説明

熱開始重合法

本発明は、熱開始重合法に関する。この方法は、反応器中で、1つまたは複数のアクリレートモノマーを含む反応混合物を120℃〜500℃の範囲の重合温度まで加熱する工程と、反応混合物をポリマーへと重合する工程とを備える。本願特許出願人は、予想外にも、熱開始剤としてアクリレートモノマーを使用することができることを発見した。この発見によって、本方法は従来の熱開始重合法よりも経済的となる。また反応混合物は、非アクリレートモノマーを含み得る。分子量を制御するためのいくつかの新規工程も開示され、そして得られるポリマーの多分散性も開示される。コストの低い本発明の方法によって製造されたポリマーは、自動車OEMおよび塗り替えコーティング組成物のような広範囲の適用を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、熱開始フリーラジカル重合法に関し、特に、従来の熱開始重合法よりも安価の出発材料を利用する熱開始フリーラジカル重合法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な熱開始フリーラジカル重合法において、熱開始剤が化学的に反応性のフリーラジカルを生じる切断を受けるように十分高い反応温度に維持された反応器中で、典型的に有機溶媒または水性媒体中のモノマー混合物へと熱開始剤を添加する。次いで、かかるフリーラジカルは、存在するモノマーと反応し、追加的なフリーラジカルならびにポリマー鎖を生じる。典型的に従来の熱開始剤としては、過酸化ベンゾイルおよびペルオキシ安息香酸t−ブチルのような一官能性過酸化物;アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ開始剤;ならびに1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよび2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパンのような多官能性過酸化物が挙げられる。かかる従来の熱開始剤は、通常、モノマー混合物の総重量を基準として0.05重量%〜25重量%の量で使用される。
【0003】
上記熱開始フリーラジカル重合法において利用される熱開始剤は非常に高価である傾向がある。さらに、重合プロセスが完了すると、ポリマー中の熱開始剤からの残基の存在が、化学放射、例えばUV放射に対する耐性のようなポリマー特性に影響を及ぼし得る。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,710,227号明細書
【特許文献2】米国特許第5,587,431号明細書
【特許文献3】米国特許第4,746,714号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、改善されたポリマー特性を有するポリマーを製造するのみではなく、現在利用されているもののような高価な熱開始剤を使用しない熱開始フリーラジカル重合法に対する必要が存続している。
【0006】
スチレンモノマーがフリーラジカル熱開始剤として作用して、高い重合温度でポリスチレンポリマーを製造することは既知である。しかしながら、低コストの重合法を使用することによって、得られるポリマーの分子量を制御することが可能な重合法に対する必要が存続している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
反応器中で、1つまたは複数のアクリレートモノマーを含む反応混合物を120℃〜500℃の範囲の重合温度まで加熱する工程と、
前記反応混合物をポリマーへと重合する工程と
を含む重合法に関する。
【0008】
本発明は、基材上にコーティングを製造する方法であって、
反応器中で、1つまたは複数のアクリレートモノマーを含む反応混合物を120℃〜500℃の範囲の重合温度まで加熱し、そして前記反応混合物をポリマーへと重合することによって重合されたポリマーを含むコーティング組成物の層を塗布する工程と、
基材上で前記層をコーティングへと硬化する工程と
を含む方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における使用のために適切な重合法は、重合のために必要とされる全ての成分が1ショットで反応器へと添加されるバッチ法、いわゆるショット法、あるいは反応混合物のいくらかが最初に反応器へと添加され、反応温度まで加熱され、そして残りの反応混合物が時間をかけて反応器へと供給する半バッチまたは半連続法であり得る。
【0010】
前記重合法は、重合のために必要とされる全ての成分が連続的に反応器へと供給され、そして得られるポリマーを連続的に反応器から除去する連続法であり得る。反応器は連続撹拌タンク反応器または管状反応器のいずれでもあり得、ここでは重合温度に維持された管状反応器の一端で反応混合物が供給され、そして得られるポリマーが連続的に管状反応器のもう一端から除去される。重合プロセスの処理量を増加させるために、もう一方に対して平行な関係に配置された多数の管状反応器を使用可能であると考えられる。長さ/内径(L/D)を変更することによって、管状反応器中の反応混合物の滞留時間も制御可能である。従って、L/D比が高いほど、逆に滞留時間が長い。あるいは、または前記に加えて、管状反応器を通して反応混合物が輸送される速度を増加または低下させて、滞留時間を減少または増加させることができる。前記管状反応器のいくつかの態様は、本明細書に援用される米国特許公報(特許文献1)に記載されている。
【0011】
前記工程のいずれも、モノマー混合物の別の流れを含み得、そして本発明の熱開始剤は特定の期間、連続的に反応器へと供給される。あるいは、開始剤の一部分を、重合温度に維持された重合媒体へと添加して、続いて、反応混合物の一部分を添加することができる。その後、反応混合物および開始剤の残りの部分の別の流れを特定の期間、連続的に反応器へと供給することができる。
【0012】
本願特許出願人は、予想外にも、高い重合温度でのフリーラジカル重合法において熱開始剤としてアクリレートモノマーを使用することができることを発見した。モノマー混合物の総重量を基準として、5重量%〜100重量%の範囲の濃度の1つまたは複数のアクリレートモノマーを熱開始剤として使用することができる。濃度は所望のポリマー特性次第である。本発明の熱開始重合法は、アクリレートモノマー自体が重合プロセスを熱開始し、その後、得られるポリマーの一部となるため、前記従来の熱開始剤の不在下で実行される。重合温度は、120℃〜500℃、好ましくは140℃〜300℃、そしてより好ましくは140℃〜220℃の範囲であり得る。前記重合温度を達成および維持するために、反応器における圧力を調節する。注目すべきは、所望であれば、重合媒体の沸点を基準として、高圧で重合を実行することができることである。典型的に、反応器ゲージ圧力は、0.1MPa〜2.86MPa(0psig〜400psig)、好ましくは0.1MPa〜0.71MPa(0psig〜100psig)の範囲である。重合温度が高いほど、モノマーおよび溶媒の所定の組成物に対する反応器圧力が高いことは理解される。
【0013】
しばしば、モノマー混合物は、有機溶媒または水のいずれかの重合媒体中に溶媒和されて、反応混合物を形成する。モノマーおよび得られるポリマーが媒体に溶解性である場合、均質重合が生じる。モノマーまたは得られるポリマーが媒体に溶解性ではない場合、不均質重合が生じる。典型的な重合媒体としては、アセトン、メチルアミルケトン、メチルエチルケトン、エクソンモービル ケミカル(テキサス州、ヒューストン)(ExxonMobil Chemical,Houston,Texas)からのアロマティック(Aromatic)100(芳香族溶媒ブレンド)、キシレン、トルエン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸t−ブチル、ブタノール、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルのようなグリコールエーテルのような1つまたは複数の有機溶媒が挙げられる。従って、重合媒体の沸点が高いほど、重合温度が高くなり得る。典型的な水性重合媒体としては、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトン、n−メチルピロリドン、ならびにグリコールおよびジグリコールエーテルのような混和性助溶媒が挙げられる。例えば、粉末コーティング組成物用のポリマー製造のために使用される場合、反応混合物中のモノマー混合物の濃度は70重量%〜100重量%の範囲であり得る。エナメルコーティング組成物用のポリマー製造のために使用される場合、濃度は40重量%〜90重量%の範囲であり得る。ラッカーコーティング組成物用のポリマー製造のために使用される場合、濃度は10重量%〜70重量%の範囲であり得る。前記重量%は全て、反応混合物の総重量を基準とする。水性媒体が添加され、次いで有機溶媒が除去されてポリマーの水性分散系が形成される有機重合媒体中で、ポリマーを形成することも可能である。
【0014】
典型的に、反応混合物を含有する反応器は、窒素またはアルゴンによって提供されるもののような不活性雰囲気下に維持される。
【0015】
好ましくは、反応器中の反応混合物は、反応混合物を含有する反応器中の重合媒体のいずれの蒸発成分の濃縮および反応器への帰還によって達成される還流状態下に維持される。
【0016】
所望であれば、アクリレートモノマーを一定速度で反応器へと供給することができる。モノマー混合物が非アクリレートモノマーを含む場合、アクリレートモノマーおよび非アクリレートモノマーの別の流れを同時に一定速度で反応器へと供給することができる。所望のポリマーの種類次第で速度が異なることは明白である。あるいは、アクリレートモノマーおよび非アクリレートモノマーを予め混合し、次いで反応器へと供給することができる。アクリレートモノマーを最初に供給し、次いで、非アクリレートモノマーを供給することも本発明の範囲内である。重合温度まで加熱された反応器へと重合媒体を最初に供給し、続いて、上記の様式でアクリレートモノマーおよび非アクリレートモノマーを供給することもできるとさらに考えられる。
【0017】
本発明では、反応器へと供給されるアクリレートモノマーおよび非アクリレートモノマーが、反応器へと供給される前に重合媒体中で溶解可能であるか、または懸濁可能であると考えられる。
【0018】
典型的な反応時間は、約30秒〜24時間、典型的に1時間〜12時間、一般的に約2時間〜4時間の範囲である。
【0019】
熱開始剤としての使用に適切なアクリレートモノマーには、直鎖C〜C20アルキル、分枝C〜C20アルキル、環式C〜C20アルキル、二環式または多環式C〜C20アルキル、2環〜3環を有する芳香族、フェニル、C〜C20フルオロカーボンおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される1つまたは複数の基が提供され得る。
【0020】
特に、熱開始剤としての使用に適切なアクリレートモノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸イソデシルおよびアクリル酸ラウリル;アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルのような分枝アルキルモノマー;ならびにアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸第三級ブチルシクロヘキシルおよびアクリル酸イソボルニルのような環式アルキルモノマーであり得る。前記アクリレートモノマーのいずれかの組み合わせも使用可能である。加えて、熱開始剤としての使用に適切なアクリレートモノマーは、1つまたは複数のペンダント部分を備え得る。かかるアクリレートモノマーのいくつかの例としては、アクリル酸ヒドロキシエチルおよびアクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルのようなアクリル酸ヒドロキシルアルキル;アクリル酸、アクリロキシプロピオン酸およびアクリル酸グリシジルが挙げられる。アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびアクリル酸n−ブチルが好ましい。
【0021】
本出願人は、アクリル系モノマーを他のモノマーの重合を開始するための熱開始剤として使用できるだけではなく、それら自体でホモポリマーを製造するために使用することができる(単一の種類のアクリレートモノマーが使用される場合)、またはコポリマーを製造するために使用することができる(アクリレートモノマーの混合物が熱開始剤として使用される場合)ことを発見した。
【0022】
前記に加えて、様々な非アクリレートモノマー混合物の組み合わせも1つまたは複数のアクリレートモノマーによって熱的に開始され得る。アクリレートモノマーによって熱的に開始され得るいくつかの非アクリレートモノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソボルニルのようなメタクリル酸のアルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシイソプロピルおよびメタクリル酸ヒドロキシブチルのようなメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;メタクリル酸N−メチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチルおよびメタクリル酸第三級ブチルアミノエチルのようなメタクリル酸アミノアルキル;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、NN−ジメチルメタクリルアミド、メタクリル酸、メタクリロニトリル、アリルアルコール、アリルスルホン酸、アリルホスホン酸、ビニルホスホン酸、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ホスホエチル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩、ビニルスルホン酸およびその塩、ならびにメタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、シクロヘキセンジカルボン酸およびそれらの塩のようなカルボン酸が挙げられる。
【0023】
所望であれば、好ましくは、コポリマー上のヒドロキシル官能性とイソシアナトプロピルトリメトキシシランとの後反応によって、1つまたは複数のシラン官能性を本発明のコポリマー中に組み入れることができる。コポリマー上で、0.01〜1.0の範囲で、ヒドロキシル基に対してイソシアナトプロピルトリメトキシシランからのイソシアネート当量との当量基準で反応を実行する。
【0024】
さらに、出願人は、例えば、モノマーの濃度および重合温度を処理することによって、得られるポリマーの構造を制御することができることを発見した。
【0025】
従って、GPC重量平均分子量のようなポリマーの分子量を、以下の工程の1つまたは複数によって低下することができる。
モノマー混合物中の前記アクリレートモノマーの濃度を5重量%から100重量%まで、好ましくは20重量%から90重量%まで、そしてより好ましくは40重量%から80重量%まで増加させる工程と、
重合温度を120℃から500℃まで、好ましくは140℃から300℃まで、そしてより好ましくは140℃から220℃まで増加させる工程と、
前記モノマー混合物からポリマーへの転化を約100%から約20%未満まで、好ましくは約80%から約30%未満まで、そしてより好ましくは約70%から約50%未満まで低下させる工程と、
反応混合物中のモノマー混合物の濃度を、反応混合物の総重量を基準として約100%から約2%まで、好ましくは約90%から約30%まで、より好ましくは約80%から約40%まで低下させる工程。
【0026】
注目すべきは、前記プロセス工程において、重合間にモノマー混合物中のアクリレートモノマーの濃度が増加されないということである。これらの工程の最初の選択によって、この工程は達成される。従って、低分子量を有するポリマーを製造することが望まれる場合、開始時のモノマー混合物中のアクリレートモノマーのより少ない使用よりも、ポリマーの製造時に反応混合物中のアクリレートモノマーを「増加」させ、すなわち、より多くが使用される。従って、前記プロセス工程によって、所望のポリマー構造を有するポリマーを得るためにプロセス工程が使用される予測可能なプロセスガイダンスをポリマー技術者にもたらす。本発明の方法によって達成される、得られるポリマーのGPC重量平均分子量は、1000〜100,000、好ましくは1,500〜40,000、より好ましくは2,000〜20,000で変更可能である。反応混合物において使用されるモノマーの適切な選択によって、さらに高い、または低い分子量を達成することができる。
【0027】
本発明の方法によって達成される、得られるポリマーの多分散性は、1.3〜4.0、好ましくは1.5〜2.5、より好ましくは1.6〜2.0で変更可能である。
【0028】
本発明の方法によって製造されるポリマーは、典型的に、末端不飽和基(−C=CH)を有するポリマーを平均で50%〜95%有する。結果として、ブロックコポリマーおよびグラフトコポリマーを製造するためのマクロモノマーとして本発明のポリマーを有利に使用することができる。従って、末端不飽和基を有する本発明のポリマーの存在下で第2の反応混合物を容易に従来通り重合し、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを製造することができる。第2の反応混合物は、前記モノマーのいずれかを含有し得る。不飽和末端基を有するマクロモノマーを製造するためにコバルト(IIまたはIII)キレートのような高価な有機金属系連鎖移動剤を典型的に必要とする従来法とは異なり、本発明はかかる連鎖移動剤を利用しない。かかる方法は、本明細書に援用される米国特許公報(特許文献2)に記載される。さらに、有機金属系連鎖移動剤は、得られるポリマー溶液から除去することが困難かつ高価であるため、得られる組成物中のそれらの存在は、得られるコーティングの特性に悪影響を及ぼし得る。対照的に、本発明の方法によって製造されたマクロモノマーは有機金属系連鎖移動剤を使用しないため、得られる組成物のコーティング特性に悪影響を及ぼさない。さらに、本発明の方法による末端において不飽和であるマクロモノマーからのブロックコポリマーおよびグラフトコポリマーの製造コストは、高価な有機金属系連鎖移動剤を使用する従来法よりも低い。
【0029】
また本発明は、本発明の方法によって製造されたポリマーに関する。また本発明は、本発明の方法によって製造されたポリマーを含有するコーティング組成物および接着剤に関する。
【0030】
また本発明は、基材上にコーティングを製造する方法であって、
反応器中で、1つまたは複数のアクリレートモノマーを含む反応混合物を120℃〜500℃の範囲の重合温度まで加熱し、そして前記反応混合物をポリマーへと重合することによって重合されたポリマーを含むコーティング組成物の層を塗布する工程と、
自動車車体のような基材上で層をコーティングへと硬化する工程と
を含む方法に関する。
【0031】
本発明の方法によって製造されたポリマーに、ポリマー主鎖またはポリマー主鎖からのペンダントのいずれかに1つまたは複数の架橋可能な官能性を提供して、1パックまたは2パックコーティング組成物の架橋可能な成分を形成することができると考えらえる。前記官能性としては、アセトアセトキシ;ヒドロキシル;エポキシド;シラン;アミンおよびカルボキシルが挙げられる。例えば、メタクリル酸ヒドロキシエチルのような得られるポリマーにかかる官能性を寄与する反応混合物モノマーにおいて導入することによって、このポリマーにかかる官能性を提供することができる。架橋成分としては、ポリイソシアネート、モノマー性およびポリマー性メラミン、ポリ酸、ポリエポキシ、ポリアミンならびにポリケチミンのような1つまたは複数の架橋剤が挙げられる。
【0032】
2パックコーティング組成物に関して、別々の容器中に貯蔵された2成分を使用の直前に混合して、ポットミックスを形成し、次いで、これを基材上に層として塗布する。次いで、ポットミックス層を周囲または高められた焼成硬化温度で硬化し、基材上にコーティングを形成する。硬化の間、ヒドロキシルのようなポリマー上の架橋可能な官能性は、イソシアネートのような架橋剤からの架橋官能性と架橋して、耐久性、耐エッチング性コーティングを製造するポリウレタンのような架橋網目構造を形成する。
【0033】
架橋剤としてポリイソシアネートを使用する場合、メタノールのような低級脂肪族アルコール、メチルエチルケトンオキシムのようなオキシム、およびイプシロンカプロラクタムのようなラクタムのような適切なブロック化剤によってイソシアネートをブロック化することができる。1パックコーティング組成物を形成するために同一容器にブロック化架橋剤を含有する架橋成分がパックされる貯蔵安定性1パックコーティング組成物を形成するために、ブロック化イソシアネートを使用することができる。基材上に1パックコーティング組成物の層を塗布する場合、上記様式で架橋構造のコーティングを形成するために高められた焼成硬化温度においてブロック化架橋剤からのイソシアネートはブロック化されない。
【0034】
(1)有機溶媒中に不溶性であるアクリル系ポリマーのコアと、それにグラフト化された(2)それぞれ有機溶媒中に溶解性であり、かつコアにグラフト化された安定剤分子の一端を有する複数の実質的に直鎖の安定剤成分とを有する安定化アクリル樹脂を製造するためにも、本発明の方法を使用することができる。前記安定化アクリル樹脂の製造法は、本明細書に援用される米国特許公報(特許文献3)に記載される。熱開始剤としてアクリレートモノマーが利用される安定化アクリル樹脂のコアを製造するために、本発明の方法を使用することができる。
【0035】
従来の熱開始剤が使用されないため、従来の熱開始剤を利用する従来の重合法よりもポリマーの製造コストが低い。結果として、本発明のポリマーおよびコポリマーは広範囲の適用を見出す。自動車OEM(相手先商標製造会社(Original Equipment Manufacturer))および塗り替えコーティングの適用において、本発明のポリマーおよびコポリマーを使用することができる。本発明のポリマーは、自動車の適用において使用されるプライマー、顔料ベースコーティング組成物および透明コーティング組成物における使用のために適切である。本発明のコーティング組成物がベースコートとして使用される場合、組成物に添加され得る典型的な顔料としては以下のものが挙げられる。金属酸化物、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、様々な色の酸化鉄、カーボンブラック、フィラー顔料、例えば、タルク、チャイナクレー、バライト、カーボネート、シリケート、ならびに様々な有機着色顔料、例えば、キナクリドン、銅フタロシアニン、ペリレン、アゾ顔料、インダントロンブルー、カルバゾール、例えば、カルボゾールバイオレット、イソインドリノン、イソインドロン、チオインジゴレッド、ベンゾイミダゾリノン、金属フレーク顔料、例えば、アルミニウムフレーク。
【0036】
本発明の方法によって製造されたポリマーおよびコポリマーを、海洋での適用、例えば、船体、防波堤のためのコーティング組成物、工業用コーティング、粉末コーティング、インクジェットインク、航空機車体のためのコーティング組成物、および建築用コーティングにも使用することができる。
【実施例】
【0037】
(実施例1(140℃で重合されたアクリル酸n−ブチルホモポリマー))
1.5リットルのフラスコに540グラムのキシレンを添加し、次いで、溶媒中に窒素をバブリングしながら140℃まで加熱した。その後、すでに窒素でパージされた360グラムのアクリル酸n−ブチルを5分以内でフラスコへと添加した。40重量%のモノマーを含有する反応混合物を3時間140℃に保持した。得られたポリマーは、標準としてポリスチレンを使用して、19839のGPC重量平均分子量および8238のGPC数平均分子量を有した。ガスクロマトグラフィーによって、72%のモノマーがポリマーへと転化されたことが決定された。
【0038】
(実施例2(160℃で重合されたアクリル酸n−ブチルホモポリマー))
1.5リットルのフラスコに540グラムのキシレンを添加し、次いで、溶媒中に窒素をバブリングしながら160℃まで加熱した。その後、すでに窒素でパージされた360グラムのアクリル酸n−ブチルを5分以内でフラスコへと添加した。40重量%のモノマーを含有する反応混合物を2.5時間160℃に保持した。得られたポリマーは、標準としてポリスチレンを使用して、9657のGPC重量平均分子量および4314のGPC数平均分子量を有した。ガスクロマトグラフィーによって、83%のモノマーがポリマーへと転化されたことが決定された。
【0039】
(実施例3(180℃で重合されたアクリル酸n−ブチルホモポリマー))
1.5リットルのフラスコに540グラムのキシレンを添加し、次いで、溶媒中に窒素をバブリングしながら180℃まで加熱した。その後、すでに窒素でパージされた360グラムのアクリル酸n−ブチルを5分以内でフラスコへと添加した。40重量%のモノマーを含有する反応混合物を1.7時間180℃に保持した。得られたポリマーは、標準としてポリスチレンを使用して、6206のGPC重量平均分子量および2563のGPC数平均分子量を有した。ガスクロマトグラフィーによって、86%のモノマーがポリマーへと転化されたことが決定された。
【0040】
(実施例4(メチルアミルケトンの還流下で重合されたアクリル酸n−ブチル))
1.5リットルのフラスコに700グラムのメチルアミルケトンを添加し、次いで、溶媒中に窒素をバブリングしながら150℃〜155℃まで加熱還流した。その後、すでに窒素でパージされた300グラムのアクリル酸n−ブチルを5分以内でフラスコへと添加した。30重量%のモノマーを含有する反応混合物を4.0時間還流下に保持した。得られたポリマーは、標準としてポリスチレンを使用して、9965のGPC重量平均分子量および3934のGPC数平均分子量を有した。ガスクロマトグラフィーによって、99%のモノマーがポリマーへと転化されたことが決定された。
【0041】
(実施例5(メチルアミルケトンの還流下で重合されたアクリル酸ヒドロキシプロピル))
1.5リットルのフラスコに700グラムのメチルアミルケトンを添加し、次いで、溶媒中に窒素をバブリングしながら150℃〜155℃まで加熱還流した。その後、すでに窒素でパージされた300グラムのアクリル酸ヒドロキシプロピルを5分以内でフラスコへと添加した。30重量%のモノマーを含有する反応混合物を4.0時間還流下に保持した。得られたポリマーは、標準としてポリスチレンを使用して、2039のGPC重量平均分子量および1648のGPC数平均分子量を有した。ガスクロマトグラフィーによって、99%より多くのモノマーがポリマーへと転化されたことが決定された。
【0042】
(実施例6(メチルアミルケトンの還流下で重合されたアクリル酸メチル))
1.5リットルのフラスコに700グラムのメチルアミルケトンを添加し、次いで、溶媒中に窒素をバブリングしながら150℃〜155℃まで加熱還流した。その後、すでに窒素でパージされた300グラムのアクリル酸メチルを5分以内でフラスコへと添加した。30重量%のモノマーを含有する反応混合物を4.0時間還流下に保持した。得られたポリマーは、標準としてポリスチレンを使用して、53887のGPC重量平均分子量および11277のGPC数平均分子量を有した。ガスクロマトグラフィーによって、85%のモノマーがポリマーへと転化されたことが決定された。
【0043】
(実施例7(メチルアミルケトンの還流下で共重合されたアクリル酸n−ブチル/メタクリル酸n−ブチル))
1.5リットルのフラスコに700グラムのメチルアミルケトンを添加し、次いで、溶媒中に窒素をバブリングしながら150℃〜155℃まで加熱還流した。その後、すでに窒素でパージされた180グラムのアクリル酸n−ブチルおよび120グラムのメタクリル酸n−ブチルを5分以内でフラスコへと添加した。アクリル酸n−ブチル対メタクリル酸n−ブチルが60/40の初期重量比で30重量%のモノマーを含有する反応混合物を4.0時間還流下に保持した。得られたポリマーは、標準としてポリスチレンを使用して、18540のGPC重量平均分子量および6850のGPC数平均分子量を有した。ガスクロマトグラフィーによって、100%のアクリル酸n−ブチルおよび97%のメタクリル酸n−ブチルがポリマーへと転化されたことが決定された。
【0044】
(実施例8(メチルアミルケトンの還流下で共重合されたアクリル酸ヒドロキシエチル/メタクリル酸n−ブチル))
1.5リットルのフラスコに700グラムのメチルアミルケトンを添加し、次いで、溶媒中に窒素をバブリングしながら150℃〜155℃まで加熱還流した。その後、すでに窒素でパージされた180グラムのアクリル酸ヒドロキシエチルおよび120グラムのメタクリル酸n−ブチルを5分以内でフラスコへと添加した。アクリル酸ヒドロキシエチル対メタクリル酸n−ブチルが60/40の初期重量比で30重量%のモノマーを含有する反応混合物を4.0時間還流下に保持した。得られたポリマーは、標準としてポリスチレンを使用して、23730のGPC重量平均分子量および6762のGPC数平均分子量を有した。ガスクロマトグラフィーによって、99%のアクリル酸n−ブチルおよび99%のメタクリル酸n−ブチルがポリマーへと転化されたことが決定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器中で、1つまたは複数のアクリレートモノマーを含む反応混合物を120℃〜500℃の範囲の重合温度まで加熱する工程と、
前記反応混合物をポリマーへと重合する工程と
を含むことを特徴とする重合法。
【請求項2】
前記反応混合物が、5重量%〜100重量%の前記アクリレートモノマーを含み、前記重量パーセントが、前記反応混合物の総重量を基準とすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アクリレートモノマーが、直鎖C〜C20アルキル、分枝C〜C20アルキル、環式C〜C20アルキル、二環式または多環式C〜C20アルキル、2環〜3環を有する芳香族、フェニル、C〜C20フルオロカーボンおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アクリレートモノマーが、アクリル酸C〜C20アルキル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、エポキシアクリレートおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応混合物が、非アクリレートモノマーをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記非アクリレートモノマーが、メタクリル酸のアルキルエステル、メタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸アミノアルキル、メタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリロニトリル、アリルアルコール、アリルスルホン酸、アリルホスホン酸、ビニルホスホン酸、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ホスホエチル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸およびそれらの塩、ビニルスルホン酸およびそれらの塩、カルボン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、シクロヘキセンジカルボン酸およびそれらの塩、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物が重合媒体を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記重合媒体が、アセトン、メチルアミルケトン、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸t−ブチル、ブタノール、グリコールエーテルおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される1つまたは複数の有機溶媒を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記モノマー混合物中の前記アクリレートモノマーの前記濃度を5重量%から100重量%まで増加させる工程と、
重合温度を120℃から500℃まで増加させる工程と、
前記モノマー混合物から前記ポリマーへの転化を約100%から約20%未満まで低下させる工程と、
重合媒体中の前記モノマー混合物の濃度を、反応混合物の総重量を基準として98%から2%まで低下させる工程と
を含む1つまたは複数の工程によって、ポリマーのGPC重量平均分子量が低下されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記反応混合物を含有する前記反応器が、不活性雰囲気下で維持されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記不活性雰囲気が窒素を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応器中の前記重合媒体が還流状態下に維持されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記アクリレートモノマーが一定速度で前記反応器へと供給されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アクリレートモノマーが一定速度で前記反応器へと供給されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記反応器が重合媒体を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項16】
前記アクリレートモノマーおよび前記非アクリレートモノマーが一定速度で前記反応器へと供給されることを特徴とする請求項5または15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1または5に記載の方法によって製造されたことを特徴とするポリマー。
【請求項18】
前記ポリマーが末端において不飽和であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーの存在下で第2の反応混合物を重合し、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを製造する工程をさらに含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
反応器中で、1つまたは複数のアクリレートモノマーを含む反応混合物を120℃〜500℃の範囲の重合温度まで加熱する工程と、
前記反応混合物をポリマーへと重合する工程と
によって重合されたポリマーを含むことを特徴とするコーティング組成物。
【請求項21】
前記反応混合物が非アクリレートモノマーをさらに含むことを特徴とする請求項20に記載のコーティング組成物。
【請求項22】
反応器中で、1つまたは複数のアクリレートモノマーを含む反応混合物を120℃〜500℃の範囲の重合温度まで加熱する工程と、
前記反応混合物をポリマーへと重合する工程と
によって重合されたポリマーを含むことを特徴とする接着剤。
【請求項23】
前記反応混合物が非アクリレートモノマーをさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の接着剤。
【請求項24】
基材上にコーティングを製造する方法であって、
反応器中で、1つまたは複数のアクリレートモノマーを含む反応混合物を120℃〜500℃の範囲の重合温度まで加熱し、そして前記反応混合物をポリマーへと重合することによって重合されたポリマーを含むコーティング組成物の層を塗布する工程と、
前記基材上で前記層をコーティングへと硬化する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記基材が自動車車体であることを特徴とする請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2007−525558(P2007−525558A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518856(P2006−518856)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/021683
【国際公開番号】WO2005/002715
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】