説明

熱酸化分解に対して改良した抵抗性を示すポリオレフィン成形用組成物およびパイプの製造のためのその使用

【課題】成形用組成物を使用することによる水からの酸化性消毒剤によりもたらされる損傷に対する水用パイプの長期間抵抗性の改良法の提供。
【解決手段】成形用組成物は、パイプが酸化作用を示す消毒剤を含む液体と長期間接触したとき熱酸化分解に対する改良した抵抗性を示すパイプの製造に適している。このような成形用組成物は、熱可塑性ポリオレフィンに加えて、添加剤として0.01〜1.0重量%のポリオキシ化合物及び/又はポリヒドロキシ化合物を含む。また、成形用組成物は、5重量%までの量の不飽和脂肪族炭化水素もさらに含むことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、熱酸化分解に対する改良した抵抗性を示し、酸化作用を示す消毒剤を含む液体と長期間接触するパイプの製造に特に適しているポリオレフィン成形用組成物に関する。
【0002】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、およびポリ1−ブテン(PB−1)を含む成形用組成物は、冷水および温水を、好ましくは、建物中で分配するプラスチック製パイプを製造するのに長年使用されてきた。
【0003】
上記したプラスチックを含むパイプは水に対して非常に良好な抵抗性を示すが、衛生上の理由でしばしば水に添加される慣用消毒剤とパイプが接触するときに、パイプの寿命が厳しく制限されることが見出された。これは、塩素ガス、Na−次亜塩素酸塩(漂白液)、次亜塩素酸カルシウム、二酸化塩素のような少量の酸化性物質が一般に都市水道水に消毒剤として添加されるので重要である。過酸化水素(H)やオゾンもたびたび使用される。
【0004】
ポリエチレンパイプは未架橋でもまたは架橋されていてもよい。架橋は、有機過酸化物、グラフト処理したビニルシランエステルによる、または高エネルギー放射(γ−線やβ−線)による慣用工業的架橋処理により行うことができる。
【0005】
したがって、本発明の目的は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)またはポリ−1−ブテン(PB−1)のようなポリオレフィンを基礎とし、良好な加工性を維持してパイプを製造し、当該パイプが酸化作用を示す消毒剤を含む水道水に使用されるときに改良した安定性を有する、新規な成形用組成物を提供することにある。
【0006】
この目的は、最初に述べた一般的な種類の成形用組成物であって、熱可塑性ポリオレフィンを含み、成形用組成物の総重量を基準に、0.01重量%〜1.0重量%の、一般化学式:
R−[(CH−O]−H
(式中、nは1〜10の整数であり、mは3〜500の整数であり、Rは水素原子またはOH基または1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、当該アルキル基は−OH、−COOH、−COOR、−OCHもしくは−OCのような置換基を有しても良い。)の有機ポリオキシ化合物
または、一般化学式:
RO−CH−C−(CH−OR)
(式中、Rは水素原子または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であることができ、−OH、−COOH、−COOR、−OCHもしくは−OCのような置換基を有しても良い。)の有機ポリヒドロキシ化合物
またはこの2化合物の組合せを含むことを際だった特徴とする成形用組成物により達成される。
【0007】
WO 2001/90230号は、滑剤として5重量%〜50重量%の量のポリエチレングリコールを含むPEまたはPPのようなポリオレフィンであって、特に、パイプの製造のために使用されることを意図したポリオレフィンを開示する。しかし、記載されている高添加量のポリエチレングリコールはポリオレフィンの機械特性を損ない、したがって、建物内の定格圧力水用パイプの使用に適していない。
【0008】
JP−A 09/143318号公報(日本)は、フルオロポリマーとポリオキシアルキレンとの添加剤組合せを含むLLDPEが押出により処理され、それによりダイカスの発生を回避されると言われる、パイプの製造法を開示する。
【0009】
本発明の成形用組成物は、上記化学組成の少量のポリオキシ化合物またはポリヒドロキシ化合物の配合において従来技術と異なり、そのような少量にもかかわらず、長期間にわたって水中の消毒剤の酸化作用に対して該成形用組成物からなるパイプに良好な安定性を付与する物であり、これは、驚くべきことである。
【0010】
特に有用であることが見出されているポリオキシ化合物は、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールである。平均モル質量が400〜9000g/モルのポリオキシ化合物を使用するのが好適である。これらのポリオキシ化合物が使用される好適な量は0.01〜0.5重量%、特に好ましくは、0.1〜0.3重量%である。
【0011】
特に有用であることが見出されているポリヒドロキシ化合物は、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、グリセロール、マンニトールおよびソルビトールである。これらのポリヒドロキシ化合物が使用される好適な量は0.01〜0.5重量%、特に好ましくは、0.1〜0.3重量%である。
【0012】
本発明の特定の実施態様では、成形用組成物は、一般化学式:
−[(CHR)−CH=CH−CHR−R
(式中、RおよびRは、各々独立して互いに、−H、−CH、−OCHまたは−CHOHであり、RおよびRは、各々独立して互いに、−H、−CH、−Cまたは−Cである。)の不飽和脂肪族炭化水素化合物をさらに含むことができる。
【0013】
本発明の成形用組成物に存在できる追加の不飽和脂肪族炭化水素化合物の量は変動でき、成形用組成物の総重量を基準に0.1重量%〜5重量%である。不飽和脂肪族炭化水素化合物として、本発明では、ポリイソプレン、ポリオクテナマーまたはポリデセナマーが好適である。
【0014】
本発明で特に適切な熱可塑性ポリオレフィンはPE、PPおよびPB−1のようなポリオレフィンであり、これらはホモポリマー及びさらに4〜10個の炭素原子を有するオレフィンモノマーとのコポリマーを含む。これらの熱可塑性ポリオレフィンは押出技術によりパイプを製造するために容易に加工できる。このようなポリオレフィンは、チグラー触媒、チグラー・ナッタ触媒、クロム含有フィリップス触媒またはメタロセン等のシングルサイド触媒のような適切な触媒の存在下でモノマーの重合により製造できる。
【0015】
重合は、0〜200℃、好適には、25〜150℃、より好適には40〜130℃で、0.05〜10MPa、好適には,0.3〜4MPaの圧力下で行う。重合は、不連続または連続、好ましくは、連続で、単一または多数工程プロセスで行うことができる。それにより、溶液重合、懸濁重合または攪拌気相重合もしくは気相流動床重合を使用することが可能である。当業者は、通常の知識に属するので、この技術やこの種のプロセスを熟知している。
【0016】
本発明の成形用組成物は線状または非線状であることができるPEを含むことができ、高密度PE(HDPE)または中密度PE(MDPE)または低密度PE(LDPE)または線状低密度PE(LLDPE)のような異なる密度を有しても良い。好適な実施態様では、成形用組成物は、23℃の温度で0.93〜0.965g/cmの範囲の密度および0.1〜2g/10分の範囲のメルトインデックスMI190/5を示すPEを含む。
【0017】
PPを含む本発明の成形用組成物は、例えば、高分子量アイソタクチックホモポリマー又はシンジオタクチックホモポリマー、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーであることができ、0.1〜2/10分のメルトインデックスMI230/5を示す。
【0018】
PB−1を含む本発明の成形用組成物は、例えば、0.1〜1g/10分の範囲のメルトインデックスMI190/2.16および23℃の温度で0.92〜0.95g/cmの密度を示すホモポリマーまたはコポリマーであることができる。
【0019】
本発明の成形用組成物は熱可塑性ポリオレフィンに加えて追加の添加剤をさらに含むことができる。このような添加剤は、好ましくは、混合物の総重量を基準に0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%の量の、熱安定剤および加工安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、金属脱奪活剤、過酸化物−破壊化合物、有機過酸化物、基本的補助安定剤であり、総量0〜30重量%のカーボンブラック、充填材、顔料またはこれらの組合せも、添加剤として含ませることができる。
【0020】
熱安定剤として、本発明の成形用組成物は、フェノール性抗酸化剤、特に、ペンタエリトリチル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティー社、ドイツ、からIRGANOXという商標で得ることができる)を含むことができる。
【0021】
本発明に関して成形用組成物はパイプに加工でき、当該パイプが、塩素化水に晒されるか、連続的に接触状態にある場合、非常に改良された長期間安定性を示すということが特に驚きである。別の高い驚くべき見地は、それらの改良した官能と組み合わせたこのようなパイプのブレークスルーに対する高い抵抗性であった。
【実施例】
【0022】
下記の実施例は新規な成形用組成物、特に、当該成形用組成物から製造される新規なパイプの利点をより良く例証するために与えるものである。しかし、それらの実施例は本発明の範囲のどのような減縮をももたらすことを意図するものではない。
【0023】
(実施例1)
密度が0.946g/cm及びメルトフローインデックスMI190/5が0.3g/10分を示す高分子量中密度PE粉末を、モル質量が9000g/モルのポリエチレングリコールを0.1%、Vestenamer 8012を1%及びIRGANOX1330を0.35%と共に混合し、Coperion Werner & Pfleiderer GmbH & Co KG製ZSK 53上で220℃の溶融温度でペレット化した。得られたペレットを、Battenfeld製パイプ押出ユニットに220℃の溶融温度で処理して、直径16×2mmのパイプを製造した。次いで、得られたパイプを電子ビームにより架橋した。適用した放射線量は120kGyだった。架橋度をDIN EN16892に準拠して測定し、66%だった。
【0024】
1.58MPaの荷重で塩素4ppm共存下で架橋したパイプについて、ASTM F2023に準拠して115℃でクリープ試験を行った。得られた破損時間を表1に示す。
(実施例2)
実施例1からの密度が0.946g/cm及びメルトフローインデックスMI190/5が0.3g/10分を示す高分子量MDPE粉末を、モル質量が400g/モルのポリエチレングリコールを0.1%及びIRGANOX1330を0.35%と共に混合し、ペレット化し、押出して直径16×2mmのパイプを製造し、得られたパイプを電子ビームにより120kGyで架橋した。架橋度をDIN EN16892に準拠して測定し、64%だった。
【0025】
1.58MPaの荷重で塩素4ppm共存下で架橋したパイプについて、115℃でクリープ試験を行った。この試験をASTM F2023に準拠して行った。得られた破損時間を表1に示す。
【0026】
(実施例3)
実施例1からの密度が0.946g/cm及びメルトフローインデックスMI190/5が0.3g/10分を示す高分子量MDPE粉末を、モル質量が400g/モルのポリエチレングリコールを0.2%及びIRGANOX1330を0.35%と共に混合し、ペレット化し、押出して直径16×2mmのパイプを製造し、得られたパイプを電子ビームにより120kGyで架橋した。架橋度をDIN EN16892に準拠して測定し、66%だった。
【0027】
1.58MPaの荷重で塩素4ppm共存下で架橋したパイプについて、115℃でクリープ試験を行った。この試験をASTM F2023に準拠して行った。得られた破損時間を表1に示す。
【0028】
(実施例4)
実施例1からの密度が0.946g/cm及びメルトフローインデックスMI190/5が0.3g/10分を示す高分子量MDPE粉末を、モル質量が400g/モルのポリエチレングリコールを0.1%、Vestenamer 8012を1%及びIRGANOX1330を0.35%と共に混合し、ペレット化し、押出して直径16×2mmのパイプを製造し、得られたパイプを電子ビームにより120kGyで架橋した。架橋度をDIN EN16892に準拠して測定し、65%だった。
【0029】
1.58MPaの荷重で塩素4ppm共存下で架橋したパイプについて、115℃でクリープ試験を行った。この試験をASTM F2023に準拠して行った。得られた破損時間を表1に示す。
【0030】
(比較例)
比較のため、Basell製市販PEXc材料4261A Q416を押出して直径16×2mmのパイプを製造し、120kGyで放射線架橋を行った。架橋度は63%だった。
【0031】
1.58MPaの荷重で塩素4ppm共存下で架橋したパイプについて、115℃でクリープ試験を行った。この試験をASTM F2023に準拠して行った。
【0032】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良した耐−熱酸化分解性を示すパイプ製造用ポリオレフィン成形用組成物であって、当該成形用組成物が熱可塑性ポリオレフィンと、さらに、成形用組成物の総重量を基準に、0.01重量%〜1.0重量%の量の、一般化学式:
R−[(CH−O]−H
(式中、nは1〜10の整数であり、mは3〜500の整数であり、Rは水素原子またはOH基または1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、当該アルキル基は−OH、−COOH、−COOR、−OCHもしくは−OCのような置換基を有しても良い。)の有機ポリオキシ化合物
または、一般化学式:
RO−CH−C−(CH−OR)
(式中、Rは水素原子または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であることができ、−OH、−COOH、−COOR、−OCHもしくは−OCのような置換基を有しても良い。)の有機ポリヒドロキシ化合物
またはこの2化合物の組合せとを含む、前記パイプ製造のためのポリオレフィン成形用組成物。
【請求項2】
ポリオキシ化合物として、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む請求項1に記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項3】
平均モル質量が400〜9000g/モルのポリオキシ化合物を含む請求項1または2に記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項4】
0.01重量%〜0.5重量%、好ましくは、0.1重量%〜0.3重量%の量のポリオキシ化合物を含む請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項5】
ポリヒドロキシ化合物として、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、グリセロール、マンニトールまたはソルビトールを含む請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項6】
0.01重量%〜0.5重量%、好ましくは、0.1重量%〜0.3重量%の量のポリヒドロキシ化合物を含む請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項7】
一般化学式:
−[(CHR)−CH=CH−CHR−R
(式中、RおよびRは、各々独立して互いに、−H、−CH、−OCHまたは−CHOHであり、RおよびRは、各々独立して互いに、−H、−CH、−Cまたは−Cである。)の不飽和脂肪族炭化水素化合物をさらに含む請求項1〜6のいずれかに記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項8】
成形用組成物の総重量を基準に、0.1重量%〜5重量%の量の不飽和脂肪族炭化水素化合物を含む請求項1〜7のいずれかに記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項9】
不飽和脂肪族炭化水素化合物として、ポリイソプレン、ポリオクテナマーまたはポリデセナマーを含む請求項1〜8のいずれかに記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項10】
熱可塑性ポリオレフィンとして、ポリエチレンもしくはポリプロピレンまたはこれらのコポリマーと、さらに4〜10個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和モノマーとを含む請求項1〜9のいずれかに記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項11】
熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、金属脱奪活剤、過酸化物−破壊化合物、基本的補助安定剤をさらに含み、熱可塑性ポリオレフィンに加えて、0〜10重量%、好ましくは、0〜5重量%の量で存在できる、請求項1〜10のいずれかに記載のポリオレフィン成形用組成物。
【請求項12】
熱酸化分解に対して酸化作用を示す消毒剤を含む液体と長期間接触する、熱可塑性ポリオレフィンを含むパイプの抵抗性を改良する方法であって、請求項1に記載のポリオレフィン成形用組成物の押出によりパイプを製造する、当該改良方法。
【請求項13】
前記ポリオレフィン成形用組成物が、一般化学式:
−[(CHR)−CH=CH−CHR−R
(式中、RおよびRは、各々独立して互いに、−H、−CH、−OCHまたは−CHOHであり、RおよびRは、各々独立して互いに、−H、−CH、−Cまたは−Cである。)の不飽和脂肪族炭化水素化合物をさらに含む請求項12に記載の改良方法。
【請求項14】
酸化作用を示す消毒剤を含む液体と長期間接触する、熱可塑性ポリオレフィンを含むパイプの安定性を改良するためのポリオキシ化合物またはポリヒドロキシ化合物の使用であって、ポリオキシ化合物またはポリヒドロキシ化合物を、パイプの製造前に、熱可塑性ポリオレフィンに対する添加剤として、ポリオレフィンと添加剤との総重量を基準に、0.01〜1.0重量%の量で添加する、前記ポリオキシ化合物またはポリヒドロキシ化合物の使用。
【請求項15】
ポリオキシ化合物またはポリヒドロキシ化合物に加えて熱可塑性ポリオレフィンに不飽和脂肪族炭化水素を加える、請求項14に記載の使用。

【公開番号】特開2013−57069(P2013−57069A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−231966(P2012−231966)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2008−510469(P2008−510469)の分割
【原出願日】平成18年5月6日(2006.5.6)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】