体10は、透明基板4bの表面上に光吸収層2が直接積層された構造を有することから、このタイプの積層体を以下、場合により「直接積層型」と称する。透明基板4bは着色された透明基板でもよい。
【0022】
透明フィルム1は、可視光線を透過させ、赤外線を反射させる機能を有するフィルムであることが好ましく、近赤外反射多層フィルムであることが好ましい。近赤外反射多層フィルムとしては、例えば、可視光線を透過させ赤外線を反射し、すべての可視光波長の少なくとも60%を透過し、850nm〜1100nmの赤外線の少なくとも60%又はすべての波長の赤外線の少なくとも60%を反射するものが使用できる。すべての可視光波長の少なくとも75%を透過し、850nm〜1100nmの赤外線の少なくとも75%を反射するもの、あるいは、すべての可視光波長の少なくとも90%を透過し、850nm〜1100nmの赤外線の少なくとも90%を反射するものが使用できる。
【0023】
近赤外反射多層フィルムは、複数の金属層を含む多層金属フィルムであってもよく、複数の交互のポリマー層を備える多層ポリマーフィルムであってもよい。多層金属フィルムは近赤外線及び赤外線を反射する一方で可視光線を透過させる複数の薄い金属層を有する。多層ポリマーフィルムは、屈折率の異なる2種の薄膜を100層以上積み重ね近赤外の波長領域に応じて薄膜の厚さを適宜設定することにより、赤外線を反射し可視光線は透過させる。交互のポリマー層は、任意の有用な組み合わせによって形成することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートのコポリマーと、ポリ(メチルメタクリレート)又はポリ(メチルメタクリレート)のコポリマーとの層を交互にすることによって形成することができる。
【0024】
近赤外反射多層フィルムは光拡散層を備えてもよい。光拡散層は光散乱粒子を含んでおり、近赤外反射多層フィルムの光拡散機能を向上させることができる。
【0025】
光吸収層2は、透明フィルム1を透過した可視光線と赤外線の一部を吸収する機能を有し、タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方を含む。光吸収層2は、例えば、高分子バインダーからなるベース層に、分散剤を介して凝集することなく分散したタングステン酸化物粒子あるいは複合タングステン酸化物粒子を含む。高分子バインダーの機械的強度を向上させる目的でバインダーの官能基と反応しうる架橋剤を含む場合もある。
【0026】
タングステン酸化物は、一般式WyOzで表される酸化物である。タングステン酸化物は、タングステンに対する酸素の組成比が2.2≦z/y≦2.999であることが好ましい。このz/yの値が、2.2以上であれば、赤外線遮蔽材料中にWO2の結晶相が現れるのを回避することができるとともに、材料としての化学的安定性を得ることができる。また、このz/yの値が2.999以下であれば、必要とされる量の自由電子が生成され効率よい赤外線遮蔽材料となり得る。
【0027】
複合タングステン酸化物は、一般に、MxWyOzで表される酸化物である。ここで、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素である。特に、光吸収機能を向上させる観点から、M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちの1種類以上であるものが好ましい。また複合タングステン酸化物が、シランカップリング剤で処理されていることも好ましい。優れた分散性が得られ、優れた赤外線カット機能、透明性が得られる。
【0028】
上記MxWyOzにおいて、x、y及びzは、0.001≦x/y≦1であり、2.2≦z/y≦3の関係を満たすことが好ましい。元素Mの添加量を示すx/yの値が0.001より大きければ、十分な量の自由電子が生成され、赤外線遮蔽効果を十分に得ることができる。元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線遮蔽効果も上昇するが、x/yの値が1程度で飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、微粒子含有層中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。また、酸素量の制御を示すz/yの値については、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物においても、上述のWyOzで表記される赤外線遮蔽材料と同様の機構が働くことに加え、z/y=3.0においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給があるため、2.2≦z/y≦3.0が好ましく、さらに好ましくは2.45≦z/y≦3.0である。さらに、複合タングステン酸化物が六方晶の結晶構造を有する場合、可視光領域の透過が向上し、近赤外領域の吸収が向上しやすい。
【0029】
タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子は、光吸収層2のヘイズを抑える観点から、一次粒子の平均粒径はなるべく小さいことが好ましく、好ましくは300nm以下であり、より好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下である。なお、ここでいう平均粒径とは、タングステン酸化物粒子又は複合タングステン酸化物粒子の平均粒径を画像解析法、コールター法、レーザー回折散乱法、動的光散乱法、超遠心沈降法等によって測定した値を意味し、当該測定にはコールター株式会社製のCoulter N4 Plus(商品名)を使用できる。
【0030】
タングステン酸化物粒子又は複合タングステン酸化物粒子の含有量あるいはこれらの粒子の合計量は、粒子の平均粒径、使用する透明基板、透明フィルム等の其の他の構成部材の可視光透過率により一概に言えないが、例えば、この構成部材の可視光透過率が90%の場合は、1.1g/m2となる。
【0031】
本発明の一実施形態では、光吸収層2は、以下の一般式(1)で表されるオキシム化合物を含有することを特徴とする。オキシム化合物を含有することで、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子の濃色化が抑制され、熱遮蔽用積層体10(特に光吸収層2)の可視光透過率の経時的な低下を抑制することができる。本発明者らは、光吸収層2に含まれる架橋剤としてオキシム化合物のイソシアネート付加物を用いた場合に、この濃色化が軽減される事実に偶然気づき、さらに鋭意検討を行った結果、光吸収層2中にオキシム化合物を含有させることで、上記効果が奏されることを見出した。
【0032】
【化1】
[式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、水素、置換もしくは非置換の鎖状アルキル基又は環状アルキル基、置換もしくは非置換のアラルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、又は、置換もしくは非置換のアシル基であり、R1およびR2は、独立に存在するか、もしくは結合して環状構造を形成する。]
【0033】
本実施形態において用いられるオキシム化合物としては、アセナフテンキノンジオキシム、アセトアルドキシム、アセトフェノンオキシム、アセトキシムベンゾアート、2−アダマンタノンオキシム、α−ベンズアルドキシム、ベンズアミドオキシム、ベンジルジオキシム、α−ベンゾインオキシム、2−ブタノンオキシム(別名:Methyl ethyl ketoxime(MEKO))、ブチルアルドキシム、(1R)−カンファーオキシム、anti−(1R)−(+)−カンファーキノン3−オキシム、シクロヘプタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、シクロペンタデカノンオキシム、シクロペンタノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、4,4’−ジベンゾイルキノンジオキシム、1,3−ジヒドロキシアセトンオキシム、ジメドンジオキシム、ジメチルグリオキシム、ジ−2−ピリジルケトキシム、9−フルオレノンオキシム、ホルムアルドキシムトリマー、ホルムオキシム、α−フリルジオキシム、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノンオキシム、N−ヒドロキシフタルイミド、β−イサトキシム、イソニトロソアセトフェノン、2−イソニトロソプロピオフェノン、メチルグリオキシム、5−メチル−2−ヘキサノンオキシム、4−メチル−2−ペンタノンオキシム、1−メチル−4−ピペリドンオキシム、ニオキシム、アセチルアセトンジオキシム、フェニル2−ピリジルケトキシム、ピナコリンオキシム、ピリジン−2−アルドキシム、ピリジン−4−アルドキシム、サリチルアルドキシム、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドンオキシム、ビオルル酸を挙げることができる。ここで耐光性の観点からは、アルキルオキシムが好ましく、製品コストや入手容易さの観点から、2−ブタノンオキシム(MEKO)およびシクロヘキサノンオキシムが特に好ましい。
【0034】
オキシム化合物の含有量は、光吸収層2の全固形分中0.1質量%以上含むことが好ましい。0.1質量%以上の場合、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子を含む光吸収層2の濃色化を効果的に抑制できる。オキシム化合物の含有量は、1質量%以上、あるいは10質量%以上であってもよい。一方、オキシム化合物の含有量は30質量%以下が好ましい。30質量%を超えると光吸収層2の機械的物性の劣化を招く恐れがある。
【0035】
本発明の一実施形態では、光吸収層2に含有されるタングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子の分散剤として、非酸性分散剤を使用する。従来、このようなタングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子の分散剤としては、一般に酸性の分散剤が使用されているが、分散剤として非酸性分散剤を使用することで、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子を含む光吸収層2の濃色化を効果的に抑制できる。
【0036】
先に説明したオキシム化合物とともに非酸性分散剤が光吸収層2に含有される場合は、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子を含む光吸収層2の濃色化をより効果的に抑制することも可能になる。
【0037】
タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子を光吸収層2に高度に分散せしめるには分散剤を使用することが好ましく、アミン価を有し、酸価を全く有しないか、酸価が所定値以下の非酸性分散剤を使用することがより好ましい。アミン価を有する分散剤は、分散性に優れ、光吸収層2に配合することで、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子の高い分散性を達成できるとともに、これらの粒子の濃色化を抑制することができる。
【0038】
非酸性分散剤として好ましいアミン価は1〜100mgKOH/gであり、より好ましくは1〜50mgKOH/gである。アミン価が1mgKOH/g以上とすることで、無機粒子に対する分散剤としての機能を効果的に発揮する。ただし、50mgKOH/gを超えると経時でのアミノ基に起因する黄変を起こす場合がある。ここでいうアミン価とは、試料1g中の第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンの総量を中和するのに必要な塩酸の量から、試料1g中に含有される第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンの総量を求め、その総量をmg単位の水酸化カリウムに換算した値で、その測定は、ASTM D 2073に準拠した方法で行うことができる。具体的には、溶媒とフェノールフタレイン指示薬溶液を加え、電位差滴定装置を用いて対応する濃度のアルコール性塩酸溶液で滴定し、溶液の色が無色から微紅色に変わった点を終点とする。また、同時にブランク試験を行って補正する。
【0039】
非酸性分散剤の中には、同時に酸価を有する化合物も存在するが、その場合は酸価がなるべく低いものが好ましく、具体的には酸価が20以下のものが好ましい。ここでいう酸価とは、試料1g中に含まれる脂肪酸基含有成分を中和するのに必要なmg単位の水酸化カリウムの質量を表し、その測定はJIS K 0070−1966に準拠した方法で行うことができる。具体的には、溶媒と1%程度のフェノールフタレイン指示薬溶液を加え、対応する濃度のアルコール性水酸化カリウム標準液で滴定し、溶液の色が無色から微紅色に変わった点を終点とする。また、同時にブランク試験を行って補正する。
【0040】
非酸性分散剤により光吸収層2の濃色化を抑制できる理由は必ずしも明らかではないが、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子の濃色化は、これらの還元反応が要因と考えられるため、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子近傍に存在する分散剤を非酸性とすることで、強力な還元剤である水素イオンを粒子近傍から減らし、還元反応が抑制される結果、濃色化の進行を抑えることができると考えられる。従って、非酸性分散剤としては、酸価を全く有しないか、極力少ない分散剤を使用することが好ましい。例えば、上述するように、酸価20以下の非酸性分散剤が好ましい。
【0041】
なお、工業的には、分散剤の選択には、分散能のみならず、長期間にわたる保管安定性等が重要な決定因子となる場合は、必ずしも上述のような非酸性分散剤が使用されない場合もある。この場合も、光吸収層の形成の際、即ち、非酸性分散剤を後から添加することにより、最終的に非酸性分散剤を含む光吸収層を形成して、同様の効果を得ることもできる。
【0042】
なお、分散剤としては、界面活性剤やカップリング剤のような低分子化合物を用いてもよく、さまざまな官能基を有する高分子化合物を用いてもよい。タングステン酸化物粒子又は複合タングステン酸化物粒子の微粒子表面に吸着するための官能基としては、スルホン酸、リン酸、カルボン酸基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、アミド基、エステル基、エーテル基などが用いられるが、非酸性官能基としてはアミノ基が主となる。また、高分子分散剤の主たる骨格は、ビニル化合物のランダム共重合物、ブロック共重合物、グラフト共重合物およびポリエステル等の重縮合物、ポリウレタン等の重付加物およびそれらの塩であってもよい。具体的には、ビックケミー社のDISPERBYKシリーズ、エボニック デグサ社のTEGO Dispersシリーズ、楠本化成社のDISPARLONシリーズ、共栄社のフローレンシリーズニューセンチュリーコーティングス社のAgriSperseシリーズなどから入手することが可能である。
【0043】
光吸収層2には、上記成分の他に、被着体に対する接着性や機械的に安定した層構造を形成するために樹脂バインダーを配合してもよい。樹脂バインダーとしては、特に限定されないが、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、トリアセチルセルロース等の高分子化合物を添加してもよく、層構造の耐久性、耐熱性を強化するためにバインダーの官能基と反応しうる架橋剤を配合したりしてもよい。また、樹脂バインダーとして、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート等の光硬化性樹脂であってもよい。
【0044】
さらに、光吸収層2には、特性を著しく損なわない程度に、フィルムの色調を調整する目的で有機顔料、無機顔料等を添加してもよく、樹脂バインダーの経時安定性を向上する目的でヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類等の老化防止剤を添加してもよい。
【0045】
光吸収層2を形成する方法としては、樹脂バインダー、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子、上述する分散剤、架橋剤および其の他の添加物等の成分を有機溶剤に溶解・分散させた塗液をフィルム上に塗布して加熱乾燥して形成する方法、加熱乾燥後光照射し、硬化させる方法がある。さらに、溶剤を用いない光吸収層2の形成方法としては、有機溶剤なしで塗液を調整し、フィルム上に塗布して光照射で硬化させる方法、押出し機で混練しダイを通じてフィルム化する方法等が挙げられる。
【0046】
中間膜3は、図1で示すように、透明基板4aと透明フィルム1との間に配置されていることが好ましい。熱遮蔽用積層体10が中間膜3を備えることによって、積層化を強化できるとともに透明基板4a、4bが割れても破片が飛散すること、重量物が当たった際に貫通することを防止できる。中間膜3としては、特に限定はないが、PVB層(ポリビニルブチラール層)を用いてもよく、EVA層(エチレン酢酸ビニル共重合体層)を用いてもよい。PVB層を構成するPVB樹脂組成物は、PVB樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤などを含んでいてもよい。また、EVA層を構成するEVA樹脂組成物は、EVA、有機過酸化物、紫外線吸収剤などを含んでいてもよい。
【0047】
一対の透明基板4a、4bは、ガラス板であってもよく、ポリカーボネートなどの樹脂で成形された板でもよい。ガラス板としては、例えば珪酸塩ガラスが用いられる。ガラス板厚は、フィルム強化ガラスの場合、それを設置する場所等により異なる。自動車のフロントガラス等に適当な両方がガラス板である合わせガラスの場合は、ガラス板の厚さは、0.5〜10mmが一般的であり、1〜5mmが好ましい。
【0048】
次に、熱遮蔽用積層体10の熱遮蔽機能について図2を用いて説明する。外部領域Aから太陽光線が熱遮蔽用積層体10に照射する場合において、太陽光線における近赤外線S1は透明基板4aと中間膜3を通過する。その際、透明フィルム1が近赤外反射多層フィルムの場合、透明フィルム1で大部分(近赤外線S2)は外部領域Aへ反射される。一方、透明フィルム1を透過した近赤外線S3は光吸収層2で吸収され、熱となったうちの一部(P1)が内部領域Bへ侵入する。一方、太陽光線における可視光線T1は透明基板4a、中間膜3及び透明フィルム1を通過し、さらに光吸収層2においてもその70%以上(可視光線T3)が透過し、透明基板4bを通過して内部領域Bへ入射する。また、光吸収層2において吸収された可視光線T2は、熱としてその一部(P3)が内部領域Bへ侵入する。
【0049】
熱遮蔽用積層体10によれば、光吸収層2に含まれるオキシム化合物及び/又は非酸性分散剤の作用により、光吸収層2の濃色化を抑制でき、可視光透過率の経時的な低下を抑制できる。
【0050】
図3は、熱遮蔽用積層体の第二実施形態を模式的に示す断面図である。同図に示す熱遮蔽用積層体20は、透明基板4a、中間膜3a、透明フィルム1、光吸収層2、中間膜3b及び透明基板4bがこの順序で積層された構造を有する。熱遮蔽用積層体20は、透明基板4aが外側領域側となり、透明基板4bが内側領域側となるように自動車や建築物に取り付けられる。熱遮蔽用積層体20は、光吸収層2の構成等に特徴があるが、上述の積層構造自体は標準的なものであるから、このタイプの積層体を以下、場合により「標準型積層体」と称する。
【0051】
熱遮蔽用積層体20は、中間膜3a,3bが透明フィルム1及び光吸収層2を封止するように配置されている点の他は、上述の熱遮蔽用積層体10と同様の構成を有する。熱遮蔽用積層体20の構成部材も熱遮蔽用積層体10と同様のものを使用できる。
【0052】
熱遮蔽用積層体20によれば、光吸収層2に含まれるオキシム化合物及び/又は非酸性分散剤の作用により、光吸収層2の濃色化を抑制でき、可視光透過率の経時的な低下を抑制できる。
【0053】
図4は、熱遮蔽積層体を製造するための積層フィルムの第一実施形態を模式的に示す断面図である。同図に示す積層フィルム30は、透明フィルム1とその一方面上に設けられた粒子含有層2Aを備える。粒子含有層2Aは、熱遮蔽用積層体において光吸収層2をなすものであり、上述の光吸収層2と同様、タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、オキシム化合物及び非酸性分散剤の少なくとも一方とを含有する。この積層フィルム30と、中間膜3もしくは中間膜3a,3b及び一対の透明基板4a、4bとを用いて積層体を構成し、この積層体に対する真空脱気処理等を経ることで、図1,3に示す構成の熱遮蔽用積層体を製造できる。
【0054】
図5は、熱遮蔽積層体を製造するための積層フィルムの第二実施形態を模式的に示す断面図である。同図に示す積層フィルム40は、透明フィルム1とその一方面上に設けられた前駆体層(粒子含有層)2Bとを備える。前駆体層2Bは、オキシム化合物のイソシアネート付加物及び非酸性分散剤の少なくとも一方を含有する。前駆体層2Bに含まれるオキシム化合物のイソシアネート付加物から加熱処理等によってオキシム化合物が発生することで、前駆体層2Bは光吸収層2となる。より具体的には、積層フィルム40と、中間膜3もしくは中間膜3a,3b及び一対の透明基板4a、4bとを用いて積層体を構成し、この積層体に対する加熱処理及び真空脱気処理等を経ることで、図1,3に示す構成の熱遮蔽用積層体を製造できる。なお、前駆体層2Bはオキシム化合物のイソシアネート付加物とともに、オキシム化合物も含んでもよい。
【0055】
ここで、オキシム化合物のイソシアネート付加物とは、オキシム化合物にイソシアネート化合物が付加した化合物であり、潜在的なオキシム化合物ということができる。オキシムのイソシアネート付加物は、加熱によりイソシアネートが解離し、オキシム化合物を発生させることができるため、積層フィルム40は上記熱遮蔽用積層体10,20の製造過程において加熱処理がなされる直前まで安定的にオキシム化合物を内在させることができる。
【0056】
オキシム化合物に付加するイソシアネート化合物としては、ベンゼンスルホニルイソシアナート、イソシアン酸ベンジル、イソシアン酸2−ビフェニル、イソシアン酸n−ブチル、イソシアン酸tert−ブチル、イソシアン酸4−ブチルフェニル、イソシアン酸シクロヘキシル、イソシアン酸2,6−ジイソプロピルフェニル、イソシアン酸2,6−ジメチルフェニル、イソシアン酸3,5−ジメチルフェニル、イソシアン酸ドデシル、イソシアン酸4−エトキシフェニル、イソシアン酸エチル、イソシアン酸4−エチルフェニル、イソシアン酸ヘプチル、イソシアン酸ヘキシル、メタクリル酸2−イソシアナトエチル、イソシアン酸3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジル、イソシアン酸イソプロピル、イソシアン酸2−メトキシフェニル、イソシアン酸3−メトキシフェニル、イソシアン酸4−メトキシフェニル、イソシアン酸(R)−(+)−α−メチルベンジル、イソシアン酸(S)−(−)−α−メチルベンジル、イソシアン酸(R)−(−)−1−(1−ナフチル)エチル、イソシアン酸(S)−(+)−1−(1−ナフチル)エチル、イソシアン酸1−ナフチル、イソシアン酸4−ニトロフェニル、イソシアン酸オクタデシル、イソシアン酸フェネチル、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸プロピル、イソシアン酸p−トルエンスルホニル、イソシアン酸m−トリル、イソシアン酸o−トリル、イソシアン酸p−トリル、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(2,2,4−, 2,4,4−混合物)、イソシアン酸トリメチルシリル等のモノイソシアネート化合物が挙げられる。また、1,4−フェニレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート、ジイソシアン酸イソホロン、4,4’−ジイソシアン酸メチレンジフェニル、ジイソシアン酸1,3−フェニレン、2,4−ジイソシアン酸トリレン、トリレン−2,6−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジイソシアナート−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナート−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、1,5−ジイソシアナトナフタレン、ヘキサメチレンジイソシアナートなどのジイソシアネート化合物およびこれら化合物の2量体(ウレトジオン構造)および3量体(イソシアヌレート構造)、ビウレット構造を形成していてもよい。またジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオールとの反応物であってもよい。
【0057】
オキシム化合物とイソシアネート化合物の付加物の入手可能な例としては、デュラネートTPA−B80E: 旭化成ケミカル製、MEKO(methylethylketoxime)によるHDI 3量体(hexamethylene diisocyanate trimer)付加物、デスモジュール BL4265SN: Bayer Material Science製、MEKO(methylethylketoxime)によるIPDI trimerの付加物、カレンズMOI−MP2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートとMEKO(methylethylketoxime)による付加物等を挙げることができる。
【0058】
オキシム化合物とイソシアネート化合物の付加物の添加量は、光吸収層2の全固形分中0.1質量%以上とすることが好ましい。0.1質量%以上とすることで効果的に光吸収層の濃色化を抑制できる。さらに1質量%以上であってもよい。また、30質量%以下とすることで、光吸収層2の機械的物性の劣化を抑制できる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、タングステン酸化物粒子及び/又は複合タングステン酸化物粒子を「CWO」という場合がある。
【0060】
(実施例A−1)
まず、バインダーであるポリビニルブチラール樹脂(製品名:SLEC BLSHZ、積水化学社製)2.7重量部を溶媒であるメチルエチルケトン8.1重量部に完全に溶解させて溶液を得た。この溶液に、CWO含有率が17.6重量%であり、アミン価11mgKOH/gの非酸性分散剤を使用したCWO分散液(固形分48.3%)1.19重量部と黄色顔料分散液(製品名:#A954M、御国色素社製)0.01重量部、非酸性分散剤(製品名:Disperbyk−2000、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分40%、アミン価4mgKOH/g)1.0重量部を添加した。透明フィルムへの塗布直前に架橋剤として、メチルエチルケトキシムによるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化イソシアネート(製品名:デュラネートTPA−B80E、旭化成ケミカル社製、固形分80%)0.41重量部を添加し、混合してCWO溶液を得た。
【0061】
このCWO溶液を両面アルゴンプラズマ処理された近赤外反射多層ポリマーフィルム(製品名:CM875、スリーエム社製)上にハンドコーターを用いてコーティングし、100℃オーブンに3分間放置して乾燥させた。その後、可視光透過率が73〜74%になるようにコーティング厚みを調製し、積層フィルムを得た。
【0062】
上記積層フィルムを両側からPVB中間膜(製品名:S−LEC Clear Film、積水化学工業社製)で挟み込み、更にその両側から合わせガラスで挟み、熱遮蔽用積層体の形に組み上げた。これをレトルト用袋に入れ、真空脱気及び密封してオートクレーブによる加熱及び加圧(95℃、6kg/cm2、30分保持)を行って熱遮蔽用積層体を作製した。このように、2枚のPVB中間膜を備えた標準型積層体を得た。
【0063】
他方、PVB中間膜を1枚のみ使用し、PVB中間膜を配置しない側は透明基板と光吸収層とが直接接している直接積層型積層体を、標準型積層体と同様の部材を用いて作製した。
【0064】
(実施例A−2)
架橋剤として、メチルエチルケトキシムによるイソホロンジイソシアネートのブロック化イソシアネート(製品名:デスモジュールBL4265SN、Bayer Material Science社製、固形分65%)0.78重量部を添加した以外は、実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0065】
(実施例A−3)
架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(製品名:デュラネートTPA−100、旭化成ケミカル社製、固形分100%)0.18重量部を添加し、さらに、オキシム化合物として、メチルエチルケトキシム0.22重量部を加えた以外は実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0066】
(実施例A−4)
オキシム化合物として、メチルエチルケトキシムの配合量を1.1重量部にした以外は実施例A−3と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0067】
(実施例A−5)
オキシム化合物として、シクロヘキサノンオキシムを0.3重量部加えた以外は実施例A−3と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0068】
(実施例A−6)
実施例A−1で使用したCWO分散液の代わりに、CWO含有率が17.4重量%であり、酸系分散剤を使用したCWO分散液(製品名YMF−02、住友金属鉱山社製、固形分26.5%)1.21重量部を添加し、ポリビニルブチラール樹脂の代わりにアクリル樹脂(製品名:Carboset 526、Lubrizol社製、酸価100)3重量部を添加し、非酸性分散剤(製品名:Disperbyk−2000、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分40%、アミン価4mgKOH/g)は添加せず、溶媒であるメチルエチルケトンは7.1重量部とし、メチルイソブチルケトン0.79重量部を添加した以外は、実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0069】
(実施例A−7)
YMF−02の代わりに、実施例A−1で使用したCWO分散液を1.19重量部添加した以外は、実施例6と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0070】
(参照例A−1)
架橋剤として、オキシム以外の化合物によるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化イソシアネート(製品名:デュラネートK−6000、旭化成ケミカル社製、固形分60%)0.96重量部を添加した以外は実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0071】
(参照例A−2)
架橋剤として、オキシム以外の化合物によるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化イソシアネート(製品名:デュラネートSBN−70D、旭化成ケミカル社製、固形分70%)0.58重量部を添加した以外は実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0072】
(参照例A−3)
架橋剤として、オキシム以外の化合物によるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化イソシアネート(製品名:デスモジュールBL3575、Bayer Material Science社製、固形分75%)0.52重量部を添加した以外は、実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0073】
(参照例A−4)
架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(製品名:デュラネートTPA−100、旭化成ケミカル社製、固形分100%)0.18重量部を添加した以外は実施例A−1と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0074】
(参照例A−5)
架橋剤として、トリグリシジル2メチループロパン(製品名:ED505、アデカ社製)0.03重量部と、触媒(トリフェニルホォスフィン、和光純薬社製)0.01重量部を添加した以外は、実施例6と同様にして標準型及び直接積層型の熱遮蔽用積層体をそれぞれ作製した。
【0075】
上記実施例A−1〜7及び参照例A−1〜5の各配合量をまとめると表1及び表2のとおりである。表中の単位は重量部である。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
(参照例A−6)
バインダーであるアクリル樹脂(製品名:Carboset 526、Lubrizol社製、酸価100)2.7重量部を溶媒であるメチルエチルケトン6.3重量部に完全に溶解させて溶液を得た。この溶液に、CWO含有率が17.4重量%であり、酸系分散剤を使用したCWO分散液(製品名YMF−02、住友金属鉱山社製、固形分26.5%)1.19重量部と黄色顔料分散液(製品名:#A954M、御国色素社製)0.01重量部を添加した。透明フィルムへの塗布直前に架橋剤(トリグリシジル2メチループロパン、製品名:ED505、アデカ社製)0.12重量部と、触媒(トリフェニルホォスフィン、和光純薬社製)0.01重量部をメチルイソブチルケトン0.8重量部に溶解させた上で添加し、混合してCWO溶液を得た。
【0079】
このCWO溶液を両面アルゴンプラズマ処理された近赤外反射多層ポリマーフィルム(製品名:CM875、スリーエム社製)上にハンドコーターを用いてコーティングし、100℃オーブンに3分間放置して乾燥させた。その後、可視光透過率が73〜74%になるようにコーティング厚みを調製し、積層フィルムを得た。
【0080】
上記積層フィルムを両側からPVB中間膜(製品名:S−LEC Clear Film、積水化学工業社製)で挟み込み、更にその両側から合わせガラスで挟み、熱遮蔽用積層体の形に組み上げた。これをレトルト用袋に入れ、真空脱気及び密封してオートクレーブによる加熱及び加圧(95℃、6kg/cm2、30分保持)を行って熱遮蔽用積層体を作製した。このように、2枚のPVB中間膜を備えた標準型積層体を得た。
【0081】
(実施例A−8)
オキシム化合物として、シクロヘキサノンオキシム0.3重量部をメチルエチルケトン1.35部に溶解させた上で加えた以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0082】
(実施例A−9)
オキシム化合物として、ジアセチルモノオキシム(ブタンジオンモノオキシム:BDMO)0.27重量部をメチルエチルケトン1.35部に溶解させた上で加えた以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0083】
上記実施例A−8、9及び参照例A−6の各配合量をまとめると表3のとおりである。表中の単位は重量部である。
【0084】
【表3】
【0085】
<耐候性加速試験>
実施例A−1〜7及び参照例A−1〜5においてそれぞれ作製した熱遮蔽用積層体(直接積層型及び標準型)について、耐候性加速試験機(製品名:Super xenon weather−Ometer(SXWOM)、型式SX2−75、スガ試験機社製)を用いて加速試験を実施した。照射強度は180W/m2(300−400nm)であり、ブラックパネル温度は63℃、湿度は50%RHとした。また、運転パターンとしては、102分間は照射のみとして、その後18分間は照射と降雨という条件を繰り返した。また、実施例A−8、9及び参照例A−6において作製した標準型熱遮蔽用積層体についても、同様に加速試験を実施した。
【0086】
<可視光透過率の測定>
ヘーズメーター(型式NDH2000、日本電色社製)の全光線透過率を近似的に可視光透過率として測定した。実施例A−1〜5及び参照例A−1〜4で作製した積層体(直接積層型)の測定結果を図6及び図7に示す。なお、図7は、照射開始時の透過率の値と2000時間後の透過率の値の差(透過率の減少分)をプロットしたグラフである。
【0087】
実施例A−1〜5及び参照例A−1〜4で作製した積層体(標準型)の測定結果を図8及び図9に示す。実施例A−6、7及び参照例A−5で作製した直接積層型の積層体の測定結果を図10に、実施例A−6〜9及び参照例A−5、6で作製した標準型の積層体の測定結果を図11にそれぞれ示す。
【0088】
(実施例B−1)
<積層フィルムの作製>
まず、バインダーであるアクリル樹脂(製品名:Carboset 526、Lubrizol社製、酸価100)33.7重量部を溶媒であるメチルエチルケトン78.9重量部に完全に溶解させて溶液を得た。この溶液に、CWO含有率が17.6重量%であり、アミン価11の非酸性分散剤を使用したCWO分散液(固形分48.3%)13.43重量部と黄色顔料分散液(製品名:#A954M、御国色素社製)0.12重量部を添加した。さらに、メチルイソブチルケトン8.77重量部を添加し、透明フィルムへの塗布直前に架橋剤(トリグリシジル2メチループロパン、製品名:ED505、アデカ社製、固形分25%)1.49重量部と、触媒(トリフェニルホォスフィン、和光純薬社製)0.45重量部を添加し、混合してCWO溶液を得た。
【0089】
このCWO溶液を両面アルゴンプラズマ処理された近赤外反射多層ポリマーフィルム(製品名:CM875、スリーエム社製)上にハンドコーターを用いてコーティングし、100℃オーブンに3分間放置して乾燥させた。その後、可視光透過率が73〜74%になるようにコーティング厚みを調製し、積層フィルムを得た。
【0090】
<熱遮蔽用積層体の作製>
この積層フィルムを両側からPVB中間膜(製品名:S−LEC Clear Film、積水化学工業社製)で挟み込み、更にその両側から合わせガラスで挟み、熱遮蔽用積層体の形に組み上げ、レトルト用袋に入れ、真空脱気及び密封したものをオートクレーブによる加熱及び加圧(95℃、6kg/cm2、30分保持)を行い、熱遮蔽用積層体を得た。
【0091】
(参照例B−1)
実施例B−1で使用したCWO分散液の代わりに、酸系分散剤を使用したCWO分散液(製品名YMF−02、住友金属鉱山社製、固形分26.5%)13.48重量部を使用した以外は、実施例B−1と同様にして熱遮蔽用積層体を得た。
【0092】
上記実施例B−1及び参照例B−1の各配合量をまとめると表4のとおりである。
【0093】
【表4】
【0094】
(実施例B−2)
架橋剤及び触媒を添加する前に非酸性分散剤(製品名:フローレン DOPA−15BHFS、共栄社化学社製、固形分30%、アミン価10mgKOH/g)1重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0095】
(実施例B−3)
架橋剤及び触媒を添加する前に非酸性分散剤(製品名:フローレン DOPA−17HF、共栄社化学社製、固形分30%、アミン価13mgKOH/g)1重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0096】
(実施例B−4)
架橋剤及び触媒を添加する前に非酸性分散剤(製品名:フローレン DOPA−22、共栄社化学社製、固形分40%、アミン価17mgKOH/g)0.75重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0097】
(実施例B−5)
架橋剤及び触媒を添加する前に非酸性分散剤(製品名:Disperbyk−166、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分29.5%、アミン価20mgKOH/g)1重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0098】
(実施例B−6)
架橋剤及び触媒を添加する前に非酸性分散剤(製品名:Disperbyk−182、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分43%、アミン価13mgKOH/g)0.7重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0099】
(実施例B−7)
架橋剤及び触媒を添加する前に酸価も含む非酸性分散剤(製品名:Disperbyk−2001、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分46%、アミン価29mgKOH/g、酸価19mgKOH/g)0.65重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0100】
(参照例B−2)
架橋剤及び触媒を添加する前に酸性分散剤(製品名:Disperbyk−174、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分52.5%、酸価22mgKOH/g)0.57重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0101】
(参照例B−3)
架橋剤及び触媒を添加する前に酸性分散剤(製品名:Disperbyk−P104S、BYK−Chemie Gmbh社製、固形分50%、酸価150mgKOH/g)0.6重量部を添加し一晩放置後、架橋剤及び触媒を添加した以外は、参照例A−6と同様にして標準型熱遮蔽用積層体を作製した。
【0102】
上記実施例B−2〜7及び参照例B−2、3の各配合量をまとめると表5のとおりである。表中の単位は重量部である。
【0103】
【表5】
【0104】
<耐候性加速試験>
実施例B−1及び参照例B−1で得た熱遮蔽用積層体(実施例1で計3回実施して得た3試料、参照例1で計3回実施して得た3試料の計6試料)について、耐候性加速試験機(製品名:Super xenon weather−Ometer(SXWOM)、型式SX2−75、スガ試験機社製)を用いて加速試験を実施した。照射強度は180W/m2(300−400nm)であり、ブラックパネル温度は63℃、湿度は50%RHとした。また、運転パターンとしては、102分間は照射のみとして、その後18分間は照射と降雨という条件を繰り返した。また、実施例B−2〜7、参照例B−2、3及び参照例A−6において作製した標準型熱遮蔽用積層体についても、1試料ずつであること以外は上記と同様に加速試験を実施した。
【0105】
<可視光透過率の測定>
ヘーズメーター(型式NDH2000、日本電色社製)の全光線透過率を近似的に可視光透過率として測定した。実施例B−1及び参照例B−1で作製した積層体の測定結果を図12に、実施例B−2〜7、参照例B−2、3及び参照例A−6で作製した積層体の測定結果を図13に示す。
【符号の説明】
【0106】
1…透明フィルム、2…光吸収層、2A…粒子含有層、2B…前駆体層(粒子含有層)、3,3a,3b…中間膜、4a,4b…透明基板、10,20…熱遮蔽用積層体、30,40…積層フィルム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の透明基板と、
前記一対の透明基板の間に配置された光吸収層と、
を備え、
前記光吸収層は、タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、オキシム化合物とを含む、熱遮蔽用積層体。
【請求項2】
前記一対の透明基板の間に配置された少なくとも一層の中間膜と、
前記一対の透明基板の間に配置された透明フィルムと、
を更に備え、
前記中間膜、前記透明フィルム及び前記光吸収層の順序で積層されている、請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記透明フィルムは、近赤外反射多層フィルムである、請求項2記載の積層体。
【請求項4】
前記光吸収層は、非酸性分散剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の積層体。
【請求項5】
前記光吸収層は、オキシム化合物として、式(1)で表される化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の積層体。
【化1】
[式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、水素、置換もしくは非置換の鎖状アルキル基又は環状アルキル基、置換もしくは非置換のアラルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、又は、置換もしくは非置換のアシル基であり、R1およびR2は、独立に存在するか、もしくは結合して環状構造を形成する。]
【請求項6】
一対の透明基板と、
前記一対の透明基板の間に配置された光吸収層と、
を備え、
前記光吸収層は、タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、非酸性分散剤とを含む、熱遮蔽用積層体。
【請求項7】
前記一対の透明基板の間に配置された少なくとも一層の中間膜と、
前記一対の透明基板の間に配置された透明フィルムと、
を更に備え、
前記中間膜、前記透明フィルム及び前記光吸収層の順序で積層されている、請求項6記載の積層体。
【請求項8】
前記透明フィルムは、近赤外反射多層フィルムである、請求項7記載の積層体。
【請求項9】
前記非酸性分散剤は、アミン価が1〜100mgKOH/gである、請求項4、6〜8のいずれか一項記載の積層体。
【請求項10】
透明フィルムと、
前記透明フィルム上に設けられた粒子含有層と、
を備え、
前記粒子含有層は、タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、オキシム化合物及びオキシム化合物のイソシアネート付加物の少なくとも一方とを含む、積層フィルム。
【請求項11】
前記粒子含有層は、非酸性分散剤を含む、請求項10記載の積層フィルム。
【請求項12】
透明フィルムと、
前記透明フィルム上に設けられた粒子含有層と、
を備え、
前記粒子含有層は、タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、非酸性分散剤とを含む、積層フィルム。
【請求項1】
一対の透明基板と、
前記一対の透明基板の間に配置された光吸収層と、
を備え、
前記光吸収層は、タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、オキシム化合物とを含む、熱遮蔽用積層体。
【請求項2】
前記一対の透明基板の間に配置された少なくとも一層の中間膜と、
前記一対の透明基板の間に配置された透明フィルムと、
を更に備え、
前記中間膜、前記透明フィルム及び前記光吸収層の順序で積層されている、請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記透明フィルムは、近赤外反射多層フィルムである、請求項2記載の積層体。
【請求項4】
前記光吸収層は、非酸性分散剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の積層体。
【請求項5】
前記光吸収層は、オキシム化合物として、式(1)で表される化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の積層体。
【化1】
[式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、水素、置換もしくは非置換の鎖状アルキル基又は環状アルキル基、置換もしくは非置換のアラルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、又は、置換もしくは非置換のアシル基であり、R1およびR2は、独立に存在するか、もしくは結合して環状構造を形成する。]
【請求項6】
一対の透明基板と、
前記一対の透明基板の間に配置された光吸収層と、
を備え、
前記光吸収層は、タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、非酸性分散剤とを含む、熱遮蔽用積層体。
【請求項7】
前記一対の透明基板の間に配置された少なくとも一層の中間膜と、
前記一対の透明基板の間に配置された透明フィルムと、
を更に備え、
前記中間膜、前記透明フィルム及び前記光吸収層の順序で積層されている、請求項6記載の積層体。
【請求項8】
前記透明フィルムは、近赤外反射多層フィルムである、請求項7記載の積層体。
【請求項9】
前記非酸性分散剤は、アミン価が1〜100mgKOH/gである、請求項4、6〜8のいずれか一項記載の積層体。
【請求項10】
透明フィルムと、
前記透明フィルム上に設けられた粒子含有層と、
を備え、
前記粒子含有層は、タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、オキシム化合物及びオキシム化合物のイソシアネート付加物の少なくとも一方とを含む、積層フィルム。
【請求項11】
前記粒子含有層は、非酸性分散剤を含む、請求項10記載の積層フィルム。
【請求項12】
透明フィルムと、
前記透明フィルム上に設けられた粒子含有層と、
を備え、
前記粒子含有層は、タングステン酸化物粒子及び複合タングステン酸化物粒子の少なくとも一方と、非酸性分散剤とを含む、積層フィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−88762(P2013−88762A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231709(P2011−231709)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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